日米安全保障体制と沖縄問題

「にっぽんNOW」臨時特集


重要な役割を担う沖縄の米軍基地

 在日米軍の施設・区域(基地)の安定的使用の確保は、我が国のみならずアジア・太平洋地域の平和と安定にとって極めて重要です。
 国内の米軍基地の総面積は約三万千四百fですが、その約七五%が沖縄に集中しています。政府は、沖縄米軍基地問題を最重要課題の一つとして、全力で取り組んできており、昨年十二月のSACO最終報告で米軍基地面積の約二一%の返還についての合意を達成しました。
 一方、土地の使用権原の期限切れを五月に控えて沖縄県・関係者との折衝を続けているところです。
 沖縄米軍基地の現況を知っていただくために、日米安全保障体制と沖縄問題について特集しました。


日本およびアジア%太平洋地域の平和と安全に

 日本国内に駐留する米軍基地の面積は、平成九年一月一日現在約三万千四百fで、国土面積の約〇・〇八%に当たります。このうち、約二万三千五百ヘクタール(基地全体の約七五%)が沖縄県に集中しています。
 そうした状態が現出した理由の一つは歴史的経緯です。
 沖縄における米軍基地は、終戦直前の昭和二十年四月に米軍が沖縄に上陸してから、昭和二十七年の対日講和条約発効まで占領地としての無償・強制使用が続き、その後沖縄復帰(昭和四十七年五月)までは、米国の施政権下における賃貸借契約又は収用により使用されました。復帰後は関係国内法により国との賃貸借契約等による使用となっています。 一方、日米安全保障体制は、我が国だけでなくアジア・太平洋地域の平和と安全を目指すものであり、そのためには在日米軍基地の安定的な使用が確保されていなければなりません。その意味で、沖縄に米軍基地が存在する意義は大きいのです。


平成9年3月25日、沖縄問題についての会談に先立って握手する橋本総理大臣と大田沖縄県知事(総理大臣官邸で)


逐次整理%統合%縮小、振興にも全力

 沖縄の面積は日本国土全体の〇・六%に過ぎません。その狭小な県土に米軍基地全体面積の約四分の三が存在することは、沖縄の自治体・住民に、地域開発の支障、航空機騒音など様々な影響を与えることになります。
 政府は、そうした沖縄の負担を軽減するため、沖縄の本土復帰を契機に基地の整理・統合・縮小を図り、返還協定締結時(昭和四十六年六月)に百四十四施設約三万五千fだったのが、復帰時には八十三施設約二万八千fに減少しました。その後も逐次整理・統合・縮小を進め、現在は三十七施設約二万三千五百fです。
 さらに、一昨年十一月に日米安全保障協議委員会(通称2プラス2)の下に「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO=日米の外務・防衛両省庁の局長級で構成)を設置して、この問題について全力で取り組み、昨年十二月二日、普天間飛行場を含む約五千fの土地の返還が合意されました。これは沖縄米軍基地面積の約二一%に当たり、完全実施されれば現在の約二万三千五百fから約一万八千五百fに縮小されることになります。
 土地の返還以外に米軍の訓練・運用面についても改善され、公道における行軍が取り止められたほか、県道104号線越え実弾射撃訓練は本土の演習場に分散されることになりました。
 また、沖縄が地域経済として自立し、我が国経済社会の発展に寄与する地域として整備されるよう、昨年九月に「沖縄政策協議会」(主宰・梶山内閣官房長官。関係閣僚と沖縄県知事で構成)を設置するなどして、様々な地域振興策を検討しています。



