官報資料版 平成12年5月24日




                  ▽地方財政白書のあらまし………自 治 省

                  ▽家計収支(二月分)……………総 務 庁











地方財政白書のあらまし


―地方財政の状況―


自 治 省


 「地方財政の状況」(地方財政白書)は、平成十二年三月二十四日の閣議決定を経て、国会に報告された。これは、地方財政法第三十条の二の規定に基づき、内閣が地方財政の状況を明らかにして、毎年国会に報告するものであり、その内容は次の二部構成となっている。
 第一部では、平成十年度地方公共団体の決算を中心として、地方財政の状況を明らかにしている。第二部では、最近の地方財政の動向を要約し、当面する主要な課題について取りまとめている。
 以下、平成十年度の地方公共団体の普通会計決算の状況を中心に、白書のあらましについて紹介する。

<第一部> 平成十年度の地方財政

一 地方財政の役割

 地方公共団体は、その自然的・歴史的条件、産業構造、人口・財政規模等においてそれぞれ異なっており、これに即応して多種多様な行政活動及び財政運営を行っている。このような個々の地方公共団体の財政活動の集合である地方財政は国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。

 (1) 国・地方を通じた財政支出
 国と地方の財政は、密接な関係を保ちながら、ともに国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。そこで、国と地方の財政が担っている役割について、その財政規模と目的別支出からみることとする。なお、ここでは、国・地方を通じた財政支出として、国(一般会計と交付税及び譲与税配付金、公共事業関係等の十特別会計の純計)と地方(普通会計)の財政支出の合計から重複分を除いた歳出純計額を用いる。
 <財政規模> 国と地方の歳出純計額は百五十六兆三千八百三十一億円で、前年度と比べると五・一%増(前年度一・八%減)となっている。
 歳出純計額の目的別歳出額の構成比の推移は、第1図のとおりであり、平成九年度においては、社会保障関係費が最も大きな割合(二三・六%)を占め、以下、国土保全及び開発費(二〇・一%)、公債費(一七・六%)、教育費(一四・四%)の順となっている。なお、公債費の構成比が高い水準にあるのは、昭和五十年度以降の巨額の財源不足、平成四年度以降の経済対策等に対処するため、国・地方を通じて大量の公債が発行されたことによるものである。
 この歳出純計額を最終支出の主体に着目して国と地方とに分けてみると、国が五十二兆三千二百八十億円、地方が九十六兆四千百九十五億円で、前年度と比べると、国が二・五%減(前年度〇・六%増)、地方が一・四%減(同〇・三%増)となっている。また、歳出純計額に占める割合は、国が三五・二%、地方が六四・八%となっている。
 <目的別支出> 歳出純計額の目的別及び支出主体別の規模は、第2図のとおりである。これによると、防衛費等のように国のみが行う行政に係るものは別として、公衆衛生、清掃等の衛生費、小学校、中学校、高等学校等の学校教育費、道路整備、都市計画、土地改良等の国土開発費、警察、消防等の司法警察消防費等、国民生活に直接関連する経費については、最終的に地方公共団体を通じて支出されている割合が高いことがわかる。
 なお、公営企業会計を含めた地方財政における、道路、都市計画、環境衛生、厚生福祉、教育文化、上・下水道、交通、病院等の生活環境・福祉・文化機能に係る事業の現状をみると、歳出純計額、普通建設事業費(建設投資額)及び単独事業費に占める割合は、それぞれ七二・二%、七二・〇%、八〇・一%となっており、地方公共団体は住民生活に密接に関連した社会資本の整備等国民生活の質的向上につながる分野に公共投資基本計画の割合(計画上六〇%台前半)を上回る費用を支出している。

 (2) 国民経済と地方財政
 政府部門は、国民経済計算上、中央政府、地方政府及び社会保障基金からなっており、家計部門に次ぐ経済活動の主体として、資金の調達及び財政支出を通じ、資源配分の適正化、所得分配の公正化、経済の安定化などの重要な機能を果たしている。その中でも、地方政府は、中央政府を上回る最終支出主体であり、国民経済上、大きな役割を担っている。
 <国内総支出と地方財政> 国民経済において地方政府が果たしている役割を国内総支出(名目ベース。以下同じ。)に占める割合でみると、第3図のとおりである。平成十年度の国内総支出は四百九十七兆二千五百五十八億円であり、その支出主体別の構成比は、家計部門が六五・七%(前年度六五・二%)、企業部門が一四・三%(同一五・六%)、政府部門が一八・一%(同一七・六%)となっている。政府部門のうち、地方政府及び中央政府が国内総支出に占める割合は、地方政府が一三・四%(同一三・一%)、中央政府が四・四%(同四・三%)となっており、政府部門の中でも、地方政府の構成比は中央政府の約三倍となっている。なお、地方政府のうち普通会計分は五十六兆九千九百十二億円で、国内総支出の一一・五%(同一一・三%)を占めている。
 <公的支出の状況> 政府部門による平成十年度の公的支出は、三年連続で公的総資本形成が前年度を下回ったものの、政府最終消費支出が引き続き前年度を上回ったことから前年度と比べると〇・五%増(前年度一・三%減)の八十九兆八千六百八十四億円となった。また、国内総支出に占める割合も、前年度と比べると〇・五%ポイント上昇の一八・一%となっている。
 公的支出の内訳をみると、政府最終消費支出が五十兆九千百九億円、公的総資本形成(公的総固定資本形成と公的在庫品増加の合計額)が三十八兆九千五百七十五億円となっており、これらを前年度と比べると、政府最終消費支出は一・八%増(前年度三・〇%増)、公的総資本形成は一・一%減(同六・二%減)となっている。
 さらに、公的支出の内訳を最終支出主体別にみると、第4図のとおりである。中央政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が三・〇%増(前年度三・七%増)、公的総資本形成が二・一%減(同五・七%減)で合計〇・六%増(同一・〇%減)であり、公的支出に占める中央政府の割合は前年度と同じ二四・四%となっている。
 これに対して、地方政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が一・三%増(前年度二・七%増)、公的総資本形成が〇・七%減(同六・五%減)で、合計〇・五%増(同一・五%減)であり、公的支出に占める地方政府の割合は、前年度(七四・三%)より〇・一%ポイント低下の七四・二%となっている。
 また、政府最終消費支出及び公的総資本形成に占める地方政府の割合をみると、政府最終消費支出においては前年度(七五・八%)と比べると一・三%ポイント低下の七四・五%、公的総資本形成においては前年度(七三・五%)と比べると〇・四%ポイント上昇の七三・九%となっており、依然七割を超える額を地方政府が支出している。
 なお、ここでいう公的支出には、国・地方の歳出に含まれる経費の中で、移転的経費である扶助費、普通建設事業費のうち所有権の取得に要する経費である用地取得費、金融取引に当たる公債費及び積立金等といった付加価値の増加を伴わない経費は除かれている。したがって、公的支出に占める中央政府及び地方政府の割合と次に述べる歳出純計額に占める国と地方の割合は一致していない。

