早急に取り組むべきデフレ対応策


平成14年2月27日


 先般(2月13日)、総理より「デフレには様々な背景があるが、その克服には当面金融的な問題を解決していくことが不可欠である」との認識の下、早急に取り組むべきデフレ対応策についての指示があった。この指示に基づく政府のこれまでの取組状況は下記のとおりである。
 政府は、今後とも経済金融情勢の変化に即応し、引き続き、具体的で実効性のある施策を、大胆かつ柔軟に展開していく。特に、現下の最重要課題である不良債権の処理については、特別検査を踏まえた具体的進捗を図るとともに、金融危機を起こさないためにあらゆる手段を講じることにより、「いわゆる不良債権問題」の早期終結に目途をつける。

 デフレ克服のためには、政府・日本銀行が一体となった対応が求められている。日本銀行においても、思い切った金融政策を行うよう要請する。



1.不良債権処理の促進

(1)特別検査の厳正な実施等

特別検査では、金融機関の経営に大きな影響を持つ貸出先について、厳正に検査して処理する。

特別検査を3月まで実施し、特別検査終了後、早急にその結果を取りまとめ、公表する。

主要行に対し、特別検査等やそれを受けた不良債権処理の状況を適切に反映した財務内容について、年度終了後速やかに公表するよう要請する。

(2)不良債権処理の一層の促進

主要行に対し、以下を要請した。

特別検査の状況を踏まえ、問題企業について、市場に評価される再建計画の策定、法的手続きによる会社再建等による速やかな処理を実施する。

RCC(整理回収機構)などへの債権売却、企業再建ファンドの積極的な活用等により不良債権処理を加速する。

(3)RCCによる積極的な不良債権買取り

預金保険機構・RCCは、信託方式や企業再建ファンドの活用等を含め不良債権の買取り等を積極的に行う。また、53条買取りを積極的に行うため、RCCに「債権買取推進本部(仮称)」を設置する。

預金保険機構・RCCは、不良債権買取りについて、先般の金融再生法の改正により買取価格について時価とされたことを踏まえて、適切な価格設定を行う。万一の二次ロスのリスクに備え、53条買取りに係るこれまでの回収益を財源(時価買取対応資金)として活用することとし、時価買取りの実効ある運用を行う。

預金保険機構・RCCは、一層きめ細かい53条買取制度等の運用により買取り等の円滑な実施を図ることとし、このため金融界との意見交換会を設置する。

RCCは、債権買取や企業再生を含む業務を積極的に行うため、組織・人材面での体制の抜本的な強化を図る。このため、金融機関に対し業務に精通した人材の派遣を要請する。

(4)企業再建ファンドの設立の推進

13年度中に、主要行や日本政策投資銀行、民間投資家等により、複数の企業再建ファンドが設立される予定。これにより、企業再建と不良債権処理を一層加速する。


2.金融システムの安定

(1)ペイオフ実施に向けた金融システムの安定確保

ペイオフ実施後、金融機関の破綻により金融システムの安定性が損われることがないよう、それまでに、的確な検査・監督を通じ、金融機関の健全性を確保する。

(注)事業継続困難な金融機関(13年度52件)について管財人を派遣し、受皿への事業譲渡等に取組み中。経営健全化が必要な金融機関については、早期是正措置を発動し、ペイオフ実施前の増資等を求めている。

ペイオフ実施前後における預金シフト等の動向を的確に把握するため、流動性リスクに関するモニタリング体制を強化する。必要に応じ日本銀行と緊密に連携する。

(2)金融危機の回避

日本銀行に対し、風評等により金融機関が資金繰り困難に陥った場合には流動性供給に万全を期する等信用秩序の維持のために必要な措置を講ずるよう要請する。

今後、金融危機のおそれがあり、法令に照らして必要があると判断される場合には、資本増強を含むあらゆる措置を講じ、金融システムの安定を確保する。


3.市場対策

(1)空売り規制等の強化

投資家の証券市場への信頼向上を図るため、最近の累次にわたる取組みに引き続き、空売り等への規制・監督・監視上の対応を徹底・強化する。

(i)空売りへの総合的な取組み(13年12月21日以降)

