官報資料版 平成12年2月9日




                  ▽我が国の文教施策のあらまし…………………文 部 省

                  ▽平成十年度体力・運動能力調査の結果………文 部 省

                  ▽家計収支(九月分)……………………………総 務 庁











我が国の文教施策のあらまし


進む「教育改革」


平成11年度「我が国の文教施策」(教育白書)は、平成11年12月7日の閣議に報告され、同日公表された。

文 部 省


第1編 進む「教育改革」

はじめに

 二十一世紀の到来を目前に控えた今日、政治、行財政、経済構造など社会の様々な分野において従来のシステムを見直した上で大胆な改革が進められており、あらゆる社会システムの基盤である教育分野においても、これまでの教育の成果を踏まえつつ、新しい時代に適合し、これを先取りするような改革を積極果敢に進めていく必要がある。
 このため、当省では、現在、「心の教育の充実」、「個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度の実現」、「現場の自主性を尊重した学校づくりの促進」、「大学改革と研究振興の推進」という四つの視点から思い切った教育改革を進めている。
 当省では、引き続き教育改革を進め、教育をより良いものにしていく努力を続けていくが、学校はもちろん、家庭や地域社会、企業など幅広い関係者の理解を得ながら、一体となって進めていかなければ改革の実をあげることはできない。この『我が国の文教施策』を通じて、教育改革の目指すものを理解し、一体となって力を結集していただき、新世紀に向け、未来の担い手である子どもたちが心豊かにたくましく成長できるように教育改革を共に進めていただくことを期待する。

第1部

第1章 教育改革による成果

 昭和五十九年(一九八四年)に臨時教育審議会が発足してから、十五年が経過した。この間、当省では、臨時教育審議会の四次にわたる答申に沿って教育改革を進めてきた。
 その結果、我が国の教育は、子ども一人一人の個性や能力を生かす教育システム、生涯にわたり能力・適性や意欲・関心に応じて学ぶことができる生涯学習社会の実現に向けて大きく変わりつつある。
 こうした教育改革の姿を、「生涯学習体制の整備」、「初等中等教育の改革」、「高等教育の改革」、「学術の振興」、「文化の振興」、「スポーツの振興」、「国際化への対応」、「情報化への対応」、「教育行財政の充実」の項目に沿って、臨時教育審議会発足時と現在との違いを比較表により分かりやすく示している。

第2章 教育改革のこれまでの歩み

 これまでの教育改革に関する事項、臨時教育審議会、中央教育審議会をはじめとする各審議会からの答申等の内容を簡潔に説明するとともに、社会の主な出来事についても併記するなど、臨時教育審議会発足以降からの教育改革の歩みを分かりやすく年表形式でまとめている。
 これにより、臨時教育審議会や中央教育審議会をはじめ各審議会からの答申等に沿って、様々な制度の創設や改正などが進められてきた様子が分かる。

第3章 教育改革の今後の展開

 現在、当省では、教育改革の具体的課題やスケジュールを明らかにした「教育改革プログラム」に沿って教育全般にわたる改革を進めている。
 このプログラムに基づき進めていく教育改革の今後の展開について、「心の教育を充実する」、「個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度を実現する」、「現場の自主性を尊重した学校づくりを促進する」、「大学改革と研究振興をすすめる」といった観点からまとめている。
 @ 心の教育を充実する
  ・ 地域や家庭における教育力の充実
  ・ 学校は心を育てる場に
  ・ 生きる力の育成とゆとりある学校生活の実現
  ・ 子どもの悩みを受け止められる教員の養成
 A 個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度を実現する
  ・ 中高一貫教育の推進
  ・ 大学・大学院入学資格の弾力化
  ・ 初等中等教育と高等教育との接続の改善
  ・ 公立小・中学校の通学区域の弾力化
  ・ 幼稚園と保育所の連携強化
 B 現場の自主性を尊重した学校づくりを促進する
  ・ 主体的・積極的な教育の展開
  ・ 学校の自主性・自律性の確立
  ・ 自由で闊達な社会教育の推進
 C 大学改革と研究振興をすすめる
  ・ 二十一世紀の大学像の策定
  ・ 留学生交流の推進
  ・ 学術研究と科学技術研究の総合的展開の推進
  ・ 産学連携による研究の活性化
  ・ 主要国首脳会議(サミット)を通じた教育改革の推進等

第4章 諸外国の教育改革の動向

 一九八〇年代、教育改革はアメリカやヨーロッパ諸国で、そして我が国を含むアジアの諸国で一斉に巻き起こった。各国の教育改革の潮流を形作った背景には、経済の面での国際競争が激しくなったことや科学技術の進歩、情報化の進展や国際化といった社会で様々に起こっている急速な変化、つまり、地球規模で起こった社会経済の急激な変化が、その一つとして挙げられる。
 また、第二次世界大戦後、だれもが教育を受けられる「教育の機会均等」を保障するために量的な拡大を図ってきた各国が、これを一応達成した後、今度はその質的な中身に関心を移すようになったことも、教育の内側からみた共通の傾向として認められる。
 このような各国の社会背景や教育改革が目指す方向について、日本の教育改革と比較しつつ記述している。

第2部 教育改革Q&A

 教育改革の動きをQ&A方式で分かりやすく紹介している。「生涯学習社会の実現に向けて」、「子どもたちの心を豊かにしよう」、「生きる力の育成とゆとりある学校生活の実現を目指して」、「子どもが伸びる教え方を見つけよう」、「先生も変わらなきゃ」、「学校を選べる時代がやってきた」、「学校は子どもと先生だけのものじゃない」、「教育こそ地方の時代」、「世界に通用する大学へ」、「大学に行くルートはひとつじゃない」、「大学入試はどうなるの?」、「博物館や公民館に行ってみよう」、「学術研究は将来への投資」、「目指せスポーツ大国」、「我が国の文化を守り育てよう」、「国際化の時代を生きる」、「情報化時代を先取りしよう」、「男女共同参画社会の実現に向けて」、「文部省+科学技術庁=文部科学省+α」の十九テーマの下に、合計六十三問のQ&Aにより教育改革に関する様々な疑問に回答している(後記質問一覧参照)。また、教育改革の特色ある取組や教育に関する最近の現状などについてもコラム形式で紹介している(後記コラム一覧参照)。

