財政構造改革の推進について

平成9年6月3日
閣 議 決 定

財政構造改革については、政府・与党財政構造改革会議「財政構造改革の推進方策」に沿って次のように決定し、着実かつ強力に推進することとする。

1.少子高齢化の進展、冷戦構造の崩壊、キャッチアップ経済の終焉、大競争時代の到来、生産年齢人口の減少など、我が国の財政を取りまく環境は大きく変容しているが、その中で財政は、現在、主要先進国中最悪の危機的状況に陥っている。
このような状況の下、21世紀に向けてさらに効率的で信頼できる行政を確立し、安心で豊かな福祉社会、健全で活力ある経済の実現という明るい展望を切り開くためには、経済構造の改革を進めつつ、財政構造を改革し財政の再建を果たすことが喫緊の課題であり、もはや一刻の猶予も許されない。
このため、先に内閣総理大臣より提示された財政構造改革五原則において、当面の目標として、2003年度までに財政健全化目標(財政赤字対GDP比3%、赤字国債発行ゼロ)の達成をめざすこと、今世紀中の3年間を「集中改革期間」と定め、その期間中は、「一切の聖域なし」で歳出の改革と縮減を進めることを決定した。これを強力に推進する。
特に、当面の平成10年度予算においては、政策的経費である一般歳出を対9年度比マイナスとするため、財政構造改革会議で結論を得た主要経費の具体的な量的縮減目標等について、10年度の概算要求段階から反映させることとする。
なお、財政赤字の縮減の進捗度合いによってはさらなる歳出削減に努めるものとする。

2.財政構造改革を推進するに際しては、単なる財政収支の改善に止まることなく、財政構造そのものについての見直しを行うことが必要である。このため、官と民、国と地方の役割分担の見直し、公平な受益と負担の実現、経済活力の創出、財政資金の効率的配分等の理念を踏まえた大胆な改革を実現していく。
また、国民的な理解と納得を得られる財政構造改革とするため、一般会計、特別会計など財政に関する情報の開示についても積極的に進めることとする。
このような見地から、財政構造改革の推進にあたっては、一般会計の歳出の削減のみならず、特別会計についても見直し、改革を行うほか、

イ 政策目的の達成度、官民の役割の見直し等の観点からの特殊法人の改革
ロ 民業補完や償還確実性の徹底等、スリム化を目指した財政投融資の見直し
ハ 経済社会の構造変化に対応し、納税者の信頼に裏打ちされた公平な税負担制度の確立
ニ 地方の自主性・自立性を高める地方分権の推進
ホ 経済社会情勢の変化に対応した各種事業の不断の再検討
など、幅広い観点に立った改革が不可欠である。
これらの幅広い改革については、現在、検討が進められているところであるが、集中改革期間中の歳出の改革と縮減を何としても成し遂げ、さらに大きな改革の一環として強力に推進していくことが必要である。

3.このような考え方に基づき、下記のとおり具体的な改革と歳出削減の方針と方策を決定する。これに沿って、必要な制度改革を果敢に断行するなど、健全な財政構造の構築に向け、最大限の努力を傾注する。

1.社会保障
社会保障関係費は、高齢化等に伴う当然増が見込まれる経費であるが、集中改革期間中は、当然増に相当する額を大幅に削減することとする。具体的には賃金、物価の上昇に伴う単価の増等による影響分について制度改革等により吸収し、効率化を図ることとし、対前年度伸率を高齢者数の増によるやむを得ない影響分(全体の2%程度)以下に抑制する。
特に、10年度予算については、一般歳出を対9年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、約 8,000億円超の当然増について 5,000億円を上回る削減を行うことにより、増加額を大幅に抑制する。
上記の考え方を実現するとともに、社会保障構造改革を進め、高齢化のピーク時においても財政構造改革五原則における国民負担率の目標に沿って、安定的に運営出来る社会保障制度を構築することを目指し、今後、国民に充分な情報提供を行いつつ、次の制度改革を順次実現する。

(1) 医療については、国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内とするとの基本方針を堅持し、今後、医療提供体制及び医療保険制度の両面にわたる抜本的構造改革を総合的かつ段階的に実施する。
9年度の医療保険制度改革は、抜本的構造改革の第一歩として早急に実現する。
集中改革期間中は、特に以下の施策に取り組むこととし、出来る限り10年度から着手する。
@薬価差の解消を図るほか、現行の薬価基準制度を廃止のうえ市場取引に委ねる原則に立った新たな方式の採用等薬価基準制度の抜本的見直しを行う。

