目 次
- I. 背景
- II. 基本的な考え方
- 1. 意義
(1) 情報セキュリティポリシーの必要性
(2) 情報セキュリティ対策の特性- 2. 政府の情報セキュリティの基本的な考え方
- 3. 定義
- 4. 対象範囲
- 5. ポリシーの公開
- 6. ポリシーに関する留意点
- III. ポリシーのガイドライン
- 1. ポリシーの位置づけと基本構成
- 2. 策定手続
(1) 策定手続の概要
(2) 策定のための組織・体制
(3) 基本方針の策定
(4) リスク分析@ 概要
A 情報資産の調査
B 重要性による分類
C リスク評価
D リスクに対する対策
(5) 対策基準の策定@ 構成
A 組織・体制
B 情報の分類と管理(i) 情報の管理責任
(ii) 情報の分類と管理方法
C 物理的セキュリティ
D 人的セキュリティ(i) 役割・責任、免責事項
(ii) 教育・訓練
(iii) 事故、欠陥に対する報告
(iv) パスワードの管理
(v) 非常勤及び臨時職員等の雇用及び契約
E 技術的セキュリティ(i) コンピュータ及びネットワークの管理
(ii) アクセス制御
(iii) システム開発、導入、保守等
(iv) コンピュータウイルス対策
(v) セキュリティ情報の収集
F 運用(i) 情報システムの監視及びポリシーの遵守状況の確認(以下「運用管理」という。)
(ii) 運用管理における留意点
(iii) 侵害時の対応策
(iv) 外部委託による運用契約
G 法令遵守
H 情報セキュリティに関する違反に対する対応
I 評価・見直し(i) 監査
(ii) 点検
(iii) ポリシーの更新
(6) ポリシーの決定- 3. 導入
(1) 導入作業の概要
(2) 実施手順の作成
(3) ポリシーへの準拠
(4) 配布及び説明会- 4. 運用
(1) 運用管理
(2) 侵害時の対応@ 訓練の実施等
A 連絡における留意事項
B 調査における留意事項
C 対処における留意事項
D 再発防止計画- 5. 評価・見直し
(1) 監査
(2) ポリシーの更新
(3) ガイドラインへの反映
- IV. 付録
- 1. 用語解説
- 2. 参考資料
- 3. ポリシーの例
一方、IT革命による高速な情報の流通及びボーダレス化が進展するということは、これらのネットワークを経由して、外部の者が情報システムへ不正に侵入し、データを改ざん・窃取し、あるいはシステムの破壊又は利用妨害を行うといった新しい脅威にもさらされることを意味しており、実際いわゆるハッカー(*1)による情報システムへの侵入やコンピュータウイルスの問題をはじめ、情報セキュリティに関するさまざまな問題が発生している。また、各個人が、ネットワークに接続されたパソコンを使用することが一般的になることにより、組織内部の者による情報の意図的な漏洩及び外部への不正なアクセス等、内部から発生する情報セキュリティ上の問題に対する危険性についても無視できない。
平成12年1月に発生した一連の各省庁ホームページの改ざん事件によって、中央省庁におけるこれまでの情報セキュリティに関する取組みが、必ずしも十分ではないことが明らかになった。平成15年度までにその基盤を構築する電子政府の実現に向けて、政府として、情報の安全性及び信頼性を確保することは必要不可欠であり、そのための体制整備は喫緊の課題である。
「ハッカー対策等の基盤整備に係る行動計画」(平成12年1月21日情報セキュリティ関係省庁局長等会議決定)は、これらの問題に対する具体的措置を提示するものである。その一つの措置として、情報セキュリティ対策推進会議(*2)は、各省庁向けの「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を策定し、各省庁はこのガイドラインを踏まえ、平成12年12月までに情報セキュリティポリシーを策定し、これに基づく総合的・体系的な情報セキュリティ対策を図ることとしている。
本ガイドラインは、これらの情報セキュリティを担保するために必要となる各省庁の情報セキュリティポリシーに関する基本的な考え方、策定、運用及び見直し方法について記したものであり、各省庁の情報セキュリティポリシー策定のための参考に資することを目的とするものである。
(2) 情報セキュリティ対策の特性
ITの発展速度は極めて速いため、ある時に講じた最高の情報セキュリティ対策が、将来にわたっても最高のものとして永続することはない。その時々のハードウエア、ソフトウエアの導入は導入時には適切な情報セキュリティ対策であり得るが、継続性は保証されていない。情報セキュリティ対策は、本ガイドラインを基に情報セキュリティポリシーを策定することによって完結する一過性の取組みではなく、情報セキュリティポリシーの策定及びそれに続く日々の継続的な取組みによって確保される性質のものであることを十分に認識するべきである。
