官報資料版 平成12年8月16日




                  ▽平成十二年版男女共同参画白書のあらまし………総 理 府

                  ▽毎月勤労統計調査(四月分)………………………労 働 省











平成12年版男女共同参画白書のあらまし


総 理 府


 我が国においては、日本国憲法に個人の尊重、法の下の平等がうたわれ、男女平等の実現に向けた様々な取組が、国際社会における取組と連動しつつ着実に進められてきたが、なお一層の努力が必要とされている。一方、少子高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等、我が国の社会経済情勢の急速な変化に対応していく上で、女性と男性が、互いにその人権を尊重し、喜びも責任も分かち合いつつ、性別にとらわれることなく、その個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題である。
 このような認識の下、男女共同参画社会の形成についての基本理念を明らかにして、その方向を示し、将来に向かって国、地方公共団体及び国民の男女共同参画社会の形成に関する取組を総合的かつ計画的に推進することを目的として、男女共同参画社会基本法が平成十一年六月に公布・施行された。
 これまで、政府は、男女共同参画推進本部が平成八年十二月に決定した「男女共同参画二〇〇〇年プラン―男女共同参画社会の形成の促進に関する平成十二年(西暦二〇〇〇年)度までの国内行動計画―」(以下「男女共同参画二〇〇〇年プラン」という。)の推進状況のフォローアップを行うため、「男女共同参画の現状と施策」として報告書をとりまとめてきたが、このたび、男女共同参画社会基本法第十二条に基づき、男女共同参画社会の形成の状況及び政府が講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策について報告するとともに、男女共同参画社会の形成の促進に関して講じようとする施策を明らかにすることとなった。
 本報告は、男女共同参画社会基本法に基づく初めての報告書である。そこで、まず、「平成十一年度男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告」として、第1部では、男女共同参画社会の形成の状況について取りまとめ、可能なものについては昭和五十年(一九七五年)の国際婦人年当時と比較をし、状況の変化を明らかにしている。第2部では、平成十一年度に政府が講じた諸施策について、男女共同参画二〇〇〇年プランの構成におおむね沿ってまとめている。次に、「平成十二年度において講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策」として、平成十二年度に新規に実施する施策を中心に、平成十二年度における各種施策を明らかにしている。

平成十一年度 男女共同参画社会の形成の状況に関する年次報告

第1部 男女共同参画社会の形成の状況

第1章 政策・方針決定過程への女性の参画をめぐる状況

1 政治分野における女性の参画状況
<国会議員に占める女性の割合は増加>
 国会議員に占める女性の割合について、その推移をみると、衆議院においては、戦後の一時期を除いて、昭和六十一年(第三十八回選挙)までは一〜二%の間を推移していたが、以後上昇に転じ、平成十二年四月七日現在、五・〇%(二十五名)となっている。
 また、参議院においては、昭和二十二年(第一回選挙)の四・〇%から基調として増加傾向にあり、平成元年(第十五回選挙)後に八・七%から一三・一%と大幅に増加して以降も増加を続け、平成十二年四月五日現在、一七・一%(四十三名)となっている。
<女性の参画の程度にばらつきのある地方議会>
 都道府県議会、市議会、町村議会、特別区議会の女性議員の割合をみると、平成十一年末時点で、女性議員の割合が最も高い区議会では一九・七%であるのに対し、町村議会は四・二%となっており、ばらつきがみられる。市議会は九・八%であるが、その中でも、政令指定都市は一四・一%と、市議会全体よりも女性の割合は高くなっている。昭和五十一年からの推移をみると、いずれの議会でも女性議員の割合は増加傾向にあり、平成に入ってからの伸びが大きいが、特に、平成十一年四月の統一地方選挙における女性の躍進を反映して、平成十一年末時点での女性議員の割合の増加が著しい。

2 行政分野における女性の参画状況
<国家公務員採用者に占める女性の割合は増加>
 国家公務員採用T種試験、U種試験及びV種試験の採用者に占める女性の割合は、長期的にみると増加傾向にあり、昭和五十一年度と最新の値を比べると、T種は二・二%から一六・一%(平成十二年度採用予定者)、U種は一〇・七%から二四・六%(平成十一年度採用者)、V種は二五・八%から四〇・三%(平成十一年度採用者)と、いずれも伸びている。
<長期的には増加している国家公務員在職者に占める女性の割合>
 行政職俸給表(一)適用者に占める女性の割合は、昭和六十年度からみると増加傾向にあり、平成十年度の在職者について、職務の級別に女性の割合をみると、定型的な業務を行う職務である一級に占める女性の割合は三三・六%と、三分の一を超えているものの、職務の級が上がるにつれて女性の割合は減少し、本省係長級である四級から六級にかけては一〇%台、本省準課長・課長相当級である九級から十一級になると約一%まで低くなるなど、職務の級により、女性の割合にはかなりの違いがあることがわかる。
<地方公務員試験における女性の割合>
 都道府県及び市区の地方公務員採用試験について、受験者及び合格者に占める女性の割合をみると、受験者、合格者とも、都道府県より市区における女性の割合の方が高くなっており、平成十年度では、都道府県採用試験の受験者では三〇・六%、合格者では二八・四%、市区採用試験の受験者では四三・五%、合格者では五二・九%を女性が占めている。
<地方公務員管理職に占める女性の割合>
 都道府県及び政令指定都市における、管理職(本庁の課長相当職以上)の女性の割合についてみると、都道府県及び政令指定都市とも、水準としては、本庁より、支庁、地方事務所、出張所等における割合の方が高くなっており、平成十一年では、都道府県の本庁で三・四%、支庁等で四・五%、指定都市の本庁で二・九%、支庁等で五・九%となっている。

