閣議決定・施策の解説等
緊急対応プログラム
平成13年12月14日
経済対策閣僚会議
目 次
- 1 基本的考え方
(1)景気の現状認識
(2)緊急対応プログラムの考え方- 2 構造改革のための社会資本の整備(「改革推進公共投資」特別措置)
- 1) 都市機能の一層の高度化・国際化
- 大都市圏環状道路の整備
- 大都市圏の国際交流・物流機能の強化
- 渋滞対策等都市の生活環境整備
- 民間都市開発の推進
- 商店街・中心市街地の活性化
- 都市の再開発につながる公的施設整備
- 災害に強い都市への再生
- 都市治安対策等の強化
2) 環境に配慮した活力ある地域社会の実現
- 地方の自主性を活かす統合補助金事業
- 廃棄物処理施設、リサイクル施設の整備等
- 自然共生型公共事業等の推進
- 水質改善対策の推進等良質な水を育む循環系の整備
- 環境に関する技術開発・普及の推進
- グリーン庁舎の整備の推進
3) 科学技術・教育・ITの推進による成長フロンティアの拡大
- 世界最先端の研究施設の整備
- 産学官連携による研究開発の推進
- 博物館、美術館等の文化施設、社会教育施設の整備
- 電子カルテ等の医療分野の情報化の推進
- 地域のIT化の推進
- IT化に対応した公的施設・システムの整備
- 公立学校における校内LAN等の整備
- 管理用光ファイバー等の整備の推進
4) 少子・高齢化への対応
- 特別養護老人ホーム、ケアハウス等の介護関連施設等の整備
- 保育所、放課後児童クラブ等の子育て施設の整備
- 障害者関連施設、小児医療施設等の整備
- 歩道・駅などの公共空間のバリアフリー化等の推進
- 3 緊急対応プログラムの規模と効果
緊急対応プログラム
1 基本的考え方
(1)景気の現状認識
米国における同時多発テロの発生を契機に世界同時不況のリスクが高まる中、我が国においても景気は一段と悪化している。個人消費が弱含んでいるほか、輸出、生産が大幅に減少し、設備投資も減少している。このような中、失業率はこれまでにない高さにまで上昇している。さらに、デフレ(持続的な物価下落)が進行している。
このため、我が国経済が、物価下落と生産活動の縮小とが相互作用して、景気が加速度的に悪化していく、いわゆるデフレスパイラルに陥ることのないよう、十分な注意と適切な政策対応が必要となっている。(2)緊急対応プログラムの考え方
政府は、先に「改革先行プログラム」を策定し、第一次補正予算を編成した。これは、現下の経済情勢にかんがみ、構造改革を進めるため、先行して決定・実施すべき施策をとりまとめたものであり、特に、規制制度改革による雇用の創出や、雇用面、中小企業面におけるセーフティーネットの整備に重点を置いたものであった。
しかしながら、同時多発テロ事件後の経済環境の急激な変化を踏まえ、「改革なくして成長なし」との決意の下、構造改革をより一層加速しつつ、デフレスパイラルに陥ることを回避するため、今般、緊急に対応すべき施策からなる「緊急対応プログラム」を策定し、第二次補正予算の編成を行うこととした。
本プログラムは、構造改革の加速に資する事業であって、高い経済活性化効果が期待できるものを推進することを目的としている。このような観点から、本プログラムでは、6月に閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」に示された構造改革に資する重点7分野に注力することとし、その中で民間投資の創出、就業機会の増大に資し、事業の早期執行が可能で経済への即効性が高く、緊急に実施の必要のあるものを取り上げ、2に掲げるように4つの政策課題の下に整理した。
政府としては、本プログラムに記載された施策を第二次補正予算の国会成立後早急に実施に移すとともに、不良債権処理及び過剰債務解消、規制制度改革、特殊法人等改革、「改革断行予算」である平成14年度予算などを一体的かつ整合的に実施することにより構造改革を加速し、民需主導の自律的な経済成長につなげていくこととしている。
政府・日本銀行一体となったデフレ問題への取組みに向け、日本銀行においても、政府の進める構造改革を踏まえ、デフレ阻止に向けて、適切かつ機動的に金融政策を運営するよう期待する。2 構造改革のための社会資本の整備(「改革推進公共投資」特別措置)
1) 都市機能の一層の高度化・国際化
- 大都市圏環状道路の整備
大都市圏における交通の円滑化、都市構造の再編等を図るため、首都圏中央連絡自動車道などの三大都市圏における環状道路の整備を推進し、例えば首都圏においては、圏央道内側の主要渋滞ポイントの解消などに努める。
- 大都市圏の国際交流・物流機能の強化
羽田空港ターミナルや、横浜港などの中枢国際港湾の整備拡充など空港・港湾等の国際交流・物流拠点の整備を図るとともに、高規格幹線道路網への接続道を整備し、市街地へのアクセスを向上させる。