沖縄米軍施設の安定使用に努力

すでに9割を超える地主が契約済

 日本を含むアジア・太平洋地域の平和と安定にとって、在日米軍基地の安定的使用の確保が重要ですが、そのために、在日米軍に施設・区域を提供することは我が国の条約上の義務となっています。沖縄についても、米軍の機能・能力を維持するために必要な限度において施設・区域を保持しておかなくてはなりません。
 米軍用地のうち、民公有地については、原則として国と所有者が賃貸借契約を結び、その契約が満了する二十年ごとに契約を更新します。本土の米軍用地の約九一%が国有地であるのに対し、沖縄の用地は約六七%が民公有地です。北部訓練場を除くと約九四%が民公有地で、沖縄における米軍用地の特徴としてあげられます。
 現在使用している米軍用地のうち、嘉手納飛行場など十二の施設の用地の一部が、今年五月十四日に使用期限切れとなります。これら施設を含む沖縄の民公有地の所有者は約三万二千六百人で、ほとんどが賃貸借契約に応じていますが、今年三月二十一日現在、約三千百人(約九%、三十六f分)の地主の方が賃貸借契約に応じていません。それらの大部分(約三千人)が、いわゆる一坪共有地主です。また、そのうち約半数の方は本土在住者です。
 一坪共有地主の土地があるのは、嘉手納飛行場と普天間飛行場の施設内です。一人当たりの所有面積は嘉手納飛行場が約〇・九平方メートル(約九五センチ四方)、普天間飛行場が約〇・一平方メートル(約三〇センチ四方)で、全部合わせても約〇・二ヘクタール、民公有地全体の〇・〇〇一%に過ぎません。
 賃貸借契約に基づく使用権原の得られない土地については、国は公共事業を実施する際の土地収用法の特別法に当たる駐留軍用地特別措置法に基づき使用権原を取得することとしており、前記十二施設の用地の一部についても、同法に基づく使用権原取得手続をとっています。
 駐留軍用地特別措置法に基づく使用権原取得までは、法律上の手続が複雑でとても時間がかかります。しかし、五月十四日までに手続が完了しないと、日米安全保障体制に影響を及ぼしかねないうえ、土地所有者との間での混乱も懸念されます。
 今回の手続においては、大田沖縄県知事を相手方として、機関委任事務である土地・物件調書の署名押印について職務執行命令訴訟がなされましたが、その後の手続である裁決申請書等の公告・縦覧については、国と沖縄県の信頼関係の中で大田沖縄県知事から協力を得られたところであり、政府は期限内の解決に向けて努力を続けているところです。
 我が国の平和と安全を守るため、基地の提供と安定的使用は欠かせません。


使用権原確保の期間内実現に向け所要の手続を実施中

 賃貸借契約に基づく使用権原の得られない土地については、国は公共事業を実施する際の土地収用法の特別法に当たる駐留軍用地特別措置法に基づき使用権原を取得することとしており、前記十二施設の用地の一部についても、同法に基づく使用権原取得手続をとっています。
 駐留軍用地特別措置法に基づく使用権原取得までは、法律上の手続が複雑でとても時間がかかります。しかし、五月十四日までに手続きが完了しないと、日米安全保障体制に影響を及ぼしかねないうえ、土地所有者との間での混乱も懸念されます。
 今回の手続きにおいては、大田沖縄県知事を相手方として、機関委任事務である土地%物件調書の署名押印については、国と沖縄県の信頼関係の中で大田沖縄県知事から協力を得られたところであり、政府は期限内の解決に向けて度量区を続けているところです。
 我が国の平和と安全を守るため、基地の提供と安定的使用は欠かせません。


SACOの最終報告(要旨)

土地の返還
 沖縄県における米軍の施設及び区域の総面積(共同使用の施設及び区域を除く)の約二一%(五〇〇二f)を返還。(別表参照)

訓練及び運用の方法の調整
◆県道104号線越え実弾砲兵射撃訓練について、平成九年度中にこの訓練が本土の演習場に移転後、危機の際に必要な砲兵射撃を除き取り止め。
◆パラシュート降下訓練を伊江島補助飛行場に移転。

騒音軽減イニシアティブの実施
◆普天間飛行場に配備されているKC−130ハーキュリーズ航空機十二機を岩国飛行場に移駐。
◆嘉手納飛行場の北側に遮音壁を建設(平成九年度末までを目途)。
◆普天間飛行場における夜間飛行訓練の運用を可能な限り制限。

地位協定の運用の改善
◆米軍の部隊・装備品等及び施設に関係する全ての重要な事故につき、日本側への適時の通報確保に努力。
◆全ての非戦闘用米軍車両には平成九年一月までに、その他の全ての米軍車両には同年十月までにナンバープレートを取り付ける。
◆キャンプ・ハンセンにおける米海兵隊の不発弾除去手続きを引き続き実施。
◆日米合同委員会において、地位協定の運用改善の努力を継続。