3 司法分野における女性の参画状況
<増加する司法分野における女性の割合>
 判事、判事補、検察官、弁護士に占める女性の割合は、第1図のとおり、増加傾向にある。特に、平成十一年にはやや減少したものの、判事補に占める女性の割合が昭和五十年の四・九%から平成十一年の二一・九%へと大きく伸びていることから、今後、判事の割合の伸びが予想される(第1図参照)。

4 政策・方針決定過程への女性の参画状況の国際比較
<国会における女性議員の割合の国際比較>
 国会議員(下院又は一院制)に占める女性議員の割合について、約二十五年前と最近の状況につき、諸外国と日本の状況をそれぞれ比較すると、スウェーデンやノルウェーは一九七五年時点でも高い割合だったが、近年になって更に割合を伸ばしている。日本については低い水準ではあるが、一九七五年の一・四%と比較すると、増加傾向にある。

第2章 職場、家庭、地域への男女の共同参画をめぐる状況

1 ライフスタイルの変容
<進む晩婚化>
 平均初婚年齢の推移をみると、昭和五十年には、妻二十四・七歳、夫二十七・〇歳であったが、平成十年には、妻二十六・七歳、夫二十八・六歳まで上昇した。未婚率の推移をみると、女性については、二十歳代後半層では、昭和五十年の二〇・九%から平成七年には四八・〇%まで上昇し、約半数の女性が未婚の状況にある。三十歳代においては、昭和五十年には未婚率は前半層七・七%、後半層五・三%であったが、平成七年には前半層一九・七%、後半層一〇・〇%となっており、三十歳代においても未婚率は上昇している。
<女性にとって結婚の負担感につながっている、家事・育児責任>
 結婚に対して負担を感じる(感じている)者がどのような内容の負担を感じているかを聞いたところ、女性の場合、「家事の負担」、「仕事と家庭を両立させるのが困難な負担」が四割近くと高くなっており、「経済的負担」を第一に挙げる男性と対照的である。女性の結婚への負担感は、仕事をもつ女性が増加しているにもかかわらず、女性が家庭責任を負っている状況に変化がないことから生じていると考えられる。

2 就業の分野における男女の共同参画
<時系列的には上方シフトしている、我が国のM字カーブ>
 日本の女性の年齢階級別労働力率の時系列の動きをみると、男性と異なりM字カーブの形状を依然として残してはいるが、全体として上方シフトしている。
<未婚者と有配偶者で大きく異なる、年齢階級別労働力率の状況>
 女性の年齢階級別労働力率は、未婚者と有配偶者ではその形状が大きく異なる。未婚者の場合、逆U字型を描くが、有配偶者の場合、四十五〜四十九歳をピークとする山形を描く(第2図参照)。育児の時期と重なる、二十歳代、三十歳代にかけて、未婚者と有配偶者の労働力率の差が大きい。
<増加しつつある継続就業型志向>
 家事、育児、介護などの家庭における負担の重さなど、女性の就業を取り巻く環境は厳しいものの、仕事への考え方には変化がみられる。
 女性と職業についての考え方の推移をみると、「女性は職業をもたない方がよい」「結婚するまでは職業をもつ方がよい」という考え方は後退し、「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」(再就職型)が依然として割合が高く、「子どもができてもずっと職業を続ける」(継続就業型)が近年増加している。
<女性の就業と少子化>
 女性が継続して就業する国では、出生率が低い傾向があるという考え方もあるが、育児負担の大きい二十五〜三十四歳の女性の労働力率と合計特殊出生率の関係について、先進諸国の状況をみると、女性の労働力率の高い国では、合計特殊出生率は比較的高くなっていることがわかる(第3図参照)。我が国に比べ労働力率も合計特殊出生率も高いスウェーデンなどでは、男性も含め育児休業制度が普及し、保育サービスも充実しているなど、女性が仕事と育児の両立をしやすい、働きやすい状況にあるため、女性の就業は必ずしも少子化につながっていないと考えられる。
<女性雇用者の姿>
 女性労働者の平均勤続年数は長期化する傾向にあり、平成十年の平均勤続年数は八・二年、平均年齢も三十七・二歳になっている。平均勤続年数十年以上の者も、女性全体の三割程度になるに至った。
<職階、勤続年数が影響する男女間の賃金格差>
 男女間の賃金格差の要因の中でとりわけ影響が大きいのは、職階(部長、課長、係長への昇進状況)と勤続年数であると考えられる(第4図参照)。時系列でみると、勤続年数の長期化により勤続年数の影響度は縮小傾向にあるが、職階についてはほとんど変化がない。
<多様化する、女性の就業形態>
 女性雇用者の場合、短時間雇用者をはじめとして、就業形態が多様である点が特徴となっている。この点をやや詳細にみるため、女性雇用者の雇用形態別の状況をみると、二十歳代までは「正規の職員・従業員」が七割を占めるが、三十歳を超えると、パートなどの非正規労働者の割合が高まる。
<比較的小さい情報関連分野の男女間の所定内給与額の格差>
 情報関連職種のうち、システムエンジニアとプログラマーにおける男女間の賃金格差について、就労者の大多数を占める二十歳代、三十歳代でみると、全職種と比較して小さくなっている。
<女性に就労の機会を与える在宅ワーク>
 在宅就労という新しい勤務形態は、通勤の時間的コストや精神的負担を削減できるほか、自由に就業時間帯を選べるなど、柔軟な勤務形態を可能にすることから、女性に就労の機会を与えるものとして期待されている。在宅ワーカー(テレワーキングのうち「自宅で請負の仕事を行う」人)の属性については、四分の三以上を女性が占めており、かつ子供を持つ女性が約半数を占めている。女性の在宅ワーカーを年齢階級別でみると、三十歳代が七一・六%を占めている。また、最終学歴でみると、女性労働者全体に占める大卒以上の割合は九・九%であるが、在宅ワーカーでは四一・九%と、高学歴の女性が多く就労していることがわかる。
<地域の政策・方針決定過程への女性の参画状況>
 農山漁村の女性は、それぞれの生活の運営や地域社会の維持・活性化に大きな貢献をしているものの、地域の政策・方針決定過程への参画は十分ではない。例えば、農業委員会の委員や、農業協同組合・沿海地区出資漁業協同組合の正組合員・役員における女性の割合も、就業人口に占める女性の割合と比較すると低い水準となっている。しかしながら、これらの地域の政策・方針決定過程に関わる団体における女性の参画については、ほとんどの都道府県が指標・目標を策定し、これに向けた取組が進められている。

