住専処理策について

 インターネットを通じて橋本総理大臣のところに御意見をお寄せ頂いた方々、御意見どうも有り難うございました。総理大臣から、「大蔵大臣をしておりました時、新聞を通じて国民の皆様に御意見をお聞かせ下さいと申し上げ、沢山のお手紙とお電話を頂戴したことを思い出しました。あの時も有り難いと思いましたが、国民の皆様から真剣な御意見を頂くのは、大変有り難いことです。この1か月間にお寄せ頂きました御意見の中には、国政全般にわたって、厳しいお叱りの声や貴重な御提言が沢山ありました。また、頑張れと激励下さった方もいらっしゃいます。本当に有り難うございます。」とのメッセージが寄せられておりますので御紹介します。
 沖縄の問題や情報通信等についての御意見もありましたが、住専問題についての御意見が最も多くございました。その中でも、公的資金の導入について国民に理解を求めるのであれば、まずはじめに、住専問題について十分な説明をして欲しいという御意見が大変沢山ございましたので、政府の考え方を御説明させて頂きます。


内閣広報官 半田嘉弘


1.まず、住専を救済するために税金を使うのは筋が通らないという趣旨の御意見がありました。

 税金を投入して住専を救済するというように誤解されている方もいらっしゃるようですが、今回の処理方策は、住専を救済するものではありません。住専7社は全て解散し消滅することとされています。住専は経営の失敗によって破綻している会社であり、政府がこれを救済する理由はありません。

(注)住専とは、「住宅金融専門会社」の略称で、元々は個人向け住宅ローンのために金融機関等の共同出資により設立されました。しかし、いわゆるバブル経済の中で、銀行や農協系統の融資を受けて不動産事業向けに急速に融資を拡大し、バブル崩壊後巨額の不良債権を抱えるに至りました。

2.また、借りたお金を返さずに広い家に住んでいるような人を助けるのか、という主旨の御意見もありました。

 住専から資金を借りて返さないでいる借り手に対する債権取立てについては、今回、国会に提出した法案に基づき、住専処理機構及び預金保険機構が一体となって強力に行うことになります。御意見のような人々を助けるなどということは全くなく、借り手は強力な債権取立てを受けることになります。即ち、今回の法律で付与される権限や、破産法などあらゆる法律上の手段を用いて借り手から債権取立てを全力で行います。なお、例えば住専から住宅ローンを借りてきちんと返済をしておられる方々については、これまでと同様であり、御心配はいりません。

3.次に、なぜ今、税金を投入してこの問題の解決を図らなければならないのか、当事者間での解決又は法的な破産手続きなどで処理を行えばよいではないか、という趣旨の御疑問がございました。

 今回の処理策の目的は、住専という私企業の救済のためのものではなく、国民の皆さんの預金を守り、日本経済の根幹を支える金融システムの安定性を確保し、景気回復を確実なものとするために決断されたものであります。財政資金は、国民のために使うものであり、今回もまさに国全体のために必要と判断されたものであります。
 住専の抱える不良債権は巨額で、かつ、住専に融資を行った金融機関は300にものぼりかつ多様であり、また、それぞれに複雑な関係にあります。このため、当事者のみでは到底解決が困難な状況にあります。また、法的な破産手続きを行った場合は、個々の金融機関の損失額がはっきりするまで何年間も要し、その間、体力の弱い金融機関は経営不安にさらされ続けることになり、場合によっては、預金者に不安が広がり、金融機関の破綻が多発するといった事態も起きかねません。現に海外から、我が国の金融システムに厳しい目が向けられていることは、ジャパン・プレミアムなどからも明らかであります。また、このような状況では、景気の回復が望みえないことは明らかであります。
 このような事態を回避し、現状を打破して、本格的な景気回復をもたらし、さらに我が国の金融システムの安定性と内外の信頼を取り戻すためには、住専を整理し、金融機関の損失をそれがいかに大きいものであってもはっきりさせることが不可欠であると考え、財政資金の投入を含む処理策がとりまとめられたものであり、まさに、国民全体のために決断をされたものであります。
 一般的に、ノンバンクも含め民間の会社の破綻処理は、当事者間で、必要があれば法的手続きにより行われるというのは、そのとおりです。しかし、今回は、そのやり方では景気や金融システムの安定性確保という国益を害することになり、国としても放置できないので、決断をしたものです。住専以外のノンバンクの不良債権処理については、公的関与を行うことはありません。
 また、この住専処理策について、米国のクリントン大統領は「米国においても近年金融機関の問題に直面し、公的資金の導入はやはり大変不評であった。このような措置を採らないと更に状況が悪くなることを国民に説明するしかない。我々選挙で選ばれたものは長期的には正しいが、不人気な決定をしなければならないことがある。」と述べられた由であります。

