官報資料版 平成12年6月14日




                  ▽林業白書のあらまし……………………………林 野 庁

                  ▽景気予測調査(平成十二年二月調査)………大 蔵 省

                  ▽毎月勤労統計調査(二月分)…………………労 働 省











林業白書のあらまし


―平成11年度 林業の動向に関する年次報告―


林 野 庁


 「平成十一年度林業の動向に関する年次報告」と「平成十二年度において講じようとする林業施策」が去る四月七日、閣議決定の上、国会に提出、公表された。
 今回の報告では、第一部「林業の動向」において、戦後から今日までの国民生活と森林、林業とのかかわりの変化を踏まえて新たな政策の検討課題を整理するとともに、多くの事例を用いながら健全で活力のある森林の整備や山村の活性化、循環型社会の構築に寄与する木材産業の振興に向けた取組などについて記述している。
 第二部では、平成十一年度において「林業に関して講じた施策」について記述している。
 第一部の概要は次のとおりである。

<基本認識>
 ―世紀を超えて森林活力を維持していくために―

(二十一世紀は森林活力を活かす時代)
 森林は、生態系としての物質循環システムを活用して二酸化炭素を吸収・固定したり、環境に大きな負荷を与えずに木材を再生産できることから、地球環境問題やエネルギー問題の解決に大きく貢献できる可能性をもっている。また、森林には、国土保全機能や水資源かん養機能等の多様な機能を同時に幾重にも発揮できる優れた特性がある。このため、森林の健全性を確保し、その多様な機能を総合的かつ高度に発揮させることを基本に森林整備を積極的に進め、循環型社会の構築や持続可能な森林経営の推進に取り組んでいく必要がある。
 しかし、林業生産活動が停滞すると、こうした森林の諸機能を十分に活用することができなくなる。
 また、生物多様性の保全のように、従来の木材生産を主体とした林業政策だけでは、十分にこたえていくことが難しい機能への国民の期待も高まっている。
 このため、二十一世紀の社会において森林や木材に期待される役割が十分に発揮されるよう、健全で活力ある森林を守り育てていくという観点に立った地域社会の合意に基づく森林の管理及び経営、森林資源の循環利用が行われる仕組みの構築が必要となっており、そのための森林や林業に関する基本法制のあり方を含めた、新たな政策の構築が必要となっている。
(従来の政策が効果を発揮しにくい状況の出現)
 これまで我が国では、木材需要が急増した時期に制定された林業基本法に従って林業振興が図られてきた。その考え方は、木材は国民生活に不可欠な資源であるから、森林は主に林業に利用され、林業を振興していけばおのずと森林の手入れが進み、健全で豊かな森林がつくられることになって、国土の保全や水資源のかん養といった森林の公益的機能も発揮される、という考え方に立っている。
 しかし、林業の採算性の悪化などに伴い、森林所有者が林業や森林への関心を急速に失いつつあり、そのため保育や間伐が行われずに放置されたままの人工林が発生するなど、国土の適切な管理や有効活用という観点からも大きな問題となりつつある。
 その一方で、森林の機能に対する国民の期待は多様化・高度化しており、従来の木材生産を主体とした林業政策だけでは十分にこたえていくことが難しい機能への期待も高まっている。最近では、国土の保全や水資源のかん養といった機能に加え、地球温暖化の防止、生物多様性の保全、保健・文化・教育的利用の場の提供といった森林の機能への国民の期待も高まっている。
(森林を社会で守り育てる取組が必要)
 森林を長期間にわたり守り育てていくには、森林所有者が責任をもって取り組むことはもちろん、森林の働きや価値などが地域の人々に十分に理解された上で、地域の住民や市民団体、行政等が一体となって取組を進めていくことが不可欠である。
 林業をめぐる状況が大きく変化する中にあって、長期間にわたって森林が良好に維持されている地域をみると、森林整備への意識を希薄化させないよう次世代に語り継ぐなど、「森林を社会全体で支えていく」という姿勢がみられ、健全な森林の育成に向けて地域をあげた取組が行われている。
 また、近年、地域住民等と森林所有者とが共同で森林整備を進める取組が全国各地でみられるようになってきた。これらの中には、放置されている里山林を、市民の参加を得て人々に親しまれるような森林に整備している事例もみられる。
(新たな基本政策の確立に向けて)
 基本政策の見直しに当たっては、これら森林や林業を巡る情勢を踏まえ、健全で豊かな森林を守り育てていくことができるよう、特に次のことに重点を置いて検討を進める必要がある。
 第一は、持続可能な森林経営を推進するという観点に立って、国民のニーズの多様化・高度化に対応して、木材生産を主体としたものから、将来にわたって多様な機能を持続的に発揮させるための森林の管理及び経営を重視したものへと政策を転換すること。
 第二は、森林資源、特にスギやヒノキなどの人工林資源の循環利用を推進すること。そして、地域の森林整備につながるよう木材産業の体質強化と併せて、多様な木材利用を地域全体で進めること。
 また、こうした政策を進めるには、地域社会の合意と支援が不可欠であり、「森林を社会全体で支えていく」という意識を国民の間に広く醸成して、地域社会の合意を基礎とした、森林の管理及び経営体制を構築していくことが重要である。