- 渋滞対策等都市の生活環境整備
交通渋滞の解消等を図るため、ボトルネック踏切の立体交差化を進めるほか、電線類の地中化の推進や地下鉄等の都市鉄道の整備の促進等により、都市の生活環境の向上を図る。
- 民間都市開発の推進
都市計画道路のうち相当程度事業が進捗している路線について地方公共団体が一定期間内(例.3年以内)に事業を完了させる旨を公表して重点的な整備を推進し、沿線の民間投資を喚起するとともに、都市計画道路の整備の遅れにより土地の有効利用がなされていない地区で道路整備と沿道地域の一体的開発を誘発するなど、都市の開発を促進する事業を展開する。
また、民間事業者が行う公共施設整備を新たに支援するなど、民間活力を活用した都市開発事業等を推進する。
- 商店街・中心市街地の活性化
新たな街づくりを進めて、商店街・中心市街地を活性化させるため、顧客の利便性の向上に資する駐車場や多目的ホールなどの商業基盤施設等の整備を支援する。
- 都市の再開発につながる公的施設整備
施設の集約・高層化等により不要となった跡地の民間事業者への売却等を通じて地域の再開発を誘発するとともに、地域の実情に応じて公務員宿舎等への商業施設等の併設を行うなど、地域の街づくりと一体となった公的施設整備を図る。
- 災害に強い都市への再生
地震、火災等に対して脆弱な都市を災害に強い都市として再生させるため、避難地、消防防災施設等の整備を図るとともに、海上防災基地を核とする消火、物資輸送能力の向上を図る。また、都市型水害への対応を図るため、雨水排水対策等を進めるほか、河川の水質改善の観点も踏まえ、下水道の整備を進める。地震発生時に大きな被害が想定される木造密集市街地については、その解消等を図る。
- 都市治安対策等の強化
都市部における外国人の不法滞在・不法就労や国際組織犯罪などの増加に的確に対処するため、収容可能人員が不足している入管収容施設や矯正施設等の整備を進める。さらに、司法機能強化のために都市部の裁判所の施設整備を図る。2) 環境に配慮した活力ある地域社会の実現
- 地方の自主性を活かす統合補助金事業
地方公共団体が自主性を最大限発揮し、地域の実情に即して裁量的に事業を行う統合補助金について、新規の創設を含め拡充する。具体的には、地域の創意工夫を活かした「地域が主役のまちづくり」を推進するため、まちづくり事業計画に基づき地区単位で一括交付する「まちづくり総合支援事業」等を推進する。また、公共事業における制度に準じて新たに非公共事業についても統合補助金を設けることとし、地方の実情を踏まえた農山漁村の生活環境と生産基盤等の整備を推進する。
- 廃棄物処理施設、リサイクル施設の整備等
ダイオキシン対策の一層の推進を図る等の観点から、ごみ焼却施設等の廃棄物処理施設等の整備を促進するほか、民間事業者による先導的なリサイクル施設の整備を推進する。有機性資源のリサイクルについては、食品廃棄物の肥料・飼料化、エネルギー回収等のリサイクル推進のためのモデル施設の整備などを推進する。また、BSE(牛海綿状脳症)の検査体制の強化を図り、食肉センターにおける牛の特定危険部位焼却施設の整備等を図る。
さらに、廃棄物海面処分場等の整備を推進するとともに、各事業におけるリユース・リサイクルの徹底を図る。
- 自然共生型公共事業等の推進
蛇行河川の復元や湿地の再生、干潟・藻場の再生、公園緑地の創出、緑豊かな森林環境の創造など、環境保全に配慮し、自然と共生する事業等を推進する。また、国立公園等の山岳地域における自然環境保全対策を推進する観点から、排水・し尿処理施設を整備する。
- 水質改善対策の推進等良質な水を育む循環系の整備
水道水源となっているにもかかわらず水質悪化が進行している河川等において、水質保全を緊急に実施し、おいしい安全な水の確保を図るほか、奥地水源地域等における森林の保全・整備を推進する。
- 環境に関する技術開発・普及の推進
環境(地球温暖化対策、省エネルギー、リサイクル等)に関する先進技術の研究開発及び普及を推進するため、国・独立行政法人等の研究機関における研究施設等の整備を図る。
- グリーン庁舎の整備の推進
太陽光発電、屋上緑化等により環境面の負荷を軽減した官庁施設(グリーン庁舎)の整備及び既存庁舎の改修を図る。
3) 科学技術・教育・ITの推進による成長フロンティアの拡大
- 世界最先端の研究施設の整備
タンパク質の解析システムやゲノム科学等を応用した創薬・治療法の開発、次世代インターネット技術であるIPv6に対応したネットワークセキュリティ、ナノレベルでの物質・材料合成など、重点4分野(ライフサイエンス、情報通信(IT)、環境、ナノテクノロジー・材料)等に関する独創的・先端的な研究拠点として、大学施設、独立行政法人、国立研究所等の国の研究機関等における研究・教育基盤の整備を図る。- 産学官連携による研究開発の推進