返還される米軍基地
施設%区域面積(ha)
昨年10月末現在
SACO最終報告返還時期
那覇港湾施設57全部返還
(ただし移設(35ha)が条件)
(返還を加速化)
普天間飛行場481全部返還5〜7年以内目途
読谷補助飛行場191全部返還2001年3月末目途
ギンバル訓練場60全部返還1998年3月末目途
牧港補給地区275一部返還(3ha)(県道拡幅計画に沿う)
キャンプ瑞慶覧648一部返還(83ha)
キャンプ桑江107大部分の返還(99ha)2008年3月末目途
楚辺通信所53全部返還2001年3月末目途
瀬名波通信施設61ほぼ全部返還(61ha)2001年3月末目途
安波訓練所480共同使用解除1998年3月末目途
北部訓練所7,513過半の返還(3,987ha)
(ただし追加提供(38ha)あり)
2003年3月末目途

返還面積(ネット)合計 5,002ha(21%)


安保と沖縄 今後の課題(Qand A)

 日米間でSACO最終報告が承認されたことにより、沖縄の基地問題は大きく前進しました。
 SACO最終報告の意義、日米安全保障体制の今後の課題などについて、田中均・外務省北米局審議官に聞きました。

基地全体の約21%を返還へ

 まず、SACO最終報告のポイントは何でしょうか。

 SACO最終報告は、過去一年間にわたる作業の成果をまとめたものです。内容は、土地の返還とそれ以外の二つに分けて考えると分かりやすいと思います。
 土地の返還は、普天間飛行場、北部訓練場等十一の米軍基地を整理・統合・縮小して合計で約五千f、沖縄の米軍基地全体の約二一%の土地を返還するいうものです。山手線の内側が約六千fということですから、その一回り小さい面積で、これは、一九七二年の沖縄復帰以降二十四年間の返還面積(約四千三百f)を上回るものです。
 土地の返還以外の部分では、航空機騒音対策、損害賠償手続きの改善、航空機事故報告手続きの改善、また、実弾射撃訓練の移転等の措置が合意されています。

なぜ海上ヘリポートが必要か

 普天間飛行場返還の前提として、沖縄本島東海岸沖に代替ヘリポートのための海上施設を建設することが合意されました。どうして代替ヘリポートが必要なのか、また、なぜ海上施設とするのか説明してください。

 安全保障問題を考える時に見失ってはならない点は、どのような国、どのような時代であっても、平和と安全の確保は不可欠であるということです。
 冷戦は終わりましたが、日本を取り巻く今の国際情勢は百%安全で安定しているとは言えません。日本の安全保障を考えると、依然として日米安保体制を維持する必要があります。そして、そのためには在日米軍の機能、能力を維持していく必要があります。
 SACOの作業では、そうした在日米軍の機能、能力を維持しながら、地域社会の負担をできるだけ軽減するとの大前提に立って、日米共同で努力してきました。
 普天間飛行場を海上施設とするのは、米軍の運用能力を維持しながら、基地周辺の騒音問題や環境問題にも配慮するという点で、それが最上の選択であると判断されたからです。
 代替ヘリポートでは、滑走路の長さが現在の約二千七百bの半分以下の約千三百bとなり、全体で千五百bの長さの施設となります。
 ただし、このように大きな規模の海上施設は今までに例のないものですから、約一年をかけて技術的な調査、検討を行い、今年十二月までに実施計画を作ることになりました。

地位協定は沖縄以外も対象に

 在日米軍の地位について規定している「日米地位協定」の問題については、沖縄だけではなく、米軍基地がある全ての地域の共通の関心ですが、SACO最終報告にある地位協定関連の措置は沖縄だけに限られるものなのでしょうか。

 SACO最終報告の「地位協定の運用の改善」の項では、事故報告、日米合同委員会合意の公表、米軍の施設・区域への立入り、米軍の公用車両の表示、任意自動車保険、請求に対する支払い、検疫手続き、キャンプ・ハンセンにおける不発弾処理、そして、地位協定の運用を改善するための努力の継続について規定しています。
 このうち、キャンプ・ハンセンにおける不発弾処理は、当然沖縄のキャンプ・ハンセンのみについての措置ですが、その他全ての措置は、沖縄だけでなく全ての在日米軍を対象とするものです。
 過去一年間のSACOの作業をする中で考えたのは、もちろん沖縄米軍基地問題の改善ですが、同時に、米軍基地を抱えている沖縄以外の全ての地元の方々の負担もできるだけ軽減したいということでした。今後とも、こうした問題には全力で取り組んでいきたいと思います。

