閣議決定・施策の解説等
公務員制度改革大綱平成13年12月25日
閣 議 決 定 |
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現在の我が国は、右肩上がりの経済成長が終えんし、限られた資源の中で国家として多様な価値を追求せざるを得ないなど、極めて厳しい状況に置かれている。眼下には、膨大な財政赤字の累積や社会保障の問題を始めとして困難な課題が山積しており、我が国の将来展望を切り開くためにはもはや一刻の猶予も残されていない。このような状況の下で、政府の政策立案・実施のトータルの質が従来とは比較にならないほど厳しく問われている。 近年、政府は、行政改革を最重要課題の一つとして位置付け、中央省庁改革により新たな府省体制を確立するとともに内閣機能の強化を図るなど、積極的に改革を推進してきたところである。 しかしながら、行政の組織・運営を支える公務員をめぐっては、政策立案能力に対する信頼の低下、前例踏襲主義、コスト意識・サービス意識の欠如など、様々な厳しい指摘がなされている。 真に国民本位の行政を実現するためには、公務員自身の意識・行動自体を大きく改革することが不可欠であり、公務員の意識・行動原理に大きな影響を及ぼす公務員制度を見直すことが重要である。 公務員制度の見直しに当たっては、公務に求められる専門性、中立性、能率性、継続・安定性の確保に留意しつつ、政府のパフォーマンスを飛躍的に高めることを目指し、行政ニーズに即応した人材を確保し、公務員が互いに競い合う中で持てる力を国民のために最大限に発揮し得る環境を整備するとともに、その時々で最適な組織編成を機動的・弾力的に行うことができるようにすることが必要である。また、行政を支える公務員が、国民の信頼を確保しつつ、主体的に能力向上に取り組み、多様なキャリアパスを自ら選択することなどにより、高い使命感と働きがいを持って職務を遂行できるようにすることが重要である。 このように、正に国民が望む行政、国民にとって真に必要な行政は何かという観点からの制度設計が求められている。 今回の公務員制度改革は、以上のような視点に立って、真に国民本位の行政の実現を図ることを基本理念として掲げ、国民の立場から公務員制度を抜本的に改革することにより、行政の在り方自体を改革することを目指すものである。 また、公務の安定的・継続的な運営の確保の観点、国民生活へ与える影響の観点などを総合的に勘案し、公務員の労働基本権の制約については、今後もこれに代わる相応の措置を確保しつつ、現行の制約を維持することとする。 |
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T 政府全体としての適切な人事・組織マネジメントの実現 1 基本的考え方 時代の要請に応じ、国家的見地からの総合的・戦略的な政策の企画立案や機動的・効率的な行政サービスの提供を実現するためには、行政運営について責任を持つ内閣及び各府省が適切に人事・組織マネジメントを行うことが不可欠である。 複雑高度化した行政課題に対応できない硬直的な企画立案、非効率な業務執行を生み出す制度疲労を来した行政システムなど、行政が直面している問題は、人事管理に対する意識の不足等により、各府省において主体的かつ責任ある人事・組織マネジメントが十分に行われてこなかったことにも起因していると考えられる。 また、行政課題が複雑高度化するとともに機動的な行政運営が求められる中、行政システムの在り方も、情報公開、政策評価等の制度を導入するなど、問題を先送りすることなく公正な政策判断を保つために国民に対して透明かつ明確な責任の所在の下で行政運営を行う方向へと転換してきている。 しかし、現在の人事・組織マネジメントの枠組みにおける事前かつ個別詳細なチェックは、各主任大臣等が人的資源等を活用して機動的な行政運営を行う上での制約となっている面がある。また、各主任大臣等が実際の行政課題に応じた人事管理を行うためには、内閣による適切な企画立案が求められるが、現状は第三者機関に大きく依存しており、内閣が十分に責任を果たしてきたとは評価し難いところである。 したがって、政府全体の人事・組織マネジメントについて、これまでの枠組みを改め、人事行政の中立性・公正性を確保しつつ、国民に対して開かれたシステムの下で、国民を代表する国会に対して責任を持つ内閣及びその構成員たる各府省の主任大臣等が、行政を支える公務員の人事行政について主体的に責任を持って取り組んでいく枠組みとすることが必要である。さらに、中央人事行政機関等による人事・組織管理面での事前かつ詳細な制度的規制を見直すとともに、内閣及び各主任大臣等が機動的・弾力的に人事・組織マネジメントを行っていくことが必要である。 一方、公務員の労働基本権が制約されている下では、公務員の処遇を適切に確保するための枠組みが必要である。 以上のような認識の下、公務員制度を抜本的に改革する観点から、政府全体としての適切な人事・組織マネジメントを実現するための新たな枠組みを構築する。 2 政府全体の新たな人事・組織マネジメントの方向 (1)法律による人事・組織マネジメントに係るルールの明確化 公務員が民主的コントロールの下に置かれるという大原則の下、公務員制度の骨格は法律で明らかにされるべきものである。公務員の在り方を始め、人事制度の趣旨、枠組み、重要な基準等は、法律で明確に規定する。 (2)内閣と第三者機関の機能の整理