二 地方財政の概況

 地方公共団体の歳入及び歳出は、一般会計及び特別会計によって区分されて経理されているが、各団体の財政事情等により、これらの会計区分は全団体一様ではない。そのため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と、水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。
 以下、平成十年度の地方財政について、普通会計を中心にその状況を述べる。

 (1) 決算規模
 地方公共団体(四十七都道府県、三千二百三十二市町村、二十三特別区、二千二百六十四一部事務組合)の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入百二兆八千六百八十九億円(前年度九十九兆八千八百七十八億円)、歳出百兆一千九百七十五億円(同九十七兆六千七百三十八億円)で、歳入、歳出いずれも昭和二十六年度以降で最大となっている。また、前年度と比べると歳入三・〇%増(前年度一・四%減)、歳出二・六%増(同一・四%減)と二年ぶりに増加となっている。なお、歳出が百兆円を超えたのは初めてのことである。
 このように決算規模が前年度決算額を上回ったのは、歳出については、経済対策に基づく積極的な公共投資や信用収縮対策等により普通建設事業費及び貸付金が増加したこと、平成十年度に元金償還が開始された既発債の発行額が高水準であったことにより公債費が増加したことが、また歳入については、これらの財政需要に対応して地方交付税、国庫支出金、地方債が増加したことが、主な要因となっている。

 (2) 決算収支
 <実質収支> 実質収支等の状況は、第2表のとおりである。実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)は、八千四百二十億円の黒字(前年度一兆八百二十九億円の黒字)で、昭和三十一年度以降黒字が続いているが、黒字額は昭和六十一年度以来十二年ぶりに一兆円を下回っている。
 実質収支が赤字である団体数をみると、平成九年度に赤字であった十三団体(十三市町)のうち十団体(十市町)が引き続き赤字であり、更に十七団体(四都府県、十一市町村、二一部事務組合)が新たに赤字団体となった結果、赤字団体数は合計二十七団体で、前年度と比べると十四団体増加した。なお、合併に伴う打切り決算により、これ以外に五団体(四町、一一部事務組合)が赤字になった。
 なお、標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率は、都道府県は〇・九%ポイント低下の△〇・三%、市町村は〇・一%ポイント低下の二・八%となっている。
 <単年度収支> 単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、これまで(昭和二十九年度以降)で最大の二千四百三億円の赤字(前年度三百七億円の黒字)となっている。これを団体種類別にみると、都道府県は二千三百二十二億円の赤字(前年度四百二十九億円の黒字)、市町村は八十一億円の赤字(前年度百二十二億円の赤字)となっている。
 また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、これまで(昭和三十二年度以降)で最大の二千六百五十九億円の赤字(前年度一千五百二十五億円の赤字)となっている。これを団体種類別にみると、都道府県は二千五百六十二億円の赤字(前年度二千二百五十一億円の赤字)、市町村は九十六億円の赤字(前年度七百二十六億円の黒字)となっている。

三 地方財源の状況

 (1) 歳入の概況
 歳入純計決算額は百二兆八千六百八十九億円で、前年度と比べると三・〇%増(前年度一・四%減)と増加に転じた。
 歳入決算額の主な内訳をみると、第3表のとおりである。
 地方税は平成七年度以降三年連続して増収となっていたが、十年度は個人住民税の特別減税や法人企業の業績低迷等により、道府県民税、市町村民税、事業税等が減収となったため、減少に転じた(〇・六%減)。また、地方譲与税は地方消費税の導入に伴い消費譲与税相当額が廃止されたこと等のため、二年連続して大幅に減少した(四四・九%減)ものの、地方交付税(五・四%増)が増加したことから、一般財源は微増となり(〇・四%増)、四年連続して前年度決算額を上回った。経済対策が実施されたこと等に伴い、国庫支出金(九・六%増)及び地方債(七・五%増)はそれぞれ前年度決算額を上回った。

 (2) 租税及び地方税等の状況
 <租税収入及び租税負担率> 国及び地方公共団体の行政活動に要する経費は、最終的にはその大部分が租税によって賄われている。国税と地方税を合わせ租税として徴収された額は八十七兆一千百九十九億円で、前年度と比べると五・一%減(前年度一・六%増)となっている。
 国民所得に対する租税総額の割合である租税負担率をみると、昭和五十一年度以降平成二年度まで年々上昇し二七・八%となったが、その後は低下傾向にあり、十年度においては、前年度と比べると〇・四%ポイント低下の二三・〇%となった。なお、主要な諸外国の租税負担率をみると、アメリカ二七・五%(一九九七暦年計数)、イギリス三九・三%(同)、ドイツ二九・二%(同)、フランス三六・三%(同)となっている。
 次に、租税を国税と地方税の別でみると、国税五十一兆一千九百七十七億円(七・九%減)、地方税三十五兆九千二百二十二億円(〇・六%減)といずれも四年ぶりに減収となった。租税総額に占める国税と地方税の割合は、第5図のとおりで、国税五八・八%(前年度六〇・六%)、地方税四一・二%(同三九・四%)となっている。また、地方交付税及び地方譲与税を国から地方へ交付した後の租税の実質的な配分割合は、国四一・七%(同四二・二%)、地方五八・三%(同五七・八%)となっている。
 <地方税> 地方税の決算額は三十五兆九千二百二十二億円で、前年度と比べると〇・六%減(前年度三・〇%増)となっており、四年ぶりに減収となった。
 このように地方税が前年度決算額を下回ったのは、特別減税が十年度には実施されたこと等から個人住民税が減収となったことに加えて、法人企業の業績低迷により法人住民税及び法人事業税が引き続き減収となったこと等によるものである。
 歳入総額に占める地方税の割合は、昭和六十三年度(四四・三%)をピークに低下を続けた後、平成八年度に上昇に転じたが、十年度は、前年度と比べると一・三%ポイント低下の三四・九%となった。

