資料1−2
| 大蔵省・金融審議会、通産省・産業構造審議会、割賦販売審議会の下に合同で設置された「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」では、個人信用情報保護・利用の在り方について、実務的な立場も踏まえて具体的に検討を進めてきた。本資料は、これまでの審議の過程で出された論点・意見を、本作業部会が中間的に整理したものである。 |
平成11年7月6日
個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会
(1) 検討の背景
近年、一部の与信業者や信用情報機関からの情報漏洩が社会問題化しているが、わが国の民間部門における個人信用情報を含む個人情報の保護法制は未整備の状況にある。また、顧客の返済能力を判断するために与信業者が収集・蓄積・利用している情報(個人信用情報)に関しては、多重債務問題解決等の観点から、業態ごとに設置されている信用情報機関相互間での情報交流の推進が必要ではないかとの指摘もなされている。
こうした問題を背景に、平成9年4月、大蔵省・通産省共同の「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」が設置された。同懇談会が昨年6月に取りまとめた報告書では、個人信用情報保護・利用に関する制度整備の必要性が提言される一方、「今後、学界、関係業界、消費者保護団体、関係省庁等によって、新法整備の方向性を念頭に置きつつ、各業法、刑事法、民事法との関係等の法律面や情報システムの開発等の技術面、民間における自主ルール等を含めた多様な観点から検討が行われることを期待したい、また、法的措置のタイミングにかかわらず、新たな研究会などを設け、更に検討していくことが必要」とされている。
具体的な措置に向けて掘り下げた議論を行っていくためには、消費者、与信業者及び信用情報機関等の実態を十分に踏まえることが重要である。こうした観点から、大蔵省・金融審議会並びに通産省・産業構造審議会、割賦販売審議会では、本年1月、学識経験者のほか、弁護士、消費者団体関係者、マスコミ関係者に加え、金融機関、貸金業者、信販業者及びクレジット業者等実務者をメンバーとする「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」を設置し、法的整備を含めた具体的な制度整備の在り方について検討を開始した。
(2) 審議の経過
本作業部会では、その後6月まで、@個人情報全体の中での個人信用情報の位置づけ、A法的な保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲、B保護の実効性を担保する罰則の在り方や適用範囲、C信用情報機関相互間での弁済事実等のポジティブ情報の交流、D消費者に対する与信業者への正確な情報提供、等の諸点につき、業界・関係者等の意見聴取を含め計6回に亘り審議を行った。
上記論点については、今後とも引き続き議論していく必要があり、現段階では十分な意見集約が可能な状態にないが、本作業部会では、これまでの審議の過程で出された論点・意見を、「個人信用情報保護・利用に関する論点・意見の中間的な整理」として公表することとした。
個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会
座 長 堀部 政男
| (開催日) | (議事内容) | |
| 第1回 | 11.1.14 | 1.懇談会報告書(10年6月)の概要 2.今後の論点について |
| 第2回 | 11.2.18 | 1.意見聴取 ・信用情報機関 @全銀協個人信用情報センター A(株)シー・アイ・シー B全国信用情報センター連合会 C(株)セントラル・コミュニケーション・ビューロー ・日本弁護士連合会(情報問題対策委員会) 2.自由討議 |
| 第3回 | 11.3.17 | 1.専門委員からの意見陳述 ・専門委員 D玉井専門委員 E藤川専門委員 F平野専門委員 G山下専門委員 2.自由討議 |
| 第4回 | 11.4.13 | 1.専門委員からの意見陳述及び意見聴取 ・専門委員 @山縣専門委員 A新井専門委員 B高谷専門委員 C佐藤専門委員 D計良専門委員 ・主婦連合会 2.自由討議 |