上記2に従い、具体的な制度における内閣と第三者機関の機能について整理を行う。 (1)職員の採用について 行政の実際の需要に即した人材を確保するため、人事管理権者が主体となって採用を行う。内閣は、採用に係る制度の企画立案を行い、各府省の必要とする人材の円滑な確保を図る。 人事院は、情実採用などを防止するため、あらかじめ定められた明確な基準の下で実効性のあるチェックを行う。 (2)職員の配置、人材育成、服務管理等について 人事管理権者が所掌する行政分野における機動的・効率的な行政運営を行うため、職員の適切な配置のための任用、職員の研修等による育成や退職時を含む適切な服務管理等を人事管理権者が主体的な責任を持って行う。内閣は、人事管理権者の行う職員の配置、人材育成、服務管理等に必要な人事管理の制度の企画立案及び内閣としての人事管理の統一保持上必要な総合調整を行う。 人事院は、職員の利益の保護、人事行政の中立性・公正性の確保の観点から、あらかじめ定められた明確な基準の下で、人事管理権者に対し、人事行政の改善に関する勧告などの事後チェックを行う。 (3)勤務条件に関連する事項について 財政民主主義及び勤務条件法定主義の下で、勤務条件に関連する事項については人事院が関与する。人事院は、給与水準等の設計と国会及び内閣に対する勧告や人員枠となる能力等級ごとの人員数についての国会及び内閣に対する意見の申出などを行う。あわせて、勤務条件の基準化と事後チェック化を通じて各府省の弾力的な対応を可能とする。 |
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U 新たな公務員制度の概要 1 新人事制度の構築
公務員が真に国民本位の良質で効率的な行政サービスを提供するためには、公務部門が時々刻々変化する行政課題に迅速・的確に対応し得る能力を常に確保していくことが重要であり、そのためには、能力本位の人事制度を新たに導入するとともに、職員の意欲と能力に応じた適材適所の人事配置を行うための方策を講ずることにより、公務部内の人的資源を最大限に活用することに加え、外部から多様で質の高い人材を公務に誘致し確保していくことが求められている。 このような観点から、新規学卒者等の採用段階において、各府省が、多数の候補者の中から、それぞれの行政ニーズに即した人材を適切に選抜できるように採用試験制度の見直しを行うとともに、政策立案能力の向上や行政の閉鎖性・硬直性の改善を図るため、民間の有為な人材を弾力的に確保し得るシステムを構築することにより、人事管理権者が、広く多様な人材ソースの中から可能な限りその主体的な判断に基づいて、行政に真に必要で有為な人材を採用できるようにする。 また、職員の意欲と能力に応じた適材適所の人事配置を図り、組織活力を高めるため、公募制の積極的な活用を図るとともに、女性の採用・登用を拡大する。 (1)採用試験制度の見直し
今般の改革は、能力・実績主義の徹底による年功によらない実力本位の処遇の下で、キャリアパスの多様化を図り、個々の職員の持てる能力を最大限に発揮させる人材活用を行うことを基本としている。 我が国が高齢社会を迎えている中、政府においても、専門的ノウハウの蓄積を必要とする分野などにおいて中高齢者の人材活用を図っていくことが重要であるが、政策企画部門などにおいて人材の流動性を高め、機動的・弾力的な人材戦略を実現する等の観点からは、行政内部で適切な人事配置を図るほか、公務員を退職した者が適切なルールの下、自らの能力を社会で活かしていく道が開かれていることが必要となる。 公務員の再就職については、いわゆる「天下り」問題として国民の強い批判があることを真摯に受け止め、再就職が、権限・予算等を背景とした押し付け的なものであったり、特殊法人等の公的部門を再就職の安易な受け皿とすることがないよう、国民の信頼を確保し得るルールを確立することとする。また、そのルールについては、実施状況を踏まえつつ適時適切に見直しを行うものとする。 再就職ルールは、従来の事前の規制に重点を置いた仕組みから、事前・事後のチェックを通じ、総合的に適正化を図る仕組みに転換することとし、
また、退職手当制度についても任用・給与制度の見直しや退職管理の在り方を踏まえ必要な見直しを行う。 (1)営利企業への再就職に係る承認制度及び行為規制
現在の特殊法人等(認可法人を含む。)への公務員の再就職に関しては、例えば、退職金が高すぎるのではないか、各府省OB人事の一環として取り扱われているのではないか、処遇に業績が反映されていないのではないか等の国民の厳しい批判があるところである。これら国民の厳しい批判を真摯に受け止め、次の対応を行うこととする。
