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「家族・地域の絆再生」政務官会議PT中間とりまとめ

平成18年5月
「家族・地域の絆再生」政務官会議PT
−あったかハッピープロジェクト−


はじめに
「家族・地域の絆再生」政務官会議PT(プロジェクトチーム)は、少子化対策の一環としての家族の位置付け、役割の見直し、その方向を実現するための方策を提言することを目的に、平成18年2月から計12回開催された。
この「中間とりまとめ」においては、PTでの議論を踏まえた『家族と地域の絆再生プラン(仮称)』を提示するが、先ず、この提言に至った基本的な考え方を整理し、プランの視点を明らかにした上で、具体的な施策について提言する。
 
T.基本的な考え方
今日の深刻な少子化の原因の一つとして、過度に経済的な豊かさを求め、個人を優先する風潮があると考えられる。家庭生活よりも職業生活を優先させ、個人が自らの自由や気楽さを望むあまり、生命を継承していくことの大切さへの意識が希薄化し、「結婚しない」あるいは「結婚しても子どもを持たない」方が、経済的、時間的な制約に縛られることがより少ないという考え方を背景に、非婚化、晩婚化、少子化が進んでいるという側面は無視し得ないと考えられる。
このような状況に対応して、政府としても、経済的な支援、職業と生活との両立支援などを進めてきたが、これらの施策はいわば対処療法ではあっても、むしろ少子化が進んでいく上記のような背景を前提とするものであるため、長期的な観点から抜本的に少子化の流れを変えるものとしては不十分であると考えられる。
もとより、結婚や出産については国家や社会が強制できるものではなく、一人ひとりの人間が自ら判断するものであることは当然であるが、また一方で、尊厳に満ちた個人の生命を次代に継承していくことができるのも一人ひとりの人間だけである。それだからこそ、長期的な観点から少子化問題に対応するためには、強制ではなく、経済優先・個人優先の価値観とは異なる新しい価値観に基づき、「結婚して子どもを産み育てることが当たり前と皆が自然に考える社会」を実現することが必要であると考える。
その際、子育ては、「家族・家庭」が中心となって営まれるものであることから、先ず何よりも家族の愛情の絆を再生すること、さらに子育て家族が孤立することなく身近な地域における触れ合いとつながりの基盤である町内会等とのかかわりの中で、「楽ではない」けれど「楽しい」子育ての喜びを実感するため、地域の絆を再生することが求められる。さらに、家庭や地域を通じて生命や家族を大切にする意識が高まり、社会全体が妊娠・出産を喜ばしいことと受け止めて、出産や子育てを応援する雰囲気を醸成することが求められる。
このような考え方は、少子化に対応するための政府の施策の総合的な指針である『少子化社会対策大綱』(平成16年6月閣議決定)において、「少子化の流れを変えるための3つの視点」の中で「子育ての新たな支え合いと連帯−家族のきずなと地域のきずな−」として取り上げられ、さらに、「少子化の流れを変えるための4つの重点課題」では、この視点に対応した「生命の大切さ、家庭の役割等についての理解」や「子育ての新たな支え合いと連帯」として設定されている。
大綱に基づく具体的な実施計画である『子ども・子育て応援プラン』(平成16年12月少子化社会対策会議決定)においては、上記の視点、重点課題に対応する具体的施策が掲げられているが、本PTでは、その中で取り上げられていなかったもの、あるいは取り上げられていても、「家族・地域の絆再生」という観点からより効果的に進めるべきと考えられるものを中心に『家族と地域の絆再生プラン(仮称)』として提言する。
政府は、これまで、累次にわたる少子化対策を定めてきたが、出生率は依然として下がり続け、いよいよ人口減少社会が現実のものとなってきている。『少子化社会対策大綱』を定めた2年前と比しても、今やさらなる抜本的な取組が求められていることは言うまでもない。本PTの提言が、これから出される政府の「少子化社会対策推進会議」の提言とともに、「政府・与党少子化対策協議会」での議論を踏まえ、抜本的な少子化対策として、政府が6月にも取りまとめる骨太の方針に盛り込まれ、さらには、『少子化社会対策大綱』がより充実したものとなるよう見直しが図られることを期待する。
なお、積極的な少子化対策を進めるのみならず、政府の施策全般についても、結果として少子化を助長することにつながっているものはないか、現状を把握した上で必要に応じて見直しを図っていく必要があるものと考える。
 
