雇用創出・産業競争力強化のための規制改革

平成11年7月13日
産業構造転換・雇用対策本部


 我が国が直面する深刻な雇用問題に対処し、同時に、今後、発展が見込まれる産業分野において、意欲と能力を有する人材が事業展開を行うことができるよう、福祉、情報通信等の分野において規制改革を行い、良質な雇用機会の創出と産業競争力強化を図る。
 規制改革のための具体的措置は、以下のとおりである。

1.医療福祉


 乳幼児の保育に係る知識や経験を有する者の仕事の場づくりを支援するとともに、待機児童の解消を図るため、設置主体要件、定員要件など認可保育所に係る規制を緩和し、認可保育所の設置を容易にする。
 また、介護サービスに従事できる者の雇用機会を増やすとともに、介護サービスの供給体制に万全を期するため、関係要員の研修・試験に係る制度を改革する。

(1) 保育所の認可の緩和等(民間法人の認可保育所、定員要件の緩和等)
 以下の措置を平成11年度中に講じる。
 @ 待機児童の解消を図るため、認可保育所との連携の下で、家庭的保育を行う者(ホーム保育)が児童を保育する仕組みに対し、支援を行う。
 A 認可保育所の設置を促進するため、民間法人(企業、農協、NPO等)も認可保育所の設置主体として認める。
 B 認可保育所の定員要件について、夜間保育所も含め緩和を図る。
 C 賃貸方式を許容し、保育所の施設に関する要件の緩和を図る。

(2) 介護サービス関係要員研修期間の短縮・試験制度の簡素化
 @ 看護婦等の介護支援専門員(ケアマネジャー)の試験について、なお一層の簡素化を検討する。
 A 介護福祉士の受験資格として認められる実務経験について、その対象とされる事業や施設の範囲を拡大するとともに、通信教育等の普及を図り、実務経験3年以上とされている受験資格を原則として2年間とする。
 また、介護福祉士国家試験については、試験会場の箇所数を増やすとともに、申請書類の簡素化を行う。
 B 保育士資格を有する者を対象とした、1年間で介護福祉士を養成する施設の設置を促進する。
 C ホームヘルパー養成研修について、以下の措置を平成11年度の早い時期に講ずる。
  イ.ホームヘルパー養成研修について、介護サービスに従事した実績を有する者に対する実習の簡素化を図る。また、実習の方法を弾力化する観点から、見学の一部をビデオ学習に、実習の一部を模擬実習にそれぞれ振り替えることを可能とする。
  ロ.ホームヘルパー養成研修における実習対象可能施設を拡大し、痴呆性老人グループホームや現に介護サービスを提供している有料老人ホームを追加する。

(3) 介護事業への民間参入の促進
 在宅介護サービスについては、既に民間企業の参入が可能となっていることの周知徹底を図るとともに、平成11年度の早い時期に、介護事業への民間企業の新規参入等の支援を促進する。

(4) 特別養護老人ホーム等介護事業への民間参入の弾力化
 @ 特別養護老人ホームを営む社会福祉法人の資産等の要件を緩和するための措置を早期に講じる。特に、特別養護老人ホームに係る社会福祉法人の設立要件を緩和し、施設用地について、都市部以外の地域においても、国又は地方公共団体以外の者からの借受けでも認める。
 A 特別養護老人ホームや療養型病床群などの介護報酬については、実態調査の結果を踏まえ、医療保険福祉審議会の審議を経て、平成11年度中に、要介護度等に応じて適切に設定する。

(5) 病院・医療周辺サービスの規制緩和
 @ 医療広告に関して、事実や客観的な情報等検証可能な事項について、現行制度の下で緩和する方向で早期に検討する。
 A 医療機能評価について、自主的な取組が進むよう、専門性が高く中立的な第三者機関による評価の結果を医療機関の広告事項に追加する方向で早期に検討する。
 B レセプトの電子情報処理化を今後とも引き続き推進する。

(6) 介護バウチャー制度の検討
  介護に係るバウチャー方式については、各市町村の判断により、導入が可能となっている。今後は、要介護者の要請に応じ、ICカードによる支払いを可能とするとともに、業者間のデータの交換、共有等が問題なく行えるような相互互換性を確保することについて、検討する。

