個人情報保護法制化専門委員会

第13回個人情報保護法制化専門委員会議事録

1 日 時:平成12年4月28日(金)14時〜17時00分

2 場 所:総理府5階特別会議室

3 出席者:

園部逸夫委員長、小早川光郎委員長代理、上谷清委員、高橋和之委員、新美育文委員、西谷剛委員、藤原静雄委員
※高芝利仁委員、遠山敦子委員、堀部政男個人情報保護検討部会座長は所用のため欠席

(事務局)
藤井昭夫内閣審議官、小川登美夫内閣審議官、松田学内閣審議官

4 議 題
(1)個人情報保護の必要性と法目的について
(2)「プライバシー権」、「自己情報コントロール権」について
(3)保有主体等について
(4)対象情報について
(5)その他

5 審議経過

【小早川委員長代理】それでは、ただいま個人情報保護法制化専門委員会第13回会合を開催いたします。園部委員長は所用のため遅れられるとのことですので、委員長がお見えになるまでの間、私が代わって進行を努めさせていただきます。また、本日は堀部座長、高芝委員、遠山委員がそれぞれ所用のため御欠席でございます。
 それでは、前回会合までに個人情報の取扱いの在り方、事後救済等につきまして一通り御議論いただきました。そこで、本日は検討項目の中の総論的な部分について、これは順序を逆にしたわけでございますが、御議論をお願いいたします。
 議事次第にもございますように「個人情報保護の必要性と法目的」について、「プライバシー権、自己情報コントロール権」について、「保有主体等」について、「対象情報」について、それぞれ検討を行うことといたします。
 そこで、本日は冒頭に一括して事務局から資料の説明を受け、途中適宜休憩を挟んで議論を進めてまいりたいと存じます。なお、議論の進み具合によって時間が許すようでありますと、今後の取りまとめに際しての基本的な枠組みなどにつきましてもフリーディスカッションを行いたいと存じております。
 それでは、まず本日の検討テーマにつきまして一括して資料の御説明をお願いをいたします。

【事務局】それでは、事務局より配布資料について御説明申し上げます。
 本日御用意いたしました資料は1点でございます。今回は、4つのいわば総論的なテーマが与えられておりますけれども、ペーパーといたしましては必要性、法目的、それからプライバシー権、自己情報コントロール権を1つにまとめまして1ページ、2ページに記載してございます。また、保有主体等と対象情報を1つにまとめまして3ページ、4ページに記載しました。これまで各論的論点について御議論いただきました中で、本日のテーマとなっております総論につきましても折に触れて御議論いただいておりますので、これまでの御議論を踏まえましてこのような考え方もあるのではないかと、議論のたたき台になるよう、問題提起の形でペーパーを作成させていただきました。
 まず個人情報保護の必要性と法目的、「プライバシー権」「自己情報コントロール権」についてですけれども、この点についての御議論は目的規定をいかに規定するかということに収れんされていくのではないかと考えられます。その場合に、目的規定に盛り込まれるべき事項といたしましては、次の枠内の4点が考えられるのではないかと思います。1つは高度情報通信社会の発展に伴う個人情報の集積及び利用の進展、2つ目に個人情報を保有する者による個人情報の取扱いに関する基本的事項を定めること、3番目に個人情報の適正な利用を図ること、4番目に個人の権利利益を保護することでございます。
 最初の○はいわば法制化の背景を述べたものでございまして、より敷衍いたしますとコンピュータ技術、通信技術の発展と、それに伴う個人情報の処理の高度化、その流通する情報量の増大、迅速化等の状況が挙げられるのではないかと思います。
 2つ目の○の基本的事項につきましては、公的部門のみならず民間部門まで含まれる多様な保有者に共通する必要最低限の基本となる事項を定めるものと考えてよいのではないかと思われます。また、個別分野における別途の法規制の位置づけ、当事者間における自己解決方策等から行政支援等、必要な諸施策についての枠組みといったものも基本的事項の内容として考えられるのではないかと思います。
 3つ目、4つ目の○につきましては、中間報告におきまして利用と保護の調和と言われている点でございます。適正な利用につきましては、高度情報通信社会の下では個人情報の利用は不可欠であるとともに、当該個人にとっても有益な面があり、適正であればその利用が図られるべきであると考えてよいのではないかという問題提起をさせていただいております。
 次の個人の権利利益の保護につきましては、これが法律の第1の目的と考えられるところですが、本法制はその多くは個人情報または個人情報ファイルに関連する取扱いを規律していくものになると見込まれますけれども、その多くには個人情報を媒介として個人の人格的権利利益を中心に、権利利益が具体的に侵害される前段階の侵害のおそれとか不安感といったようなものまで幅広く保護しようとするものとして理解することは可能なのではないかという問題提起をさせていただいております。
 また「プライバシー権」「自己情報コントロール権」との関係も大きな論点でございます。この点については法目的との関係、目的規定の表現の問題といったような観点から御議論をいただければと存じております。
 その他、理念規定や責務規定の内容につきましては目的規定、実体規定との位置づけ、相互関係に留意しながら今後検討してはどうかと考えております。
 続きまして保有主体等、対象情報でございますけれども、こちらは法の目的を受けまして法律の対象範囲を明確にするものでございます。ここでの議論は定義規定のような形で収れんされているものではないかと考えました。
 そこで、議論のたたき台といたしまして3つの概念を考えてみました。1つが個人情報、2つ目が個人情報ファイル、3つ目が保有主体でございます。
 個人情報につきましては、個人情報の集積及び利用の進展に伴う個人の権利利益の保護という観点からは、個人に関する情報であって当該個人の識別できるものを対象とするのが相当ではないかと考えられるところであります。
 次の個人情報ファイルにつきましては、個人情報の集積及び利用の進展といった背景に照らしまして、個人名で検索可能な形態で集積されている集合体といったものを対象とするのが相当ではないかという考えに基づくものであります。この場合、マニュアル情報でありましてもコンピュータ処理ファイルの事前または事後段階のマニュアル情報は言うまでもないことでして、その他のマニュアルファイルでありましても検索可能な方法で集積されている場合であれば対象から除く合理的理由はないのではないかと思われるところであります。
 更に、実効的な制度を策定していくという観点からは、一定規模のファイルのみを対象とすることも考えられるところであります。この点につきましては、御案内のように行政機関の個人情報保護法では政令におきまして1,000 人という基準が設けられているところであります。
 続いて保有主体ですけれども、保有主体については公的部門と民間部門に分けて考えることができるかと思います。公的部門につきましては国の行政機関、会計検査院、国会、裁判所、特殊法人、認可法人、独立行政法人、地方公共団体のいずれをも対象とするところではないかと考えられるところであります。ただし、公的部門につきましては民間部門よりレベルの高い規律が求められるのではないかという問題提起をさせていただいております。レベルの高いという非常にイメージのような言葉になっておりますけれども、公的部門と民間部門とでいかに規律が異なってくるのか、御議論いただきたいと考えましてこのようなあいまいな言葉を使わせていただいた次第でございます。
 続きまして民間部門ですが、民間部門の保有主体といたしまては多様な類型・事業規模のものがあるところですが、個人情報の集積及び利用の進展に伴う個人の権利利益の保護という観点からは基本的に区別するべき理由はないのではないかという問題提起をさせていただいております。また、仮に個人情報ファイルの規模を限定することが可能であれば、保有しているファイルの規模といった以外の事業規模の観点から限定をする必要があるのだろうかという問題提起をさせていただいております。
 更に、一つの論点といたしまして、特定の類型の事業者につきまして、本法制の対象から一律に除外すべきものがあるのか。保有主体に課される個々の義務の内容に応じて、対象と対象外とすることについて別途検討することとしてはどうか。そういう意味で相対的適用除外という言葉を使わせていただいております。
 また、特定の事業における個人情報の利用が憲法上、保障されている範囲内のものであれば、本法制においても目的などの関係で適正な利用として認められるのではないかという問題提起をさせていただきました。
 その他の論点といたしまして、統括責任者についてこれまでに御議論いただいたところでありますが、仮に統括責任者を別途置くとした場合に相互の位置づけ、統括責任者の責務とは別の保有主体の責務についていかに考えるべきかという点があるかと思われます。
 最後に、対象情報を保有主体以外に定義規定を設ける必要性のあるものもあるか、またその内容いかんということについては別途検討してはどうかと考えております。これは、民間における個人情報の取扱いの実態を見ましたときに、保有という概念ではとらえることの困難な個人情報利用形態もあるやに聞いておりまして、保有に加えて、あるいは保有に変えて異なる概念を使用することは必要か、適当かといったような問題意識でございます。
 以上でございますが、なお今回のテーマに関連いたします諸外国の規定の例ですとか、あるいはプライバシー権、自己情報コントロール権等に関する学説、判例等の概要につきましては、お手元のハードカバーのファイルのAという方の第8回目の資料に黄色い付箋を付けてございます。その付箋の付いた資料の中の参考資料の7番ですとか8番、10番、11番、12番、14番、15番等がございます。事務局からの説明は以上でございます。

【小早川委員長代理】どうもありがとうございました。それでは、今の御説明を伺った上で、本日の検討テーマにつきましてどの部分からでも結構ですので御意見をお願いします。

【藤原委員】基本的事項のところで、前回申し上げる時間がありませんでしたので、当事者間における自己解決方策等から行政支援等との関係で前回の個人的なことを述べさせていただきたいと思います。
 と申しますのは、前回上谷委員の方から裁判を受ける権利は確保されなければならない。しかし、すべてが裁判所に行くような体制もいかがなものかという御発言がありまして、私も全面的に同感でございます。それを考える際ですけれども、開示請求権的なものを認められて裁判所へ行くとしても、昨日中野区の名誉毀損の国家賠償で国・地方公共団体を相手とすべきで個人責任を追求すべきでないということで二審で棄却がされた判決が載っていたのですけれども、その名誉毀損が30万円なのです。それで、少し調べてみたのですが我が国のプライバシーというか、名誉関係の判例も民事の賠償額というのはかなり低い金額です。そうすると、その更に外にあるデータ保護の違反について民事の裁判が起こって、果たして勝訴したと言ってその額等で解決になるのか。一たん情報が出てしまえば終わりである。事後的な救済は残っているけれども、額そのものは低い。もちろんデータが財産権的な価値があるとか、著作権、特許権等に関係するものはまた別途考えられていて、一般人のものについては著しく低くなってしまうのではないか。そうであるとすると、やはり前回の上谷委員の御発言が示唆されるように苦情処理的な前裁き的なところを充実する。その面を行政支援等というところで重視する必要があるのではないかという気がいたします。
 それに関連してですけれども、一度議論をここでしていただきたいと思っているのは公表という制度であります。これは行政法の最近の代表的な教科書はどれも非常に慎重になるべきであるという立場で書いてありまして、私も基本的にはそのとおりだと考えております。かつて、実態を調べたことがあるのですけれども、国民生活センター等でも実際は宝刀的なものになってしまっている。というのは、非常に慎重に事を進めると、一たん公表してしまったら間違ったときに取り返しがつかないからです。ただ、インターネット上での流通とか、これだけの情報化社会になってくると、かなり意図的に情報化社会において情報を出す者に対して何か公表、あるいはそこに類似した手段はないか、考えてみることも一考かなと思いましたので申し上げた次第です。以上です。

【小早川委員長代理】今、議論をしてほしいという御趣旨で、ルール違反についての公表ということですね。前回辺り、私もちょっと公表等については申し上げましたが、これも教科書に載っていることで、制裁として抑止効果をねらっていこうとするのか、それともそうではなくて何か公的な行政目的をねらって公表するのかということもあるかと思います。だれか特定の被害者の立場からの申立てがあって、事業者に何か適正な取扱いをという場合と、申し立てはないが、しかし潜在的な被害者というようなこともあるわけなので、そういう意味から、制裁ではなくて皆さん気をつけくださいという趣旨での情報提供を利用者にサービスとしてするということもあり得ますね。