3 男女の家庭・地域生活への参画
<妻中心の家事、子育ての役割分担意識>
 家庭での男女の役割分担意識をみると、家事については、二割前後が「夫も妻も同じように行う」、七〜八割が「妻が行う」(「もっぱら妻が行う」「主に妻、夫も手伝う」)としている。子育てについては、四割前後が「夫も妻も同じように行う」、五〜六割が「妻が行う」としている。家事、子育てとも、「夫が行う」(「もっぱら夫が行う」「主に夫、妻も手伝う」)は非常に低い。
 妻の就労形態により男性の意識は異なり、妻がフルタイムで働いている場合は、家事、子育てとも、「夫も妻も同じように行う」とする者の割合が高まる。
<妻の負担となる家事、育児>
 夫の家事、育児の状況を具体的な内容に踏み込んでみると、家事については、どの項目についても、三分の一から三分の二の夫がほとんど何もしない状況にある(「まったくしない」「月一〜二回程度する」)(第5図参照)。「毎日・毎回する」「週三〜四回程度する」というレベルになると、ゴミ出しなどについては二割程度が行っているが、他の項目については、一割前後である。
 育児については、「遊び相手をする」「風呂に入れる」については半数の夫が行っているが、「食事をさせる」「寝かしつける」「おむつを替える」「泣いた子をあやす」については、半数程度がほとんど何もしていない状況にある。

4 高齢男女の暮らし
<進む高齢化>
 総務庁統計局「人口推計」によれば、平成十一年十月一日現在、我が国の総人口は一億二千六百六十九万人であり、うち、高齢者人口(六十五歳以上人口)は二千百十九万人で、総人口に占める高齢者人口の割合(高齢化率)は一六・七%である。
 高齢者人口を男女別にみると、女性一千二百三十七万人に対して男性は八百八十二万人で、男女の比率は女性一〇〇に対して男性七一・三となっている。
 長い高齢期をいかに過ごすかは、男性に比べて女性にとって、より重要な問題になっている。
<女性が担う、同居介護>
 高齢の寝たきり者の主な介護者の続柄をみると、同居者が主な介護者が八六・一%となっており、介護者の年齢が上がるにつれ、配偶者の割合が減少し、子及び子の配偶者の割合が上昇する。また、七十五歳以上では、子の配偶者の割合が子より高くなっていることが注目される。
 また、寝たきり者の主な介護者(同居)は、続柄にかかわらず、女性の割合が高い。特に、子の配偶者の場合は、九九・七%が女性である。

第3章 女性の人権をめぐる状況

1 女性に対する暴力
<増加傾向にある強姦・強制わいせつ>
 女性が被害者となった強制わいせつ事件の認知件数を被害者の年齢別にみると、平成十年は十三〜十九歳の被害者が一千五百四十九人と最も多く、次いで六〜十二歳の一千五十四人、二十〜二十四歳の七百五十七人となっている。特に最も多い年齢層である、十三〜十九歳の被害者の増加がここ数年著しくなっている。
<性的行為の強要の被害経験>
 女性に対して、異性から、おどされたり、押さえつけられたり、凶器を用いたりして、いやがっているのに性的な行為を強要された経験があるかどうかについて聞いたところ、「一回あった」(四・六%)と「二回以上あった」(二・二%)を合わせた“あった”とする人は六・八%となっている。
<いわゆる援助交際は依然高い水準>
 近年、青少年による、いわゆる「援助交際」が問題となっている。平成十一年における「性の逸脱行為」で補導・保護された女子少年の数は四千四百七十五人であり、その大半を中・高校生が占めている。その動機をみると「遊ぶ金欲しさ」が平成七年以降、五年連続でトップとなっており、全体に占める割合は依然四割を超えている。
<夫や妻から暴行等を受けた経験の有無>
 夫や妻から暴行等を受けた経験の有無について聞いたところ、「命の危険を感じるくらいの暴行をうける」については二・七%、「医師の治療が必要となる程度の暴行をうける」については二・六%の人が“あった”(「何度もあった」と「一、二度あった」を合わせたもの)としている。なお、“あった”については、「大声でどなられる」の三七・七%が最も多かった。
 男女別では、「命の危険を感じるくらいの暴行をうける」において、男性〇・五%、女性四・六%の人があったとしている。
<相談の有無>
 実際に暴行を受けた女性のうち、何らかの“相談した”人は五四・七%と、「どこ(だれ)にも相談しなかった」(三七・八%)人を上回っているが、その内訳(複数回答)は、「家族に相談した」(五四・七%)と「友人・知人に相談した」(三四・二%)に集中し、警察などの公的機関をはじめとする相談窓口等へ相談した人は、いずれも一%以下となっている。
<相談しない理由>
 「どこ(だれ)にも相談しなかった」と回答した女性は四割近くにもなるが、この理由としては、「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」と「自分にも悪いところがあると思ったから」が共に四一・二%と、最も高くなっており、被害が潜在化していることがわかる。
<大幅に増加したセクシュアルハラスメントの相談件数>
 平成十年度に全国の女性少年室に寄せられたセクシュアルハラスメントに関する相談件数は七千十九件となっている。これは、男女雇用機会均等法改正等の動きを反映して、事業主や女性労働者のセクシュアルハラスメントに対する関心が高まったことが影響したことが考えられる。
<つきまとい行為の被害経験の有無>
 男性及び女性に対し、ある特定の異性にしつこく、つきまとわれた経験について聞いたところ、「ある」が九・四%、「ない」が八八・四%であった。
 男女別では、「ある」と回答した人は、男性で四・八%、女性で一三・六%となっており、女性の方が多くなっている。