2.情報通信


 インターネット料金の定額制導入の促進、道路交通分野での政府の保有する情報の民間利用を可能とすること等により、通信料金の低減や情報産業分野における新たな事業機会の創出を図る。

(1) インターネット料金の定額化・専用線料金の引き下げ
 インターネットへの接続のための通信料金について、今年度中の実施を目途に定額制の導入を促進する。また、専用線料金の引き下げを検討するとともに、業者間の通信回線の接続料金への長期増分費用方式の導入に当たり、十分な透明性の確保を図る。

(2) ITS(高度道路交通システム)の推進
 ITSの推進に向けて、以下の措置を平成11年中に実施する。
 @ 今後、道路交通情報提供事業への民間企業の参入を促進するため、警察及び道路管理者が収集した道路交通情報を民間が一層活用できるための措置を講ずる。
 A 高速道路の道路形状情報、標識情報、更に今後ETC(ノンストップ自動料金収受システム)の整備によって入手可能となる情報は、高速道路における情報サービス事業の基礎データとなるが、上記@と同様の目的から、民間事業者への開放や高速道路上、サービスエリア等における情報サービスの実施についてその可能性を検討する。なお、この場合、道路交通の円滑化の支障とならないようにするとともに、当該情報に含まれる個人情報の取扱いに十分に配慮する。
 B 狭域通信のメディアであり、UTMS(新交通管理システム)のキーインフラである光ビーコンの整備・普及を国内外において促進するため、光ビーコンの国際的な標準化活動を一層推進するとともに、その用途拡大を図る。
 C 狭域通信に用いる5.8GH(ギガヘルツ)の周波数帯については、現在ETC用に使われることとなっているが、今後、この周波数帯を活用して用途拡大を行っていくことが予想されることから、ETCに係る技術を車両運行管理等のETC以外のシステムで活用することに関し、混信等のない電波の利用の可否の技術的検討及びETCに係る技術の汎用化・高度化に向けた研究開発の促進を図る。
 D ITS関連機器の通信性能をより向上させるために機器を車両のフロントガラスに取り付ける場合には、現在、当該機器について運輸大臣等による指定の申請が必要とされているが、安全上支障がない場合には、当該申請を不要とするよう所要の措置を講ずる。

(3) 超高速通信網の整備
 次世代インターネットを支える超高速かつ、安全・信頼性の高い通信網の整備を早急に進める。

(4) 次世代携帯電話網の整備
 次世代携帯電話の早期導入を図るため、国際標準化の動向等を踏まえつつ、早期に、技術基準の策定を行うとともに、事業許可方針及び無線局免許方針を策定し、公表する。

(5) 電子取引等の基盤整備(電子認証等)
 電子取引の民間における導入を促進し、各種制度について電子媒体の使用を可能とする基盤を整備するため、商業登記に基づいて電子署名の作成者等を証明する電子認証制度等の在り方を検討し、平成11年度中に結論を得、その結論を踏まえて、所要の法律案を次期通常国会に提出する。

(6) ネットワーク犯罪の防止
 なりすまし犯罪などを防止し、高度情報通信社会の推進に資するため、暗号技術の不正利用対策について、法的環境整備を含め検討する。

(7) 小・中学校の情報教育の充実(インターネット化)
 565(平成10年4月現在)の地方公共団体が設けている条例によるオンライン接続の全面禁止規定が小・中学校へのパソコンの導入とネットワークの形成の妨げとならないよう当該規定の見直しを引き続き要請する。

(8) 国及び地方公共団体の電子化(申請届出、手数料納付、ワンストップサービス、インターネット化)
 @ 国及び地方公共団体への申請、届出等の手続きの電子化を一層推進することとし、平成11年度中に各行政機関一体となってこれを推進するための基本的枠組みを策定し、これを受けて、国においては省庁別にタイム・スケジュールを含めた具体的なアクション・プランの策定を進める。併せて、認証システムの体系的整備の一環として、電子政府の実現に必要なGPKI(政府公開鍵基盤)の構想についても成案を得る。
 A 国及び地方公共団体への手数料納付などに関して、情報技術を利用した方式(ICカード等)が認められるような制度改革について法改正を含め検討を行い、必要な措置について平成12年度中に着手する。

