官報資料版 平成12年2月16日




                  ▽運輸白書のあらまし……………………………運 輸 省

                  ▽月例経済報告(一月報告)……………………経済企画庁

                  ▽平成十一年七〜九月期平均家計収支…………総 務 庁

                  ▽単身世帯収支調査結果の概況

                   ―平成十一年度四〜九月期平均速報―………総 務 庁











運輸白書のあらまし


 平成11年度「運輸経済年次報告(運輸白書)」は、平成11年11月30日の閣議に報告され、公表された。

運 輸 省


 平成十一年度の運輸白書の第1部は、テーマを「二十一世紀に向けた都市交通政策の新展開」として、通勤時の鉄道混雑、交通事故などの面で厳しい状況の続く都市交通問題について、経済社会情勢の変化を踏まえた新たな政策展開の必要性について各種の視点から述べている。具体的には、誰にも安全で利用しやすい公共交通システムの構築のための輸送力増強やバリアフリー施策の推進、街づくりとも連携した交通ターミナルの整備等について、ハード・ソフト両面からの対策を総合的に推進するべきとしている。また、こうした都市交通政策の推進に当たって、利用者利便の向上、安全の確保等のために、今後さらに重要となる情報通信技術の都市交通への活用について述べている。さらに、都市再開発による賑わい空間の創出や地域固有の生活文化の活用等により交流拡大を通じて地域の活性化を図る事例について述べている。
 第2部では、平成十年度の輸送動向、運輸における経済対策、公共事業の改革等のほか、国際運輸、物流、観光等や、陸・海・空の各モードごとの施策について述べている。

第1部 二十一世紀に向けた都市交通政策の新展開

第1章 都市交通問題の変遷と現状

第1節 都市交通問題の変遷

1 戦後の都市過密化
 高度成長期においては、産業構造の急速な高度化及びその都市部への集積が進行した結果、三大都市圏を中心に都市過密化が進展した。

2 都市問題と都市交通問題
 公共交通機関の整備や道路整備が、都市過密化やモータリゼーションに伴う交通需要の増大に追いつかず、「通勤地獄」といわれた鉄道混雑や「交通戦争」といわれた自動車交通事故のほか、道路交通渋滞、道路交通公害など都市交通問題が惹起した(第1図参照)。

3 都市の構造変化と都市交通問題
 都心の地価高騰等による住宅地の郊外への拡大により、通勤時間は長時間化し、混雑率の緩和のペースも鈍化した。
 交通事故については、政府を挙げての対応にもかかわらず事故死者数が昭和六十三年から平成七年まで八年連続して一万人を超えるなど深刻な状況が続いた(第2図参照)。

第2節 都市交通問題への対応

1 過密状態の緩和
 (1) 都市鉄道の整備(鉄道混雑への対応)
  都市交通審議会等の関係答申に基づき、地下鉄網の整備等都市圏における鉄道整備を順次実施している。
 (2) 道路交通渋滞への対応
  公共交通機関の利用促進、物流効率化等のほか、環状道路をはじめとした都市内道路網の整備等各種施策が行われてきた。

2 バス交通の活性化
 昭和四十年代以降、専用レーン・優先レーンの設置、都市新バスシステムの導入及びこれに係る補助などの施策を講じている。

3 安全の確保
 交通安全対策基本法(昭和四十五年)に基づく政府を挙げての対策を推進しており、現行基本計画では十二年までに事故死者数九千人以下が目標となっている。運輸省においても運輸事業の運行管理制度の充実、車両の安全基準の拡充等のほか、被害者救済のため、自動車損害賠償保証法制定、自動車事故対策センター設置等の施策を展開している。

4 自然災害への対応
 都市交通における安全を確保するためには、地震・集中豪雨等の自然災害への対応が重要である。

5 環境問題への対応(自動車排出ガス・騒音規制の変化)
 大気汚染等が社会問題化した昭和四十年代より、自動車の排出ガス規制に段階的に取り組むとともに、最新規制適合車への代替促進税制や電気自動車等低公害車の取得に係る税制優遇制度を導入してきた。

第3節 都市交通問題の現状と評価

1 通勤・通学混雑の状況
 鉄道混雑は年々改善されているが十年度において東京圏全体の平均混雑率は一八三%、個別路線では二〇〇%を超える路線もあり、依然として十分とはいえない。

2 道路交通渋滞の状況
 バブル経済期以降の自動車保有台数のさらなる増加等により自動車の平均走行速度は下降傾向で、引き続き渋滞緩和に資する各種施策を推進する必要がある。

3 交通事故の現状
 近年の交通事故死者数は減少傾向ではあるが依然一万人前後に上る。事故件数及び負傷者数ではこの十年間でそれぞれ約一・三倍に増加する等交通事故をめぐる極めて深刻な状況が続いている。

4 大気汚染・騒音の状況
 自動車交通量の増加のため、大都市地域を中心とする窒素酸化物(NOX)、浮遊粒子状物質(SPM)等による大気汚染の状況は依然深刻である。自動車騒音についても大都市地域等を中心に環境基準を達成していない地点が多い。

5 利用者が求める質的な充実への対応
 豊かさやゆとりを志向するなど国民の価値観の多様化・高度化が進んでおり、都市交通における乗り継ぎの円滑化など質的な観点からの対策が必要である(第3図第4図参照)。

6 公共交通サービスの安定的な供給
 都市部においても公共交通事業者の経営状況は厳しい。しかしながら、公共交通機関に生活の基盤を負っている高齢者等のため、今後とも健全経営の下で良質で安定的なサービスを提供していくことが必要である。

7 地球温暖化防止の観点
 地球温暖化防止京都会議(九年十二月)では先進国の温室効果ガス削減目標が採択された。我が国の場合、CO排出量の約二割を交通運輸分野が、さらにその約九割を自動車が占め、自動車排出ガス抑制対策はこの観点も加えて一層の充実が必要である。
 このように、都市交通問題は少なからず改善してきているが、社会の成熟化や国民の豊かさ志向等を踏まえた場合、依然解決すべき点は多い。

第2章 都市交通政策の新展開

第1節 都市交通政策のめざすべき方向

○ 鉄道の混雑緩和をはじめとした交通サービスの利便性・快適性の向上
○ 交通安全の確保と輸送障害防止・防災対策の推進
○ 環境との共生
○ 自家用車と公共交通機関のバランスのとれた交通システムの形成
○ 公共交通サービスの安定的提供
○ 都市交通と幹線交通との連携強化
○ 都市を支える物流機能の向上
○ より良い街づくりとの連携

