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経済活性化のための産業金融機能強化策

平成15年12月
産業金融機能強化
関係閣僚等による会合


I.総 論
1.趣 旨
(1) 我が国産業の成長・発展と産業金融の改革・強化は、表裏一体の関係にある。経済全体の大きな飛躍のために、産業の活性化と産業金融の機能強化、両面での対応が必要である。
(2) 我が国の産業金融は、産業資金の取り手の企業、出し手の金融機関とも融資に大きく依存し、特に担保は、不動産に拠っている。また、債権の証券化等の新しい手法や担い手が十分には普及していない。こうした構造は、中小企業金融や地域金融において顕著である。
(3) 折しも設備投資に動意が見られるなど、産業の資金需要に高まりの兆しがある。
(4) この機を捉え、中小企業や地域産業をはじめ経済の隅々にまで、幅広く、効果的に産業資金が供給されるよう、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」で掲げられた項目を一層深化させ、政府の各施策を有機的に連携させつつ、日本銀行等関係機関と一体となって経済の活性化に資するものとする。
2.基本的方向
(1) 産業金融の機能強化の前提として、資金の取り手である産業サイドにおいて、資金需要の源泉である産業活動の進展とともに、収益力・財務基盤の強化に取り組み、産業活性化に向けた施策を実施することが必要である。
 このため、創業・開業の促進、事業再生・産業再編の加速、技術や人材等の産業基盤の整備など、中小企業や地域産業の活力を増進する施策に万全を尽くす。
(2) 産業金融の機能強化に向けて、上記と併せて、以下の4点を基本的な方向とする。
1) 事業会社による資金供給を活性化することで、産業金融の担い手を多様化する。
2) 債権の証券化、出資等の導入を加速することで、産業金融の手法を多様化する。
3) 中小企業金融を中心とした過度の不動産担保や人的保証 への依存から脱却するため、資金の出し手、取り手双方 において、リスクへの対応を多様化する。
4) 政策支援については、中小企業の金融セーフティネット の充実など中小企業対策の拡充と併せ、中堅企業や、事業再生・産業再編、創業・開業、新たな資金調達手法など、 幅広い産業活動に対応し、政策支援対象を多様化する。
(3) 産業金融が円滑に機能するためには、上記の多様な資金の流れの整備やリスク管理に向けた取組はもとより、市場の公正性、透明性を確保し、資金の出し手である投資家に対し、適切に保護を行うことにより投資家の信認を得ることが重要である。


II.各 論
1.多様な資金の流れの整備
−産業金融の担い手・手法の多様化−
(1) 信託制度の整備を通じた金融の活性化
 信託業法を改正し、信託業の担い手や受託可能財産の範囲の拡大など信託制度の整備を図る。これにより、市場型間接金融という新たな金融の流れを促す。
1) 金融機関以外の多様な者が資金仲介の新たな担い手となることにより、企業の資金調達経路が拡大される。
2) 知的財産権をはじめ幅広い財産の信託を可能とすることにより、企業の資産流動化による資金調達が多様化する。
 信託会社の中小企業向け融資について公的信用補完制度の対象とするなど、企業が信託会社を活用して資金調達する枠組みを支援する。
(2) ファンドによる資金仲介機能の拡充
 中小企業等投資事業有限責任組合法を改正し、ファンド(投資事業組合)の投資対象の拡大や機能の追加を行うとともに、所要の投資家保護ルールを整備し、資金仲介の枠組みを拡充する。これにより、我が国の資金やノウハウを広く産業金融に有効活用する。
1) 投資事業組合が、中堅企業の成長資金や事業再生・産業再編など様々な事業活動に対して投融資を行えるようにする。
2) 投資事業組合に融資機能を追加し、出資先企業に対する資金状況に応じたきめ細かい対応(「ミドルリスク・ミドルリターン」の融資)、事業再生を実現するためのつなぎ融資(DIPファイナンス)を可能とする。
3) リスクマネー供給を促進しつつ一般投資家が安心して投資できる環境が整備されるよう、投資事業組合をはじめとする組合型投資スキームに関する投資家保護の枠組みを整備する。