また、情報セキュリティポリシーの中には、継続的な情報収集及びセキュリティ確保の体制を構築しておくこと、また「いかに破られないか」のみならず「破られたときどうするか」についての対策も適切に規定し、当該規定に基づいた対策を十分に構築しておくことが重要である。
さらには、情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティポリシーに関連する実施手順等の規定類を定期的に見直すことによって、各省庁の所有する情報資産に対して、新たな脅威が発生していないか、環境の変化はないかを確認し、継続的に対策を講じていくことが必要である。特に、情報セキュリティの分野では、技術の進歩やハッカーの手口の巧妙化に鑑み、早いサイクルで見直しを行っていくことが重要である。
(1) 各省庁(*3)は、このガイドラインを踏まえ、情報セキュリティポリシーを策定し、これに基づく総合的・体系的な対策の推進を図る。その際、各省庁は、平成15年度までに電子政府の基盤としてふさわしいセキュリティ水準を達成することを目標として、計画的に必要な措置を順次講ずる。
なお、このガイドラインが対象とする情報セキュリティを実現するためには、その前提として、文書等の情報の管理も適切に行われる必要がある。各省庁は、このような面での対策も必要に応じ考慮し、全体として高いセキュリティ水準を実現する。
(2) また、各省庁は、このガイドラインを踏まえ、その地方支分部局、所管の特殊法人等の情報セキュリティ水準の向上に努める。
(3) 内閣官房は、不正アクセスやコンピュータウイルス等が生じた場合における政府の緊急対処及び情報セキュリティ関連の人材育成や研究開発等の各省庁共通の課題について、政府内での協力・連携等の体制を確立・強化し、政府全体としてセキュリティ水準の向上を図る。
(4) 各省庁は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律に定めるアクセス管理者による防御措置を実施すること等により、他の情報システムに対する攻撃に政府の情報システムが悪用されることを防止する。
(5) 我が国の情報通信基盤におけるセキュリティ水準の向上のため、民間との相互の情報交換を緊密にする等、官民の協力・連携を図る。
(6) 各省庁は、情報セキュリティポリシーを定期的に評価し、必要があれば更新することとし、少なくとも策定後1年を目途に更新の必要性の有無を検討する。
また、内閣官房は、このガイドラインについて、各省庁における情報セキュリティポリシーの実施状況、将来の技術、脅威の状況等を踏まえ、継続的に評価・見直しを行う。
○情報セキュリティ
情報資産の機密性、完全性及び可用性を維持すること。
○情報資産
情報及び情報を管理する仕組み(情報システム並びにシステム開発、運用及び保守のための資料等)の総称。
○情報システム
同一組織内において、ハードウエア、ソフトウエア、ネットワーク、記録媒体で構成されるものであって、これら全体で業務処理を行うもの。
○情報セキュリティポリシー(以下「ポリシー」という。)
各省庁が所有する情報資産の情報セキュリティ対策について、各省庁が総合的・体系的かつ具体的にとりまとめたもの。どのような情報資産をどのような脅威から、どのようにして守るのかについての基本的な考え方並びに情報セキュリティを確保するための体制、組織及び運用を含めた規定。情報セキュリティ基本方針及び情報セキュリティ対策基準からなる。
○情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(以下「ガイドライン」という。)
政府全体の情報セキュリティについての基本方針及び各省庁におけるポリシー策定のために参考とする手引であるとともに、各省庁が最低限行うべき対策を示すもの。
○情報セキュリティ基本方針(以下「基本方針」という。)
各省庁における、情報セキュリティ対策に対する根本的な考え方を表すもので、各省庁が、どのような情報資産を、どのような脅威から、なぜ保護しなければならないのかを明らかにし、各省庁の情報セキュリティに対する取組姿勢を示すもの。
○情報セキュリティ対策基準(以下「対策基準」という。)
「基本方針」に定められた情報セキュリティを確保するために遵守すべき行為及び判断等の基準、つまり「基本方針」を実現するために何をやらなければいけないかを示すもの。
○情報セキュリティ実施手順等(以下「実施手順」という。)
ポリシーには含まれないものの、対策基準に定められた内容を具体的な情報システム又は業務において、どのような手順に従って実行していくのかを示すもの。
| 対象 | 例 |
| 情報システム等 | コンピュータ、基本ソフトウエア、応用ソフトウエア、ネットワーク、通信機器、記録媒体、システム構成図等 |