第2節 鉄道の混雑緩和をはじめとした交通サービスの利便性・快適性の向上

 運輸政策審議会地域交通部会による予測によれば、二〇一五年(平成二十七年)における東京圏の総交通流動や鉄道流動は微増と見込んでいる。しかしながら、路線区間によっては混雑率が依然として二〇〇%を超えており、今後とも既存ストックの有効活用を図りつつ、鉄道の混雑緩和のための輸送力増強等を推進する必要がある。また、ゆとりや快適性が重視されるこれからの時代においては、バリアフリー化、シームレス化の充実強化を図るとともに、現行の混雑率の指標ではとらえきれないサービスの改善度を評価できる新たな指標を検討することも重要である。さらに、規制緩和の流れの中での新しいサービスとして、コミュニティバスや福祉タクシー、介護タクシーなどが増加している。

第3節 交通安全の確保と輸送障害防止・防災対策の推進

1 交通安全対策の推進
 (1) 自動車交通の安全対策
  十一年六月運輸技術審議会から答申された「安全と環境に配慮した今後の自動車交通政策のあり方について」を踏まえ、事故情報の収集・分析・活用、事業用自動車の安全対策、車両の安全対策などを体系的・継続的に推進する必要がある。
 (2) 鉄道事故等の防止対策
  列車の高速化に伴い、いったん鉄道事故が発生すると多大な被害が生じるおそれがあるため、運転士の教育・訓練、高速化・高密度化に対応したATSの整備、新しい検査方法の導入など、事故防止策を引き続き実施する。
 (3) 鉄道の輸送障害の防止対策
  首都圏等の鉄道において頻発した輸送障害に関して、鉄道事業者に対して、厳重な指導を行ったほか、運輸技術審議会の事故分析小委員会において全般的な傾向分析を行い、安全・安定輸送両面の確保のための対策を講じていく。

2 運輸省事故災害防止安全対策会議の設置
 交通安全行政を推進する運輸省として、率先して「安全の確保」に取り組むべく、省内に「運輸省事故災害防止安全対策会議」(通称「運輸安全戦略会議」)を設置し、運行マニュアルの遵守等の総点検及び人為的ミスに対する対応策等の検討を実施している。

3 災害対策の推進
 都市において自然災害が発生し、公共交通や道路のネットワークが寸断された場合、都市機能が麻痺するとともに、救援活動や復興対策も十分できない状況となる。このため、交通施設の耐震性や防水機能の向上、代替輸送手段の確保、復旧の迅速化等の各種対策を推進する必要がある。

第4節 環境との共生

 京都議定書を踏まえ我が国も十年六月に「地球温暖化対策推進大綱」を決定したが、交通運輸分野においても、COの排出量を二〇一〇年(平成二十二年)において一九九〇年(平成二年)に比べ一七%増(自然体で推移した場合は四〇%増)に抑制していくこととしている。このため、自動車の燃費向上対策として、トップランナー方式に基づき強化し、燃費向上をめざすこととしている。また、十一年五月の運輸政策審議会答申では、税収中立に配慮しつつ、燃費効率に応じた増減税を行う自動車税制のグリーン化の考え方を示している。さらに、十一年四月から低公害車に係る税制上の優遇措置が拡充されたほか、運輸省や(社)全日本トラック協会による低公害車購入費補助等の支援措置があり、ハイブリッド乗用車を中心に低公害車の普及が進みつつある(第5図参照)。

第5節 自家用車と公共交通機関のバランスのとれた交通システムの形成

 安全性の向上と環境負荷の低減を図るためには、第3、4節で述べた施策と合わせ、自家用車と公共交通機関をバランスさせる都市交通体系の構築が必要である。

第6節 公共交通サービスの安定的提供

 競争激化等厳しさを増す公共交通事業の経営環境の中で、バリアフリー化等サービスの一層の改善のためには、交通事業者自らが効率的・効果的な経営に努めるのはもちろん、公的支援措置の充実についての検討を進め、安全で良質な輸送サービスの安定的提供をめざす必要がある。

第7節 都市交通と幹線交通との連携強化

1 新幹線網との連携強化
 新幹線駅と在来線駅が別の場合には、路線バス等の両駅のアクセス手段の充実を図り、新幹線の開業効果が地域全体の活性化につながるような都市・交通政策を進める必要がある。

2 航空網との連携強化
 空港への鉄道乗り入れが実現しているが、さらに運輸省は、十一年度に空港アクセス鉄道への補助制度を創設し、中部国際空港アクセス鉄道に対し補助を行う。

3 高速自動車国道網との連携強化
 高速自動車国道網と都市内の高速道路や幹線道路との接続、都市内環状道路の整備等を図る必要がある。

第8節 都市を支える物流機能の向上

1 国際海上コンテナターミナルの拠点的整備
 中枢国際港湾においては、水深十五メートルの大水深コンテナターミナルを早急に整備し、我が国の港湾の国際競争力の強化と、スケールメリットによる物流コストの削減等を図ることとしている。

2 都市内物流の効率化
 商業業務集積地の近郊に共同集配センターを配置し、そこで貨物を集約し、トラックの積載効率を向上させる共同集配システムが整備されつつある。

3 外環型物流拠点の整備推進
 物流の効率化に資するシステム形成のひとつとして、環状道路のI・C付近においていわゆる「外環型物流拠点」を整備することが効果的である。

4 鉄道貨物輸送の活用
 鉄道貨物輸送は、中距離輸送に優位性を発揮するが、生活廃棄物や建設残土の輸送で都市内あるいは短距離の都市間輸送を担うケースが出てきている。

第9節 街づくりと連携した総合的な都市交通政策の展開

1 周辺整備と一体となった駅や交通ターミナルの整備
 公共交通機関の各モードの結節点となる駅や交通ターミナルにおいて、周辺整備と一体となった拠点機能の向上を図り、全体として円滑な移動を確保するため、都市交通圏ごとに、市町村が主体となって交通事業者等の関係者の連携の下で、具体的施策を総合的に講ずる必要がある。運輸省としても、十一年度より、このような取り組みを支援するため、都市交通総合改善事業を実施するとともに、鉄道駅総合改善事業費補助制度を設けている(第6図参照)。

2 連続立体交差事業の推進
 連続立体交差化は、交通渋滞や踏切事故の危険性を解消するとともに、鉄道で分断されていた市街地の一体化等の街づくりの面でも大きな効果があり、今後とも推進していく必要がある。

3 駅や交通ターミナルの生活機能の充実
 「コミュニティ駅」として日常生活を送るうえでの必需サービスを駅等において提供する取り組みが行われてきたが、今後とも利用者利便の向上の視点から、地方公共団体、事業者等が連携して駅や交通ターミナルの生活機能の充実を図る必要がある(第1表参照)。