2 メディアにおける女性の人権
<増加するインターネット上のわいせつ情報>
 わいせつ物頒布等罪の件数は、平成十年は前年より大幅に増えて検挙件数は六百六十九件、検挙人員も八百八十一人となっている。インターネット等の普及が背景にあると考えられる。五年前に比べ十三倍に急増しているネットワーク犯罪における「わいせつ物配布等の事件」の割合は六九%となっている。
 有害情報と接触した経験を持つ人はインターネット利用者の約七割近くにも及び、その内容は「わいせつ物」が圧倒的に多くなっている。

3 生涯を通じた女性の健康
<減少傾向にある人工妊娠中絶件数>
 人工妊娠中絶件数・人工妊娠中絶実施率(十五歳以上五十歳未満女子人口千対)の昭和五十年から平成十年までの動向をみると、総数では、件数、実施率共に減少、低下傾向にある。ただし、二十歳未満では年齢別人工妊娠中絶件数、実施率共に増加、上昇傾向となっている。
<若年層の増加が懸念される性感染症>
 定点報告による女性の性感染症報告患者数の動向については、性器クラミジア感染症などの増加がみられる。近年、二十歳未満や二十歳代といった若年層での増加が指摘されているが、これは将来、妊娠、出産した場合に、母子感染が増加する危険性がある。
<二十歳代女性において高まっている喫煙率>
 喫煙率の推移をみると、男性の喫煙率が全年齢、二十歳代共に低下し、女性全体としてもほぼ横ばいとなっている一方で、二十歳代女性の喫煙率は昭和五十年の一二・七%から平成十一年二三・六%と大幅に上昇している。
 妊娠中の喫煙は、低体重児の出生や早産、自然流産、周産期死亡の危険性を高めるといった弊害がある。
<大幅に拡大した女子のオリンピック種目>
 一九七〇年代以降、新たに女子の正式種目として認められた競技のうち、国際婦人年の翌年(一九七六年)に開催されたモントリオールオリンピックから直近の一九九六年のアトランタオリンピックまでの間についてみると、その数は非常に多い。具体的には、アーチェリー(団体)、カヌー(スプリント)、サッカー、自転車、射撃、柔道、水泳(四×二百メートルリレー、五十メートル自由型、シンクロナイズドスイミング)、新体操、卓球、バスケットボール、バドミントン、ビーチバレー、ハンドボール、フェンシング、ボート、ホッケー、ヨット(除くソリング級)、陸上(一万メートル、四百メートルハードル、五千メートル、マラソン、三段跳び)がこの間に認められた。

4 男女共同参画を推進する教育・学習
<学校種類別進学率の推移>
 学校種類別の男女の進学率をみると、女子の高校への進学率は平成十一年度では九六・九%となっており、男子の九四・八%を上回っている。
 平成十一年度の高等教育機関への進学率についてみると、男子の大学(学部)への進学率は四六・五%である。一方、女子は大学(学部)と短期大学(本科)を合わせて四九・六%となるが、この内訳をみると、大学(学部)が二九・四%、短期大学(本科)が二〇・二%である。女子の大学(学部)への進学率は近年増加傾向にあるが、一方で短期大学への進学率は近年減少傾向にある。
<小さくなる女子の専攻分野の偏り>
 平成十一年度について大学学部における女子学生の専攻分野別構成を男子と比較すると、女子は人文科学を専攻する割合が高い。しかし、昭和五十年度及び平成十一年度について大学(学部)及び短期大学における女子の専攻分野別構成を比較すると、大学(学部)では人文科学、教育の割合が下がり、社会科学、工学の割合が増加しており、傾向として女子の専攻分野の偏りが小さくなっているのがわかる。また短大では、社会や保健の分野を専攻する者の割合が増加している。
<各専攻分野で増加する女性の割合>
 大学(学部)、修士課程、博士課程における各専攻分野の学生に占める女子学生の割合の変化をみると、ほとんどの分野で女子の割合が増加している。
 平成十一年度における大学(学部)、修士課程、博士課程に占める女子の割合はそれぞれ三六・二%、二六・一%、二四・九%となっている。
<増加する女性本務教員の割合>
 平成十一年度について、職名別に女性の割合をみると、校長・教頭、学長・副学長等、管理職に占める女性の割合が低いことがわかる。その職名別の推移をみると、小学校の校長及び教頭に占める女性の割合が大きく増加している。
<保護者に多くみられる男女の固定的役割観>
 「男は外で働き、女は家庭を守るべきだ」という男女の役割観について聞いてみると、男性の方が女性よりも「賛成する」割合が高い。年齢別にみると、保護者の方が「賛成する」割合が高くなっており、子供が性別にとらわれずに個性を伸ばすことができるように留意することが求められる。
<子どもに対する学歴期待の男女差>
 保護者の世代に対する、「中学生のお子さんにどの程度の教育を受けさせたいか」という質問に対する回答を、昭和五十一年の調査と平成九年の調査でみると、男の子に対しては、昭和五十一年時点でも、大学以上の教育を受けさせたいと思う者の割合は七割にのぼっており、平成九年時点とほとんど変わらない。これに対し、女の子に大学以上の教育を受けさせたいと思う者は、昭和五十一年時点では二一・八%(短大以上五三・一%)であったが、平成九年時点では、その二倍近い三九・九%(同七三・九%)となっている。
 このように、女の子に高い教育を受けさせたいと思う者の割合は、男の子に対するより低くなっているものの、約二十年間でその割合は大幅に増加している。