| 第5回 | 11.5.14 | 1.委員からの意見陳述 @岩村委員 A田島委員 B原委員 C松本委員 D御船委員 E山下委員 2.自由討議 |
| 第6回 | 11.6.14 | 1.個人情報を巡る最近の動きについて 2.委員からの意見陳述 京藤委員 3.「論点・意見の中間的な整理」(案)について 4.自由討議 |
(別添1)「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」報告書のポイント
(別添2)個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会委員名簿
(別添3) 意見聴取の主なポイント
(別添4) 今後の論点
(1)個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会
○ 近年、一部の与信業者や信用情報機関(注)からの情報漏洩が社会問題となっているが、わが国では民間部門における、個人信用情報も含めた個人情報の保護立法が未整備の状況にある。一方、与信業者は与信に当たって顧客の返済能力を判断するための情報(個人信用情報)を収集、蓄積し、利用するとともに、このような情報を金融機関、貸金業者、クレジット業者の各業態ごとに設置されている信用情報機関を通じて共用しているが、多重債務問題の解決のためには、信用情報機関相互間の情報交流の推進が必要であるとの指摘もなされている。
○ これらを背景に、平成9年4月、大蔵省銀行局長及び通産省商務流通審議官共同の私的懇談会として、学識経験者で構成する「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」(以下「懇談会」)が設置され、検討が重ねられてきたが、昨年6月に報告書が取り纏められた。(報告書のポイント:別添1)
○ 懇談会報告書においては、「個人信用情報保護・利用については、問題の重要性、緊急性にかんがみ、法的措置と併せて、業界の自助努力としての自主ルール、約款等が相互に補い、役割分担を行うような重層的な制度整備を図ることが望ましい」、との提言がなされている。
(注)わが国では、信用情報機関が業態(金融機関、貸金業者、クレジット業者)ごとに設立されており(それぞれ全国銀行個人信用情報センター、全国信用情報センター連合会、シー・アイ・シー)、また、一部の業者が業態横断型の信用情報機関(CCB:セントラルコミュニケーションビューロー)に加盟している。
(2)本作業部会設置の経緯
○ 懇談会報告書では、上記提言の観点を踏まえ、「今後、学界、関係業界、消費者保護団体、関係省庁等によって、新法整備の方向性を念頭に置きつつ、各業法、刑事法、民事法との関係等の法律面や情報システムの開発等の技術面、民間における自主ルール等を含めた多様な観点から検討が行われることを期待したい、また、法的措置のタイミングにかかわらず、新たに研究会などを設け、更に検討していくことが必要」とされている。
○ 具体的な措置に向けて掘り下げた議論を行っていくためには、消費者、サービスを提供する金融機関、貸金業者、クレジット業者等の与信業者、及び信用情報機関等の実態を十分踏まえることが重要である。こうした観点から、本年1月、学識経験者のほか、弁護士、消費者団体関係者、マスコミ関係者(以上「委員」)に加え、金融機関、貸金業者、信販業者及びクレジット業者等実務者(以上「専門委員」)をメンバーとする「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」を、大蔵省・金融審議会並びに通産省・産業構造審議会及び割賦販売審議会3審議会の下に設置し、法的整備を含めた具体的な制度整備の在り方について検討を行ってきた。(委員・専門委員名簿:別添2参照)
○ 本作業部会では、検討の開始に当たり、懇談会報告書を手がかりに、消費者や実務者から、基本的な論点について実態に即した意見を聴取することとしたが、施策の具体化に向けてより掘り下げた議論が必要な論点をまず以下のとおり整理した。