T 世紀を超えた森林整備の推進(特集)
 ―安全な国土と豊かな暮らしの実現に向けて―

一 人々の暮らしと森林、木材とのかかわりはどのように変化したか

(一) 多様化する森林とのかかわり
(安全な国土を形成するための森林造成への期待の高まり)
 第二次世界大戦後の森林は著しく荒廃し、森林の造成の必要性が国民の間に強く認識された。造林事業の公共事業への組み入れ、全国植樹祭の開催による国民の緑化意識の高揚等の対策が講じられ、昭和二十年代後半には、造林が積極的に進められた。
(増大する木材需要を満たすための木材生産への期待の高まり)
 高度経済成長の下で木材需要が急増し、天然林の伐採跡地や原野等を、木材としての利用価値の優れた人工林に転換する拡大造林が推進されるようになった。このように木材需要が旺盛であった昭和三十九年に、「林業基本法」が制定された。
(自然環境の保全への期待の高まり)
 昭和四十年代後半には、身近な自然の減少や公害が発生し、自然環境の保全に対する国民の関心が高まり、森林資源の整備についても公益的機能への配慮を強く求められるようになった。
(森林に対する期待の更なる多様化)
 森林の機能に対する国民の期待は時代とともに変化しており、今日、一層多様化している。近年では、地球温暖化を防止する役割や、健康づくりや心身の癒しの場、子どもたちの「生きる力」をはぐくむ場としての森林への期待が高まっている(第1表参照)。
(見直される里山林や都市近郊林)
 近年、里山林や都市近郊林は、森林環境教育や健康づくりの場等、生活に身近な森林として見直されつつあり、地域住民による保全や利用のための活動が活発化している。

(二) 見直される木材とのかかわり
(多様な用途に使われていた木材)
 木材は、住宅資材や紙・パルプ、燃料等、私たちの身の回りで多様な用途に使われていたが、工業化の進展、化石燃料の普及により徐々に姿を消していった。
(低下した木造住宅の割合と代替材の進出)
 経済の高度成長が本格化する中で、新設住宅の着工戸数は増加したが、木造建築の割合は漸次低下した。こうした中で、製材品(板材)の国内生産は昭和四十三年をピークに増加がとどまっているのに対し、繊維板やせっこうボードは増加している(第1図参照)。
(新たな木材とのかかわり)
 近年、木材の良さが見直され、公共施設での木造化などが進められている。また、地球規模での環境問題に関心が高まる中、循環型社会の構築に貢献する木材の役割が注目されている。
 このような中で、国産材の有効利用による林業・木材産業の活性化は、健全で活力の高い森林の維持につながり、ひいては国土保全や地球温暖化の防止等に資することから、人や環境に優しい木材の利用を推進する必要性について、国民的理解を得ていくことが重要である。

(三) 多様化する山村とのかかわり
(山村人口の減少・高齢化と小規模集落の増加)
 昭和三十年頃からの高度経済成長の中で、山村では、若年層を中心として人口が都市へ流出し、過疎化と高齢化が進行した。
 また、山村の集落は、中規模集落が減少し、大規模集落と小規模集落の二極分化の傾向にあり、今後、小規模集落のうち、かなりの数の集落の存続が困難になるとの指摘がある。
(山村住民の生活様式の変化)
 山村住民の生活様式は、従来の農林業を主とした自給的性格のものから、高度経済成長の過程で商品消費を中心とするものへと変わり、現金の支出機会が増大し、兼業化や出稼ぎの増加を促進させた。
(余暇を楽しむ場としての期待の高まり)
 総理府の世論調査(平成十一年七月)によると、大都市の回答者ほど一定期間農山村に滞在し、休暇を過ごしてみたいと答えた割合が高いなど、山村に対して、余暇を楽しむ場としての期待が高まっている。

二 我が国の森林をめぐる現状

(一) 充実しつつある森林資源と停滞する林業生産活動
(充実しつつある森林資源)
 我が国の森林面積は、この三十年間、二千五百万ヘクタール(国土面積の六七%)を維持するとともに、蓄積はこの間に一・七倍に増加し三十五億立方メートルとなっている。現在は、一千万ヘクタールの人工林を中心に、毎年平均で七千万立方メートルずつ増加している。
 スギを主体とする人工林は、全体の七割が三十五年生以下であり、保育、間伐等を適切に行う必要がある。
(林業の採算性の悪化により林業生産活動は停滞)
 森林資源が充実する一方で、森林整備を主に担ってきた林業は、木材価格の長期低迷と経営コストの上昇による採算性の悪化、それらに伴う森林所有者の経営意欲の低下により、生産活動が停滞している。
 国産材の生産量は、平成十年には一千九百三十二万立方メートルとピーク時の三七%にまで減少し、昭和四十一年に六七%あった木材(用材)の自給率は、平成十年には二一%へと大きく低下した(第2図参照)。
 林業生産活動の停滞により林業就業者も昭和三十五年の四十四万人から、平成七年には九万人へと大幅に減少した。
 民有林では、緊急に間伐を要する森林面積は百五十万ヘクタールにのぼるとみられる。
(管理の不十分な森林が出現)
 保有する森林の境界に不明確な箇所があるとする林家の割合は、森林が所在する市町村に居住していない林家ほど高い。このような不在村林家が保有する森林の面積は増加する傾向にある。