第2部 平成十一年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

第1章 男女共同参画を推進する社会システムの構築

1 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
 男女共同参画推進本部は、国の審議会等の女性委員の割合について、平成八年五月二十一日に決定した「当面、平成十二年(西暦二〇〇〇年)度末までのできるだけ早い時期に二〇%を達成するよう鋭意努めるものとする。」という目標の達成に向け、審議会等の委員への女性の登用に努めている(平成十一年九月末現在一九・八%)。
 人事院においては、女性の採用の促進について、意欲ある優秀な女性の国家公務員採用試験受験者が増加するよう、女性幹部職員による講演、女性職員との意見交換を中心とする「女性公務員による女子学生のための霞が関セミナー」など、女子学生を対象とした特別の募集活動が実施されているほか、各省庁に対し、採用試験合格者からの女性の積極的な採用の要請が行われている。
 自治省においては、地方公務員制度調査研究会報告の提言等を踏まえ、地方公共団体に対して、地方公務員法の定める平等取扱いと成績主義の原則に基づき、女性地方公務員の採用、登用、職域拡大等に積極的に取り組むよう要請等を行っている。

2 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革
 経済企画庁では、国民経済計算のサテライト勘定研究の一環として、女性に担われることの多い介護・保育について、市場サービスと無償労働の両面を把握するための統計の整備に関する研究を平成九年度から行っており、その中間的成果物として「介護と保育に関する生活時間の分析結果」を平成十一年六月に公表した。

第2章 職場、家庭、地域における男女共同参画の実現

1 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保
 改正男女雇用機会均等法等が平成十一年四月から全面施行されたことから、労働省では、事業主、労働者等に対し、説明会等あらゆる機会を活用して改正法の周知徹底を図っている。
 労働省では、女性が働くことを積極的に支援するための拠点施設として、平成十二年一月二十日、東京都港区に「女性と仕事の未来館」(略称「未来館」)を開館した。未来館では、女性の能力発揮のためのセミナー等を行い、女性の能力発揮を支援している。
 通商産業省では、平成十一年度に、女性起業家・高齢者起業家支援等について調査研究を行った。
 そして、女性の視点を活かした起業を積極的に促進し、我が国経済活力の維持・向上を図るとの観点から、中小企業金融公庫、国民生活金融公庫において、女性起業家への低利貸付制度(女性起業家支援資金)を実施している(平成十一年四月〜)。

2 農山漁村におけるパートナーシップの確立
 平成十一年七月に成立した「食料・農業・農村基本法」を受けて、平成十二年三月に定められた「食料・農業・農村基本計画」において、担い手としての女性の参画の促進に関する農政の基本的考え方及び施策の基本方向が明示された。
 男女共同参画社会基本法及び食料・農業・農村基本法の趣旨を踏まえ、平成十一年十一月に「農山漁村男女共同参画推進指針」を策定し、農山漁村における男女共同参画社会の形成に向け、総合的推進を図るため、取組を進めているところである。

3 男女の職業生活と家庭・地域生活の両立支援
 平成十年十二月の内閣総理大臣主宰による「少子化への対応を推進する有識者会議」における提言を受け、平成十一年五月には「少子化対策推進関係閣僚会議」、同年六月には「少子化への対応を推進する国民会議」が設置された。この閣僚会議においては、有識者会議の提言の趣旨を踏まえ、同年十二月十七日に「少子化対策推進基本方針」が策定された。また、同年十二月十九日には関係六大臣の合意により、「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)」が策定された。
 平成十二年三月、児童手当の支給対象年齢を現行の三歳未満から義務教育就学前に拡大することを内容とする、児童手当法の一部を改正する法律案を第百四十七回国会に提出した。
 平成十一年四月一日から、育児・介護休業法が全面施行された。また、育児休業給付及び介護休業給付の給付率を現行の二五%から四〇%に引き上げること等を内容とする雇用保険法等の改正法案を、第百四十七回通常国会に提出した。
 平成十一年度より、仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行う「ファミリー・フレンドリー」企業の普及促進を図る事業を総合的に実施した。

4 高齢者等が安心して暮らせる条件の整備
 平成十二年三月に介護労働者法を改正し、介護分野における労働力の確保と、良好な雇用機会の創出の支援を図ることとしたところである(平成十二年四月施行)。
 高齢者の介護を社会的に支える仕組みを創設するため、平成八年十一月に、国会に介護保険制度創設に関する法案を提出し、平成九年十二月に法案が可決・成立し、同月に公布された。平成十二年四月からの介護保険制度の円滑な実施に向けて、十分な介護サービスの供給体制が整備されるよう新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)を着実に推進するとともに、保険者である市町村に対する財政面や実施体制面からの支援についても十分に配慮しながら、準備を進めてきている。
 平成十一年は五年に一度の財政再計算の年であり、同年七月に「国民年金法等の一部を改正する法律案」を国会に提出し、翌年三月に成立した。
 政府は、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上を促進することを目的とする「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律案」を第百四十七回通常国会に提出した。

