閣議決定・施策の解説等

医療制度改革大綱

平成13年11月29日
政府・与党社会保障改革協議会



I 医療制度改革の基本的視点と将来方向

 我が国で国民皆保険が実現して以来、医療保険制度は、年々整備の進んだ医療提供体制とともに、国民の「安心」と生活の「安定」を支え、世界最高水準の平均寿命や高い保健医療水準を実現してきた。
 しかしながら、急速な高齢化、経済の低迷、医療技術の進歩、国民の意識の変化など、医療制度を取り巻く環境は大きく変化しており、将来にわたり、医療制度を持続可能な制度へと再構築していくために、その構造的な改革が求められている。
 医療制度改革は、国民生活に直結する重要課題であり、改革の理念・今後の医療制度の目指すべき姿を明らかにし、国民の理解を得ながら、進めていく必要がある。

 特に、我が国の医療保険制度の将来像を考える場合、一元化を含む医療保険制度の在り方、高齢化のピーク時を視野に入れた高齢者医療制度の在り方、医療環境の変化に対応した診療報酬体系の在り方等は、極めて重要かつ基本的な課題であり、その方向性を明らかにしていく必要がある。

(1) 基本的視点

 医療制度改革の中心的課題は、国民皆保険体制やフリーアクセスの原則を堅持しつつ、高齢化の進展等により増大する老人医療費を深刻に受け止め、保険料、患者負担、公費という限られた財源の中で、将来とも良質な医療を確保し、持続可能な皆保険制度に再構築していくことができるかである。

 このためには、まず、医療費の適正化や医療提供体制の効率化を進めていくことが重要であり、保健医療システムや診療報酬体系について、全般にわたる基本的な見直しを進めていく。
 その上で、持続可能な医療保険制度としていくためには、給付と負担について、公平が図られ、国民の納得が得られることが重要である。こうした観点から、医療保険制度の在り方、保険料の在り方、患者負担の在り方、公費の在り方について見直しを進める。

(2) 医療制度の将来方向

  1. 医療保険制度の一元化等
     医療保険制度の一元化を将来の方向とすることは、一つの有力な考え方であり、これについて具体的な検討を開始し、一定期間内に結論を得ることとする。
     まず、一元化に当たっては、被用者保険、国民健康保険、高齢者医療各制度の在り方について国民的合意を得ることが必要である。
     また、その一段階として、被用者保険、国民健康保険それぞれについて、具体的な目標等を示しつつ、保険者の統合・再編を促進するものとする。

     被用者保険については、保険者の自立性・自主性を尊重しつつ、保険者数の集約化を図る。そのため、保険者に対する大幅な規制緩和等を進める。また、財政事情が厳しい小規模組合の統合等を図る。

     国民健康保険については、保険者の規模の拡大を図るため、市町村合併推進の取組みと併せて、広域化等のための支援措置を講じる。また、国民健康保険の構造的な課題に対し、保険者の財政基盤強化の観点から、財政支援制度の創設や都道府県単位での保険者間の財政調整の拡充を図る。

  2. 新しい高齢者医療制度の創設
     高齢者医療制度については、高齢化のピーク時を視野に入れて、その基本的性格、財源構成、介護保険との関係、中心的な論点となっている拠出金の取扱い等について論議を進め、できるだけ速やかに新たな制度創設の実現を目指す。

     この新しい制度は、75歳以上の者を対象とし、高齢者自らが負担能力に応じて保険料の負担をすることを基本としつつ、保険制度間の公平な負担が確保されることを目指す。その際、現役世代の支援と公費の適切な組み合わせを図るとともに、必要な財源の確保を目指す。また、介護保険スタート後の高齢者医療制度と介護保険制度の関係の明確化を図る。

  3. 診療報酬体系
     診療報酬体系については、近年の急速な医療技術の進歩や医療提供体制の変化に十分対応できていない、また、現在の体系が施行されて以降、累次の改定を経る中で、過度に複雑になっているといった指摘もあることから、あるべき医療の姿を踏まえ見直すとともに、医療技術や医療機関の運営コストが適切に反映されるよう、透明性の高い体系へと見直しを進める。