A診療報酬については、慢性疾患は定額払いとするなどその積極的な活用を図り、出来高払いと定額払いとの最善の組合せを確立する。

B高齢者を巡る経済状況の向上を踏まえ、世代間の負担の公平及び社会連帯(相互扶助)の観点から老人保健制度の抜本的改革を行う。

C医療提供体制について、大学医学部の整理・合理化も視野に入れつつ、引き続き、医学部定員の削減に取り組む。あわせて、医師国家試験の合格者数を抑制する等の措置により医療提供体制の合理化を図る。地域差を考慮しつつ全体として病床数の削減を推進し、もって療養環境の改善も図ることとする。医療機関の機能分担や連携を進め、患者が必要な場合にふさわしい医療機関にかかるという流れをつくる。

D保険者機能の強化を図るとともに、制度運営の安定化を図る観点から、国民健康保険、政府管掌健康保険、組合健康保険等における保険集団の在り方を見直す。

E患者負担については、給付と負担の公平等の観点から高齢者等には一定の配慮を行いつつ、定率負担での統一を極力実現する。

在宅療養患者と入院患者の公平及び年金制度との連携といった観点を踏まえ、低所得者には一定の考慮を行いつつ、患者負担の在り方を見直す。

F国立病院・療養所の在り方については、廃止、民間への移譲を含め見直しを行う。
(2) 年金財政は現在の保険料率の水準のままでは将来の給付総額の約6割しか賄えない状況にある。
このため、年金については、国民が将来にわたって安心できる制度を構築する必要があることから、早急に国民的かつ徹底的な議論を開始し、11年度の財政再計算において、世代間の公平、高齢者雇用の在り方といった観点を含め、給付と負担の適正化等制度の抜本的改革を行う。その際、
@将来世代の保険料負担抑制の見地から、高所得者に対する給付、施設入所者に対する給付の在り方、スライド方式の変更、在職老齢年金の在り方等を各々検討するとともに、支給開始年齢、給付水準の見直し等の課題に取り組む。

A将来世代に負担をしわ寄せしている現行の段階的な保険料率を見直し、世代間の負担水準の公平化を行うとともに、世代内の負担の公平化の観点から総報酬制を導入し、この制度にふさわしい料率に改める。

B基礎年金国庫負担率の引上げについては、6年改正の附帯決議等において所要財源を確保しつつ検討することとされているが、現下の厳しい財政事情に鑑み、財政再建目標達成後、改めて検討を行うこととする。

C雇用の流動化等に対応し、自助努力を促すよう企業年金、私的年金の整備を行う。
(3) 社会保険の事務に要する費用について、一層の節減・合理化等を行うなど、その在り方について見直す。
(4) 一定の収入以上の高齢者等に対する年金、医療給付の見直しを保険原理に反しない範囲で行う。
(5) 福祉については、介護保険法案の成立を図るとともに、サービスの質を確保しつつ、各種規制等の緩和、サービス内容等の情報公開及び福祉サービスへの民間事業者の導入を推進する。併せて、施設整備費、運営費補助の在り方について見直しを行う。
(6) 雇用保険制度については、他の施策との整合性等を踏まえ、 高年齢求職者給付について廃止を含め抜本的に見直すとともに、自己責任原則の観点から失業給付に係る国庫負担の在り方を見直す。これらの見直しを内容とする制度改正を10年に行う。
また、雇用保険三事業の雇用福祉事業について、移転就職者用住宅や福祉施設の新設は行わない等の業務の見直しを行う。

2.公共投資

(1) 公共投資基本計画については、本格的な少子高齢化社会の到来を間近に控え、後世代に負担を残さないような財源の確保を前提として、21世紀初頭に社会資本が概ね整備されることを目標としている計画の基本的考え方は維持することとする。
他方、我が国財政の危機的状況等を踏まえ、集中改革期間中に、公共投資の水準を、概ね景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の国民経済に見合った適正な水準にまで引き下げることを目指す必要がある。
こうした趣旨を踏まえ、公共投資基本計画の計画期間を3年間延長することとし、これにより600兆円ベースでみて10年間で470兆円程度へと投資規模の実質的縮減を図るとともに、策定後の諸情勢の変化等を踏まえ、内容の見直しを行う。
(2) 公共事業関係の長期計画については、以下のとおり見直しを行う。
@ 計画策定後、計画の前提となる事情が大きく変化した住宅については、事情の変化や財政構造改革の趣旨を踏まえ、公的部門の関与の在り方を見直す等今後の住宅政策を反映する方向で見直しを図る。

