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構造改革と経済財政の中期展望−2004年度改定

平成17年1月



構造改革と経済財政の中期展望−2004年度改定


1.2004年度改定について

 2004年度(平成16年度)の我が国経済は、一部に弱い動きがみられるが、年度全体を通してみると、企業収益が大幅に改善するなど企業部門が引き続き堅調な中、雇用環境が持ち直す動きがみられ、民間需要中心の回復を続けると見込まれる。
 政府としては、日本銀行と一体となってデフレの克服を目指した政策努力をさらに強化する。また、構造改革を加速・拡大し、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を目指す。

 政府は、2005年度及び2006年度(平成17年度及び18年度)の2年間を「重点強化期間」と位置づけ、構造改革をより本格的に推進し、デフレからの脱却を確実なものとしつつ、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図ることとしている。
 「構造改革と経済財政の中期展望−2004年度改定」の役割は、こうした観点に立って、経済財政の中期ビジョンを示し、短期と中期の経済財政政策の整合性を確保すること、財政・社会保障の中長期的な持続可能性を提示すること、経済財政政策の合理性などについての説明責任を果たすことである。

 なお、今後とも取り組むべき中期的な政策方針等のうち、「今次改定」において言及していないものについては、「改革と展望」及びその改定が政策運営の基礎となる。また、「今次改定」は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(平成16年6月4日閣議決定。以下「基本方針2004」という。)等と密接に関連しており、これらを一体として構造改革を推進する。

 「今次改定」の最終年度は2009年度(平成21年度)までとする。また、基礎的財政収支の黒字化については、2010年代初頭までの期間を視野に入れる。
 なお、国民経済計算における実質化手法が変更され、実質経済成長率及びGDPデフレーター(物価変動指数)の推計の手法がより経済実態を反映する方式に改定されたが、名目成長率や基礎的財政収支等については、直接の影響を受けるものではない。


2.経済財政状況

     「集中調整期間」(2002年度〜2004年度(平成14年度〜16年度))は、巨額な不良債権と名目、実質ともにマイナス成長(2001年度(平成13年度))という厳しい経済環境から出発した。しかしながら、この3年間の政策努力を通じて、不良債権問題の終結に向け、着実な進展がみられるなど、我が国経済は長期停滞から民間需要中心の成長に移行した。

  • 「改革と展望」及び「構造改革と経済財政の中期展望−2002年度改定」(平成15年1月24日閣議決定)においては、「集中調整期間においては、少なくとも当面、実質成長率は1%以下程度、名目成長率はさらに低いものとならざるを得ない」と見込んでいたが、企業部門の改善等から、2004年度(平成16年度)の実質成長率は2.1%程度、名目成長率は0.8%程度の回復になると見込まれる。また、雇用面では、2003年(平成15年)1月に5.5%にまで悪化した失業率も現在は4%台で推移するなど、厳しいながらも改善している。
     その一方で、一人当たり賃金は伸び悩んでおり、若年層の失業率が高い状況が続いているほか、景気回復には、地域によってばらつきがみられる。また、為替レート、原油価格や世界経済の動向等には引き続き留意する必要がある。

  • 物価については、国内企業物価は、原油など素材価格の上昇を主要因として2004年(平成16年)に入り上昇が続いているものの、消費者物価は依然として前年比では小幅な下落基調が続いている。また、GDPデフレーター(物価変動指数)は緩やかな低下を続けている。こうした物価動向を総合的にみると、我が国経済は緩やかなデフレ状況にあり、デフレ克服への取組は依然重要な政策課題である。

  • 財政面では、歳出改革路線を一層推進する観点から、2002年度(平成14年度)予算以降、一般会計歳出及び一般歳出の水準について、実質的に前年度水準以下に抑制するなど安定した財政運営を行っているほか、地方歳出についても、国の方針と歩調をあわせつつ、徹底した見直しを行ってきている。また、企業収益の拡大を背景に税収も上向きつつある。こうしたことから、2002年度(平成14年度)GDP比5.5%、2003年度(平成15年度)同5.5%で推移してきた基礎的財政収支の赤字は、2004年度(平成16年度)には同4.4%程度になると見込まれる。

  • 構造改革の点では、主要行の不良債権比率は、「金融再生プログラム」に基づく半減目標の達成に向け、順調に低下してきているなど、不良債権問題の正常化に向けた着実な進展がみられる。また、企業・産業と金融の一体的再生、創業・起業の活性化、規制改革の進展等を通じて、停滞産業から新規産業へ資源が移動し、成長産業では力強く事業が拡大するなど、日本経済のダイナミズムは甦りつつある。

     上記のような経済財政状況の下、引き続き、中期的な基本方針と展望を持ちつつ、適切な経済財政運営を行うことが求められている。


3.中期的な経済財政運営の基本方針

 政府は、重点強化期間内において、民間需要主導の持続的な成長軌道を確立するため、「官から民へ」、「国から地方へ」といったこれまでの構造改革への取組を、より本格的に推進するとともに、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図る。また、歳出改革路線を堅持・強化する。
 同時に、重点強化期間後の中期的な経済財政運営の基本方針の明確化に向け、検討を開始する必要がある。

