官報資料版 平成12年1月26日




                  ▽国民生活白書のあらまし……………………………………………経済企画庁

                  ▽月例経済報告(十二月報告)………………………………………経済企画庁

                  ▽消費者物価指数の動向(東京都区部十一月中旬速報値)………総 務 庁











国民生活白書のあらまし


選職社会の実現


経済企画庁


 平成十一年度「国民生活白書」は、平成十一年十二月十日の閣議に報告され、同日公表された。白書のあらましは次のとおりである(なお一部掲載を省略した節がある)。
(副題解説:これまでの戦後社会が生産関係で結ばれた「職縁社会」であったとすれば、これからの社会は、自らの生活(人生)をより楽しくするために、好みの職場を選べる「選職社会」といえる。人々が自らの能力向上に積極的に取り組み、自らの好みと適性にあった職業、職場を選び取る能力が身につけば、自らの好みの中で生活の糧を得て、豊かな人生を送ることができるであろう。)

はじめに

 生き生きと働いていけるかどうか、現役世代の人々に心配がある。失業率が高水準で推移し、雇用者数と賃金がともに減少している。企業は経営を見直し、事業の再構築(リストラ)に努めている。心配にはいくつかの背景が考えられる。第一には、会社にしっかり勤めていれば生活は大丈夫という考え方が必ずしも通用しなくなっている。長期雇用と年功賃金を特色とする日本の雇用慣行は、これまで国民生活を保障していた。そうした雇用をめぐる環境が変わりつつある。第二には、規格大量生産型の産業構造が大きく転換する中で、個人は今の自分の知識や技能で将来やっていけるのであろうかと身構えている。個人の能力がこれまで以上に問われる時代が到来している。第三には、高齢化が進み、家族の介護が多くの人の切実な問題となっている。自分たちを育ててくれた親の介護と自分が生き生きと働くことを両立させたいとの希望は、幅広く共有されている。
 こうした背景は、右肩上がりで成長を続ける経済社会で適切であった仕組みが、少子高齢化、経済の成熟化、グローバル化の中でこれまでのようには円滑に機能しなくなっていることを示している。新経済計画「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(一九九九年七月閣議決定)が示すように、これからは「個」を中心とする社会になりつつある。そうした経済社会の方向に沿って、これからも雇用をめぐる環境は大きく変わっていくだろう。もちろん、人々のやる気が満たされるために必要な環境は、公的部門が効率的にかつ低いコストで整備していくことが不可欠である。市場経済につきものの市場の失敗に備えることは、政府の責務である。他方、人々が自らできることの一つは、人的能力を高めることによって変化に挑戦していくことである。
 このような問題意識に基づいて、本年の国民生活白書は、第T部において、雇用をめぐる環境が変わる中で人々が生き生きと働くために必要な課題を考察する。
 第U部では、家計の消費貯蓄動向と人的能力向上への支出を分析する。

第T部 変わりゆく雇用環境で生き生きと働くために

第1章 変わりゆく雇用環境と生活

 本章では、大きく変化しつつある雇用をめぐる環境を概観し、それに対する個人の意識や生活の動向を探る。また、近年高水準で推移する失業率や高まる労働移動の現状を整理し、雇用をめぐるミスマッチの現状を明らかにする。

第1節 構造的変化の中で変わりゆく雇用環境

1 変わる雇用環境

(何が変わったか)
 雇用をめぐる環境の変化は、以下の点に要約される。
 第一に、賃金面で能力・業績主義への傾斜が強まっている。年俸制を採用する企業の割合は一二%に達し、従業員一千人以上の大企業では四分の一が採用している。
 第二に、人材採用の多様化が進んでいる。新卒者の四月一括採用がなお中心ではあるが、新卒者の通年採用や中途採用が増えつつある。また、短期的な雇用を活用したり、専門技術はアウトソーシング(外部への委託)が強まっている。
 また、企業の人事方針に関する調査の回答には「終身雇用慣行を重視する」が一割、「終身雇用慣行にこだわらない」が約半数に達しているという結果もみられる(第1図参照)。しかし、これまでのところ、世代別の平均勤続年数で示される長期雇用慣行は、明白な変化を示していない。ただ、雇用者には就業形態の多様化が進んでおり、また、若者では転職率が高まっている。こうした動きは、今後平均勤続年数を短くさせる可能性を示唆している。

2 雇用環境の変化と知識や技能の習得

(知識や技能の習得に関する意識の差)
 企業にとっては、社員の資質や技能が高ければ生産性も高まるので、それは望ましい。したがって、企業は社員に対して、会社の内外で教育や訓練のために研修を実施する。しかし、社員が短期で転職してしまったり、定年までの残り時間が短い場合には、せっかく実施した研修が生産性を長期的に高める上では結実しない。つまり、訓練費用の回収が困難である。これは、企業にとって人材育成の方法が大きな課題であることを物語っている。九七年には六割の企業が実施しているが、近年では教育訓練を実施した企業は大幅に減少している。

3 雇用環境の変化で変わる生活

(増える自己研鑚(けんさん)にかける時間)
 総務庁「社会生活基本調査」によると、仕事をしている人が勤務時間外に行う学習・研究時間(一日当たり)が増えている。八六〜九六年の十年間で、二十代では土曜日に三十七分の顕著な増加を示し、二時間五十三分となった。三十代、四十代でも土曜日に学習時間が増えている。しかし、平日には四十代や五十代で時間が伸びているが、より若い世代ではほとんど変化がない。知識や技能を高めたいという人々の意識は、自己研鑚時間の増加にもある程度現れていると考えられる。

第2節 深刻な失業問題と強まる雇用のミスマッチ

1 深刻な失業問題

(半数の人が失業を心配)
 国民の雇用に対する意識はどのように変化しているのであろうか。当庁「国民生活選好度調査」によると、「失業の不安がなく働けること」が「満たされている」とする割合は、八〇年代半ば以降低下を続けており、逆に「満たされていない」とする割合は、九〇年代に入り急速に上昇し、九九年には半数に達した(第2図参照)。このように、国民の意識には、失業に対する不安が大きくなっている。

(再就職後の年収維持率は年齢とともに低下)
 雇用情勢が厳しい中で、失業後、再就職を果たした場合、年収は離職前と再就職後でどのように変化するのであろうか。日本労働研究機構「失業構造の実態調査(中間報告)」(一九九九年)によると、特に五十代での減少幅が大きい。年収維持率(再就職後年収の離職前年収に対する比率)でみると、年齢が上になるほど低下している。

2 高まる労働移動

(年齢が若い人ほど高い転職率)
 総務庁「就業構造基本調査」によると、男女とも、八〇年代後半〜九〇年代の転職率は、七〇年代後半〜八〇年代前半の水準より高くなっている。さらに、年齢別の転職率は、男女とも年齢が若いほど高く、特に八〇年代後半以降は、女性の転職率が急速に上昇している。十五〜二十四歳では、九七年に男女とも八人に一人は一年前とは勤め先が異なっている。