(二) 現行政策が効果を発揮しにくい状況の出現
 従来の林業政策は、旺盛な木材需要を背景として、木材生産を直接の目的とする林業生産活動を助長することを通じて森林が整備され、森林の公益的機能の発揮にもつながるとの前提に立って、林業総生産の増大、林業の生産性の向上及び林業従事者の所得の増大を図ることを目標に、多岐にわたる政策が実施されてきた。
 しかし、林業の採算性の悪化などにより、森林所有者の経営意欲が低下するに至り、森林所有者の林業生産活動を助長するに際しては、木材生産とそれに通じた保育や間伐などの作業が十分に行われにくくなるという問題が生じている。加えて、地球温暖化防止などの地球環境問題における役割や、保健・文化・教育的利用への国民の期待も高まっている。
 このように、旺盛な木材需要を背景に森林所有者の活発な生産意欲が広く存在することを前提とした政策をもってしては、十分な効果を発揮しにくい状況となっている。

三 世紀を超えて森林整備を進めるために

(一) 地域住民による継続的な森林整備への取組
 森林や木材を取り巻く環境が大きく変化する中にあって、長期間にわたって良好に森林が維持されてきた地域がある。これらの地域では、次世代に語り継ぐことなどにより、森林の重要性を希薄化させない努力がみられる。

(二) 森林整備に向けた多様な取組が増加
 都道府県や市町村等の公的機関による取組をはじめ、地域住民や都市住民による取組、林業と木材産業の関係者の連携による取組等、多様な形態による森林整備に向けた取組がみられるようになってきた(第2表参照)。

(三) 世紀を超えて森林整備を進めるための課題
(新たな政策の確立が必要)
 これまでの林業振興を中心とした政策だけでは、国民の期待に十分に対応していくことが困難となっている。森林に対する国民の多様な期待にこたえて豊かな森林を整備していくには、森林や林業に関する基本法制のあり方を含めた、新たな政策を確立していくことが必要となっている。
 検討に当たっては、従来の林業政策の評価や森林に対する新たな要請等を踏まえて、次の二点を基本的な視点とする必要がある。
 第一は、国民のニーズの多様化・高度化に対応して、木材生産を主体としたものから、将来にわたって多様な機能を持続的に発揮させるための森林の管理及び経営を重視したものへ、政策を転換すること。
 第二は、森林資源、特にスギやヒノキなどの人工林資源の循環利用を推進すること。
(国民意識の醸成が不可欠)
 こうした政策を進めるには、「森林を社会全体で支えていく」という意識を国民の間に広く醸成して、地域社会の合意を基礎とした森林の管理及び経営体制を構築していくことが重要である。
 例えば、市町村によっては、森林保全や育成に関する条例や、森林を大切にしていくことを宣言した森林憲章を定めている事例などがあるが、こうした取組を進めることは、国民意識の醸成に有効といえる(第3表参照)。

U 健全で機能の高い森林の整備と林業、山村の活性化

一 健全で機能の高い森林の整備

(一) 森林の多様な機能と森林整備の基本的な考え方
 昭和二十年代から四十年代にかけて、積極的に造成された人工林の一部が利用時期を迎えている。我が国の森林整備は、今や造成を基軸とする段階から、多様な森林を健全な状態に育成し、循環させるという質的充実を基軸とすべき段階に入っている。
 また近年、自然とのふれあいを志向するなど生活意識の変化がみられるほか、野外教育の場としての森林への期待も高まっている。従来の森林の総合利用を通じた都市と山村の交流の推進に加え、森林環境教育の推進、身近な森林における多様な活動の展開、すべての世代の健康づくりの場等、森林の新たな利用に対応する森林の整備が必要となっている。