【藤原委員】公表は今の御説明のように教科書的には2つあって、1つは情報提供の充実であり、これが近々ですと健康食品について国民生活センターが実際は効果的な成分は入っていないということを公表して情報提供しておりましたけれども、ああいったような公表の形があります。情報化社会でかなりコンピュータ技術、通信技術がここに書いてありますように進展してくると情報難民といいますか、わからない人がたくさんいると思うのです。こういう人たちに対してこういうものが危ないとか、こういうことは気をつけた方がいいということの警告を発する意味での情報提供というのが一番いいんだろうと思います。
 情報提供をやる観点はそうなんですが、ただ、もう一つのと申し上げたのは、これは前者の方の苦情処理との関係もあるのですけれども、こちらの方が難しいと私自身も思っているのですが、民事の賠償等に制裁的効果というか、抑止的効果は恐らくデータ保護の場合、一般的には余り期待できないのではないかと思うのです。その場合、直ちに刑罰ということになると、これはよほど限られてしまう。それで、何か中間的なものがないのかなと思いまして申し上げたのです。
 特に、先ほど小早川先生がおっしゃった制裁としての公表というのは、はっきり言えば最近の教科書に書いてありましたけれども見せしめ的効果であるということで、アメリカ版はよくないということも重々承知しているのですけれども、何か有効な手段を考えて苦情処理の段階で満足してもらえるようにしておいた方がいいのではないかという気がいたしますので、あえて問題提起をさせていただいたわけです。もちろん主眼は情報提供としての公表の方にあります。

【新美委員】今のことに関連して、私も類似の制度について見聞したことがありますので御紹介いたします。イギリスで消費者保護の領域で、実は制裁としての公表ではなくて情報提供としての公表ないしはそれに近いものがあります。御存じのように、不公正契約についてイギリスは団体訴権を導入しません。その代わりに公正取引長官に差し止めの権限を与えたのです。そういう権限の下で公正取引庁の長官はダイレクトにインジャンクションをかけるのではなくて、それを求めて苦情が集まってきたときに、その苦情の内容を整理分析してアニュアルレポートの形で、こんな苦情があって、その苦情の中ではこんな条項が問題ですということで、固有名詞入りでそれを整理したものを公表する。そのことによって、実は会社の固有名詞でウォーニング、警告の役割を果たすと同時に、どんな条項が危ないのかということを一般消費者に教育する、情報提供するという2つの機能を営ませている。
 ですから、これなどは藤原委員がおっしゃったような意味での情報提供に近い制度ではないかと思います。ただ、この制度をやるためには前回から議論がありますように、かなりしっかりした担当の組織がないとできないだろうと思います。

【藤原委員】今の点ですけれども、外国調査をして参りまして今、新美委員がおっしゃったような制度は確かに英独仏にある。それぞれコミッショナーを通じ、監督官事務所を通し、また情報処理の委員会を通してアニュアルレポートを出しておりまして、その中で、過去こういう事例が問題であったというものは公開しております。そして、イギリスとかドイツなどで前提にしているのは、それがある程度人の目に触れるし、特にドイツ等ではそれを問題にする層が社会の中にいる。これは国会等の質問を通じて間接的に罰則という制裁はないのだけれども、問題は解決されるのだということを強調しております。

【新美委員】先ほどのイギリスの例はクォータリーでインターネットでオープンにしていますので、簡単にアクセスできます。日本からでもアクセスすることは可能であります。

【高橋委員】苦情処理などを行政機関が勧告し、勧告を聞かなかった場合にはサンクションを与えるというようなこともあり得るのではないかという気がしたものですから、直接的に刑罰でということは消極的な中間報告の立場ですからよほどの場合を除いてですね。そうすると、私も最終的にきちんとしたサンクションがあり得るのだろうかということが非常に気になっておりまして、民事責任を取ると言ってもそもそも訴訟に乗るかどうかが難しいということがあるし、かつ乗ったとしても先ほど御紹介がありましたようにサンクションとして有効な方法があるのかということはなかなか難しいと思います。
 そうすると、やはり行政がワンクッション置く形で、地方の条例でも立入り検査権等を与えているところはありますけれども、そういうかなり強い権限をこの機関に与えた。つまり、勧告権ですね。勧告を無視するような場合には、最終的にはそれに対しては行政罰を科するとか、そういうことも一応射程に置いて考えたらどうかと思います。

【上谷委員】私も、先ほどまでの議論は大変ごもっともだと思います。確かに民事の裁判で名誉毀損なりで損害賠償を求めるというのは、現実の問題として抑止力としてはそう大きな力を持つことは無理ですね。極端なことを言いますと、名誉毀損に大体幾らぐらいの損害賠償額を認めるかということは、先ほどおっしゃった30万円というのはやや安い例かなという感じはしますけれども、どういうケースかによる。では何千万の損害賠償とかというものが現実にあるかというとそれは全くありませんので、現実の問題としてはせいぜい100 万円台単位でしょう。雑誌や新聞がいろいろ書いたというので刑事被告人が名誉毀損で随分勝訴している例がありますが、それなどはやはり大体30万円から50万円、多くて100 万円ということでしょうか。このケースの場合は、高くなるよりむしろ安くなる方の要因がかなり働いていると思いますのでちょっと特殊だと思いますけれども、そういうようなものを度外視しても、例えば名誉毀損の損害賠償で数千万というのは現実の問題としては考えられないですね。これは生命身体の侵害に対する慰謝料額が、逆に言えば上限が3,000万から5,000万あたりです。命の値段は幾らかということで、これで例えば何十億という損害賠償を認めるというようなことでもあれば別ですけれども、現実の問題として、自賠責の強制保険の上限が問題になってきますね。ですから、例えば逸失利益とか、そういうようなより客観的なものをずっと累積していった損害賠償額でいけば、確かに最近は1億というケースも出てきていますけれども、名誉毀損だけでそれぐらいいくということはまず考えられないです。支払い能力の点でも、恐らく普通の個人ではそんな判決をしてみたところで実効性もないということになってしまいます。そういう意味で歯止めになるか、抑止力になるかと言われると、民事の名誉毀損による損害賠償が効果的な抑止力になるとは考えられない。
 逆に言えば、やって儲ければ勝ちだ。あとは損害賠償を取られても、それはそれでいいというようなけしからん例がやはり現実に出てきますね。そのようなものに対する対応策としては、何らかのもう少し有効なサンクションを考えなければならない。一番効果的なのは刑事罰で、かつそれも罰金ではなくて身柄を拘束する。要するに、懲役刑しかないと思います。それは金額に関わらずかなりこたえるはずですし、前科になることですから、それは大きな抑止力になると思います。しかし、この中間報告ではそれは非常に限られた特殊な分野でしか考えていない。私も、それをすべての場合に用いるというのは、やはりニワトリを割くに牛刀を用いるの類いという感じがしまして、中間的なものがほしいという感じがします。そういうことで今、お話のございました情報提供と合わせて、一方で氏名を公表することがその人に対する抑止力になるということを含めて、是非真剣に考えていい制度ではないかと思います。
 ただ、今お話が出ましたように、それをやり損なうと今度はまた大きな問題が出てきますから、これをやる条件というか、手続等はある程度きちんとしたものを考えながら、という前提が必要でしょう。そういうようなものがあるぞということだけである程度一般的な抑止力になると思います
 それから、そういうものは恐らくいわゆる行政的な機関にゆだねるしかないと思いますけれども、ここで行政的と言っていますのは、これは国の権力を3つに分ければ立法と行政と司法しかない。裁判所で全部裁けないからといって司法の分野で担当するわけにはいかない。司法の分野では行政事務は司法行政を除けば行政事務は扱えないはずですから、裁判所にそれを持っていくわけにはいかない。また国会に持っていくわけにもいかないという意味で行政機関ということになるわけで、性質としてはあくまでも準司法機関というものを念頭に置いて考えていくということではないかと私も思います。

【小早川委員長代理】今、上谷委員がおっしゃられた意味での準司法的な行政機関にある程度の権限、力を与えてはというお話なのですが、可能性として大いにあると思うのです。前回辺りは例えば公調委などの話がよく出てきましたけれども、今のようなお話ですと、あるいはまた労働委員会タイプですね。具体的にこういうことをやって是正をしろという救済命令をすることとか、それからこれも労働委員会の連想で、事業者側に今後このように改めましてこういうことは繰り返しませんというようなことの公告ですね。それもスマートなやり方かどうか検討の必要はありますけれども、一つあると思います。
 先ほど事務局から御説明があったペーパーの前半2枚は、先ほどの御説明ですと形式的に言えば法律の目的規定の中身にこういうことが含まれるのかどうかというようなこともあるというわけなのですが、この辺はいかがでしょうか。

【高橋委員】目的規定の中に今後どうしても4つが挙げられている。それは結構だと思いますが、別にこれは順序を付けたということではないのかもしれませんが、順番に挙げられていることから言うと3番目と4番目で、個人情報の適正な利用を図ること、次が個人の権利利益を保護するとか、このようになっているのですが、これを書くときに個人の権利利益を保護することの方が主目的であるということが前面に出るような書き方を考慮していただきたいという気がします。情報の適正化利用が主目的で、それをやるためには権利利益を保護してやらないといろいろうるさいからと取られてしまうと批判が出ると思いますので、そうでなくて主目的は権利利益を保護することだと。あるいは、保護することによって初めて適正な利用がスムーズにいくようになるのだと。同じことを言うのだけれども、そういう書き方を工夫していただければと思います。

【上谷委員】私も全く同感です。一番最初に言おうと思っていたら話が別の方にいってしまったものだから、高橋さんが適切に今おっしゃってくださったと思っています。
 この委員会も個人情報保護法制化専門委員会という名称になっていますし、憲法上保障されている基本的人権の一つとしてそれは中心にあるものですから、そちらが明らかに優先するということになるという気がします。優先するという言い方はおかしいなら、それを表に出すべきだと思います。個人情報を適正に利用することによっていろいろ便益を図っていくという面は、これはいろいろな分野があると思います。その個人情報を利用することが大きく公益に資して、またそれも一つの憲法上の別個の要請を、例えば公共の福祉を増進するために是非必要だという分野の場合もあると思いますけれども、そうではなくて全く商業的利用といいますか、私益を得るための利用というものまでも含まれている非常に幅の広いものがあると思います。
 そういう意味から言いましても、利用の方を正面に出すのは、場合によってはバランスを欠く。例えば国の保有する個人情報保護法は、行政目的というのは私益のためにやっているものではないし、行政そのものが国民全体の福祉のために行われるべきものだということで、高度の利用の要請は常にあるはずなのです。目的に外れた利用の仕方をすれば、けしからんことが起こるというだけの話で、高度利用をしていくということ自体は、本来必要なことですね。この基本法ではそれと同時に民間もつかまえるわけですから、そういう意味で個人情報の適正な利用というものには非常に大きなグレードの幅があるということで、前へ持っていくのはどうかなという感じが私もいたします。

【小早川委員長代理】今、出ました国の行政機関の保有する個人情報の方の第1条ですね。そこには行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とするとあるのですが、これはまさに今、上谷委員がおっしゃられたように、ここでは行政機関の保有する情報というのはいろいろあるけれども、とにかく行政目的という本来プラスの価値のある目的のためにあるはずだと。だから、それがそのように目的に沿ってきちんと十分に効力を発揮するようにということはひとつ言えるわけですね。行政の適正かつ円滑な運営というのは多分それを含めた意味だろうと思いますが、ただ、それにしてもこの1条では「図りつつ」ということで結んであって、これはどちらが主なのでしょう。