第3章 女性の人権が推進・擁護される社会の形成

1 女性に対するあらゆる暴力の根絶
 性犯罪の告訴期間の制限の撤廃を盛り込んだ「刑事訴訟法及び検察審査会法の一部を改正する法律」を平成十二年三月、第百四十七回国会に提出した。
 平成十一年五月十八日には、第百四十五回国会において、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が成立し、同年十一月一日に施行された。同法は、児童はあらゆる形態の性的搾取及び性的虐待から保護されるとする「児童の権利に関する条約」(平成六年批准)の精神を踏まえて、より一層児童の保護を図るために、超党派による議員立法として発議され、成立したものである。
 平成十一年十一月に、厚生省、法務省、文部省、総務庁、警察庁、最高裁判所及び関係団体をメンバーとする児童虐待対策協議会を開催し、国レベルでの連携の強化を図ることとした。
 男女共同参画審議会では、平成十一年五月二十七日、「女性に対する暴力のない社会を目指して」を内閣総理大臣に答申した。同答申では、女性に対する暴力の実態を踏まえ、引き続き調査審議を行うこととされていることから、女性に対する暴力部会で更に調査審議が進められている。
 総理府では、平成十一年九〜十月、全国二十歳以上の男女四千五百人を対象に、「男女間における暴力に関する調査」を実施した。同調査は、男女間における暴力に関する全国レベルでの初めての調査である。

2 メディアにおける女性の人権の尊重
 郵政省と放送事業者は、十一年六月の専門家会合の取りまとめの中で、青少年問題への具体的な対応策として、@青少年向け番組を週三時間以上放送(民放)、Aメディア・リテラシーに関する調査研究会を開催、B放送事業者の自主的な機関(青少年と放送委員会(仮称))を新設、C児童・青少年の視聴に配慮する時間帯(十七〜二十一時)を設定(民放)、D広報番組等で番組の情報提供の充実等の取組方針を示した。

3 生涯を通じた女性の健康支援
 厚生省においては、平成十年五月から「生涯を通じた女性の健康施策に関する研究会」を開催し、女性の健康を取り巻く現状の分析と、今後の施策の方向性を総合的な見地から検討してきた。同研究会は、平成十一年七月に報告書を取りまとめた。

4 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実
 平成十一年六月、生涯学習審議会から、青少年の「生きる力」をはぐくむ地域社会の環境の充実方策について具体的に提言した「生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ」と、生涯学習の成果を生かすための方策について具体的に提言した「学習の成果を幅広く生かす」の二つの答申が出された。また、平成十一年十一月十七日には、文部大臣から「新しい情報通信技術を活用した生涯学習の推進方策について」の諮問がなされた。

第4章 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

1 国際規範・基準の国内への取り入れ・浸透
 「女性二〇〇〇年会議」では、「北京行動綱領」の実施状況の検討・評価が行われる予定となっており、国連はその準備の一環として、各国における同綱領の実施状況についての質問状を加盟国に発出した。我が国はこれを受け、広く一般から寄せられた意見等を踏まえて、同綱領の実施状況や今後の展望等を内容とする回答を作成し、平成十一年四月二十八日、国連に提出した。

2 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献
 第四十四回婦人の地位委員会(二〇〇〇年二月二十八日〜三月十七日)では、「第四回世界女性会議のフォローアップ」の議題の下で、「ジェンダーの視点の主流化」等に関する審議がなされたほか、「女性二〇〇〇年会議」の準備委員会として、その組織事項や採択予定文書である政治宣言や更なる行動とイニシアティブに関する文書に関する協議が行われた。

第5章 計画の推進

1 施策の積極的展開と定期的フォローアップ
 男女共同参画推進本部は、平成八年十二月に決定した「男女共同参画二〇〇〇年プラン―男女共同参画社会の形成の促進に関する平成十二年(西暦二〇〇〇年)度までの国内行動計画―」に基づいて、総合的に諸施策を推進している。

2 調査研究、情報の収集・整備・提供
 総理府男女共同参画室では、インターネット上でホームページ「ジェンダー・インフォメーション・サイト」(アドレスhttp://www.sorifu.go.jp/danjyo/)を開設し、国の男女共同参画社会の実現に関する取組や関連データ等を日本語及び英語で国内外に広く紹介・提供している。

3 国内本部機構の組織・機能強化
 政府は、平成十一年二月二十六日、「男女共同参画社会基本法案」を第百四十五回通常国会に提出した。男女共同参画社会基本法は、同年六月十五日に可決成立し、同月二十三日に平成十一年法律第七十八号として公布、施行された。
 男女共同参画審議会は、平成十一年八月六日に新たな委員が発令され、同九日に開催された会合において、内閣総理大臣から、「男女共同参画社会基本法を踏まえた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本的な方向」について、新たに諮問を受けたことから、現在、基本問題部会において、この問題についての調査審議が進められている。

4 国、地方公共団体、NGOの連携強化、全国民的取組体制の強化
 平成十二年一月二十八日には、熊本県八代市において、男女共同参画宣言都市奨励事業に取り組んでいる地方自治体の首長等による「全国男女共同参画宣言都市サミット」が開催された。

