個人情報保護法制化専門委員会

第25回個人情報保護法制化専門委員会議事要旨



1 日 時:平成12年9月14日(木)14時〜17時

2 場 所:総理府5階特別会議室

3 出席者:

園部逸夫委員長、小早川光郎委員長代理、上谷清委員、高芝利仁委員、高橋和之委員、遠山敦子委員、西谷剛委員、藤原静雄委員
堀部政男個人情報保護検討部会座長、
新美育文委員は所用により欠席

(事務局)
藤井昭夫内閣審議官、小川登美夫内閣審議官

4 議 題
個人情報保護基本法制に関する大綱案(素案)について

5 審議経過
 事務局より、資料1及び資料2の説明の後、議論が行われた。議論の概要は以下のとおり。(→は関連意見及び質問等に対する回答。)

○ 第三者提供の制限については、データベース化されているものが対象であり、例えば日々の報道に用いられている個人情報は対象外であるが、報道用のデータベースは対象となり、第三者提供を業とするものとして引き続き検討の対象となるとの理解でよいか。
→ 今回の基本法制は、IT社会における個人情報の取扱いについて最低限の規律を設けることを前提としているため、第三者提供の制限について対象となる情報はデータベース化された又はそれと同等のマニュアル処理された個人情報としている。

○ 例えば病院や学校などから学術研究目的で情報を得ることがあるとのことだが、学術研究目的における適用除外規定を設ける場合、もらう側における適用除外規定だけでなく、情報を提供する側の第三者提供に関する適用除外規定が必要となるのではないか。
→ 指摘のとおり。今のところ調整規定がまだ明確になっていない。その他の場合でも、正当な利益を前提とする場合には第三者提供制限の適用を除外する調整規定が必要なのではないかとの認識である。
 4の各義務は、情報の質や事業者の性格を念頭においていない。これらに着目する場合、別途個別法でつくるものとの認識である。

○ 今回の基本法制の目的をIT社会に近づけ、これに密接な情報の取扱いを対象とするのか、もう少し範囲を広げて対象とするのかにより、議論が異なる。IT社会を前提とすれば、「データベース等」の「等」は限定されたものとなってくる。
→ 今回の基本法制は、個人情報の取扱い全体に対する基本法との考えを維持した上で、IT社会への対応については一般法的なものをつけ加えているとの趣旨であり、基本法としてわが国の個人情報保護の全体としての水準の向上を図ろうとすることをないがしろにするものではない。
→ 基本原則では「何人も」とあり対象が広くなっており、他方4の義務規定は「個人情報データベース等」を対象とすることにより限定されている。

○ 今回の基本法制では、IT社会に密接に関連する部分については、受ける危険に対応し、原則的規定ではなくより強制力をもった一般規定として義務をかけ、その担保措置を講じるとのシステムになっている。

○ 今回の法制では、個人情報一般の取扱いについての基本原則を定め、改めて認識する部分と、「データベース等」をコンセプトとしてIT社会に特有の取扱いの法的しくみを整える部分の2つから成り立っている。

○ 適用除外については、表現の自由、学問の自由、信教の自由とプライバシー権の調整ということであろう。この場合において一方が全面的に優先して調整されるということは妥当ではなく、法制の全部が適用除外ということにはならないのではないか。

○ 適用除外について、基本原則の(1)では、目的をできるだけ具体的にするよう運用するべきものとすると、報道・学術では具体的にできない領域もあるのではないか。(2)から(4)については報道・学術についても適用されるべき。(5)については報道や学術は、その成果が最終的に公表されるまでは、中にある情報は内なるものなのではないか。

○ 4の個人情報取扱事業者の義務等における適用除外については、例えば安全管理義務などの規定は、報道・学術・宗教等の分野にも原則適用でいいような気もするが、しかし適正性や合理性などの不確定概念の適否を巡りトラブルが生じ、それに巻き込まれること自体によりそれらの自由を阻害する可能性が考えられる。このため、報道・学術・宗教等については、4の義務については一括適用除外がいいのではないか。

○ 適用除外の方法として、機関・組織、情報の種類に着目して除くべきではなく、利用目的により適用除外すべきではないか。
 その具体的確定方法では、例えば屋外広告物法第15条のような、適用上の留意に関する条文を置くことはどうか。