4 バスを活用した街づくり
 自家用車と公共交通機関のバランスのとれた交通体系は、自動車交通量の抑制、交通の円滑化等を通じて安全に配慮した交通システムの形成に資するものであるが、運輸省は、バス利用促進等総合対策事業に対して地方公共団体と協調して補助している。また、「オムニバスタウン構想」を警察庁・建設省と連携して推進するほか、各都道府県ごとの「バス活性化委員会」等を通じ、関係者と一体となってバスの走行環境改善のための諸施策を推進している。

5 ウォーターフロント開発と街づくりとの連携
 全国の港湾において、親しみやすいウォーターフロント空間の形成をめざし、港湾緑地、マリーナ、交流・賑わい施設等の整備を民活事業や公共事業等を相互に連携させつつ総合的に推進している。

6 空港整備と街づくりとの連携
 空港周辺の移転跡地の有効利用として親空港親水公園(エアフロントオアシス)整備を推進し、空港と周辺地域との調和のとれた街づくりをめざしている。

7 中心市街地の活性化と公共交通
 地方都市においては、中心市街地の衰退が見られるが、この状況を改善し、地域住民の生活環境の向上を図るため、十年七月、中心市街地活性化法が施行された。

8 歩道・自転車道の整備等
 交通事故の減少と公共交通機関の利用促進のためにも、歩道の整備及び自転車走行のための空間の確保に向けての努力が期待される。

第10節 国土交通省の発足に向けた総合的取り組みの強化

 二十一世紀が始まる十三年一月から、交通運輸行政に関しては、国土の総合的・体系的な開発及び利用、そのための社会資本の総合的な整備、交通政策の推進等を主要な任務として新たに設置される国土交通省が担うこととなる。都市交通政策の推進に当たっても関係各方面との連携協力を強化して、ハード・ソフト面を一体的に、より良い街づくりの視点から総合的な取り組みを図っていく必要がある。

第3章 情報通信技術の活用による都市交通の円滑化と安全確保

第1節 情報化をめぐる動向について

1 情報化社会の進展の状況
 情報通信技術の発展等に伴い、情報通信インフラについて、光ファイバー網の整備などの基盤が形成されつつある中で、情報通信機器の普及が進むとともに、これを活用したサービスの利用者が増加している。

2 都市部における情報化基盤整備の現状
 都市部においては、交通需要も多く、情報化に対するニーズはとりわけ高い。従来より各運輸企業は情報化への取り組みを着実に進めてきており、また、一般家庭においてもインターネットが普及する等情報化社会の基盤整備が進んでいる。

3 今後の動向
 都市部での情報化基盤整備の着実な進展を背景に、さらなる情報通信技術が発達し、様々な分野において電子商取引等が活発化すると考えられる。運輸分野においても、これを踏まえたさらに高度な施策を講じていく必要がある。

第2節 交通運輸への活用

1 都市交通と情報化
 安全性、利便性の向上の観点から、各運輸事業者、運輸省において、@運輸多目的衛星を活用した次世代航空管制、Aバスロケーションシステム、Bトラックの運行管理システムなどの整備に取り組んでいる。

2 ITSについて
 高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)は、最先端の情報通信技術等を活用して、人と道路と車両とを一体化し、安全で快適な、環境にも優しい交通システムの構築をめざすものである。運輸省においては、現在、@先進安全自動車(ASV:Advanced Safty Vehicle)の研究開発、A道路運送事業におけるITS技術の活用による公共交通の利用促進や物流の効率化、Bナンバープレート電子化等の検討などに取り組んでいる。

3 今後の取り組み
 利便性の向上、安全対策、環境対策といった観点から、都市交通の情報化を一層促進する必要があり、運輸省では、@非接触式ICカードを活用した汎用電子乗車券の研究開発、A簡易無線端末を活用した移動制約者支援モデルシステムの研究開発、B地理情報システム(GIS)の活用方策の検討、C電子データ交換(EDI)の普及促進等を推進している。このほか、これらの取り組みを有機的に組み合わせ、必要な情報をオープンなネットワークにおいて流通させることにより、総合的な交通情報を入手したり、自宅で予約・発券等を行えるような総合交通情報提供システムの構築をめざし、現在検討を進めている(第7図参照)。

第4章 都市の魅力向上による交流拡大

第1節 都市における魅力ある街づくり

1 「住んで良し、訪ねて良し」の街づくり
 (1) 住民の社会参加と交流の促進
  都市交通政策の展開により地域内での円滑な移動が容易なハイモビリティ社会を実現し、高齢者、障害者等を含めた住民全体の社会参加と交流社会を促進する必要がある。これにより、来訪客にも好印象を与え、魅力ある街となる。
 (2) 都市の観光魅力
  美しい自然や歴史的遺産のみならず、都市が持つ複合的な機能や文化情報の発信機能そのものが観光魅力となり、集客力を発揮していることが多い(東京都臨海部、横浜市みなとみらい21地区など)。
 (3) 地域固有の生活文化の活用
  地方都市が持つ生活文化の魅力の再評価が進み、これを活かした街づくりの例が増加している。長い歴史の中でその都市が培ってきた運河、蔵、食及びまつりなどを活かす知恵と努力により、多数の観光客を集めている。
 (4) 都市観光の振興に向けた取り組み
  運輸省は、こうした観光振興による地域活性化のため、九年度から「観光地づくり推進モデル事業」を支援している。また、「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」に基づき、地域伝統芸能を活用したイベント等の開催を支援している。

2 都市観光の振興による効果
 都市観光の振興により各都市への来訪客が増加することは、大きな経済効果をもたらす。すなわち、観光産業は、旅行業、交通業、宿泊業、飲食業等広範多岐にわたり、また、地域の特色ある食材や工芸品等を産出する地場産業にも関連が深く、観光振興はこれら産業の振興につながり、地元において多くの雇用機会を創出する(第8図参照)。

3 都市交通政策と都市観光の関連
 最近の観光旅行の傾向として、個人や少人数での旅行の増大がある。このため、旅行先で住民と同じような立場で公共交通機関を利用する機会が増大しており、その利便性の向上やわかりやすい情報の提供(路線網、運賃、ダイヤ等)が重要となっている。

第2節 コンベンション等の誘致による交流拡大と国際競争力の強化

1 コンベンションの誘致による交流拡大
 コンベンションを誘致することは、これを契機に開催都市の魅力を参加者やプレス等を通じて内外にアピールすることができ、知名度向上や地域経済の活性化に貢献するため、近年、多くの都市で積極的な取り組みが行われている。
 運輸省としては、これを促進するためコンベンション法に基づき、国内四十九都市を「国際会議観光都市」として認定しており、認定された都市に対しては、国際観光振興会により国際会議主催者に対する援助等を行っている。