《質問一覧》


【生涯学習社会の実現に向けて】
 Q1 生涯学習というのは「いつでも、どこでも、だれでも」できる学習だそうですが、どうしても大人向けの学習というイメージがあります。子どもたちを含めてどのような学習を生涯学習と呼ぶのでしょうか?
 Q2 国立大学は、もっと地域の人たちなどに開かれたものであるべきではないでしょうか?
 Q3 大学を卒業して、社会人になって十年になりますが、自分の技術を高めるために、もう一度大学や大学院で学びたいと思っているのですが、何か特別な制度はあるのでしょうか?
 Q4 自宅で勉強しながら単位を取ることができる「放送大学」という大学があると聞いたのですが、どのような大学なのでしょうか?
【子どもたちの心を豊かにしよう】
 Q5 平成十四年度から完全学校週五日制が実施されるそうですが、私の子どもは第二、四土曜日が休みである今でさえも何をしたらいいのか迷っています。文部省として何か特別な取組を考えているのでしょうか?
 Q6 週末に子どもに自然体験や生活体験をさせようと思いますが、どこで何をしているかどうすれば分かるのでしょうか?
 Q7 子どもをどのように育てていいのか分からなくなってしまうことがあるのですが、親とは離れて住んでいるし、近所にも相談できる人はいません。私のような親に対するサポートは何かあるのでしょうか?
 Q8 これから、お年寄りの割合がどんどん増えてくる一方で、お年寄りとあまり接していない子どもたちが多くなっていると思います。このことからも、お年寄りと子どもたちが触れ合う機会をもっと増やしていく必要があるのではないでしょうか?
 Q9 私の子どもは,学校でいじめを受けています。担任の先生に相談をするのが一番いいことだとは思うのですが、先生にはなかなか相談できません。どうすればいいか迷っているのですが、何かいい方法はあるのでしょうか?
 Q10 私の家の近所では、みんな子どもを有名中学校に入れるために、夜遅くまで進学塾に通わせています。私の子どもも進学塾に通わせるかどうか迷っているのですが、どうしたらいいのでしょうか?
 Q11 最近、薬物を遊び感覚で使用する子どもが増えていると聞きます。子どもを持つ親としてもとても心配なのですが、この問題に対し文部省はどのような取組を行っているのでしょうか?
【生きる力の育成とゆとりある学校生活の実現を目指して】
 Q12 完全学校週五日制に向けて学習指導要領が改訂され、教育内容が大きく変わったと聞きましたが、今回の改訂のねらいと具体的内容はどのようなものなのでしょうか?
 Q13 今回の学習指導要領改訂の特色の一つとして、「総合的な学習の時間」が新設されたそうですが、抽象的でどのような時間なのか分かりません。具体的にどのような授業が行われるのでしょうか?
 Q14 小・中学校では、教育内容の厳選により、教える内容が三割も削減されるそうですが、この結果、子どもたちの学力が低下するなどの心配はないのでしょうか?
 Q15 高等学校の段階では、生徒一人一人がそれぞれの能力を十分伸ばすことが必要だと思いますが、今回の学習指導要領の改訂で高等学校の教育内容はどのようになるのでしょうか?
 Q16 子どもたちが実際にお店などで社会体験をすることは非常にためになることだと思います。学校教育の一環として、教室を離れて地域社会などでの体験学習を取り入れた授業は行われていないのでしょうか?
 Q17 病気や不登校などが原因で義務教育を受けられなかった場合、高校を受験することはできないのでしょうか?
【子どもが伸びる教え方を見つけよう】
 Q18 一年生の時は、子どもの数が八十一人だったのですが、二年生に進級した際に一人が転出してしまい、八十人になってしまいました。そのため、学級数が三クラスから二クラスになるとのことです。たった一人の子どもが減っただけで、学級数も減ることになるのでしょうか?
 Q19 中学校の社会の授業で社会福祉の勉強をして興味を持ったので、実際に社会福祉施設に行ってそこで働いている人の話を聞き、非常にためになり、ますます興味を持ちました。学校の授業の中でも、このように実際に働いている人に教えてもらうようなことがあってもいいのではないでしょうか?
 Q20 失業者などの雇用を確保するために、英語やコンピュータの先生として活用するという話を聞きましたが、どのようになっているのでしょうか?
【先生も変わらなきゃ】
 Q21 教育内容をいくら良くしても、結局は実際に子どもたちと直接接している先生がどのように教えるかにかかってくると思います。魅力ある先生を養成、採用するためにどのような取組が行われているのでしょうか?
 Q22 若い先生はもちろん、ベテランの先生も、もっと子どもを引き付ける授業ができるように基本を見直したり、新しいことを学んだりした方がよいと思うのですが、どのような研修が行われているのでしょうか?
 Q23 学校の中の常識は世間一般の常識からはかけ離れているなどとよく言われます。先生方も目を外に向け、学校外で様々な経験を積むために、どのような取組が行われているのでしょうか?
【学校を選べる時代がやってきた】
 Q24 中高一貫教育制度ができたと聞きましたが、中高一貫教育校とはどのような学校なのでしょうか? また、私の家のそばにはまだありませんが、今後どのくらいできるのでしょうか?
 Q25 僕は中学生です。自分で時間割を作っていろんな勉強ができる「総合学科」や「単位制」の高校があると聞いたのですが、どのような特色があるのでしょうか?
 Q26 公立の小・中学校については、入る学校が指定されるのですが、どうしても指定された学校に行かなければならないのでしょうか?
【学校は子どもと先生だけのものじゃない】
 Q27 私の家の近所には公民館と一緒になって建っている小学校があります。このような学校が他にもあるのでしょうか?
 Q28 学校が休みになる土日の校舎を使って、子どもたちや地域の人たち、学校の先生も自由に参加できるような学校をつくろうと思っているのですが、無理でしょうか?
【教育こそ地方の時代】
 Q29 地方分権の時代と言われますが、教育行政の分野では、今と比べて何がどのように変わるのでしょうか?
 Q30 学校は閉鎖的だとよく言われますが、そうした批判をなくすためにも、保護者や地域住民の意見を聞いたり、その意見を学校運営に反映していくことが必要ではないでしょうか?
 Q31 創意工夫を凝らした主体的な学校づくりを進めるためには,校長がリーダーシップを発揮する必要があると思いますが、どのような取組を進めているのでしょうか?
【世界に通用する大学へ】
 Q32 日本の学生は、「大学に入学しても、アルバイトばかりしたり、遊んでばかりいて、まじめに勉強しない」と言われていますが、このようなことに対して各大学ではどのように取り組んでいるのでしょうか?
 Q33 最近、ベンチャービジネスという言葉が新聞によくでていますが、こうした新しいビジネスを起こすような人材を育成するために、大学では何か取組を行っているのでしょうか?
 Q34 三年で大学を卒業できることになったと聞いたのですが、どのような場合に三年で卒業できるのでしょうか? また、多くの学生が三年での卒業の対象となるのでしょうか?
 Q35 私は今、大学で学んでいるのですが、他の大学の授業も受けてみたいと思っています。他の大学で受けた授業についても単位として認めてもらえるのでしょうか? また、専門学校での授業はどうでしょうか?
 Q36 私は大学院まで行って将来は研究者になりたいと思っているのですが、我が家の財政事情ではとても大学院まで行けるような状況ではありません。奨学金の制度はどのようになっているのでしょうか?
 Q37 国立大学が独立行政法人になると聞いたのですが、独立行政法人になると国立大学はどのような大学になるのでしょうか?
【大学に行くルートはひとつじゃない】
 Q38 高校二年を終えた段階で大学に入学できるようになったそうですが、本当なのでしょうか?
 Q39 高校ではいろいろな事情があり中退してしまったのですが、小さいころから興味のあった歴史について大学で勉強したいと考えています。高校を卒業していなくても大学を受ける方法はあるのでしょうか?
 Q40 専修学校の中には、卒業後、大学への入学資格が得られたり、大学へ編入学できたりする学校もあると聞いたのですが、本当なのでしょうか?
 Q41 大学を卒業していなくても大学院に入ることができるようになったと聞いたのですが、どのような人がこれから大学院に行けるようになるのでしょうか?
【大学入試はどうなるの?】
 Q42 近年、大学入試においても受験生の能力・適性を丁寧に見るための取組が行われていると聞きますが、各大学の取組はどのようになっているのでしょうか?
 Q43 大学入試センター試験は、どのような目的で実施されているのでしょうか?
【博物館や公民館に行ってみよう】
 Q44 この間子どもを連れて行った博物館には、いろいろな展示物があることはあるのですが、それを見てそこに書いてある説明を読むだけでは、子どもにとってはおもしろくないようでした。何か子どもが興味を持つような工夫をしている博物館はないのでしょうか?
 Q45 公民館は全国に一万七千以上もあると聞きましたが、この施設は、地域においてどのような役割を果たしているのでしょうか?
【学術研究は将来への投資】
 Q46 将来の優秀な研究者を育成するためには、子どもたちが大学等で行われている最先端の研究に身近に触れることのできるような機会を用意することも大切と考えます。何かそのような取組をしているところはあるのでしょうか?
 Q47 大学と企業が連携・協力していくことは、お互いにとってプラスになることだと思います。産学連携の推進のために、どのような取組が行われているのでしょうか?
【目指せスポーツ大国】
 Q48 ワールドカップサッカー大会に日本は初出場を果たし、我々に大きな感動を与えてくれました。二〇〇二年には、日本と韓国の共同開催となっており、日本の一層の活躍が期待されますが、二〇〇二年大会の準備はどのように進められているのでしょうか?
 Q49 中学生になったら好きなスポーツに打ち込みたいと思っているのですが、私が入る中学校にはやりたい運動部がありません。もっと身近にスポーツができるようにならないのでしょうか?
【我が国の文化を守り育てよう】
 Q50 美術品などの日本の文化財は世界に誇れるものだと思います。もっと外国に紹介し、文化財について興味を持ってもらうべきだと思うのですが、何かそのための取組を行っているのでしょうか?
 Q51 最近よく「世界遺産」という言葉を耳にしますが、これはどのようなものなのでしょうか?
 Q52 以前、テレビでミュージカルを観てとても感動しました。私たちもミュージカルに参加してみたいのですが、身近に劇団がありません。何かいい機会はないでしょうか?
【国際化の時代を生きる】
 Q53 中学校から高校にかけて六年間、学校で週に何時間も英語を勉強してきたはずなのですが、いまだに英語を習得しているとは言い難い状況です。私の努力が足りなかったのかもしれませんが、英語の授業をもっとコミュニケーションを重視したものにするべきではないでしょうか?
 Q54 国際化時代において、語学力が必要なのはよく分かりますが、日本や世界の歴史を知ること、日本人としての自覚と誇りを持つことなど、語学力と同様に大切なものがいくつかあると思います。このことについてどのように考えているのでしょうか?
 Q55 昭和五十八年に策定された「留学生受入れ十万人計画」は、二十一世紀初頭に達成できるのでしょうか? また、そのために、どのような取組が行われているのでしょうか?
 Q56 最近、地域で外国人を多く見かけるようになっていますが、外国人の人たちはどのようにして日本語を学習しているのでしょうか?
【情報化時代を先取りしよう】
 Q57 これからの時代はパソコンを使う必要がますます高まってくると思われますが、高等学校で新設される教科「情報」では、どのような授業が行われるのでしょうか?
 Q58 インターネットからはいろいろな情報を引き出すことができて非常に便利ですが、その一方で情報が無制限に流されるとか、プライバシーの問題などもあります。学校におけるインターネットの利用はどのようになっているのでしょうか?
 Q59 文部省が平成十一年七月から放送等を開始している「エル・ネット」とは一体どのようなものなのでしょうか?
【男女共同参画社会の実現に向けて】
 Q60 この間、男女共同参画社会基本法が成立したと聞きましたが、「男女共同参画社会」とは一体どのような社会なのでしょうか? また、教育とはどのようなかかわりがあるのでしょうか?
 Q61 幼稚園でも、その地域の共働きの家庭や幼児を持つ家庭への支援など、その機能を多様化できないでしょうか?
 Q62 近年、少子化が進行しているという話題をよく耳にします。子どもを産み育てたいと考えていながら、負担の重さが大きく意識されて、結婚や育児をためらう場合があるように思われますが、文部省としては、どのような対策を行っているのでしょうか?
【文部省+科学技術庁=文部科学省+α】
 Q63 二〇〇一年一月に中央省庁が再編されるそうですが、文部省はどのようになるのでしょうか?