○ なりすましによる不正請求の罰則を置いてもよいのではないか。

○ 学術研究分野における個人情報保護のあり方については、文部省の学術審議会でも検討している。国の個人情報保護法においてもかなりの調整規定を置いている。

○ 基本原則は法的義務ではなく、基本的な考え方を述べたものであるため、何人も除外はないものと理解していた。そうではなく、何らかの強制力をもった、法的意思を持ったものであるとすれば、何らかの例外を置く必要が出てくるのではないか。
→ 基本原則は、守っても守らなくてもいいというものではなく、何人も守るべきものであり、何人も例外なしに実現されるべき原則であるが、そのためのenforcementは設けないというものである。
 そのため、例えば(5)について報道等においては支障があるとするなら、例えば「公益に反しない限り」などの例外を認める可能性を残した上で、適用除外を設けないものとすることがよいのではないか。

○ 4の義務規定の適用除外について、報道、学術、宗教等についても、義務によっては課しても実態的に不当ではないものもあるが、義務をかけ、自主規制・苦情処理・主務大臣の指示等システム全体として担保を図っており、そういうシステム全体をはずす必要があり、このため、義務規定をまとめて適用除外とするのがよいのではないか。

○ 4の義務規定の適用除外について、報道、学術、宗教等についても、例えば適正取得や安全管理の義務は適用してもよい気がするが、大臣関与をはずす必要が出て来て、技術的にも複雑な体系になる。このため、少なくとも報道、学術については適用除外でよいのではないか。

○ 法制の実効性確保の観点から、罰則については、ある程度対象を絞ることにより置く必要があるのではないか。

○ 基本原則は努力義務規定であるため、直ちに何らかの民事効果が出てくるというものではないだろう。

○ 目的の特定の仕方について、何らかの概念を用いて特定することが必要になるのであり、解釈の問題が出てくる。このため、適用除外に関する解釈について、何らかの留意規定を置くことを検討する余地はあるのではないか。

○ 社会的にも問題となっているのは大量の情報が不適切にだれかに提供されていることであり、国民もこの点に不安を感じている。本法制でも、全体として、情報取得の段階は多様でありその把握は難しいとの観点から、情報の出口で捕らえるということから、提供の段階を捕らえようとしている。

○ 罰則を求める要望では、大量蓄積された個人情報が知らないうちにどこかに飛び回ることに対する不安である。構成要件があいまいであってはならないが、その対象をしばることによりその可能性を検討するというのがいいのではないか。

○ プライバシーは木の幹として人間の尊厳を支えるものであり、個人情報はその周辺にあるものである。表現の自由を制限してはならないのは当然のことであるが、いかに表現の自由であろうともプライバシーに関わる個人情報の保護と無調整でいいということは通用しない。その調整は、基本原則や義務規定の部分的適用除外であり、条文ごとに検討することが合理性が高い。

○ 報道に関する適用除外について、基本原則の(5)の適切な関与については、取材活動を制限することになるため適用を除外する必要が出てこようが、他方、基本原則という性格からその扱いは一律であるべき。このため、自主的な努力を求める趣旨をどの程度に読むのかということについて、(5)にその旨をわかるようにすればよいのではないか。

○ 今回の基本法制は、個人情報の主体である国民が注目している法制であり、高度情報通信社会の中で待たれている法制である。その意味で、適用除外はできるだけ限定的であるべき。

○ 国民が望んでいるのは、問題が起きたときどこに駆け込めばよいのか、そこでどういう苦情処理をしてもらえるかであり、これを明確にする必要があるのではないか。

○ 例えば日弁連の仲裁機関で、個人情報保護に関わる紛争についても扱うようにしてもらうとか、考えてもよいのではないか。

○ 適用除外については、@とCは支持する意見はないようだが、AとBのどちらが適当かについては、それぞれ条文の理解の仕方で変わってくるのではないか。また、プリントメディアの分野などに新たに主務大臣を規定できるのかどうかとの問題もあるが、苦情処理団体への主務大臣の認定をすべてに適用するとなるとそれが必要となろう。

○ 苦情処理については例外なく適用すべきという点に関しては、例えば苦情処理については別の章を立てることも考えられるのではないか。

○ 取得、提供、苦情処理といった段階で考えると、苦情処理の段階はきちんと押さえておく必要があるのではないか。

○ 適用除外を「利用目的」で考える際に、具体的にはどのような方法が可能か。
→ 例えば「専ら報道目的でする個人情報の取扱い」について除外するような書き方が考えられるのではないか。