(二) 多様な機能の発揮に向けた取組
(間伐の推進)
 間伐は、形質に優れた利用価値の高い木材の生産だけでなく、森林のもつ公益的機能を高める上でも不可欠な作業である。近年、民有林における間伐の早急な実施が喫緊の課題であり、作業の集団化や路網の整備、間伐材の利用促進等、間伐を推進するための対策を進めている。
(複層林施業等の推進と保安林機能等の維持増進)
 森林のもつ公益的機能を高度に発揮させるため、平成十年に特定森林施業計画制度を拡充した。また、水資源のかん養等のため、森林面積の三分の一に相当する八百八十一万ヘクタールを保安林に指定するなど、災害に強い安全な国土づくり等のため、治山事業を推進している。
(森林の保護及び防除対策)
 平成十年度の松くい虫被害材積は七十六万立方メートルと前年に比べ六%減少した。また、野生鳥獣による森林被害面積は、八千七百ヘクタールとなっている。これらの被害防止のため、引き続き防除対策を進めている。
(省庁間の連携による効果的な森林整備)
 森林の整備に当たっては、間伐材を利用した防災施設の整備など関係省庁と連携した事業を実施している。

(三) 市町村の役割の強化と施策の充実
 最も地域に密着した行政主体である市町村が、森林、林業行政に従来以上に主導的な役割を果たしていけるよう、平成十年の森林法改正によりその役割が大幅に強化されたところであり、地域の実情に応じた森林の整備やそのための条件整備が推進されている。

(四) 森林の流域管理の推進
 流域を単位とした森林の整備や林業、木材産業の振興を図るため、平成三年度から「森林の流域管理システム」を推進している。
 また近年、下流の自治体が、上流の自治体と協力して水源地の植林や間伐等の森林整備を支援したり、水道料金の一部を基金に積み立て、水源林の整備に活用するなどの取組が増えている。

(五) 国民の理解と支援による森林整備の推進
 募金やボランティア活動を通じて森林整備に参加する一般市民が増加している。こうした中で、森林の案内などを行う森林インストラクターの一層の活躍が期待されている。

(六) 森林の新たな利用の推進
 森林に対する国民の期待の更なる多様化に対応するため、森林環境教育の推進、里山林など身近な森林での多様な活動の展開、森林づくりへの国民の直接参加、すべての世代の健康づくりなど、新たな森林の利用を推進している。
 また、子どもたちの「生きる力」をはぐくむため、様々な体験の機会を子どもたちに提供していくことが重要となっており、文部省と連携し取組を進めている。

二 森林整備を担う林業の活性化

(一) 林業経営体の育成
(林家の動向)
 一九九〇年世界農林業センサスによると、全林家数二百五十一万戸のうち保有山林面積が五ヘクタール未満の林家が全体の九割を占めており、林家の山林保有は小規模、零細な構造である(第3図参照)。
 林家の経営状況では、木材価格の低迷等から林業所得は減少傾向にあり、特に大規模な林家ほど減少の割合が大きい。
(緑資源公団による森林整備の推進)
 森林開発公団は、平成十一年十月、農用地整備公団の事業を継承し、緑資源公団となった。緑資源公団では、引き続き水源林の造成と林道の開設・改良を実施するとともに、森林、農用地のもつ公益的機能の維持増進を図るため、水源地域における森林と農用地の一体的な整備を推進することとしている。

(二) 林業事業体の育成
(林業事業体の育成強化)
 林業事業体の多くは厳しい経営環境におかれており、事業の協業化の促進や高性能林業機械の導入等による事業の合理化等を一体的に進めることが、林業事業体の育成強化を図る上で重要である。
(森林組合の育成強化)
 森林組合は、民有林における造林面積の八割、間伐面積の七割を実施するなど、森林整備の中心的な担い手となっている。
 今後も、森林組合の役割はますます重要になると考えられることから、広域合併などを通じて経営基盤の強化を図る必要がある。
(林業を担う幅広い人材の確保・育成)
 林業就業者の減少・高齢化が進む中で、人材の確保・育成が重要となっている。特に、林業への新規就業者の八割が他産業からの転職者であることから、潜在的な林業就業希望者の就業意欲を喚起するなど、多様な就業ルートの確保に努めることが必要である。

(三) 林業の生産性の向上
(林道の開設・改良等の推進)
 これまでに開設された林道の延長は目標の五割弱にとどまっている。林道は林業経営の効率化や森林の維持管理等を進めていく上で重要であることから、その整備を促進する必要がある。
(林業機械化の推進)
 これまでに導入された高性能林業機械は一千九百六十一台となった。今後、より一層の機械化を推進するため、「高性能林業機械化促進基本方針」の見直しを進めている。

(四) 林業普及指導の充実や花粉抑制対策の推進等
(林業普及指導の充実)
 林業普及指導は、森林整備の一層の推進や林業の経営基盤を強化する上で重要である。このため、林業普及指導運営方針を改定し、一層効率的・効果的な普及指導事業を行うこととしている。
(花粉抑制対策の推進)
 スギ等の花粉症問題に対しては、発症メカニズムの解明等、関係省庁が協力しながら研究を進めている。林野庁では、花粉の少ないスギ品種の開発、花粉の生産量と開花期を予測するための観測システムの開発等を行っている。