(1)デフレの克服に向けた取組

 デフレからの脱却を確実なものとするため、政府は日本銀行と一体となって、政策努力をさらに強化する。
 政府は、需給ギャップの更なる改善を進めるためにも、民間需要・雇用の拡大に力点を置きつつ、規制、金融、税制、歳出等の各分野を中心とした構造改革をより加速・拡大する。
 日本銀行には、デフレからの脱却を確実にすべく、効果的な資金供給につながるような措置を含め、思い切った金融緩和を続けることを期待する。また、金融・資本市場の期待の安定化に配慮しつつ、デフレ克服までの道筋を含め、金融政策運営に関する透明性の一段の向上に努めることを期待する。

(2)安定的な経済財政運営

 対象期間中(2009年度(平成21年度)まで)の経済財政政策は、「今次改定」を踏まえて安定的に運営する。その際、財政の自動安定化機能に配意する。
 なお、景気動向に十分配慮し、景気が極めて厳しい状況となる場合には、大胆かつ柔軟な政策対応を行う。

    (3)経済の展望

  • デフレについては、政府・日本銀行一体となった取組を通じ、デフレ圧力は徐々に低下してきている。国内企業物価が上昇を続ける中、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)は集中調整期間の後にはプラスになり、また、GDPデフレーター(物価変動指数)も徐々にプラスになると見込まれることから、デフレ克服に向けた着実な進展が見込まれる。

     なお、物価動向について判断を行うに当たっては、消費者物価等種々の物価関連統計を総合的に勘案する必要がある。その際、各種統計の対象範囲、算出方法の相違等の統計的特性などを十分踏まえて判断する。

  • 企業部門の生産性が回復する一方、労働力人口の減少が進む中で、今後、我が国経済の活力を維持・向上させるための構造改革にさらに取り組むことにより、中期的な成長力も高まっていくと見込まれる。また、このような取組とあいまって、新たな事業の創出、競争力の向上に向けた戦略的な投資が拡大し、家計部門でも、雇用の改善を通じて雇用不安が軽減し、消費も安定的に拡大すると見込まれる。こうした結果、2005年度(平成17年度)については、実質成長率1.6%程度、名目成長率は1.3%程度となる見込みである。2006年度(平成18年度)以降は、実質成長率1.5%程度あるいはそれ以上、名目成長率についても2.0%程度あるいはそれ以上の成長経路を辿ると見込まれる。

    (4)歳出抑制の目標と基礎的財政収支

     着実な経済成長と適切な財政構造改革なくして財政の健全化はありえない。
     2006年度(平成18年度)までの間、政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)は2002年度(平成14年度)の水準を上回らない程度とすることを目指し、国・地方が歩調を合わせて歳出改革路線を堅持・強化することとしている。
     また、2006年度(平成18年度)までに、国と地方双方が歳出削減努力を積み重ねつつ、必要な行政サービス、歳出水準を見極め、また経済活性化の進展状況及び財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する。
     2007年度(平成19年度)以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を行うと同時に民間需要主導の持続的成長を実現することにより、2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指す。
     上記の2007年度(平成19年度)以降の財政収支改善努力に係る歳入・歳出を一体とした改革の検討に着手し、重点強化期間内にその結論を得る。


4.構造改革への更なる取組

(構造改革への更なる取組)
 デフレの克服と民間需要主導の持続的な経済成長の実現、国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を実現するため、構造改革への更なる取組を推進する。
 具体的には、郵政民営化、規制改革、三位一体の改革等、「官から民へ」、「国から地方へ」との方針に基づく改革について、より本格的な取組を行う。
 予算制度の改革、行政改革等、政府部門の本格的改革を進め、効率的でスリムな政府をつくる。また、包括的かつ抜本的な税制改革について検討を進める。
 企業組織再編の促進、市場ルールの整備、活力ある金融システムの構築を進めるとともに、地域の基幹産業やそれを担う中小企業の再生・強化、農林水産業の競争力強化、都市再生などを推進し、民間部門や地域の活力を最大限に引き出す。新産業創造戦略の推進、知的財産戦略の推進等を通じて起業、新事業創出の促進、研究開発や人材育成の強化を図り、成長分野を拡大する。また、IT戦略を推進し、その成果を広く国民が実感できるようにするとともに、科学技術基本計画に基づき、科学技術創造立国を実現する。さらに、グローバル化の下で、経済連携を推進する。また、対日直接投資を促進するとともに、観光立国を推進する。
 あらゆる世代の人間力を抜本的に強化するため、雇用面、教育面からの構造改革を進めるとともに、我が国の文化力を高める。
 社会保障の一体的見直しを進めるほか、少子化対策の充実、健康・介護予防の推進、治安・安全の確保、京都議定書の目標達成に向けた取組等による循環型社会の構築・地球環境の保全、司法制度改革の推進等、安心して暮らせる社会の構築に向け、制度整備・基盤整備を進める。