| 情報システムに記録される情報 | アクセス記録、文書及び図面等の電磁的記録 |
| これらの情報に接するすべての者 | 常勤、非常勤及び臨時を含む職員、委託事業者等 |
(2) ポリシーの継続的な運用及び見直しについて、次の事項に留意すること。
○ポリシーは、適切に導入・運用されて初めて意味のあるものであり、適切に導入・運用されないポリシーは策定されていないのと同じであること。
○ポリシーは、平成15年度にその基盤が構築される電子政府の実現のための情報セキュリティの十分な確保を当面の目標として策定していくものであるが、当初から極めて高度なポリシーを策定することは、現実的に運用が極めて困難となる可能性があることから、実態に即したポリシーを計画的に策定・運用し、その実施状況を踏まえて見直し、平成15年度までに目標を達成すること。
(1) 策定手続の概要
ポリシーは、図3に示すとおり、策定のための@組織・体制を確立し、その組織・体制の下でA基本方針の策定、Bリスク分析及びC対策基準の策定を行い、D各省庁内において正式に定めるものとする。
また、各省庁においては、それぞれのポリシーに従い、対策基準に定められた事項を実施する手順を定めたE実施手順を策定することとなる。
(2) 策定のための組織・体制
ポリシー策定には、組織の幹部の関与を明確にするとともに、その責任の所在を明確にするため、関係部局の長、情報システムの管理者及び情報セキュリティに関する専門的知識を有する者などで構成する組織(本ガイドラインでは、以下「情報セキュリティ委員会」とする。)を設ける必要がある。このため、ポリシーには、情報セキュリティ委員会の目的、権限、名称、業務、構成員等を定める。ポリシーでは組織内の様々な情報に係る問題を取り扱うことから、すべての部局等の関係者がこれにかかわることが考えられるが、中心的な構成員としては、次のような関係者を含むことが考えられる。
・情報システム関係(LAN管理担当課等)
・技術関係(内外の技術的知識を有する専門家等)
・監査関係(政策評価、内部監査等を行う課又は官房総務課等)
・文書関係課
・人事関係課
・会計関係課
・広報関係課
・庁舎管理担当課
また、ポリシーの策定について、各部署の情報セキュリティ担当者となり得る者を体制に組み込むほか、必要に応じて職員からの意見を聴取し、疑問点に対し的確に説明できるようにする等、策定段階からポリシーが職員に理解されるような環境を醸成することが重要である。
なお、情報セキュリティ委員会による承認を受けて、ポリシー策定作業の一部を下部の組織(策定作業班)に行わせることができる。やむを得ない場合、この策定作業班に外部の者を含めることができる。策定作業班に業務を行わせる場合、正式な辞令の発令等を伴う幹部からの承認を受けた組織を編成し、省庁内全職員には、幹部の命令に基づく任務であることを認識させることが重要である。
(例)
| 情報セキュリティ委員会
次の組織の代表者からなる委員会を設置する。
また、すべての局及び部の関係者として、各局総務課、Aシステムの担当課(A課)は、ポリシーの決定手続に加わることとする。 策定作業班の職員は、ポリシーを策定していく上で、省庁内の様々な部局等と調整を行うとともに、理解を求めていかなければならない。 |
(3) 基本方針の策定
各省庁の情報システムに求められる情報セキュリティの確保のため、それぞれの省庁が対策を講じることとする基本方針を定める。
この基本方針には、情報セキュリティ対策の目的、対象範囲など、各省庁の情報セキュリティに対する基本的な考え方を示す。
また、ポリシーを理解するために必要な用語について、その定義を定める。
なお、基本方針は、情報セキュリティに関する基本的な方向性を決定づけるものであることから、頻繁に更新される性質のものではないことに留意する必要がある。
(4) リスク分析
@概要
リスク分析とは、保護すべき情報資産を明らかにし、それらに対するリスクを評価することである。様々なリスク分析方法が考えられるが、ここでは具体的な方法の一つを示すこととする。
具体的な手順は次のとおりである。
(a) 各省庁の保有する情報資産を調査し、重要性の分類を行い、この結果に基づき、要求されるセキュリティの水準を定める。
(b) 各省庁の情報資産を取り巻く脅威を調査し、その発生頻度及び発生した際の被害の大きさからリスクの大きさを求める。
なお、一般的に両者の積をリスクの大きさとしている。
(c) リスクの大きさがセキュリティ要求水準を下回るよう対策基準を策定し、適切なリスク管理を行う。
なお、情報資産に変更があったとき、又は情報資産に対するリスクに変化が生じたときには、関係する情報資産についてリスク分析を再度行い、その結果ポリシーの見直しが必要となった場合にはその見直しを行う。また、定期的なポリシーの評価・見直しの際にも、リスク分析から再検討することが必要である。また、リスク分析の際に発見された情報資産の脆弱性で、早急に対応する必要のあるものについては、速やかに措置を講ずることが重要である。