規制上の対応

信用取引に対する空売り規制(空売りの明示・確認義務)の適用(2月20日施行)。

監視上の対応

証券取引等監視委員会において13年12月以降2件の処分勧告を実施済み。引き続き厳正に対応する。

監督上の対応

空売り規制違反を行った証券会社に対して、13年12月以降7件の行政処分を実施済み。引き続き厳正な処分を実施する。

(ii)信用・貸借取引制度の見直し(14年2月1日以降)

過度な信用取引に対し、取引所や証券金融会社による「市場への注意喚起」や「貸株の品貸料の引上げ」を機動的に実施した。

 証券金融会社による注意喚起通知に係る基準の見直し(2/7施行)(17銘柄(2/6)→31銘柄(2/21))。

 取引所による日々公表銘柄指定に係る基準の見直し(2/20施行、7銘柄(2/19)→18銘柄(2/20))。

 証券金融会社を通じた制度貸借取引における品貸料の引上げ (2/18以降実施)。

 注意喚起銘柄等の最低品貸料の引上げ(1株5銭の最低入札料)の導入。

 異常時の品貸料の最大引上げ幅の拡大(4倍→10倍)。

(iii)空売り規制の見直し(14年2月8日公表)

空売り規制を潜脱する事例等を踏まえ、空売りの価格規制を強化する(「直近公表価格未満の空売り禁止」を原則「直近公表価格以下の空売り禁止」に変更)(3月6日施行予定)。

(iv)今後の更なる取組み

 証券取引等監視委員会による空売り規制違反に対する監視の一層の強化

 空売り等の取引のきめ細かな審査及び証券会社の検査を徹底することにより、空売り規制違反に対し厳格な監視を行う。

 民間専門家の登用を中心に、質・量ともに、監視体制の抜本的な強化を図ることとし、当面、14年度において、5割増(61人増)となる人員増強等を行う。

 東京証券取引所による空売り等への対応の強化

 2月19日に発表した「空売り等への対応について」に基づき、空売りに関する社内管理体制についての報告徴求の開始(2月25日)、売買審査における株価監視の強化、非居住者による取引についての海外自主規制機関との連携強化、信用取引についての日本証券金融株式会社との連携強化(2月27日協議開始)等を図る。

 信用売り等に対する取引所の増担保措置の基準見直し

 増担保措置の基準見直しにより、個別銘柄に対する委託保証金率(現行30%)の引上げをより容易にする(3月4日実施予定)。

 制度信用取引における株券調達コストの更なる見直し

 信用の買方と売方との間のコスト負担の適正化を図るため、取引所及び証券金融会社等に対し、証券金融会社等の貸出条件の見直しを行うよう、2月26日に要請・公表する。

(2)銀行等保有株式取得機構の積極的活用

銀行等保有株式取得機構を1月30日に設立し、2月15日に特別勘定による株式買取り業務を開始した(13年度2兆円、14年度2兆円の政府保証枠を用意)。2月19日に銀行界に対して機構を積極的に活用するよう働きかけた。

(3)ETF商品の拡大

3月までに、業種別株価指数等に連動するETF(上場投資信託)が発行できるよう、ETFの対象指数を拡大する。


4.貸し渋り対策等

(1)中小企業に対する資金供給の円滑化

(i)売掛債権担保融資保証制度の積極的活用

 物的担保に依存した間接金融の枠組みを改革するとともに、中小企業の資金繰りの円滑化に資する目的で、13年12月に創設した売掛金債権担保融資保証制度について、その利用の促進を強力に推進するため、以下の措置を実施する。