A 9年度末に計画期間が終了する道路整備・急傾斜地崩壊対策については、財政構造改革五原則を踏まえ、公共投資基本計画の実質的な縮減に留意しつつ、適正な改定計画を策定する。

B 上記以外の長期計画については、現行の長期計画の整備の基本的考え方は維持しつつ、財政構造改革の趣旨を踏まえ、計画期間を、10年間の計画である土地改良については4年、それ以外の長期計画についてはそれぞれ2年延長することとし、これにより投資規模の実質的な縮減を図る。計画期間の延長に際しては、必要に応じ、事業の重点化・効率化を図る等計画の内容の見直しを行う。
(3) 公共工事の建設コストの縮減については、「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」(9年度以降3年間で諸施策を実施し少なくとも10%以上の縮減を目指す。)を踏まえ、諸施策を早急に実施するとともに、公共投資予算が抑制される中で、極力事業量の確保を図る。なお、公正な競争を通じて公正な価格形成が図られるよう、今後とも不正行為の防止や一般競争入札の積極的活用に努める。
(4) 当面の公共事業予算については、我が国経済の活力維持のため経済構造改革を早急に推進する必要性、官と民、国と地 方の適切な役割分担、事業のより効率的・効果的な実施等の諸課題に対応すべく、以下の基本的考え方に基づくこととする。
@ 住民に身近な生活関連の社会資本等については、今後とも着実な事業実施を図る中で、国と地方の適切な役割分担の観点から、地方の判断にゆだねることにより地域のニーズを踏まえた効率的な整備が進められるよう、国の補助対象の縮減・採択基準の引上げ等を図る。また、広域的な事業、ナショナル・ミニマムの確保のために必要不可欠な事業、ナショナル・プロジェクトに関連する事業等に国の助成の対象を限定することとする。

A 集中改革期間中の公共事業予算の配分に当たっては、経済構造改革関連の社会資本(高規格幹線道路等、拠点空港、中枢・中核港湾、市街地整備等)について、物流の効率化対策に資するものを中心として、優先的、重点的に整備する。

B また、国民生活の豊かさを実感できる経済社会の実現を目指す公共投資基本計画の考え方を踏まえ、引き続き、相対的に立ち遅れている生活関連の社会資本への重点化を図る。その際、一定の生活水準の確保のための投資分野を優先するとともに、真に整備が遅れている分野・地域への重点化を図る。
なお、地域経済への配慮を行うとともに国土の均衡ある発展と整備水準についての地域間の格差の是正という観点にも留意する。

C 当面10年度予算において、物流の効率化による経済構造改革を推進するため、高規格幹線道路等、拠点空港、中枢・中核港湾、中心市街地の整備については、事業間の連携やプロジェクト性に着目しつつ、特別の措置を設け、総合調整を図る。
また、10年度予算の編成に当たっては、政府・与党において具体的な配分についての基本方針を定め、財政構造改革会議との連携により配分の重点化を図る。

D 各事業の実施等に当たっては、以下の点に留意することとする。
イ 地域の振興・安全な地域づくりへの配慮
ロ 民間需要を誘発する事業への配慮
ハ 情報通信の高度化・研究開発の推進に資する事業への配慮
ニ 環境及び福祉の充実への配慮
ホ 各種事業間の連携・整合性の確保による総合的な整備 の推進
ヘ 費用対効果分析の活用による効率的な整備の推進とチェック機能の強化
ト 適切な情報の開示等による透明性の確保
また、継続事業を優先し、新規事業、特に大規模プロジェクトの実施は抑制する。
(5) 公共投資予算については、上記の考え方を踏まえ、集中改革期間中においては、各年度その水準の引下げを図る。
特に、10年度の公共投資予算については、一般歳出を対9年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、対9年度比7%マイナスの額を上回らないこととする。
(6) 道路特定財源については、危機的な財政状況、受益者負担制度の基本等を踏まえ、自動車重量税の国分の8割相当額に係る歳出面での運用等について、公共投資予算全体が抑制される中で、引き続き国民に適切な税負担をお願いしつつ、受益者負担の観点にたった道路関係社会資本への活用など、集中改革期間における従来の取り扱い等の見直しについて総合的な観点から検討する。