 (3) 地方譲与税
 地方譲与税の決算額は五千九百五十二億円で、消費譲与税相当額の譲与が平成九年限りの措置であったこと等から、前年度と比べると四四・九%減(前年度四五・九%減)と大幅な減少となった。また、歳入総額に占める割合も〇・六%(同一・一%)と減少した。
 地方譲与税の内訳をみると、地方道路譲与税が二千八百三十億円(五・七%増)、自動車重量譲与税が二千七百七億円(〇・九%減)、航空機燃料譲与税が百六十三億円(四・五%増)、石油ガス譲与税が百四十五億円(〇・五%減)及び特別とん譲与税が百七億円(六・四%減)となっている。

 (4) 地方交付税
 地方交付税の決算額は十八兆四百八十九億円で、前年度と比べると五・四%増(前年度一・四%増)となっており、五年連続して前年度決算額を上回っている。その内訳は、普通交付税が十六兆八千四百三十三億円、特別交付税が一兆二千五十五億円となっている。また、歳入総額に占める割合は、平成元年度(一八・〇%)をピークに、その後は低下傾向にあったが、八年度は上昇に転じ、十年度には一七・五%(前年度一七・一%)となった。
 なお、基準財政需要額は四十五兆七千五百十六億円(財源不足団体分四十兆三千九百六十六億円、財源超過団体分五兆三千五百五十億円)、基準財政収入額は二十九兆七千九百六十一億円(財源不足団体分二十三兆五千二百七十七億円、財源超過団体分六兆二千六百八十三億円)で、財源不足団体の財源不足額は十六兆八千六百八十九億円、財源超過団体の財源超過額は九千百三十三億円となっている。
 普通交付税の交付状況をみると、不交付団体は、都道府県においては前年度と同じく東京都一団体となっており、市町村においては前年度(百二十一団体)より三団体減少の百十八団体となっている。

 (5) 一般財源
 一般財源は、地方税、地方譲与税及び地方交付税の合計額(市町村決算においては、これらに加えて、都道府県から交付される利子割交付金等各種交付金を加えた合計額)であり、決算額は五十四兆五千六百六十三億円で、前年度と比べると〇・四%増(前年度〇・七%増)となっており、四年連続して増加した。また、歳入総額に占める割合は、平成元年度(六二・七%)をピークとして、その後低下を続けており、八年度及び九年度は上昇したものの、十年度には再び低下し、五三・〇%(前年度五四・四%)となった。

 (6) 国庫支出金
 国庫支出金の決算額は十五兆七千四百五十一億円で、前年度と比べると九・六%増(前年度二・八%減)となっており、三年ぶりに増加に転じた。また、歳入総額に占める割合も一五・三%(同一四・四%)と三年ぶりに増加に転じた。
 次に、国庫支出金の内訳をみると、普通建設事業費支出金が六兆三千三十九億円で最も大きな割合(国庫支出金全体の四〇・〇%)を占め、以下、義務教育費負担金が三兆百十六億円(同一九・一%)、生活保護費負担金が一兆二千九百二十億円(同八・二%)となっており、以上の支出金等で国庫支出金総額の六七・四%を占めている。

 (7) 地方債
 地方債の決算額は十五兆一千三百五十六億円(交付公債の三億円を除く。)で、経済対策に基づく公共投資の財源として地方債が活用されたこと、地方税の減収や特別減税等に対処するための地方債が発行されたこと等から前年度と比べると七・五%増(前年度九・八%減)となっており、三年ぶりに増加に転じた。この結果、地方債依存度(歳入総額に占める地方債の割合)も前年度と比べると〇・六%ポイント上昇の一四・七%(前年度一四・一%)となり、三年ぶりに増加に転じた。
 地方債の目的別の発行状況をみると、一般単独事業債が五兆七千八百三十二億円で最も大きな割合(地方債発行総額の三八・二%)を占め、以下、一般公共事業債が三兆五千七百二十三億円(同二三・六%)、減収補てん債が一兆二千五百十億円(同八・三%)、減税措置に伴う個人住民税の減収等に対処するために発行された減税補てん債が一兆一千二百六十八億円(同七・四%)、一般廃棄物処理事業債が四千九百二十四億円(同三・三%)、公営住宅建設事業債が三千八百八十四億円(同二・六%)の順となっている。
 なお、減収補てん債については、前年度と比べると一一八・〇%増(前年度一〇五二・五%増)となっており、地方債発行総額に占める割合も前年度(四・一%)と比べると四・二%ポイント上昇している。

四 地方経費の内容

 歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

 (1) 目的別歳出
 歳出決算額の状況を、行政の目的に従って土木建設(土木費)、教育と文化(教育費)、産業の振興(農林水産業費、商工費)、民生の安定(民生費、労働費)、保健衛生と環境保全(衛生費等)、警察と消防(警察費、消防費)に分けてみると、以下のとおりである。
 歳出純計決算額は百兆一千九百七十五億円で、前年度と比べると二・六%増(前年度一・四%減)と増加に転じた。
 目的別歳出の構成比をみると、第4表のとおりであり、主な目的別歳出の構成比は、土木費(二一・九%)、教育費(一八・六%)、民生費(一三・四%)、公債費(一〇・九%)、総務費(八・六%)の順となっており、土木費、教育費及び民生費で全体の半分以上を占めている。
 これら項目の伸び率をみると、土木費が三・〇%増(前年度五・一%減)、教育費が一・〇%減(同〇・三%減)、民生費が五・七%増(同四・三%増)、公債費が五・八%増(同八・六%増)、総務費が〇・四%減(同一〇・一%減)となっており、公債費は引き続き高い伸び率を示している。
 なお、一般財源総額(五十四兆五千六百六十三億円)に占める目的別歳出の割合をみると、教育費が最も大きな割合(二三・六%)を占め、以下、公債費(一八・五%)、民生費(一四・九%)、土木費(一四・三%)の順となっている。