(変わる若者の就業動向)
 総務庁「就業構造基本調査」によると、大学・大学院を卒業した二十代の無業者数は、八〇年代〜九〇年代初めにかけて減少していたが、その後増加に転じ、九七年には二十八万人と、戦後最高に達した。
 このように、若者の就業動向には、転職が多い、定職につかないという傾向がみられ、高学歴者では無業者が増加しているという特徴がある。

3 強まる雇用のミスマッチ

(三十五歳を過ぎると厳しい転職や再就職)
 前述「失業構造の実態調査」によると、空きポストを埋めるために求人している企業で年齢制限を設けている場合の上限年齢は、平均三十七歳となっている。これを職業別にみると、ホワイトカラーの上限年齢は三十五歳を中心に前後二歳程度となっており、概して三十五歳を過ぎると厳しい転職・再就職市場となっていることを示している。

(高まる職業能力のミスマッチ)
 前述「失業構造の実態調査」により、企業の求人が充足しなかった理由(複数回答)を調べてみると、最も多い理由は、「やる気のある求職者や社風に合った人柄の求職者がいなかった」であり、三六%の企業が挙げている。次いで、「応募者の職業能力や経験が求人条件と合わなかった」が三五%に達している。これは、求人側の希望と求職者が持っている知識や技能の間のミスマッチが大きいことを示している。
 このようなミスマッチを円滑、かつ迅速に解消していくことが大きな課題となっている。

第2章 高まる人的能力強化の必要性

 企業が個人の能力を重視していくなど雇用をめぐる環境が大きく変化する中で、個人は自らの能力を高めていく必要性を感じ始めている。本章では、能力・業績主義の導入状況、能力重視に対する国民の意識等について分析した。

第1節 広がる能力重視の考え方

(企業における能力・業績主義の導入)
 労働省「雇用管理調査報告」によると、常用労働者に対する人事、労務管理の方針について、個人の能力を評価して賃金等を決定する能力主義を今後重視する方針の企業の割合は、九三年には四割であったが、九九年には五割にまで増加している(第3図参照)。

(能力主義的賃金を「好ましい」と考える割合は六割を超える)
 総理府「勤労意識に関する世論調査」(一九七八年)、「今後の新しい働き方に関する世論調査」(一九九五年)によると、従来の年功序列中心の賃金制度から個人の能力を中心とする賃金制度への切り換えについて、「好ましい傾向だと思う」とする割合は七八年の五二%から九五年の六三%へと増加している。一方で、そうした切り換えを「好ましい傾向だとは思わない」とする割合も同じ期間に一一%から二〇%に増えている。
 当庁「国民生活選好度調査」(一九九九年)によれば、能力主義的な制度が導入されることによる職場や家庭の環境の変化を尋ねたところ(複数回答)、「適正な人事評価ができるか疑わしく不公平感が生じる」が五〇%と最も高く、次いで「低く評価された人は給料が上がらず意欲もなくしてしまう」が四六%となっている。

(四割の人が所得・収入の格差が拡大したと感じている)
 では、所得格差拡大の動きを個人はどう認識しているのだろうか。当庁「国民生活選好度調査」(一九九九年)によると、所得・収入について、四割の人が十年前と比べて格差が拡大したと思うと答えている。

(満たされていると考える人が減少した「努力に応じた収入が得られること」)
 「能力があって努力すれば誰もがふさわしい地位や収入が得られること」について、どの程度満足しているかを尋ねた問では、満たされているとの回答割合が減少してきており、九九年には一割を下回った(第4図参照)。

(七割が「個人の選択や努力の違いによる所得等の格差は当然」という考え方を肯定)
 個人の選択や努力の違いによって所得等に格差があるのは当然であるという考え方を七割の人が肯定している。格差があるのは当然という考え方を肯定する割合は、年齢別にみると三十代で最も高くなっている。

(能力・業績主義的要素の広がりによって必要となる評価制度の透明性・公平性)
 今後、年功賃金から能力・業績主義的な賃金制度へ移行が進めば、若年と中高年の間の賃金格差は小さくなっていく可能性がある。一方で、同一世代内での格差は広がる可能性がある。このような状況においては、能力・業績評価制度の透明性や公平性を確保していくことが極めて重要な課題である。

第2節 増加する社会人の再教育希望者

(高い能力を求める社会人)
 企業において能力・業績主義が着実に導入されてきていること、若者をはじめとして能力重視の考え方が広まってきていること等を背景として、企業で働く現役世代の中には、自らの能力が果たしてこのままでよいのかと考え始めている人もいる。

(増加している大学院で学ぶ社会人)
 経済同友会「教育に関するアンケート調査」(一九九七年)によると、二十〜三十代の社会人に「あなたは、再び学校で学びたいと思いますか。」と尋ねたところ、「思う」(四一%)、「条件次第」(四七%)とを合わせると九割の人が再び学校で学びたいと考えている。
 こうしたニーズの高まりは、社会人の大学院入学者数の推移でも示すことができる。修士課程では、八八年度に一千八十七人であった社会人入学者数(全入学者二万七千三百四十二人の四・〇%)が、九八年度には五千百七十七人(同六万二百四十一人の八・六%)と、十年間で五倍に急増している。

第3節 新規学卒者の動向

(企業における大卒者の採用方法の多様化)
 企業では、新規大卒者を採用する割合が八割と依然として高いが、今後は、転職者等を採用する中途採用による採用者の割合を上昇させていこうとする動きがある。日本労働研究機構「転換期の大卒採用と雇用管理に関する調査」(一九九九年)によると、新規大卒者の「四月一括採用」の割合を低下させ、「新規大卒者の四月一括採用以外の採用」、「中途採用(大卒)」を増加させるとしている。

(企業と大学生とでギャップが大きい採用の認識)
 (株)リクルート「二〇〇〇年新卒入社者の採用に関するアンケート」(一九九八年)及び「就職活動に関するアンケート」(一九九八年)により、採用基準で企業が重視する項目と大学生がアピールした項目について、企業と大学生の意識を比較すると、企業では「(本人の)今後の可能性」や「能力適性検査の結果」、「性格適性検査の結果」といった個人の能力を重視する割合が高い。一方、大学生では「アルバイトの経験」や「所属クラブ・サークル」のような学生時代の生活や経験をアピールした割合が高く、企業の採用ポイントと学生のアピールした点との間にギャップがみられる。

第3章 人的能力強化に向けた課題

 企業における能力・業績主義への傾斜等の動きは、人的能力を高めることが今後個人にとって一層重要になることを示している。本章では、人的能力強化に向けた課題として、個人が自己啓発を行う上での問題点、起業家育成、情報活用能力の充実について分析した。