《コラム一覧》


・ 二〇〇二年の小学五年生の一週間
・ 「大臣としゃべったよ!」
  〜子ども霞が関見学デー〜
・ 地域の商店街で子どもたちがお手伝い
  〜子どもインターンシップ〜
・ 金八先生も教育改革
・ いわゆる「学級崩壊」について
・ 江戸時代の学校? 塾? 「寺子屋」
・ 野菜作って、動物飼って、自炊しながら「通学合宿」【福岡県】
・ 子どもたちが語る「生活科」
・ 「せんせ あそぼ」
・ 地域に学ぶ中学生体験活動週間
  〜トライやる・ウィーク〜【兵庫県】
・ 明治時代の小学校
・ PTAで学校をつくってみよう!
・ 〜食の王国“うまいもんどころ いばらき”の農業教育〜
  地域との交流・地域での人材育成「さわやか農業教育推進事業」【茨城県】
・ 〜テーマは環境・教科書は琵琶湖・そして船上で新しい出会いや友情を〜
  湖上に浮かぶ学校「びわ湖フローティングスクール」【滋賀県】
・ 学力低下は本当に起きているの?
・ パリにある国際機関で働くKさんの一日
・ 台湾大地震
  〜はばたけ、台中日本人学校〜
・ みなさんも文部省に来てみませんか!
  〜文部省見学〜