 中小企業の再生を支援する「地域中小企業再生ファンド」や中小企業の新事業展開を支援する「「がんばれ!中小企業」ファンド」に対する中小企業総合事業団の出資をはじめ、事業再生・産業再編、ベンチャー企業等の創業・開業、更には第二の成長を支援するためのファンドの組成を促進する。
(3) 中小企業金融の手法の多様化の促進
 中小企業金融公庫法を改正し、証券化支援業務を加え、中小企業の資金調達における新しい金融手法を支援する。これにより、民間金融主体で広がりつつある金融手法の多様化に向けた取組を加速する。
1) 中小企業向けの貸付債権の証券化・流動化を支援する(証券の買取り、保証等)。
2) その際、金融機関だけではなく、信託会社も支援対象とする。また、一定の事業会社もその対象とすることを前提に具体的な基準を検討していく。
(4) 中小企業金融のセーフティネットの拡充
 中小企業金融のセーフティネット制度について積極的な活用・充実を図る。
(5) 中堅企業への支援の拡充
 中堅企業において、その発展・再生に必要な資金調達を円滑化するため、新たな担い手や金融手法の活用を促進する。
1) 信託会社、投資事業組合を活用した新たな資金の導入や、中堅企業向け金融における証券化等の新たな手法の導入を推進する。
2) 中堅企業に対する信用保証制度の拡充について、与党の検討に協力する。
(6) 日本銀行による中小・中堅企業金融の円滑化支援
 日本銀行においては、中小企業・中堅企業金融等を一層円滑化するため、資産担保証券の買入れについて必要な見直しを行いつつ、これらを通じて証券化市場を活用しやすい環境を整える等、適切な対応を行うことを期待する。
2.リスクへの対応の多様化
−担保・保証に過度に依存しない資金調達−
(1) 信用リスクデータベースの充実と活用
 企業を財務状況で評価する「信用リスクデータベース」について、金融機関のニーズ等を踏まえ、信用リスクの評価や管理のための基盤インフラとして機能強化し、一層の活用を促進する。これにより、リスクカバーの仕組みを多様化する。
1) 信用リスクデータベースを活用して企業の信用リスクを定量的に把握することにより、企業の状況に応じた金利設定等による融資が可能となるよう、中小企業金融の与信管理向上に資するデータの充実など提供サービスの拡充に努める。
2) 企業の有する債権の管理・譲渡等を電子的に行える体制を整備し(標準化モデル事業を実施。)、債権を活用した融資の促進等を図る。また、標準化・電子化された取引情報・財務情報を蓄積し、信用リスクデータベースの機能を拡充する。
(2) 中小企業の会計の質の向上による資金調達の円滑化
 中小企業の決算書類の信用力強化と財務情報の開示を促進することにより、金融機関の信用リスク管理の向上を促し、リスクに見合った融資条件の下での、中小企業の資金調達の円滑化に資するようにする。
1) 中小企業関係団体等においてセミナー、経営指導等を行い、中小企業自らが決算書類の精度向上に努めるとともに、財務情報を民間金融機関や信用リスクデータベースに積極的に開示することを促進する。
2) 中小企業の会計のチェック等を行うサービスを、利用しやすい対価で、債権者等に対して信用力のあるものとして発展させる。
3) 金融機関において、決算書類の精度が相対的に高い中小企業に対する融資プログラムの整備が図られるように促し、担保や保証に過度に依存しない融資の拡大に努める。
(3) 不動産担保によらない担保制度の整備と人的保証の適正化
 法務省において検討中の担保制度(動産譲渡の公示制度等)について、関係省庁も協力して、早期の実現と活用促進を図るとともに、人的保証の合理化・適正化についても検討を進める。
1) 換金性の高い在庫品を保有する事業者(小売業、卸売業、製造業等)や不動産を保有しない再生企業が、在庫等を担保として資金を調達することが円滑に行えるように、動産譲渡の公示制度の整備を図る。
2) 住宅会社、カード会社等が将来契約する顧客の売掛債権を担保として融資を受ける際、債権譲渡の公示を可能とする制度の整備を図る。
3) こうした担保の実効性を高めるための公示制度(動産譲渡の公示制度等)の整備により、事業を構成する財産全て(不動産、動産、売掛債権等)に確実かつ簡便に担保を設定することを可能とし、プロジェクトファイナンス(個別事業の収益性に着目した融資)の円滑化を図る。
