配付資料

資料7

「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)」に対する意見

平成12年7月1日
日本民間放送連盟



 我々はこれまで、報道機関としての活動を個人情報保護法制の「対象外」とするよう意見を繰り返し述べてきたが、前回の個人情報保護検討部会の中間報告に引き続き今回の大綱案でも、報道活動を規制の対象外とする明確な方針が出されていないことに失望している。
 大綱案では「適用対象範囲について、規律ごとに情報の性格等に即して検討する。この場合、表現の自由、学問の自由等に十分留意する」と明記されている。これは規律によっては「表現の自由」に係わる問題を適用対象にする可能性を残すものと受け取られる。あらためて指摘するまでもないが、表現の自由は憲法で保障された権利であり、この「表現の自由」を守るためには保護法の対象外にするしか方法はないと考える。
 我々が繰り返し述べてきたこの重要なポイントが大綱案では「今後、引き続き検討することとする」という先送り状態になっていることをきわめて憂慮している。

 大綱案で示された各規律は相互に関連するものである。
 例えば、報道活動は、国民の知る権利に応えるために取材対象に自由に接近し、収集、利用できる環境が不可欠である。収集した情報の管理は厳格に行われ、我々は取材した情報を放送以外の目的では利用しない。
 「取材源の秘匿」が我々の生命線であることは、これまでヒアリング等で説明してきたとおりである。「表現の自由」に保障された取材・報道活動を自由に行うためには、一部の規律が適用されることにも反対するものである。
 「取材・報道活動」はもとより、一般の番組制作活動においても、同様に法律で規制されるべきではない。

 また、大綱案において「政府は、受け付けた苦情等の処理に当たって、必要な調査を行うことができるものとすること」とあるが、この考え方からすれば取材・放送内容に関して直接調査を行う権限を政府に認めることになる。これは憲法で謳っている表現の自由の原則からしても是認する事はできない。

 表現の自由のもとで、国民の知る権利に応える責務を背負うメディアとしては、当然自らを律し、放送倫理を遵守しつつ取材・放送活動を行う決意である。
 「取材・報道の自由」と「プライバシーの保護」は両者とも尊重しながら自主的に調和がはかられるべきものと考えている。不幸にもプライバシー等で見解の相違や衝突がおきた場合に審理できる組織として「放送と人権等権利に関する委員会・BRC」をNHKと共にすでに設立していることは、これまでにも述べたとおりである。

 自主的な対応によっても解決できない場合は司法判断を仰ぐケースがあるが、これとは別に行政に調査権が与えられるとすれば、取材・報道の自由の重大な侵害を招きかねない。

 コンピュータ技術と通信技術の発展した今日のIT社会において、情報は瞬時に国境を超える。国家間の信頼関係を築き、あるべき情報化社会を招来させるためにも、個人情報の管理が重要であることはいうまでもない。
 一方、表現の自由、報道の自由が完全に守られているかどうかもまた、民主主義国家かどうかの基本的なメルクマールである。
 憲法で保障された表現の自由と、現代のIT社会における適切な個人情報管理は、ともに健全な21世紀の社会を形成するという同じゴールを目指すものと理解している。

 これまでのヒアリング、パブリックコメントにおいて民放連が示した懸念に対し大綱案が正面から応えていないことについては、改めて危惧の念を表明せざるを得ない。法制化に当たっては、放送の意義や役割が十分に理解され、「表現の自由」が保障されるものであることを強く求める。