三 活力ある山村づくりの推進

(多くの森林は山村に存在)
 山村では、豊かな森林資源を活用して多様な産業が営まれ、こうした営みを通じて、健全で機能の高い森林が整備されてきた。今、山村に対して、国民生活に不可欠な農林産物の安定的な供給とともに、森林の公益的機能の高度発揮、自然とみどり豊かな余暇空間の提供等の期待が高まっている。
(多様な地域資源を活かした山村の活性化)
 平成十年の特用林産物の生産額は三千四百七十四億円である。特用林産物の生産は、山村における貴重な収入源であり、地域経済の安定等に大きな役割を果たしていることから、その振興を図っている。
 また、山村を活性化するために、生活環境の整備と併せて、地域資源を活用した新たな産業の育成や都市との交流など幅広い取組を進めるとともに、このような活動の中心となる人材の育成を進めることが重要である。

V 循環型社会の構築に向けた木材産業の振興

一 大きく落ち込んだ木材の需要

(一) 住宅着工と木材需要の動向
(落ち込んだ住宅着工)
 平成十年の木造住宅の新設着工戸数は、昭和三十九年に統計をとり始めて以来の最低を記録した。平成十一年に入り、住宅ローン減税等の景気対策もありやや持ち直したが、依然低い水準にある。
(大幅に減少した木材需要)
 このようなことから、平成十年の木材(用材)需要量は、前年に比べて一六%減少し、九千二百六万立方メートルとなった。
 これを用途別にみると、製材用は対前年比二三%減の三千七百十六万立方メートル、合板用は対前年比二七%減の一千百十五万立方メートル、パルプ・チップ用は対前年比四%減の四千二百十四万立方メートルとなっている(第4図参照)。

(二) 木材供給の動向
 平成十年の国産材の供給量は、木材需要の落ち込みにより、前年に比べて一〇%減少した(第5図参照)。
 また、外材の供給量は、国産材以上に減少幅が大きく、前年に比べて一八%の減少となった。特に米材の減少が著しい(対前年比二〇%減)。
 この結果、平成十年の木材自給率は二一%となり、前年の二〇%より一ポイント上昇した。また、製材用材の自給率は、外材の輸入が大きく減少する中で、三二%から三六%へと前年に比べて四ポイント上昇した。

(三) 低迷を続ける木材価格
 平成十年の木材価格は、住宅着工戸数の落ち込みに伴う木材需要の不振により、製材品、丸太とも前年より下落した。
 平成十一年に入り、住宅需要はやや持ち直したものの、ほぼ横ばいで推移した。

二 木材産業の経営動向

(一) 厳しい経営環境が続く木材産業
 平成九年以降の住宅着工戸数の大幅な減少により、木材産業を取り巻く状況は極めて厳しいものとなっている。
 このため、平成十年度に、@農林漁業信用基金が行う債務保証における無担保一〇〇%保証の拡大や、A木材産業等高度化推進資金の充実を行った。さらに、十一年度には、こうした債務保証の特例措置の延長、政府関係金融機関からの運転資金の活用や雇用調整助成制度等の一層の活用等に向けた指導の徹底を行った。
 このような措置を含む政府全体の景気対策により、平成十一年の木材・木製品製造業等の倒産件数と負債金額は、前年に比べて大幅に減少した。

(二) 減少傾向が続く国内生産
 平成十年の製材品生産量は、前年に比べて一四%減少した。平成十一年に入っても、住宅の構造部材での集成材使用が増加していることから、製材品の生産量はさらに減少すると見込まれる。
 平成十年の合板、集成材の生産量は、住宅着工戸数の減少により、前年に比べて一〇%以上の減少となった。
 こうした中で、寸法精度や強度といった品質・性能が明確な構造用集成材は、ほぼ前年並みの生産量となった。特に、住宅の柱等に使用される小断面集成材の割合が高まる傾向にある。

(三) 木材の流通の動向
 大工技能者の減少や住宅建築の施工期間の短縮などを背景に、近年、プレカット部材を使用する住宅の割合が増えている。
 プレカットの進展は、製品市場や問屋等を経由する流通経路を短縮化するなど、木材の流通構造に影響を及ぼしている。

三 循環型社会の構築に向けた木材産業の振興と木材の利用推進

 木材は、環境に大きな負荷を与えずに繰り返し生産することができ、住宅や家具に使用されることにより、長期間炭素を貯蔵し続けることができる優れた素材である。このようなことから、木材を幅広く適切に利用することにより、循環型社会の構築に大きく貢献できる。
 そのため、木材の加工・供給を担う木材産業を振興するとともに、木材の利用を進めることが重要である。

(一) 木材産業の振興
 「建築基準法」の改正(平成十年六月)や「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(平成十一年六月)の制定に伴い、品質・性能が明確で安定した木材製品の供給が、一層強く求められるようになると予想される。
 木材産業は、こうした木材需要構造の変化に的確に対応できるよう、体質の強化を進めることが必要である。特に、国産材については、加工コストの低減、安定供給体制の確立、乾燥や高次加工化を進めることが必要である。
 また、今後の住宅の需要動向等を考慮すると、床、壁等の内装の木質化を進めることも重要である。