 (2) 性質別歳出
 地方公共団体の経費は、その経済的性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。
 義務的経費は、職員の給与等の人件費のほか、生活保護等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、普通建設事業費が大部分を占めている。
 歳出純計決算額の性質別内訳をみると、第5表のとおりである。
 人件費(〇・四%増)、扶助費(六・二%増)、公債費(五・八%増)のすべてが増加したことから、義務的経費が前年度決算額を上回った(二・五%増)。また、普通建設事業費(一・九%増)は、災害復旧事業費(一三・八%増)が増加したことから、投資的経費も前年度決算額を上回った(二・一%増)。その他の経費は、貸付金(八・三%増)等が増加したことから前年度決算額を上回った(三・二%増)。
 <義務的経費> 義務的経費は、人件費、扶助費及び公債費からなっている。
 義務的経費の決算額は四十四兆四千五百三十億円で、前年度と比べると二・五%増(前年度四・一%増)となっている。また、義務的経費の歳出総額に占める割合は四四・四%で、前年度と同率となっている。
 義務的経費の内訳をみると、人件費が二十七兆四百五十一億円で義務的経費に占める割合は六〇・八%(前年度六二・一%)、公債費が十兆八千六百三十四億円で二四・四%(同二三・七%)、扶助費が六兆五千四百四十五億円で一四・七%(同一四・二%)となっており、近年は公債費及び扶助費の構成比が上昇する一方、人件費の構成比は低下している。
 (人件費) 人件費は、職員給、地方公務員共済組合等負担金、退職金、委員等報酬、議員報酬手当等からなっている。
 この人件費の決算額は二十七兆四百五十一億円で、前年度と比べると〇・四%増となり、前年度の伸び率(一・九%増)を一・五%ポイント下回り、これまで(昭和二十九年度以降)で最も低い率であった。
 人件費が歳出総額に占める割合及び人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合の推移は、第6図のとおりである。人件費の歳出総額に占める割合は二七・〇%で、前年度を〇・六%ポイント下回っている。人件費の歳出総額に占める割合を団体種類別にみると、都道府県が市町村立義務教育諸学校教職員の給与を負担していること等から、都道府県(二九・二%)が、市町村(二一・一%)を上回っている。
 人件費の主な内訳は、職員給が七五・七%を占め、以下、地方公務員共済組合等負担金(一三・二%)、退職金(六・二%)の順となっている。
 (扶助費) 扶助費は、社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、老人、心身障害者等を援助するために要する経費である。
 この扶助費の決算額は六兆五千四百四十五億円であり、前年度と比べると六・二%増(前年度六・六%増)となった。また、扶助費の歳出総額に占める割合は、平成四年度以降上昇しており、十年度も前年度と比べると〇・二%ポイント上昇の六・五%となった。
 扶助費の目的別内訳は、児童福祉費が一兆七千八百八十八億円で最も大きな割合(扶助費総額の二七・三%)を占めており、以下、生活保護費の一兆七千四百十五億円(同二六・六%)、老人福祉費の一兆四千七百四十億円(同二二・五%)、社会福祉費の一兆九百七億円(同一六・七%)の順となっている。これら各費目の伸び率をみると、児童福祉費が五・六%増(前年度五・五%増)、生活保護費が五・六%増(同五・九%増)、老人福祉費が七・三%増(同八・四%増)、社会福祉費が七・七%増(同八・二%増)となっている。扶助費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が三兆六百九十七億円で四六・九%(同四六・一%)と最も大きな割合を占めており、次いで、生活保護費負担金及び児童保護費等負担金等の国庫支出金が三兆二百億円で全体の四六・一%(前年度四六・八%)となっている。
 (公債費) 公債費は、地方債元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費である。
 この公債費の決算額は十兆八千六百三十四億円で、前年度と比べると五・八%増(前年度八・七%増)となった。また、歳出総額に占める公債費の割合は、昭和六十年度以降低下してきたが、平成四年度(七・九%)を底に上昇に転じ、十年度においても、前年度と比べると〇・三%ポイント上昇の一〇・八%となった。これは、近年、地方税収等の落込みや減税による減収補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により急増した地方債の元利償還金が増加したことによるものである。
 公債費の内訳をみると、地方債元金償還金が六兆五千四百五十二億円で最も大きな割合(六〇・三%)を占め、以下、地方債利子が四兆二千八百二十九億円(三九・四%)、一時借入金利子が三百五十三億円(〇・三%)となっている。各費目の伸び率をみると、地方債元金償還金が一〇・七%増(前年度一三・七%増)、低金利の影響により新発債及び借換債の金利が低下している地方債利子が〇・九%減(同二・七%増)となり、その結果、地方債元利償還金としては五・八%増(同八・八%増)となっている。また、一時借入金利子は二三・五%増(同〇・五%増)と二年連続で増加した。公債費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が十兆八百十二億円で全体の九二・八%(前年度九一・六%)とその大部分を占めており、使用料、手数料等の特定財源は七千八百二十二億円で七・二%(同八・四%)を占めている。
 <投資的経費> 投資的経費は、道路・橋りょう、公園、学校、公営住宅の建設等社会資本の整備に要する経費であり、普通建設事業費、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっている。
 投資的経費の決算額は二十八兆八千五百五十六億円で、前年度と比べると二・一%増(前年度八・〇%減)と経済対策の影響を反映して三年ぶりに前年度決算額を上回った。投資的経費の歳出総額に占める割合は二八・八%で、前年度と比べると〇・一%ポイントの低下となっている。
 投資的経費の内訳をみると、普通建設事業費が九八・〇%を占め、以下、災害復旧事業費(一・九%)、失業対策事業費(〇・一%)の順となっている。
 (普通建設事業費) 普通建設事業費は、道路・橋りょう、学校、庁舎等公共又は公用施設の新増設等の建設事業に要する経費である。
 この普通建設事業費の決算額は二十八兆二千八百七十四億円で、前年度と比べると一・九%増(前年度七・二%減)と経済対策の影響を反映して三年ぶりに前年度決算額を上回った。
 普通建設事業費の内訳は、単独事業費(五一・八%)、補助事業費(四二・二%)、国直轄事業負担金(六・〇%)の順となっている。また、各費目の伸び率をみると、補助事業費は八・〇%増(前年度七・二%減)と三年ぶりに前年度決算額を上回り、単独事業費は五・二%減(同七・七%減)と三年連続して前年度決算額を下回り、国直轄事業負担金は三六・九%増(同一・四%減)と三年ぶりに前年度決算額を上回った。
 普通建設事業費の目的別内訳は、第7図のとおりであり、土木費が最も大きな割合(五七・四%)を占め、以下、農林水産業費(一五・五%)、教育費(九・九%)の順となっている。さらに、これらの費目の内訳別に普通建設事業費に占める割合をみると、土木費のうちの道路橋りょう費(二三・六%)が最も大きく、以下、都市計画費(一六・一%)、河川海岸費(一〇・一%)、農林水産業費のうちの農地費(八・一%)の順となっている。また、これを団体種類別にみると、都道府県においては道路橋りょう費(二七・三%)、河川海岸費(一五・八%)、農地費(一三・一%)、都市計画費(一〇・〇%)、林業費(五・二%)の順となっており、市町村においては都市計画費(二二・八%)、道路橋りょう費(一六・九%)、清掃費(七・一%)、住宅費(五・四%)、農地費(五・一%)の順となっている。
 補助事業費は、地方公共団体が国からの負担金又は補助金を受けて実施する事業(補助事業)の経費である。この決算額は十一兆九千四百四十七億円で、前年度と比べると八・〇%増(前年度七・二%減)と三年ぶりに増加した。
 単独事業は、地方公共団体が国の補助等を受けずに自主的・主体的に地域の実情等に応じて実施する事業であり、住民生活に身近な生活関連施設等の重点的・計画的な整備や地域の特性を活かした個性豊かで魅力ある地域づくりにおいて大きな役割を担っており、地域経済の下支えを図るうえでも重要な機能を果たしている。この単独事業費の決算額は十四兆六千四百九十七億円で、前年度と比べると五・二%減(前年度七・七%減)と三年連続して減少した。これを団体種類別にみると、都道府県においては四・二%減(同八・〇%減)、市町村においては六・〇%減(同七・二%減)といずれも減少している。
 普通建設事業費に充当された主な財源の内訳をみると、地方債が四五・〇%と最も大きな割合を占めており、以下、一般財源等が二四・六%、国庫支出金が二一・七%等となっている。これを前年度と比べると、地方債及び国庫支出金はそれぞれ三・六%ポイント、一・三%ポイント上昇する一方、一般財源等は四・一%ポイント低下しており、普通建設事業を実施するうえでの地方債への依存度が高まっている。また、補助事業費及び単独事業費に分けてみると、補助事業費については、国庫支出金が五一・四%、地方債が三六・一%、一般財源等が八・〇%となっており、単独事業費については、地方債が四八・五%、一般財源等が三九・〇%となっている。
 <災害復旧事業費> 災害復旧事業費は、暴風、洪水、地震その他異常な自然現象等の災害によって被災した施設を原形に復旧するために要する経費である。
 この災害復旧事業費の決算額は五千三百六十二億円で、平成十年八月末豪雨等により、前年度と比べると一三・八%増(前年度三八・七%減)と増加している。
 災害復旧事業費の目的別内訳の構成比をみると、道路、河川、海岸、港湾、漁港等の公共土木施設関係(災害復旧事業費総額の六八・八%)と農地、農業用施設等の農林水産施設関係(同二五・一%)で全体の九三・九%を占めている。
 さらに、災害復旧事業費に充当された財源の内訳をみると、国庫支出金(災害復旧事業費総額の五七・八%)と地方債(同二八・五%)で全体の八六・三%を占めている。