○ そもそも「報道」とは何かという点について明確にしておく必要がある。例えば、著作権法や放送法で「報道」の使用例があるが、それらの考え方との兼ね合いも考慮する必要があり、あまり違う解釈とすることはできない。

○ 「疫学」については、例えばEUでは「公衆衛生」という用語が使われている。

○ 「疫学」に関しては、例えば、ガン登録センターは、自分たちがしていることは営業であり、学問の自由に当たるとはいえないと考えているようだ。「疫学」については、厚生省でもまだ詰まった議論は行われていない。

○ 第三者提供自体を目的とする場合の取扱い(資料1)については、伝統的な手法としては届出制も考えられるが、なるべく事前規制は行わないという考え方を踏まえると、このような案が必要ではないか。ただ、通知、公表等の対象については、より具体的にすべきではないか。

○ 基本法の構成として「人の秘密」といった情報の質による区別が困難だとしても、第三者提供自体を目的とする場合については、「人の秘密」という切り口もなお検討してもいいのではないか。

○ 個人情報を特定の者との間で相互に利用する場合を認める場合には、第三者提供を厳しく制限している効果が緩くならないように、相互利用を認める範囲の明確化はきちんとすべき。

○ 第三者提供自体を目的とする場合は、例えば住宅地図を作成する業者が該当すると考えられる。これに利用停止等を認めるオプトアウトを広く認めることにより、結果的に地図がほとんど空白になってしまうといったことも考えられるが、個人の権利利益保護の観点からそれは仕方がないということか。
→ 現在の案ではそういうことになる。

○ 個人情報を特定の者との間で相互に利用する場合は、素案中の第三者提供の制限の適用除外の@、Aに含まれるという理解か。
→ @、Aでは書き切れないものとして、いわばBのカテゴリーということになる。

○ 個人情報取扱事業者の「一定のもの」はどうするのか。
→ ※にあるとおり、単にアクセスできるだけの者や専ら小規模のデータベース等のみを取り扱う者を除外する方向で考えている。

○ 基本原則の本文には、「何人も」と書くことでいいか。
→ 「何人も」ではプライベートの住所録といったものにまで基本原則がかかることになるがどうか。
→ 「個人情報は」という「もの」主語の例もあるが、仮にそうする場合には、文末は「努める」ではなく「取り扱われなければならない」となり、個人情報取扱事業者や国については、その後で義務や努力義務について規定するということになろう。
→ 代替案として、例えば「個人情報の保有者は」とか「個人情報を取り扱う者は」を主語とする書き方も考えられるのではないか。

○ 基本法中の努力義務と義務の振り分けについての考え方はどうか。努力義務については主務大臣の関与はなく、義務にだけ関与があるということか。
→ 主務大臣の関与は、個人情報取扱事業者に対しては、努力義務であっても否定されるものではないが、基本的には義務に対して行われるものである。

○ マスコミ等の適用除外の仕方については、そもそもマスコミ等は個人情報取扱事業者ではないということになるのか。
→ 利用目的で区別するという考え方であれば、例えば「報道目的」のものは除外されるが、「営業目的」などそれ以外の目的で保有するものは適用されるため、取扱事業者でなくなるということではない。

○ 現実には自主規制によって、すでに基本法で求めているものよりも高いレベルの取組をしている場合もある。基本法によってそのような取組がレベルダウンするということのないように、「4」の※にある「必要最小限の規律」という言葉は本文に入れてはどうか。主務大臣の指示等も、何でもやるというのではなく、自主的取組を主とした上で行うという趣旨が出るほうがいいのではないか。
→ 法律として条文化ができるかどうかは分からないが、そのような考え方は明確に示す必要がある。

(次回の予定)
 次回は、9月22日(金)14時から17時まで、総理府3階特別会議室で開催し、8日と14日の議論を踏まえて修正を加えた大綱案について議論を行う予定。

*文責事務局

*本議事要旨の内容については、事後に変更の可能性があります。

資料
資料1 第三者提供自体を目的とする場合の取扱いについて
資料2 罰則について
その他、8日提出の「資料1−1 個人情報保護基本法制に関する大綱案(素案)」及び「資料1−2 報道、宗教、学術等分野との調整について」を使用。