第1節 自己啓発を行う上での問題点

(自己啓発の必要性を感じている人は九割、実行は五割)
 賃金処遇制度の能力・業績主義化等の中で、自己啓発の必要性を感じている人は多い。労働省「民間教育訓練実態調査」(一九九七年)によれば、労働者個人の九割が自己啓発の必要を感じている。
 自己啓発の必要性を感じる労働者個人の割合は非常に高いものの、同調査によれば、実際に自己啓発を行った労働者個人の割合は五割にとどまっている。

(「忙しい」「費用がかかり過ぎる」の割合が高い自己啓発の障害)
 個人が自己啓発を行うに当たって、障害となっている理由は「自己啓発のための時間がない(忙しい)」(六〇%)、「自己啓発のための費用がかかりすぎる」(三七%)、「自己啓発についての情報が少ない」(二七%)、「自己啓発のための休暇がとれない」(二二%)とする割合が高い。

(大学院等で費用の負担を重いと感じる人は四割以上)
 文部省「学習ニーズの高度化と新しい学習課題に関する調査」(一九九六年)によると、社会人の自己啓発費用の負担感については、大学や専修学校等で重いと感じる人の割合が四割以上となっている。
 重い費用の負担をしながら高度な職業訓練を受けようとしている個人に対して、支援を行うような仕組みや、人々の能力を適切に評価し、それを活用できるような仕組みを整備することが、今後一層重要な課題になると考えられる。

第2節 大切な起業家育成

(我が国における開業の状況)
 中小企業庁「中小企業白書」(一九九九年版)によると、日本の有雇用事業所の開業率は低下傾向にあり、九七年度には四・二%となっている。また、日本の開業率は、アメリカの開業率に比べてかなり低く、先進諸国と比較してみても低くなっている。こうした開業率の低さは、新規開業による雇用創出が小さいことを示唆している。

(減少する自営業主数)
 自営業主数も大きく減少している。総務庁「労働力調査」によると、自営業主数は、七二年の九百四十九万人から九八年には七百六十一万人へと二割減少した。自営業主の減少には、年齢構成の変化が大きく関係している。年齢別に自営業主数を調べると、二十代後半から四十代までの自営業主の減少が一目瞭然である。

(期待される大学等での起業家教育)
 今後、我が国においても多数の起業家が登場するためには、大学等で学生の起業家精神を育むような教育を提供するとともに、大学院においては、より高度な経営管理能力の向上を図るなど、日本でも一層の起業家教育を進めることが大切である。

(二十〜三十代に多い開業希望者)
 総務庁「就業構造基本調査」(一九九七年)によると、転職希望者の中で、「自分の事業をしたい」人は、二十代が全体の三一%(三十八万七千人)と最も多く、次いで三十代が二八%(三十四万八千人)となっている。若者に転職希望者が増加していることが、開業希望者数の多さをもたらしていると考えられる。

第3節 大切な情報活用能力の充実

1 情報化の進展と雇用の変化

2 必要な情報教育

(情報化への意識が低い現状)
 情報通信技術に対する意識の面について国際的に比較しても、「ビジネスチャンスが広がる」という情報化のメリットに対する理解が、諸外国に比べ日本は低くなっている(第5図参照)。

(求められる情報活用能力の教育)
 文部省「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」(一九九八年度)によると、インターネットに接続している日本の公立の小・中・高等学校及び特殊教育諸学校の割合は三六%となっている。また、これまでに情報教育の研修を受けた教員の割合は全体の五割程度、コンピュータを操作できる教員の割合は全体の五〜六割、コンピュータを用いて指導できる教員は教員全体の二〜三割にとどまっており、情報通信機器を活用できる教員の養成が急務となっている。
 他方、アメリカでは公立の小・中学校及び高等学校の接続割合は八九%(全米教育統計センター“Internet Access in Public Schools”(一九九八年))となっている。

3 情報活用能力の向上に向けて

(情報通信機器の活用によって可能な在宅ワーク)
 (社)日本サテライトオフィス協会「日本のテレワーク人口調査研究報告書」(一九九七年)によると、週に一回以上、情報通信機器を活用して自宅等において勤務をするいわゆる「テレワーク人口」は、九六年時点で六十八万人となっており、全ホワイトカラー(正社員)の四%強になっている。
 なお、週一回未満のテレワークを含む総テレワーク人口は、八十一万人と推計される。
 日本労働研究機構「情報通信機器の活用による在宅就業実態調査」(一九九八年)によると、在宅就労者の七割は女性となっている。また、子供のいる女性が半分を占め、その過半数は末子が六歳以下の育児期にある。
 こうした情報通信機器を活用した在宅ワークの一層の進展は、仕事と家庭生活の両立をより容易にしていくものと考えられる。

第4章 仕事と健康な家庭生活を両立させるために

 本章では、変わりゆく雇用をめぐる環境の中で、仕事と家庭生活を両立させていく上で何が必要かという視点から、多様化する雇用形態、働く人の心身の健康保持、仕事をしながら家族の介護を行う人たちを取り上げ、その現状と課題を明らかにする。

第1節 生活スタイルにあわせて多様化する雇用形態

1 パートタイム労働の可能性

(多様化する働き方)
 我が国の雇用形態は多様化している。雇用者に占めるパートタイム労働者(ここでは、週の実労働時間三十五時間未満)の割合(男女計)は、九〇年の一五%から九八年に二一%へと高まっている。また、派遣労働者の数は九〇年の五十一万人から九七年に八十六万人へと急増している。
 さらに、パートタイム労働者(ここでは、労働力調査の週三十五時間未満雇用者。ただし、OECD諸国は週三十時間以下であることに注意が必要)をみると、男女ともOECDの平均を上回って増加している(第6図参照)。

(パートタイム労働を選ぶ理由)
 OECDの報告書によると、パートタイム労働者のうち、非自発的パートタイム労働者(パートタイム労働者のうちフルタイム労働が見つからないため、やむを得ずパートで働く労働者)の割合は、我が国では、男性一九%(調査国平均二二%)、女性ではわずか四%(調査国平均一八%)である。つまり、諸外国と比べ、我が国のパートタイム労働者は、特に女性において、自らの意志によりパートタイム労働を選択している人が多い。

2 パートタイム労働者や派遣労働者の現状と課題

(パートタイム労働者の希望)
 パートタイム労働者や派遣労働者が行う仕事は、高度化しており、深い知識や洗練された技能を必要とするものが増えてきている。したがって、企業にとっても、できるだけ優秀な人材を採用したいと考えている。労働条件の良さが、求職者の質の向上につながれば、企業にとっても個人にとっても望ましい。
 パートタイム労働者のうち全体の四一%(男女計)が、今の会社や仕事に対する不満や不安を抱えている。その内訳(複数回答)は「賃金が安い」が五二%と最も高いが、「雇用が不安定」とする人も一九%を占める(「パートタイム労働者総合実態調査報告」)。

