資料4
| 平成12年6月23日 厚 生 省 |
1 厚生省においては、高度情報通信社会推進本部決定「我が国における個人情報保護システムの確立について」(平成11年12月3日)において、「個人情報が大量に収集、利用され、当該個人情報の内容についても機密性が高く、かつ、漏洩の場合の被害の大きい分野」として例示された医療情報分野を中心に、利活用の必要性にも配慮した個人情報保護システムの在り方について検討を行っている。
2 現在、個人情報保護法制化専門委員会の大綱案(中間整理)に、「事業者が遵守すべき事項」として整理された11項目に沿って、より厳格な保護措置を講ずる必要のあるものや、逆に示された規律どおりの形では適用できないもの等の問題点について、洗い出しを行っている。
3 これら問題点の洗い出しとそれぞれの問題点に対する対応の検討を、個人情報保護法制化専門委員会における大綱の最終取りまとめの検討と並行して進め、医療情報に関する保護に必要な措置について、取りまとめる予定である。
4 この他、福祉、介護分野などについても、同様の観点から検討を行っているところである。
5 検討のポイント
(1)医療情報が発生する医療機関、健康診査等における情報保護措置
・医師等の医療関係者においては、資格法等に罰則付きの守秘義務規定が定められ、厳格な情報保護措置が取られている。
【参考】
○刑法
(秘密漏示)
第134条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産婦、弁護士、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
・守秘義務規定の及ばない医療機関の事務職員や検査等の外部委託機関における情報保護措置のあり方について検討。
(2)医療情報が医療機関等以外の第三者の利活用のために提供されるルールの整理
・診療報酬の請求、要介護認定におけるかかりつけ医の意見書、感染症発生時の行政機関への報告、児童虐待発見時の通告等、法律に位置づけられたルールが存在する。
【参考】
○感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
(医師の届出)
第12条 医師は、次に掲げる者を診断したときは、厚生省令で定める場合を除き、第一号に掲げる者については直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生省令で定める事項を、第二号に掲げる者については七日以内にその者の年齢、性別その他厚生省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。
○児童虐待の防止等に関する法律
(児童虐待に係る通告)
第6条 児童虐待を受けた児童を発見した者は、速やかに、これを児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十五条の規定により通告しなければならない。
2 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏洩罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、児童虐待を受けた児童を発見した場合における児童福祉法第二十五条の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。
・これら以外に、例えば医師間のコンサルテーションや福祉関係機関への情報提供など、適切な保健・医療・福祉サービス提供の観点、あるいは疫学研究など、医学全体の発展を通じた公益の実現の観点から、情報の流れを確保することと、そのためのルールについて検討。
(3)医療情報を提供された側の情報保護措置
・厚生科学審議会先端医療技術評価部会に「疫学的手法を用いた研究等における個人情報の保護等の在り方に関する専門委員会」(委員長:高久史麿 自治医科大学長)を設置し、多数の人を対象として、健康状態などのデータを利用して疾病の原因などを探り、予防方法や治療方法を明らかにする研究(疫学研究等)について、個人情報の取扱いのルールを検討。(このルールをどのような規律とするかについては、憲法上保障された「学問の自由」への配慮が必要。)
・その他、診療報酬明細書の取扱者の情報保護措置等についても検討。
1 全般的事項について
(1)各規律の適用対象範囲の考え方について
・医療情報については、前述の検討のポイントに沿って、必要な個別法(既存法の見直しも含む。)対応についても検討しているところであるが、医療分野も大きな基本法制の傘の下にあることを踏まえ、「規律ごとに情報の性格等に即して検討する」こととされている適用対象範囲の問題について、医療情報分野も念頭に置いて、その考え方(どのような場合にどのような考え方で規律の適用の除外とするのか)をご検討いただきたい。(医療情報分野においては、前述のとおり、安全保護措置を厳密にする検討を行う一方で、後述のように、情報取得や第三者への提供に係る規律については例外的な扱いをとる必要があると考えている。)
(2)個人情報の漏洩等に関する罰則について
・中間整理では「個人情報の漏洩等に関する罰則の可否について、刑事法制の在り方等を考慮しつつ検討する」とあるが、個人情報の漏洩一般に罰則を設けることは難しいとしても、個人情報の種類や規律の性格等に応じた罰則による担保の必要性についてご検討いただきたい。
(3)個人情報の定義について
・中間整理では「個人に関する情報であって、当該個人の識別が可能な情報をいう」とされているが、死者をどう取り扱うか、個人の識別のメルクマールは何かという点について、ご検討いただきたい。(現行の「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」においては、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述又は個人別に付された番号、記号その他の符号により当該個人を識別できるもの」と定義されている。)