2 イベント等の開催による交流拡大
 地方公共団体においては、大型イベントの開催により、交流拡大とこれによる地域活性化を図る動きが盛んである。
 運輸省としても、「地域伝統芸能全国フェスティバル」、「旅フェア」、「広域連携観光振興会議(WAC21)」等のイベント開催を支援している。

3 都市の観光交流面での国際競争力の強化
 訪日外客数は、出国日本人数の約四分の一と不均衡な状態が続いており、世界各国における外国人旅行者受入者数と比較しても、我が国は世界三十二位と極めて低い水準にある。このため、国際観光交流の拡大を図るためのトータルプランとして、八年にウェルカムプラン21(訪日観光交流倍増計画)を策定し、各種施策を推進するとともに、大都市圏拠点空港の整備等により、観光交流面での国際競争力の強化をめざしている。

第2部 運輸の動き

第1章 最近の運輸概況

第1節 国内・国際経済の動向と運輸活動

 平成十年度の国内旅客輸送量は、八百四十一億人(対前年度比〇・七%減)、一兆四千二百四十三億人キロ(同〇・四%増)となった。輸送機関別に見ると、航空は輸送人数、輸送人キロともに増加し、自動車は輸送人数は減少したものの輸送人キロでは増加し、鉄道、旅客船は輸送人数、輸送人キロともに減少した。
 十年度の国内貨物輸送量は、六十三億九千七百九十万トン(同四・二%減)、五千五百十五億五千万トンキロ(同三・〇%減)となった。輸送機関別に見ると、航空は輸送トン数、輸送トンキロともに増加し、自動車、鉄道、内航海運は輸送トン数、輸送トンキロともに減少した。
 十年の国際旅客輸送量は、出国日本人数、訪日外客数ともに減少した。十年の国際貨物輸送量は、我が国の海上貿易量、航空貨物輸送量が輸出入ともに減少した。
 十一年度に入ってからは、国内景気の改善とアジア経済の回復等により、国際物流、出入国者数等を中心にプラスに転じるなど回復に向けた明るい兆しが現れている。

第2節 運輸における経済対策

 運輸事業者の十年度収支は、事業の効率化等により増益となる事業者も出てきている。しかし、景況感は若干改善しつつも依然厳しいものとなっており、また、十一年度の設備投資計画は、対前年度比一三・九%の減少となっている。さらに、資金調達も厳しい状況にある。
 こうした中で、運輸事業における中小企業対策として、中小企業信用保険の限度額の拡充、中小企業の範囲拡大による公的融資の拡充、中小企業投資促進税制の創設等の施策を実施している。雇用対策としては、雇用調整助成金制度、労働移動雇用安定助成金制度等を活用することにより、失業なき労働移動への対策を強化している。
 政府としては、景気の早期回復のため、十年四月、総事業費十六兆円超の総合経済対策を策定し、その着実な実施を図るとともに、十一年度に向け切れ目なく施策を実行できるように、第三次補正予算に基づいて、各種事業を実施した。運輸省としても、関西・中部国際空港等の大都市圏拠点空港の整備、中枢・中核港湾の整備及び次世代航空保安システムの整備等の景気回復に資する対策を実施してきた。
 このような景気対策が奏功し、我が国経済はここのところやや改善しつつある。今後も引き続き景気回復に向けて、全力を尽くすために、運輸関係社会資本の重点的・効率的な整備による内需拡大等を内容とする十二年度概算要求を行ったところである。

第3節 公共事業の改革

 運輸関係社会資本の整備に当たっては、効率性・透明性の向上をより一層推進する必要がある。運輸省では、十一年三月に、省内に事務次官を本部長とする「運輸省公共事業改革等推進本部」を設置し、事業評価、コスト縮減及び投資の重点化・施行対策に対し一元的に取り組んでいる。事業評価については、新規に採択する事業に対する評価や事業採択後一定期間を経過した事業に対する再評価の実施に当たり、評価方法や評価の実施手続きを定めた。これに基づく十一年度予算の再評価結果では、九十二事業中二十九事業について中止又は休止を決定した。さらに、事業完了後の「事後評価」についても、試行することを含め検討を進めている。
 コスト縮減に関しては、「運輸関係公共工事コスト縮減に関する行動計画」において、九年度からの三年間に公共工事コストの一〇%以上の縮減をめざすこととしており、十年度は、約五・五%のコスト縮減を図った。十一年度は、計画の最終年度として目標を達成するため、必要な施策に取り組んでいる。
 投資の重点化・施行対策では、大都市圏へ重点配分するとともに、十一年度上半期の契約額が伸びるよう、積極的かつ着実な施行を行っている。

第2章 国際社会と運輸

第1節 国際運輸サービスの充実

 航空分野では、平成十年度に九か国との間で輸送力等を拡大し、十一年八月にはカタルとの間で新規協定が発効したほか、海運分野では「海運自由の原則」を基本とし、国際機関・二国間での海運政策調整を通じて自由化を図るなど、国際運輸サービスの充実に努めている。

第2節 国際的課題に対応した運輸行政の展開

 APEC(アジア太平洋経済協力)、WTO(世界貿易機関)等の多国間協議、運輸ハイレベル協議等の二国間協議及び自動車、海運分野等の個別経済問題への対応を精力的に行い、国際的課題に対応した運輸行政を展開している。

第3節 国際社会への貢献

 技術協力や資金協力等の幅広い国際協力、マラッカ・シンガポール海峡での航行安全対策や、IMO(国際海事機関)における船舶の安全基準の見直し作業等の海上安全対策、共同研究・専門家交流等による国際科学技術協力を積極的に推進している。

第3章 二十一世紀に向けた観光政策の推進

第1節 国際観光交流の促進

 ウェルカムプラン21及び外客誘致法に基づき、国際観光テーマ地区の整備等のほか、国際観光振興会において国内観光情報を包括的に検索できるシステムを構築、外国語及び日本語でインターネット等を通じて提供する「次世代観光情報基盤整備事業」等の施策を推進している。

第2節 観光による地域の活性化

 観光による地域の活性化を図るため、観光地づくり推進モデル事業の実施、広域連携観光振興会議の開催、旅フェア ’99の開催等関係者一体となった観光振興施策を行うとともに、総合保養地域の整備及び地域伝統芸能を活用した観光の振興等魅力のある観光地づくりに取り組んでいる。

第3節 旅行・レクリエーションの振興

 平成十年十月に一部祝日の月曜日指定化のための関連法案が成立し、十二年一月から施行された。今後はこれらの祝日も利用して、国民の旅行促進等ゆとりある生活のさらなる実現をめざしていくことが重要であり、これを契機として、旅行の長期化等余暇活動がさらに促進されることが期待されている。

