高度情報通信社会推進本部

第7回個人情報保護法制化専門委員会議事要旨

1.日 時:平成12年3月17日(木)15時〜17時40分
 
2.場 所:総理府3階特別会議室
 
3.出席者:
園部逸夫委員長、小早川光郎委員長代理、上谷清委員、高芝利仁委員、高橋和之委員、遠山敦子委員、新美育文委員、西谷剛委員、藤原静雄委員
*上記のほか、堀部政男個人情報保護検討部会座長が出席
(事務局)
藤井昭夫内閣審議官、小川登美夫内閣審議官、松田学内閣審議官
(関係団体)
日本疫学会理事長 田中 平三
倫理問題検討委員会委員長 稲葉 裕
地域がん登録全国協議会理事長 大島 明
事務局長 津熊 秀明
顧問 藤本 伊三郎
日本医師会副会長 小泉 明
常任理事 櫻井 秀也
参与 奥平 哲彦
全国銀行協会・
全国銀行個人信用情報センター
業務部長 橋本 長雄
全国信用情報センター連合会副会長 平野 征人
株式会社シー・アイ・シー専務取締役 原田 實
東京都政策報道室 都民の声部 情報公開課長 前田 敏宣
 
4.議 題
(1)関係団体ヒアリング
 ○ 日本疫学会及び地域がん登録全国協議会
 ○ 日本医師会
 ○ 全国銀行協会、全国信用情報センター連合会及び株式会社シー・アイ・シー
 ○ 東京都

5.審議経過

(1)関係団体ヒアリング

 @ 日本疫学会及び地域がん登録全国協議会
 日本疫学会より、資料1に従って、個人情報保護に関連する法整備に関する声明(案)等について説明があり、続いて地域がん登録全国協議会より、資料2に従って、地域がん登録の必要性と個人情報保護の現状について説明があり、両団体併せて質疑が行われた。質疑の概要は以下のとおり。

○地域がん登録について、地方公共団体の個人情報保護条例により登録が困難になっている例があると聞いているがどうか。
→ 1996年度に福岡県において、がん登録事業が廃止された例がある。廃止された主な理由は、精度が上がらなかったためだが、県の個人情報保護条例に触れるおそれがあるということも理由の一つであった。また、兵庫県では県の審議会において、それほど重要な事業であれば国レベルで法的な整備をするべきではないか、という指摘があったと聞いている。

○大阪府ではどうか。
→大阪府にも個人情報保護条例はあるが、地域がん登録は認められている。

○米などでは、がんの告知も進んでおり、医学研究のために情報を利用することもやむを得ないということで例外的な対応をしていると思うが、我が国のようにがんの告知が進んでいない場合には、患者も何のために自分の情報が利用されるのか分からず、米などとは状況が異なっていると考えるがどうか。
→米では確かに告知は進んでいるが、がん登録の本人同意はとっていない。がん登録は本人の診療に利益が出てくるというものではなく、公衆衛生の向上を目的として行われている。

○がん登録のシステムは公になっていることから、告知されれば自分が登録されることが分かるが、告知されなければ登録されたかどうかもわからない。そのギャップはどのようにして埋めるのか。
→告知されていない場合は、本人が知らない間に登録されることになるが、それはやむを得ないと考えている。ただし、がん登録のシステムの周知徹底にはさらに努めていきたい。

○疫学研究を適用除外とするべきとのことだが、包括的に適用除外とするということか。それとも苦情処理や管理責任については適用されても構わないという趣旨か。
→苦情処理や管理責任については適用されても構わない。

○地域がん登録について、大阪府の場合、委託者である府と受託者である医師会との責任分担はどのようになっているのか。
→大阪府においては、個人情報保護条例が制定された際に審議会で議論があり、大阪府が責任を負うということになっている。

○補足することがあればお願いしたい。
→疫学は健康政策に科学的な根拠を与えるものである。脳卒中などの減少にも疫学は貢献してきた。
→日本疫学会には約1000人の会員がいるが、個人情報の取扱いについては学会内にも様々な意見がある。ただ、疫学研究は個人情報を扱わないと成り立たない学問であり、研究ができなくなるということがないよう配慮願いたい。
→地域がん登録は、がん治療のレベル向上に大いに貢献してきた。中間報告の5原則すべての適用除外を求めるものではないが、各原則について十分に検討してもらいたい。