(派遣労働者の希望)
 労働省「労働者派遣事業実態調査結果報告」(一九九七年)によると、派遣労働者の雇用保険加入率は七四%となっている。
 同調査により、派遣労働者の政府への要望(複数回答、男女計)をみると、「労働保険等に加入しやすくする」の割合が二五%、「公的な教育訓練の充実」が二〇%、「公的な技能検定や技能評価制度の充実」が一八%となっている。

第2節 健康な家庭生活のために

(高まっている仕事上のストレス)
 労働省「労働者健康状況調査報告」(一九九七年)によると、自分の仕事や職業生活での「強い不安・悩み・ストレスがある」とする割合は、六三%(男性六四%、女性六〇%)で八二年の五一%と比べ、大幅に上昇している。
 強い不安、悩み、ストレスの原因は、「職場の人間関係の問題」が四六%と最も高いが、雇用失業情勢が厳しい中で「雇用の安定性」を挙げた人も一三%となっている。

第3節 家族の介護への備え

(自己都合で退職した四十代女性の十人に一人が介護や看病のため離職)
 家族の介護や看護のためにそれまでの仕事を辞めたり転職した人は、総務庁「就業構造基本調査」(一九九七年)によると、四十代女性で自己都合により離職した人のうち十人に一人が、五十代女性では七人に一人がそれぞれ介護や看病のためという理由で仕事を辞めたことになる。

(介護をしている二十〜五十九歳のうち、仕事と介護を両立している女性は四割にとどまる)
 厚生省「国民生活基礎調査」(一九九八年)によると、同居しながら介護をしている人は百六万人である。その中で、就業年齢と重なる二十〜五十九歳の人で介護をしている人のうち、男性の八三%が仕事をしているが、女性の場合は四三%にとどまっている。

(半数近くが年次有給休暇を利用して介護をしている)
 (財)婦人少年協会「仕事と介護との両立に関する調査」(一九九六年)によると、家族が介護を必要とする状態になった場合に、介護を主に自分で行った人のうち、男性では「年次有給休暇を利用した」人が四五%と最も多く、「介護休業制度を利用した」人が一五%となっている。女性では、「年次有給休暇を利用した」人が四三%と最も多く、「介護休業制度を利用した」人が三八%となっている。男女ともに家族の介護を年次有給休暇で対応した人が半数近くになっている。

(介護と仕事の両立に関する今後の展望)
 二〇〇〇年四月より介護保険制度が実施される予定である。ケアプランに沿って、計画的な介護サービスが提供されるため、仕事をしながら介護をする人は、介護と仕事の調整がしやすくなり、更に介護休業制度や介護短時間勤務制度等を活用することで、仕事と介護の両立がより容易となろう。
 現在、介護の担い手の多くは家族、なかでも女性が担っている部分が大きいが、今後高齢化が進む中で、介護問題を社会全体として捉えていく必要がある。介護保険はまさに、介護を必要とする人を社会全体で支える制度である。介護保険の実施を目前に控え、自分や自分の家族は適切に認定されるのだろうかなど、不安の声もあるが、今後、介護保険、介護休業制度等が活用されることにより、仕事と介護の両立がしやすくなることが期待される。また、雇用保険の対象となっている人を拡大していけば、今まで、収入がなくなることを理由に介護休業を取得しなかった人が、介護休業給付金の支給を受けてより介護休業を取りやすくなっていくと考えられ、結果として、介護休業制度の利用メリットが高まるといえる。

第U部 家計の消費貯蓄動向と人的能力向上への支出

第1章 家計の消費動向

第2章 金融機関の破綻と家計の貯蓄動向

 本章では、九七年秋以降の金融システム不安を契機とした家計の金融資産に対する意識の変化や金融資産の保護の現状等について検討する。

第1節 金融資産に対する家計の意識

(金融システム不安後、高まった金融機関への関心)
 大型金融機関破綻後の家計の行動や意識の変化について、日本銀行「生活意識に関するアンケート調査の結果(一九九九年二月)」で調べてみよう。金融機関の経営破綻に際し、七割以上の人が自分の仕事や収入、預貯金への影響を不安に感じている。また、金融システム不安や金融機関破綻の報道によるその後の行動や意識の変化については、三人中二人が「貯蓄や消費に対する意識や行動が変化した」と回答しており、なかでも「金融機関に関する情報に気をつけるようになった」との回答が全体の四五%と最も多くなっている。

第2節 家計の金融資産保護の現状

(平均的な家計の預貯金部分は十分保護される)
 総務庁「貯蓄動向調査」によると、九八年(十二月末時点)の一世帯当たり(全世帯ベース)の平均金融資産額は一千六百六十万円であるが、金融機関へ預け入れされている金融資産額は一千六百十三万円である。金融機関預け入れ金融資産の内訳をみると、定期性預貯金の割合が四九%と最も高く、次いで生命保険等の割合が三一%となっている。
 この家計の金融機関預入金融資産のうち、銀行等と郵便局への預貯金残高計(四七%)は、それぞれ預金保険法及び郵便貯金法によって保護される。つまり、平均的な家計金融資産の預貯金部分(全資産の五割)については、既存の制度によって十分に保護されている。

第3章 人的能力向上への家計支出

 本章では、家計の消費動向のうち、特に人的能力を向上させるために、家計がどのような支出を行っているか調べる。

(九五年以降伸びている情報通信関係支出)
 総務庁「家計調査」により、インターネットの利用に関係すると考えられる支出の動向を探る。具体的には、「パソコン・ワープロ」、「通信機器(電話機、携帯電話等)」及び「電話通信料」の三項目の合計を「情報通信関係支出」とすると、一世帯当たりの支出金額は九千五円(九九年一〜六月の月平均値、全世帯)となっている。全家計支出に占める割合は二・八%と、九〇年代前半の一・八%から大きく上昇している。消費が低迷する中で、家計は情報通信関係については活発な支出を行っていることがわかる。

むすび

(不確実性に立ち向かう場合に必要な安全ネット)
 新経済計画「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」が述べるように、これからの日本経済にとっての鍵は、家計や企業がリスクを取ることである。そのため、リスクが取りやすくなるような環境が家庭、社会や市場において生まれてくることが大切である。その時、不運にして失敗した場合でも、救済し再挑戦の機会を与える役割を果たすのが、安全ネットである。したがって、安全ネットが適切に張られているかどうかが、人々が個人では対処できない不確実性に立ち向かっていく上で重要である。
 雇用については、雇用保険が安全ネットになっている。失業するかもしれないというリスクが手当てされ、同時に、失業給付が当面の生活を保障することによって所得再分配の役割を果たしている。新経済計画が述べるように、自立した「個」を基盤とした経済社会がこれからのあるべき姿である。このような経済社会にふさわしい雇用保険の設計が求められている。
 しかし、失業給付を受け取るだけでは、失業者が再挑戦することにはならない。失業問題に対処するには、個人の意欲と雇用の創出が鍵を握る。個人は、時代の流れに合わせて知識を深め技能を磨く意欲を持つことが大切である。雇用創出については、何よりもまず、マクロ経済が成長軌道に乗ることが優先課題である。同時に、公共部門や企業の雇用創出努力が実を結ぶことも必要である。こうした両面の動きが失業問題の解決につながる。