第4章 効率的な物流体系の構築

第1節 総合的な物流施策の推進

 「総合物流施策大綱」を踏まえつつ、運輸省としての物流施策を強力に推進していくため、平成十年九月に貨物流通本部を開催し、「運輸省物流施策アクション・プラン」を決定した。

第2節 物流構造改革に対応した物流拠点の整備

 平成十年六月に「物流拠点の整備を進める上での指針」を決定したほか、地域における物流効率化についての総合的かつ計画的な取り組み(「地域物流マネジメント」)の推進方策のあり方について検討している。

第3節 物流サービスの向上、物流システム高度化への取り組み

 物流業に係る規制緩和措置を推進しているほか、物流サービスの向上、物流システム高度化への取り組みとして、複合一貫輸送、物流EDI標準(JTRN)等の普及促進を図っている。また、ITSの活用によるトラック輸送の情報化についても調査研究を進めている。

第4節 モーダルシフトの推進

 「運輸省物流施策アクション・プラン」においては、長距離雑貨輸送における海運及び鉄道が占める割合(モーダルシフト化率)を現在の約四〇%から二〇一〇年(平成二十二年)には五〇%を超える水準に向上させることが目標として設定されており、この目標を達成するため内航コンテナ船・内航RORO船等の整備などモーダルシフト施策を推進している。

第5章 国民のニーズに応える鉄道輸送の展開

第1節 鉄道整備の推進

 整備新幹線については、平成八年十二月の政府与党合意及び十年一月二十一日の政府・与党整備新幹線検討委員会における検討結果を踏まえ、整備を推進している。また、都市間移動の高速化、都市圏内の混雑緩和及びモーダルシフトの推進等のため、在来線の高速化、都市鉄道の整備、地方鉄道の近代化及び貨物鉄道の整備等に対する補助等を行っている。

第2節 鉄道輸送サービスの充実

 運輸政策審議会答申等を受け、鉄道事業法の改正が行われ、需給調整規制の廃止や、安全規制の見直し、乗継ぎ利便の向上のための制度の創設が行われた。また、利便性の向上等の観点から快適な駅施設及び車両の整備等の施策を講じている。

第3節 国鉄長期債務の処理

 国鉄清算事業団の債務等の処理を図るために必要な措置を定めた「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律」が、十年十月十五日に成立、同月二十二日に施行され、国鉄清算事業団は解散した。
 また、日本鉄道建設公団に引き継がれた業務(資産処分及び年金支払い)の一環として、十一年八月にJR東日本株式の第二次売却が実施された。

第6章 安全で快適な車社会の形成

第1節 科学的な手法による安全対策の推進

 自動車交通事故の状況はますます深刻化している。このため、平成十一年六月の運輸技術審議会答申を踏まえ、答申に示された低減目標(運輸省の施策により死者数を一千五百人削減)を達成すべく、事故実態の把握・分析を踏まえた科学的な手法により、事業用自動車の安全対策、車両の安全対策等の諸施策を積極的に展開している。

第2節 利用者ニーズに対応した輸送サービスの確保

 バス、タクシー、トラック輸送等に係る諸課題に取り組むとともに、高度化・多様化する利用者ニーズに対応するため規制の見直しやバス利用促進等総合対策事業(オムニバスタウン構想等)の推進等の施策を講じている。

第7章 海事政策の新たな展開

第1節 活力ある海上交通に向けての取り組み

 外航海運事業については国際船舶制度の拡充等により国際競争力の強化を図っている。内航海運事業及び港湾運送事業について事業の活性化を図っているほか、国内旅客船事業については需給調整規制の廃止と、これに伴い必要となる環境整備のための措置を講じることを目的として、十一年六月に海上運送法の一部改正を行った。

第2節 魅力ある造船・舶用工業をめざして

 我が国造船・舶用工業が、海上物流の効率化等に必要な高度な船舶の供給等の社会的なニーズに応え、「魅力ある産業」として存立するために必要な研究開発の活性化を進めるとともに、内航海運不況の影響を強く受けている中小造船業及び関連する舶用工業対策を推進している。

第3節 船員対策の新たな展開

 外航海運については国際船舶制度の拡充に向けた施策として、日本人の若年船員を対象とした実践的な教育訓練や外国資格受有者が船舶職員として船舶に乗り組める制度の円滑な施行を図るとともに、高齢化の著しい内航海運における若年船員確保対策、本四架橋の供用等に伴う離職船員対策等を推進している。

第8章 二十一世紀に向けた港湾

第1節 二十一世紀に向けた港湾の整備・管理

 平成十年十一月、港湾審議会に対して、「経済・社会の変化に対応した港湾の整備・管理のあり方について」諮問が行われ、全国的・広域的な視点に立った取り組みの強化、地域の主体的な取り組みの強化、港湾行政の透明性、効率性の向上を提言した中間報告が十一年七月にまとめられた。

第2節 物流コストの削減に資する港湾整備の推進

 港湾整備において、投資の重点化や事業の透明性の確保を図りつつ、国際海上コンテナターミナル、複合一貫輸送対応内貿ターミナル等の拠点的整備を進め、物流コストの削減を推進している。

第3節 港湾の効率的な利用の推進

 港湾の効率的な利用を促進するため、入出港手続の簡素化や港湾諸手続のEDI化(電子情報処理化)を進めている。また、港湾諸料金の改善にも取り組んでいる。

第4節 安全で豊かな暮らしを支える港湾空間の形成

 潤いのある生活空間の形成のため、エコポートの形成、廃棄物処分場の整備、プレジャーボートの係留・保管対策を進めている。また、地震に強い港づくりを推進している。

第5節 安全で親しみやすい海辺の生活空間づくり

 十一年五月海岸法の一部を改正し、砂浜の保全と回復を推進するなど防護・環境・利用の調和のとれた総合的な海岸管理のための制度が創設されるとともに、法の対象となる海岸の拡張、海岸保全に関する計画制度の見直し、海岸の日常的な管理への市町村の参画の推進等が行われた。

第9章 人・ものの流れを支える航空

第1節 利用者利便の一層の向上と航空輸送ネットワークの充実

 競争を通じた国内航空ネットワークの充実を図るため、需給調整規制を撤廃し、運賃を認可制から届出・変更命令制へ移行すること等を内容とする航空法の改正を行うとともに、改正航空法施行に当たり必要となる諸課題の解決に向けた検討を行っている。

第2節 航空安全の確保と航空保安システムの拡充

 航空における安全な運航の確保は引き続き重要な課題であることから、航空法の改正を行い、整備士制度の見直し等、航空技術の発達等に対応した安全規制の見直しを行った。また、交通容量の増大や安全性の向上に資するシステムとして、運輸多目的衛星(MTSAT)を中核とする次世代航空保安システムを着実に整備している。