【藤井室長】行政機関個人情報保護法の国会審議でもそのような議論がなされまして、政府側というか、大臣答弁で主目的は個人の権利利益の保護であるとさせていただいております。「図りつつ」でございますが、主文はあくまで権利利益の保護ということでございます。

【小早川委員長代理】それにしても、上谷委員がおっしゃるように、この場合と今回とではちょっと違う、考慮すべき価値の関係が。

【上谷委員】ただ、基本法でそう書いてしまったら、あちらが書きにくくなるという御苦労のほどはよくわかります。

【西谷委員】全般的なことですが、今まで議論していて私自身疑問というか、イメージがまだどうも率直に具体化していないのです。もうそろそろイメージをつくらないとという感じもしているので、仮に私のイメージですが、まずやはり5原則をあの中間報告から更に詳細化する。そういう工夫が一番中心になってくると思います。それで、今日の提案にもあるのですが、原則と例外を明確化するに当たって、公と民の場合とではレベルの差があるなと私も思います。どんな規定ぶりかということについては具体的にまだイメージがわかないが、しかし少なくとも国、公的部門の場合は情報を収集することについては法令に基づいて一方的にやってしまうということですね。民間の場合はネゴシエーション、契約なのだから、結局その情報の収集、利用については当然その契約の仕方に左右される局面が多いわけです。その結果、例外がずっと増える方にいくか、あるいは原則そのものがもう少し弾力的になるか。どちらにせよ、当事者同士の合意的要素が非常に強く出る限りにおいて、ここではレベルの高い規律とそうでない規律という表現になっていますが、そういう部分が出るに違いないだろうと思います。端的に言うと、同意があった場合は例外とするという感じのものが非常に多くなってくる。もう一点申し上げたいことは、やはり機関をつくるということ。原則を幾ら詳細に書いても、そうしろとか、ねばならないとか書いてみてもどうなるのだという部分がないといかぬので、やはりこれは機関、紛争処理組織を置くということを基本法の目玉にするのではないかと思います。そのときに、もちろんここでその機関について詳細に書いてしまうというやり方もあるし、また別法で置くこととしてぽんと任せてしまう方式があるのですが、そこはどちらの方がいいのかよくわかりませんが、どちらにせよ何か機関を設けるということでもってこの法律の一番かなめの部分とする。その機関がとり得る措置を多様に勧告、公表も入るし、あっせんも調停も入るし、そのほかいろいろ考えてこのような措置をとり得ると。
 なおもう一つあるのは特別法、特別に法律で定めるという部分が私はあると思うのです。本基本法は結局、共通則を定めるということで、特に例えば医療情報であるとか、教育情報であるとか、通信情報であるとか、金融情報であるとか、特別の規定でもって特別な措置をしなければならないということについては、基本法としては一か条設けて、そこへ注意事項で通則以外のものを明示的に書く。
 それから、ついでに言ってしまいますけれども、自治体との関係は厄介な問題で、今までの情報公開法は国の情報と地方の情報は別だからすれ違っていて、お互いに準じてやりなさいと書いておけば終わりだったのですけれども、今度はルールの部分についてはまさに両方が絡むわけだから、自治体はここで書いた共通則を破るような強い規制を許すのかどうかとか、そういう部分について何か要るのですね。つまり、条例との関係に関する規定をどう考えるか。場合によっては、何か置かなければいけないのか。違法な条例になってしまいますから、そこのところは普通の今までやってきたこととは違ってすごく難しいことになるなと。
 それから細かいことで、5原則を詳細化し例外を詳細化する場合における対象情報については集合体であること。すなわち、検索可能な情報であるとことと、たった1枚の個人情報は対象にならないということについては、でもどうしてかというのは私自身もよくわかっていない。多分そうなるのだろうなという気はしますけれども。
 それから、だれがというところは、これは保有主体という言い方をして出てきますが、保有主体が主語になることが原則であることは間違いないと思いますが、保有者、保有主体、保有主体から出てそれをまた利用する人というのも原則がかぶるんだとすると、どうも保有主体だけではない。それも保有しているのだと言ってしまえばそうなのですけれども、ただそのときには対象情報が集合体でない保有者だと思います。ある一部だけ何かきて、それをまた悪用するというようなケースも考えないとしり抜けになってしまうから、どうも保有主体プラス利用主体ということを考える必要があると思います。
 目的規定については、特に私としてはこれ以上の知恵はありません。以上です。

【小早川委員長代理】今、西谷委員のおっしゃられた最初の方の議論は、5原則ならば5原則の中身も、公と民をこの法律の中で書き分けるという意味ですか。

【西谷委員】そうですね。例えば当事者の同意についていえば、利用目的を当事者で具体的かつ詳細に合意するものとするという規定が置かれるものとすれば、それは公的部門の方には通用しないと思うのです。だから、そのような規定が民のところにだけ出てくる規定というようなことになるから、何か違いがあるなと。だから、第1章公的、第2章民的と書くというように整理することなのかどうか。そういうところまではわからないのだけれども、とにかく違いはありそうだなということです。

【高橋委員】私も基本法の漠然としたイメージとしてはただいま西谷委員がおっしゃったようなことで目的規定について5原則、例外を書いていく。基本原則はかなり書いて公、民の違いというのは例外として出てくるかなというイメージでとらえているのですけれども、その後に行政機関を何かつくる。どんなものをつくるかというのはこれからの大きな課題になるかなという感じがしますけれども、そのようなイメージで考えています。
 そういう意味で、前回からそれを実効的なものにするために行政に頑張ってもらわなければいけないということは強調していたのですけれども、ただ、行政に頑張ってもらうということが、逆にだから個人に権利を与えたわけではないという理解につながるようなものになっては困る。仮に行政が自分の思うように対応してくれないと考えた場合には、個人でとことん頑張ることができるというわけです。たとえサンクションとしての評価は小さくても、例えば裁判所で10万円の判決をもらってもそれは勝訴という意味があるわけですから、そういう訴訟が起こせるようなものにしておく必要があるだろう。そういう意味で、1つは訂正権まで権利としてきちんと書くべきではないかということです。
 もう一つの方ですね。前回、目的外利用についてもかなり争えるような形にできないだろうかという問題を出しております。なぜこういうことを言うかというと、この基本法の目的といいますか、つまり何を保護しろと言っているかという点について、私は前にも言いましたように2つ重要な目的があると考えていまして、1つは藤原委員が最初のときに話してくださった中で個人情報の保護を議論する場合に3つの側面が必ずしもきちんと整理されないまま利用されているのではないかということを言われました。人格権というものと監視を避けるということ、もう一つは経済的なものといいますか、誤った情報によって権利利益が損なわれることに対する不安、私は人格権については以前言ったのですけれども、そういう意味で余り人格権ということは重視していないとか、それは当然のことで、人格権だけ言うのならば従来の憲法上の人権として既に定着していますから、それでカバーできているので、これまた前回個人情報保護をつくるという問題にも絡むだろうと考えていますし、むしろあとの2つの点が非常に重要な意味を持っている。
 つまり、我々が情報を収集され、それが結合されることによってコントロールされるということに対して、あるいは監視されるということに対する不安ですね。これを除去する。そういう実で私が一番重要視しているのは、無断てデータを結合されるということですけれども、それが非常に重要な目的です。もう一つは、やはり誤った情報によって自分についての決定がなされるということに対する不安ですね。その誤った情報に基づいてという点は訂正権を与えることによって最終的には個人が何とかしようということになるのではないかと考えております。
 もう一つの方の難しいのが、いわゆるデータを結合したりする目的外利用に入ってくるのだろうと思うのですけれども、それがなされた場合の救済がどういう形で可能なのか。もちろん行政機関に苦情を言っていっていろいろやってもらう。それでできればいいのですけれども、そこのところがうまくいかなかったと考えた場合、最終的には裁判所に訴えることになるといってもそれが可能かどうかですね。その場合も不法行為の責任をどうとることがいいのかということになるだろうと思うのですが、そこのところが私も余りよくわからないものですから、果たして目的外利用を禁止するという原則を書いておくと、目的外利用をした者に対して賠償を求めていくことができるのかどうか、その場合に、どういう段階で救済ができるのか、負担分が保障できるのか、だれが責任を持つのか。そういった辺りが自分の頭の中でニーズがあまりないものですから、果たして救済を果たし得るようなものになるのかどうか。果たすようにするにはどういう書き方をすればいいのか。その辺はもし何かお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。

【上谷委員】高橋委員がおっしゃったのと同じようなことを考えているのかもしれませんけれども、私もこの基本法の中身で考えるべきことに2つの段階があるような気がするのです。
 1つは、これがいわゆる名誉毀損だとかプライバシー権とか、そういうようなものにならない前段階で働く、例えば自己情報のコントロール、これは権利なのかどうかよくわかりませんが、そういうものが前段階にあって個人情報というものは勝手に収集されてはそれ自体困るのだということ。個人の側から見れば、それが蓄積されていようが蓄積されていまいが、とにかく私の情報を私の同意を得ないで勝手に持っていくというのはおかしいのだという5原則にうたわれているようなことは、情報を集積して利用しようとしている場合であろうとそうでなかろうと実体的な義務といいますか、そういうものとしてあるのだということはやはり基本法で書いておかなければいけないだろうと思います。
 それとは別の段階で情報を集中的に扱うような場合には、更に細かくこのようなことをしなければいけない、このような措置をとりなさい、場合によれば総括責任者みたいなものも置いておきなさいということがあり、そういうような場合についてはいろいろな類型の苦情処理のためのメニューも置いておくし、場合によれば情報の開示請求権も置いていく。そのような類型の分布と、それからもう一つ大きな目的として最初に先ほど西谷委員からお話がございましたけれども、5原則を書くような場面では、これはすべての情報収集と個人情報にかかっていくだのと、そういう2段組みみたいな形になるのかなという感じがしています。
 ですから、罰則などを仮に設けるような場合でも、そのような集中的にファイルとして管理して、それを情報をいろいろ操作していくという場面での不正利用と、それからそれとは離れてとにかく不正に情報収集する、あるいは収集した情報を不正に利用するというものは一般的に刑罰ならば刑罰に当たってしかるべきですし、不正と言ったら非常に悪質な場合に限られてくるとは思いますけれども、限定的に刑罰を科するとしても、そういうのは個人一人で、極端なことを言えば趣味でやっているようなもので、コンピュータ処理を前提としていない、全くマニュアル処理でもだめだという類型が、あるような気がするのです。そこをやはりうまく書き分けていかないといけないのではないか。ただ、いわゆるマニュアル情報でやっているような場合にまで一々苦情処理のところへ持っていくという前提で構成する必要は必ずしもない。やはり大規模に集積した個人情報を扱っているところに課せられる特別の義務みたいなものを書く。何かそんな形かなというイメージをしています。

【小早川委員長代理】議論の途中なのですが、予定ではもう少しやってから休憩なのですけれども、速記の関係でここでお休みをして準備をしてまた再開ということにしたいということですので、恐縮ですが3時20分ぐらいに再開させていただきます。

(休憩)