IT、ライフサイエンス等の分野において、産学官連携の研究開発施設やベンチャー企業育成施設を整備することにより、民間投資の誘発と市場の創出に直結した最先端の研究開発を推進する。
また、軌間可変電車(フリーゲージトレイン)について、鉄道事業者等と連携して国内走行試験を行うために必要な施設整備を行う。
- 博物館、美術館等の文化施設、社会教育施設の整備
文化振興及び文化を通じた教育の充実や人材育成の推進を図るため、国立博物館等の文化施設の整備を図る。
また、次の時代を担う世代の学習・教育の場として、豊かな自然環境の中での体験学習などを行う社会教育施設の整備等を図る。
- 電子カルテ等の医療分野の情報化の推進
医療機関において電子カルテを導入するための施設を整備するとともに、レセプト電算化等の医療分野の情報化を推進し、医療経営の効率化や医療の質的向上を図る。
- 地域のIT化の推進
電子自治体の構築、教育の情報化、デジタル・デバイドの是正等の観点から学校等の公共施設間のネットワーク(地域イントラネット)等の地域における情報通信ネットワークの基盤整備、地方公共団体のインターネット導入促進等を支援する。
- IT化に対応した公的施設・システムの整備
防災や気象監視等の分野におけるIT機能の高度化を図るとともに、国際会議施設、庁舎等の公的施設のIT化を推進する。
また、ITを活用し、各種高度道路交通システム(ITS)サービスの導入、交通管制の高度化を推進するとともに、ニアミス事故の防止のための安全対策を推進する。
- 公立学校における校内LAN等の整備
「改革先行プログラム」における新公共サービス雇用による教員補助者等の活用等と併せ、学校におけるIT教育の推進や少人数授業の実施等に資する観点から、公立学校等における校内LAN等の施設整備を図る。
- 管理用光ファイバー等の整備の推進
民間事業者による光ファイバー網の構築を支援するため、道路、河川、港湾等の公共施設管理用光ファイバー収容空間の整備・開放等を推進する。4) 少子・高齢化への対応
- 特別養護老人ホーム、ケアハウス等の介護関連施設等の整備
「ゴールドプラン21」に沿った介護サービスの提供を促進するため、特別養護老人ホーム(14,000人分)、ケアハウス(1,000人分)など介護関連施設等の整備を進めるとともに、高齢者が要介護状態になることを予防するための事業等を行う拠点の整備を進める。
- 保育所、放課後児童クラブ等の子育て施設の整備
第一次補正予算に引き続いて、保育所待機児童ゼロ作戦を推進するため、保育所(8,000人分)の緊急整備を進める。また、子育て支援のため、放課後児童クラブ等の拠点施設(150か所)や幼稚園の整備を進めるほか、虐待された児童や配偶者からの暴力の被害者等への対応を強化するため、児童養護施設、母子生活支援施設、婦人保護施設等を整備する。
- 障害者関連施設、小児医療施設等の整備
障害者等の自立と社会参加を促進する観点から、障害者・障害児関連施設等の整備を進めるとともに、PTSD(心的外傷後ストレス障害)等のこころのケアに関する研究施設を整備する。
また、小児救急受入体制の整備を始め、少子高齢化に対応した医療施設等の整備を図る。
- 歩道・駅などの公共空間のバリアフリー化等の推進
道路に関して幅の広い歩道の設置、段差・傾斜・勾配の改善、鉄道駅におけるエレベーター・エスカレーターの整備など、公共空間のバリアフリー化等を推進する。
3 緊急対応プログラムの規模と効果
本プログラムに伴う第二次補正予算においては、「国債発行額30兆円以下」の方針の下、安易な国債増発によることなく、政府の保有資金を最大限活用した「改革推進公共投資」特別措置の実施により、国費で公共事業1.5兆円、施設費1兆円の計2.5兆円の社会資本整備のための無利子貸付けを行い、事業規模で4.1兆円程度を確保することとしている(別紙)。
これにより、本プログラムの経済効果について、内閣府の経済モデルに基づいて試算を行ったところ、以下のとおりと見込まれる。
- 今後1年間のGDPへの効果については、
名目: 1.2%増程度 実質: 0.9%増程度
- 今後1年間の雇用への効果については、
雇用者数: 11万人程度の増 失業率: 0.1%ポイント程度の改善
(別 紙)
国 費 事業規模 「改革推進公共投資」特別措置 (1)都市機能の一層の高度化・国際化 0.6兆円程度 1.1兆円程度 (2)環境に配慮した活力ある地域社会
の実現0.7兆円程度 1.2兆円程度 (3)科学技術・教育・一丁の推進による
成長フロンティアの拡大0.9兆円程度 1.2兆円程度 (4)少子・高齢化への対応 0.3兆円程度 0.7兆円程度 計 2.5兆円 4.1兆円程度