(人的能力の拡充が安全ネットの一つとして期待)
 高い経済活力を維持していくためには、努力が報われることが基本になる。努力が報われ、成果に結実するには、人々の知識や技能がチャンスに的確に対応していることが条件になる。つまり、創出される仕事の機会を積極的に活用していくためには、人々の仕事に対する能力がチャンスに適合していることが不可欠である。能力にミスマッチがあれば、チャンスを生かしきれない。
 この意味において、人的能力の拡充は経済活性化に不可欠なインフラである。優れた人的能力は生活向上の基礎であり、経済社会の安全ネットとなり得る。それは、マクロ経済の生産性を高めるインフラ整備(社会資本)と両輪になるべきものである。拡充すべき人的能力には、英語を含む情報活用能力、起業するベンチャー精神が焦眉の急であるが、より広い意味では日常の健康、老いても元気な運動能力なども含められよう。強化されるべき具体的な職業能力については、流動的で厚みのある労働市場における市場の評価が指針を与えよう。そうしたメカニズムが働くためには、規制緩和を進め、多様性があり水準の高い人的能力が流動性の高い労働市場を形成していくことが必要である。さらに、そのような競争型社会の到来を、個人も企業も許容することが求められている。
 ただし、個々人がすべての能力向上に専心しようとしても、一度にできることには限界がある。あるいは、すべての人が同一の職業能力を強化してしまったら、その結果は努力が報われるものにはならないであろう。必要なのは、自らの将来設計を考えて、進路にとって合理的な能力強化を戦略的に行っていくための自己選択である。変化に対応する頑健さを増すための人生設計が求められている。その時、どのような能力を身に付けるか迷うこともあろう。その能力が社会で必要とされていると考えているのか、有利と考えるのか、自分が好きなのかは、個人が選択する場合の一つの基準になろう。大切なのは、将来の自己実現につながるのか、楽しみをもって自分の可能性を広げられるのか、それぞれの人が納得できることである。
 人的能力の拡充が安全ネットとなることが期待されるが、それは人々の生活を保障する社会保障制度の役割を軽んじることを決して意味しない。人々が個人の力のみでは対処し得ない生活の安定を脅かすリスクにさらされた場合等に、それを救済する制度として安心でき効率的な社会保障制度は重要な役割を果たす。それに加え、一つの安全ネットとして、人的能力の拡充が考えられるが、人的能力を高めることはそもそも期間を必要とし、その経済効果は中期的な過程を経て現れてくるものである。

(機会の均等と若者への配慮が重要)
 これからの経済社会では、自らの知識や技能を正確に見極め、不足している人的能力への投資を行う人が多くの報酬を手にする道が開かれている。これはいつの世でもあることである。しかし、先行して成功した人の収入が、遅れてしまった人の収入を大きく上回ってしまい、その傾向が加速してしまう恐れもある。個人の努力は十分に評価されることが大切であるが、学校教育、職業選択や就業機会、就職後の教育訓練などにおいて機会の平等を十分保証していかなければならない。
 二十代若者の転職傾向が高まるなかで、すぐには職につかず失業する人が増えている。こうした若者の失業が長期化する傾向にあることは、高失業に悩む欧州で経験済みである。また、二十代高学歴者には無業者が急増している。職を持ち就業を続けることは、時代の流れに即して人的能力を向上させていく貴重な機会である。失業はその機会を奪うことになる。このような事態が悪循環として進行すれば、失業者がいつの日にか社会的に疎外されてしまう結果になりかねない。したがって、こうした結果にならないように、若者が時代に合った能力を意欲的に身に付けることのできる仕組みや、若者のやる気を実現させるための配慮がとりわけ重要となろう。

(人的能力向上への課題と施策の支援)
 最後に、人々が人的能力を向上させ、その能力を発揮していくときに遭遇する課題と、必要となる施策の支援を整理しておこう。
 第一に、雇用形態の多様化を踏まえ、自立した「個」を基盤とした経済社会にふさわしい様々な施策の配慮が必要となっている。また、人々が少ない摩擦で転職できるような支援体制を拡充していくことも不可欠である。
 第二に、自己啓発意識の高まりに答えるために、人的能力向上に資する教育面において、内容の見直し、受入体制や施設の拡充、費用負担の軽減などの施策が引き続き実施されることが求められる。また、企業においても、人々の自己啓発の意欲に答えるような就業形態を工夫し、教育訓練を実施していくことが大切である。
 第三に、情報活用能力は、これからの経済社会で最も必要となる人的能力の一つである。子供のうちからその能力を身につけていくことが重要となっている。
 第四に、人的能力を向上させるための機会の平等は、すべての人にとって確保されるべきである。特に、障害を持つ人に対しても、自己の能力に応じて人的能力を向上させる機会、自らの意思で社会に参加しうる機会を持てるようにすることが必要である。
 さらに、以下のような課題があることも忘れてはならない。
 一つには、多様な雇用形態にふさわしい社会的器がまだ不足している。例えば、育児施設が親の育児需要を満たすには不十分であり、育児の壁に当たって、仕事に対するやる気と実力の発揮が思い通りにいかない人もいる。こうした人々には、育児施設を充実させることが求められる。
 二つには、人的能力を向上させるために必要となる費用負担が課題である。家計が費用を負担する場合には、住宅、医療、公共料金等の生活コストが低下し、家計のフトコロが豊かになることが望ましい。
 三つには、人々の能力向上を支援するために最も有効な枠組みは、能力向上に対するインセンティブが生まれることである。また、転職に不利にならないようにし、中立的であるためには、確定拠出型年金の導入を含む企業年金のポータブル化などが重要な役割を担う。

 かつては企業や会社が生活の拠り所となり、安心を提供していた。しかし、今や必ずしもそれが十分には当てはまらなくなった。人々は失業の高まりを不安に思い、雇用をめぐる環境の変化の帰結に対して慎重になっている。変化に直面して、人々が心配になるのは極めて当然のことである。個人では対処できない不確実性を可能な限り低めていくのは、政府の務めである。あわせて、人々が自らの能力向上に積極的に取り組み、チャレンジへの自信をもつことができれば、国民を取り巻く変化から自己選択に基づいてさらなる生活の豊かさを生み出すことが可能となろう。

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月例経済報告(十二月報告)