4.今回の処理方策の決定過程が不透明であるとか、いったい誰が決めたのかといった趣旨の御疑問もございました。

 住専問題の早期解決の重要性を考え、昨年夏以来、政府は種々の場で問題提起(累次の経済対策、金融制度調査会など)を行い、また、与党金融証券プロジェクトチームにおいても20回を超える精力的な議論が行われました。こうした各方面での議論を踏まえて行われた当事者間の真剣な交渉に基づき、昨年末に、政府・与党一体となって処理方策が決定されました。ただ、ぎりぎりまで真剣な検討が行われたため、かえって皆様方には唐突な印象を与えてしまったのかもしれませんが、このように、広範な議論が様々な場で行われたものであり、決して唐突、不透明な決定過程でありません。

5.住専処理機構が引き継ぐ債権の回収は果して順調に進むのか。二次ロスといわれるような追加的な国民の負担が際限なく出てくるのではないかという趣旨の御心配の声がございました。

 額面13兆円の住専の債権は、住専処理機構が引き継ぎます。住専から借入をして返済をしていない借り手に対しては、住専のもつ債権全額を対象に強力な方法でその取立てを図ることにより、追加的な損失が生じないよう全力を挙げてまいります。こうした努力を行ってもなお、万一損失が生じた場合については、国と民間の両方がこれを折半で負担しますが、強力な仕組みとスタッフ、法制上の措置を講じて債権の取立てに努めてまいります。
 具体的には預金保険機構と住専処理機構が一体となった強力な体制を整備します。特にどのような人でチームを構成するかが重要であり、警察、法務・検察、国税等の協力を得て強力なチームを作り、違法な妨害行為には、捜査当局と緊密な連携をとって積極的に告発も行います。また、この体制に少しでも強力な仕組み、手段を設けるため、例えば、預金保険機構に悪質な債務者の財産調査や、住専に法律上問題のあるような損害を与えた者の調査を行わせること、さらにその財産調査を担保する罰則を付すこととしました。

(注)住専処理機構とは、住専問題の早期処理を図るため、今回法律により新規に設立される組織です。預金保険機構と一体となって、住専から引き継ぐ債権の取り立てを強力に進めていくこととしています。また、預金保険機構とは、預金者保護のために設立された認可法人で、今回、住専処理機構への出資や資金援助、住専処理機構の債権回収に対する助言、指導を行うこととなります。

6.税金投入の前提として、関係者の責任追及の声も多くございました。乱脈融資を行った住専、多額の借金を抱えながら贅沢な生活を送る借り手、銀行の高い給与水準、紹介融資や母体行の住専の経営への関与、住専問題をここまで放置した行政の責任など数多くの御指摘がございました。

 住専、借り手、関係金融機関、行政等の種々の責任の明確化を図ることは当然であります。
 これまでも、住専が破綻に至った経緯や経営者の責任、関係金融機関の住専の経営への関与や紹介融資の問題、住専に対する貸手としての責任、さらには金融行政の責任などが種々の場で議論されていますが、今後とも様々な責任を明らかにするべく徹底的な議論、調査を行ってまいります。
 また、借り手については、今後強力な債権取立てを行う中で、その責任を追及してまいります。住専の役員が過失や故意により、住専に損害を与えていたことも考えられます。また、法律上問題のあるような融資紹介を行って、そのために住専の不良債権が増えたということも考えられます。住専処理機構は、住専から、他の資産とともに損害賠償請求権も引き継ぎ、こうしたケースについては当然損害賠償を求めます。こうした中で、法に違反するような事実があれば厳正に対処してまいります。また、今回の法案では、これらのための財産調査権を預金保険機構に付与することとしております。
 さらに、過去の経緯や責任の明確化を図る中で、反省すべき所は率直に反省し、見直すべき所は早急に見直していかなければなりません。そして、今後は、二度とこのような事態が起きることのないよう、自己責任の原則と市場規律の十分な発揮を基軸とした、透明性の高い新しい金融システムを構築してまいります。これまでの金融行政のあり方を総点検し、今後は市場によるチェック機能を一層活用する行政への転換を図ってまいります。

 最後にもう一度、多数の御意見を寄せて頂いた方々に御礼を申し上げます。また、今後とも、様々な角度から貴重な御意見をお寄せいただくようお願いいたします。
 なお、以下、大蔵省が作成した住専問題についての資料を御参考までに掲載させていただきます。


「住専問題」について

住専問題とは....?

 住専とは、「住宅金融専門会社」の略称で、元々は個人向け住宅ローンのために金融機関等の共同出資により設立されましたが、いわゆるバブル経済の下、銀行や農林系金融機関の融資を受け、不動産業向け融資を急速に拡大しました。バブル崩壊後、住専の不良債権は膨らみ、住専7社を整理した場合の損失は巨額となるため、金融システムを混乱させないためには、どう住専を処理すべきかが問題となりました。

(注)住専7社とは、日本住宅金融、住宅ローンサービス、住総、総合住金、第一住宅金融、地銀生保住宅ローン、日本ハウジングローン



住専処理案の概要

 金融システムに混乱を招かず、住専問題を早期に解決するため、次の方針で、住専処理を図ります。

1.まず、住専7社の行った融資を、住専処理機構に移した後、住専を解散・整理します。その過程で発生する損失額(6.41兆円)については、関係者が最大限の負担を行った上、円滑な処理を行うため、国も6800億円の支出(別途、国から預金保険機構に50億円の出資)を行います。
 住専の処理に当たっては、借り手、経営破綻に至った住専、関係金融機関、行政等の責任の明確化を図ることが必要と考えられます。



住専処理機構とは...?