リスク分析を行った結果の資料は、ポリシー策定の基礎資料として保管する必要があるが、当該資料には情報資産の脆弱性の分析が記されているため、厳重な管理が必要である。
A情報資産の調査
保護すべき情報資産を明らかにするにあたって、情報がどこにあり、誰が管理し、どのような状況で扱われているかについて調査する。
具体的な調査項目としては、次のものがある。このほか、リスク分析の結果等を検討した資料を作成する。
(例)
| 情報資産調査票 | |
| 情報資産 | |
| 用途 | |
| 管理者 | |
| 利用者(アクセス権限) | |
| 保存(設置)場所 | |
| 保存(設置)期間 | |
| 重要性 | T・U・V・W
機密性[T・U・V・W] 完全性[T・U・V・W] 可用性[T・U・V・W] |
B重要性による分類
調査した情報資産に対し、機密性、完全性、可用性の3つの側面から重要性を検討し、情報資産を分類する。
この分類は、情報資産をどのように扱い、保護するかを決めるための判断基準となり、これに基づき要求されるセキュリティ水準が定められる。
(重要性の3つの側面)
(a) 機密性・・情報資産の機密に基づく重要性
(b) 完全性・・情報資産の完全性・正確性に関する重要性
(c) 可用性・・情報資産の利用可能性・継続性に関する重要性
(例)
重要性の分類
|
(例)
| 重要性に基づくセキュリティ要求水準の設定(重要性の3つの側面を勘案して定める。)
重要性T → セキュリティ要求水準1 重要性U → セキュリティ要求水準2 重要性V → セキュリティ要求水準3 重要性W → セキュリティ要求水準4 |
Cリスク評価
調査したすべての情報資産についてリスク評価を実施する。
(a) 取り巻く物理的、技術的、人的環境における脅威について調べる。
(脅威の例)
|
| (段階的な評価水準設定)
(a) 脅威の発生頻度
(b) 発生時の被害の大きさ 重要性のランク付けと近似させる方法(つまり、重要性が大きい場合、被害の大きさも大きくなるとの考え方)がある。厳密に求めるには、重要性の3つの側面を勘案して定めることが必要である。 <被害の大きさ例> a: 重要性Tと同じ b: 重要性Uと同じ c: 重要性Vと同じ d: 重要性Wと同じ |
Dリスクに対する対策
リスク評価により定められた、情報資産の脅威ごとのリスクの大きさと、要求されるセキュリティ水準とを比較することにより、情報セキュリティ対策の方針が定められる。
対策基準の検討において、算定されたリスクの大きさを基準として、発生頻度及び被害の大きさを低減させ、セキュリティ要求水準を満足させる対策基準を定める。また、脅威の発生頻度又は被害の大きさを低減させる対策には、脅威を防止するものだけでなく、実際に被害が発生した場合に、如何に情報を守るか、如何に改ざんされないか、如何に継続して使用できるようにするか(あるいは障害が起きても如何に早急に復旧できるか)、といった観点を考慮に入れながら、対策を講じることが重要である。
具体的には、情報資産の重要性を勘案して定められたセキュリティ要求水準を達成する対策を講じることとなるが、セキュリティ要求水準が高いほど、発生頻度及び被害の大きさ(リスクの大きさ)は小さくならなければならない。
例えば、リスクの大きさをセキュリティ要求水準まで低減させる方法は、次の3つに分類できる。
(a) 「アクセス権限の付与を必要最低限の者に限る」等被害の大きさを小さくすることによってリスクの大きさを低減させる方法。
(b) 「コンソールからのみログインを許可する」等発生頻度を小さくすることによってリスクの大きさを低減させる方法。
(c) 「情報システムの改ざんなどを検知する」等被害の大きさと発生頻度のいずれも小さくすることによってリスクの大きさを低減させる方法。
具体的に定める対策は、情報資産及びその脅威の内容に応じて、利用者の利便性を考慮した効果的かつ効率的なものとする必要がある。
(例)対策基準の検討(不正アクセス)
| リスク評価の結果(発生頻度B、被害の大きさa)
↓
「不正アクセス」のリスクを低減させるための対策基準の検討
○アクセス権限の付与を必要最低限の者に限ること。 ○コンソールからのみログインを許可すること。 ○修正プログラム(パッチ)を導入すること。 ○アクセス記録を監視・記録すること。 ○情報システムの改ざんなどを検知すること。 ○緊急時対応により情報資産を保護すること。等 ↓
リスクの低減(発生頻度C、被害の大きさc)
|
(5) 対策基準の策定
リスク分析の結果によって得られた各情報資産に対する個々の対策について、体系化した上で対策基準を定める。
@構成
対策基準の構成は、次のとおりとする。
(i) 組織・体制