(二) 木材利用の推進
 木材の多くが住宅建築に用いられていることから、木材の利用を進めるためには、木材の供給者と住宅の設計者、大工・工務店等、住宅の生産者が連携することが重要である。
 また、木材の良さや木材利用の効用に関する情報の提供、関係機関との連携による公共施設の木造化や内装の木質化を積極的に進めることが重要である。
 さらに、低位利用資源の有効利用の推進策として、間伐材の新たな用途の開発や、木質廃材等のエネルギー資源としての利用を進めていくことが、循環型社会の形成のためにも重要である(第4表参照)。

W 国有林野事業の抜本的改革への取組

一 改革の特別措置の概要

(一) 改革に至る経緯
 木材価格の低迷等による債務の累積から危機的な財務状況に陥った国有林野事業を抜本的に改革するため、平成十年十月「国有林野事業の改革のための特別措置法」等の改革関連二法が公布・施行された。

(二) 改革の趣旨と基本方針
 改革の趣旨は、国有林野を名実ともに「国民の森林」とするため、財政の健全性を回復し、効率的に管理経営できる体制を築いていくことである。
 改革の基本方針は、次のとおり。
 ア 公益的機能の発揮を重視した管理経営への転換
 イ 組織・要員の徹底した合理化、縮減
 ウ 一般会計からの繰入れを前提とした特別会計制度に移行
 エ 累積債務の本格的処理

二 「国民の森林」に向けた取組

(一) 公益的機能の発揮を重視した管理経営
 管理経営基本計画に基づき、「水土保全林」と「森林と人との共生林」からなる公益林の面積を全体の五割から八割に拡大した(第6図参照)。
 また、平成十一年四月から「機能類型ごとの管理経営の指針」に基づき、現地の実態にあった施業を実施している。
 さらに、公益的機能を発揮させるため、「国有林野施業実施計画」において育成複層林施業や長伐期施業の面積を拡大した。
 また、森林生態系保護地域を中心に他の保護林とネットワークを形成し、野生生物の移動の場として保護するための「緑の回廊(コリドー)」の設定作業を平成十二年三月から各森林管理局で開始した。

(二) 簡素で効率的な体制の確立
 事業実施の民間委託を推進した結果、平成十年度の民間委託率は、伐採、人工造林、保育のいずれも七割以上となっている。
 また、平成十一年三月、十四営林(支)局を七森林管理局にするなど組織を再編した。

(三) 収支の改善
 約二兆八千億円の累積債務の一般会計への承継等により、平成十年度は、前年度に比べて、借入金は四百七十六億円、償還金と利子の支払いは八百十億円減少した(第5表参照)。

(四) 国民に開かれた管理経営
(国民の意見を踏まえた管理経営基本計画の策定と実施状況の公表)
 平成十年十二月、案の段階で国民の意見を聴いた上で、管理経営基本計画を策定した。
 地域レベルでは、案の段階で三十日間の縦覧と関係市町村長等からの意見聴取を経て、地域管理経営計画を策定し、平成十一年四月から実施している。
 また、平成十年度の管理経営基本計画の実施状況については、「国有林野の管理経営に関する法律」の規定に基づき、平成十一年九月に林政審議会に諮った上で公表した。
(保健・文化・教育的利用の推進や国民参加による森林整備に向けた取組)
 国民が保健・文化・教育的な活動に国有林野を広く利用できるよう、レクリエーションの森を選定し、整備を行っている。
 また、各森林管理署では、ボランティア団体等にフィールドを提供する「ふれあいの森」の設定を進めている。
(国有林野に関する情報の提供等)
 森林や林業に関する情報等を国民に提供するため、「森林の市」、「森林倶楽部」、森林教室等のイベントを毎年開催している。
 また、林野庁本庁と全ての森林管理局が、平成十年度までにインターネットのホームページを開設し、国民に国有林野事業等の情報提供を行っている。

X 森林・林業をめぐる国際的な動向と我が国の取組

一 世界の森林資源と木材貿易の現状

(一) 世界の森林の現状
 世界の森林面積は、陸地面積の二七%を占める三十四億五千万ヘクタールで、開発途上地域を中心に減少・劣化の傾向にある。
 また、平成二年以降の五年間に、我が国の国土面積の一・五倍に当たる五千六百三十五万ヘクタールが減少した(第7図参照)。

(二) 木材貿易の現状
 平成九年の世界の木材生産量三十三億七千七百万立方メートルのうち、輸出されたものは一四%に当たる四億六千四百万立方メートルとなっている。
 我が国は、純輸入量(輸入量マイナス輸出量)でみると、八千七百万立方メートルと世界最大の木材輸入国である(第8図参照)。