○ 保護のための措置については、まず法制化に関し、個人信用情報を他の個人情報の中でどう位置づけるかを議論する必要がある。その際、法的な保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲を定義付けることが必要であり、保護の実効性を担保するための罰則の在り方やその適用範囲についても併せて検討する必要がある。
○ 一方、利用のための措置については、多重債務問題を軽減する方策として、現在信用情報機関をまたぐ交流が行われていないポジティブ情報(弁済事実や債務残高等)を交流することの当否を検討するとともに、与信業者が適正な与信を実施していく上で、消費者に対して与信業者への正確な情報提供を義務づけることについても検討する必要がある。(意見聴取の主なポイント:別添3参照)
○ 本作業部会では、懇談会での議論から一歩踏み込んで、個人信用情報の保護や利用の在り方について、実務的な立場も踏まえたより具体的な検討を進めていくため、上記論点を中心に、委員、専門委員のほか、弁護士団体、消費者団体、信用情報機関から幅広く意見を聴取し、議論を重ねてきた。これまでに出された主な意見を整理すると以下のとおりである。
(1) 法制化について
@個人情報の中での位置づけについて
・ 個人信用情報保護の法制化を検討するに当たっては、他の個人情報の保護の在り方の中での位置づけが問題となると考えられる。
・ 懇談会報告書では、個人信用情報は(イ)与信時に半ば強制的に提供を求められ、(ロ)その内容も個人の信用力を判断するため、個人生活に係る詳細な、かつセンシティブな情報が中心であり、(ハ)いわゆる与信業者のみが信用情報機関を通じて登録された情報を利用することができ、与信業者間で共有されることが多いほか、(ニ)情報のもつ経済的な価値が大きいため、実際に情報の不正入手・目的外利用の事件が発生している、とし、他の個人情報に先駆けて措置する可能性も含め、立法をできるだけ早期に図るべきである、とされている。
・ 本作業部会では、懇談会報告書の基本的認識を踏まえ、個人信用情報保護の法制化を視野に置いた議論を進めていく必要がある、との意見が多く出された。
・ 他方、民間部門の個人情報全般を規制対象とする個人情報一般を保護する法律を立案することが先決である、との意見もあった。
・ なお、個人情報一般の保護については、法整備を含めたシステムを整えるため、政府の高度情報通信社会推進本部が設置する検討部会において、総合的に検討が進められる予定である。
A法制化を検討する際の留意点
・ また、本作業部会では、法制化に当たっての留意点として、
(イ) 罰則や行政的な規制は極力拡大しないこととし、民事的なところで広く規制をかけていくべきである、
(ロ) 消費者金融業務における新規サービスの展開を阻害するべきではないこと等を考え、現状固定的になりやすい法規制への依存を必要最小限とした上で、与信業者に個人信用情報保護を手厚くするインセンティブが生じるような制度的フレームワークの構築が必要である、
(ハ) 多重債務発生の防止や適正与信の観点から必要な個人信用情報の一層の利用促進には十分な個人信用情報保護が前提となるが、保護のための法的措置は過度なものとならないようにすべきである、
(ニ) すでに高いレベルで個人信用情報を保護している業態があることを踏まえ、法制化に当たっては、個人信用情報の収集、管理、提供及び利用等の取扱いに関する実務の現状を十分考慮すべきである、
(ホ) 採用する規制手段に応じて保護・規制の対象は異なるはずで、例えば、刑罰により保護されるべき個人信用情報はかなり絞り込んでよいが、刑罰により保護されるもののみを規制の対象とするのでは範囲が狭すぎる、
といった意見が出された。
(2) 法的な保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲について
@対象範囲について
・ 個人信用情報の保護に当たっては、まず個人信用情報の範囲を明確にすることが必要であると考えられる。与信業者が与信を実施する際には、顧客の氏名、住所のほか収入、借入状況等個人の経済状況に関する情報や、今後の商品の購買予定や趣味等アンケート的な情報を収集している場合がある。