(4)公民の取扱いの調整について
・中間整理では、現行の「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」の改正を念頭に置き、「政府の保有する個人情報に関しては、別に法律で定めるところによる」とされているが、医療機関のように民間主体と公的主体双方で事業が営まれているものがあることにかんがみ、公民で適用対象範囲等が異なるなどその取扱いに不合理な差が生じ、結果として情報の利活用に支障を生じることのないように、基本法と現行法の改正の内容や規定について十分調整していただきたい。
(5)苦情の処理について
・中間整理では、「政府は、事業者による個人情報の処理等に関する個人からの苦情等を受け付け、適切に処理するものとする」とされているが、個々の省庁においては一般的な行政相談の範囲で苦情処理について対応するとしても、個別の紛争の解決について実効性ある措置をとることは難しいと考えられる。基本法制における規律の実効性を担保するために個別紛争解決機能が必要ということであれば、個々の省庁以外の者(第三者機関、事業者による自主的な組織等)にその機能を持たせることを検討すべきと考える。
2 事業者が遵守すべき事項とされた各規律に関して
(1)利用目的による制限
・以下の例示のように、「利用目的の制限」に関する規律(特に利用目的の通知等)をそのままの形で適用した場合、公衆衛生の確保、児童の人権擁護面で支障を来すおそれがあるものがあり、この規律についても他のいくつかの規律にあるとおり、適用の例外を設ける必要があると考えられる。
:地域がん登録などの地方公共団体において行われている疾病登録事業
:医薬品の副作用報告
:診療録等の診療情報の疫学研究、医師間のコンサルテーション等への利活用
:児童虐待調査のための情報収集
(2)第三者への提供
・以下の例示のように、本人の同意を得て行うという規律の原則をそのまま適用した場合には、公益上必要な事業の実施が困難になることが考えられ、利用目的をどのように設定できるかにもよるが、「個人の権利利益を侵害するおそれの無いことが明らかな場合」に加えて、「公益上の必要性が高い場合」などのメルクマールを設ける必要があると考えている。
:地域がん登録などの地方公共団体において行われている疾病登録事業
:法律に基づく感染症の発生報告
:児童虐待に関する情報提供やネットワークの形成
(4)適正な方法による取得
・以下の例示のように、本人から取得するという規律の原則をそのまま適用した場合には、個人や公共の利益に反することとなるものがあり、中間整理のように「第三者から取得することが必要かつ合理的と認められる場合」にはこの規律の例外とすることが必要と考える。
:精神疾患や小児・救急医療の場合
:疫学研究等において情報の利活用を行う場合
:地域がん登録などの地方公共団体において行われている疾病登録事業
【参考】
○EU指令 第11条第2項
第1項の規定(データ主体以外の第三者から情報を収集した場合にデータ主体に対して収集車の身元、収集の目的等を情報提供しなければならないと規定)は、特に統計目的、又は歴史的、科学調査の目的の処理のためのものであり、当該情報の提供が不可能であり若しくは過度の困難を伴う場合、又は記録、開示が法律により、明示的に規定されている場合には、適用されない。構成国は、このような場合に、適切な保護措置を定めなければならない。
(6)第三者への委託
・「第三者への委託」に関する規律は、委託元の監督義務を求めるものとなっているが、十分な保護措置をとる観点から、委託を受けた側の遵守事項、安全保護措置をとらなかった場合や情報漏洩の場合のペナルティ等についても検討が必要と考える。
(7)個人情報の処理等に関する事項の公表
・「個人情報の処理等に関する事項の公表」に関する規律について、公表することとなる事項にもよるが、下記の例示のように、事項の公表そのものが不適当と考えられるものもあり、この規律についても他のいくつかの規律にあるとおり、適用の例外を設ける必要があると考えられる。
:児童虐待ケースで関係者がネットワークを組んで対応している場合
(8)開示、訂正等
・以下の例示のように、個人から開示請求があっても不開示とすることが適当なもの(ケース)があり、中間整理で「一定の場合」とされている開示、不開示の考え方について、特に医療に関しては専門的な判断や医師と患者の信頼関係の確保が必要であることにも留意してご検討いただきたい。
:医療機関における診療行為(日本医師会の「診療情報の提供に関する指針」においては、患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがあるときや、第三者の利益を害するおそれがあるときは、開示を拒みうる場合とされている)
:地域がん登録などの地方公共団体において行われている疾病登録事業の登録内容
:児童虐待の通告者に関する情報、児童虐待の事実、機関による判断や評価に係る情報、第三者から入手した情報など
【参考】
○EU指令 第13条第2項
構成国は、特にデータが特定の個人に関する措置又は決定のために利用されるのではない場合に、十分な法的保護措置に従って、明らかにデータ主体のプライバシーを侵害するおそれがない限りにおいて、立法措置により、第12条に規定された権利(データ主体のアクセス権)を制限することができる。これには、データが科学的調査目的のためにのみ処理される場合、又は統計を作成する目的のためにのみ処理される場合、必要な期間を超えないで、個人的な形式で保存されている場合がある。