3.文教予算
文教予算については、児童・生徒数の減少に応じた合理化、受益者負担の徹底、国と地方の役割分担及び費用負担等の観点から、義務教育、国立学校、私学助成等について、下記の事項を含め全般に見直し、抑制を行う。

(1) 第6次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画並びに第5次公立高等学校学級編制及び教職員配置改善計画については、集中改革期間中その実施を抑制することとし、平成10年度までの計画期間を2年延長する。
なお、退職者を上回る定数減が生じる都道府県については、適切な調整措置を講ずることとする。
(2) 国立学校については、早急に設置形態を含めた組織の見直しを検討するとともに、集中改革期間中においては、授業料の見直し、大学事務組織の一元化、定員削減、スクラップ・アンド・ビルドの徹底等により、国立学校特別会計繰入れを対前年度同額以下に抑制する。
特に、10年度予算については、一般歳出を対9年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、思い切って抑制する。
(3) 今後の児童・生徒数の減少等を踏まえ、私学助成についても、集中改革期間中において、経常費助成を対前年度同額以下に抑制するなどにより、助成総額を厳しく抑制するとともに、特色ある教育研究プロジェクトへの助成の重点化など配分方法の見直しを行う。
特に、10年度予算については、一般歳出を対9年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、思い切って抑制する。

4.防 衛
防衛力整備については、我が国の安全保障上の観点と経済・財政事情等を勘案し、節度ある整備を行うことが必要であり、特に、危機的な財政事情の下財政構造改革が喫緊の課題となっていることを踏まえた抑制を行う必要があることから、以下の
措置を講ずることとする。

(1) 中期防衛力整備計画(総額25兆 1,500億円)について、今後3年間は防衛関係費の水準を抑制するとの考え方の下、残り期間の物件費総額(約9兆 2,000億円)の1割に相当する金額の所要経費の縮減を行い、本年中にその内容を見直す。
(2) 集中改革期間中の防衛関係費については、対前年度同額以下に抑制する。
10年度の防衛関係費については、現下の財政事情を踏まえ、人件・糧食費、歳出化経費、一般物件費それぞれあらゆる経費の節減努力を行い、9年度と同額以下に抑制することとする。
(3) 装備品の調達補給体制の合理化・効率化を図り、調達価格の抑制など取得改革に努める。

5.ODA(政府開発援助)

(1) 我が国のODAの量的拡充が国際的に顕著なものとなっている一方、我が国の財政が危機的な状況にあることに鑑み、量から質への転換を図ることにより、集中改革期間中においては、ODA予算は各年度その水準の引下げを図る。
特に、10年度予算については、対9年度比10%マイナスの額を上回らないものとする。
(2) 量的目標を伴う新たな中期目標の策定は行わないこととする。
(3) 援助の実施に当たっては、被援助国側との事前協議を重視するとともに、衛生・医療・教育及び女性の地位の向上のための支援など社会開発の重要性に十分配慮し、被援助国民から真に評価されるものとなるよう努める。また、評価システムの確立、NGO等民間との連携の推進、情報公開の徹底等を図る。

6.農林水産
農林水産関係予算については、担い手への施策の集中、市場原理・競争条件の一層の導入を図りつつ、危機的な財政事情を踏まえ、更に重点的・効率的なものとする。

(1) UR対策(ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策)については、財政構造改革の観点から、農業農村整備事業を中心に対策期間を2年延長するとともに、総事業費6兆100億円の全体の事業内容について、これまでの実績の検証を踏まえ、新しい国際環境に対応し得る農業経営の確立、地域特性の活用により資するよう見直しを行い、農業農村整備事業とその他事業との事業費の比率を概ね5:5とする。
(2) 主要食糧関係費に関しては、「食糧法」の趣旨を踏まえ、米について、政府備蓄水準の早期適正化を進め、米価を含む農産物価格について適切な価格設定を行う。
政府は、適正な備蓄の運営に責任を持つ一方、自主流通米助成、生産調整助成金について市場原理の活用等の視点に立って見直すとともに、学校給食用米穀値引きについては廃止の方向で見直し、集中改革期間中において主要食糧関係費を引き続き対前年度同額以下とする。
(3) その他農林水産関係予算についても、補助金全体について の具体的な見直しの方向に即しつつ、協同農業普及事業交付 金等の在り方など、全般的な見直しを進める。
(4) 国有林野については、今後の行政改革の議論を踏まえた上で、森林のもつ環境保全等の公益的機能の発揮に留意しつつ、経営の在り方及び組織等の抜本的な改革に取り組む。こうした改革や財政構造改革五原則を踏まえた上で、
・森林整備のための財政措置の在り方
・累積債務処理の方策
・森林からの受益に対応した税財源を含めた費用負担の在り方
等につき幅広く検討する。