・ 懇談会報告書では、保護の対象となる個人信用情報を、「与信との関連で収集・保有・利用される情報で返済能力・支払能力を判断するための情報」とすることが考えられる、とされている。(下図aの範囲と考えられる)
個人信用情報の概念図
・ 本作業部会では、法的な保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲が、法的な整備を図っていく上での基本となる重要事項であることから、意見聴取を精力的に行い、議論を重ねたところである。本論点については、以下のとおりいくつかの考え方が示された。 (イ)信用情報機関への登録情報等に限定すべきとの意見
・ 返済能力・支払能力の判断に利用する情報の範囲は各社個別の判断で決められており、個人情報一般と個人信用情報との判別も実務上困難であることから、法の実効性を確保するためには、法的な保護・規制の対象を信用情報機関に登録すべき情報と与信業者が信用情報機関から入手した情報(上図bの範囲)に限定し、その他の情報(上図d−bの範囲)については当面自主ルールによって保護すべきである、との意見が出された。 (ロ)与信判断に利用する情報以外も対象とすべきとの意見
・ 一方、消費者のプライバシーに配慮すれば、上記の個人信用情報の定義の範囲を超えて、与信判断に利用する情報以外もできるだけ広く保護・規制の対象とすることが望ましい、との意見が出された。
・ また、事業者が保有する顧客情報の中で対象範囲を区分するのは困難であるので、まず個人信用情報保護の義務主体となる事業者の範囲を定め、その事業者がもつすべての顧客情報(上図dの範囲)を保護・規制の対象とすべき、との意見も出された。 Aマニュアル情報の扱いについて
・ 法的な保護・規制の対象となる個人信用情報の範囲を定める際の切り口として、マニュアル情報の扱いがある。
・ 懇談会報告書では、マニュアル情報についても、与信業者の過重な負担とならないよう配慮しつつ保護の対象とすべき、とされている。
・ 本作業部会では、マニュアル情報を法的保護の対象とすることの当否について議論したが、以下のような意見が出された。 (イ)マニュアル情報を法的保護の対象外とすべきとの意見
・ マニュアル情報を電算情報と同列に扱うことは実務上負担が大き過ぎるとの指摘があり、マニュアル情報は自主ルールで保護することとし、法的な保護・規制の対象は、電算情報あるいはそれが印字された物とすべきである、との意見が出された。 (ロ)マニュアル情報も法的保護の対象とすべきとの意見
・ 一方、消費者のプライバシー保護の観点からは、マニュアル情報も電算情報と同様に重要な位置づけにあり、法的な保護・規制の対象に含めるべき、との意見が出された。
(3) 罰則の在り方とその適用範囲について
@罰則の在り方について
・ 個人信用情報の漏洩事件や外部者からの不正取得が発生していることを考えると、罰則によって保護の実効性を担保していくことも考えられる。
・ 懇談会報告書では、刑罰の適用により個人信用情報の漏洩、不正取得等の抑止を図ることが必要であるが、現状では個人情報一般について、その侵害行為が刑罰の対象とされていないこととのバランスや補充性の原則(他の手段で抑止が可能であれば、まず、それを用い、刑罰は補充的に用いるとの考え方)を考慮する必要があり、刑罰適用による保護の対象もハイリーセンシティブ情報(国籍、信教、政治的見解、保健医療、犯歴等個人の機微に深く関わる情報)や信用判断に直結する情報等重要な情報に限定すべきであるとも考えられる、とされている。
・ 本作業部会でも、悪意を持った者による情報漏洩、不正入手等に対しては社会的影響から見ても自主ルールでは不十分であることから、情報を保有する主体からの漏洩や不正利用のほか、外部からの不正アクセスには刑罰で対応すべきであるが、その場合でも、他の個人情報に先駆けて個人信用情報保護のための刑罰を新設するのであれば、罰則の構成要件については厳密にすべきであり、罰則適用の必要性・公平性、明確な適用条件、量刑等について慎重かつ十分な検討が必要である、との意見が出された。また、運用における公平性を確保するため、禁止行為を明確に定めることが望ましい、との意見も出された。 A行為規制の対象者について