 国、地方公共団体や大企業向けの売掛債権の譲渡禁止特約の解除を各省庁が協力して早急に進める。

 金融庁より民間金融機関に対し本制度の一層の積極的活用を要請する。

 経済産業省より信用保証協会に対し本制度の積極的活用の徹底を要請する。

 一層徹底した普及広報活動を推進する。

(ii)民間金融機関からの資金供給の円滑化

 不動産担保貸出を中心とする従来の融資に加え、無担保・無保証、迅速審査による事業者向け融資の創設等、これまでの金融機関にはない融資ノウハウを活用した新たな取組みを促進し、健全な中小企業に対する資金供給の一層の円滑化を図る。

 信用保証協会によるセーフティネット保証制度の拡充等を受け、これを活用した中小企業に対する資金供給の一層の円滑化に努めるよう民間金融機関に要請する。

(iii)セーフティネット保証・貸付の着実な実施とその拡充

 13年度第1次補正予算によるセーフティネット保証・貸付制度の資金基盤の充実(約1400億円を計上)等を踏まえ、その一層の活用を図るため、信用保証協会及び政府系金融機関に対して、更に積極的な実施を徹底するとともに、以下のような制度の拡充を行う。

(イ)セーフティネット保証の拡充

 本保証制度の対象となる、取引先企業の事業活動の制限(取引先企業の工場・店舗の閉鎖等)により影響を受ける中小企業及び業況悪化業種に属する中小企業に係る認定基準を緩和して、本制度により保証を受けられる中小企業の範囲を大幅に拡大する。

(ロ)セーフティネット貸付の拡充

 売上減少等に係る要件の緩和や、手形の割引が困難となった中小企業を対象に追加する等により、本制度の貸付対象を拡大するとともに、金融環境変化によって資金繰り難を来した中小企業に対する商工中金の貸付制度につき、3000万円までの無担保貸付を創設する等、制度拡充を行う。

(iv)特別保証の返済条件変更の一層の弾力化

 特別保証制度に係る債務の返済条件の変更については、従来から弾力的に取り組んでいるところであるが、現下の厳しい状況に鑑み、一層弾力的に対応する。
 このため、大型倒産、金融機関の破綻、取引先企業のリストラなどにより影響を受けている中小企業者(セーフティネット保証の対象となるような者)に係る特別保証の債務については、原則、申し出があれば、それぞれの中小企業者の実状に応じた返済条件の変更が行われるよう、措置を講ずる。

(2)経営実態に応じた検査の運用確保

 金融検査マニュアルの機械的・画一的な運用の防止を図るため、検査官に対する指導・訓練、検査の適正性をチェックする立入中の「検査モニター」、金融機関との見解相違案件を処理する立入後の「意見申出制度」等、検査立入前、立入中、立入後を通じた諸施策を今後更に充実・強化する。
 併せて、債務者の経営実態の把握の向上に資するため、中小・零細企業等の債務者区分の判断について、金融検査マニュアルの具体的な運用例を作成し、公表する。


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 デフレ克服のためには、持続的な民間需要を早期に創出していくことが基本である。このため、「構造改革なくして成長なし」の考え方の下、構造改革を通じた成長の実現に向け全力を挙げて取り組んでいく。
 この観点から、規制改革について、総合規制改革会議の答申を踏まえ、可能なものは所要の法案を提出するなど速やかに実行に移すとともに、3月末を目途に規制改革推進3か年計画を改定する。税制の抜本的見直しのため、経済財政諮問会議や政府税制調査会などにおいて、経済活性化の観点も含めた総合的な検討を年初から進めており、6月頃を目途に基本的な方針を示す。また、より幅広い経済の活性化方策について、同じく6月頃を目途に基本的な方針をとりまとめる。
 なお、物価動向を適切に把握する等の観点から、将来の物価動向を市場がどう織り込んでいるかを把握することに寄与するとされ、米英等で導入されている物価連動債等を含む新たな方法や現行の物価統計の在り方、分析手法などについて幅広く検討を行うこととする。