第2編 文教施策の動向と展開

文教行政における行政改革への対応

 近年の行政改革は、中央省庁等改革、規制緩和、地方分権、情報公開、特殊法人改革等行政の各分野全般にわたっており、当省としては、教育改革を推進する上で、これらの行政改革との連携を図ることに留意しつつ、具体的な施策を展開している。
(1) 中央省庁等改革
 平成十三年一月に中央省庁再編により、文部省と科学技術庁を統合し、「文部科学省」を設置することになっている。
(2) 規制緩和
 臨時教育審議会の答申(昭和六十〜六十三年)において個性重視の原則が打ち出されて以来、教育改革の一環として規制緩和を推進してきている。
 平成十一年三月に閣議決定された「規制緩和推進三か年計画(改定)(計画期間:平成十〜十二年度)」において、当省としては、教育改革の観点を中心に幅広く検討を行い、「国立大学教官等の技術移転機関(TLO)の役員兼業を可能とする措置の実施等」など、新たに二十四項目を教育関係の規制緩和事項として盛り込んだ。
(3) 地方分権
 平成十一年七月に成立した「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」における当省関係法律の改正は、地方分権推進計画及び同計画において検討事項とされたものの具体化について提言を行った中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」(平成十年九月)に基づき、教育行政における地方分権を推進し、国、都道府県、市町村の役割分担の在り方を見直し、新たな連携協力体制を構築するため、教育委員会に関する制度の在り方等の見直し、社会教育及びスポーツ行政における必置規制の整理合理化等、文化財保護行政における権限委譲の推進等のほか、機関委任事務制度の廃止などを行うことを内容としている。
(4) 情報公開
 当省においては、その所管する審議会等について、審議の公開等に努めており、現在十四審議会(活動中の審議会のうち、専ら処分等の案件を審議する審議会を除いたもの)すべてが、会議又は議事録の公開を行っている。公開された議事録等については、当省の文書閲覧窓口において自由に閲覧できるほか、インターネット上の当省ホームページにおいても広く情報提供を行っている。加えて、平成十一年度からは、当省クリアリングシステム(所在案内)を整備し、様々な行政情報の所在案内の提供サービスを開始している。
(5) 特殊法人の改革
 従来から必要な見直しを進めており、昭和五十五年には十法人であった当省所管特殊法人は、現在七法人となっている。また、平成十一年三月には「国立教育会館の解散に関する法律案」を国会に提出し、同年五月に成立した。

第1章 生涯学習社会の実現に向けて

 当省は、多様な学習活動を総合的に推進し、生涯学習社会を構築するため、学校教育、社会教育、文化、スポーツの振興に関し、生涯学習に資する施策を実施するとともに、関係省庁との連携・協力に努めている。
 具体的には、生涯学習審議会の答申等に基づき、多様で総合的な学習機会の拡充、学習活動の成果に対する適切な評価と活用、生涯学習の振興の観点からのボランティア活動の支援・推進、生涯学習についての普及・啓発、平成十四年度の完全学校週五日制の実施に向けて、十三年度までに地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの活動を振興する体制を整備する「全国子どもプラン(緊急三ヶ年戦略)」の推進などの生涯学習振興の取組を進めている。

第2章 初等中等教育の一層の充実のために

 「ゆとり」のある学習活動の中で子どもたちに自ら考え、主体的に判断し、行動する能力、自らを律しつつ他人を思いやる心などの豊かな人間性といった「生きる力」を培うことを目指して、初等中等教育の改革を推進している。
 このような考え方に立ち、平成十年度に学習指導要領の改訂を行い、教育内容の厳選、選択学習の幅の拡大、総合的な学習の時間の創設などの改善を図っている。今後、その趣旨を教育関係者はもとより広く国民に周知するとともに、新学習指導要領の趣旨をできるだけ早く生かすため、十二年度から移行措置を実施することとしている。
 また、平成十一年度から、中高一貫教育制度が導入されたことを踏まえ、中高一貫教育校の設置を積極的に推進しているほか、引き続き総合学科の設置など、高等学校教育の改革を進めている。
 このほか、国際化・情報化への対応や、いじめ・不登校等の問題への取組や平成十一年八月に公布・施行された「国旗及び国歌に関する法律」についても紹介している。

第3章 高等教育の多様な発展のために

 平成十年十月の大学審議会答申「二十一世紀の大学像と今後の改革方策について ―競争的環境の中で輝く大学―」では、過去十年間にわたる大学改革を総括した上で、今後の大学改革についての提言がまとめられた。この提言を受け、学校教育法や大学設置基準等の法令の一部改正を行うなど、当省や大学等では大胆な大学改革を進めている。
 社会経済のさらなる高度化・複雑化や国際化の進展に伴い、大学等高等教育機関の教育研究の質の高度化及び人材育成に対する要請等の多様化への適切な対応が一層求められることになり、大学等では、大学審議会答申に基づき、学部段階の教育の充実と改革、大学院の充実と改革、組織運営体制の整備、多元的な評価システムの確立などに対応した改革を進めている。
 さらには、大学入学者選抜の改善、高等教育の整備充実、人材育成を支える育英奨学事業の充実、就職指導の充実に取り組んでいる。

第4章 私立学校の振興

 私立学校は、我が国の学校教育の量・質両面にわたる発展にとって極めて重要な役割を果たしている。
 このため、国は、私学の振興を重要な政策課題として位置付け、私立学校振興助成法の趣旨に沿って、私立学校の教育研究条件の維持向上及び私立学校に在学する学生生徒等の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに、私立学校の経営の健全性を高めるため、・経常費補助を中心とする私学助成事業、・日本私立学校振興・共済事業団における長期・低利の融資事業、・税制上の特例措置などの振興方策をとり、一層の充実に努めている。

第5章 社会教育の新たな展開を目指して

 社会教育は、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動であり、人々の多様な学習ニーズに対応するため、各種の学習社会の構築に向けて重要な役割を果たしている。
 平成十一年は、社会教育制度が発足してから五十年という節目に当たるが、社会の変化に伴う人々の多様化・高度化する学習ニーズや生涯学習社会の進展等の新たな状況に対応した社会教育のより一層の推進が求められている。
 成人及び高齢者の学習の促進、「生きる力」をはぐくむ青少年の体験活動の充実、心の教育の基礎となる家庭教育の充実、男女共同参画社会の形成に向けた学習活動の振興、学習成果を生かした社会参加の促進、少子化に対応した教育施策に取り組んでいる。

第6章 学術研究の振興

 学術研究は、真理の探究という人間の基本的な知的欲求に根ざし、新しい法則や原理の発見、先端的な学問領域の開拓などを目指して行われる普遍的な知的創造活動である。
 二十一世紀の学術研究及びそれを中核・基盤とする科学技術は、「二十世紀型科学技術」のもたらした文明の行き詰まりを克服し、新しい価値観の下に我が国の発展、さらには世界・人類の発展を期して、新たな文明の構築に貢献することを目指すものでなければならない。
 今後、「二十一世紀型科学技術」を発展させ、「新しい豊かさ」を目指す価値体系を構築するため、人文・社会科学と自然科学を統合した研究も含め、先導的・独創的な学術研究を推進する必要がある。新たな文明の構築に貢献し、「知的存在感のある国」を目指すことが必要だとして、平成十一年六月に学術審議会答申「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」がなされた。この答申を踏まえ、当省では、学術研究を取り巻く諸状況の変化に対応した創造的な学術研究の振興に努めている。
 また、学術研究を支える研究費や研究設備の充実、「ポストドクター等一万人支援計画」の推進、学術研究に不可欠な情報や資料の整備、地球環境科学や情報学研究などの基礎研究の重点的な推進、大学と産業界等との連携・協力の推進、学術国際交流の推進等を図っている。