今後も様々な場で協議を継続

 SACO最終報告は発表されましたが、今後、沖縄米軍基地問題はどうなっていくのでしょうか。

 まず、重要なのは、SACO最終報告にあるいろいろな措置を確実に実行に移すことです。普天間飛行場返還も、まず今年十二月までに詳細な実施計画を作成して、五年から七年の間に代替ヘリポート等を建設して、そこに普天間の機能を移して初めて返還が実現するわけです。
 こうしたSACO最終報告の実施については、日米安全保障協議委員会(日米それぞれ外務・防衛の二人ずつの大臣で構成しているので、通称「2+2」と呼んでいます)の下で、局長級あるいは実務レベルの協議を行い、責任を持って作業していく体制を取っていきます。
 また、SACO最終報告で全ての問題が終わったわけではありません。米軍基地の問題、あるいは、地位協定の運用に関係するいろいろな問題については、今後も引き続き改善していかなければなりません。そのための日米間の協議は、先ほど述べたさまざまなレベルの場で続けていきたいと思っています。

安全・繁栄へ、あらゆる分野で協力

 最後に、安全保障の分野で日米両国に課せられた今後の課題は何だとお考えですか。

 アジア・太平洋地域の平和と安全なくして日本の平和と安全はあり得ません。いざという時のための日本の防衛は、もちろん平素から考え、用意しておかなければなりませんが、それと同様に、あるいはそれ以上に重要なのは、この地域が平和で安全な状況でいられるよう、あらゆる努力を行うことだと思います。
 そのためには、外交努力は当然として、経済交流、文化交流等幅広い分野での努力をこの地域で行っていく必要があります。日米安保体制とは、防衛分野だけを念頭に置いているわけではなく、より広い日米協力の基礎をなしているものです。
 日米両国は、先ほどからお話ししている、在日米軍問題を改善する、あるいは、安保条約、地位協定に関するいろいろな問題を改善することは当然として、より広く、両国の平和と繁栄のため、また、この地域、ひいては世界の平和、安全、繁栄のため、あらゆる分野で協力し、努力していかなければならないと思っています。

今回の返還合意の中で焦点となった普天間飛行場(手前は宜野湾市の市街)


沖縄の振興、全力で推進 −沖縄政策協議会−

 政府は、沖縄の復帰以来、沖縄振興開発計画(平成九年度は三次計画の六年目)に基づいて社会資本や生活環境等を整備するなど、沖縄県の振興を積極的に推進してきました。
 しかし、沖縄県には現在もわが国に所在する米軍施設・区域(基地)の約七五%が集中し、住民の生活環境や地域振興に大きな影響を及ぼしています。
 このため、橋本内閣総理大臣が昨年九月に新たな取り組みを打ち出すなど、政府は沖縄の振興に全力で取り組んでいます。

具体的な基本施策を協議

各プロジェクトチームも稼動

沖縄の振興策について話し合う沖縄政策協議会
右手前が梶山官房長官、左手前が大田沖縄県知事

 橋本総理大臣は昨年九月十日、「沖縄問題についての内閣総理大臣談話」(同日、閣議決定)を発表しました。沖縄の諸問題については、沖縄が背負ってきた重荷を国民全体で分かち合うとの姿勢で、政府の最重要課題の一つとして取り組むことを明らかにしたものです。
 この内閣総理大臣談話に基づき、昨年九月十七日に沖縄政策協議会が設置されました。沖縄県の現状を踏まえ、地域経済としての自立、雇用の確保により、県民生活の向上に資するとともに、沖縄県が我が国経済社会の発展に寄与する地域として整備されるよう、沖縄に関連する基本施策を協議するのが、この協議会の目的です。
 同協議会は、関係閣僚と沖縄県知事とで構成されています。
 協議会には、各省庁と沖縄県から多くの振興策が提起され、それら振興策について各省庁、沖縄県と調整した後、協議会の社会資本部会、産業・経済部会、環境・技術・国際交流部会の三つの部会の下に設置した十のプロジェクトチーム(別項参照)において、当面検討するプロジェクトとして三十四項目について具体的な検討を行っているところです。
 今年二月十八日に開かれた第四回沖縄政策協議会では、各プロジェクトチームにおける検討状況について報告がなされました。

沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会

地域経済を活性化、若い世代に夢を

 また、昨年八月十九日には、内閣官房長官の懇談会として、基地所在市町村の抱える困難を地域住民の立場から緩和するための施策を提言する「沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会」が発足しました。
 同懇談会は、実情の視察や要望の聴取なども行い、昨年十一月十九日に、地域振興に寄与するプロジェクトの実施などを内容とする提言を梶山内閣官房長官に提出しました。
 提言の柱である「基地所在市町村振興のための特別プロジェクト」では、@市町村の経済を活性化し、閉塞感を緩和し、なかんずく、若い世代に夢を与えられるものA継続的な雇用機会を創出し、経済の自立につながるものB長期的な活性化につなげられる「人づくり」を目指すものC近隣市町村も含めた広域的な経済振興や環境保全に役立つもの、という目的を達成するプロジェクトを実施していくための新しい枠組みを提案しています。
 また、「具体的プロジェクト」として、▼既成市街地を活性化するプロジェクト=嘉手納タウンセンター(仮称)〔嘉手納町〕▼新しいふるさとづくりによる地域振興を図るプロジェクト=ふるさとづくりモデル地区(仮称)整備〔金武町〕▼離島における産業振興プロジェクト=伊江マリンタウン(仮称)〔伊江村〕▼広域拠点育成プロジェクト=人材育成センター(仮称)〔名護市〕▼青少年の教育・啓発プロジェクト=子供未来館(仮称)及びその周辺施設の整備〔沖縄市〕、を提言しました。
 この「具体的プロジェクト」は、いわば第一段階の例示であり、この例示に含まれなかった基地所在市町村にも同様にプロジェクトを実現する機会が開かれています。


橋本内閣総理大臣談話

(平成8年9月10日=全文)

 私は、過ぐる大戦において沖縄県民が受けられた大きな犠牲と、沖縄県勢の実情、そして今日まで沖縄県民が耐えてこられた苦しみと負担の大きさを思うとき、私たちの努力が十分なものであったかについて謙虚に省みるとともに、沖縄の痛みを国民全体で分かち合うことがいかに大切であるかを痛感いたしております。
 また、地位協定の見直し及び米軍基地の整理・縮小を求める今回の県民投票に込められた沖縄県民の願いを厳粛に受けとめております。
 日米安全保障条約は、日本の安全のみならず、アジア・太平洋地域の平和と安全を維持していく上で、極めて重要な枠組みであります。米軍の施設・区域はその中心的な役割を果たすものであり、その安定的使用を確保することが重要であると認識しております。  政府としては、普天間基地の返還・移設や県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の本土移転などの諸課題について、米国と協議を進めるとともに、各地域住民の御理解と御協力を得ながら、その解決に向けて全力を尽くしてまいります。
 さらに米軍施設・区域の七十五%が沖縄県に集中し、住民の生活環境や地域振興に大きな影響を及ぼしている現状を踏まえ、引き続き米国との間で米軍の施設・区域の整理・統合・縮小を推進するとともに、地位協定の課題について見直しを行い、一つ一つその改善に努力してまいる考えであります。
 私は、今年四月のクリントン米大統領との共同宣言で明らかにしたように、今後とも、アジア情勢の安定のための外交努力を行うとともに、米軍の兵力構成を含む軍事態勢について、継続的に米国と協議してまいります。
 豊かな自然環境や伝統、文化を生かしつつ、県土構造の再編、産業経済の振興及び生活基盤の整備等を進め、平和で活力に満ち、潤いのある地域の実現を目指した「二十一世紀・沖縄のグランドデザイン」は、沖縄県がその願いを込めた構想であると承知いたしております。
 政府としては、この構想を踏まえ、通信、空港、港湾の整備と国際経済交流、文化交流の拠点の整備を行うとともに、自由貿易地域の拡充等による産業や貿易の振興、観光施策の新たな発掘と充実、亜熱帯の特性に配慮し、医療、環境、農業等の分野を中心とした国際的な学術交流の推進とそれに伴う関連産業の振興等のプロジェクトについて沖縄県と共に検討を行い、沖縄県が地域経済として自立し、雇用が確保され、沖縄県民の生活の向上に資するよう、また、我が国経済社会の発展に寄与する地域として整備されるよう、与党の協力を得て全力を傾注してまいります。
 私は、このような趣旨に沿った沖縄のための各般の施策を進めるために、特別の調整費を予算に計上するよう大蔵大臣に検討を既に指示いたしました。
 また、内閣官房長官、関係国務大臣、沖縄県知事などによって構成される沖縄政策協議会(仮称)を設置し、沖縄に関連する基本施策について協議していただき、それを踏まえて政府として、沖縄に関連する施策の更なる充実、強化を図ってまいる所存であります。
 重ねて、沖縄問題について国民の皆様の御理解と御協力をお願いするものであります。(注ャ沖縄政策協議会は同年九月十七日に設置されました)