(ii) 情報の分類と管理
(a) 情報の管理責任
(b) 情報の分類と管理方法
(iii) 物理的セキュリティ
(iv) 人的セキュリティ
(a) 役割・責任及び免責事項
(b) 教育・訓練
(c) 事故、欠陥に対する報告
(d) パスワードの管理
(e) 非常勤及び臨時職員等の雇用及び契約
(v) 技術的セキュリティ
(a) コンピュータ及びネットワークの管理
(b) アクセス制御
(c) システム開発、導入、保守等
(d) コンピュータウイルス対策
(e) セキュリティ情報の収集
(vi) 運用
(a) 情報システムの監視及びポリシーの遵守状況の確認(運用管理)
(b) 運用管理における留意点
(c) 侵害時の対応策
(d) 外部委託による運用契約
(vii) 法令遵守
(viii) 情報セキュリティに関する違反に対する対応
(ix) 評価・見直し
A組織・体制
情報セキュリティの確保のための組織・体制については、幹部が率先して情報セキュリティの確保を推進することが重要であることから、情報セキュリティについて最高責任者(最高情報セキュリティ責任者(CISO)(*5))を定め、その責任及び権限を明確にする必要がある。具体的には、この最高責任者を長とする情報セキュリティ委員会(策定時の委員会と同じ)に対して、日々のポリシーの遵守状況の確認体制の確立、導入の際の改善点(現実との齟齬)の調査及び見直し、並びに教育・啓発活動を行う役割を担わせることになる。
B情報の分類と管理
リスク分析によって行われた情報の管理方法に関する分類ごとに情報の管理の方法を定める。
(@) 情報の管理責任
それぞれの情報について、誰が管理責任を負うのかについて定める。情報を管理する者及び利用する者の2つの責任が考えられるが、それぞれ、具体的な責任と役割を定める必要がある。
また、情報管理責任者を各課において定めることとし、当該課において作成された文書の管理の責任を負うこととする。また、作成中の文書、電子メール等の管理責任が定められていない情報については、個人において適切に管理しなければならないことを定める。
(例)
| 情報は当該情報を作成した課部局等が情報管理責任者として管理責任を有する。
A局として作成された情報 →A局総務課 A局X課として作成された情報 → A局X課 省として作成された情報 → 大臣官房総務課(又は、管理責任者として指定された課) |
| A 原則
当省内の情報は、情報公開法の趣旨を踏まえ公開、非公開について定めることとする。 (以下、個人のプライバシーに関する情報や、情報セキュリティ上問題が生じる可能性のある情報等、情報公開法の趣旨を踏まえ公開することが不適当と判断される情報について必要に応じて定める。) B 情報の分類に関する表示
C 情報の管理(分類ごとに定める。)
|
C物理的セキュリティ
情報システムの設置場所について、不正な立入り、損傷及び妨害から保護するための適切な設備の設置、出入管理及び執務室にあるパソコン等の盗難対策等物理的な対策について具体的な項目を定める。
なお、モバイル機器を利用した情報漏洩を防ぐ等、今後のモバイル機器の普及等を考慮した対策について検討する必要がある。
(例)
| コンピュータ等の機器及びネットワーク機器について、リスク分析に基づいたT、U、V、Wの分類に応じて、適切な物理的対策を講じなければならない。
T 二重鍵及びIC認証カードの採用、監視カメラの設置、防磁壁の設置、入退出管理の徹底、消火設備の設置、配線の防護。
これらの機器は、当該機器の管理責任課において、適切に管理をしなければならない。 |
D人的セキュリティ
情報セキュリティの向上は、利便性の向上とは必ずしも相容れないものであり、利用者の理解が得にくい場合もあることから、十分な教育及び啓発が講じられるように必要な対策を人的セキュリティとして定める必要がある。
(@) 役割・責任、免責事項
基本方針で定めた対象範囲のうち、各対象者の情報セキュリティに関する役割・責任(誰が責任をとるのか、管理職・職員の役割)及び外部業者との関係(プログラム開発担当者との関係も含む。)について定める。
免責事項については、例えば、自らの責任となる情報セキュリティ障害について、積極的にその障害について申告した場合は免責されることを定める等、ポリシーを円滑に運用するために必要な事項を定める。
(a) 最高情報セキュリティ責任者
すべての情報セキュリティに関する権限及び責任を持つこと、また、運用に関し、重大な事項に関する決定権限を持つ等の役割を定める。
(b) 情報セキュリティ担当官(管理職等)
各課部局において情報セキュリティ担当官を設置すること、各組織における指示系統、意見の集約及び責任等果たさなければならない職務の規定等を定める。例えば、各課の職員は、ポリシーに関する違反や問題が起こった際には、情報セキュリティ担当官に連絡し、助言又は指示を仰ぐこと、又はどのような場合に情報セキュリティ担当官が最高情報セキュリティ責任者に報告すべきか等を定める。