 住専処理機構とは、住専問題の早期処理を図るため、今回、法律により新規に設立される組織です。住専から譲り受けた貸出債権の強力な回収のため、法的措置も講じ、専門家の活用等により、十分な回収体制を整備することとされています。


2.住専処理機構は、関係金融機関の融資を受け、住専7社の債権を買い取り、専門家の力も借りて、「強力な回収」を進めていきます。

(1) 債権回収が進み利益が生じた場合 国等への還元

(2) 万一、損失が発生した場合 金融システムの混乱を防ぐため、国と民間金融機関が協力するとの観点から、政府と民間金融機関が1/2ずつ負担



預金保険機構とは....?

 預金保険機構とは、預金者保護のため、設立された特別法人で、現在、次のような業務を行うこととされています。

(1) 金融機関が破綻した場合に、1,000万円を限度として保険金の支払いを行う。

(2) 破綻金融機関の営業を譲り受ける金融機関に対して資金援助を行う。

 今回、従来からの業務に加え、特例的に、住専処理機構への出資や資金援助、住専処理機構による強力な回収のための助言・指導等といった新しい業務が付け加わることになります。


住専問題の早期処理の必要性

 財政資金の投入を決断せず、住専問題の解決を先送りすると、金融システムが混乱し、かえって国民生活に深刻な影響を与えることとなりかねません。また、裁判所における法的処理は、住専問題の規模及び複雑さから考えて、同様に金融システムに混乱を招く可能性があります。



ジャパン・プレミアムとは....?
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 昨年の夏以来、欧米の銀行が日本の金融システムに対する不安感等を抱いているため、邦銀が海外の金融市場で資金調達を行う際に、欧米の有力銀行に比べ、割増しされた高い金利を支払わざるをえなくなっていると指摘されていますが、この割増分の金利が、ジャパン・プレミアムと呼ばれています。こうした高金利での資金の調達は、最終的には、我が国の企業の資金コストの上昇につながり、国民経済に悪影響を与えます。現在、海外市場では、昨年12月に住専処理の見通しが立ったことに対する評価等を背景に、ジャパン・プレミアムは、ほぼ解消したと言える水準になっています。しかし、仮に住専処理策が円滑に実施されない場合には、ジャパン・プレミアムが再拡大し、ひいては、景気に対しても悪影響が及ぶことが懸念されます。

(参考)ジャパン・プレミアムの推移(ロンドン市場平均金利と代表的邦銀の金利差)
 ピーク(昨年10/25) 0.5%  12月末 0.125%  1月末 0.031%


破産手続きに時間がかかる理由
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 破産手続きにおいては、次のような段階を経ます。
(1)債務者にどういった財産があり、他方、どの債権者がどのような債権を保有しているかを確定する手続き
(2)最終的に残余財産を債権者の間で分配するため、破産会社の財産を換金する手続き
 今回の住専のケースの場合、関係者が多く、かつ、複雑な経緯があることから、(1)の債務者の財産の確定の手続きに相当の時間がかかると見込まれます。また、住専の財産の多くが不良化しているため、換金するのに相当な時間がかかると思われます。こうしたことから、仮に住専問題を破産手続きにより処理する場合は、解決まで長期間かかる可能性が高いと考えられます。
(参考)住専7社 負債約13兆円、債権者300行超、貸付先20万件超


金融システムの混乱の国民の生活への影響
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 金融システムが混乱すると、国民の生活に深刻な打撃を与えます。財政資金投入で住専問題の早期解決を図るのは、金融システムの混乱を避けるためです。
 特に、住専に融資をしている銀行及び農林系金融機関には、多数の預金者(貯金者)が存在しています。財政資金の投入で、そうした金融機関の経営悪化を防ぐことは、預金者保護のためです。


・金融システムの特徴


・金融システムの混乱の影響

・昭和金融恐慌の苦い経験


住専処理機構による債権回収体制の整備と責任の明確化
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 住専7社の借り手に対する貸付債権は、住専処理機構に移され、住専処理機構が強力に債権回収を図っていくこととしています。
 回収困難な事案でも、住専処理機構が預金保険機構と一体となって強力な回収体制を整え、借り手の責任を厳しく追及していきます。
 住専の処理にあたっては、住専・関係金融機関・行政等の責任の明確化を図ることが必要と考えられます。



海外における公的資金の導入の例
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 海外においても、金融システムの安定化のため、公的資金が導入されています。こうした経験から、我が国の住専問題への取り組みについて、海外から期待されています。


・海外における主な例

(参考)
・今回の我が国の住専処理案に対する海外の反応例