第7章 心と体の健康とスポーツ

 国民一人一人が生涯にわたり心身の健康を保持・増進していくためには、健康に対する正しい知識・理解を持ち、健康に必要なことを実践していく習慣を身に付けることが大切である。このため、心身の健康を保持増進していくための基礎知識、能力、態度を培い、健康的な生活習慣を身に付けるとともに、今後、増大するゆとりや自由時間を主体的に活用し、豊かなスポーツライフを実現していくことが、心身の健康に大いに寄与するものである。また、スポーツが本来持つ多様な意義を考えると、生活に欠かせない文化として国民生活に根付くことが、活力ある、健康的な社会を実現することにもつながるものである。
 このため、健康教育の充実、スポーツ振興の基本的な方向、生涯スポーツの推進、競技スポーツの振興、スポーツ振興のための基盤づくり等の施策に取り組んでいる。

第8章 文化立国を目指して

 文化は、人として生きるためのあかし、生きがいであるとともに、国にとってはその最も重要な存立基盤でもある。また、文化は人々の創造性をはぐくみ、社会や経済に活力を生み出す源泉となるものであり、文化への投資は未来への先行投資といえる。とりわけ、子どもたちの「心の教育」が重要な課題となっている今日、教育の基礎となる文化の振興を一層図っていくことが必要である。
 このような認識の下、文化の振興を図り、文化を重視した国づくりを行うことにより、国民一人一人が真にゆとりと潤いを実感できる生活を実現するとともに、将来に向かって創造性に富んだ活力ある社会を形成していくことが必要である。
 このような観点から、文化庁においては、二十一世紀の文化立国の実現に向けた基本的な指針となる「文化振興マスタープラン」を平成十年三月に策定した。本プランに基づいて、文化立国の実現が国を挙げて取り組むべき課題であるとの認識の下に、現在、創造的な芸術文化の振興、文化財の保護をはじめとする伝統文化の継承・発展、地域における子どもの文化活動の推進、著作権制度の整備、文化の国際交流・協力など様々な文化振興施策を推進している。

第9章 教育・文化・スポーツの国際化に向けて

 国際化の時代にあって、世界各国と共生しつつ我が国の経済・社会の一層の発展を期するとともに、国民が各国の人々と物質のみならず精神的にも豊かな生活を分かち合うため、次の三つの課題への取組を強化し、国際化に対応した文教施策を図っていく必要がある。第一の課題は、日本人としての自覚とともに国際的な視野と経験を身に付け、二十一世紀の国際社会の中で主体的に生きる日本人を育成していくための諸施策の充実。第二の課題は、諸外国の人々とお互いの文化、習慣、価値観等を理解し合い、信頼関係を築いていくための、教育・学術・文化・スポーツの分野での国際交流の一層の推進。第三の課題は、我が国の国力と国際社会における地位にふさわしい国際貢献を行い、諸外国の我が国への期待にこたえていくとの観点からの、人づくり等に貢献する国際協力の積極的な推進である。
 当省では、国連等の国際的な動きをも踏まえ、関連施策の一層の充実を図っている。
 また、平成十一年六月にドイツのケルンで開催された第二十五回主要国首脳会議(ケルン・サミット)において、教育が主要テーマの一つとして取り上げられ、教育の重要性と各国共通の方向性がサミットの場で確認され、我が国としても、他の先進諸国と協調しながら、引き続き教育改革を進めている。

第10章 情報化の進展と教育・学術・文化・スポーツ

 当省では、高度情報通信社会の進展に伴い、教育・学術・文化・スポーツの各分野において、情報化に対応した様々な施策を展開している。
 中でも情報活用能力の育成は、これからの高度情報通信社会を担う子どもたちにとって必要不可欠の基礎的能力であり、新学習指導要領においても、情報教育の一層の充実が大きな柱として位置付けられている。さらに、平成十年十二月に発足した、内閣総理大臣直属のバーチャル・エージェンシー「教育の情報化プロジェクト」においては、当省・通商産業省・郵政省・自治省が連携し、今後の初等中等教育の情報化を総合的に推進する施策の検討結果を取りまとめ、十一年七月に内閣総理大臣への報告を行った。当省では、これに対応するため、コンピュータ整備などの環境整備を進めている。
 また、平成十一年七月から、当省、国立教育会館、国立社会教育施設、都道府県・指定都市の教育センター、社会教育施設、学校等を衛星通信で結んだ「エル・ネット(教育情報衛星通信ネットワーク)」が本格稼働した。この「エル・ネット」を活用して、全国規模で教職員研修の充実を図ったり、緊急性の高い教育課題に対応するプログラムを放送したりするほか、完全学校週五日制の実施に対応して、全国の子どもたちに夢や希望を語りかける番組を提供する「子ども放送局」事業等を行っている。

第11章 新たな時代の文教施策を目指して

 文教施設は、小・中学校や公民館、図書館、文化・スポーツ施設等の地域住民に身近なものから、最先端の学術研究や高度な人材養成を担う大学・研究機関の施設まで、幅広い分野にわたり文教施策を展開する基盤として極めて重要な役割を果たすものである。
 当省では、少子・高齢社会への移行、科学技術の進歩、情報化・国際化の進展、地球環境保護意識の高まりなど、社会の変化に対応し、学校施設の複合化及び地域との連携、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の推進、学校施設の情報化、国立学校における教育研究基盤の改善・充実等を行っている。

第12章 防災対策の充実

 我が国における位置・地質・気象等の自然条件により発生する地震災害、火山災害、風水害等あらゆる災害に対し、迅速かつ適切に対処するため、防災行政を総合的・計画的に推進することは、極めて重要である。このため、当省では、次のような観点を基本とし、防災対策の充実に努めている。
 @ 学校等における児童生徒等の生命、身体の安全を図ること。
 A 教育研究活動の実施を確保すること。
 B 文教施設及び設備の防護・復旧に万全を期すること。
 C 災害及び防災に関する科学的研究の推進を図ること。
 D 被災者の救援活動に関し的確な連携・協力を行うこと。




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平成10年度


体力・運動能力調査の結果


文 部 省


 文部省では、国民の体力・運動能力の現状を明らかにし、その結果を国民の健康・体力つくりに資するとともに、体育・スポーツ活動の指導や行政上の基礎資料を得ることを目的に、「体力・運動能力調査」を昭和三十九年度から毎年実施している。
 平成十年度の体力・運動能力調査に関する調査結果の概要は、次のとおりである。