7.清算事業団債務
財政構造改革を実現していくためには残高が28兆円にものぼる本問題を本格的に処理することが不可欠である。
現在、与党内において進められている検討では、これまで以下の方策が掲げられている。

・自主財源による債務償還
・財投資金の繰上償還あるいは金利減免
・相続税軽減等の特典を付けた無利子国債の発行
・歳出全般の大胆な見直し
・交通機関利用者全体の負担
・JRによる負担
・鉄道利用税等の形によるJR利用者の負担
・揮発油税等道路財源の活用
・事業団債務の一般会計への付け替え
・増税による国民負担
将来世代へ負担を先送りするという形での安易な処理を回避するため、情報の公開・債務増大の原因の分析を行いつつ、国民の理解と納得が得られるよう、これらを含むあらゆる方策につき個別具体的に検討を行い「平成9年中に成案を得る」(平成8年12月25日閣議決定)こととする。

8.整備新幹線
整備新幹線については、政府・与党における検討委員会において、収支採算性の見通し、JRの貸付料等の負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意等の諸条件について十二分に確認し、その取り扱いを厳正に判断することとなっており、拙速に結論を出すことがあってはならない。
また、検討に際しては、収支採算性の試算方法及び基礎データ、関係地方自治体、JRの意見等が適切に開示されることなどにより、検討作業が国民の納得を得られるような形で進められることの確保が不可欠である。
さらに、新規着工区間の着工は、集中改革期間を設けて財政構造改革を進めようという流れに矛盾しないようにするべきである。

9.科学技術予算

(1) 原子力、核融合、宇宙開発等の大型プロジェクトについては、
@集中改革期間中は、国際熱核融合実験炉(ITER)計画の国内誘致は行わないなど、新規プロジェクトの着手は行わないこととする。
A進行中のプロジェクトについても、高速増殖炉「もんじゅ」等、問題があるものについては、全面的に見直す。
(2) 国立試験研究機関、特殊法人等の国の研究機関について、ナショナルセンターとして位置付けるべきもの以外は統廃合することとし、集中改革期間中に統廃合計画を策定するとともに、国の研究機関・制度について、重複の排除、重点化・効率化等による予算の縮減を図る。
(3) 事前・中間・事後における外部評価の実施、評価結果の公表、研究資金の配分への反映により、資金配分の重点化・効率化を進める。
(4) 以上を踏まえ、集中改革期間中においては、科学技術振興費について他の経費との均衡にも配慮し、増加額を大幅に抑制する。
特に、10年度の科学技術振興費については、一般歳出を対9年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、伸率を概ね5%以下とする。
(5) 科学技術基本計画については、同計画の実施に当たって、原子力、宇宙開発、防衛関係費等を極力抑制するとともに、危機的な財政事情を勘案して弾力的に取扱い、財政構造改革予算と整合性のとれたものとする。

10.エネルギー

(1) 危機的な財政事情を踏まえ、聖域なき歳出の改革と縮減を行うため、集中改革期間中、エネルギー対策費を対前年度同額以下とする。
特に、10年度予算については、一般歳出を対9年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、思い切って抑制する。
(2) このため、エネルギー対策費の大宗を占める石炭並びに石油及びエネルギ−需給構造高度化対策特別会計繰入れについて、新エネ・省エネ対策をはじめとする中長期的に安定的な施策の推進との観点に立ちつつ、特定財源制度に安易に依存することなく、石炭並びに石油及びエネルギ−需給構造高度化対策特別会計の歳出全般の見直しを行い、繰入額の圧縮を行う。
(3) 動力炉・核燃料開発事業団については、組織・体制の抜本的改革を行うとともに業務を抜本的に見直し、経費の縮減を図る。
(4) 電源開発促進対策特別会計については、歳出全般の見直しを行いつつ、電源立地対策、電源多様化対策の一層の効率化を行う。
また電源立地にあたっては、情報公開、環境アセスメント等、財政以外の施策が極めて重要である。