経済企画庁


 概 観

 我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、秋口に比べ若干の改善がみられるが、収入が低迷していることから、足踏み状態を脱していない。住宅建設は、マンションは堅調だが、持家及び貸家が減少したため、直近はやや水準を下げている。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、事業の実施は前年並みに進んでいるが、着工は低調に推移している。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産は、持ち直しの動きがみられる。
 雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果に加え、アジア経済の回復などの影響で、緩やかな改善が続いている。
 政府は、将来の公需の鈍化等が景気減速をもたらしかねないとの懸念を払拭しつつ、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築くため、先般決定した経済新生対策を強力に推進する。

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 我が国経済
需要面をみると、個人消費は、秋口に比べ若干の改善がみられるが、収入が低迷していることから、足踏み状態を脱していない。住宅建設は、マンションは堅調だが、持家及び貸家が減少したため、直近はやや水準を下げている。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、事業の実施は前年並みに進んでいるが、着工は低調に推移している。
 十一年七〜九月期(速報)の実質国内総生産は、前期比一・〇%減(年率三・八%減)となり、うち内需寄与度はマイナス一・三%となった。
 産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、鉱工業生産は、持ち直しの動きがみられる。企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。
 雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十一月は百四円台から百六円台で推移した後、月末には百二円台に上昇した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、下げ止まっている。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十一月は上昇した。長期金利は、十一月は横ばいで推移した。株式相場は、十一月は上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、十月は前年同月比三・五%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
 海外経済
主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年四〜六月期前期比年率一・九%増の後、七〜九月期は同五・五%増(速報値)となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。連邦準備制度は、十一月十六日に、公定歩合を〇・二五%引き上げ五・〇〇%、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を〇・二五%引き上げ五・五〇%とし、金融政策姿勢を「引締め」から「中立」へ変更した。十一月の長期金利(三十年物国債)は、月前半は低下したものの後半は上昇し、月初と月末を比較するとやや上昇した。株価(ダウ平均)は、中旬に上昇したが、下旬はやや下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気は改善している。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。失業率は低下している。
 国際金融市場の十一月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。
 国際商品市況の十一月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬にかけ二〇七ポイント目前の水準まで上昇したものの、その後は二〇三ポイント前後のレンジ内で上下した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、下旬にかけては湾岸危機以来となる二十六ドル台を記録した。

1 国内需要
―足踏み状態を脱していない個人消費―

 実質国内総生産(平成二年基準、速報)の動向をみると、十一年四〜六月期前期比一・〇%増(年率三・九%増)の後、十一年七〜九月期は同一・〇%減(同三・八%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はマイナス一・三%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はプラス〇・四%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比〇・三%減、民間企業設備投資は同二・一%減、民間住宅は同三・二%減となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比四・七%増、財貨・サービスの輸入は同二・四%増となった。
 個人消費は、秋口に比べ若干の改善がみられるが、収入が低迷していることから、足踏み状態を脱していない。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で九月二・九%減の後、十月(速報値)は二・三%減(季節調整済前月比〇・七%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比二・四%減、勤労者以外の世帯では同二・三%減となった。形態別にみると、耐久財等は減少、非耐久財等は増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比二・三%減、勤労者世帯では同三・〇%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で九月〇・八%増となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で九月一・八%減の後、十月(速報値)は〇・二%減(季節調整済前月比一・六%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で九月五・〇%減の後、十月(速報値)一・三%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で九月一・四%減の後、十月〇・三%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で十一月(速報値)は三・一%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で十月は九・六%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、十月は前年同月比で国内旅行が一・八%減、海外旅行は八・七%増となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で九月〇・六%増の後、十月(速報)は〇・一%減(事業所規模三十人以上では同〇・六%増)となり、うち所定外給与は、十月(速報)は同二・六%増(事業所規模三十人以上では同一・六%増)となった。実質賃金は、前年同月比で九月〇・九%増の後、十月(速報)は〇・六%増(事業所規模三十人以上では同一・四%増)となった。
 住宅建設は、マンションは堅調だが、持家及び貸家が減少したため、直近はやや水準を下げている。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で九月一・三%減(前年同月比一〇・五%増)となった後、十月は九・六%減(前年同月比〇・六%減)の九万五千戸(年率百十四万戸)となった。十月の着工床面積(季節調整値)は、前月比一二・一%減(前年同月比一・九%増)となった。十月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比一七・〇%減(前年同月比四・九%減)、貸家は同七・九%減(同一一・四%減)、分譲住宅は同一・六%減(同三〇・〇%増)となっている。
 設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。
 当庁「法人企業動向調査」(十一年九月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で十一年四〜六月期(実績)七・五%増(うち製造業五・三%増、非製造業七・三%増)の後、十一年七〜九月期(実績見込み)は六・〇%減(同一〇・〇%減、同三・三%減)となっている。年度計画では、前年比で十年度(実績)五・三%減(うち製造業六・三%減、非製造業四・八%減)の後、十一年度(計画)は九・四%減(同一一・三%減、同八・三%減)となっている。
 なお、十一年四〜六月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で一三・四%減(うち製造業二四・六%減、非製造業六・六%減)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で八月は二・七%増(前年同期比四・一%減)の後、九月は四・六%増(同六・七%減)となり、基調としては、製造業を中心とした底固めへの動きが見られ、今後の受注動向を注視していく必要がある。
 なお、十〜十二月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で二・八%減(前年同期比四・七%減)と見込まれている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、前年を下回る水準が続いており、十月は季節調整済前月比一九・一%減(前年同月比一五・五%減)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比二七・二%減(前年同月比二〇・六%減)、非製造業は同一六・三%減(同一四・五%減)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、事業の実施は前年並みに進んでいるが、着工は低調に推移している。
 公共工事着工総工事費は、前年同月比で八月七・四%減の後、九月は一〇・八%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で九月一五・三%減の後、十月は一八・四%減となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で九月一五・三%減の後、十月は三四・八%減となった。実質公的固定資本形成は、十一年四〜六月期に季節調整済前期比二・八%増の後、十一年七〜九月期は同八・五%減となった。
また、実質政府最終消費支出は、十一年四〜六月期に季節調整済前期比一・三%減の後、十一年七〜九月期は同〇・九%増となった。