【園部委員長】それでは、途中なので小早川代理に助けてもらいますが、西谷委員の御発言からお願いします。

【西谷委員】高橋委員、上谷委員のおっしゃったことと基本的には同じことですが、少し請求権というか、その辺について私の考え方を仮に申し上げてみたいと思います。
 5原則の原則と例外を詳細化するということですが、この書きぶりは2つあって、保有者は何々してはならないというパターンのものと、情報主体は保有者に対してこれこれを請求することができるという、その2つのパターンから成るだろうと思うのです。そして、前者の、ねばならない。これは保有者の専ら義務として書かれているというものが実は圧倒的に多くのものではないかと思います。つまり、これをめぐって紛争の対応がどんなものかということを、実はずっと本当は事務局辺りで5原則ごとに少し具体的に当たって想像していただくといいと思うのですけれども、例えば収集制限で言えば目的を示さずに収集したのだから廃棄しろというような言い方もありますし、家族構成まで書かなければ契約しないなどという、そんなひどいことはないじゃないかというような言い方もあるでしょう。それから、利用制限ではこれは非常に多いと思いますが、目的外で利用した情報を回収しろというようなトラブルもあるでしょうし、今後の利用を中止しろというようなものもあるでしょう。それから、公開参加原則の方で言えば、これは有名なことですが開示しろと。逆に開示するなと。それから、これこれに訂正しろと、こういうのがあります。それから、適正管理原則の方でも不適切な職員を懲戒しろとか、委託はやめろとか、このように具体的に思い付く紛争はいっぱいある。そして、そのうちいわゆる請求権として最終的には裁判所まで行けるというようなものは、多分それらがすべてではなくて相当にこれは限られることになるであろうと思うのです。
 それで、私は思い切ってそこのところは仮に言いますと、1つはやはり開示請求権、自己の情報の開示を求める、請求することができるという法文、これはいわゆる請求権ということであり、最終的には民訴、行訴、行政であれば行政的訴訟という方へいけるであろう。それから、訂正を求めることができる。これを訂正権と仮に言うならば、この2つはまず請求権として構成できるし、すべきではないか。
 問題は、自治体ではかなり書かれているらしいのですが、利用の中止権というものですね。目的外利用の中止を求めることができると書いた条例がかなりあるらしいのですが、この辺りがそのボーダーラインじゃないか。つまり、中止を求めるというのはどういうことなのか、場合、場合によってすごくわかりにくいので具体的内容性がどうなのかなというので、これがボーダーライン。以上の3つ以外はどうやら請求権ではないグループではないかと、そんな感じがしています。もっと考えれば請求できるというのはもう少しリストができるかもしれません。
 それで、今のは民訴、行訴を通じて実際にそれを強制することができる。実際は間接強制しかないのかもしれませんが、とにかく勝訴することができるし、合わせて不法行為、国賠というものを使っていくこともできる。それで不法行為、国賠は実は今の請求権のことはもとより、先ほど言いました保有主体は何々しなければならないというグループについても働いてくるだろうと思います。そういう規範があるということは、それを根拠にして損害賠償請求できる。したがって、請求権として構成した部分については強制執行できるし、不法行為の方でいく方は広がりを非常に持った形でできるかなと。そういう構図を考えております。

【高橋委員】西谷委員が非常に参考になることを言ってくださったのですけれども、私も個人の側の権利なり利益なりということを非常に明確に出すためには、情報主体を主語にした書き方が一番いいだろうと感じております。恐らくそうなるのにそんなに抵抗がないだろうと思ったのは開示請求権と訂正請求権です。
 しかし、先ほどから目的外利用について何とかうまい考えがないかと言っていたのは、頭で考えていたのは情報主体の側から、今出ましたように、例えば目的外利用がなされようとしていればそれに対して中止請求ができるとか、あるいはなされてしまった場合にはその結果として新しい情報がつくり上げられていればその廃棄請求ができるとか、それを情報主体がこうこうこういうことができるという形で書くと権利利益性が非常に明確になって、損害賠償の主張をやるという場合にもやりやすくなるのではないかという感じはしていますけれども、これはそこまで書くということについては相当抵抗があるのではないか。
 それで、そこまでいけないとすればもう少し緩やかな書き方としては、目的規定の中で個人に自己に関する情報を適切に扱ってもらう公的に保護される利益があるのだというニュアンスが出るような書き方が何か目的規定の中でできないだろうかという気がしているのです。私自身もうまい表現の仕方を今、持っていないのですけれども、適切に扱ってもらうことに対する利益といった意味が出るような何かうまい表現を目的規定の中に入れておくと、そういう利益というのは単なる行為規範の反射ではなくて、法的保護されるに値する利益と認めたのだよというようなニュアンスが出てくるのではないか。それがあると、仮に原則のところで保有主体を主語にした行為規範というような書き方になっていても、目的規定を使って解釈するときに法的に救済を受け得る利益なのだということが言いやすくなるのではないかと、そんなことを考えております。

【藤原委員】先ほど来の高橋委員や上谷委員、西谷委員と大体私も同じなのですが、1つは権利に関しては先ほど申し上げたように、紛争はできるだけ苦情処理の段階で落とせるのが望ましいけれども、もしいわゆる憲法で言う制度訴訟ですか、頑張る人が頑張れるという、そのシステムは残しておいた方がいいというのはそのとおりだと思います。
 それから2番目ですけれども、それと関連して先ほど西谷委員が公的部門と民間部門に分けてどの程度詳細に規定するかという一つのアイデアをお示しくださったのですけれども、その場合、今日のこのメモにレベルが違うということが書いてあるのですが、そのレベルが違うことという意味なのですけれども、主体が違うとどちらかの義務が強くなってくるという意味なのか。あるいは、両方あるのかもしれないのですけれども、個人の権利主体としての関与が公的部門と民間の部門で違うというのか。あるいは、保有主体の義務にそのレベルが違うのか。そういったところも少し考えてみた方がいいのかなという気がしました。
 それとの関係で言えば、基本法というか、先ほど通則法というお話があってなかなかいいなと思うのですけれども、その場合に今日のメモにも公的部門のみならず民間のままで含まれる多様な保有者に共通する必要最低限の基本というようなことが書いてあるのですが、共通でくくれる部分をとにかく必要最小限にまず抽出してみる。多分それなどは目的規定的なところなのでしょうけれども、それ以外に各種のいわゆる基本法に見られるような理念規定とか、倫理まで含んで、今のような世の中だから情報倫理で、先ほど上谷委員がとにかく情報はきちんと扱うべきだというような啓蒙啓発が必要だということをおっしゃいましたけれども、倫理という言葉がどう響くかはともかく、医療の分野でも言われているような情報に関するというようなことも書くのかどうか。
 それから、先ほど保有プラス利用だと西谷委員が言われたのですけれども、これは外国等ではプロセッシングで、要するに合わせたら「取り扱うもの」ではないか。例えば、言葉としてはそれに触れるというか、その情報の処理過程に関与する取り扱うものとして統轄的に考えるという御趣旨なのかとも伺ったのです。そうすると、もう少し高度情報化の中でいろいろな問題を取り入れられる。いろいろな問題を取り入れられるというのは、恐らく長くその概念が使えるということかもしれませんけれども、単に保有しているだけでも、あるいは利用という観点も重要な場合があるのかなと。そうすると、合わせて何か考えておくべきなのかなと。恐らくそれ以外に、先ほど御説明のあったメモの4ページの最後のところの別途検討すべき事項ではないかというところだと思うのです。
 それからもう一つ、包括責任者という人を考えるときに、今まで多分出ていなかったのかもしれませんけれども、守秘義務をこの人にかぶせるのか、かぶせないのかといったような、やや技術的な議論ですけれども、どこかで処理しておく必要があるのかなと思いました。以上です。

【新美委員】話題をまた元に戻してしまうかもしれませんが、先ほど来、西谷委員の方から出ているような請求権の問題をもう一遍考えてみたいと思いますけれども、官民の場合は恐らくこういうことでいいのだろうと思いますが、民民の場合にこういう請求権を基礎づける根拠を一体どこに求めたらいいのか、考えておく必要があるだろうと思います。民民の場合、考えられるのは契約か、不法行為かでしかないと思うのですけれども、この法律で契約を規制してしまうということはとても無理だろうと思いますので、基本的には不法行為みたいなものをベースに考えていかざるを得ないのではないか。そうすると、訂正請求権だとか開示請求権、利用中止権みたいなものを仮に考えるとしたときに、どういう状況があったときに不法行為の要件を満たすのか。そして、不法行為ではなくてこの法律でどこで法によって新たな局面を切り開くのかということを検討しておく必要があるのではなかろうかと思います。
 個人情報について私権性が認められるとしても、それはあくまでも自分のところの私権であって、相手方に自分の私権をこうしろああしろという形では言えないはずなのです。相手方に自分の私権に対してどのようにしてほしいというためには、相手にそういったものを義務づける根拠が必要である。この基本法で義務づけるというのは一体何なのか。その辺を見ておかないとますいのではないかと思います。

【上谷委員】今の御議論は、確かにごもっともだと思います。私も先ほど西谷委員もおっしゃっておりましたし、高橋委員もおっしゃっておりましたが同感です。今までの、例えば民法その他の基本法はいわゆる権利の体系を中心に書いてありますから、もしこの基本法が単純に例えば情報保有者の義務として書いていくと、それは一体だれに対する義務かというところがぼやけてくるおそれがあるという御指摘と受け取っていいのではないかと思います。ですから、社会的な責務だけではないので、現にその情報によって特定される個人に対する義務だということが出てくるような形で書かなければいけないし、場合によればそれを権利の面から書いていくという、先ほどからおっしゃっている西谷委員、高橋委員、新美委員の御意見はもっともだと思います。
 それをどの程度ぎらつかないで書いていけるかという書き方のテクニックはあると思いますので、全部それを書き切れるかというと、なかなか権利の体系だけで書き切ることは難しいと思いますが、思想としてはそれがわかるような形で、言ってみれば物権的、人格権を物権になぞらえれば、物権的請求権として侵害排除、予防、そういう請求権として書いていますけれども、そのような意識で読んでもらえるような、理解してもらえるような書きぶりですね。それができれば一番望ましいと私も思います。
 付け加えますと、裁判所の現在の不法行為の議論でいけば、それが法によって保護される法益であるというところがクリアできれば、あとはそれが違法な侵害だというところでほぼ救ってくれているというか、救っていっているのが現在の裁判所の考え方だと思いますので、必ずしも明確に○○権だという表現を使う必要はないとは思いますけれども、確かにおっしゃるとおりの権利性がわかるような書き方である方がいいと思うし、不法行為のレベルというのはどうしても事前の差止めにはなかなかつながりにくい、いわゆる事後的救済の面が出てきますから、事前の予防請求的なものですね、あるいは排除請求的なものが組み立てとしてわかるような構成がとれれば、これがベターだと私も思います。

【小早川委員長代理】今の上谷委員、あるいは新美委員辺りへの質問ということになると思いますが、具体的に前に、例のいわゆる敵前逃亡記録の訂正請求権ですね、あれは私の記憶では、裁判所はその請求権は成り立ち得るということを認めたのではないかと思います。あれはたまたま官民の関係でしたけれども、しかし根拠になる官民特有の明文の規定があったわけではなくて、多分民法の解釈ですね。そうなりますと、今までのお話というのは人格権に基づく請求権というのは解釈上、構成可能であって、そのことを踏まえ、それをなぞるような形で、それに対応するような形で立法的な整備をするということでよろしいのでしょうか。

【新美委員】裁判規範としてはそのようなものになっていた方が多分使いやすいし、乗ってくれやすいだろうと思います。

【上谷委員】御承知のとおり、人格権という考え方は最高裁の判決で確立しているわけですけれども、ただ、どんなものがそこに含まれてくるかというのが必ずしもまだ射程距離というのですか、外延が必ずしもはっきりしません。
 ただ、法律の条文で、例えば人格権というような言葉を使うのがいいかどうかはまた別問題だと思います。そういう言葉を避けながら、それが要するに今、一般に定着している人格権というものの中に入るのだということがわかるような表現方法をしてほしいなという気がします。義務の方だけで書きますと、そこがぼやけてくる可能性がある。一般的な責務だけになってしまう可能性がある。ですから、先ほどから問題になっていますような書きやすい部分はできるだけはっきりした訂正請求権、開示請求権みたいなことがわかるように開示を求めることができるという形でしていくのかなという感じです。
 しかし、全部それは書き切れないと思います。

