閣議決定・施策の解説等
平成14年度予算編成の基本方針
平成13年12月4日
閣 議 決 定
T 日本経済の再生に向けた構造改革の推進
1 我が国の経済と財政の状況
(我が国経済の現状)
世界経済は、米国経済の減速や米国同時多発テロ事件等の発生などにより、同時的に減速している。こうした中で、我が国経済については、輸出、生産は大幅に減少し、企業収益、設備投資も減少している。さらに、雇用情勢は厳しさを増し、個人消費も弱含むなど、景気は一段と悪化している。(平成13年度及び平成14年度の我が国経済)
平成13年度については、景気の現状、世界経済の同時的な減速など先行きへの懸念などから、経済成長率はマイナスになるものと見込まれる。
平成14年度については、今後、構造改革を強力かつ迅速に遂行していく中で、平成13年度第2次補正予算を始め、政府・日銀が一体となったデフレ問題への取組みなど政策展開の効果が着実に発現し、加えて米国経済の改善が見込まれることなどから、我が国経済は、引き続き厳しいながらも回復に向けて動き出すことが期待される。
なお、具体的な経済成長率等については、政府が年末にとりまとめる「経済見通しと経済運営の基本的態度」において示されることになる。(財政事情)
我が国財政は、バブル崩壊後、総じて景気回復を優先した財政運営を行ってきた結果、平成13年度末の国と地方を合わせた長期債務残高は約666兆円にも達する見込みであり、主要先進国中最悪の危機的な状況である。
また、かつてのような高い経済成長に依存した税収の伸びが期待できない中で、急速な人口の高齢化等に伴う経費の増大や公債の累増に伴う国債費の増大等により、歳入歳出構造はますます硬直化してきており、財政構造についての思い切った見直しがなければ、歳出と税収の多額のギャップは年々拡大していく可能性が強い。
このような財政の持続可能性に対する懸念の増大を放置することなく、財政構造改革に着実に取り組む必要がある。2 日本経済の再生に向けて−構造改革の推進−
厳しい経済情勢にあっても、日本経済の再生を図る道は構造改革以外にはない。不良債権の迅速な処理と過剰債務の解消、規制改革や特殊法人等改革などによる民間活力が発揮される環境の整備、財政構造改革による財政の対応力の確保など、経済社会の構造を抜本的に改革し、我が国の持つ潜在力を発揮できる新しい仕組みを作り上げることが必要である。これら各般の構造改革の取組みは一体的かつ整合的に行われなければならない。
この構造改革の過程で、今後2年程度の集中調整期間においては、厳しい経済情勢を甘受せざるを得ないが、経済活性化のための構造改革を加速することにより、やがて構造改革の成果が実り、日本経済の脆弱性が克服され民需主導の経済成長が可能となる。なお、改革に伴う「痛み」については、雇用創出型の構造改革を進めることによって、最小限となるよう努める。
今後数年間にわたる経済や財政全般の構造改革の道筋とこれによって実現される我が国経済の再生の姿については、現在策定中の「構造改革と経済財政の中期展望」(仮称)において示す予定であり、平成14年度はその初年度として我が国経済の再生に向けたスタートと位置付けられる。
II 平成14年度予算の基本的考え方
(改革断行予算)
平成14年度予算は、財政構造改革の第一歩として、「国債発行額30兆円以下」との目標の下、歳出構造を抜本的に見直す「改革断行予算」と位置付けられる。
現下の厳しい経済情勢の中で、既存の制度・施策を転換し構造改革を推進することは容易なことではない。しかし、「改革なくして成長なし」との精神で新しい未来を切りひらくことは緊急の課題である。平成14年度予算では、いわゆる「5兆円を削減する一方で重点分野に2兆円を再配分する」という理念を踏まえつつ、予算配分を大胆にシフトすることによって経済構造の転換を促進する。
その際、「民間でできることは民間に、地方でできることは地方に」との原則を踏まえ、歳出全般について根底から見直すことにより、国・地方を通じ財政の関与を真に必要なものに限る。また、全ての歳出は究極的には国民の税金でまかなわれているとの認識に立脚し、コスト意識を持って施策の効果や行政の効率性を点検することにより、歳出のムダを省き削減すべき経費は徹底的に削減する。
予算の配分に当たっては、まず、高齢化の進展など経済社会構造の変化に適合した安定的な制度構築を前提とすることが重要である。
同時に、中期的な経済の生産性の向上や民間の潜在的な活力を顕在化させる効果及び最近の雇用情勢を踏まえ雇用創出効果について重視するとともに、新たな財政ニーズに的確に対応することが適当である。