(三) 木材貿易に関する動き
 平成十一年十一〜十二月にシアトルで開催されたWTO閣僚会議において、我が国は林産物貿易について、地球規模の環境問題、資源の持続的利用、輸出入国の権利義務バランスといった点の重要性を主張したが、新ラウンドを立ち上げるための閣僚宣言の採択には至らなかった。

二 森林・林業をめぐる国際的な動向

(一) 持続可能な森林経営に向けた国際的な動向
(IFF第四回会合での議論)
 平成十二年一〜二月に「森林に関する政府間フォーラム」(IFF)の第四回最終会合が開催され、国連の下に新たに国連森林フォーラム(UNFF)を設置するという提案等がまとまった。
(主要先進国による率先的な取組)
 平成十年のバーミンガム・サミットで採択された「森林に関する行動プログラム」は、平成十二年七月の九州・沖縄サミットで進捗状況の評価を行うこととなっている。
(基準・指標づくりに向けた取組)
 世界各地で取組が行われている基準・指標について、我が国は、モントリオール・プロセスの基準・指標との互換性を念頭に、森林の状態と変化の動向を統一した手法に基づき把握・評価するための調査を実施している。
(持続可能な森林経営に向けた現場レベルの取組)
 持続可能な森林経営の現場レベルでの実践を進めるため、モデル森林への取組を推進しており、平成十一年、「モデル森林の推進に関する国際ワークショップ」を三重県と群馬県で開催した。
(持続可能な森林経営を支援する認証・ラベリング)
 森林管理協議会(FSC)の認証を受けた森林は増加しており、平成十二年一月末現在、三十か国で一千七百六十七万ヘクタールとなっている。平成十二年二月、三重県の林家が我が国で初めてこの認証を取得したほか、一部森林組合等が取得に取り組んでいる。
 また、国際標準化機構(ISO)は、環境に配慮した経営を行う組織の認証(ISO一四〇〇一)を行っている。平成十一年七月、林業会社が我が国で初めてこの認証を林業分野で取得した。

(二) 地球温暖化防止に向けた取組
(地球温暖化防止に向けた国際的な動き)
 平成十一年十月、第五回締約国会議(COP5)がボンで開催され、「京都議定書」の実施に向けた課題について検討が行われた。この会議で、COP6に向けた具体的な取組等を定めた「ブエノスアイレス行動計画」の進展のための作業計画が策定された。
(我が国の地球温暖化対策)
 京都議定書の着実な実施に向けて、政府は「地球温暖化対策推進本部」を設置し、平成十年六月、森林整備の推進等を含む「地球温暖化対策推進大綱」を決定するとともに、「地球温暖化対策推進法」を翌年四月に施行した。
 林野庁は、大綱を踏まえ、平成十年七月に「森林・林業、木材産業分野における地球温暖化対策の基本方向」を策定した。
 また、森林や木材を活用した新たな循環型システムを普及・定着させていくために具体的な取組を行うよう都道府県知事に要請した。

三 持続可能な森林経営の達成に向けた我が国の貢献

 我が国は、開発途上国等での持続可能な森林経営の達成に向けて、二国間の技術協力や資金協力、ITTOやFAO等の国際機関への資金の拠出、各種調査事業等を推進しているほか、NGO活動も支援している。


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景気予測調査


―平成十二年二月調査―


大 蔵 省


<はじめに>

 大蔵省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百十八万社のうち約一万二千社を対象として、四半期ごとに大蔵省景気予測調査を実施している。
 以下は、十二年二月に実施した第六十八回調査結果の概要である。今回の調査では一万六百三十一社を対象とし、八千五百十社(回収率八〇%)から回答を得ている。
 なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。

 景 況第1表第1図参照

 十二年一〜三月期の景況判断BSI(前期比「上昇」−「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業は「上昇」超、中堅企業、中小企業は「下降」超となっている。
 先行き十二年四〜六月期を全産業でみると、大企業は引き続き「上昇」超の見通し、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。
 先行き十二年七〜九月期を全産業でみると、大企業は引き続き「上昇」超の見通し、中堅企業は「上昇」超に転じる見通し、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。

 売上高第2表参照

 十一年度下期の売上高は、全産業合計で前年比〇・一%の増収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業は増収見込み、中小企業は減収見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、衣服・その他の繊維製品、食料品などが減収となるものの、電気機械器具、石油製品等などが増収となり、全体では二・四%の増収見込みとなっている。
 非製造業では、映画・娯楽、卸売・小売などが増収となるものの、建設、不動産などが減収となり、全体では〇・七%の減収見込みとなっている。
 十一年度通期の売上高は、全産業合計で前年比〇・四%の減収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも減収見込みとなっている。
 十二年度上期の売上高は、全産業合計で前年比一・八%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、窯業・土石製品、金属製品などが減収となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増収となり、全体では二・六%の増収の見通しとなっている。
 非製造業では、建設、不動産などが減収となるものの、卸売・小売、事業所サービスなどが増収となり、全体では一・四%の増収の見通しとなっている。
 十二年度下期の売上高は、全産業合計で前年比二・四%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。
 十二年度の売上高は、全産業合計で前年比二・一%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。