 A 日本医師会
 日本医師会より、資料3に従って、医療分野における個人情報の保護について説明があり、質疑が行われた。質疑の概要は以下のとおり。

○地域がん登録については、基本法で適用除外とする方法のほか、地域がん登録法のような法律を作って対応してはどうかという意見もあるがどうか。
→今回は基本法の議論ということで、そこまでは検討していないが、いずれにしてもがん登録を続けていくため、実効性のある方法を考えなければならない。

○資料中「個人に関する情報であっても、特定の個人を識別できない場合」とはどのようなものか。
→特定の個人を識別するには、氏名や生年月日といった個人の属性を示す情報が必要になるが、それ以外にもごく一般的な表現で個人の属性を示すことにより、特定の個人とは結びつかないようにするというような扱い方もあり得る。

○症例報告などで、氏名などを抽象化して報告するようなものを念頭においているのか。
→症例報告の場合、そういう例が多いのではないか。

○がん告知については、進行性のがんの場合は予後が良くないことから、告知が難しく、早期がんの場合は治癒の可能性もあり、告知がしやすいということを聞いているが、告知できる者にはがん登録について説明しているのか。
→がん告知については、必ずしもそうとは言えない。治療後に早期がんを告知してノイローゼになったという例もあり、個人的には、むしろ早期がんでは告知すべきではないと考えている。どういう症例の場合告知するか、ということは判断が難しく、ある程度は医師と患者の信頼関係によるものではないか。本人同意については、たとえ告知できる場合であっても、同意が得られた者だけのデータではがん登録の意味がなくなってしまう。

○告知が困難な場合には、死亡後に登録するという方法は取れないのか。
→そういう方法は取れない。例えば、35歳で胃がんになった人の登録を85歳まで待つということになる。

○がん治療が終了した時点でも同意を取れないのか。
→同意が取れなければ登録できず、同意した患者のみのデータしか得られないため、学問的には全く意味をなさなくなる。

○臨床試験でも同意がなければできないのが原則。なぜがん登録だけが良いということになるのか。研究という意味では同じではないか。
→臨床試験は患者の意思に基づいて行うものだが、患者はがんになろうと思ってなるわけではなく、がんになった患者から情報を得るという意味で全く異なるものである。

○カルテについては、患者の個人情報と医療従事者の情報が記載されており、それぞれ区分できるのではないかということを聞いているが、実際にはどのような情報が記載されており、また、それを区分することは可能なのか。
→カルテについては、保険医療養担当規則で「診療に必要な事項」を記載することとなっており、ある程度医師の判断に任されていると理解している。検査データ、所見、他の医師との相談内容、感じたことなど様々なことが記載されている。メモの部分など、ある程度は区分できると思うが、厳密には区分しづらい。
→ドイツでは、いわゆるデュアルシステムといって、主観的な部分を除き、客観的な部分については開示すべきとの判例があるが、日本の診療録は開示することを前提に作成されていないという面もあり、現実には一体化しているのが現状である。

○個人に対してがん登録の同意を得るのは難しいと思うが、例えば、医療機関の掲示板などでがん登録制度の周知をするという方法は取っているのか。
→すべてを把握しているわけではないが、やっている所もあると思う。そのような方法により全体的な同意として認められるということであれば、良い方法ではないか。

○「醫師の倫理」では、守秘義務について、かなり厳しく規定されていたにもかかわらず、新たに作成する「医の倫理綱領」では「注釈」において言及するにとどまっているのは、研究上の利活用の必要などから、個人情報の取扱いについて考え方が後退したということか。
→「医の倫理綱領」は大綱的な記述であるため、守秘義務については明示していないが、個人情報を重要だと考える方向で見直しているものであり、個人情報の利活用のために、守秘義務に関する記述を控えたということはない。

○医学研究や公衆衛生の維持向上の観点から、医療分野に関する個人情報を適用除外する場合、その範囲を限定することが必要だと考えるが、研究とは関係のないところで個人情報が使われることについては規制して良いと考えるのか。
→学術・研究以外に利用する場合といった目的外利用の制限はあって良い。
→個人情報の保護のため、刑法上の守秘義務の対象を看護婦や事務職員にまで広げる、ということもあって良いのではないか。

○最近は検査データもコンピュータに入力され、病院内の別の場所でもすぐに引き出せるようになっており、場合によっては他の医療機関にも提供されるというようなこともあるのではないかと思うが、情報が提供される範囲については、ある程度限定的に考えるべきではないか。
→たしかに電子カルテなどが広く普及しはじめており、病院内のネットワーク化が進んでいるが、検査データなどの情報は必要な場所にしか提供されておらず、アクセスも制限されている。別の医療機関に勝手に情報が流れるということはない。
→電子カルテなどの電子媒体による診療情報の保存については、厚生省通知により厳しい基準が設けられており、いい加減なものは認められないことになっている。