【小早川委員長代理】その点はわかりました。そうしますと先ほど来、開示請求権、訂正請求権まではいいのではないか、もう一つの目的外利用についての中止請求権みたいなもの、この辺がちょっと微妙かなということですが、考え方としましては、そこももちろん民法の解釈、人格権法の解釈として言えるものは今後の判例、学説で言っていただいていいわけですが、あるいはその辺はこの立法としては、民法上はどうかちょっとわからないけれども、行政的な介入の仕組みをひとつつくっておいて、それがどの程度強いのかはあれですが、単なる調停のあっせんということなのかもしれませんが、とにかく個人の権利利益、保護に値する権利と考えてそういうものをつくっていく。ちょうど民法の雇用に関する規定に加えて労働法規制ができたように、そこはごまかしの部分が残るのかもしれませんが、民法プラスアルファーという形で、かつそれは行政が権能を持つというだけではなくて、そこにとにかく保護に値する個人の権利利益はあるのだということで、先ほど来の高橋委員の御主張にも沿う形で書くことができるのかどうか。

【新美委員】小早川委員のおっしゃるとおりで、やはりベースといいますか、基本は私権といいますか、個人の権利としてどうなっているかというのは書いておいて、それが要件として裁判レベルではどうも詰め切れないという状況について行政が何らかの割り切りをするとか、あるいは調定的なもので動けるような仕組みをつくっておくのがいいのではないか。例えば、今の利用中止請求というのはある意味で部分的に何とかしろという請求権ですね。民法の請求権でいくとオール・オア・ナッシングの方が処理はしやすい。この部分はいいけれども、この部分はだめだという特定の仕方が非常に難しいものですから、民法のレベルではなかなか請求権としては動かない。そういう性格があるものですから、そういう部分については行政的な解決が図れるようにしておくのは大事だと思います。

【小早川委員長代理】おっしゃるとおりなのですが、ただ懸念を付け加えますと、労働法と申しましたけれども、労働委員会が労働法の頭でやる救済命令について最近は裁判所が民事法的な頭でどんどん引っくり返すということが問題になっていまして、今度の制度についてもそういうことになる可能性がなくはない。そこをどうするかということです。

【藤原委員】2点あって、1点は事務局の方ともお話ししたのですけれども今、小早川委員が言われたとおりで4審制といいますか、労働委員会と裁判官が結局発想が違って別の答えが出てくるという問題があるのではないかということと、もう一つは先ほど高橋委員が言われた自分の情報あるいはデータに対して適正には扱ってもらうことができるというのを何か書けとおっしゃって、恐らく自己コントロール権に近いようなお話であろうかと思うのですけれども、それをどう書くかということともに、先ほど来問題になっているのが、官民の場合と民民の場合で、例えば新美委員が言われたあっせん調停にいっても仕方がない部分と、オール・オア・ナッシング的になかなか割り切れない部分の存在が官民であれば逆にそれほど問題にならないわけですね。民民であるからこそ、新美委員も言われたような問題は出てくる。そうすると、同じ権利についていかにそれを書き分けるのだという問題が今度は出てくるような気がするのですけれども。

【上谷委員】確かに今、小早川委員が御指摘になったような仮に準司法的な、例えば労働委員会に準じたような機関をつくった場合に裁判所と見解が異なってくるというおそれは抽象的にはあると思います。
 ただ、私は一つひとつ全部詳しく検討しておりませんし、労働関係はそう専門ではありませんので必ずしも自信がありませんが、やはり労働委員会の特殊性もあると思います。どういう構成にするかということが出てきますのと、それから裁判所が労働委員会と別の結論をとるというのも、結局は労働委員会の判断が違法だ、もしくは著しく裁量権の範囲を逸脱しているという形でつかまえてきますので、今度考えているような委員会は労働委員会型とは言っても、それはその機能がよく似ているというか、そういうようなことで私は受け取っておりますので、現在の労働委員会のように、例えば労働側の委員あるいは公益委員、それから使用者側の委員というような構成で、ある意味では難しい尾根を右にも落ちないように、左にも落ちないようにということで調整している今の委員会のような判断の性格とは違ってくるのではないかなという感じもします。

【小早川委員長代理】命令をつくるときの合議は公益委員だけでやりますけれども。

【西谷委員】これは高橋先生に教えていただければ幸いなのですが、各国の法律を見るとみんなプライバシー権と、プライバシーという言葉が目的のところに入っているのですね。我が国のものもそこの部分をどうするかというと、さっきの提案というか、仮の姿ではどこにもプライバシー権という言葉はない。個人の権利利益の保護というような一般的な言葉で片付けている。つまり、そういうことでいくか、もう一歩切り込むかというときに、プライバシー権というのは日本語にすると片仮名でプライバシーの権利をとでも書くのか。つまり、気になっているのは、諸外国でみんな入れているのに日本だけないという辺りはどういうことになるのかという感じがあるものですから、お教えいただければと思います。

【高橋委員】プライバシー権というのはプライバシーの権利と「の」を入れて使うことの方が憲法の場では多いと思うのですが、プライバシーの権利の範囲はどこまでかということになると、現在のところばらばらで定説というのは必ずしもないのです。ですから、プライバシーの権利という言葉を入れると解釈が非常に難しくなるのではないかなという懸念を持ちまして、非常に狭くとらえて非常に古典的な意味で私事を公開されないこととか、そういう意味で使っている方もいれば、自己情報のコントロール権と同じだという意味で使っておられる方もいらっしゃいますし、その他いろいろな見解があるものですから、もちろんプライバシーの権利というのは何なのかということを定義するという勇気を持って、法律で定義してしまおうということをやるのならば別ですけれども、それは非常に困難な作業になるのではないかと思うものですから、プライバシーの権利も、それから自己情報コントロール権というのも、その言葉でどこまでを指すかという点について法文の中に入れると非常に解釈が難しくなると思います。

【藤原委員】それから、各国の法律というか、法制でプライバシー権というのがどこにでもあるというお話なのですけれども、EU指令はそうなのですが、教科書等にはそう書いてあるけれども、現に個人情報保護法だけに限りますと、例えばイギリスは前にも御説明しましたようにそもそもコモンロー法上プライバシーという概念は認めないということで、調査で聞いたときにもコミッショナーの一部の人は入れたいという意向はあったのですけれども、まだ認めるに至らないというか、別に書かなくても困らないというか、処理ができるし、プライバシーと言われているものは保護できるので書く必要はないという、かなりあいまいというか、苦しい答えでしたけれどもとにかく書いていない。
 ドイツですと今、高橋委員から言われた自己情報コントロール権的な理解なのですけれども、これまた書くか書かないかについては議論がある。教科書ではいわゆるそれを認めたものだとは書いてあるのですけれども、法文を見ると自己情報コントロール権という言葉はまだ出ていないのです。フランスは、今後多分恐らくプライバシー権ということをある意味で目玉として書くような雰囲気であると伺っています。ですから、言葉自体が法文に入っているということと、各国の議論で当然個人情報保護法というのはプライバシーを守ることを中心にするのだと言っているということは、各国の立法者は別にどうも議論しているみたいですので、一応申し上げておきます。

【西谷委員】EU指令などには、しかしライト・ツゥ・プライバシーなどというのがぼんと出てきていますね。ということは、EUの各国はそういうことへ収れんしていく。

【藤原委員】収れんかどうかはちょっと微妙なところで、EU指令には確かにあるので、今の先生と同じ質問を実はイギリスでしたのですけれども、実質的には同じ個人情報保護のレベルが保たれればいいと考えているというような考え方で、後で解釈問題になるかもしれない、要するに、外延が確実に切れるわけではない概念を使うということについては消極的な意見も相当あります。

【園部委員長】多少議論をこの問題について整理しなければいけないので、高橋委員の御意見も伺いたいと思っていますが、情報公開の場合には知る権利という言葉が問題になる。それで、個人情報の場合にはプライバシー権というものが問題になるわけですけれども、情報公開のときの議論の中で、国会で知る権利というのを法律に規定することについて議論があったときにある政府委員が、憲法制定権者でなければ最高裁判所が知る権利ということについてまだ何の判断もしていないのだから法律で先走るわけにはいかないという形で答弁をしておられたと思うのです。その辺は非常に難しい問題で、まず知る権利について言えば最高裁判所が決めると言っても、その事件に関係なしに決めるわけにはいかないわけだから、それはいつまで待てば知る権利が最高裁によって判断されるかという問題があって、それは正確な意味では抗弁にならないのですけれども、一応そういうことで知る権利を規定することについてはそこまでそういう議論は及ばなかったということがあると思います。
 問題は、例えば知る権利でも憲法上の権利としてもし考えた場合、官民はわかりますけれども、民民に直接適用されるのか、間接適用されるのかという問題が必ず出てくるでしょう。同じことはプライバシーの原理でもそうで、憲法上そういう権利を考えたとしても、官と民の間であればそれは当然だという議論で、これは民民の間の問題としてとらえる場合には憲法上の問題としてはなかなか議論が分かれるところでもあるわけですが、今、問題になっている人格権としてプライバシー権をとらえるということになると、これは全く民法上の問題として議論されているという形になります。そこが行政機関がどこまで介入できるかという問題と、裁判所でやれるかどうかという問題にも関わってくるので、そういう権利の性質といいますか、権利を仮に設定してもそれの実現の手段、機関、そういうものはどのようにしてとらえていくのかということがある程度整理されていないと、条文の上にどこまで表すかは別として、それがまた制度全体の設計の上にどういう影響を及ぼすか、そういう観点からも、ひとつ御議論いただきたいと思っております。

【高橋委員】情報公開の場合は、知る権利という言葉を入れるか入れないかというのは非常に大きな対立になったのですけれども、これは基本法学説との関連で言えば学説上は知る権利というのは抽象的権利としては認められているが、しかし具体的な権利はないのだ。だから、法律の中で書くか書かないかが具体的権利になるかどうかという問題だったわけです。それで、その知る権利という言葉を書くと、解釈に当たっても知る権利を認めたのだからということで、公開の方向に非常に解釈しやすいということがあったわけですけれども、個人情報の方は例えばプライバシー権というのは狭い伝統的な意味では憲法上、具体的な権利として認められているというのが通説と言っていいのだろうと思います。
 しかし、それをでは法律の中に書くとどういうことになるかというと、かえって従来の狭いプライバシー権よりも広い範囲の何かを保護しようとしているのに、プライバシーの保護のためにつくったと言ってしまうと狭まってしまうのではないかという懸念が出てくると思います。したがって、プライバシー権という言葉を入れるとすればそうならないような工夫をしなければいけない。プライバシー権が一つの目的だとか、そういうような形で書くことになるのかですけれども、私自身はむしろそういう言葉を使わない方がいいのではないかという感じがします。
 入れるのならば自己情報コントロール権という方なのですけれども、こちらの方はしかし、入れると今度は範囲がはっきりしない。自己情報コントロール権とは何ぞやということは学説上コンセンサスがあるわけではありませんから、確かにこういう言葉があると今度は個人情報の保護の方向で解釈するときには都合がいいということは言えますけれども、かえってその言葉の中に何でも放り込んでやっていくということになって解釈の対立を生む。それを避けるためには、個人情報コントロール権とは何ぞやということを定義しなければいかぬのではないかということになってくる。それをやるぐらいだったら、そんな言葉は使わないで個々の条文からどこまでが保護されるかということがわかるようにしておいた方がいいし、それで十分ではないかと私自身は思っています。
 もう少し言いますと、仮に憲法の問題が背後にあるのだということを法文上、何らかの形で示したいということであれば、個人の尊厳というのを目的規定か何かで使う。情報公開が国民主権という言葉を使ったように個人の尊厳、例えばコンピュータが発展した現代社会においては個人の尊厳を保障していくために個人情報の保護が必須な課題になっているとか、そのような趣旨で個人の尊厳という言葉を使うと、憲法を意識しているのだなということが表現できるかもしれないという気がいたしますけれども、しかし個人の尊厳をそこに持ってくるのは唐突というか、大風呂敷のような感じもしまして悩ましいところだという気がいたします。