第3節 空港整備等の推進

 増大する航空需要に対応するため、第七次空港整備七箇年計画に基づき大都市圏拠点空港の整備を最優先課題として推進するとともに、一般空港についても滑走路新設・延長事業等に取り組んでいる。

第10章 環境と運輸

第1節 地球環境問題への対応

 地球温暖化対策や、オゾン層を保護するための取り組みを推進するとともに、海洋変動の監視・予測を行っている。

第2節 海洋汚染への対応

 海洋環境保全を図るため、国際海事機関における世界的課題、近隣諸国との協力体制の構築といった地域的課題に積極的に取り組んでおり、国内では、ナホトカ号事故等大規模油流出事故を教訓とした流出油防除対策等を推進するとともに、海洋環境の保全指導取締を実施している。

第3節 地域的環境問題への対応

 自動車排出ガス等による大気汚染等の地域的な環境問題への対応のため、自動車の排出ガス規制・騒音対策、船舶の排出ガス・騒音対策、鉄道及び航空機の騒音対策等の個別の交通機関ごとの対策を行っている。

第11章 運輸における安全対策・技術開発等の推進

第1節 交通安全対策の推進

 交通安全の確保は運輸行政の基本であり、このための施策の推進は最重要課題の一つである。運輸省では、陸・海・空にわたる総合的な交通安全対策を講じ、各輸送機関の安全確保に努めている。

第2節 災害対策の推進

 各種の災害に対処するため、災害防止のための予報体制の強化、輸送施設及び交通機関の災害予防対策、津波・高潮・浸食対策、災害復旧事業を総合的かつ計画的に推進している。

第3節 技術開発の推進

 急速に高齢化社会を迎える我が国が、今後とも活力を維持し、持続的な発展を遂げるためには、独創的・革新的な技術を創出していくことが必要であり、交通サービスの飛躍的な向上に資する、先進安全自動車(ASV)、軌間可変電車(フリーゲージトレイン)、超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)、運輸多目的衛星(MTSAT)のような技術研究開発を強力に推進している。

第4節 情報化の推進

 消費者利便の向上や安全性の向上等のため、ICカードを活用した汎用電子乗車券の開発及び普及促進、地理情報システム(GIS)の整備、移動制約者支援モデルシステム等の研究開発、運輸分野における個人情報保護対策、気象サービスの高度化、運輸行政の情報化を推進している。


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月例経済報告(一月報告)


経済企画庁


 概 観

 我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっている。住宅建設は、年度前半に比べやや水準を下げているものの、マンションが好調であることや持家の動きを反映して、直近は増加している。設備投資は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、減少基調が続いている。公共投資は、着工は低調に推移しており、事業の実施も前年を下回っている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、生産は、持ち直しの動きが続いている。
 雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響で、緩やかな改善が続いている。
 政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築くため、経済新生対策を始めとする諸施策を推進する。
 なお、十二月十九日に平成十二年度の実質経済成長率を一・〇%程度と見込んだ「平成十二年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」を閣議了解し、また、十二月二十四日には八十四兆九千九百億円(前年度当初比三・八%増)の平成十二年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。

     ◇    ◇    ◇

 我が国経済
 需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっている。住宅建設は、年度前半に比べやや水準を下げているものの、マンションが好調であることや持家の動きを反映して、直近は増加している。設備投資は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、減少基調が続いている。公共投資は、着工は低調に推移しており、事業の実施も前年を下回っている。
 産業面をみると、在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、鉱工業生産は、持ち直しの動きが続いている。企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。
 雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十二月は百二円台から百三円台で推移したが、一月月央には百六円台まで下落した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十二月は月央にかけて低下し、その後上昇したが、年末から一月月央にかけて再び低下した。長期金利は、十二月はやや低下した後、一月は月央にかけておおむね横ばいで推移した。株式相場は、十二月から一月月央にかけて一進一退で推移した。マネーサプライM+CD)は、十二月は前年同月比二・六%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

 海外経済
 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年四〜六月期前期比年率一・九%増の後、七〜九月期は同五・七%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、過去最高水準となった。十二月の長期金利(三十年物国債)は、月前半はやや低下したもののその後は大きく上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、上昇基調で推移した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は改善している。フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気は改善している。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している。失業率は、ドイツでは高水準ながらもこのところやや低下している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。なお、イングランド銀行は一月十三日、政策金利(レポ金利)を〇・二五%ポイント引き上げ、五・七五%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。失業率は低下している。
 国際金融市場の十二月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。
 国際商品市況の十二月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬にかけ二〇二ポイント割れしたものの、その後は二〇五ポイント前後のレンジ内で上下した。原油スポット価格(北海ブレント)は、二十四〜二十七ドルの間で乱高下しながら推移した。

1 国内需要
―足踏み状態にある個人消費―

 個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっている。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で十月二・三%減の後、十一月(速報値)は二・九%減(季節調整済前月比〇・〇%)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比二・四%減、勤労者以外の世帯では同三・五%減となった。形態別にみると、財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比二・七%減、勤労者世帯では同二・九%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で十月一・四%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で十月〇・三%減の後、十一月(速報値)は二・八%減(季節調整済前月比二・四%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で十月一・三%減の後、十一月(速報値)四・五%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で十月〇・三%減の後、十一月八・二%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で十二月(速報値)は一・八%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で十一月は〇・八%減となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、十一月は前年同月比で国内旅行が三・五%減、海外旅行は〇・四%減となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で十月〇・〇%の後、十一月は〇・一%増(事業所規模三十人以上では同〇・四%増)となり、うち所定外給与は、十一月は同六・八%増(事業所規模三十人以上では同六・一%増)となった。実質賃金は、前年同月比で十月〇・八%増の後、十一月は一・五%増(事業所規模三十人以上では同一・七%増)となった。
 住宅建設は、年度前半に比べやや水準を下げているものの、マンションが好調であることや持家の動きを反映して、直近は増加している。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で十月は九・六%減(前年同月比〇・六%減)となった後、十一月は三・四%増(前年同月比八・一%増)の九万八千戸(年率百十八万戸)となった。十一月の着工床面積(季節調整値)は、前月比六・八%増(前年同月比一一・七%増)となった。十一月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比七・二%増(前年同月比三・四%増)、貸家は同二・二%減(同四・三%減)、分譲住宅は同九・八%増(同四一・三%増)となっている。
 設備投資は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、減少基調が続いている。
 日本銀行「企業短期経済観測調査」(十二月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の十一年度設備投資計画は、製造業で前年度比一〇・九%減(九月調査比一・二%下方修正)、非製造業で同一〇・八%減(同一・八%下方修正)となっており、全産業では同一〇・八%減(同一・六%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比一五・五%減(九月調査比一・〇%上方修正)、非製造業で同四・〇%減(同一・三%上方修正)となり、中小企業では製造業で同二五・四%減(同五・二%上方修正)、非製造業で一三・三%減(同九・〇%上方修正)となっている。
 なお、十一年七〜九月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で九・六%減(うち製造業二〇・二%減、非製造業三・四%減)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で十月は一・九%増(前年同月比五・五%増)の後、十一月は二・二%減(同一・八%減)となり、基調としてはおおむね下げ止まりの動きが見られる。
 なお、十〜十二月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で二・八%減(前年同期比四・七%減)と見込まれている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、前年を下回る水準が続いていたが、十一月は季節調整済前月比二七・一%増(前年同月比二・六%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比六四・六%増(前年同月比三九・三%増)、非製造業は同二一・二%増(同三・七%減)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、着工は低調に推移しており、事業の実施も前年を下回っている。
 公共工事着工総工事費は、前年同月比で十月は二三・二%減の後、十一月は一九・〇%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で十一月は二・五%減の後、十二月は一二・七%減となった。官公庁からの建設工事受注額(五十社)は、前年同月比で十月三四・八%減の後、十一月は一四・九%減となった。