1 年齢と体力

 握力、上体起こし、長座体前屈の三テスト項目は六歳から七十九歳まで、また反復横とび、二十メートルシャトルラン(往復持久走)、立ち幅とびの三テスト項目については、六歳から六十四歳まで、ともに同一方法で行われた。それぞれの加齢に伴う発達あるいは低下の一般的な傾向については、以下のとおりである。
(1) 握 力
 加齢に伴う握力の変化を、第1―1図に示した。
 筋力の指標である握力は、すべての年齢段階で男子が女子より優れているが、その差は十一歳以降に顕著で、特に男子は十六歳ごろまで急激な向上傾向を示す。その後は、男女とも二十歳代でも緩やかな向上傾向を示し、男子では三十〜三十四歳に、女子は四十〜四十四歳でピークに達しており、体力の他の要素に比べ、ピークに達する時期が遅い。ピーク時以後は緩やかな低下傾向を示し、ピーク時を一〇〇%とすると、六十〜六十四歳には男女ともに約八〇%にまで、また七十五〜七十九歳では男女ともに約七〇%にまで低下する。
(2) 上体起こし
 加齢に伴う上体起こしの変化を、第1―2図に示した。
 筋力・筋持久力の指標である上体起こしは、すべての年齢段階で男子が女子より優れているが、その性差はピーク時まで加齢に伴って増大し、その後、その差をやや狭めながら低下していく。男子は、十四歳ごろまで顕著な向上を示し、その後非常に緩やかな向上傾向を続け、十九歳ごろにピークに達している。ピーク時以後は、急激な低下傾向を示し、六十〜六十四歳には、ピーク時に対して約六〇%となっている。女子は、十三歳ごろピークレベルに達し、数年間その値を保持した後に緩やかな低下をはじめ、四十〜四十四歳以後に急激な低下傾向を示す。六十〜六十四歳には、ピーク時の約五〇%にまで低下し、さらに七十五〜七十九歳では、男女ともに約三〇%にまで低下する。
(3) 長座体前屈
 加齢に伴う長座体前屈の変化を、第1―3図に示した。
 柔軟性の指標である長座体前屈は、すべての年齢段階で女子が男子より優れている。その差は、十二歳ごろまでの早い年齢段階で比較的大きなことが特徴である。十三歳から十四歳ごろまで続いている緩やかな向上傾向は、その後も男女それぞれに認められる。男女とも十九歳ごろでピークに達した後は緩やかな低下傾向を示し、六十〜六十四歳には、男子でピーク時の約八〇%、女子で約九〇%に、さらに七十五〜七十九歳では、男子で約七〇%、女子で約八〇%に低下する。全年齢での加齢に伴う変化は比較的小さいといえる。
(4) 反復横とび
 加齢に伴う反復横とびの変化を、第1―4図に示した。
 敏捷性の指標である反復横とびは、すべての年齢段階で男子が女子より優れているが、男女とも十三歳ごろまで急激な発達傾向を示し、数年間その値を保持するか、またはわずかな向上を続け、十九歳ごろピークに達している。ピーク時以後は、男子は緩やかに、女子では三十歳代までその値をほぼ保持した後に低下傾向を示し、六十〜六十四歳には、男女ともピーク時の約七〇%にまで低下する。
(5) 二十メートルシャトルラン(往復持久走)
 加齢に伴う二十メートルシャトルランの変化を、第1―5図に示した。
 全身持久力の指標である二十メートルシャトルランは、すべての年齢段階で男子が女子より優れているが、男女とも十四歳前後で迎えるピークレベルまで急激な発達傾向を示す。その後数年間、男子はやや持続、女子では緩やかに低下する傾向を示し、十九歳以降は再び男女とも直線的で著しい低下を示す。六十〜六十四歳には、男女ともピーク時の約三〇%にまで低下する。
(6) 立ち幅とび
 加齢に伴う立ち幅とびの変化を、第1―6図に示した。
 筋パワー(瞬発力)の指標である立ち幅とびは、すべての年齢段階で男子が女子より優れているが、その差はピーク時まで加齢に伴い徐々に増大していく。全年齢にわたる変化の幅は、女子は男子に比べて小さい。男子は、十四歳ごろまで顕著な向上を示し、その後非常に緩やかな向上傾向を続け、十九歳ごろでピークに達している。
 ピーク時以後は、緩やかな低下傾向を示し、六十〜六十四歳には、ピーク時に対して約七五%となっている。女子は、十三歳ごろピークレベルに達し、二十〜二十四歳でピークを迎えている。その後は緩やかな低下を示し、六十〜六十四歳には、ピーク時の約七五%にまで低下する。