さらに、改革に伴う当面の負担を国民が分かち合うことにより、社会的弱者に「痛み」が集中しないように配慮することが適当である。
平成14年度財政投融資計画については、財政投融資改革、行財政改革の趣旨を踏まえ、全体規模を縮減しつつ、対象事業の重点化を図るとともに、現下の社会経済情勢に鑑み真に必要と考えられる資金需要には的確に対応する。(行政改革)
「聖域なき構造改革」の考え方の下、簡素で効率的な行政システムを確立するため、時代の要請に即応して行政の役割を見直し、行政組織の減量・効率化等や特殊法人等改革など行政の構造改革を推進する。
国家公務員の定員については、10年で25%純減などスリム化の方針を着実に実施するとともに、その中で行政需要の変動に的確に対応し得るよう、府省間での人的資源の再配分を一層積極的に進めることが必要である。このため、平成14年度においては、全政府的見地から緊要な施策に対して、従来にも増して、重点的な増員を行う一方で、その他の分野については、徹底した増員の抑制と厳しい定員削減を実施することにより、メリハリのある定員配置を実現するとともに、全体としては国家公務員数の一層の純減を確保する。
また、すべての特殊法人等の事務事業及び組織形態を抜本的に見直すことにより、「特殊法人等整理合理化計画」を年内に作成するとともに、特殊法人等向け財政支出については、これらの見直しの結果などを反映して一般会計・特別会計を通じ、1兆円を目標として大胆な削減を図る。(税制改正等)
税制については、平成14年度予算の「国債発行額30兆円以下」との目標の下、我が国のもつ潜在力を発揮できるよう経済社会の構造改革を推進していく観点から、社会経済情勢の変化等を踏まえ、公平・中立・簡素といった基本原則に基づき、適切に対応することとする。
このような考え方の下、租税特別措置については、聖域なく徹底した見直しを行い、廃止を含め整理・合理化を行う。
また、税外収入についても、可能な限りその確保を図る。
なお、連結納税制度については、国際的に遜色のない、21世紀の我が国法人税制としてふさわしい制度を構築すべく、所要の財源措置を講じることを含め、平成14年度創設を目指し検討を進める。
III 歳出の見直しと構造改革の推進
平成14年度予算は「改革断行予算」として歳出全体を厳しく見直し大胆な質的改善を図ることとする。このため、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日閣議決定。以下「経済財政構造改革に関する基本方針」という。)に基づき、以下の1から7までに掲げる7分野で政策効果が顕著なものについて重点的に推進するとともに、社会資本整備、社会保障制度、地方財政についても諸々の見直しを行う。1 循環型経済社会の構築など環境問題への対応
経済が持続的に成長するためには、自然環境との調和が重要な課題である。このため、廃棄物・リサイクル処理などの環境技術の実用化に向けた研究・開発等を進めることにより、経済活動の環境への負荷を低減しつつ、「環境」を新たな成長分野として捉え、その環境セクターの創出・拡大を図る。また、廃棄物の発生抑制、リサイクルの促進、不法投棄の防止等により「ゴミゼロ社会」の構築を目指すとともに、京都議定書の実施に向けて、国民各層一体となった取組みの推進・健全な森林の育成等を含め脱温暖化の社会づくりを推進する。
このため、政府系研究機関・産学官が連携した取組体制を構築する。
さらに、自然との共生など環境問題への対応を市民参加を図りつつ推進する。2 少子・高齢化への対応
少子・高齢化が一層進展する中で、持続可能な社会保障制度の構築に努めるほか、PFI方式の活用等により介護、保育サービスの供給体制を効率的に整備する。
また、仕事と子育ての両立を支援するために、保育所の待機児童ゼロ作戦や放課後児童の受入体制の整備を図るなど、次代の社会を担う子供を安心して生み育てることができる環境の整備を推進する。
さらに、公共施設、公共交通などの公共空間のバリアフリー化を図り、高齢者が尊厳を保ちつつ積極的に社会参加をできるような社会の構築を目指す。3 地方の個性ある活性化、まちづくり
「国土の均衡ある発展」の本来の考え方を活かすため、「個性ある地域の発展」、「知恵と工夫の競争による活性化」を重視する方向へ施策の重点化を進める。
個性ある地方の自立した発展と活性化を促進するため、「市町村合併支援プラン」の各種事業を実施し、すみやかな市町村の再編を促進する。