公益法人の民間法人としての性格を踏まえつつ、以下の方針に従い見直しを行う。
公務員の再就職の状況についての透明性を確保するため、再就職状況全般に関する公表制度を整備する。 各府省は、内閣の定めるところにより、毎年1回、本府省の課長・企画官相当職以上(地方支分部局における本府省の課長・企画官相当職以上を含む。)の離職者の離職後2年以内の再就職先について、営利企業・特殊法人等・公益法人などすべての再就職先を対象に、再就職者氏名、離職時官職、再就職先の名称及び業務内容、再就職先での役職、承認の有無等について公表することとする。 内閣は、各府省の公表事項をとりまとめ、毎年1回公表することとする。 (5)退職手当制度の見直し 退職手当に職員の在職中の貢献度をより的確に反映するとともに、人材の流動化を阻害することのないよう、退職手当制度について、長期勤続者に過度に有利となっている現状を是正することとし、新たな任用・給与制度の具体的内容を踏まえ、支給率カーブ、算定方式の在り方等の見直しを行う。また、民間企業の退職金の支給実態を踏まえ、全体的な支給水準の見直しを行う。 4 組織のパフォーマンスの向上 政府全体としての組織のパフォーマンスの最大化を図り、時代の要請に応じた総合的・戦略的な政策立案、国民のニーズにこたえた効率的な業務執行を実現するためには、企画立案と執行それぞれの特性を十分踏まえつつ、その時々の行政課題に応じた最適な組織を編成することができるようにする一方で、国政全体を見渡した総合的な政策判断と機動的な意思決定を行い得る行政システムを構築することが必要である。 このため、行政運営の責任を有する各府省がその判断と責任において機動的・弾力的に組織・定員管理を行い得るようにするとともに、内閣なかんずく内閣総理大臣の政策立案を補佐する機能の充実を図る。 また、組織のパフォーマンスを向上させるためには各組織内における勤務環境を良好なものとすることが不可欠であるため、超過勤務の縮減等勤務環境の改善に向けた取組を積極的に推進する。 なお、各府省は、主体的な組織・定員管理を行うことなどにより企画立案と執行それぞれの機能強化を図ることを通じて、引き続き自主的に企画立案と執行の分離を進める。 (1)機動的・弾力的な組織・定員管理
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V 改革に向けた今後の取組 1 国家公務員制度改革の今後の検討方針等 (1)法制化スケジュール等 国家公務員制度の改革に係る法制化に当たっては、制度全体の基礎となる国家公務員法の改正案について、内閣官房行政改革推進事務局が中心となって検討を進め、平成15年中を目標に国会に提出することとし、関係法律案の立案及び政令、各府省令等の下位法令の整備を平成17年度末までに計画的に行う。その際、各制度を所管する府省等との更なる連携の下、人事院のより一層の協力を求めつつ、制度の詳細設計に向けて職員団体を始めとする関係者とも十分意見交換を行っていくこととする。 新たな公務員制度については、円滑な移行のための必要な準備期間を確保の上、全体として平成18年度を目途に新たな制度に移行することを目指し、所要の準備を計画的に進めることとする。 また、早期に具体化できるものについては、逐次その実現を図ることとする。 (2)一般の行政職員以外の職員に関する検討 今回の大綱においては、一般の行政職員を中心とした制度改革の方向を示したが、国家公務員の職種は極めて多種多様であり、今後、政府において、特例法により制度が規定されている職種を含めこれまで検討を行っていない一般の行政職員以外の職種に係る制度の検討を急ぐとともに、特別職に関する制度についても、それぞれの職務の特殊性等を十分勘案しつつ、一般の行政職員に係る制度の改革案に準じて必要な検討を進めることとする。 2 地方公務員制度の改革及びそのスケジュール 地方分権の進展等に対応し、地方公共団体が住民に対し質の高い行政サービスを効率的・安定的に提供していくためには、地方公務員が、身分保障に安住せず、その持てる能力を最大限発揮し、地域の諸課題に取り組んでいくことができるようにすることが必要である。このため、地方公務員制度においても、能力本位で適材適所の任用や能力・職責・業績が適切に反映される給与処遇を実現するとともに、地方分権に対応して政策形成能力の充実等を図るための計画的な人材育成、民間からの人材を始め多様な人材の確保等に取り組むなど、地方自治の本旨に基づき、地方公共団体の実情を十分勘案しながら、国家公務員制度の改革に準じ、所要の改革を行う。 今後の地方公務員制度の改革スケジュールについては、国家公務員法改正と同時期に地方公務員法の所要の改正を行うこととするなど、関係法令の整備を進め、国家公務員制度の改革スケジュールに準じて速やかに改革の取組を進めることとする。 |