資料4添付資料6
A開示の根拠
報告書の特徴は、「医療従事者と患者が共同して疾病を克服するという、より積極的な医療を推進する観点に立ち」などと述べることで、極めて限定的な意味でのインフォームド・コンセントを主たるよりどころに開示を論じていることである。そのためにかえって、開示の範囲がさまざまな意味で限界付けられてしまっている。この点も問題であり、患者の権利の中心ともいうべき、徹底したインフォームド・コンセントと自己情報コントロール権をともに開示の根拠に位置付けるべきである。
B遺族への開示
報告書では、遺族に対する開示については「本検討会では医療従事者と患者が情報を共有し、患者の自己決定の尊重および相互の信頼と協力に基づいたよりよい医療を行なうという観点から今回の検討の対象とはしなかった」とする。
しかし我国の医療の現状は、医師と患者だけの関係にとどまらず、患者家族の協力やその了解を前提として遂行されている面が強い。また、これまでも患者の死後、医師は、遺族に対し慣行として病状経過、死因等を説明してきた実情がある。これは、遺族固有の権利に基づくものとも考えられる。
しかるに患者本人が死亡すると、医療機関が突如情報開示の義務を誰に対しても負わなくなると考えるのは極めて不自然であるし、特に報告書では、子供の医療情報について親権者父母からの請求を認めるとしているが、子供が死亡すると一転して父母にも開示せずともよいことになり、なおさら不自然・不条理である。
また、診療契約は、民法上の準委任契約と解され、契約当事者である患者が死亡しても、なお、相続人たる遺族は、医療者側に、その顛末の報告を求めることができ、カルテの開示をその一環として位置づけることは可能である。また、患者が未成年の場合には、親が診療契約の当事者として、子が死亡した場合にも、同様の請求をなしうることは当然であり、遺族への開示は、十分に根拠のあることである。また、患者の自己情報コントロール権ないし知る権利が遺族に相続されるとも考えられる。
したがって遺族へも医療情報を原則として開示するのが相当である。
通達により実施している診療報酬明細書(レセプト)の開示については、遺族もできるとしており、これとのバランスからいっても、遺族を検討対象にしなかったことは問題である。
もっとも、患者の病気、死因はプライバシーに属することであるから、患者本人が、生前に除外する意志を示していた親族がいる場合は、その者への開示は否定されるべきであろう。
C開示の方法
報告書は、診療記録の開示の方法として、「診療記録の作成・管理についての体制が整うまでの当分の間診療記録に代えて、診断病名、治療経過、投薬記録など患者の自己決定に必要な診療情報を記載した文書を作成交付することを持っても足りるとすべき」とする。
しかし、報告書の中でも、このやり方は「それ自体が所要の負担を伴うこと、患者から見て信頼性が確保されるかなどの問題もある」としているし、そもそも診療記録そのものを開示するのでなければ開示制度とは言えない。
D診療情報の提供の例外
報告書が、がんや精神病の患者に対する診療情報の提供について、基本的には例外扱いするべきではないとしている点は評価できる。
開示することによって本人又は第三者の利益を損なう場合には、非開示とする余地があるとしても、その判断には客観性が必要であり、非開示とする事由は限定的なものとなるようルールを設定すべきである。
E紛争処理のための第三者機関
報告書では、「診療情報の提供、診療記録の開示をめぐる相談、苦情および紛争については、例えば医師会等に専門家等からなる独立した処理機関を設置することも望まれる」とする。
確かに、かかる「独立した処理機関」は必要であろう。しかも、相談、苦情受付にとどまらず、非開示とされた場合の救済機関としての機能も持つ必要がある。開示請求を患者の具体的権利とするなら、裁判による救済の道もあるが、より簡易迅速に開示を受けられるために、医師側の意向に傾くことのない、公正中立な救済機関が必要である。かかる機関を医師会に置くのでは、そもそも形式上の中立らしさすらない。第三者機関は文字通り、中立的な機関として設置するべきものであって、その構成も、患者側の代表や法律家を加え、医療関係者は半数以下とすべきである。
F開示に向けての条件整備
報告書では、診療情報の開示を実現するための環境整備の問題として、診療記録の作成・管理が不十分であること、その背景として診療情報を扱う部門、専門家の欠如、経済的保障措置の欠如、系統的な教育の欠如、作成についての標準的な指針の欠如等を指摘しているが、これらの問題の解決のためには、まず開示の実現という方針を明示すべきであり、それによってはじめて条件整備を推進することが可能となろう。
以上