2 生産雇用
―持ち直しの動きが続く生産―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、生産・出荷は、持ち直しの動きが続いている。
 鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で十月二・七%減の後、十一月(速報)は、電気機械、金属製品等が増加したことから、三・八%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で十二月は輸送機械、電気機械等により一・七%減の後、一月は電気機械、一般機械等により三・一%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で十月二・一%減の後、十一月(速報)は、生産財、資本財等が増加したことから、三・三%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で十月一・六%減の後、十一月(速報)は、金属製品、鉄鋼等が減少したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、〇・六%増となった。また、十一月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は九七・九と前月を二・三ポイント下回った。
 主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は十一月は増加し、在庫は十一月は増加した。輸送機械では、生産は十一月は増加し、在庫は十一月は増加した。化学では、生産は二か月連続で増加し、在庫は十一月は減少した。
 第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(十月調査、季節調整値)でみると、前月比で九月〇・七%減の後、十月(速報)は、不動産業、金融・保険業が増加したものの、運輸・通信業、電気・ガス・熱供給・水道業等が減少した結果、同〇・七%減となった。
 雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、十月〇・四八倍の後、十一月〇・四九倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、十月〇・九一倍の後、十一月〇・八八倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、十月は前年同月比〇・一%減(前年同月差七万人減)の後、十一月は〇・四%減(同十九万人減)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、十月前年同月比〇・二%減(季節調整済前月比〇・一%減)の後、十一月は同〇・二%減(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・五%減)、産業別には製造業では同二・〇%減となった。十一月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差六万人減の三百七万人、完全失業率(同)は、十月四・六%の後、十一月四・五%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では十月前年同月比五・七%増(季節調整済前月比〇・七%減)の後、十一月は同八・九%増(同〇・四%増)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比八・一%増)。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると、企業の雇用人員判断は、過剰感が若干低下したものの、依然として高い水準にある。
 企業の動向をみると、企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。
 前記「企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は十一年度上期には前年同期比四・一%の増益の後、十一年度下期には同一九・八%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では十一年度上期に前年同期比五・五%の減益の後、十一年度下期には同四九・七%の増益が見込まれている。また、非製造業では十一年度上期に前年同期比一三・六%の増益の後、十一年度下期には同〇・〇%で横ばいが見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では十一年度上期に三・三四%になった後、十一年度下期は三・九四%と見込まれている。また、非製造業では十一年度上期に二・三四%となった後、十一年度下期は二・二九%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
 また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は十一年度上期には前年同期比九八・五%の増益の後、十一年度下期には同四二・五%の増益が見込まれている。また、非製造業では、十一年度上期に前年同期比一四・六%の増益の後、十一年度下期には同一二・一%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
 企業倒産の状況をみると、おおむね横ばいとなっている。
 銀行取引停止処分者件数は、十二月は一千七十四件で前年同月比三九・七%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で六五・六%の増加、農林・漁業・水産業で一六・七%の減少となった。

3 国際収支
―輸出は、アジア向けを中心に、増加―

 輸出は、アジア向けを中心に、増加している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で九月三・五%増、十月〇・九%減の後、十一月は〇・二%減(前年同月比一一・〇%増)となった。十一月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械等が減少した。同じく地域別にみると、EU等が減少した。
 輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で十月四・五%減の後、鉱物性燃料輸入等の一時的な増加もあって十一月一五・〇%増(前年同月比一九・八%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、中東等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、十月に一兆一千四百二十四億円の黒字の後、十一月は六千五十六億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 十一月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、一時的な要因もあって輸入が大幅に増加したことから貿易収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、五千百二十八億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅は縮小したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、九千八百二十七億円となった。投資収支(原数値)は、一兆四千四十一億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、一兆四千二百七十三億円の赤字となった。
 十二月末の外貨準備高は、前月比百六十一億ドル増加して二千八百八十一億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十二月は百二円台から百三円台で推移したが、一月月央には百六円台まで下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、十二月は百二円台から百五円台で推移したが、一月月央には百九円台まで下落した。

4 物価
―国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移―

 国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。
 十二月の国内卸売物価は、電気機器(集積回路)等が下落したものの、食料用農畜水産物(鶏卵)等が上昇したことから、前月比保合い(前年同月比〇・六%の下落)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、十二月調査)によると、製商品需給バランスは、依然緩んだ状態にあるものの、引き続き改善がみられる。輸出物価は、契約通貨ベースで保合いだったものの、円高から円ベースでは前月比一・五%の下落(前年同月比七・七%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比〇・六%の下落(前年同月比一・〇%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・二%の下落(前年同月比一・五%の下落)となった。
 企業向けサービス価格は、十一月は前年同月比一・〇%の下落(前月比保合い)となった。
 商品市況(月末対比)は「その他」等は下落したものの、繊維等の上昇により十二月は上昇した。十二月の動きを品目別にみると、天然ゴム等は下落したものの、生糸等が上昇した。
 消費者物価は、安定している。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十月〇・一%の下落の後、十一月は一般生鮮商品の下落幅の拡大等により〇・二%の下落(前月比〇・一%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で十月〇・七%の下落の後、十一月は昨年の生鮮食品の上昇の影響等により一・二%の下落(前月比〇・六%の下落、季節調整済前月比〇・一%の下落)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十一月〇・三%の下落の後、十二月(中旬速報値)は、一般食料工業製品が保合いから下落となったこと等により〇・四%の下落(前月比〇・一%の下落、季節調整済前月比〇・一%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で十一月一・三%の下落の後、十二月(中旬速報値)は昨年の生鮮食品の上昇の影響等により一・五%の下落(前月比〇・五%の下落、季節調整済前月比〇・三%の下落)となった。