2 生産雇用
―持ち直しの動きがみられる生産―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産・出荷は、持ち直しの動きがみられる。
 鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で九月〇・六%減の後、十月(速報)は、化学、石油・石炭製品等が増加したものの、輸送機械、金属製品等が減少したことから、二・三%減となった。また、製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で十一月は電気機械、輸送機械等により五・〇%増の後、十二月は輸送機械、化学等により一・一%減となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で九月〇・一%増の後、十月(速報)は、資本財、生産財等が減少したことから、二・三%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で九月〇・二%減の後、十月(速報)は、石油・石炭製品、化学等が増加したものの、輸送機械、電気機械等が減少したことから、一・四%減となった。また、十月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は一〇〇・六と前月を〇・五ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産は十月は減少し、在庫は十月は減少した。電気機械では、生産は二か月連続で減少し、在庫は三か月連続で減少した。化学では、生産は十月は増加し、在庫は十月は増加した。
 第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(九月調査、季節調整値)でみると、八月一・三%増の後、九月(速報)は、運輸・通信業、電気・ガス・熱供給・水道業等が増加したものの、サービス業、卸売・小売業,飲食店等が減少した結果、前月比〇・九%減となった。
 雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、九月〇・四七倍の後、十月〇・四八倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、九月〇・八八倍の後、十月〇・九一倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、九月は前年同月比〇・一%増(前年同月差八万人増)の後、十月は〇・一%減(同七万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、九月前年同月比〇・一%減(季節調整済前月比〇・〇%)の後、十月(速報)は同〇・二%減(同〇・一%減)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・五%減)、産業別には製造業では同二・一%減となった。十月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差二万人減の三百十三万人、完全失業率(同)は、九月四・六%の後、十月四・六%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では九月前年同月比七・七%増(季節調整済前月比二・〇%増)の後、十月(速報)は同五・七%増(同〇・七%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比四・三%増)。
 また、労働省「労働経済動向調査」(十一月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、引き続き高い水準となっているものの、七〜九月期はやや低下した。
 企業の動向をみると、企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(九月調査、季節調整値)でみると、十一年七〜九月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」−「減少」)は、「減少」超幅が縮小した。また、十一年七〜九月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」−「下降」)は「下降」超幅が縮小した。
 また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(九月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は、十一年七〜九月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は、十一年七〜九月期は「悪化」超幅が縮小した。
 企業倒産の状況をみると、おおむね横ばいとなっている。
 銀行取引停止処分者件数は、十月は九百五十三件で前年同月比一八・五%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、小売業で二五・九%、製造業で二〇・四%の減少となった。

3 国際収支
―輸出は、アジア向けを中心に、増加―

 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で九月三・五%増の後、十月は〇・九%減(前年同月比六・一%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が増加した。
 輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で九月二・一%減の後、十月四・五%減(前年同月比八・五%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、中東、アメリカ等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、九月に一兆一千五百六十億円の黒字の後、十月は一兆一千四百二十四億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 九月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、六千三百六十六億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、八千百十七億円となった。投資収支(原数値)は、六千六百七十一億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、一千九百六十六億円の黒字となった。
 十一月末の外貨準備高は、前月比八億ドル減少して二千七百二十億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十一月は百四円台から百六円台で推移した後、月末には百二円台に上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、十一月は百八円台から百十円台で推移した後、月末には百三円台に上昇した。

4 物価
―国内卸売物価は、下げ止まり―

 国内卸売物価は、下げ止まっている。
 十一月の国内卸売物価は、電気機器(ルームエアコン)等が下落したものの、石油・石炭製品(C重油)等が上昇したことから、前月比保合い(前年同月比〇・六%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比〇・七%の下落(前年同月比八・〇%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比〇・二%の下落(前年同月比二・八%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・一%の下落(前年同月比一・七%の下落)となった。
 企業向けサービス価格は、十月は前年同月比〇・九%の下落(前月比保合い)となった。
 商品市況(月末対比)は紙・板紙等は上昇したものの、繊維等の下落により十一月は下落した。十一月の動きを品目別にみると、上質紙等は上昇したものの、毛糸等が下落した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で九月保合いの後、十月は一般食料工業製品が上昇から保合いとなったこと等により〇・一%の下落(前月比〇・一%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で九月〇・二%の下落の後、十月は昨年の生鮮食品の上昇の影響等により〇・七%の下落(前月比〇・二%の上昇)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十月〇・二%の下落の後、十一月(中旬速報値)は、繊維製品の下落幅の拡大等により〇・三%の下落(前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で十月〇・九%の下落の後、十一月(中旬速報値)は昨年の生鮮食品の上昇の影響等により一・三%の下落(前月比〇・五%の下落)となった。

5 金融財政
―株式相場は、上昇―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十一月は上昇した。長期金利は、十一月は横ばいで推移した。株式相場は、十一月は上昇した。M+CDは、十月は前年同月比三・五%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、十一月は横ばいで推移した。二、三か月物は、十一月は上昇した。
 公社債市場をみると、国債利回りは、十一月は横ばいで推移した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、十月は短期は〇・〇五八%ポイント上昇し、長期は〇・〇三四%ポイント上昇したことから、総合では前月比で〇・〇四一%ポイント上昇し一・八一一%となった。
 マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、十月(速報)は前年同月比三・五%増となった。また、広義流動性は、十月(速報)は同三・三%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、十一月(速報)は前年同月比五・七%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後二・一%減)となった。十一月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は七千二百二十億円(うち銀行起債分一千百億円)となった。
 企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
 株式市場をみると、日経平均株価は、十一月は上昇した。

6 海外経済
―原油価格、湾岸危機以来の高値―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年四〜六月期前期比年率一・九%増の後、七〜九月期は同五・五%増(速報値)となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は十月前月差二六・三万人増の後、十一月は同二三・四万人増となった。失業率は十一月四・一%となった。物価は総じて安定している。十月の消費者物価は前年同月比二・六%の上昇、十月の生産者物価(完成財総合)は同二・七%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。連邦準備制度は、十一月十六日に、公定歩合を〇・二五%引き上げ五・〇〇%、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を〇・二五%引き上げ五・五〇%とし、金融政策姿勢を「引締め」から「中立」へ変更した。十一月の長期金利(三十年物国債)は、月前半は低下したものの後半は上昇し、月初と月末を比較するとやや上昇した。株価(ダウ平均)は、中旬に上昇したが、下旬はやや下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気は改善している。実質GDPは、ドイツ四〜六月期前期比年率〇・二%増、フランス七〜九月期同四・二%増(速報値)、イギリス七〜九月期同三・六%増(改訂値)となった。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ九月前月比一・〇%減、フランス九月同〇・一%減、イギリス九月同〇・二%増)。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ十月一〇・五%、フランス十月一一・〇%、イギリス十月四・二%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ十一月前年同月比一・〇%、フランス十月同〇・八%、イギリス十月同一・二%)。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。失業率は低下している。
 国際金融市場の十一月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、十一月三十日現在一〇六・五、十月末比一・〇%の減価となっている。内訳をみると、十一月三十日現在、対円では十月末比一・九%減価、対ユーロでは同四・五%増価した。
 国際商品市況の十一月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬にかけ二〇七ポイント目前の水準まで上昇したものの、その後は二〇三ポイント前後のレンジ内で上下した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、下旬にかけては湾岸危機以来となる二十六ドル台を記録した。