【藤原委員】今の目的規定の書き方ということと密接に関係するのだと思うのですけれども、今の高橋委員の御見解に全面的に賛成します。
 もちろん前半の情報公開法に知る権利を書くと解釈が云々という議論は、私もいろいろなところで書きましたが必ずしも連動していない、裁判官の方々の解釈態度にも非常に左右されますし、あるいは目的規定を条文に置くことの意味があるのかに関する論文も塩野先生は書いておられますので若干異存はあるのですが、個人情報保護の観点からは全面的に賛成です。特に、かえってプライバシー保護と言ってしまうとこの法律で本来守られるべきものが守られなくなったり、よけいな議論が出ると、個々の実態の中身の規定で守るべきを守っていけばいいという点は本当にそのとおりだと思います。そして、前回申し上げたのですけれども、自己情報コントロール権ということはまだそれぞれ論者によって若干理解が違うというよりは射程距離が恐らく違うのだろうということで、やはり問題があるのだと思います。
 それから、大風呂敷と高橋委員は言われたのですけれども、もし目的規定に何か憲法とのつながりをつけるのならば、13条の辺りしかないのではないかという気は私もするのです。以上です。

【新美委員】今の藤原委員と同じなのですが、民法上の議論で例えば人格権というようなものを持ち出すときには通常、解釈論としては13条辺りを必ず根拠に引っ張り出していますので、もしも書くとしたら個人の尊厳というものを入れておく方が後々、個人の請求権ですね。民法上の請求権として構成するときなどもやりやすいだろうと思います。特に人格権に基づくさまざまな差止めとか訂正請求などをやろうというときには、それが物権みたいなものですよという更に根拠になるものになると思います。

【小早川委員長代理】今の一連の議論なのですが、ずっと前に発言したことがあるのですが、憲法13条と民法の人格権とは一対一で対応する議論だろうかというのがひとつありまして、これは是非両方の専門家に教えていただきたいと思います。それで、我々の問題で言えば、従来から財産権的側面と言われているような問題がどういう位置づけになるのか。私も憲法13条を引用して目的規定を書くというのは一つの案で、それがいいのかなという気がかなりしているのですが、その場合に13条で全部がカバーできるのかどうかという、その辺ですね。

【新美委員】先ほどの話で、13条と人格権とがじかに対応するかと言われると、クッション、ツークッションあるだろうと思います。ただ、人格権という私権を用意することが、実は13条の個人の尊厳というものを増進するのに資するのだ、あるいはそのための手段的な性格だということは常に言われるわけで、13条をにらみながら私法上の権利を展開しているということは間違いのないことです。
 それからもう一点は、財産権的な側面があるから人格権とか個人の尊厳だけでいけるかということなのですが、今いろいろなところで議論が出ているのですけれども、人格権と財産権というのは連続線上のものにあるのではないかという議論が私法上も言われております。特に、例えばパブリシティの権利だとか、名誉毀損の更に先のような一般人格権を金に変えるというような側面も人格権の一特殊形態だと言われるようになっていますので、余り二分されたと考えなくてもいけるのかなという気がします。

【小早川委員長代理】著作者人格権などというのもそういう連続性の中に出てくるものですね。

【上谷委員】ちょっと別の観点からよろしいでしょうか。皆さん方の御議論とは別の観点になるかもしれませんけれども、私も例えばこの基本法の中で使うとすれば個人の尊厳という言葉を使っていくのが一番妥当なところかなという気がします。
 私の場合は実は裁判官的発想なのかもしれませんが。法学上は、例えば知る権利という議論がされたり、あるいはプライバシーの権利というようなことがいろいろ使われておりますけれども、結局それによって表される内容もそうですし、それから外延がどこまでかというのも、どうしても研究者の皆さん方でそれぞれずれてきますので、裁判所がそれではその権利を定義して使うかというと、それもまたやりにくいのですね。ですから、例えば知る権利という言葉を使う、あるいはまた人格権という言葉を使っても、それが人格権だと表現することが通説やいろいろな説から考えてもまず問題のないときにはそれを使うわけですけれども、考え方によってずれがある場合には余りそれは使えません。といいますのは、裁判所は目の前に出てきた個別具体的な事件で損害賠償請求権を認めるか、差止めを認めるかという形で判断するわけで、それは最高裁の場合であっても基本的には同じだと思います。私はそう思っています。それがたとえ大法廷の判決であっても、それは極端に言えばあくまでも個別事案に対する判断なのであって、そこで権利の範囲が、例えばそこで人格権と使い、あるいは仮に知る権利という言葉を使ったとしても、それで知る権利の範囲がここまでなのだという定義をするわけではありません。先ほどからそれぞれの委員、特に研究者の委員の皆さんがおっしゃっていますとおり、そういう言葉は少なくとも裁判所でこんなものだということを定義された権利でもありませんね。そういう意味から言いましても、ほかの法律に使っていない、あるいは憲法に使っていない用語をそう安易には使えないのではないかなという意味から私は申し上げたのです。
 つまり、先ほど少し委員長からもお話がございましたけれども、裁判所の方でそのようなものを決めてくれと言っても、そういうものを決めるのは裁判所の仕事ではないよということにも恐らくなりそうに思います。

【園部委員長】この自己情報コントロール権というのは、日本語に翻訳すると何と言うのですか。

【高橋委員】翻訳したのがそういう言葉です。自己情報コントロール権と使われています。

【園部委員長】それは権利の性質としては何なのですか。私法上の権利なのですか、何の権利なのですか。

【高橋委員】憲法上の権利でプライバシーの権利と言われてきたものを現代的にとらえ直すとそのようにとらえることができるのではないかと。

【園部委員長】そこから具体的な紛争になった場合には、それに基づいてあらゆる争いができるわけですか。

【高橋委員】そうではなくて2つの種類があって、1つは伝統的なプライバシー、具体的な権利として直接請求できるもの、もう一つは相手方に積極的な行為を要求する、例えば訂正請求とか国家開示請求みたいなものですね。それは抽象的な権利であるから、法律がないと具体的な権利にはならないという説明をされています。

【園部委員長】そうすると、そういう言葉を使わなくても具体的に一つひとつこの開示請求権とか、中止請求権とか、何とか差止めとか、法律の上ではいろいろな言葉で表していくわけですね。

【高橋委員】それを解釈論をやるときに、法律はコントロール権を認めたと説明することは可能だと思います。

【園部委員長】それでは、いろいろな請求権を最初に並べられたのですが、こういうものあり得るではないか、こういうものもあるではないかと、請求権の形でいくか、それとも行為規範でいくか、義務の形でいくかということですが、それは義務の形でいくものと権利の形でいくものを別々にずっとまず並べていくわけですね。収集保有主体はこのようにしなければならない、これに対して情報主体はこういう権利があるという具合に、個別条文の上で表していくわけですか。

【西谷委員】多分そんな大げさなことにはならなくて、5原則ですから5か条と見ましょう。例えば収集制限に関するもの、利用に関するもの、適正管理に関するもの、参加公開に関するもの、救済規定と、それぞれの中に原則があって同時に例外があってただしと書かれるのですが、その中に特に第4原則である開示公開というところについて言えば、情報主体は開示を請求することができる。保有主体に対してということを書いてしまう。それはつまり制限の原則そのものであるから、そこへ書いてしまえばいいのだと思うのです。そして、目的利用のところも、これはペンディングなのですが、中止を求めることができると書けばそれが一つですね。
 ほかのところはみんな、しっかり目的を示して収集しなければならぬとか、管理者を置いて管理しなければならないとか、そういうことが書かれていますから、情報主体が「求めることができる」という条文はそれらのところには入ってこない。こういうことなので、それは主体別に2つに分けてしまう形もあり得るでしょうが、でも請求が極めて限られてしまってたった3つ、極端に言えばですね。ですから、当該原則の中へぽこっと入れてしまったらどうかというイメージです。

【園部委員長】やはり5原則が基本ですね。そうしますと、いろいろな議論をまたこれからも繰り返していただきたいと思いますが、一通り今日の資料1に表れている事柄の中で保有主体、対象情報、ここへもう少し入っていかなければいけませんが、個人情報、個人情報ファイル、私は前半お聞きしていないのでわかりませんが、この部分にもかなり入りましたか。公的部門、民間部門、この辺りでもし問題点があれば出しておいていただきたいと思います。まず対象情報に関連して何かございますか。

【藤原委員】今これまでに取り上げなかったという意味で委員長はおっしゃられたと思うのですが、対象情報のところでセンシティブデータの話はまだしていないと思うのですけれども。

【園部委員長】センシティブはやっていませんね。もしそれに入れればいいと思いますが、多少触れていただいて結構です。

【藤原委員】その場合、センシティブデータというものをどう考えるかということにもなると思います。つまり、1つはEU指令に書いてあるようなものが我が国でもセンシティブデータであるのかという問題もまずあると思うのです。コンセンサスが果たして得られるのだろうかという問題もありますし、2番目にああいうものを例示列挙だということにすれば、我が国的な例示を幾つか挙げられるのかという問題もあります。
 それから、もう一つはセンシティブデータというのが何かのコンセンサスが得られるとすると、確かに義務を課すときとか、あるいは権利性になるのかもしれませんけれども、これは特に問題のあるデータなのだからとか、あるいはこういうデータを扱う分野は特別法なりできちんとやらなければいけないのだとかという道具概念として使える、あるいは使う余地があるのかどうか。そういうことが問題になるのだと思うのですけれども、まず最初はセンシティブデータというのがどのぐらい使えるものかどうかという話になると思います。といいますのは、我が国の地方公共団体の条例などの運用を見ていますと、あれはOECDの8原則からきていますので同じようなことが書いてあるのですけれども、実際に出てきているのはあの中の一部であったり、地域性の問題があったりして、必ずしもあのとおりは出てきていないのではないかということが言えると思います。

【高橋委員】センシティブデータについては、例えばセンシティブデータは収集してはいけないという原則を立てても、恐らく「ただし」と書かざるを得ないのではないかという気がするのです。場合によって必要なことがあるというのはヒアリングのときにも出てきました。それで、センシティブデータというのはそれを目的に必要な限りで集めて、それ以外に使えば目的外利用になりますから、目的外利用をしちゃいけないということをきちんとやれば、特にセンシティブデータは書かなくてもカバーはできているのだろうと思います。
 しかし、センシティブデータを集めるのはいけないのだという原則で書くのというのはやはりそれなりの意味があるのではないかと私自身は思っています。特に日本の場合はパブリックの問題などがありますから、そういうことについてまさにセンシティブにならなければいけないという宣言的意味ですね。そういう観点から、可能ならばそういった条文をつくった方がいいのではないかと私自身は思っております。