(c) システム管理者
情報システムの日々の管理、運用を実施するシステム管理者は、いわば情報システムの一部として必要不可欠なものである。また、その管理のために付与される権限は、情報セキュリティにも大きく影響を与えるものであることから、システム管理者の役割・責任について明確にするとともに、その権限が不当に利用されることのないよう複数のシステム管理者による作業及び作業内容の確認の仕組み等について定める。
(d) 職員等
| @パスワードを秘密にしておくこと。
Aパスワードのメモは作らないこと。ただし、メモが安全に保管される場合はその限りではない。 B情報システム又はパスワードに対する危険のおそれがある場合は、パスワードを変更すること。 C適切な長さを持つパスワードを選択すること。その文字列については、想定しにくいものにしなければならない(詳細は実施手順で定める。)。 Dパスワードは定期的に、若しくはアクセス回数に基づいて変更し、古いパスワードの再利用をしてはならない。管理者用パスワードはさらにこのサイクルを頻繁にすること。 E利用者のパスワードは他人に使用させないこと。 Fモバイル機器にパスワードを記憶させてはならない。 |
E技術的セキュリティ
(@) コンピュータ及びネットワークの管理
情報システムの運用管理手順やネットワーク管理、記録媒体の保護、他の組織とデータ交換を行う際の留意点や規定について定める。
リスク分析の結果に従い、機器の取扱い、管理の方法を定める。
(例)
| 情報資産の分類に従って、情報を以下のとおり管理する。
T
|
情報システムを使用する際の規定
|
|
| ソースコードの提出の義務化、再委託契約の規定のほか、ISO15408への準拠、セキュリティホールの有無の確認等 |
| 情報システムの24時間監視体制、システムの修正プログラム(パッチ)の導入決定に係る方針、時期等 |
(C) コンピュータウイルス対策
コンピュータウイルスに感染することを防止するために必要な対策を定める。コンピュータウイルスに対応するためのシステム整備、職員の守るべき規定等を定める。コンピュータウイルスが発見されたときの対応については、侵害時の対応として定める。
(例)
| @許可されていないソフトウエアの導入の禁止(法令遵守とも関連)
A外部ネットワークからファイル及びソフトウエアを取り入れる際には、サーバ側、端末側においてウイルス対策ソフトを実行 Bサーバ側、端末側のワクチンソフトについては、ワクチンプログラムを常に最新のものにバージョンアップするとともに、ウイルス情報の更新を頻繁に行うことが必要 C重要なソフトウエア、情報システム及び情報について、その内容を定期的に確認 |
(D) セキュリティ情報の収集
セキュリティホールは、日々発見される性質のものであることから、積極的に情報収集を行う必要がある。このため、情報収集の体制、分析の手順、情報収集先等を定める。深刻なセキュリティホールが発見された場合、直ちに対応できるよう留意する必要がある。
F運用
(@) 情報システムの監視及びポリシーの遵守状況の確認(以下「運用管理」という。)
ポリシーの実効性を確保するため、また、不正アクセス及び不正アクセスによって他の情報システムに対する攻撃に悪用されることを防ぐためには、情報システムの利用者等が、ポリシーを遵守しているかどうかについて、また、インターネットを介した不正アクセスを含めた情報システムの稼働状況について、ネットワーク監視等により常に確認を行うことが必要である。したがって、ポリシーの各対象者による自己確認及び情報管理担当課による自動監視装置等の活用等によるネットワーク監視等を適切に実行することを定める。これらは、ポリシー遵守の確保のみならず、ポリシーそのものの問題点やポリシーが実態に整合的であるかどうかを評価するためにも重要である。
運用管理を適切に実施するためには、一部の担当者に大きな負担とならないような体制を構築することが重要である。また、システムが稼働している間は、常時監視しなければならず、障害が起きた際にも、速やかに対応できる体制である必要がある。
また、アクセス記録の取得・分析についても、明確に行うことを定める。アクセス記録は、時刻等の記録内容の正確性を確保するために消去や改ざんを防止するなど、適切に保管するための措置を講ずる。
なお、詳細な内容(アクセス記録の保存期間、監視の人数体制等)は実施手順として定める。
(A) 運用管理における留意点
利用者の電子メールを閲覧する等のシステムソフトウエア、セキュリティ管理ソフトウエアを使用する行為によって国民のプライバシーに対する侵害があってはならない。また、セキュリティ対策として行われる場合においては、職員のプライバシーの問題にも影響することを考慮する必要がある。このため、これらのソフトウエアの使用については、どのような条件が揃ったときに、どのような体制で当該ソフトウエアを使用できるのかについての規定を定める。