平成十二年度において講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

第1章 男女共同参画を推進する社会システムの構築

1 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
 女性国家公務員の採用・登用等の促進については、「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成十一年四月二十七日、中央省庁等改革推進本部決定)において、「男女共同参画の推進に向け、環境整備に取り組むとともに、女性の登用の促進を図る」とともに、その推進状況についてフォローアップを行う旨を定めたところである。また、各省庁の人事管理の基本方針である「平成十二年度における人事管理運営方針」(平成十二年三月二十二日総務庁長官決定)においても、「男女共同参画社会の趣旨にのっとり、女性国家公務員の採用・登用について、その促進を図る」こととされており、この方針に沿って、政府一体となって格段の努力を払うこととしている。

2 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革
 総務庁では、「アンペイドワーク統計研究会」において、無償労働に関する統計に関し、その概念・定義や把握方法の結論を平成十二年度中に得ることとしている。

第2章 職場、家庭、地域における男女共同参画の実現

1 雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保
 労働省では、企業によるポジティブ・アクションを促すため、企業トップや人事労務担当者を対象としたセミナーや、女性管理職候補者等に対する研修の実施、女性の能力発揮促進のために積極的に取り組んでいる企業の「均等推進企業表彰」等を行う。
 労働省の三地方機関(都道府県労働基準局、都道府県女性少年室、都道府県職業安定主務課)を統合した都道府県労働局の設置により、男女雇用機会均等確保等の施策について、総合的な行政展開を図る。
 労働省では、在宅ワークの適正な実施を確保するためのガイドラインを策定し、周知・啓発を図るとともに、在宅ワーカー等に対する情報提供、相談体制の整備等による支援を推進する。

2 農山漁村におけるパートナーシップの確立
 都道府県、市町村の各段階で新たな推進体制を整備し、女性農業者の参画の促進に係る中期的なビジョン・目標、年度活動計画等を策定する。また、市町村において農山漁村の女性の参画目標を策定し、この達成に向けた啓発活動等を実施する。
 農産物の加工等の活動の促進とともに、農家労働の軽減に資する女性農業活動支援施設を整備する。また、漁村女性の作業改善や能力の向上を図るため、地域漁獲物の加工・販売などの取組を支援するほか、子どもの利用スペースを備えた施設を整備する。

3 男女の職業生活と家庭・地域生活の両立支援
 児童や家庭を取り巻く環境が大きく変化している中で、保育所の待機児童を解消し、利用しやすい保育サービスの整備を進めていくことは極めて重要な課題となっている。このため、新エンゼルプラン等に基づいて、低年齢児受入れの拡大や延長保育、休日保育等の多様な需要に応える保育サービスについて、計画的に推進していくこととしている。
 文部省では、保護者が安心して子どもを育てられる環境を整備するため、新幼稚園教育要領を平成十二年四月から実施するなど幼稚園の教育内容・方法の充実を図るとともに、満三歳児等の就園に関する条件整備や、預かり保育の推進、地域の幼児教育のセンター的機能の充実等、地域の実態や保護者の要請にできるだけ応えられるよう、幼稚園の弾力的な運用を促進する。
 また、育児不安の問題や幼児虐待等に対応するため、平成十二年度から、子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親に対して、気軽に相談にのったり、きめ細かなアドバイス等を行う「子育てサポーター」を配置し、小学校の余裕教室等において様々な交流事業を実施するなど、地域における子育て支援ネットワークを形成することとしている。
 労働省は、育児休業中の代替要員を確保し、かつ、育児休業取得者を原職又は原職相当職に復帰させた事業主に対し、育児休業代替要員確保等助成金を支給する。
 文部省では、人々にボランティア活動への参加を呼びかけるため、平成十二年度から全国各ブロックにおいて、推進フォーラムを開催する。また、生涯学習振興の観点から、ボランティア活動の一層の支援・推進を図るため、「全国ボランティア情報提供・相談窓口」において、電話等による情報提供を行っている。

4 高齢者等が安心して暮らせる条件の整備
 平成十一年度で終期を迎える新ゴールドプラン後の新たなプランとして、「今後の五か年の高齢者保健福祉施策の方向(ゴールドプラン21)」が策定され、平成十二年度より実施することとしている。

第3章 女性の人権が推進・擁護される社会の形成

1 女性に対するあらゆる暴力の根絶
 平成十二年度、女性に対する暴力に関する社会の意識を喚起するとともに、関係機関・団体等の取組を一層強化するため、「女性に対する暴力をなくす運動」を総理府、警察庁、総務庁、法務省、文部省、厚生省及び労働省の関係省庁の共同主唱により実施することとしている。運動の期間は、原則として五月二十四日を中心とするおおむね二週間である。

2 メディアにおける女性の人権の尊重
 総理府では、性別に基づく固定観念にとらわれない、男女の多様なイメージを社会に浸透させるため、男女共同参画の視点から、公的機関が策定する広報・出版物等が遵守すべきガイドラインを策定することとしている。

3 生涯を通じた女性の健康支援
 母子保健については、二十一世紀の母子保健に係る国民運動計画として、「健やか親子21」を平成十二年度中に策定することとしている。

4 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実
 文部省では、平成十二年度から新たに「〇才からのジェンダー教育推進事業」として、年少の子どもを持つ親が、家庭で固定的役割分担意識にとらわれることなく、子育てに取り組むための教育に関して、学習プログラム等の開発や、モデル的な事業の実施などによる調査研究を行うこととしている。