4) 円滑な金融を阻害しないよう留意しつつ、個人保証(特に根保証)の在り方について、融資の際の実務運用の適正化のみならず、法的措置をも含め必要な見直しを行う。
5) 動産を担保として評価する仕組みや、融資先企業の経営財務状況を融資条件に継続的に反映する仕組みなどの導入を政策的に支援する。
6) 資金調達における売掛債権の活用を進めるため、譲渡禁止特約解除について経営者団体・産業界へ再度の協力要請を行うなどのキャンペーンを実施していく。
(4) リレーションシップバンキングにおける新しい中小企業金融への取組
 「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づき、平成16年度までの2年間を「集中改善期間」として、地域・中小企業金融の機能を強化し、中小企業の再生と地域経済の活性化を図る。
 このうち、中小企業金融に関しては、貸出後の業況把握の徹底、財務制限条項や信用格付モデルの活用等により、事業からのキャッシュフローを重視し、不動産担保・保証に過度に依存しない融資の促進を図る。
(5) 中小企業向け政策金融における適切な対応
 中小企業向けの融資については、民間金融機関の機能回復・強化の状況を見つつ政策金融の活用を図りながら、リスクに見合った金利設定の導入など、融資条件を適切に見直す。
(6) 知的財産権の活用の促進
 知的財産権を活用した資金調達の定着を図るため、知的財産の評価手法の確立を図るほか、企業の知的財産に係る情報開示を促進するなど、知的財産権の流通・流動化に向けた基盤整備を行う。
(7) 企業経営者の再起の促進
 企業経営者の再起を促進するための制度整備を進める。
1) 破産法を改正し、自由財産(破産者の手元に残る財産)の範囲を拡張する。
2) 民事再生法を改正し、破産回避のための小規模個人再生手続を利用できる条件を緩和して、債務を負っている経営者の再起を促進する。(手続の利用条件のうち負債総額について3千万円から5千万円に引き上げる。)
3.産業の収益力・財務基盤強化
−産業の活性化と企業の活力増進−
(1) 事業再生・産業再編や企業の活性化の促進
 産業活力再生特別措置法に基づく事業再生・産業再編や中小企業経営革新支援法などに基づく企業の活性化の取組を促すとともに、適用企業における実施状況や産業活性化の状況について的確にフォローアップを行い、着実な実施を図る。
 また、企業に対して、キャッシュフローを重視する経営への転換や事業収益性の判断に基づく事業撤退などを促す。
(2) 企業による自らの経営・財務状況やリスクの的確な把握
 中小企業庁によりとりまとめられた「中小企業の会計」について、中小企業の実態や企業会計基準の動向等を踏まえ、適宜、見直し、改善を行い、中小企業が目指すべき会計のあり方を常に明らかにする。この「中小企業の会計」の普及・定着を図る。
 中小企業に対して、企業自らによる決算書類の精度の向上への取組や信用リスクデータベースの活用等を促進し、自らの経営・財務状況やリスクの把握を的確に行うよう促す。
(3) リレーションシップバンキングにおける中小企業に対する経営支援機能の強化
 「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づき、中小企業の再生と地域経済の活性化を図る一環として、以下の項目について、各金融機関の着実な実施を促す。
1) 経営情報等を提供する仕組みの整備、要注意先債権等の健全債権化に向けた取組の強化等により、中小企業に対する経営支援機能の強化を図る。
2) 中小企業が有する知的財産権・技術の評価や優良案件の発掘等に関し、産学官とのネットワークの構築・活用(「産業クラスター計画」への支援を含む。)等を図り、中小企業の技術開発や新事業の展開を支援する。
3) ベンチャー企業向け業務について、関係機関との情報共有など連携強化を図り、地域におけるベンチャー企業の育成を支援する。
4) 中小企業支援センターの活用を検討し、地域の中小企業の創業・経営革新を支援する。
5) 中小企業再生支援協議会における早期事業再生に向けた取組に協力し、同協議会の機能を積極的に活用する。
(4) 産業金融を担う人材の充実
 事業再生人材育成センター、地域のビジネススクール、中小企業大学校等を活用して、事業再生・産業再編、地域金融、財務管理サービス等の分野において、産業金融を担う専門人材の育成を加速する。