なお、これについて、利用者の理解を得ておくことが望ましい。
(例)
| システム管理者は、情報キュリティ上の問題が起こる可能性のあるものとして責任者(管理職)が認めた場合のみ、責任者又は責任者が予め指定した者が立ち会うことにより利用者個人の電子メールを閲覧することができる。 |
○緊急時対応計画に盛り込むべき事項
(C) 外部委託による運用契約
外部委託によって、情報システムを運用していく際の契約について明確にし、その場合における確認体制を確立する必要がある。例えば、CERT/CC(*6)、JPCERT/CC(*7)等からの注意喚起情報(Advisory)が出た場合は直ちに情報セキュリティ担当課に連絡を行わなければならないこと、アクセス記録のチェックについて、危険度に応じて分類を行い重要なものについては、緊急連絡網を通じて契約者に直ちに連絡すること等、運用時に行う体制を定める。
G法令遵守
関連する法令への遵守等について定める。遵守すべき法律や行政指導として、どういうものが存在するかを列挙し、法令違反が起こらないようにすることが目的である。例えば、著作権法、不正アクセス禁止法、個人情報保護法等がある。
H情報セキュリティに関する違反に対する対応
ポリシーに違反した関係者及びその監督責任者に対しては、その重大性に応じて国家公務員法上等の懲戒の対象となり得ることをポリシーに定める。これは、ポリシー及び実施手順を軽視する傾向のある職員等に対する抑制策となるとともに、求められる情報セキュリティ水準の確保のためにも必要である。
なお、業務中に情報セキュリティに係る違反的な行動がみられた場合には、上司等の指示により直ちに端末の利用を停止させる等の迅速な対応ができるようにする必要がある。
I評価・見直し
ポリシーには、ポリシー及び情報セキュリティ対策の評価、情報システムの変更、新たな脅威等を踏まえ、定期的に対策基準の評価・見直しを行うことを定める。また、情報セキュリティ委員会の権限として、ポリシーの評価・見直しの実施を定める。
(@) 監査
情報システムの情報セキュリティについて、監査を行い、その結果をポリシーの評価・見直しに反映させる必要がある。
監査を行う者は、十分な専門的知識を有するものでなければならない。また、適正な監査の実施の観点から、監査の対象となる情報システムに直接関係しない者であることが望ましい。
(A) 点検
ポリシーに沿った情報セキュリティ対策の実施状況について、利用者に対するアンケートや自己点検を行うことを定める。これらの結果は、実態に即したポリシーへの更新を行う際に必要な情報として活用するものである。
(B) ポリシーの更新
ポリシーの更新は、策定の場合と同様に、情報セキュリティ分野の専門家による評価も活用しつつ、関係部局の意見等を踏まえ、その妥当性を確認する手続を経ることが必要である。
ポリシーには、関係部局からのポリシーの更新案に対する意見を反映させるための手続を定め、情報セキュリティ委員会によるポリシーの決定を必要とすることを定める。
(6)ポリシーの決定
策定されたポリシー案については、情報セキュリティ分野の専門家による評価、関係部局の意見等を踏まえ、その妥当性を確認する手続を経ることが必要である。
ポリシーには、関係部局からのポリシー案に対する意見を反映させるための手続を定め、各省庁における正式なポリシーの決定を必要とすることを定める。
(2)実施手順の作成
実施手順はポリシーに記述された内容を具体的な情報システムや業務においてどのような手順に従って実行していくかについて定める。この実施手順は、ポリシーを遵守しなければならない者全員について、各々の扱う情報、実施する業務等に応じて情報セキュリティを確保するためにどのようにしなければならないかを示すいわゆるマニュアルに該当するものである。したがって、業務を実施する環境に応じて、必要のある場合には個別に定める必要がある。また、既存の規定等で対応できる事項については、適用される規定を定めることが必要である。
実施手順は、情報セキュリティ委員会による承認を受けることなく、それぞれの部局において策定、更新及び廃止することができることとする。
(3)ポリシーへの準拠
情報セキュリティ委員会は、ポリシーの運用開始に先立ち、実態及び実施手順のポリシーへの準拠状況の検証を情報セキュリティ担当官に実施させる。準拠状況を収集・検討し、適切な助言、措置等を行った上で運用を開始する。
情報セキュリティ担当官は、自分の責任範囲におけるすべての情報資産について導入された、物理的セキュリティ対策、人的セキュリティ対策、技術的セキュリティ対策、緊急時対応計画及び実施手順が、ポリシーに準拠しているかどうかを検証する。