 上記の構造改革に関し、以下の項目については、「基本方針2004」以降の経済財政諮問会議における議論を踏まえ、下記の観点からこれを推進する。

 なお、構造改革の先に実現される経済社会の姿については、経済財政諮問会議において、「日本21世紀ビジョン」をとりまとめることとしている。

(規制改革・構造改革特区)
 規制改革については、規制改革・民間開放推進会議が掲げる重点検討事項を中心に検討を進める。特に、国等自らがサービスを提供している分野の民間開放を横断的に推進する観点から、市場化テスト(官民競争入札制度)について、2005年度(平成17年度)にモデル事業を実施し、本格的導入に向けて「市場化テスト法」(仮称)も含めた制度の整備を検討する。
 構造改革特区制度については、新規提案の増加策を講じ、引き続き可能な限り多くの規制改革を実現するとともに、特区の評価を行い全国規模での規制改革を実現し、あわせて、実現できなかった案件についての構造的な要因等の問題点を明らかにした総点検結果を受けた取組等により、実効性を向上させる。

(金融システムの重点強化)
 重点強化期間を対象とした「金融改革プログラム」に基づく諸施策の実施を通じて、金融サービス利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られ、地域経済にも貢献できるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力によって実現することを目指す。

(包括的かつ抜本的な税制改革)
 「基本方針2004」に沿って、「平成16年度与党税制改正大綱」(平成15年12月17日)及び「平成17年度与党税制改正大綱」(平成16年12月15日)も踏まえ、相互に関連する税制改革案を包括的かつ抜本的に検討し、重点強化期間内を目途に結論を得る。

(予算制度改革の本格化)
 予算の質の向上を図るため、予算制度改革に取り組むこととし、成果目標の明示や事後評価の徹底をさらに進め、予算の効率的配分を目指す。このため、政策評価に関する見直しに着手するとともに、評価と予算の連携を強化する。
 また、特別会計については、関係府省の策定した改革案に基づき、その成果目標等に関する経済財政諮問会議の議論や、個別の特別会計についての財政制度等審議会の提言を踏まえて、改革をさらに進める。

(「国から地方へ」の改革推進)
 三位一体の改革の全体像に係る政府・与党協議会の合意(平成16年11月26日)を踏まえ、国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税改革に取り組むとともに、国による関与・規制の見直しを進める。また、その進捗状況について、経済財政諮問会議において、適切にフォローアップを行う。

(地域再生)
 地域の提案する権限移譲や補助金改革、民間資金誘導のための措置等、各種制度改革を一括して活用できるよう、早期に本格的な枠組みを構築するとともに、地域再生への様々な主体の参加を促進し、あわせて、成果主義に基づく評価の仕組みを導入するなどにより、知恵と工夫の競争による地域経済の活性化を促進する。

(社会保障の一体的見直し)
 少子高齢化が進展する中で、経済・財政と均衡がとれ、将来にわたり持続可能な制度を構築するため、年金、医療、介護、生活保護等社会保障制度全般の一体的見直しを進め、「基本方針2004」に掲げられた課題について重点強化期間内を目途に結論を得る。
 生活習慣病対策及び介護予防の推進や、各制度の分担・連携を進めること等により、給付を効率化・重点化し、国民の安心を確保しながら、社会保障給付費の伸びの抑制を図ることが必要である。
 こうした観点からも、中期的観点からの社会保障給付費の目標、税・保険料の負担や給付の在り方等、横断的な課題について、できる限り早期に検討を進める。


1「構造改革と経済財政の中期展望」(平成14年1月25日閣議決定。以下「改革と展望」という。)において、経済の変動等に適切に対応するため、毎年度改定する旨規定。2004年度改定(以下「今次改定」という。)は、3度目の改定。
2プライマリーバランス。「借入を除く税収等の歳入」から「過去の借入に対する元利払いを除いた歳出」を差し引いた財政収支。
3実質GDPの算出方式を従来の固定基準年方式(95年基準)から、基準年を毎年更新する連鎖方式に変更。
4名目成長率からGDPデフレーターの変化率を差し引くと実質成長率になる。
5ここで述べた経済や財政に関する将来展望には種々の不確実性が伴うため、相当の幅を持って理解されるべきである。
6「改革と展望」等においては、歳出面での改革として、『公共投資についても、「改革と展望」に基づき、2006年度までの間、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安に、更なる重点化・効率化を推進するとともに、コストの縮減等を図る』、『総人件費については、定員削減の実行等により極力抑制する。その他の一般歳出(物件費等)についても、聖域なく徹底した見直しを行うとともに配分の重点化を行うことにより、厳しく抑制する』等に取り組むこととされている。