2 対象年齢別にみた一般的傾向

 第2―1図に、各年齢段階別に算出した新体力テストの合計点について加齢に伴う変化を示した。
(1) 六〜十一歳の体力
 新体力テストの合計点(第2―1図参照)の変化が示すように、六〜十一歳の体力は、男女とも加齢に伴い急激でほぼ直線的に向上していく。握力(第1―1図参照)、五十メートル走、立ち幅とび(第1―6図参照)は、男子が優れているものの、女子との差はわずかであり、この傾向は六歳から十一歳までほとんど変わらない。
 上体起こし(第1―2図参照)、反復横とび(第1―4図参照)、二十メートルシャトルラン(第1―5図参照)は、六歳および七歳での男女差は小さいが、その後、男子に比較して女子の向上傾向がやや緩やかなため、その差が次第に大きくなっている。ソフトボール投げは、六歳および七歳ですでに男子が大きく優れており、加齢に伴ってその差はさらに拡大する傾向にある。
 長座体前屈(第1―3図参照)は、唯一女子が優れているテスト項目であり、六歳から十一歳では男子との差をやや広げていく傾向にある。
 基礎運動能力としてみた走(五十メートル走)、跳(立ち幅とび)、投(ソフトボール投げ)における七歳、九歳、十一歳の年次推移をグラフに示すと、第2―2図第2―3図第2―4図となる。
 昨年度と比較すると、投(ソフトボール投げ)ではわずかに記録が向上しているが、長期的にはいずれの能力も引き続き低下傾向にあることがうかがえる。
(2) 十二〜十九歳の体力
 新体力テストの合計点(第2―1図参照)からみた十二〜十九歳の体力水準は、男子は六〜十一歳から引き続いて著しい向上を示す。女子は緩やかな向上を示しながら、後半はほぼ定常状態に達している。
 握力(第1―1図参照)、上体起こし(第1―2図参照)および立ち幅とび(第1―6図参照)では、男子は十二歳から十六歳ごろまで急激な向上を示すのに対して、同時期の女子の向上傾向はほぼ頭うちの状況にある。したがって、これらのテスト項目では、十二〜十九歳の全年齢にわたって、発達に伴い男女差が拡大する傾向にある。
 長座体前屈(第1―3図参照)では、はじめに女子が男子よりも高い値を維持しながら、ゆっくりと直線的に向上を示している。十三〜十四歳ごろから女子の記録に停滞がみられる。これに対して男子はわずかながらも向上を続けているので、十五歳から十七歳には性差がほとんどなくなり、その状況は十九歳ごろまで継続している。
 二十メートルシャトルラン(第1―5図参照)は、唯一十四歳前後の早い年齢段階でピークレベルを迎えるテスト項目である。男子はその後数年間、ほぼ横ばい状態であるのに対し、女子は緩やかな低下傾向を示す。
 五十メートル走および反復横とび(第1―4図参照)では、それまでほぼ直線的であった向上傾向が、十四歳ごろから停滞しはじめている。その停滞時期は女子の方が一〜二年ほど早い。持久走は十二〜十九歳の年齢段階だけで実施されるテスト項目であるが、男子では十五歳から十七歳で、女子では十二歳から十四歳でピークレベルを維持している。ハンドボール投げでは、男女とも十七歳ごろに最高値を記録している。
 握力、五十メートル走、ハンドボール投げ、持久走についての十三歳、十六歳、十九歳の年次推移をグラフに示すと、第2―5図第2―6図第2―7図第2―8図となる。握力は男女ともこれまでの緩やかな低下傾向が停滞したようにうかがえるが、それ以外の項目では、引き続き低下傾向にあることがうかがえる。
(3) 二十〜六十四歳の体力
 新体力テストの合計点(第2―1図参照)の変化からみると、二十歳から六十四歳に至るまで、男女ともに体力水準は加齢に伴って低下する傾向を示している。しかし、各テスト項目ごとに、男女別に変化の様相を比べてみると、項目間で大きく異なっていることがわかる。
 上体起こし(第1―2図参照)、反復横とび(第1―4図参照)、二十メートルシャトルラン(第1―5図参照)、立ち幅とび(第1―6図参照)では二十歳代前半まで、握力(第1―1図参照)では、三十歳代後半をピークに徐々に低下傾向が加速していくが、特に男性にその傾向が強いため、年齢段階が進むほど男女差が小さくなってくる。長座体前屈(第1―3図参照)では、男女ともに加齢に伴って次第に低下してはいるが、女性はその低下傾向が緩やかであるため、次第に男女差が拡大していく。
 二十〜二十四歳での値を一〇〇%として、七つのテスト項目についての加齢に伴う変化を第2―9図(男性)および第2―10図(女性)に示した。六十〜六十四歳では握力、長座体前屈、急歩は男女ともに、二十〜二十四歳の約八〇〜九〇%であり、反復横とびと立ち幅とびは約七〇〜七五%、上体起こしでは男性は約六〇%、女性は約五〇%である。また最も大きな低下を示す二十メートルシャトルランでは、男女ともに約四〇%である。
 年次変化の比較が可能な握力、反復横とび、急歩(第2―11図第2―12図第2―13図参照)についてみると、本年度はこれまでにみられた年度間変動幅よりも、やや大きな幅での変化が記録され、握力と反復横とびでは、昨年度よりも高いレベルの、一方、急歩では、低いレベルの成績が示された。
(4) 六十五〜七十九歳の体力
 新体力テストの合計点(第2―1図参照)からみた六十五〜七十九歳の体力水準の変化は、男女とも四十歳代後半から引き続いて、ほぼ同程度の減少率で低下する傾向を示している。その結果、七十五〜七十九歳の握力(第1―1図参照)は、男性が十三歳、女性が十一歳、また長座体前屈(第1―3図参照)では、男女とも九歳とほぼ同じ水準が示されている。一方、上体起こし(第1―2図参照)については、女性が六十歳代から六歳ごろの水準を下回るようになっているが、男性も七十歳代から同様の傾向を示している。
 六十五〜七十九歳だけを対象とした開眼片足立ち、十メートル障害物歩行および六分間歩行の変化を第2―14図に示した。三テスト項目とも、どの年代においても、男性の方が女性より六〜二一%ほど優れた値を示している。しかし、いずれも加齢に伴って直線的に低下する傾向を示し、五年間当たりで六分間歩行は五〜六%、十メートル障害物歩行は七〜八%程度低下するのに対して、開眼片足立ちでは、一九〜二二%ほどの低下が認められる。
 会場に出向き新体力テストを受けた高齢者では、握力、歩行能力、柔軟性など、日常生活に直結した体力要素の低下率は比較的小さいが、上体起こし、バランス能力など、日頃の積極的な運動習慣が深く関係すると思われる体力要素の低下は著しいことがうかがわれる。
 なお、同時に行ったADLの十二項目の問に、六十五〜六十九歳でそれぞれ最も体力水準が高い『3』と答えた者の割合(%)を高い順に並べ、それに七十〜七十四歳および七十五〜七十九歳の割合をあわせて第2―15図(男性)第2―16図(女性)に示した。
 男性の場合、六十五〜六十九歳で、七〇%以上が『3』と答えた項目は、「立ったままでズボンがはける(問8)」、「布団の上げ下ろしができる(問10)」、「十キログラム程度の荷物を十メートル運べる(問11)」、「五十センチメートル程度の溝をとび越えられる(問3)」、「正座の姿勢から手を使わずに立ち上がれる(問5)」であった。しかし、「三十秒以上片足で立てる(問6)」および「十分以上走れる(問2)」と答えた人は五〇%を割っていた。その後これらの割合は、ほぼ五年代でいずれも一〇%程度ずつ減少する傾向を示している。
 女性の場合も、全体的な傾向では男性と大きな違いはみられないが、全般的に『3』と答える割合は、男性より二〇%程度低いように思われる。六十五〜六十九歳で『3』が七〇%を超えるのは、男性にも認められた「立ったままでズボンやスカートがはける(問8)」と「布団の上げ下ろしができる(問10)」だけで、「十キログラム程度の荷物を十メートル運べる(問11)」、「一時間以上歩ける(問1)」、「シャツの前ボタンを掛けたり外したりできる(問9)」、「三十秒以上片足で立てる(問6)」、「バスや電車の中で何もつかまらずに立っていられる(問7)」などの項目では五〇%を割り、特に「仰向けに寝た姿勢から、手を使わないで、上体だけを三〜四回以上起こせる(問12)」と「十分以上走れる(問2)」は三〇%を割っている。その後さらに高齢になると、男性と同様に、五年代で約一〇%程度ずつ減少する傾向を示し、七十五〜七十九歳で「十分以上走れる」と答えた割合は一〇%を割っている。