(4)配布及び説明会
情報セキュリティ委員会は、ポリシーを関係者に周知するための、ポリシーの配布や説明会を行う。また、実施手順については、各課部局において行う。
外部委託業者等についても必要に応じて該当部分の配布等を行うとともに、ポリシーへの準拠を合意させることが望ましい。
なお、実施手順については、外部に漏洩しないよう、厳重に取り扱うことを関係者及び外部委託業者等に対して徹底する。
(1)運用管理
情報セキュリティ委員会の下で、情報管理担当課及び各課部局の情報セキュリティ担当官は、ポリシーに従って、物理的セキュリティ対策、人的セキュリティ対策、技術的セキュリティ対策等が適切に遵守されているか確認する。
情報セキュリティ上重大な問題が生じる可能性のあるポリシー違反が発見された場合には、緊急時対応計画に従って処理する。
これらの結果は侵害事案の証拠となるほか、ポリシーの実効性を測る資料となるので、厳重に保管し、評価・見直しの際に活用する。
(2)侵害時の対応
@ 訓練の実施等
緊急時対応計画の円滑な実施のため、定期的に訓練を実施する。訓練の結果を踏まえ、緊急時対応計画の評価・見直しを適切に実施する。
A 連絡における留意事項
連絡手段は、情報セキュリティ上安全なものを用いる。(重要な内容については、メールを利用しないようにする等、盗聴等による脅威を増加させないようにする。)
情報セキュリティ上重要な任務を担う者は、24時間連絡をとれる手段を複数用意することが望ましい。
B 調査における留意事項
調査に時間をとられることによって、必要な連絡に遅れがあってはならない。
C 対処における留意事項
対処を実施する際に、責任者の許可無く担当者が実施できる範囲、責任者の許可が必要な範囲を定める。また、責任者との連絡が不可能な場合の権限の委任、事後報告についても考慮する。
D 再発防止計画
再発防止計画については、当該侵害に関するリスク分析の結果を踏まえ、ポリシー、各種措置、緊急時対応計画、実施手順の評価・見直しに係る検討結果を具体的に示す。
(1)監査
外部の機関を活用して監査を行う場合、当該機関に情報システムの弱点が知られることになるということを十分留意の上、信頼性について慎重な検討を行い、機関の選定を行うことが必要である。
(2)ポリシーの更新
特にポリシー導入後の最初に行われるポリシーの更新においては、ポリシーと実態との相違を十分考慮することが重要であることから、関係部局の意見聴取等を行い、実態把握を行うことが望ましい。また、ポリシーを更新する際には、実態に即したものとするために、新たにリスク分析から行わなければならない。また、日頃から新たな攻撃方法の情報収集に努め、ポリシーの更新に活用することも必要である。
新たなポリシーが完成した際には、再度配布及び適用が必要となり、これには、当初にポリシーを導入した時と同様多大な労力が必要となる。効果的な方法を検討し実施することが必要である。
(3)ガイドラインへの反映
ポリシーの評価・見直し結果については、このガイドラインへ反映させる必要がある。
脚注
(*1)「ハッカー」は、さまざまな意味で用いられるが、本ガイドラインにおいては、「コンピュータに不正なアクセスを行う者」を指す。
(*2)関係行政機関相互の緊密な連携の下、官民における情報セキュリティ対策の推進を図るため、高度情報通信社会推進本部に設置された全省庁を構成員とする会議。議長は内閣官房副長官。
(*3)内閣官房、内閣法制局、総理府、公正取引委員会を含む。
(*4)国際標準化機構(ISO)が定める標準に定義されるもの(ISO 7498-2:1989)。
機密性(confidentiality) :情報にアクセスすることが認可された者だけがアクセスできることを確実にすること。
完全性(integrity) :情報及び処理方法の正確さ及び完全である状態を安全防護すること。
可用性(availability) :許可された利用者が、必要なときに情報にアクセスできることを確実にすること。
(参考)
また、本ガイドラインでは採用していないが、ISO/IEC JTC 1/SC 27においては、上記に加え、次の3点について定義している。
真正性(authenticity) :利用者、プロセス、システム及び情報又は資源の身元が主張どおりであることを保証すること。
責任追跡性性(accountability):主体の行為からその主体にだけ至る形跡をたどれることを保証すること。
信頼性(reliability) :意図した動作と結果に整合性があること。
(*5)Chief Information Security Officer
(*6)CERTョ Coordination Center (http://www.cert.org/)
(*7)JPCERT/CC(http://www.jpcert.or.jp)