・ 個人信用情報の保護を担保するために罰則を用いるのであれば、行為規制の対象者を明確にする必要があると考えられる。
・ 懇談会報告書では、行為規制の対象者として、業務として個人信用情報を組織的に取扱うものを一般的に取り込むべきとの考え方が大勢であるとされ、具体的には、信用情報機関(業として、加盟している与信業者から個人信用情報を収集し、加盟業者のために利用又は提供を行うもの)、業として与信を行う与信業者(銀行・保険会社等の金融機関、貸金業者、クレジットカード会社、割賦販売業者等)、及びこれらに係わる与信業者に準ずるものとして保証会社、債権回収代行組合等が挙げられている。また、情報の漏洩の防止の観点から、信用情報機関等から情報提供を受けるもの(業務委託先、その他債権譲渡先、グループ企業等)に対して、また、情報の正確性の確保を図る観点から、信用情報機関に情報提供を行うもの(不払い情報を提供する電話会社、通信販売業者等)に対しても一定の行為規制の対象とする必要があろう、とされている。
・ 本作業部会では、行為規制の対象者として具体的な業態名を挙げるまで議論が及んでいないが、業務として個人信用情報を組織的に取り扱う者すべてとすべきあり、電算処理等の業務委託先についても含めるべきである、との意見が出された。 B罰則の対象となる情報・行為について
・ 罰則を適用していくに当たっては、その対象となる情報・行為についても明確にしておく必要があると考えられる。
・ 懇談会報告書では、前述のとおり、刑罰の対象となる情報について、個人情報一般への侵害行為がすべて刑罰の対象とされているわけではないという現状とのバランスを考慮し、ハイリーセンシティブ情報や与信判断に直結する情報等の重要な情報に限定すべき、とされている。また、刑罰の対象となる行為としては、情報保有者による行為として、情報の漏洩、不正提供、不正利用を挙げ、外部のものによる行為として、窃取、詐欺、強迫その他不正の手段による情報取得が挙げられており、不正取得又は不正提供された情報であると知りつつ情報を入手し、その利用・提供を行うことに対しても措置する必要がある、とされている。
・ 本作業部会では、刑罰の対象となる情報の範囲について、ハイリーセンシティブ情報や与信判断に直結する情報等の重要な情報に限定すべき、との意見が出された。また、刑罰の対象となる行為について、(イ)個人信用情報を違法な手段で入手する行為、(ロ)守秘義務を負わされている者がそれに違反して悪意をもって個人信用情報を第三者に漏らす行為、(ハ)違法な入手行為や守秘義務違反行為が介在しない限り出てくるはずのない個人信用情報をそれとわかって入手する行為、及び(ニ)個人信用情報システムの外部者が詐取、詐欺、強迫等によって不正に取得する行為等とすべき、との意見が出された。 C両罰規定について
・ 情報保有者による不正行為を抑止するためには、両罰規定が必要な場合があると考えられる。
・ 懇談会報告書では、情報保有者による不正行為があった場合には、両罰規定によって、法人に対しても刑罰(罰金)を課すことが考えられる、とされている。
・ 本作業部会では、両罰規定を「組織的な犯罪」や「重大な管理・監督を怠った場合」等に限定すべきである、との意見があった。一方で、「組織的な犯罪」や「重大な管理・監督を怠った場合」等にのみ企業、組織が両罰規定により刑事責任を負うという考え方は狭すぎるのではないか、企業、組織の側に落ち度があるといってよい場合(過失責任が認められる場合)には基本的に刑事責任を免れないとすべきであり、そのために自然人行為者と法人に対する罰金額に差を設けるべき、との意見が出された。 D自主ルールとの関係について
・ 個人信用情報については、法的措置の対象になじむ情報と、自主ルールの対象になじむ情報があると考えられる。
・ 懇談会報告書では、自主ルールについて、個人信用情報の保護・利用のためのルールは、法的措置のほかに自主ルール等において重層的に手当てすることが望ましく、与信業者等は個別業者が収集・保有・利用する個人情報全般を対象に、できるだけ早期に自主ルールの一層の整備を図り、そのルールに則った対応を行っていくことが求められる、とされている。