また、地域社会において社会事業を担うNPOへの支援を強化する。また、意欲と能力のある経営体に施策を集中すること等により、農林水産業の構造改革を推進するとともに、都市と農山漁村の共生と交流の推進や中心市街地の活性化等を通じて個性あるまちづくりを進める。
さらに、住民の安全と治安を確保することにより、安心して暮らせる社会を構築する。4 都市の再生
多くの経済活動が行われている都市の再生は重要な課題である。この「都市」の魅力と国際競争力を高めるため、都市再生プロジェクトの推進と民間都市開発投資の促進を図ることにより魅力ある都市の再生を実現する。
このため、民間主導の再開発事業を円滑に進めるための大胆な規制改革を実施し、例えば、大都市の骨格としての環状道路と周辺地域の再開発事業の一体的整備を推進するなど、都市機能の一層の高度化を図る。
また、都市生活をおくる住民のアメニティー向上に対する関心が高いことも踏まえ、PFIを積極的に活用した公共施設の整備や交通渋滞の解消など都市生活の質を高めるための環境整備に、施策の優先度を踏まえつつ、取り組む。5 科学技術の振興
科学技術創造立国の実現のため、国際的に卓越した基礎研究及び21世紀に必要となる新しいテクノロジーとして、@ライフサイエンス、A情報通信(IT)、B環境、Cナノテクノロジー・材料の4分野など産業競争力と質の高い国民生活の基盤となる科学技術分野における重点的な研究開発を進める。
また、「科学技術」を軸として、地域経済を支え、世界に通用する新事業やベンチャー企業の創造を推進するなどの観点から、民間企業の研究開発の支援や国・大学から民間企業への技術移転の促進に資する環境整備など産学官連携の推進及び地域科学技術の振興を図る。6 人材育成、教育、文化
国公私立大学を通じ、国際的にも評価される世界最高水準の大学を育成するため、第三者評価による競争原理を導入しつつ教育投資を重点的に実施するなど、支援措置の重点化を図る。また、初等中等教育について確かな学力と豊かな心を持った人材の育成を図るなど、教育の構造改革の柱である「21世紀教育新生プラン」の推進を通じた教育改革に取り組む。さらに、文化芸術分野を含め優れた人材育成を図ることにより、心豊かな活力ある社会を構築する。
また、機関補助の在り方について見直しを進める一方、意欲と能力のある個人への支援を重視する方向で、奨学金事業の充実等による社会人を含む学生に対する教育機会の拡大など個人の主体的な自助努力を支援する施策を推進する。7 世界最先端のIT国家の実現
「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になる」との目標達成に向け、「e−Japan重点計画」(平成13年3月29日)及び「e−Japan2002プログラム」(平成13年6月26日)に掲げられた世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成や電子政府・電子自治体の着実な推進を始めとする5分野に係る施策を重点的かつ戦略的に実施する。また、2005年に実現される世界最先端のIT国家の姿を国民のみならず世界に提示するためのショーケースとして、e!プロジェクトを推進する。
なお、これらの施策を推進するに当たっては、施策の重複の排除等の観点を踏まえ既存の施策を大胆に見直すとともに、研究開発の推進、国際的な協調及び貢献の推進といった横断的な課題についても積極的な対応を図る。8 社会資本整備
平成14年度予算においては、重点分野の公共投資を伸ばす一方、緊急性の低い公共投資を大幅に削減することにより、公共投資関係費を前年度当初予算に相当する額から10%削減する。その際、公共事業の効率化を通じたコスト縮減、PFIの活用、真に必要な分野への予算の集中等を進めることは、公共事業関係予算が削減される中で、行政サービス水準を充実するために極めて重要である。(特定財源の見直し)
道路等の「特定財源」については、そのあり方を見直す。(公共投資の重点化)
公共投資については、「経済財政構造改革に関する基本方針」で示した重点分野へのシフトという考え方の下、例えば、廃棄物処理施設、都市環境整備、大学等の国の研究施設、保育所、特別養護老人ホームといった分野への投資の重点化を図る。
他方、それぞれの社会資本の@整備水準、A整備の緊急性、B利用者の範囲の大きさ、C国と地方の役割分担などを勘案し、以下の分野については継続案件を含め厳しく見直しを行う。
- 上水道、工業用水などについては、普及率が上がってきていること等を勘案し整備のあり方を厳しく見直す。