 (3) その他の経費
 その他の経費には、物件費、維持補修費、補助費等、積立金、投資及び出資金、貸付金、繰出金並びに前年度繰上充用金があり、その決算額は二十六兆八千八百九十億円で、前年度と比べると三・二%増(前年度二・三%減)と三年ぶりに増加に転じた。
 また、これらの経費の歳出総額に対する割合をみると、物件費が七・八%(前年度七・八%)、貸付金が六・三%(同六・〇%)、補助費等が六・一%(同六・三%)、繰出金が三・三%(同三・二%)、積立金が一・三%(同一・六%)等となっている。

五 財政構造の弾力性

 (1) 経常収支比率
 財政分析においては、財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。
 この経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税等のように毎年度経常的に収入される一般財源)に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。
 平成十年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合を除く加重平均)は、集計開始(昭和四十四年度)以降で最も高かった前年度より二・〇%ポイント上昇の八九・四%となり、九年連続して上昇した。また、その内訳をみると、人件費が四〇・六%(前年度四〇・五%)、公債費が一八・七%(同一七・三%)等となっている。なお、個人住民税の特別減税等に伴う減収額を補てんするために発行された減税補てん債の発行額を経常一般財源に加えた場合の経常収支比率を求めると、八七・六%となる。
 近年の経常収支比率の推移をみると、第6表のとおりである。平成元年度には六九・八%まで低下した経常収支比率は、その後上昇に転じ、特に、地方税が減収となった四年度から六年度にかけて急激な上昇となっている。
 経常収支比率の段階別分布状況をみると、経常収支比率が七五%以上の団体数は、都道府県においては四十六団体(前年度四十六団体)、特別区及び一部事務組合を除く市町村においては全体の八五・一%を占める二千七百五十二団体(同二千五百七十一団体)となるなど、個別の団体においても財政構造の硬直化が進んでいる状況にある。