 B 全国銀行協会、全国信用情報センター連合会及び株式会社シー・アイ・シー
 全国銀行協会及び全国信用情報センター連合会より、資料4及び資料5に従って、個人情報に対する取組状況と個人情報保護検討部会中間報告に対する意見等について説明があり、続いて株式会社シー・アイ・シーより、資料6に従って、個人情報の管理の現状等について説明があり、3団体併せて質疑が行われた。質疑の概要は以下のとおり。

○ 配布資料5の記載で、1(2)Dその他の収集項目、公的記録のうち、破産宣告「等」の「等」の内容及び資料6の記載で、3中間報告に対する意見のうち、官報に公告された情報「など」の「など」の内容如何。
→(全情連)公的記録は官報に公告された事項であり、登録期間は破産については宣告日から10年を超えない期間、禁治産者、準禁治産者取消確定日までの期間(法律により抹消していく方向)である。
→(CIC)登録情報のうち参考情報に該当するが、破産、禁治産、準禁治産、失踪である。

○就職等の際、雇用主が債務等の不存在の証明等のために、求職者等に自己情報の開示をさせているとのことだが、件数など推計しているのであれば、何件ぐらいか。
→(全情連)第三者による開示の強要については、ある特定の企業、会社の問題であり、常時発生しているのではなく、ときに集中的に出てくる問題というのが現状である。なお、違法と決めつけられないので、開示請求の取下を御協力願う程度の対応しかとれない。

○資料4の添付資料B(4)本人情報の開示等、イ本人からの開示の求め、【適用除外】C他の顧客の情報が含まれている場合には開示請求を認めるべきではないとのことであるが、多少なりとも含まれていれば一切開示を認めないという趣旨なのか、それとも手間ひまとも関係するが、一応は他の顧客情報を消去して開示するという趣旨か。
→(全銀協)紙面による開示の場合、他の顧客の情報を消去したとしても、消去した内容を聞かれてしまうので適用除外にしていただきたい。ちなみに、現在本人開示はカタカナで検索しているが、仮に生年月日が一緒でも住所が全く違えばその部分はマスクをかけるなど、他の客の情報を別の客に見せるのは厳しく制限しているのが現状である。

○今後の方向として、情報交流を強調しているが、今後、ポジティブ情報も併せ、情報交流は情報主体の個別の同意を得ることで足りると考えているか。
→(全銀協)現在既に情報交流しており、これについては、情報主体の同意を得ている。現在の交流の延長であれば、情報主体の同意を得ており、それで足りるという理解である。

○情報の正確性に関する取扱いの現状について、信用を供与する側と借りる側の間で、履行状況等の情報を登録する場合によく紛争があるが、どのように処理しているのか。例えば貸金業者、クレジット会社側の問題で、他人の名前が使われたり、利息制限法の問題がある場合はどのように紛争を処理するのか。
→(CIC)通常は、開示制度を通じて消費者が自分の情報を開示する。情報に欠陥があれば、調査請求や訂正請求を行う。これを受け付け、与信業者へ通知し、与信業者の意見を聴いて間違いないのなら訂正・削除する。そしてその結果を本人へ通知する、という仕組みがとられている。なお、ときとして与信業者と情報主体間で争いがあり、その結果報告として与信業者側から訂正の申し出があることもある。
→(全情連)まず、前回支払約定日より3ヶ月間支払いがない場合以外は「延滞」としないなど、延滞情報につき客観的基準を取っており、会員が任意に判断できない仕組みとなっている。また、会員と消費者の見解が相違する場合には、「調査中の注記」の制度があり、ここに消費者の主張がそのまま記載されている。
→(全銀協)紛争解決のルートとしては、@関係金融機関に直接申し出る、A全銀協に本人が開示請求する、B延滞が発生した場合、毎月一回本人に郵送で通知する、があり、本人からおかしいという申出があれば調査を開始する。多いのは友達、家族に名義を無断借用されるケースであり、この場合は会員間で調査・訂正する。裁判にまで至るケースはほとんどない。