11.中小企業対策

(1) 危機的な財政事情を踏まえ、聖域なき歳出の改革と縮減を行うため、集中改革期間中、中小企業対策費を対前年度同額以下とする。
特に、10年度予算については、一般歳出を対9年度比マイナスとすることとしていることを踏まえ、思い切って抑制する。
(2) 中小企業対策予算について、補助金全体についての具体的な見直しの方向に即しつつ、都道府県商工会連合会等の人件費補助の在り方など、中小企業者の活力や地方の役割を尊重する観点から、歳出全般の見直しを行う。

12.地方財政

(1) 地方財政の赤字の縮小は、財源不足を補てんするための特例的な借入金に依存する財政構造の改革であり、地方自治・地方分権の推進並びに国・地方双方の歳出抑制につながる施策の見直しによる地方負担の縮減が不可欠である。
地方の財政赤字については、再建目標期間中に、交付税特別会計借入金や財源対策債を圧縮することにより、これを縮減し、国及び地方の財政赤字の対GDP比3%以下を達成する。
その後速やかに、交付税特別会計借入金、財源対策債をはじめ多額の債務残高の縮減に取り組む。
また、地方債の発行規模を抑制する。
(2) 上記のように、地方財政の赤字を縮小し、地方の財政構造改革を推進するため、地方財政計画の策定に当たって、地方財政は3300の地方公共団体の集合体であることや地方自治・地方分権推進の視点に留意しつつ、国・地方双方の歳出抑制につながる施策の見直し、地方単独施策の抑制等により、再建目標期間を通じた地方一般歳出の伸び率について、国と同一基調で抑制を図り、名目成長率以下とする。
特に、10年度の地方財政計画については、国が一般歳出を対前年度比マイナスとすることに伴って地方歳出も抑制されること、またそれとあいまって、投資的経費に係る単独事業について対前年度比マイナスとすること等により、厳しくその歳出の抑制を図り、地方財政計画上の地方一般歳出を対9年度比マイナスとすることを目指す。
(3) 地方財政計画上の地方単独事業費の抑制等を踏まえ、当面の地方交付税の算定や地方債の配分に当たって、各地方公共団体における歳出の抑制を促すような措置を講じる。
更に、地方公共団体の自主的な財政健全化努力を促していく観点に立って、地方分権推進委員会における議論等を踏まえつつ、地方交付税制度・地方債制度、更に各地方公共団体独自の自主的な財源調達の方途について検討を進める。
(4) 地方の財政健全化のためには、各地方公共団体が自ら強い自覚をもって徹底した行財政改革を行うことが必要であり、このような観点から、地方自治・地方分権推進に留意しつつ、各地方公共団体に対し、給与・定員の適正化、事務事業の見直し、民間委託、外郭団体の整理縮小、公共工事のコスト縮減、いわゆる「ハコ物」建設の抑制等徹底した行財政改革への取組を要請していく。
(5) なお、地方自治・地方分権を推進するに当たっては、その主体となる地方公共団体の行政体制を並行して強化していく必要があり、このような観点から、市町村の合併について、集中改革期間中に実効ある方策を講じ、積極的に支援していく必要がある。

13.補助金

(1)補助金の整理合理化等
補助金(負担金、交付金、補給金、委託費を含む)については、社会経済情勢の変化、官と民及び国と地方の役割分担の在り方等の観点から、聖域なく見直しを行う。
また、各省庁は、その所管する補助金について透明性を確保するため、補助目的・対象等各々の補助金の実情に応じて、交付決定の概要を公表する等必要な措置を講ずる。
(2)地方公共団体に対する補助金
地方公共団体に対する補助金については、制度的補助金(仮称)とその他の補助金に分けて、削減・合理化を図る。
@ 制度的補助金については、制度改正を含め既存の施策や事業そのものを見直すことにより、削減・合理化を図る。
制度的補助金は、例えば次のイからニに掲げるような事項に該当するもので、補助根拠等を総合的に勘案して定める。
イ 国家の統治・安全及び対外関係の処理等、専ら国の利害に関するもの
(国政選挙執行経費、外国人登録事務委託費 等)
ロ 憲法上の国民の基本的権利を保障するためのもの
(生活保護費負担金、義務教育費国庫負担金 等)
ハ 災害救助・復旧に係るもの
(災害救助費負担金 等)
ニ 制度改正を含め、別途、総合的な見直しが行われるもの(公共事業関係費 等)