 (2) 公債費負担比率及び起債制限比率
 地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性を判断する場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費の状況を把握するための指標として、公債費負担比率及び起債制限比率が用いられている。
 平成十年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、集計開始(昭和四十四年度)以降で最も高かった前年度より一・二%ポイント上昇の一六・四%となり、七年連続して上昇した。
 公債費負担比率の段階別分布状況は、第7表のとおりである。一般的に警戒ラインとされる公債費負担比率が一五%以上の団体数は、都道府県においては全体の七四・五%を占める三十五団体(前年度三十一団体)、特別区及び一部事務組合を除く市町村においては全体の六〇・〇%を占める一千九百三十九団体(同一千八百二十二団体)であり、合わせて全団体の六〇・二%を占める一千九百七十四団体(同一千八百五十三団体)となっており、公債費負担比率が高い団体数が増加している状況にある。
 起債制限比率は、地方債元利償還金に充当された一般財源のうち地方交付税が措置されたものを除き、地方債元利償還金が標準財政規模に対しどの程度の割合となっているかをみるものである。
 平成十年度の起債制限比率(一部事務組合を除く加重平均)は、第8表のとおりであり、前年度と比べると〇・三%ポイント上昇の一〇・七%と、七年連続して上昇している。

六 将来にわたる財政負担

 (1) 地方債現在高
 平成十年度末における地方債現在高は百二十兆七百十九億円で、前年度末と比べると七・七%増(前年度七・九%増)となった。
 地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、昭和五十年度末では歳入総額の〇・四四倍、一般財源総額の〇・八八倍であったが、地方税収等の落込みや減税による減収補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことから、平成四年度以降急増し、十年度末には歳入総額の一・一七倍、一般財源総額の二・二〇倍となっている。なお、標準財政規模に対する比率では、前年度と比べると一〇・三%ポイント上昇の二一七・一%の水準にまで増大している。
 地方債現在高を目的別にみると、一般単独事業債が最も大きな割合(四〇・〇%)を占め、以下、一般公共事業債(一五・六%)、減税補てん債(四・七%)、義務教育施設整備事業債(四・六%)、公営住宅建設事業債(四・三%)の順となっている。

 (2) 債務負担行為額
 債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成十年度末では十五兆九千百八十六億円であり、前年度末と比べると八・二%減(前年度〇・七%増)となった。
 翌年度以降支出予定額を目的別にみると、土地の購入に係るもの(七・四%減)、製造・工事の請負に係るもの(一七・五%減)が減少したこと等から、物件の購入等に係るものは減少(一一・八%減)となり、また、債務保証又は損失補償に係るものは増加した(六三・五%増)。

 (3) 積立金現在高
 平成十年度末における積立金現在高は十五兆二千四百八十億円で、前年度末と比べると一兆二千百九十五億円減(七・四%減)となっており、最近の厳しい財政事情を反映し、六年連続して減少している。また、標準財政規模に対する比率は、前年度と比べると二・九%ポイント低下の二七・六%となっている。
 積立金現在高の内訳をみると、財政調整基金は三兆一千八百四十一億円で三・六%減、減債基金は三兆四千八百八十四億円で一三・六%減、その他特定目的基金は八兆五千七百五十五億円で六・〇%減となった。

 (4) 将来にわたる実質的な財政負担
 地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の将来にわたる実質的な財政負担は百二十兆七千四百二十五億円で、前年度末と比べると七・五%増(前年度九・三%増)となった。
 なお、標準財政規模に対する比率では、前年度と比べると一〇・〇%ポイント上昇の二一八・四%にまで増大しており、また、名目国内総生産に対する割合では、前年度と比べると二・〇%ポイント上昇の二四・三%にまで増大している。

 (5) 普通会計が負担すべき借入金残高
 交付税及び譲与税配付金特別会計借入金残高のうち地方財政全体で負担することとなるものと、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第8図のとおりである。これをみると、近年の地方税収等の落込みや平成四年度以降の数次にわたる経済対策に加え、六年度以降は、減税等の財源を借入金に依存したこと等から、普通会計が負担すべき借入金残高は急増しており、十年度末には、前年度末と比べると八・八%増(前年度七・六%増)の百六十二兆九千百九十七億円にまで増大している。また、その内訳は、地方債現在高が百二十兆七百十九億円、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金残高が十七兆七千八百七十二億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが二十五兆六百六億円となっている。
 なお、この普通会計が負担すべき借入金残高の標準財政規模に対する比率は、前年度と比べると一七・〇%ポイント上昇の二九四・六%にまで増大しており、また、名目国内総生産に対する割合は、三・二%ポイント上昇の三二・八%となっている。

七 地方公共団体のグループ別財政状況

 地方公共団体の財政構造は、自然的・歴史的条件、産業構造、人口等によって異なっており、決算規模をはじめ、歳入・歳出構造、各種財政指標をみても、その団体特有の特徴を示している。したがって、財政分析においては、地方財政全体の分析に加えて、財政構造が類似した団体ごとにグループ化し、そのグループごとに分析を加えることも重要である。
 そこで、道府県については財政力指数段階別に、また、市町村については団体規模別(大都市、中核市、中都市、小都市及び町村)にグループ化を行い、分析することとする。
 なお、ここでは道府県の財政力指数別財政状況について紹介し、市町村の規模別財政状況については省略する。