II.視点
  家族(親と子、祖父母や兄弟、親類等)と家族が暮らす身近な地域(町内会等)の絆や生命を次代に継承していくことの重要性について、国民全体の理解を深め、家族と地域の絆を再生することにより、「結婚して子どもを産み育てることが当たり前と皆が自然に考える社会」の実現を目指す。
 
III.『家族と地域の絆再生プラン(仮称)』
1. 家族の絆を再生する国民運動の推進
 国や地方において、家族や地域の人々が触れあう機会を増やし、相互の絆をより深めるとともに、家族や地域の絆についての国民的議論を喚起する契機をつくり、家族や地域の絆を再生するための国民運動を推進する。その際、男女共同参画の観点については、『男女共同参画基本計画(第2次)』(平成17年12月閣議決定)にも明記されているように、「ジェンダー・フリー」という用語を使用して家族や伝統文化を否定することは「国民が求める男女共同参画社会とは異なる」ということに留意する。
≪施策例≫
(1) 「家族の週間」運動の推進【関係省庁】
 家族や地域の人々が触れあう機会を増やし、相互の絆をより深めるため、毎月一週間程度を「家族の週間」とし、国民運動を推進する。
1)残業をしないで、早めに帰宅して一家団欒の機会を設ける。
2)家族、町内会での行事(食事会、リクリエーション、旅行等)を開催
3)父親の育児参加の応援(父親休暇の推進、子ども会・PTA活動等への父親参加の推進(父親の参加しやすい日時設定、手法の検討))
4)その他、家族の絆を深める自主的な取組
(2) 「家族の日」における行事の推進【関係省庁】
 家族や地域の絆についての国民的議論を喚起する契機をつくり、継続的に国民運動を実施していく機会とするため、年1回「家族の日」を定め、国・地方において国民運動に関する行事を行う。これらの行事を通じて、優良事例を普及させることによって、家族の絆・地域の絆の重要性に対する地域住民の関心を高める。
1)家族、親類、町内会、企業等による、家族や地域の絆を深めるための模範的な活動事例を表彰する(内閣総理大臣賞等の授与)。
2)「官邸コンファレンス」として、総理、関係大臣、有識者、関係団体等が一同に会し、家庭の重要性(幼い段階からの親や身近な者との愛着形成が極めて重要であること等)を確認し、そのために必要な最新の科学的知見を共有するとともに、国民運動として展開する施策の実施について国民に発信し、関係者との協力関係を構築する。
3)各地域において、家族や地域の絆について学び、考えるための講演会等を開催する。具体的には、祖父母を大切にする意識の涵養や生命を継承していくことの重要性、結婚・出産の意義、妊婦や子ども連れを大事にする意識の涵養、子どもが安心して自由に活動できる社会の形成、出産・子育ての喜びや楽しさ等をテーマとする。必要に応じ、「地方コンファレンス」として、関係大臣及び有識者等が地方自治体に出向き、町内会、地域の団体等と一緒に行事を実施する。
2. 家族の絆の強化
 家族の子どもに対する責任感を高め、家族の絆をより深めるとともに、子どもの健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくみ、家族を大切にする意識を高め、結婚や出産を自然な生き方と考える次世代を養成するとともに、家族を大切にすることを中心とする社会形成の意識を高める。
≪施策例≫
(1) 三世代同居の支援・推進【国土交通省その他関係省庁】
 世代間交流により、子どもの豊かな人格を形成し、祖父母等の家族を大切にする意識を高めるため、多様な家族関係を構築できるよう三世代の同居を支援・推進する。
1)三世代同居のための住宅建設の推進
(2) 家族中心の税制や法制への見直し検討【関係省庁】
 家族を大切にすることを中心とする社会形成の意識を高めるため、より多くの子どもを持つ家庭が有利になる税制や、家族を社会構成の基本的単位とする法制の在り方について検討する。
(3) 母子教育・家庭教育の充実【厚生労働省、文部科学省】
 家族の子どもに対する責任感を高め、家族の絆をより深めるとともに、子どもの健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくみ、結婚や出産を自然な生き方と考える次世代を養成するため、母子教育や家庭教育を充実・強化する。
1)母子健康手帳と家庭教育手帳の内容にも、最新の科学的知見を取り込むとともに、両者のより一層の連携を図るようにする。
2)母子や家族の絆を深めるための母乳育児の推進と読み聞かせや子守り歌の推進を図る。特に、乳児期における母子のふれあいを推進する(「おっぱい吸い付き運動」)。