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消費者物価指数の動向


―東京都区部(十一月中旬速報値)・全国(十月)―


総 務 庁


◇十一月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・五となり、前月比は〇・五%の下落。前年同月比は八月〇・三%の上昇、九月〇・一%の下落、十月〇・九%の下落と推移した後、十一月は一・三%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・八となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は八月〇・一%の下落、九月〇・〇%、十月〇・二%の下落と推移した後、十一月は〇・三%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇〇・九となり、前月に比べ一・五%の下落。
  生鮮魚介は〇・四%の下落。
   <値上がり> ぶり、さんまなど
   <値下がり> あじ、えびなど
  生鮮野菜は一二・一%の下落。
   <値上がり> トマト、えのきだけなど
   <値下がり> ほうれんそう、はくさいなど
  生鮮果物は一一・五%の下落。
   <値上がり> ぶどう(巨峰)、バナナなど
   <値下がり> みかん、かきなど
(2) 家具・家事用品は九二・四となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  家庭用耐久財は〇・五%の上昇。
   <値上がり> 石油ストーブなど
(3) 被服及び履物は一〇五・一となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  衣料は一・一%の下落。
   <値下がり> 婦人ブレザーなど
(4) 教養娯楽は一〇〇・三となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  教養娯楽サービスは〇・三%の下落。
   <値下がり> 宿泊料など
(5) 諸雑費は一〇三・一となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  理美容用品は一・二%の下落。
   <値下がり> ヘアリンスなど

三 前年同月との比較

 ○ 上昇した主な項目
  家賃(〇・六%上昇)、授業料等(二・〇%上昇)、菓子類(三・五%上昇)
 ○ 下落した主な項目
  生鮮野菜(三〇・〇%下落)、生鮮果物(一六・〇%下落)、衣料(二・六%下落)、教養娯楽用品(三・三%下落)
  (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・六となり、前月と変わらなかった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・六となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。

◇十月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇二・六となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は七月〇・一%の下落、八月〇・三%の上昇、九月〇・二%の下落と推移した後、十月は〇・七%の下落となり、下落幅は前月に比べ〇・五ポイント拡大。これは、生鮮野菜が前年の価格水準を下回ったことなどによる。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・四となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は五月から九月までそれぞれ〇・〇%で推移した後、十月は〇・一%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇三・三となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  生鮮魚介は一・四%の下落。
   <値上がり> いか、かつおなど
   <値下がり> さんま、ぶりなど
  生鮮野菜は四・八%の上昇。
   <値上がり> トマト、ねぎなど
   <値下がり> ほうれんそう、はくさいなど
  生鮮果物は一・一%の上昇。
   <値上がり> バナナ、ぶどう(巨峰)など
   <値下がり> みかん、なしなど
(2) 光熱・水道は一〇一・四となり、前月に比べ〇・五%の上昇。
  電気・ガス代は〇・六%の上昇。
   <値上がり> 電気代など
(3) 家具・家事用品は九四・一となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は〇・八%の下落。
   <値下がり> ルームエアコンなど
(4) 被服及び履物は一〇七・八となり、前月に比べ〇・九%の上昇。
  衣料は一・六%の上昇。
   <値上がり> 婦人スラックス(冬物)など
(5) 交通・通信は九七・八となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  自動車等関係費は〇・二%の上昇。
   <値上がり> ガソリン(レギュラー)など
(6) 教養娯楽は九九・九となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  教養娯楽サービスは〇・七%の上昇。
   <値上がり> 宿泊料など

三 前年同月との比較

 ○ 上昇した主な項目
  自動車等関係費(一・〇%上昇)、授業料等(一・七%上昇)、たばこ(七・八%上昇)
 ○ 下落した主な項目
  生鮮野菜(一八・七%下落)、生鮮果物(九・三%下落)
  (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇二・一となり、前月と変わらなかった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇二・一となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。



















     ◇     ◇     ◇

     ◇     ◇     ◇

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二十歳からの義務 国民年金の加入


親の世代の老後を支え、自分の老後に備えるために

 日本に住む二十歳以上六十歳未満のすべての人は、国民年金への加入が義務づけられています。二十歳を迎えたばかりの皆さんは、「年金」なんてまだまだ先の話と思うかもしれませんが、実は、若い世代にとっても、身近で大切なものなのです。
 国民年金は、働く世代が納める保険料でその親の世代の生活を支え、自分たちの老後はその子どもの世代が支えるというように、世代と世代の支え合いによって成り立つ公的年金制度です。少子化・高齢化が進んでいる現代社会では、もし、公的年金がなかったら、両親の生活費を負担したり、自分の老後に備えて貯蓄したりすることは、今よりもずっとたいへんになります。公的年金制度は、そうした個人の負担を軽くし、子どもの世代みんなで親の世代を扶養するという仕組みになっているのです。
 公的年金のメリットは、物価の変化に応じて年金額が改定され、生涯にわたって支給されるということです。また、老後に受け取る老齢年金だけでなく、加入期間中に病気やけがで障害が残ったときには障害年金、加入者が死亡したときには残された妻子に遺族年金として支給される仕組みもあり、生涯にわたって家族の安心を守る柱となっています。
 国民年金への加入手続きは、市区町村役場の年金窓口で受け付けています。学生やフリーター、自営業・その配偶者の方は、二十歳になったら自分で、加入手続きを行ってください。二十歳前に就職し、職場の厚生年金や共済組合に加入している人は、新たに手続きする必要はありません。
 保険料をきちんと納めていないと、将来、自分が受け取る年金額が少なくなったり、最悪の場合、年金が受けられなくなったりします。所得のない人には、その期間の保険料を免除し、後で納められるようにできる制度もあります。詳しくは、市区町村役場の年金窓口にお問い合わせください。
(厚生省)

言葉の履歴書


地球環境基金

 地球環境基金は、国からの出資金や民間からの拠出金、また、皆さんから寄せられた寄付金などによって、一九九三(平成五)年に創設されました。
 基金の運用益などにより、国内はもとより、開発途上地域で環境保全に取り組む民間団体(NGO)の活動に資金を助成したり、人材育成のための研修や情報の提供などを行ったりしています。
 具体例として、次のようなことがあります。国内での取り組みとしては、「空缶等の回収によるリサイクル活動」「地球温暖化対策のため、開発が求められている電気自動車の普及啓発活動」「さまざまな人々のネットワークづくりによる大気、水環境保全活動」など。また、海外での取り組みとしては、「絶滅の恐れのある野生生物の保護活動」「砂漠化が進む地域における植林等によるその防止活動」などです。
 地球環境基金への寄付、その他の問い合わせは「環境事業団地球環境基金部」пZ三(五二五一)一五三五までお願いします。
(環境庁)



    <2月2日号の主な予定>

 ▽世界経済白書のあらまし……………経済企画庁 

 ▽毎月勤労統計調査(十月分)………労 働 省 

 ▽労働力調査(十月)…………………総 務 庁 




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