・ 本作業部会でも、個人信用情報の保護には、法制化になじむ領域と自主ルールになじむ領域が存在することから、自主ルールを拡充して法律との重層的な保護を図る必要がある、との意見が出された。
・ また、刑罰を含む法整備とあわせて、自主ルールや紛争解決的機能を持つ監視機関の設置も視野に入れた制度作りを進めることが適切である、との意見や、行為規制の内容については、基本原則は法定し、細目に及ぶ具体的な内容は自主ルールで補完するような制度とすべきである、との意見が出された。
(4) ポジティブ情報の交流について
・ 与信業者が与信を行う際に利用する個人信用情報は、利用者本人による提供のほか、信用情報機関の情報の照会等によって行われているが、ネガティブ情報(延滞、代位弁済、破産といった事故情報)はもとより、ポジティブ情報についても、利用者本人から正確な情報を入手することは困難であると考えられる。
・ 懇談会報告書では、個人信用情報の保護と利用の関係について、信用情報機関間のポジティブ情報の交流は、多重債務問題の軽減や効率的な与信業務につながる効果を持つ一方、与信業者や信用情報機関の負担増、交流を進めた場合の消費者のプライバシーへの影響、漏洩の危険性拡大等の可能性が存在することから、それらを総合的に勘案しながら交流を段階的に進めていくべきである、とされている。
・ 本作業部会では、個人信用情報の利用には、社会問題化している多重債務問題の軽減にも一定の効果があると考えられることから、信用情報機関間のポジティブ情報交流の当否について、意見聴取を精力的に行い、議論を重ねたところである。
・ その際、議論を進める上での視点として、ポジティブ情報の交流を法律で義務づけることの当否を議論するに当たっては、「多重債務問題の解消」の法目的との関係を検討することが必要である、との意見や、多重債務発生防止のためのポジティブ情報交流を制度化する場合には、当該情報を交流される必要性が消費者側に無いにもかかわらず、消費者の財産状況が借入先ではない与信業者や信用情報機関等にまでチェックされるということに対して消費者が抱く不安と公共的な利益との比較衡量が必要である、との意見が出された。 @交流を積極的に推進すべきとの意見
・ ポジティブ情報のうちでも残高情報は、過剰与信防止のため、ネガティブ情報とともに「交換しなければならない情報」であると考えられることから、多重債務問題への対処を優先的に考慮し、速やかに交流を開始すべきである、との意見が出された。
・ また、ポジティブ情報の交流は、多重債務の未然防止や適正与信の実施のために有効であり、実務的な観点から検討を進めて早期実現を図ることが必要であることから、本作業部会においてスケジュール等も含めた方向感を示し、別途「検討会」を設けて実質的な検討はそこに委ねてはどうか、との意見も出された。 A交流を慎重にすべきとの意見
・ ポジティブ情報の交流は、一律の規定や強制には馴染みにくく、個人信用を審査し判定する与信業者の最も本質的な企業努力と背馳する面も少なくないほか、中途半端な情報交流の制度化は、情報交流を拒絶した顧客の扱いが難しくなるなどの問題が生じることから慎重に検討すべきである、との意見が出された。
・ また、ポジティブ情報の交流が取引の促進につながるのなら、法的に強制すべき性格の問題ではない、交流にメリットを認める業者同士が、情報主体の個別の同意を得て自主的に交流すればよく、法制としては交流を阻害するような規制をしないという単純な不作為で足りるのではないか、との意見も出された。 B交流自体好ましくないとする意見
・ 一般消費者は、自分の信用情報についてどんな機関がどの程度蓄積し交流しているか認識できていないため交流すべきではない、現時点ではポジティブ情報交流の必要性は感じられない、との意見もあった。
(5) 消費者に対する与信業者への正確な情報提供の義務づけについて
・ 個人信用情報は、与信業者が与信判断を行う材料であることから、適正な与信を実施するためには消費者が正確な情報を提供することが求められると考えられる。