 (1) 道府県の財政力指数別財政状況
 道府県のグループ化は、財政力指数が〇・八以上一・〇未満の団体をBグループ(以下「B」という。)、〇・五以上〇・八未満の団体をBグループ(以下「B」という。)、〇・四以上〇・五未満の団体をCグループ(以下「C」という。)、〇・三以上〇・四未満の団体をDグループ(以下「D」という。)、〇・三未満の団体をEグループ(以下「E」という。)とし、それぞれのグループの財政構造等の分析を行っている。なお、東京都についてはB〜Eの各グループから除いている。
 <決算規模等> 一団体当たり平均の歳入歳出決算額、人口(住民基本台帳登載人口)一人当たり平均の歳入歳出決算額、実質収支比率をみると、人口一人当たり平均の決算額は、歳入については、Bが二十五万九千円、Bが三十四万六千円、Cが五十二万一千円、Dが五十六万九千円、Eが六十六万二千円となり、歳出については、Bが二十六万円、Bが三十四万円、Cが五十一万円、Dが五十五万五千円、Eが六十四万五千円となっており、財政力指数が低いほど歳入歳出決算額が総じて大きくなっている。
 また、実質収支比率は、Bが△一・九%、Bが〇・四%、Cが〇・六%、Dが〇・五%、Eが〇・四%となっており、Bを除いては、財政力指数による違いは比較的小さなものとなっている。
 <歳入> 歳入決算額の主な内訳は、第9図のとおりである。
 地方公共団体が自主的・主体的な財政運営を行ううえで重要な財源である地方税の構成比は、Bが四四・三%、Bが二八・一%、Cが二〇・一%、Dが一四・八%、Eが一二・〇%となっており、構成比が最も高いBが最も比率が低いEの三倍を超えている。
 一方、財源調整を目的とする地方交付税の構成比は、地方税とは逆に、E(三〇・二%)、D(二六・六%)、C(二二・七%)、B(一六・四%)、B(二・八%)の順となっている。この結果、一般財源の構成比は、Bが四七・三%、Bが四四・七%、Cが四三・一%、Dが四一・七%、Eが四二・五%となっており、財政力指数による違いは比較的小さなものとなっている。
 <歳出> 性質別歳出決算額の主な内訳について、それぞれのグループごとに構成比が大きい項目をみると、Bにおいては教育費、土木費、公債費の順、Bにおいては人件費、普通建設事業費、貸付金の順、C、D及びEにおいては土木費、教育費、農林水産業費の順となっている。また、財政力指数が高いほど教育費の構成比が高くなる一方、財政力指数が低いほど農林水産業費の構成比が高くなる傾向がある。
 <財政構造の弾力性> 経常収支比率は、B(一一四・三%)、B(九四・一%)、D(八九・〇%)、C(八七・九%)、E(八四・四%)の順となっており、財政力指数が高いほど経常収支比率が高い傾向がある。
 次に、公債費負担比率は、C(一九・〇%)、D(一八・九%)、E(一七・九%)、B(一五・二%)、B(一二・九%)の順となっており、B及びBの公債費負担比率が他のグループと比べて低くなっている。
 また、起債制限比率は、C(一二・六%)、D(一一・八%)、E(一一・六%)、B(一〇・一%)、B(八・三%)の順となっており、B及びBの比率が他のグループと比べて低くなっている。
 <将来にわたる実質的な財政負担> 将来にわたる実質的な財政負担の標準財政規模に対する比率は、Bが二八二・一%、Bが二五五・三%、Cが二六三・二%、Dが二七三・一%、Eが二二五・八%となっている。

<第二部> 最近の地方財政の状況と課題

 平成十一年七月八日に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(地方分権一括法)が成立し、十二年四月一日から施行されることとなった。明治以来の中央集権型システムから地方分権型システムへの変革は実行の段階を迎え、平成十二年すなわち西暦二〇〇〇年は、我が国の地方自治の歴史において、まさに時代を画する年として位置付けられることとなるものと考えられる。これにより、今後、地域における行政を自主的かつ総合的に担うべき地方公共団体の役割と財政需要はますます増大するものと見込まれる。
 したがって、現在極めて厳しい状況にある地方財政の健全化及び地方分権の進展に応じた行財政基盤の整備を図り、分権改革の定着・一層の進展に努めることにより、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を目指すことが喫緊の課題となっている。

 (1) 地方財政の健全化
 第一部でみたように、地方財政は極めて厳しい状況に直面しているが、一方で、地方分権一括法が成立し、地方分権の推進が実行の段階を迎える中、地方公共団体は地域における行政を自主的かつ総合的に広く担うこととされており、少子・高齢社会に向けた介護保険制度の実施をはじめとする総合的な地域福祉施策や生活関連社会資本の整備、さらには、経済新生への対応等の重要政策課題に係る財政需要がますます増大するものと考えられる。
 また、「財政構造改革の推進に関する特別措置法」(財政構造改革法)は、我が国の経済情勢が一層厳しさを増し、まずは景気回復に向けて全力を尽くすことが求められる状況となったことから、平成十年十二月に施行を停止された。しかしながら、前記のような極めて厳しい地方財政の状況、中長期的な財政構造改革の必要性を踏まえると、引き続き、地方公共団体においては、地方分権の時代にふさわしい簡素で効率的な行政システムを確立するため、徹底した行政改革を推進するとともに、歳出の重点化を図り、財政体質の健全化に努めることが急務となっている。
 このように地方財政が厳しさを増す中で、適正な財政運営に資するためにも、財政状況に関する住民の理解を得ることの重要性は高まっている。このため、地方公共団体においては、住民に分かりやすい資料の作成、情報化に対応した方法での公開等、周知方法の一層の改善を図ることが必要である。
 近年では、こうした事情を背景として、いくつかの地方公共団体において、財政状況の公表・分析の一手法として、バランスシートの作成に取り組んでいる例も見られる。

 (2) 地方分権の推進
 我が国社会経済を取り巻く環境が急速に変貌し、従来の中央集権型行政システムでは新たな時代の要請に対して的確に対応することが困難となる中、地方分権を進め、国と地方公共団体とが分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性・自立性を高めることを通じて、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することが求められている。

 (3) 行政改革の推進
 前述のとおり、地方財政は極めて厳しい状況にあり、その健全化のためには、徹底した行政改革が必要である。また、地方分権の新たな展開を迎え、地方公共団体が、自らの責任において社会経済情勢の変化に柔軟かつ弾力的に対応できるよう体質を強化するためにも、行政改革への取組が不可欠である。
 このため、地方公共団体においては、「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」(平成九年十一月十四日付け自治事務次官通知)に沿って、住民の一層の理解と協力の下、独自の工夫を加えつつ、限られた財源及び人的資源の重点的な配分、全体としての一層の簡素効率化を旨として、行財政運営全般にわたる改革を主体的かつ積極的に進めていくことが求められる。

 (4) 二十一世紀に向けた活力ある豊かな地域社会づくり
 地域の総合的な行政主体である地方公共団体は、個性豊かで魅力ある地域づくりや安心して生活できる社会づくりのための地域政策課題に積極的に対応し、二十一世紀に向けた活力ある豊かな地域社会づくりを進めていく必要がある。

 (5) 地域の特性に応じた社会資本の整備
 国土保全施設等の社会資本は、公的主体・民間主体双方の努力により着実に整備が進められ、その整備水準は年々向上してきている。しかしながら、なお立ち遅れている部門も残されており、それが経済力に見合った豊かさが実感されない要因の一つとなっているところであり、一層の社会資本の充実が求められる。
 一方、今後我が国の社会は急速な高齢化を迎えるものと見込まれ、国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するためには、本格的な少子・高齢社会の到来の前に、後世代に負担を残さないような財源の確保を前提として、社会資本の整備を促進していくことが必要とされる。
 以上の観点から、地方公共団体においては、住民に身近な社会資本の整備を進め、地域社会の振興や雇用の安定を図りつつ、その地域の特性を活かした魅力ある地域社会の形成を進めてきた。