 経常損益第3表参照

 十一年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比八・二%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、出版・印刷、化学工業などが減益となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増益となり、全体では二三・八%の増益見込みとなっている。
 非製造業では、卸売・小売、不動産などが減益となるものの、建設、その他非製造などが増益となり、全体では〇・七%の増益見込みとなっている。
 十一年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一一・一%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業のいずれも増益見込みとなっている。
 十二年度上期の経常損益は、全産業合計で前年比一五・四%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、その他製造、化学工業が減益となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増益となり、全体では一六・五%の増益の見通しとなっている。
 非製造業では、不動産、その他のサービスなどが減益となるものの、卸売・小売、建設などが増益となり、全体では一四・七%の増益の見通しとなっている。
 十二年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比一六・五%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。
 十二年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一六・〇%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。

 中小企業の設備投資第4表参照

 設備投資については、中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における十一年度の全産業の設備投資計画額を前年比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で一・八%減、除く場合(以下「除く」という)で〇・七%減の見込みとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で九・九%ポイントの上方修正、「除く」で一〇・七%ポイントの上方修正となっている。
 十二年三月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業は「過大」超となっている。
 先行きについては、全産業でみると「過大」超で推移する見通しとなっている。

 中小企業の販売製(商)品在庫

 十二年三月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっているものの、「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

 中小企業の仕入れ価格

 十二年一〜三月期の仕入れ価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業は「上昇」超、卸売業、小売業は「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業は「上昇」超、小売業は「低下」超で推移する見通しとなっている。

 中小企業の販売価格

 十二年一〜三月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。

 雇 用第5表参照

 十二年三月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」−「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「過剰気味」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「過剰気味」超で推移する見通しとなっている。
 十二年一〜三月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、中堅企業、中小企業では「増加」超となっている。
 先行きについては、大企業、中小企業では「減少」超に転じる一方、中堅企業では「増加」超で推移する見通しとなっている。
 十二年一〜三月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、中堅企業、中小企業では「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超の見通しとなっている。

 企業金融第6表参照

 十二年一〜三月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」−「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業は「ゆるやか」超、中小企業は「きびしい」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
 十二年一〜三月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」−「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業は「改善」超、中堅企業、中小企業は「悪化」超となっている。
 先行きについては、大企業は十二年四〜六月期に「悪化」超となった後、七〜九月期に「改善」超に転じる見通しとなっている。中堅企業、中小企業は引き続き「悪化」超で推移する見通しとなっている。
 十二年三月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

 中期的な経営課題第2図参照

 中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、次いで、大企業、中堅企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」を、中小企業は「後継者、人材の確保、育成」をあげている。
 業種別にみると、製造業では、大企業、中小企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中堅企業は「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」が最も多く、次いで、大企業は「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」、中堅企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業は「国内販売体制、営業力の強化」の順となっている。非製造業では、いずれの規模においても「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多い。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十二年二月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成十二年二月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 二月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十八万六千七十二円、前年同月比は一・五%増であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万三千八百三十九円、前年同月比一・五%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万五千二百二十七円、前年同月比一・四%増、所定外給与は一万八千六百十二円、前年同月比は三・九%増であった。
 また、特別に支払われた給与は二千二百三十三円、前年同月比は四・一%減であった。
 実質賃金は、二・四%増であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に金融・保険業三・三%増、不動産業三・一%増、鉱業及び建設業二・三%増、運輸・通信業一・七%増、サービス業一・六%増、電気・ガス・熱供給・水道業一・二%増、製造業一・〇%増、卸売・小売業、飲食店〇・七%増であった。

◇労働時間の動き

 二月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十三・三時間、前年同月比一・四%増であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十三・六時間、前年同月比一・四%増、所定外労働時間は九・七時間、前年同月比三・二%増、所定外労働時間の季節調整値は前月比一・三%減であった。
 製造業の所定外労働時間は十三・五時間、前年同月比一一・六%増、季節調整値の前月比は〇・六%減であった。

◇雇用の動き

 二月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・二%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・八%減、パートタイム労働者では二・三%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは電気・ガス・熱供給・水道業二・三%増、サービス業二・一%増、建設業〇・九%増、不動産業〇・一%増であった。前年同月を下回ったものは運輸・通信業〇・四%減、卸売・小売業、飲食店一・四%減、金融・保険業一・八%減、製造業二・〇%減、鉱業二・六%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・八%減、パートタイム労働者は三・八%増、卸売・小売業、飲食店では一般労働者三・一%減、パートタイム労働者一・五%増、サービス業では一般労働者一・七%増、パートタイム労働者三・六%増であった。













    <6月21日号の主な予定>

 ▽漁業白書のあらまし………………………水 産 庁 

 ▽月例経済報告(五月報告)………………経済企画庁 

 ▽普通世帯の消費動向調査(三月)………経済企画庁 




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