(9) NTTのドコモ株の保有割合の引き下げ
 NTTのドコモ株の保有割合について、携帯電話事業者間の競争状況とドコモとNTT東西地域会社との間の競争の状況に留意しつつ、検討する。

3.設備廃棄等に伴う土地流動化の促進


 工場跡地等の有効活用を促進するため、都市計画法等による用途規制について、新たに用途変更先導型再開発地区計画を導入し、迅速な土地利用転換を可能とするようにする。
 さらに、都市計画法等について法的な手当てが必要な場合には、次期通常国会においてこれを行う。

4.環境


 廃棄物の処理及び清掃に関する法律による許可の新たな付与の促進、再生利用認定制度の対象の拡大等により、リサイクル事業分野での雇用機会を増やす。
 また、国民生活や事業活動を、さらに環境志向型のものとするよう、リサイクル対策の強化、モデル事業の実施、環境会計の導入の検討等を行う。

(1) 優良企業の参入の促進
 リサイクルを促進するため、今後、事業の具体化が期待されるセメント事業者、鉄鋼業者等について、新たに、廃棄物の処理及び清掃に関する法律上の廃棄物処理業(収集・運搬業、処理業)の許可及び廃棄物処理施設の設置許可を付与するよう地方公共団体に要請するとともに、同法による再生利用認定制度の適用対象として、プラスティックス等を追加することを検討する。

(2) 廃棄物規制の強化
 ダイオキシン対策推進基本指針(平成11年3月30日ダイオキシン対策関係閣僚会議決定)における緊急に講ずべきダイオキシン対策として、排出規制の強化等を行うとともに、そこに位置づけられた廃棄物処理対策等を推進するため、増大する産業廃棄物の不法投棄や廃棄物処理に対する取締りを徹底する。

(3) 資源循環型システムの推進
 循環型経済システムを構築するため、物毎・業種毎に、また、生産、流通、消費、廃棄等の各段階において異なる実態に則して、建設廃棄物等のリサイクル(再生資源の利用)対策を強化・拡充するとともに、新たにリデュース(製品の長寿命化、省資源化等による廃棄物の発生抑制)やリユース(製品・部品の再利用)対策を導入する。これにより、リサイクル市場を拡大するとともにリペアサービス等新たな市場ニーズに対応し得る環境関連産業の発展を促進する。

(4) 廃棄物の減量化及びリサイクルの推進のためのモデル事業の実施
 廃棄物の減量化及びリサイクルの推進のため、地域における資源循環型経済社会の構築を目指すモデル事業として、地方公共団体と民間企業とが連携し、ペットボトルや家電製品等のリサイクル関連施設整備等を実施するエコタウン事業等を支援する。

(5) 環境会計導入の検討
 環境保全に係る事業者の自主的な取組を推進するため、事業活動の実態や国際的な実施状況を踏まえながら、環境会計について、ガイドラインの策定等を通じ、環境保全に係る費用の設定及びその効果の算出・評価方法の手法、透明性の確保のための第三者機関による監査制度の在り方等について、検討を進める。

5.教育・科学技術


 技術・技能の向上や、それらを通じた雇用機会の増加、賃金の上昇等に資するべくコミュニティ・カレッジ機能の充実や技術士制度の改善を図る。

(1) コミュニティ・カレッジ機能の充実
 米国において、いわゆるコミュニティ・カレッジにおける職業訓練プログラムが構造的失業対策や賃金上昇策として果たした役割等を参照しつつ、専門学校、大学等について、カリキュラム作成、教師の構成等の面での工夫を行うことにより、我が国にコミュニティ・カレッジと同様の機能の充実を推進する。

(2) 技術士制度の拡充
 技術者の能力向上を通じた産業競争力の強化を図るため、技術分野毎の特徴を踏まえ、学協会等と密接に協力しつつ、技術者資格の在り方等も検討し、技術士制度をより広範な技術者が活用し得る、国際的に整合性のとれた制度とするよう、平成11年度内を目処に成案を得る。

(3) 研究者、研究支援者の募集情報の公開
 国立試験研究機関等におけるポストドクター等研究者及び研究支援者の募集情報を取りまとめ、インターネットを通じて公開することにより、研究者及び研究支援者としての勤務を希望する者等に対し、自らの専門分野にふさわしい業務に応募しうる機会を広く提供する。