3)産婦人科学会、小児科学会等各学会で発信している最新の科学的知見(高齢出産のリスクやテレビ等の情動に与える影響等)について、広く一般に周知し、情報に接触し易いようにする。
(4) 里親制度・養子縁組制度の活用の推進【厚生労働省】
 児童の発達においては、乳幼児期の愛着形成が極めて重要であることから、家庭での養育が十分に期待できない子どもについても、家庭での生活を通して愛着形成を図り、家族の絆を深める機会を享受できるようにするため、より積極的に里親制度の活用に努める。
 また、里親制度とも連携し、児童相談所等において、児童の最善の利益を考慮しつつ、未成年養子、特に特別養子については、要保護児童対策の一環として、保護に欠ける児童が適当な養親と養子縁組を結べるように努めることを推進する。
3. 地域の絆の強化
 地域における触れ合いとつながりの基盤である町内会等、家族が暮らす身近な地域における活動を通じて、家族間の交流や、多様な世代間での交流を推進する。
≪施策例≫
(1) 身近な相談体制の強化【厚生労働省、文部科学省】
 子育て家庭と地域の絆をより深めるとともに、地域全体で子育てをする意識を高めるため、地域における「子育てサポーター」(子育て経験者)を育成・周知する。(既存の子育て支援サークル等とのリンクを図る。)
(2) 地域の高齢者等の人材の活用【厚生労働省、文部科学省その他関係省庁】
 地域における子どもの安全な成育環境を確保するとともに、子どもが地域との絆を深め、家族的な三世代のつながりを体験するため、世代間交流の促進、地域の安全な状況下での異年齢の子どもの触れ合いの機会の提供、地域の関係者の協力による子どもの学習・成長の場の提供等、地域全体で子育てをする環境を整備する。
1)保育園における保育補助員等として、地域の高齢者による「おじいちゃん先生」「おばあちゃん先生」の活用を推進する。
2)全ての小学校において、希望する子どもは、ボランティアの監督の下で、午後6時まで、安全に異年齢の子どもと遊べるようにする。
3)全ての小中高等学校において、希望する子どもが体験学習をできるよう、地域の関係者と連携できる仕組みを導入する。
4. 社会全体で子どもや生命を大切にする運動
 生命を尊重する意識や子どもを大切にする意識をより高め、社会全体で出産や子育てを応援することの重要性を啓発する。その際、男女共同参画の観点については、『男女共同参画基本計画(第2次)』にも明記されているように、「性と生殖の権利(リプロダクティブ・ライツ)」について、「我が国では、人工妊娠中絶については刑法及び母体保護法において規定されていることから、それらに反し中絶の自由を認めるものではない」ことに留意する。
≪施策例≫
(1) マタニティーマークの普及【内閣府(政府広報)、厚生労働省その他関係省庁】
 命の大切さに対する理解を深め、社会全体で子育てを応援することの重要性を啓発するため、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくし、公共の場所での妊産婦にやさしい環境づくりを推進するためのマタニティーマークを普及させる。
1)妊婦や子ども連れに優しい風潮を作るため、マタニティーマーク普及の広報、啓発を行う。
2)官公庁や市町村役場をはじめ、産婦人科や助産所等の医療機関等で、妊産婦が携帯可能なマタニティーマークグッズを配布する。
(2) 出産に不安を感じる女性や妊娠中絶を考える女性への支援体制の拡充【厚生労働省】
 母体保護、胎児の生命の尊重の観点から、妊娠・出産に悩む女性が安心して出産できるようにするとともに、妊娠中絶について熟慮する機会が与えられるようにするため、相談体制等の支援体制の充実を図る。
1)妊娠・出産に悩む女性の悩みや不安を解消し、安心して出産できるようにするため、医療機関、保健所等における相談体制を充実する。
2)妊娠中絶を検討する際に、一度立ち止まって考える機会が与えられるよう、妊娠中絶を考える女性に対する相談窓口等の支援制度を創設する。
(3) 子どもを大切にする情報提供の推進【総務省、警察庁その他関係省庁】
 テレビ、インターネット、携帯電話等のメディアの家庭における影響の大きさを考慮し、家族の絆をより深めるとともに、子どもの健全な心身を培い、豊かな人間性を育むため、家庭教育を阻害するような有害な情報の流通に注意するとともに、家庭教育に配慮した有用な情報の提供を推進する。
1)教育番組・教養番組等において最新の科学的知見を盛り込むとともに、家族や若者を視聴対象とした良質な番組の提供等について協力を求める。
2)最近のITや携帯電話等の急激な機能の発達・普及に対応して、携帯電話のフィルタリング機能等に関する啓発を推進する。