II 保健医療システムの改革

(1) 健康づくり・疾病予防の推進

 健康寿命の延伸、生活の質の向上を実現するため、健康づくりや疾病予防を積極的に推進する。そのため、早急に法的基盤を含め環境整備を進める。

(2) 医療提供体制の改革

 医療提供体制については、限られた資源を最も有効に活用できる体制を構築し、情報の開示に基づく患者の選択を尊重しながら、医療の質の向上と効率化を図り、国民の医療に対する安心と信頼を確保する。

 当面、以下のような具体的な施策について、目標、時期、国の講ずべき施策をできる限り明確に示しながら、推進する。





III 診療報酬・薬価基準等の改革

(1) 診療報酬

  1. 診療報酬体系の基本的な見直しを視野に入れつつ、包括払いの拡大、大病院等の診療報酬の取扱い、かかりつけ医と病院の連携、公私の医療機関の機能分担等について検討を急ぐ。

  2. 当面する平成14年度の診療報酬改定については、改革の痛みを公平に分かち合う観点からも、賃金・物価の動向、昨今の経済動向、さらに保険財政の状況等を踏まえ、引き下げの方向で検討し、措置する。

(2) 薬価基準等

 薬価基準については、これまで薬価の適正化や薬価算定手続の透明化等の取組みを通じて、薬剤比率や薬価差が大幅に縮小してきているが、平成14年度については、市場実勢価格を踏まえ、必要に応じ引き下げを行う。併せて、画期的新薬等の評価を確立するとともに、先発品の価格の適正化と後発品の使用を促進する仕組みの構築を図る。
 保険医療材料価格についても、内外価格差の是正を図る。

(3) 公的医療保険の守備範囲

 医療技術の進歩や患者ニーズの多様化等に対応するため保険診療と保険外診療を組み合わせる仕組みとして設けられた特定療養費制度を活用する等により、国民意識の変化や患者ニーズに機動的・弾力的に対応し、公的医療保険の守備範囲を見直す。



W 医療保険制度の改革

(1) 保険給付の見直し

 給付の在り方について、合理化、改革を図る。

 総報酬制の下で、平成15年度から政府管掌健康保険の保険料を予定どおり引き上げ、必要な時に7割給付で保険間の統一を図る。

 高額療養費に係る自己負担限度額についても、負担の公平の観点から、低所得者に配慮した上で、見直す。

(2) 保険料の見直し

 保険料は、医療保険財政の中核をなすものであり、必要な医療費に見合うものとしていく必要があるが、高齢化のピーク時においても、保険料負担の水準が過度なものとならないようにする。

 政府管掌健康保険の保険料率については、中期的に保険財政の均衡が図られるよう、定期的に収支両面の見直しを行い、改定を行うこととする。

 また、被用者保険について、保険料負担の公平を図る観点から、総報酬制の導入を図る。



X 高齢者医療制度の改革

(1) 対象年齢・公費負担の見直し

 高齢者の医療については、拠出金負担の増大による保険財政の逼迫など改革の緊急性に鑑み、拠出金負担の軽減を図るとともに、高齢者の状況の変化、今後の高齢化の一層の進展等を踏まえ、後期高齢者に施策を重点化する観点から、新しい高齢者医療制度が創設されるまでの間、現行制度の対象年齢を75歳以上とするとともに、公費負担割合を引き上げる。
 その際、対象年齢の引き上げに伴い一般医療の対象となる70歳から74歳の者の患者負担については、75歳以上の者と同様の取扱いとなるよう配慮する。

 対象年齢の引き上げに併せて、老人医療費拠出金の算定方法については、保険者間の負担の公平の観点から見直す。

(2) 患者負担の見直し

 老人医療の対象者の患者負担については、低所得者に配慮しつつ、完全定率負担とするとともに、一定以上の所得の者に対しては応分の負担を求めることとする。

(3) 医療費総額の伸びの適正化

 医療費、特に高齢者人口の増を大きく上回って増加する老人医療費について、その伸びを適正なものとするよう、伸び率抑制のための指針を定め、その指針を遵守できるよう、速やかに、診療報酬の在り方、公私病院の役割分担など有効な方策を検討し、実施するものとする。


VI その他

 社会保険と労働保険の保険料徴収の一元化等保険運営の効率化について、その具体化に向けて早急に取り組む。

 以上のような考え方に基づき、医療制度を構成する保健医療システム、診療報酬体系、医療保険制度のすべてについて、総合的な構造改革を進めていかなければならないが、現下の医療保険財政の深刻な状況、平成14年度予算編成への対応などを踏まえれば、早急に着手し、確実に実行していく必要がある。