 (6) 地方公営企業の経営基盤の強化等
 地方公営企業の平成十年度の決算の状況をみると、地方公営企業の経営状況は、その多くが黒字経営であり、また、前年度に比べ収支が改善されたものが見られる一方で、事業間に差異はあるが、未だ一割以上の事業で赤字が生じているなど全体として引き続き厳しい状況となっている。
 地方公営企業は住民生活に身近な社会資本を整備し、必要なサービスを提供する役割を果たしてきたが、将来にわたってその本来の目的である公共の福祉を増進していくためには、次の諸点に留意しつつ、規制緩和の進展、地方分権の推進及び公的なサービスの供給方法の多様化等地方公営企業を取り巻く環境の変化に適切に対応し、経営の一層の効率化、透明性の向上等経営基盤の一層の強化を図る必要がある。
 近年、地方公共団体と密接な関係を有するものとして、地方公社等が注目されている。このうち、土地開発公社については、土地取得に当たって土地利用計画等を十分に検討すること、事業計画の見直し等を含めて保有土地の処分の促進に努めること等が必要である。
 また、第三セクターについては、経営状況の点検評価を行い、役職員数及び給与の見直し、組織機構のスリム化等による運営の改善を促すとともに、その事業や公的関与の内容について積極的な情報開示を行うこと等が必要である。


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消費支出(全世帯)は実質四・二%の増加


―平成十二年二月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の消費支出は平成十一年九月以降五か月連続の実質減少となった後、十二年二月は実質増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は平成十一年七月以降八か月連続の実質減少となった。
 前年同月比でみると、消費支出は平成十一年八月以降六か月連続の実質減少となった後、十二年二月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十五万九千四百五十六円。
 前年同月に比べ、名目四・五%の増加、実質五・四%の増加。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質二・三%の増加。
 勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質二・六%の増加。










◇    ◇    ◇

◇    ◇    ◇

言葉の履歴書


不正アクセス禁止法

 正式名称は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」。二月十三日に施行されました。
 不正アクセス行為とは、識別符号を入力することで利用できるようになっているコンピュータ(企業・個人の所有を問わず)にネットワークを通じてアクセスし、利用できる状態にしてしまう行為、また、利用してしまう行為です。コンピュータ以外の端末から行うもの(例えば電話機から口座番号と暗証番号をプッシュボタンで入力する行為)なども、禁止・処罰されます。識別符号にはIDパスワードのほか、指紋、虹彩、音声、署名なども含まれます。また、利用内容はホームページの書き換え、インターネット・ショッピングの注文など、限定はありません。不正アクセス行為に違反した者は、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処せられることとなっています。さらに、他人の識別符号を無断で第三者に提供する行為も、不正アクセス行為を助長する行為として、三十万円以下の罰金に処せられます。
     (『広報通信』平成十二年四月号)

第二十一回春の行政相談週間


五月二十二〜二十八日
よりよい暮らしにあなたの声を!

 総務庁の行政相談は、国の行政全般について、みなさんの苦情や意見・要望を受けて、相談者と関係行政機関との間に立って、公正・中立な立場から必要なあっせんを行うものです。そして、その解決や実現を促進するとともに、みなさんの声を行政の制度や運営の改善に役立てることを目的としています。

■行政相談の特色

@行政相談週間は毎年五月と十月の二回行われます。今年の「春の行政相談週間」は五月二十二日(月)から二十八日(日)まで実施されます。
A苦情などを受け付ける範囲は、全省庁、特殊法人の業務、地方公共団体等が国からの法定受託事務または補助を受けて行っている業務であり、国の行政全般に及んでいます。従って、担当の行政機関が不明で、どこに相談してよいか分からない問題や、複数の行政機関にまたがるため連絡・調整が必要な問題についても有効に対処できます。
B全国の市区町村に配置されている行政相談委員および都道府県所在地に設置されている管区局・事務所や総合行政相談所など、全国に整備した独自のネットワークを活用することにより、どの地域の問題であっても、どの窓口でも受付処理を行うことができます。
C行政に関する苦情などのうち、行政制度および運営の基本に関するものについては、民間有識者で構成される「行政苦情救済推進会議」に付議します。また、同種・類似の苦情の発生が予想される問題については、必要に応じて行政監察を実施して、個々の苦情の解決を図ることはもちろん、苦情の原因となっている行政の制度・運営そのものの改善も図っています。
D総務庁の行政相談は、行政事件訴訟や行政不服審査などと比べて、手続きが簡易・迅速です。各省庁が所管行政について当事者の立場から行っている苦情相談と比べても特色があり、各種行政救済・苦情相談制度のなかにあって、独自の役割を果たしています。

■週間中の主な行事

○特設行政相談所の開設
管区行政監察局、行政監察事務所が関係行政機関の参加・協力を得て、全国各地で開設します。
○巡回相談所の開設
ふだん行政相談所を開設できない地域に出向いて、巡回相談所を開設します。
○行政相談懇談会の開催
管区行政監察局、行政監察事務所または行政相談委員が、自治会などの代表者と懇談し、国の行政に関する苦情や意見、要望を受け付けます。
○行政相談委員全体会議の開催
管区行政監察局、行政監察事務所が、行政相談委員を招集して会議を開催します。行政相談活動に貢献した行政相談委員に対する表彰状や感謝状の贈呈が行われます。

■行政相談委員とは?

 行政相談委員は、総務庁長官が法律に基づいて、民間有識者のなかから委嘱します。全国の市区町村において、必ず一人は委嘱されています。
 行政相談委員は全国に約五千人いて、みなさんの身近な相談相手となっています。
(総務庁)



    <5月31日号の主な予定>

 ▽平成十一年貯蓄動向調査………………総 務 庁 

 ▽消費者物価指数の動向 

  (東京都区部三月中旬速報値)………総 務 庁 


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