3 運動・スポーツの実施と体力

(1) 運動部・スポーツクラブへの所属の有無
 運動部や地域のスポーツクラブへの所属の有無と新体力テストの合計点との関係を、年齢段階別に、第3―1図(男子)および第3―2図(女子)に示した。
 男女とも、運動部所属群の方が非所属群よりも合計点は高い傾向にある。六歳から七歳では、運動部あるいはスポーツクラブへの所属の有無による合計点の差はほとんど認められないが、九歳ごろから両群の体力差は徐々に大きくなり、十一歳の男子で約六点、女子で約五点の差となっている。十二〜十九歳においても、合計点は増加し続けるが、運動部(クラブ)所属の有無による体力の差は一層開く傾向を示している。
 二十歳以降の合計点は、二十〜二十四歳をピークに、加齢とともに低下する。特に、四十〜四十四歳以降に低下率の増大が認められる。しかし、どの年代においても、男女とも、運動部やスポーツクラブに所属する群の方が、非所属群より三〜四点前後高い値を示している。六十五〜七十九歳では、男女とも、加齢とともに、五年間で四点程度の合計点の減少が認められる。しかし、どの年代においても、スポーツクラブ所属群の方が、男性で二点、女性で四点程度高い値を示している。
 要約すると、運動部・スポーツクラブへの所属と体力水準の関係は、九歳ごろから明確になり、その後七十九歳に至るまで認められる。したがって、運動部・スポーツクラブへの所属は、生涯にわたって高い体力水準を維持するのに、重要な役割を果たしていることがうかがえる。
(2) 運動・スポーツの実施頻度
 運動・スポーツの実施頻度と新体力テストの合計点との関係を、年齢段階別に、第3―3図(男子)および第3―4図(女子)に示した。
 六〜十九歳においては、加齢に伴って合計点が増加し、運動する頻度が高いほど、合計点も高い傾向にある。しかし、六歳から七歳では、「ほとんど毎日」、「ときどき」、「ときたま」あるいは「しない」のどの群も、合計点に大差は認められない。その後、加齢に伴い、「ほとんど毎日」行う群の合計点が他群より高くなり、次いで「ときどき」行う群の合計点が「ときたま」および「しない」群より高くなる。十二歳から十四歳以降は、「ほとんど毎日」行う群の合計点が他の三群よりも高くなり、「ときどき」と「ときたま」群が「しない」群を若干上回っている。
 二十歳以降の合計点は、二十〜二十四歳をピークに、運動・スポーツの実施頻度にかかわりなく、加齢とともに低下する。また、その低下の度合いは、特に四十〜四十四歳以降に大きくなる。しかし、どの年代においても、また男女に関係なく、「ほとんど毎日」および「ときどき」行う群の合計点が、「ときたま」行う群より高く、「しない」群が最も低い値を示している。六十五〜七十九歳でも、二十〜六十四歳に引き続いて、加齢とともに合計点は低下する。しかし、運動・スポーツを「ほとんど毎日」および「ときどき」行う群の合計点は、「ときたま」群よりも高く、「しない」群が最も低い値を示している。
 要約すると、運動・スポーツの実施頻度と体力水準の関係は、九歳ごろから明確になり、その後七十九歳に至るまで認められる。したがって、体力を高い水準に保つには、実施頻度が重要な要因であることが示唆される。
(3) 一日の運動・スポーツ実施時間
 運動・スポーツを行う際の一日の実施時間と新体力テストの合計点との関係を、年齢段階別に第3―5図(男子)および第3―6図(女子)に示した。
 九歳ごろから十九歳まで、どの年代においても、男女とも、一日の運動・スポーツ実施時間が長いほど合計点は高い傾向にあり、十三歳ごろから、「一〜二時間」および「二時間以上」行う群の合計点と、「三十分〜一時間」および「三十分未満」行う群の合計点の差が大きくなっている。
 二十歳以降は、二十〜二十四歳をピークに、合計点は一日の運動・スポーツ実施時間にかかわりなく加齢とともに低下するが、特に四十五〜四十九歳からの低下率が大きくなる。しかし、男性では二十歳代、女性では五十歳代ごろまで、一日の運動・スポーツ実施時間が長いほど、合計点も高くなる傾向が認められる。その後も、三十分以上行う三群はいずれも、「三十分未満」しか行わない群より高い合計点を示している。六十五〜七十九歳でも、合計点は加齢とともに低下を続けているが、三十分以上行う三群の合計点に群差はなく、いずれも「三十分未満」群よりは高い値を示している。
 要約すると、一日の運動実施時間の差と体力水準の関係は、九歳ごろから明確になり、その後七十九歳に至るまで、三十分以上行う三群と「三十分未満」しか行わない群との間に明確な差があることが認められる。
(4) 学校時代の運動部(クラブ)活動の経験
 中学校、高等学校、大学を通じての運動部(クラブ)活動の経験の有無と、二十〜六十四歳および六十五〜七十九歳の新体力テストの合計点との関係を、第3―7図(男性)および第3―8図(女性)に示した。
 男女とも、七十五〜七十九歳に至るまでの加齢に伴う合計点の低下傾向は、ほぼ同様の傾向にある。しかし、男女とも、どの年代においても、中学校、高等学校、大学を通じて運動部あるいはスポーツクラブで活動を経験した群の合計点は、およそ四〜五点高い傾向にある。したがって、学校時代に運動部やスポーツクラブへ積極的に参加していたことは、生涯にわたって高い水準の体力を維持する一つの要因であると考えられる。

4 健康・体力に関する意識と体力

(1) 健康状態に関する意識
 二十〜六十四歳および六十五〜七十九歳の健康状態に関する意識と、新体力テストの合計点との関係を、第4―1図(男性)および第4―2図(女性)に示した。
 男女とも、合計点は、二十〜二十四歳をピークにその後減少し、特に四十〜四十四歳以降に、低下の度合いが大きくなる傾向にある。しかし、いずれの年代においても、健康状態について、「大いに健康」と意識する群の合計点が最も高く、「まあ健康」群がそれより二〜三点低く、「あまり健康でない」群がさらに二〜三点低くなっている。
(2) 体力に関する意識
 二十〜六十四歳および六十五〜七十九歳の体力に関する意識と、新体力テストの合計点との関係を、第4―3図(男性)および第4―4図(女性)に示した。
 男女とも、合計点は二十〜二十四歳をピークに加齢とともに減少し、特に四十〜四十四歳以降に、低下の度合いが大きくなる傾向が認められる。しかし、いずれの年代においても、体力について「自信がある」群の合計点が最も高く、「普通である」と意識する群がそれに次ぎ、「不安がある」群が最も低い値を示している。三群のそれぞれの間隔はほぼ等しく、およそ三〜四点の開きとなっている。


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消費支出(全世帯)は実質二・九%の減少


―平成十一年九月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成十一年二月以降三か月連続の実質減少となった後、五月は実質増加、六月は実質減少、七月、八月は実質増加となり、九月は実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成十一年三月以降三か月連続の実質減少となった後、六月は実質増加となり、七月以降三か月連続の実質減少となった。
 消費支出は、平成十一年二月以降三か月連続の実質減少となった後、五月は実質増加、六月は実質減少、七月は実質増加となり、八月、九月は実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十六万四千四百四十九円。
 前年同月に比べ、名目一・八%の減少、実質一・六%の減少。













    <2月16日号の主な予定>

 ▽運輸白書のあらまし…………………………運 輸 省 

 ▽月例経済報告(一月報告)…………………経済企画庁 

 ▽平成十一年七〜九月期平均家計収支………総 務 庁 




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