○全銀協以外の2団体は、延滞登録の本人への通知を実施しているか。
→(全情連)登録通知は実施していない。理由は@会員が消費者金融であり、会員と消費者の接触が多いこと、A保証会社がついているため知らぬ間に債権が移転していること、が少ないこと、B情報機関からの通知そのものが威迫にあたる場合があること。
→(CIC)登録通知は実施していない。理由は、@相談の前に、消費者、与信業者間で交渉があり、消費者は延滞等の事実を十分承知していること、A消費者に通知することが一種の脅迫的な印象を与えるおそれがあること、B毎月8万件程度の新規登録があり、郵送で通知すると、不着、返送、それらによる混乱の発生、あるいは紛失、他人による開披等の問題が生じるおそれがあること。

○配布資料Cで、自主ルール違反に対するペナルティが記載されているが、ここにあげられている「会員」とは、従業員も含むのか、法人としての意味か。
→(全銀協)「会員」とは機関であるが、想定している事態はあまり明確に議論はされていない。個人的には個々の職員が犯した上で、会員の組織上の仕組みとして問題点があれば追求するということであると思う。
→(CIC)事情を十分調査し、管理監督上まずい点があれば、情報管理委員会で審議した上で会員自体を処罰することとしている。従業員が犯しても、管理監督上の仕組みとして問題があれば、法人にペナルティを課すという理解である。

 C 東京都
 東京都より、資料7に従って、東京都における個人情報保護制度の運用状況について説明があり、質疑が行われた。質疑の概要は以下のとおり。

○民間事業者に対する指導等に関し、基本法を作った場合、国と地方公共団体の役割分担について何か意見はあるか。
→東京都と異なり調査、勧告、公表などの規定を設けている他の地方公共団体でも実際にその規定を発動したところはない模様である。しかし、法制度上で国と地方公共団体で役割の分担を明示すれば、この仕組みを動かせるのではないか。なお、役割分担については、現在のところ明確な意見はないが、過度に地方公共団体側に負担のかからないものとしていただきたい。

○マニュアル情報も保護の対象に含むことにしているが、登録の中でマニュアル情報の占める割合はどの程度か。近時はほとんどコンピュータ処理情報か。また、この制度を立ち上げる段階で、事務をすべて把握したのか。
→登録の中では、マニュアル情報の占める割合が圧倒的に多い。個人情報を取り扱う事務に関しては、全庁的に洗い出しを行い、すべて登録しているはずである。

○個人情報保護条例第7条第3項で、保有の必要がなくなった個人情報の消去又は記録した公文書の廃棄が規定されているが、この保有の必要性がなくなったという判断は実施機関が行うのか。また保有の必要性がなくなったという判断はオープンにされているのか。
→文書管理規則に従い、主務課長の判断で文書の保存年限に沿って廃棄することとしている。

○個人情報保護条例第10条第2項第3号で、「出版、報道等により公にされているとき」は、個人情報の目的外利用・提供をすることができるとされているが、この条項の制定過程でどのような議論がなされたのか。
→制定時の議論は把握していないが、この解釈運用としては、「公にされているとき」とは、新聞、書籍、テレビ、ラジオ等により、一般に取得し、または知りうる状態にあり、その公知性に疑義がないときを指すこととされている。

○実施機関が収集した情報であっても、別途情報が収集され放送されるなどしたら、目的外利用提供制限の適用除外となるのか。
→放送などされ、公知といえるならば、適用除外となり、本条例が保護する個人情報から外れることになる。

○個人情報保護条例第5条の個人情報取扱事務の届出の際に、内容の是非の審査はしているか。その際に折衝や協議はあるのか。
→是非についてのチェックはしており、項目が記載された届出の様式に実際の事務に用いる書式が添付され、届け出られるので、その書式を参考としつつ、様式の項目をみて妥当性を判断することにしている。

○個人情報取扱事務届出の判断はOECD8原則などに照らした判断か。
→OECD8原則を踏まえた条例の趣旨に沿った判断である。

○民間事業者への対応についても、情報公開課の所管か。そうだとすると、事業所管課が対応すべき場合もあるのではないか。
→個人情報の不適正な取扱いに対する窓口は情報公開課の所管である。また、例えば人権的観点の情報を不適正に収集したのであれば人権担当部局が対処している。本条例は、一般的観点から、不適正な収集に対処するという区分けとなっている。

○情報公開条例では、新たに公安委員会を実施機関に含める方向と聞いているが、個人情報保護条例の実施機関もそちらに連動して公安委員会を含むことになるのか。
→公安委員会の取扱いについては、現在ではまだ検討課題であり、具体的方向性は固まっていない。

(次回の予定)
 次回は、3月22日(水)15時から17時まで、総理府3階特別会議室で開催し、自由討議を行う予定。

*文責事務局

*本議事要旨の内容については、事後に変更の可能性があります。


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