【小早川委員長代理】私も結論から言えばやはりセンシティブデータだということで特別扱いをすることは必要なのではないか。技術的に言えば、今日の事務局からのペーパーでもファイルの規模で仕切りをするという発想、それはどういう数値になるのかはともかくとして、そういうこともあります。だけど、大きなファイルについて適用されるべき管理原則なり何なりというのはあるけれども、それと別に収集、保有すること自体がそういう足切りとは無関係に禁止、制限されるべきもの、そういうものがやはりあっていいのではないかと思います。

【新美委員】私も、センシティブデータはやはり原則収集禁止をしておいた方がいいと思います。高橋先生がおっしゃったように、確かに目的外利用のところに縛るということもありますけれども、そこが本当にうまく書き分けられるかどうか。センシティブデータだけの目的の縛りとか、それがいけるかどうかというのは非常に難しいと思いますので、例外的な場面があるということを集める側が立証しなければ集められないという形での入り口での縛りは必要なのではないかと思います。

【園部委員長】具体的にセンシティブ情報はどういうものを挙げるのですか。いろいろ挙げられてはいますけれども、条文としては何を挙げるのが適当ですか。

【小早川委員長代理】OECDによれば人種、民族、政治的見解、宗教的、思想的信条、労働組合加入、健康、性生活に関するデータとあるわけです。これが出発点になるかなと。

【新美委員】やはり内心的なものが中心ですね。それから、差別を受けるためのインデックスになったようなものですね。

【高橋委員】地方条例で差別をもたらす危険が大きいような場合とか、そんなような……。

【新美委員】そうですね。一般的な書きぶりをしていますね。

【上谷委員】ある程度一般条項で決めないと難しいかもしれませんね。例えば、この間からの都知事の第三国人云々という発言、それが差別につながるのだという、ああいう議論は恐らく日本独特の議論のはずですし、それから先ほど高橋委員が挙げられた部落差別の問題があるものだから、例えば出身地、本籍というのが非常に厳しく仕事を規制されている。そういうものは恐らくEU諸国の規定には入っていないでしょうから、その他差別につながるような情報という形にならざるを得ないでしょう。

【園部委員長】幾つか例を挙げるときに何を挙げるかということが、殊に日本の個人情報保護法で何を挙げるのが適当であるか。また、挙げなければいけないかどうかということが問題です。今おっしゃったような幾つかの事例はまさに日本独特の事例ですけれども、そういうのをきちんとどこまで書くかという問題ですね。書かないと、またどうして書かないのかということになりますし、その辺は難しいですね。

【新美委員】関西地区と違ってほかの地区では、どこの住所かというのはむしろ集めてほしい、集めても構わないというところもありますから、基本法でどこまで書き切れるかという問題はあると思います。

【園部委員長】宗教的な問題も一つありますし、これもまたなかなかセンシティブな問題です。

【上谷委員】私はよくわかりませんけれども、EU指令などのここにいただいた例から見ますと、例えば人種というのは入っていますが、国籍というのは欧米では余り問題にしないですね。

【園部委員長】国籍はいいのですか。

【新美委員】国籍で差別があるというのは余り聞かないですね。

【上谷委員】人種というのは国籍のことではないのでしょう。人種、民族とあるので。

【小早川委員長代理】そこは例外の定め方をあらかじめ視野に入れてセンシティブ情報かどうかも決めるということですね。国籍というのは雇用関係などでは当然必要なわけで、それを例外として、しかしそれ自体がセンシティブ情報だと位置づけるのか。それとも、それは雇用関係でなくても一般の個人情報保護のシステムで足りると考えるか。国籍などは後者の方に入りますが、先ほどの出身地などというのは、例えば、不当な差別をもたらすおそれのある情報とかということになるのかと思うのですが、それもこの条文に何か直接の法律効果を結び付けるかどうかによって、そのくらいの書き方でいいのか、悪いのかということになりますね。恐らく直接何か法律効果を書くということにはならないのではないか。前からお話がありますように、これは不法行為法の議論の上で大きな意味を持つことになるという程度でいいのかなと思います。

【園部委員長】先ほど大阪の話が出ましたが、大阪府の個人情報保護条例でセンシティブ情報については思想、信仰、信条その他の心身に関する、心身というのは心と身体と両方挙げていますが、心身に関する基本的な個人情報が1つ。もう一つは、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報という形で表しておりますけれども、かなりいろいろなものがカバーできるのではないかという感じはします。先ほどの組合のものはEU指令ですか。あれは日本ではどうなのですか。そういうものは必要ないのですか。そういうことはやはりあちらでは特に問題視されることになったのですか。

【小早川委員長代理】日本でもやはり問題だと思いますけれども。

【園部委員長】だけど、それはこういうものでカバーできますか。

【小早川委員長代理】少数組合の問題もありますので。

【園部委員長】かなり具体的なあれになるものだから、そういう形のものを出していくかどうかということも、少し組合ということでですね。

【新美委員】先ほどおっしゃられた社会的差別とか、そういう形でくくれたらくくっておいた方が基本法としては適切ではないかと思います。

【小早川委員長代理】ただ、いろいろなファクターがありますね。学校の成績がそれに当たるかとか、家の資産状況をどうするかとかですね。

【上谷委員】だから、労働組合の組合員であったかどうかということが、例えば新規に人を採用しようという企業によっては不当な差別に使う可能性はあるわけですね。

【藤原委員】今のお話で、例えば労働組合の場合は多分労働省がつくる指針というような形で、個別法があってガイドラインがあってそこで出てくると思います。たしか今、上谷委員がおっしゃったような形でそれは気をつけなさいというような条文が多分労働省の指針では入るのだと思います。
 それから、私も大阪府のような一般条項的なものをもし書くとしたら書いておかないと、例外のところがかえって難しくなるかと思います。つまり、地方自治体などでは、例えば宗教的なものは非常に微妙ですけれども、これは実際にあった例ですが、特養でありますとか、いろいろな施設に入っていただくときに、宗教が余り違ったり、あるいは病状もそうですし、あるいは亡くなった後のことまで考えると、ある程度は全くそういう情報へのアクセスがだめだと言われては自治体なども困るというようなこともあって、自治体の場合はそういうときには審議会等がありますので、そこを関与させてそこが承認してから例外扱いにできるのだというような形で、一律禁止だけれども審議会のOKがあるからいいのだというような形でいくのですけれども、基本法の場合はなかなかそういうこともできないと思いますので、やはり一般条項的な書き方になるかなという気がします。

【小川副室長】センシティブ情報についての御議論を今されているわけですけれども、中間報告を作成する時の事情を、堀部先生が今日はいらっしゃらないので申し上げますと、端的に言いまして範囲が確定できないということで、知らなかったわけではないのですけれども実は中間報告では素通りしております。また、何か書くとすると、法律効果をどうするかという話が出てきて、そこはかなり難しいだろう。法律効果が出ない条文であれば、そこはトートロジーなのですけれども、戻って、書くこと自体が難しいと考えたところです。それで堀部先生と相談をしまして、まだ全体が非常に柔らかい状態のときにあえてそこに踏み込むことはないだろうということで、中間報告は実はあえてそこを触れずに取りまとめたという事情でございます。

【園部委員長】それは専門委員会に任せるという趣旨ではあるわけですか。

【小川副室長】もちろんそれはそうですけれども、専門委員会に検討してくださいと書くことすらジャンプしたということです。解があればいいのですけれども、結局これは私の個人的な意見が若干混じってしまうのですが、書いた以上、例えば法律効果がない条文ですよと言っても社会的要請があれば、いややはり法律効果を持たせろという議論は当然出てくるわけです。それが書けないということになると法律自身が倒れてしまうのではないか。制度の仕組みとして、そういうことまで少し心配をした経緯がございます

【園部委員長】それ自体がセンシティブな問題なものですから、ひとつ十分に検討させていただきたいと思います。

【上谷委員】別の問題でよろしいでしょうか。先ほどごく概括的に私は申し上げましたけれども、具体的な問題点、保有主体と対象情報について若干意見を申し上げます。1つは先ほどもちょっと申し上げたのですが、個人情報ファイルについて基本原則的なものはなるべく広目に対象としてとらえるべきだと思いますけれども、例えば先ほどもちょっと例に挙げましたが、統括責任者を別途置くとかという規定であるとか、あるいはその他のコンピュータ処理で多数の情報を処理しているものに課せられる義務の範囲と、それからマニュアル処理をやっているごく小規模なものとでは、民間の場合が中心になると思いますが、やはり日常の個人情報の取扱いについて課せられる義務の範囲は違いが出てこざるを得ない。そういう意味で、これをどのように定義するか、どのぐらいの規模かということはもう少し具体的に検討していただくとして、一定の規模を超え、一定の処理方法をやっているものに対する特別規定といいますか、そういう定め方は必要だと思います。どこかで区切らないと、あらゆるものに全部同じような義務を課するとか、処理体制をつくらせるというのは無理だと思いますので、そういうような立て方は考えておく必要があるのではないかという気がします。
 ですから、私が先ほど申しましたのは、結局比較的広くとらえておいて権利性もわかるように書いておけというのは、これはいわゆる基本原則の部分で書いておくべきことだということで申し上げたので、その後もう少し細かい一般的な処理方法についての条文等が並んでくるところは、一定規模以上の情報を取り扱っているものに対する特別の規定とならざるを得ないのではないかと、私の頭ではそのような整理です。

【小早川委員長代理】保有主体なり対象情報なりの範囲をどうとるかというような問題で、私もまだはっきりわからないのですが、やはり管理なり何なりにそれなりの負担を課するということですので、事業者も個人も含めてたまたま個人情報を持ってしまうという人はたくさんいるわけで、具体的に考えてどうなるかは別ですけれども、抽象的に考えたときに、そういう人に一々かなりの負担を課するというのは結局ざる法になってしまう気もします。どうやって絞るかですけれども、その絞り方の観点がどうなのでしょうか。
 1つは、個人情報なるものを大量に集めて、それで金もうけしている人は当然負担を負ってしかるべきだとなるでしょうし、金もうけでなくて公益的な団体であっても、まさに個人情報を集めてそれを使って何かやるということに自分の存在意義がある、具体例としてどうかわかりませんが、がん予防協会とか、そのようなところがあるいはそうなのかもしれません、そういうようなこともある。ただそうなってくると業務の目的なり種類なりに応じて線引きするというのもこれまた大変なので、結局は何か割り切らざるを得ないのかなと思いますが、そうすると事業の規模、ファイルの大きさということになってしまうのか。それ以外に何かもう少し理屈の通る切り方がないのかなという気がします。単にそのファイルの大きさというだけで、今の国のものだと1,000 人ということだそうですけれども、そういう切り方でいいのか、まだちょっとよくわからないです。

【新美委員】恐らく私は今後、今もそうですけれども、こういったコンピュータが発達しますと事業規模は小さくても極めて大量の個人情報を扱えるようになってきていると思いますので、事業規模で切るというのはむしろ逃げ水現象といいますか、どんどんアウトソーシングをして個人のところに流していってしまうという可能性がありますので、やるとしたらファイルだけの方がいいのではないかと思います。それこそ昔のスーパーコンピュータ並みのものを個人で持てるようになっていますので、その辺は注意しなければいけないのではないかと私は個人的には思います。

【園部委員長】具体的にファイルの規模などはどうやって調べるのですか。調べるというか、申告というのか、そんなことはできるのですか。事業規模だと大体会社を見ればできますが、ファイルの規模というのはなかなか難しいと思います。

【新美委員】法の執行の観点からいくと難しいですね。ファイルは表に出てきませんので。

【小早川委員長代理】行政改革のスローガンではありませんけれども、事前規制は難しいけれども事後監視、紛争解決、紛争が起きたときに、あなたはそんなものをこっそりつくっていたのか、ということになる、そういう意味はあると思います。