- 小規模下水道事業について経済効率性等の観点から合併処理浄化槽等との分担を見直すなど、下水道整備について地域や課題に応じて厳しく見直し、重点化・効率化を図る。
- 治山、治水などの分野について事業の重点化を図るとともに、大規模ダム事業について実施計画調査の新規着手を凍結。事業中のダムについて、既存ダムの有効活用を含め水需要の必要性等を厳正に吟味して事業を峻別する。
- 公営住宅等の整備について、民間借上げやリフォーム等既存ストックを最大限活用する。
- 新たな地方港湾の整備について抑制する。
- 今後の地方空港の新設について離島を除き抑制する。
- 高規格幹線道路など特殊法人等が行う公共事業については、特殊法人等改革の趣旨を踏まえ、厳しく見直す。
- 農林水産関係分野の公共事業については、改革の方向に沿って重点化を図る等徹底した見直しを行い、公共事業から公共事業以外の政策手段への転換(ハードからソフトへの転換)を進める。
(公共事業の効率性・透明性の向上等)
公共事業の効率性・透明性の向上に向け、事業評価の改善、PFIの活用、一般競争入札の拡大等競争性の向上、過度の入札制限の見直し等の具体的な取組みを進める。
地域間の予算配分については、整備状況を踏まえて弾力的な配分を行う。
漁港漁場整備長期計画については、事業実施について計画策定の重点を従来の「事業量」からアウトカム目標に変更するとともに、厳正な事前評価により目標達成の確実性が検証された地域に限定する等、効率的な事業実施の手法を導入した「構造改革計画」として策定する。9 社会保障制度
社会保障制度は、国民の安心と生活を支えるセーフティネットであり、低迷を続ける我が国経済の状況、少子化・高齢化の一層の進展という中にあっても、将来にわたり維持可能な制度とすることにより、国民の将来に対する安心を保障することができる。このためにも、国民一人一人が痛みを分かち合って社会保障制度を支えていかなければならない。(医療制度改革)
医療制度については、社会保障制度の改革の第一歩として、国民皆保険体制を守るため、医療サービスの効率化を一層進めるとともに、以下の事項を中心とする制度改革を行う。
- 診療報酬については、賃金・物価の動向、昨今の経済動向、さらに保険財政の状況等を踏まえ、引下げの方向で検討し、措置する。薬価基準については、市場実勢価格を踏まえ、必要に応じ引下げを行うとともに、診療報酬制度・薬価制度の見直しを行う。
- 高齢者医療については、低所得者に配慮しつつ完全定率(1割)負担とするとともに、一定以上の所得の者に対しては応分の負担とする。
- 高額療養費の自己負担限度額等を見直す。
- 高齢者医療については、後期高齢者に施策を重点化する観点から、見直しを行う(対象年齢を75歳以上に引き上げ、公費負担割合を引き上げる)。
- 医療費、特に高齢者人口の増を大きく上回って増加する老人医療費について、その伸びを適正なものとするよう、伸び率抑制のための指針を定め、その指針を遵守できるよう有効な方策を検討し、実施するものとする。
- 総報酬制の下で、平成15年度から政府管掌健康保険の保険料を予定どおり引き上げ、必要な時に7割給付で保険間の統一を図る。
(年金の物価スライド)
平成14年度の年金額等の物価スライドについては、当面の物価、経済の動向を踏まえ、制度の健全性にも留意し、対応する。10 地方財政
「自助と自律」による新たな国・地方関係を確立するため、国の関与の縮減、地方公共団体の行財政基盤の拡充、地方財政の健全化や制度改革などに一体的に取り組む。(地方財政計画の歳出の見直し)
国の歳出の見直しと歩調を合わせつつ、地方財政計画の歳出について見直しを行った上で、所要の地方財政措置を講じる。その際、国の関与の縮減や、国・地方公共団体が保障すべき行政サービス水準の見直しなどに応じて、地方財政計画の歳出を見直すとともに、定員の計画的削減等による給与関係費の抑制や、地方単独事業の削減を図ることなどにより、地方財政計画の規模の抑制に努める。(国庫補助負担金・地方交付税の見直し)
国庫補助負担事業については、国の関与が特に必要なものに限定していくこととし、費用便益の検証、事業規模の抑制、配分重点化などへの取組みを踏まえたものとする。また、「国は大きな方向のみ定め、地方にできることは地方に任せる」との観点から、統合補助金の一層の拡充を図り、地方の裁量を高めるとともに、地方交付税における段階補正、事業費補正等の見直しを行い、地方公共団体の自主的・主体的な財政運営を促す。