A その他の補助金については、集中改革期間内の毎年度、各省庁ごとにその1割を削減する。
B 上記@及びAの補助金の削減・合理化を行う中で、次の措置を講ずる。
イ 人件費に係る補助金(負担金を除く)については、特定地域に対する特別なものを除き、一般財源化等を行う。
ロ 地方公共団体の事務として同化・定着又は定型化した事務費に係る補助金については、一般財源化等を行う。
ハ 会館等公共施設に対する補助金に関しては、集中改革期間中は、原則として新たな施設の着工を行わない。

(3)特殊法人・認可法人に対する補助金
特殊法人・認可法人に対する補助金については、その事業の社会的意義が低下しているものを廃止するなど個別に法人の事業を徹底して見直すことにより、削減・合理化を図る。
公営競技関係法人の交付金の在り方について、その透明性を高める等の見直しを行う。
(4)民間団体等に対する補助金
公益法人をはじめとする民間団体等に対する補助金については、法律に基づくものなどは、制度改正を含め既存の施策や事業そのものを見直すことにより、削減・合理化を図る。その他の補助金については、集中改革期間内の毎年度、各省庁ごとにその1割を削減する。
その際、特に公益法人が行う事業に対する補助金については、法人の役割、事業運営の在り方等について見直しを行うことにより真に必要なものに限るとともに、思い切った削減を図る。
(5)新規補助金の抑制等
@ 新規の補助金は、厳に抑制する。行政需要の変化等に即応して真にやむを得ず新規の補助金を設ける場合には、件数及び金額の両面において、スクラップ・アンド・ビルド原則を徹底する。
A 新規の補助金は、5年以内の終期を設定し、終期到来時には原則として継続を認めない。
(6)少額の補助金の不採択
補助効果とコストとの比較関係から、補助金ごとに採択基準を設定し、効率的でないものは、採択しないものとする。
(7)統合・メニュー化、事務手続きの簡素化等
地方分権推進委員会における検討等を踏まえ、引き続き統合・メニュー化、交付金化等を推進するとともに、補助金の交付決定及び補助対象資産の転用等における事務手続きの簡素・合理化を進める。

14.定員・人件費
集中改革期間中、適切な措置を講ずることにより、総人件費を極力抑制する。

(1) 定員については、国の事務・事業の見直しに関する議論を見極めつつ、定員削減計画の見直しを行うことを含め、更に徹底した抑制に努める。
特に、10年度においては、各省庁とも、一層の新規増員の抑制及び定員削減の実施を図るものとする。
(2) 公務員の給与については、労働基本権の代償措置である人事院勧告制度を維持・尊重する。
一方、事情変化が生じた場合、関係者は国政全般を考慮し、責任ある協議を行い、適切に対処する。
(3) 両院議会費、国会議員の歳費については、両院議長の下において、現下の財政事情に照らし早急に検討されるべき事項である。

15.その他

(1) 以上の数値の定められた経費以外の経費についても集中改革期間中において、対前年度同額以下とするなど厳しく抑制する。
(2) 国の行う施設整備については、大規模な施設(新官邸の整備等)について集中改革期間中は新たな着工を抑制する等所要の見直しを行うこと等により、厳にその抑制を図ることとする。
(3) 沖縄振興策及びSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関連事業については、着実に実施することとする。
(4) 首都機能移転問題については、その経緯及び財政構造改革においてあらゆる分野で痛みを伴う改革が進められている状況を総合的に勘案して慎重な検討を行うことを提起する。


なお、概算要求基準方式を抜本的に改めることとし、各省庁は、上記の歳出の改革と縮減の具体的方策に基づき、概算要求を行うものとする。要求に当たっては、限られた財源の中で歳出の合理化・効率化に最大限努めるとの見地から、必要な制度改革を推進しつつ、各種施策の優先順位の厳しい選択と重点化を行うこととする。
以上の考え方に沿って、概算要求については、別途、内閣総理大臣から基本的な方針を示し、また、その細目については、大蔵大臣から通知する。
また、上記のうち、歳出の改革と縮減を具体的に実施する観点から法律化すべきものを精査の上、財政構造改革のための法律案を、できるだけ早い機会に国会に提出するため、早急に取りまとめるべく必要な作業を進めることとする。