5 金融財政
―十二年度予算(概算)を閣議決定―

 政府は平成十一年十二月二十四日、八十四兆九千九百億円(前年度当初比三・八%増)の平成十二年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十二月は月央にかけて低下し、その後上昇したが、年末から一月月央にかけて再び低下した。長期金利は、十二月はやや低下した後、一月は月央にかけておおむね横ばいで推移した。株式相場は、十二月から一月月央にかけて一進一退で推移した。M+CD(速報)は、十二月は前年同月比二・六%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、十二月から一月月央にかけておおむね横ばいで推移した。二、三か月物は、十二月は月央にかけて低下し、その後上昇したが、年末から一月月央にかけて再び低下した。
 公社債市場をみると、国債利回りは、十二月はやや低下した後、一月は月央にかけておおむね横ばいで推移した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、十一月は短期は〇・〇三一%ポイント上昇し、長期は〇・一三一%ポイント低下したことから、総合では前月比で〇・〇一九%ポイント低下し一・七九二%となった。
 マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、十二月(速報)は前年同月比二・六%増となった。また、広義流動性は、十二月(速報)は同二・三%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、十二月(速報)は前年同月比五・九%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後二・二%減)となった。十二月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が一千億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は四千七百六十億円(うち銀行起債分ゼロ)となった。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、十二月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いているが、特に大企業において改善の動きがみられる。
 以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
 株式市場をみると、日経平均株価は、十二月から一月月央にかけて一進一退で推移した。

6 海外経済
―欧州の景気は改善―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、九九年四〜六月期前期比年率一・九%増の後、七〜九月期は同五・七%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は十一月前月差二二・二万人増の後、十二月は同三一・五万人増となった。失業率は十二月四・一%となった。物価は総じて安定している。十二月の消費者物価は前年同月比二・七%の上昇、十二月の生産者物価(完成財総合)は同三・〇%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、過去最高水準となった。十二月の長期金利(三十年物国債)は、月前半はやや低下したもののその後は大きく上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、上昇基調で推移した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は改善している。フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気は改善している。九九年七〜九月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率二・九%増、フランス同三・九%増(確報値)、イギリス同三・一%増(確定値)となった。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ十一月前月比〇・五%減、フランス十月同〇・八%増、イギリス十月同〇・二%増)。失業率は、ドイツでは高水準ながらもこのところやや低下している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ十二月一〇・二%、フランス十一月一〇・八%、イギリス十一月四・一%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ十二月前年同月比一・二%、フランス十二月同一・二%、イギリス十一月同一・四%)。なお、イングランド銀行は一月十三日、政策金利(レポ金利)を〇・二五%ポイント引き上げ、五・七五%とした。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。失業率は低下している。
 国際金融市場の十二月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、十二月三十一日現在一〇五・九、十一月末比〇・六%の減価となっている。内訳をみると、十二月三十一日現在、対円では十一月末比横ばい、対ユーロでは同〇・二%増価した。
 国際商品市況の十二月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬にかけ二〇二ポイント割れしたものの、その後は二〇五ポイント前後のレンジ内で上下した。原油スポット価格(北海ブレント)は、二十四〜二十七ドルの間で乱高下しながら推移した。




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平成十一年七〜九月期平均家計収支


―消費支出(全世帯)は実質〇・四%の減少―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 全世帯の消費支出は、平成九年十〜十二月期以降六期連続の実質減少となった後、十一年四〜六月期は実質増加となり、七〜九月期は実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、平成九年十〜十二月期以降五期連続して実質減少となった後、十一年一〜三月期は実質増加、四〜六月期は前年同期と同水準となり、七〜九月期は実質減少となった。
 消費支出は、平成十年七〜九月期は実質減少、十〜十二月期は実質増加となり、十一年一〜三月期以降三期連続の実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十七万八千八百七十三円。
 前年同期に比べ、名目、実質ともに〇・二%の減少。











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単身世帯収支調査結果の概況


―平成十一年度四〜九月期平均速報―


総 務 庁


◇単身全世帯の家計

 消費支出は、平成十年度四〜九月期以降三期連続の実質増加となり、増加幅も大幅に拡大した(第1図第2図第1表参照)。

◇単身勤労者世帯の家計

 勤労者世帯の実収入は、実質増加となった。平均消費性向は、前年度同期を上回った。消費支出は、大幅な実質増加となった(第2表参照)。

◇男女・年齢階級別の家計

 消費支出は、三十五歳未満及び三十五歳〜五十九歳で大幅な実質増加となった(第3表参照)。

◇財・サービス区分別の消費支出
 (全国・単身全世帯)

(一) 財(商品)は、実質六・〇%の増加。
   <耐久財> 実質五三・八%の増加
   <半耐久財> 実質五・六%の増加
   <非耐久財> 実質〇・九%の減少
(二) サービスは、実質八・三%の増加。







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二月の気象


 二月に入ると、冬型の気圧配置(日本海側で雪、太平洋側で晴れ)が次第に長続きしなくなり、本州付近を低気圧や高気圧が交互に通過することが多くなります。低気圧が九州から本州の太平洋側に沿うように進んで、ふだん雪の少ない太平洋側の地方でも大雪となったり、低気圧が急激に発達して全国的に暴風が吹き荒れたりすることがあります。
◇暴風と太平洋側の大雪
 平成六年の二月十一日から十二日にかけて日本の南海上を通過した低気圧は、西日本から東日本にかけて大雪をもたらしました。この時、首都圏の交通機関は大混乱、翌十三日も積もった雪が凍り、歩行者が転倒してけがをするなどの事故が相次ぎました。
 また、平成六年二月二十日から二十二日にかけて、南海上を日本列島に沿って北上した低気圧は急激に発達し、各地に暴風や大雨をもたらしました。このように、本州の南海上を低気圧が急激に発達しながら通過する場合には、天気や風の急変、高波などに注意が必要です。特に、海や山での作業やレジャーには、最新の気象情報を利用して、天気変化に気を配り、無理のない計画をたてることが必要です。
◇雨と雪の分かれ目
 ふだん雪に慣れていない太平洋側の地方では、数センチのわずかな積雪でも交通機関などに大きな影響が出るため、雨になるのか雪になるのかは大きな問題です。
 天気が雨・雪・みぞれのいずれかになるかは、上空の大気の状態とともに、地上の気温と湿度の微妙な関係で決まるので、天気予報で最も難しい現象の一つです。(気象庁)



    <2月23日号の主な予定>

 ▽障害者白書のあらまし……………………総 理 府 

 ▽消費者物価指数の動向(十二月)………総 務 庁 




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