配付資料

個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)へのコメント

2000年7月1日

(社)経済団体連合会
個人情報保護に関する打合会
座長 石 原 邦 夫



個人情報保護基本法制について、大綱案の中間整理をおまとめいただいた、法制化専門委員会の委員各位、事務局のご努力に敬意を表したいと存じます。
高度情報通信社会の推進によって、経済を活性化し国民生活の質的向上などをもたらすことが求められており、個人情報の適切な保護は、このために不可欠なものと存じます。
そこで、高度情報通信社会の発展の基盤をより強固にする観点から、大綱案について以下の通り、コメント申し上げます。

1. 保護と利用のバランスの確保と企業活動の実態を踏まえた規律

 基本法の内容は、昨年11月の中間報告に示されているように、個人情報の保護と利用のバランスを確保し、企業活動の実態を踏まえた規律とすることが重要である。
 仮に過度な義務が課せられれば、膨大なコスト負担は避けられず、事業が成り立たなくなる恐れがある。また、情報化のメリットを活かした新たな産業の芽を摘むことにもなり、消費者の利便性の低下や社会全体のコスト増を招くことにもなりかねない。

2. 自己規律による企業の取り組みを後押しする基本法

 企業には、個人情報の適正な保護に取り組む社会的責任がある。また、市場競争の面においても、個人情報の保護を通じて消費者の信頼を得ることは不可欠である。このため、多くの企業は、プライバシー・ポリシーの策定など、個人情報保護に積極的に取り組んでいる。
 個人情報の扱いは、企業・業界毎に大きく異なっており、一律的・画一的に具体的な義務が課せられると、実態にそぐわないものとなりかねない。個人情報保護の実効をあげていくためには、基本法は、個人情報保護に関する社会や市場の厳しい目の中で、自己規律による企業の取り組みを加速するものとしていただきたい。また、これを補完する観点から、苦情処理・相談体制の整備、裁判外紛争処理(ADR)の強化等を図り、高度情報通信社会に対する消費者・企業双方の信頼を高めるべきである。

 そもそも高度情報通信社会の推進は、経済フロンティアの拡大、国民生活の質的向上などを目指すものである(「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」)。このような考え方を基本法の「目的」にも明記すべきである。

 個々の従業員が管理している情報(名刺情報、営業マンが個人的に保有する取引先情報など)を企業として把握することは困難である。このため、対象となる個人情報は、組織的に管理し、検索が可能な情報に限定していただきたい。

(利用目的による制限p.2)
 経済構造改革の進展に伴い、合併・分社化などの動きが活発になっている。同一業種内で企業形態が変化した場合など、消費者の予見の範囲内である場合には、消費者の利便性向上の観点から、従来の「利用目的に関連して」個人情報が取り扱われたものとするよう、配慮していただきたい。

(透明性の確保p.3)
 個人が自己の情報に「必要な関与」を行い得るのは、濫用により業務に重大な支障が出ることを避ける観点から、合理的な理由がある場合としていただきたい。

(既存法令の見直し等p.3)
 政府における個人情報についても、まず、「基本原則」に則って扱うことを明記した上で、既存の法律に必要な措置を講ずるという考え方を打ち出すことが望ましい。
 個人が企業に自らの情報を提供するのは、独自の意思(取引する等)に基づくものであるが、政府に対しては半ば強制的に提供を求められる。従って、政府は民間以上に、公表等の義務を履行していただきたい。

(個人情報の保護の推進に関する方針の策定p.4)
 政府が策定する「個人情報の保護の推進に関する方針」は、個々の企業や業界毎に、柔軟に自主的な取り組みが可能となるよう配慮していただきたい。

(苦情等の処理p.4)
 小さな政府の実現、官から民へという行革の流れの中で、苦情処理に関する政府の役割は、極めて悪質な事例に限定すべきである。政府の機能を補完するものとして、紛争を簡易な手続きで迅速・安価に解決できる裁判外紛争処理(ADR)の仕組みを整備し、消費者の安心を確保することが重要である。

(利用目的による制限p.5)
 経済構造改革の進展に伴い、合併・分社化などの動きが活発になっている。同一業種内で企業形態が変化した場合など、消費者の予見の範囲内である場合には、消費者の利便性向上の観点から、従来の「利用目的に関連して」個人情報が取り扱われたものとするよう、配慮していただきたい。

(第三者への提供p.5)
 企業活動の実態を考慮した上で、第三者への提供の問題を議論すべきだ。例えば、合併・分社化などによって形成された企業グループ内での個人情報の共有が、第三者への提供と見なされれば、合併・分社化のメリットが損なわれてしまう。また、保険業界においては、保険金詐欺を防止する等の観点から、企業同士で個人情報を交換する実態があり、これは欧米にも見られる慣行である。このような企業行動が妨げられるべきではない。

(内容の正確性の確保p.6)
 保有する個人情報の正確性を確保するためには、本人からの申し出が不可欠なケースもある(銀行口座関連の住所情報など)。また、アンケートなどで得た個人情報には、本人が意図的に虚偽の情報を提供したものも存在する。これらに配慮し、正確性の確保は、企業に合理的努力を求めることにしていただきたい。

(第三者への委託p.7)
1. 個人情報処理の委託の形態や契約内容は、企業・業種によって様々であり、委託先が変更されることもある。このため、委託者としての義務は、企業が柔軟に対応できるものとなるよう、配慮していただきたい。
2. 業種によっては、個人情報処理委託先が数次に及ぶケースもあり、全ての委託先に対して監督等を行うことは現実的ではない。それぞれの企業が、直接の委託先に必要な監督等を行うことにより、適切な処理を確保することとしていただきたい。
3. 直接個人情報の収集等を行わない受託者については、@受託した個人情報を第三者に開示・漏洩しない、A受託目的以外には使用しないことが重要であり、これらを基本法で確保すべきである。

(個人情報の処理等に関する事項の公表p.7)
 企業活動は多面的であり、企業が保有する個人情報も多種多様である。また、企業間・業界間にも、保有する情報の内容および処理に関して、大きな違いが見られる。このため、個人情報の処理等に関する事項の公表について、一律の義務が課せられれば、実態にそぐわないものとなる恐れがある。また、企業が公表する事項が具体的になればなる程、個人情報を不正に入手しようとする者に却って狙われやすくなる。従って、公表する事項については、プライバシー・ポリシー・レベルとしていただきたい。

(開示、訂正等p.8)
1. 個人が自己の情報の開示・訂正を求めることができるのは、濫用により業務が重大な影響を被ることを避ける観点から、合理的な理由がある場合としていただきたい。
2. 開示・訂正の対象は、本人から取得した情報としていただきたい。企業の主観的な判断を含む情報が開示・訂正の対象となれば、事業活動に重大な支障が及ぶことが懸念される。

(第三者的な苦情・紛争処理機関の設置p.10)
 取引における紛争は、善意の事業者と善意の消費者の間にでも起こり得る。このため、仮に紛争が生じた場合でも、簡易な手続きで迅速・安価に解決できる仕組みを整えることが、個人の安心を確保する上で極めて重要である。この観点から、ADRの機能強化が必要である。
 ADRの機能強化に当たっては、業種毎の特殊性に十分配慮すべきである。

(地方公共団体の自律性p.10)
 個人情報保護に関して、各地方公共団体が独自の異なった対応をすれば、企業側が対応するには多大なコスト負担は避けられない。各地方公共団体においては、基本法に整合する個人情報保護の枠組み整備が確保されるべきである。

以  上