6.金融


 企業の事業再構築のための環境の整備、年金資産の充実等を図るため、金融機関の株式保有制限の運用を明確化するとともに、社債の決済期間の短縮化、共済組合の資産運用対象の拡大等について所要の検討を進める。

(1) 債務株式化のための環境整備及び5%ルールの運用の明確化・弾力化
 債務者と債権者との間の合意に基づき債務の株式化を活用できることとするための環境整備を早急に図るため、金融機関による株式保有制限(5%ルール)に関し、独占禁止法第11条の認可の考え方の明確化を図るとともに、銀行法施行規則の所要の改正を行う。

(2) 店頭市場の改革及び規制緩和
 ベンチャー企業の育成等に配慮し、店頭市場の充実を図るとともに、一層の透明化を推進する。

(3) 社債市場の育成及び規制緩和
 社債等登録法の改正を含めた社債決済システム全般の検討を行い、決済期間の短縮化等社債市場の育成のための環境整備を進める。

(4) 年金の資産運用対象の拡大
 厚生年金積立金の自主運用の検討・実施状況を踏まえ、共済組合においても、運用管理体制の充実等を図りつつ、資産運用対象の拡大等を検討する。

(5) 企業年金に対する持合株の拠出の推進
 企業年金に対する拠出に関し、現金のみならず株式による拠出を推進する。

(6) 企業会計原則のグローバル化及び土地含み益の顕在化
 土地の含み損益を貸借対照表に注記することについて、投資家保護の観点から、検討に着手する。

(7) 中小企業の範囲の見直し
 中小企業基本法改正を睨み、中小企業施策において、技術革新等の中小企業の経営革新及び創業支援の推進を図るとともに、中小企業の範囲の見直しを早急に行う。

7.PFI事業の推進


 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案(PFI法案)の早期成立を期待する。また、関係省庁において実施方針の雛形の早期作成及び公表、先導プロジェクトの発掘を行う。

8.エネルギー


 エネルギー分野における新規事業の発展を図るため、電力・ガスに係る諸制度について必要な検討を進める。

(1) 電力・ガスに係る私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の自然独占規定の廃止の可否についての検討
 電力・ガスに係る私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の自然独占規定(21条)の廃止の可否に関し、平成11年末までに結論を得る。また、石油化学工業のガス事業への参入については、今国会のガス事業法改正による新規参入の状況を注視する。

(2) 天然ガスパイプライン構想の推進
 サハリン沖天然ガスに係るパイプラインを我が国本土に敷設する構想につき、天然ガス開発プロジェクト、パイプライン事業化調査等の今後の進捗を踏まえ、同構想の実現に当たって適用のあり得る規制を明らかにし、その緩和について検討する。

9.バイオテクノロジー


 バイオテクノロジー及び関連産業の重要性にかんがみ、国家産業技術戦略の策定、関連省庁の施策の連携強化等を行う。

(1) 政府施策の充実
 バイオテクノロジー分野について、2010年頃を想定し、技術開発目標を定める国家産業技術戦略を産学官の英知を結集して策定し、当該戦略を科学技術基本計画に反映する。

(2) 5省庁連携の強化
 DNA配列の解析情報や研究用微生物等の生物資源の収集、保存及び分譲体制の整備がバイオテクノロジーの産業化を推進する上での共通基盤であることにかんがみ、関連5省庁が基礎研究の推進や産業創造に資する基盤整備の推進をはじめ施策の連携体制を整備し、一体となって対応する。

10.港湾運送事業の規制緩和及び日曜・夜間荷役の推進


 主要9港(東京、横浜、神戸等)の港湾運送事業に係る規制緩和について、平成11年6月に取りまとめられた運輸政策審議会の答申を踏まえ、次期通常国会に法案の提出を図るとともに、事業者の集約・協業化や日曜・夜間荷役等の推進のため、所要の措置を講ずる。

11.違法駐車防止業務等のアウトソーシング化


 違法駐車防止業務や中央省庁等改革の推進に関する方針(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)において民間委託を推進することが適切であるとした業務について、今後とも可能な限り、アウトソーシングを進めるよう、国は所要の措置を採る。また、地方公共団体に対しては、引き続き民間委託の推進を要請する。
 

 当本部は、上記各措置の実施状況に関し、随時フォローアップを行う。