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資料3 別添1

意 見 書

社団法人日本雑誌協会 編集委員会
取材委員会
編集倫理委員会

 

 今回の資料提出につきましては日本雑誌協会・上記3委員会の議論を踏まえて対処する方針をまずご理解下さい。従いましてご依頼のヒアリングの主旨及び項目にこだわらず、以下10項目にわたる見解の表明をさせていただきます。

  1. この法制化の急ぎすぎ(拙速)に反対します。十分検討するにはあまりに時間がなさすぎます。唐突に持ち込まれたのは、何やら通過儀礼のようで「各界に参考意見は聞きました」といった程度の印象を持たざるをえません。といいますのは、今回の立法措置が「包括的個人情報保護」という名目でメディアの表現の自由に対していわゆる“プライバシー保護法”的な枷をはめようとしている点にあります。現行憲法で民主主義社会の柱とされる「言論、出版、報道の自由」に極めて密接に関わる問題を、短時間のヒアリングや審議で済ませられるとは断じて思えません。

  2. 「包括的個人情報保護」とする必然性がどこにあるのか大いに疑問です。個人の情報を他人が勝手に売買したり漏洩させたりする事に対しては、「民間の保有する個人情報(データ)保護」に関する何らかの規定を設ける必要は十二分に理解できます。が、公共性、公益性、社会的関心、国民の知る権利、情報公開の原則など個人情報といえども公にされても致し方ない状況はいくつもあり得ます。従って、「包括的」に個人のプライバシ−と称して何でもその個人に関わることを事実上の不可侵状態におくべきではありません。表現の自由と個人情報の保護との矛盾・衝突は、個人情報保護法という公法レベルでの解決にはなじみません。あくまで、メディアの自主規制と、不法行為という民事法レベルの解決に委ねられるべきであります。もっと慎重な審議、法的論議が不可欠です。

  3. あらゆる個人データの漏洩の実状は、さまざまな種類の勧誘電話(卒業名簿などから)、出生から終焉まで人生の節目、節目で送られてくるダイレクトメール等「いつ」「どこで」「だれから」「なぜ」知られたのか?目に余ります。そういった民間の個人情報の保護を目的としたはずの「高度情報通信社会推進本部個人情報保護検討部会」において、「いつから」「なぜ」メディアへのプライバシー侵害問題にまで検討テーマが拡大(「包括」)されたのか?まったくもって理解しがたいのです。これではマスコミ全体を規制する狙いがあからさまではないでしょうか。

  4. 特に問題視したいのはいわゆる「公人情報の扱い」です。政治家、官僚、その他公職につく人々も個人情報の保護対象者たりうるとなると、公的権力のガードの役割を果たす法律ができることとなり、時の権力に都合の悪い情報は封殺されることになりかねません。公職にある人々はもちろん、社会の指導的立場にある人々は、常に社会の批判や監視を必要とします。
    また、公人や有名人らのいわゆるパブリック・フィギュアは、その職業を選択することにより、私生活、経歴などプライバシ−の権利の一部を自ら放棄したというのが通説です。

  5. メディアは社会の不正や不公正、大衆の怒りを記事にする場合、検察や警察のように公権力で捜査、取り調べが行えません。メディアの“ペンの力”はまず情報収集力、取材力です。その場合どうしても個人情報と抵触します。疑わしい人物やその周辺取材を通してはじめて真相に迫れるのです。その情報収集、取材力が著しくそがれるような事態はなんとしても避けなければなりません。

  6. そこでまずメディアの取材源、情報源の秘匿はこれまでのように認められることが大前提になります。政治や経済の内幕、企業の癒着や利権記事などの場合、その情報源に内部告発者、関係者がなるケ−スが多々あります。それらの人が特定され罰せられるようになると、誰も真相、真実を告発しなくなり、自由な報道に対して重大な障害になるばかりか、公正な報道、社会正義さえもが脅かされかねません。

  7. 健全な社会のためにはこの自由な取材活動こそが保障されなくてはなりません。最高裁大法廷判決(昭和44年11月26日)でも「報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」(博多駅テレビフィルム提出命令事件)とされています。この判決では報道機関の報道を、国民の「知る権利」に奉仕するものとも述べています。メディアの取材活動は、国民の「知る権利」の一環で、よほどのことがない限りこれを制約すべきではないということではないでしょうか。

  8. それに伴って、メディアの表現の自由を行使する過程、つまり情報の収集、予備取材、編集作業(加工、処理など)、報道伝達、販売などのそれぞれの行程での自由な情報の流れを保障することは極めて大切なことです。

  9. また現行の民法709条<不法行為責任>では、マスメディアによる個人情報の公表に対して多くの判例を出しています。私生活上の問題、家庭内トラブル、戸籍や出自、学歴職歴、病歴、前科報道などが違法行為とみなされた場合、そのメディアに対して損害賠償や謝罪を課しています。マスメディアの個人情報(プライバシ−)侵害では裁判所の判断は現行法内で十分機能しているのではないでしょうか。

  10. 以上に述べたとおり、新聞、雑誌、放送等のメディアに包括的個人情報保護法の名目で、その取材、調査、報道に関して公的規制を加えることは、憲法21条により保障された言論・出版の自由を侵害することになります。加えて、そのような法的規制はメディア活動を萎縮させることにより、公衆の知る権利を奪う結果となります。また、EU個人情報保護指令9条のような包括的個人情報保護法に、ジャ−ナリズム目的などの適用除外や例外規定を設けることにも反対します。それは、適用除外、例外の判断を公的機関に与えるという意味で、やはり公的規制の一環だからであります。従って、今回の包括的個人情報保護の立法化には反対であり、あくまで個人デ−タ保護規定に限定すべきと考えます。                                                    

以上

平成11年10月6日