・ 懇談会報告書では、消費者にも正確な情報の提供義務を課すべきとの意見があった一方、是非とも与信を受けたいと考えている消費者に正確な情報提供を義務づけ、これに法律的な効果をもたせること(例えば虚偽の申告により与信を受けた借手については、破産の際にも免責を受けられない等)までは困難である、悪質なケースについては詐欺罪等を適用することで対応すべきである、との慎重論があった、とされている。
・ 本作業部会では、正確な情報提供は適正与信のために不可欠であることから、正確な情報を提供しない消費者は不利益な扱いを受ける仕組みを整備する必要がある(注)、との意見があった一方、自分に不利益になる事実を相手に正直に告げることを法律が強制できるのは、原理的にはよほど重要な公共的利益の実現にかかわっている場合のみであり、基本的に取引上弱者である借り手側をして取引上の強者に正直に告げることを法が強制するということはありえない発想であり、法制化にはなじまない、との意見が出された。
(注) 不利益な扱いとして、虚偽の申告により与信を受けた借手について現行法を活用(例えば破産法366条の9の免責不許可事由の周知徹底)していくほか、虚偽の情報提供によって与信を受けた場合には、破産手続上不利益に取扱うことも考えられる、との意見が出された。
・ また、消費者に正確な情報提供を義務づける前に、与信業者や信用情報機関が、内部の情報管理、本人情報の取扱いに関して消費者への周知を図るよう努力することで消費者の自覚を促すとともに、消費者・事業者間の信頼関係を構築していくことの方が先決ではないか、との意見も出された。
・ これに対し、一部には、消費者からの正確な情報提供は与信業者にとって極めて重要であり、これを法的に義務づけることは意義がある(ただしその場合でも、義務づける情報の範囲は個人を特定する項目など必要最小限に止め、消費者教育を徹底すること等が必要)、との意見があった。
○ 本作業部会では、これまで懇談会報告書を手がかりに、消費者や実務者から、基本的な論点について実態に即した意見を聴取し、それをもとに議論を進めてきたところであるが、上記のとおり、十分に意見が集約されていない部分が残されている。
○ 今後は、こうした論点のほか、これまで十分議論が及んでいない、
@法的措置の対象とするのが適当な個人信用情報の範囲と自主ルールの対象とするのが適当な範囲の整理、
A誤情報を訂正する権利等情報主体の権利、
B情報漏洩等の早期発見のための施策、
C民事訴訟手続による救済の在り方、
D行政機関の監督の在り方、
E信用情報機関への加盟与信業者による個人信用情報の登録・照会の在り方、
F信用情報機関の定義や在り方、
等についても検討を深めていく必要があると思われる。(今後の論点:別添4参照)
別添1
別添2
平成11年6月14日現在
| 座 長 | 堀 部 政 男 | 中央大学法学部教授 |
| 座長代理 | 山 下 友 信 | 東京大学法学部教授 |
| 委 員 | 岩 村 充 | 早稲田大学アジア太平洋研究センター教授 |
| 京 藤 哲 久 | 明治学院大学法学部教授 | |
| 田 島 優 子 | さわやか法律事務所・弁護士 | |
| 原 早 苗 | 消費科学センター消費科学連合会事務局次長 | |
| 松 本 恒 雄 | 一橋大学大学院法学研究科教授 | |
| 御 船 美智子 | お茶の水女子大学大学院人間文化研究科助教授 | |
| 吉 野 源太郎 | 日本経済新聞社論説委員 | |
| 専門委員 | 早 川 信 二 | 全国銀行協会業務委員長銀行 (株)海銀行リテール企画部長 |
| 早 川 洋 | (社)全国地方銀行協会会長銀行 (株)横浜銀行取締役総合企画部協会担当部長 | |
| 平 野 昭 一 | (社)全国信用金庫協会業務部長 | |
| 山 下 恒 治 | (社)全国貸金業協会連合会総務委員長 | |
| 山 縣 昭 一 | (株)セントラルファイナンス経営企画部長 | |
| 新 井 春 樹 | (株)オリエントコーポレーション個人情報部長 | |
| 高 谷 均 | 全日信販椛麹企画部長 | |
| 佐 藤 良 治 | 日立クレジット且ミ長室部長 | |
| 計 良 充 洋 | ユーシーカード褐o営企画部部長 | |
| (敬称略) | ||
別添3
別添4
1.個人信用情報保護のための措置
2.個人信用情報の利用促進のための措置
3.信用情報機関の在り方