【園部委員長】この問題はまた繰り返しますが、いよいよ起草グループが来月活動されるそうですけれども、中間公表案の素材を検討していく際にやはり基本的な枠組み、これだけはこの委員会で決めておかないといけないのですが、大体どのような枠組みになると理解されておられるのか、御意見をいただければと思います。

【藤原委員】基本的な枠組みということで言えば、先ほど西谷委員がいろいろ具体的なイメージをおっしゃってくださったのですけれども、それとの関係で言いますと、やはり最初になぜこの法律が必要かというお話がきた後にですけれども、2番目に今日のメモで言えば2.の基本的事項と関係するのでしょうが、官民ですね。公的部門、民間部門に通ずる理念とそうでないものといいますか、別途特別な考慮が要るものという仕分けというか、どういうものを書くのだということがまず最初に要るのだろうなと思います。
 それから、その次に先ほど西谷委員は章立てが別になるかもしれないとおっしゃったのですけれども、別になるかという問題意識は、逆に言えば通ずる手段とか理念が違うというか、今までの議論ですと民民はどちらかというと自主的な解決でありますとか、紛争に行政の支援という形に重きを置きながら今、小早川委員からも御意見のあった事後的な規制も含めてできるだけ当事者に任せる、しかし、その透明性等を図るということが議論になったと思うのです。それと公的部門が一緒か、あるいは公的部門が別であれば、それはまた別のこととして考えなければいけないという、ここぐらいまでは多分そうなるのだろうなという気はするのですけれども。

【園部委員長】公的部門の規定の部分と、現在あるいわゆる個人情報保護法の政府の法律とはどういう関係にあるかは明らかにするのですか。

【藤原委員】明らかにするのか、前に議論が出たように、この基本法でスキームができて、もし公的部門はこういうスキームでいくということを書くのであれば、当然のことながら最初に出てきた特別法というか、個別法の一環としてそちらへの修正ということになるでしょうし、そうではなくて現在の政府部門の個人情報はそのまま残るけれども、それとは別にかなりこちらで詳細に書くのかということで、多分前者になるのではないかと思いますけれども。

【園部委員長】そこをうまく両方調整するということですね。

【藤原委員】それは必要なのではないかと思いますけれども、どちらかというと主眼としては民民の関係をある程度詳細に、公的部門は今まであったものをどういう方向に持っていくべきか、あるいはどこが違うのだということをはっきりさせるというような趣旨の議論が多かったように個人的には記憶しております。

【小早川委員長代理】そこは公民の取扱いを違えるということの理解と、それからそれを条文にどう落とすかというところと両方問題はあると思うのです。取扱いをどう違えるかという実態問題については今日のペーパーで言うと例のレベルの高い規律ということが何を意味するのかということになるわけです。それを、規律の中身を書かないでレベルの違いだけを法律の条文で表現できるかということもかなり難しそうな気がするわけなので、そこをどうするかということがちょっと悩ましい問題だと思います。
 それはそれとして、公の部分については当然内容的には行政機関についてはやらざるを得ないし、特殊法人等々についても何らかの施策を求めるということになるのでしょうし、それから自治体についてもそういう意味で規定を置くということになるのだろうと思います。それで、その意味では後の部分は民の方に軸足を置いた規定の仕方になるのではないかと思います。

【園部委員長】それで、5原則8原則はどこに書くのですか。

【小早川委員長代理】精査してみて、公民全体にかかるものというのは、全体にかかる何かはあるはずで、それがなければ共通の基本法をつくる意味がないわけです。そのレベルのものがまずあって、それから公と民の基本原則、理念で違うものがあるのかもしれません。先ほどの収集における同意の問題とか、あとは管理組織とか、これは公の方はむしろ個別法に任せるもので、民の方の最低限の要求はこれだということをここにじかに書くことになるのかなということです。

【園部委員長】そうすると、全体のスペースから言うと、民に対するものがかなり広いわけですか。

【小早川委員長代理】ぱっと見たときにそうですね。

【園部委員長】そうだと、これは民間規制法であるという印象が非常に強くなりますね。

【新美委員】あるいは、ドイツみたいに各原則に公と民と両方書き分けていくというスタイルもあります。そうすれば、これは民の規制だと言われずに両方にまたがる上のものだということになります。

【上谷委員】例えば、収集の原則というところで両方書くとかですね。

【新美委員】ドイツですと公的機関に13条で書いてあって、非公的機関については28条で書いてあると、そういう書きぶりになっております。どの場所にどう置くかというのはスタイルの問題で議論の必要はあるでしょうけれども、やはり両方入れておいた方がいいのかなという気がします。

【上谷委員】私はむしろ総則的な部分は官と民と両方適用される原則ということで、収集の原則からいわゆる5原則ないしは8原則的なものを、もちろん例外を伴いながら書いて、そしてその次に現在の個人情報保護法のような公の分については別に法律でこれを定めるという形にして、もし書くのならばそこのところに地方公共団体も含めてそのようなところの情報の収集のこういう特殊性にかんがみてこういう点に配慮しなければならないとか、こういうものでなければならないということで、具体的には別途定めるというような形にして、その後はもう民間の方に移っていくと、こんなイメージかなと思っていたのですが、やはり別々に書いた方がいいですか。

【藤原委員】今のは恐らく両方あり得ると思います。特に今、上谷委員が言われたのはどちらかというとより現代的というか、EU指令に近いタイプだと思います。というのは、EU指令はそもそも公私の区分をしないというところで原則が始まって総則を書いている。ただ、それで逆に新美委員の御紹介になったドイツは困っているというところがある。というのは、法体系というか、実務そのものがやはり官民というのは違うのだということでやっている実態がありますので、それをどのくらい見るかということだと思います。この委員会で検討している部分については、官は既に存在して民がないというそのプラスアルファーの要素で両方ともあり得るのかなと思いますが。

【新美委員】もう一つ、EU指令の場合には官民にはなかなか口が挟めないという特色があるのです。やはりそれぞれの加盟国の主権がありますので、余り入れない。民民だったら市場の近似化といいますか、できるだけ均質にしようということがありますから詳しく書ける。そういう権限といいますか、そういう政治的な仕組みもあることを忘れてはいけないと思います。

【園部委員長】アメリカ方式の自主規制中心というやり方もあるわけですから、その辺もにらみながら、また日本の基本法というのはどうあるべきかということを少し考えていかなければいかぬかなと思います。やはり基本法ですからすべてをカバーするという視点はどうしても忘れてはいけないので、国民もそういうことでなければ納得しないのではないかと思うのです。もちろんちゃんと政府の方はできていると言っても、しかしこれは基本法をつくる委員会なのだということで、そこは多少ダブっても何か後追いみたいになるけれども、やはり公的部門についてのきちんとした基本はこうなのだということを宣言して原則を立てて、そして既にできているものについてはある部分は修正を求めるような形で個別法に委任していく。それから、各省庁その他の関係についても個別法に委任していくべきものがあれば、それは委任していかなければいけない。委任という形をとるわけではないのですが、要するにそれは個別法の問題であると。
 それから、民民の問題についても、そういう基本法の精神に従って民民もやっていただきたいという趣旨のことを書く程度かなと。ここで余りいろいろ規制的な手段だの何だのというのは中身によってもそれぞれ違いますし、対象によっても違うわけですから、そこまでカバーするようなことはできないのですが、ただおっしゃるような組織をどうするか、管理組織をどうするかという問題は一応どうしても考えなければいけませんが、それをどこまでつくるかによってこの基本法の性格も変わってくる。それもみんな自主規制ないしは個別法に譲るという方向へ持っていくのか。救済的な規定の部分は何と言っても大事な問題ですから、それはここで一応基本をつくっておくということになるのか。その辺はひとつ、私自身はそういう形はどうかなと思っています。何かいいアイデアがありましたらなおまた次にも次にも何度も時間がございますので御検討いただきたいと思いますが、今日はちょうど時間になりまして、この辺で一応今日の審議は終わらせていただきたいと思います。

【小早川委員長代理】ペーパーに触れてありますけれども、4枚目の特定の類型の事業者について頭から除外するのか、それとも個々の義務の内容に応じて対象外とするのかということがあって、この辺はいろいろな団体が大変関心を持っていまして。

【園部委員長】適用除外のことは全然議論していないのですが、それは当然です。

【小早川委員長代理】私自身は、ここで言う相対的適用除外で基本的にはいいのかなと思っているのですが、何かほかの方も御意見があればと思います。

【園部委員長】適用除外について何か今のうちにおっしゃっておきたいことがあればどうぞ。

【上谷委員】では結論だけ、私も今の小早川委員と同じ意見です。

【高橋委員】私も結論的には同じなのですけれども、ここのところで書かれている憲法上保障されている範囲内であれば云々というのは恐らく報道機関などを頭に置いておられるのかなという気がするのですが、民間の通常の事業者も経済的自由というのを認められているわけで、この書き方だと区別がなくなってしまうような気がするので、ちょっと工夫が必要かなという気がします。

【西谷委員】私は事務局にもお願いなのですが、諸外国の法律、法令で適用除外関係がすごい複雑なのです。ばっさり除いているものはないということは大体確認できるのですが、第何章及び第何章の規定は適用しないとか、物によってすごくごちゃごちゃしているのです。あれをうまく何かわかりやすく、一々それは照らし合わせればできるのだけれども、ドイツ法はまたあれだし、EUはEUで章単位でぽんぽんとやっている。だから、かぶるものは何で何が抜けるのかという整理をしていただきたいと思います。
 それから、今の行政機関情報保護法では統計情報については一切適用除外ですね。要するに、この法律の規定は統計情報についてはこれを適用しないと、ばさっとまるっきり別の世界に持っていってしまっている。ああいうやり方だってもちろんあるわけです。ある種のものについては、およそこの法律の規定は適用しないというやり方があって、統計などはそうなってしまっている辺りがどういう意味なのかが……。

【藤井室長】統計法については行政機関の個人情報保護法と同等以上の規制がなされる。それで、同時に統計法等の修正はやっております。そういうことで、それともう一つは特有な使われ方をしてそれぞれ完結的に行っているということで除いているということでございまして、適用除外する場合にも2通りあると思うのです。1つはその法律を上回るような規制をやっているからいいよという場合と、あるいは事情があって同じような規制をかぶせられないから除くという場合もあると思うのですが、統計法の場合はどちらかというと前者の方かと思いまして、同等以上のものがあるからということだと思います。

【園部委員長】同等以上のものにかぶらせないと基本法ではなくなるのですか。どういうことなのですか。同等以上のものは当然に除かれるという姿勢なのですか。基本法の場合はちょっと違うのですか。

【藤井室長】基本法の場合は、むしろ特別の事情があってより厳しい規律が要る場合はそちらでやってくださいというような言い方になろうかと思います。
 それともう一つは今、話題になっていたような、そもそも基本法でかけるような規制すらかけるのは適当でないというような特殊性がある場合はまた別途対象外にするということもあるかと思いますけれども、両方あり得ると思います。むしろ特別の事情があって規律をやる場合はそちらを優先適用するというような物の考え方になると思います。ダブる場合は一般法と特別法の関係と理解して、ただ最近法制局などはそういう場合であっても適用関係を明確にするという意味で、法律上はっきりと適用除外だと明示する場合が多いことは事実です。

【園部委員長】わかりました。よろしゅうございますか。
 それでは、以上をもちまして本日の会合は終了させていただきます。次回の会合は5月12日金曜日の午後2時から5時まで、5階のこの特別会議室で開催いたします。次回は、個別法条例との関係、その他残りの項目、今後の進め方について御議論いただくことといたします。本日はどうもありがとうございました。