第4章 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献

1 国際規範・基準の国内への取り入れ・浸透
 二〇〇〇年六月五日から九日まで、ニューヨークにおいて、国連の特別総会として「女性二〇〇〇年会議」が開催され、一九九五年の第四回世界女性会議において採択された「北京宣言及び行動綱領」を再確認するとともに、その完全実施に向けた今後の戦略に関する文書が採択される予定である。

2 地球社会の「平等・開発・平和」への貢献
 「女性二〇〇〇年会議」についての情報を国内に提供するために、引き続き女性二〇〇〇年会議日本国内委員会において、関連する国際会議についての報告会の開催やニューズレターの発行を行うこととしている。

第5章 計画の推進

1 施策の積極的展開と定期的フォローアップ
 平成十一年六月に制定された男女共同参画社会基本法において、政府は「男女共同参画基本計画」を策定することとされている。基本計画については、政府は男女共同参画審議会の答申とともに、男女共同参画社会基本法第七条に掲げる「国際的協調」の基本理念の趣旨を踏まえ、平成十二年六月に国連総会の特別総会として開催される予定の「女性二〇〇〇年会議」の成果を視野に入れて策定することが必要である。一方で、平成十三年一月の中央省庁等改革の動向も勘案し、平成十二年の年内に基本計画を策定する予定である。
 「男女共同参画社会基本法」が施行されたのに伴い、平成十二年度より年次報告書が法定化され、国会への提出が義務づけられた。本書は法定化されてから第一回目の白書である。

2 調査研究、情報の収集・整備・提供
 平成十三年一月以降の新たな中央省庁体制の下、内閣府に置かれる男女共同参画会議において、政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査を速やかに実施できるよう、総理府では、有識者による「男女共同参画影響調査研究会」を平成十一年度から開催し、同研究会において、男女共同参画に係る影響調査の手法について検討を行っている。

3 国内本部機構の組織・機能強化
 平成十三年一月六日には、中央省庁等改革により、新たな体制に移行することとされている。新たな体制においては、内閣府に、四つの重要政策に関する合議制の機関の一つとして、経済財政諮問会議、総合科学技術会議、中央防災会議と並び、男女共同参画会議が設置される。この会議は、内閣官房長官を議長とし、各省大臣等と学識経験者から構成されることとなっている。さらに、内部部局として、男女共同参画に関する企画立案及び総合調整等を主な所掌事務とする「男女共同参画局」が設置されることとなっている。
 苦情の処理等については、行政相談委員や人権擁護委員に対し、男女共同参画に関する認識を高めるための研修機会や情報提供等の充実を図る。
 法務省の人権擁護機関では、全法務局・地方法務局の本局に「女性の人権問題ホットライン(苦情一一〇番)」を開設するほか、「女性の人権特設相談所」を随時開設するなど、女性に対する暴力やセクシュアル・ハラスメント等の女性の人権問題を取り扱う人権相談を積極的に実施することとしている。
 総務庁では、女性行政相談委員の委嘱割合の向上を図るとともに、男女共同参画社会に関する認識を高めるための研修や情報提供の充実、関連する事例の蓄積等を行うこととしている。

4 国、地方公共団体、NGOの連携強化、全国民的取組体制の強化
 総理府では、平成十二年度より、男女共同参画社会づくりに向けて、地域での取組の促進、気運の醸成を図るため、一般国民、民間団体、行政機関が一堂に会する場として、「男女共同参画フォーラム」を新たに開催することとしている。


目次へ戻る

賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十二年四月分結果速報


労 働 省


 「毎月勤労統計調査」平成十二年四月分結果の主な特徴点は次のとおりである。

◇賃金の動き

 四月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十九万二千八百四十四円、前年同月比は一・〇%増であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万六千五百八十三円、前年同月比一・二%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万七千八十二円、前年同月比一・〇%増、所定外給与は一万九千五百一円、前年同月比は四・一%増であった。
 また、特別に支払われた給与は六千二百六十一円、前年同月比は七・五%減であった。
 実質賃金は、一・九%増であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に金融・保険業三・〇%増、運輸・通信業二・七%増、不動産業二・二%増、電気・ガス・熱供給・水道業一・四%増、建設業及び製造業一・三%増、サービス業〇・八%増、卸売・小売業,飲食店〇・一%増であった。

◇労働時間の動き

 四月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百六十・二時間、前年同月比〇・五%増であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百五十・〇時間、前年同月比〇・三%増、所定外労働時間は十・二時間、前年同月比四・二%増、所定外労働時間の季節調整値は前月比〇・九%減であった。
 製造業の所定外労働時間は十三・八時間、前年同月比一三・一%増、季節調整値の前月比は二・八%減であった。

◇雇用の動き

 四月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・四%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・九%減、パートタイム労働者では一・七%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは電気・ガス・熱供給・水道業一・九%増、サービス業一・七%増、不動産業一・二%増であった。建設業は前年同月と同水準であった。前年同月を下回ったものは運輸・通信業〇・四%減、鉱業〇・七%減、卸売・小売業,飲食店一・三%減、製造業一・九%減、金融・保険業二・三%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・五%減、パートタイム労働者二・九%増、卸売・小売業,飲食店では一般労働者二・七%減、パートタイム労働者一・二%増、サービス業では一般労働者一・五%増、パートタイム労働者二・一%増であった。








言葉の履歴書


 火砕流

 火砕流とは、火山灰や岩塊、空気や水蒸気が一体となって急速に山の斜面を流下する現象です。火砕流の速度は時速数十キロメートルから数百キロメートル、温度は数百度にも達し、火砕流発生後の脱出は不可能です。大規模な場合は地形の起伏にかかわらず広範囲に広がり、埋没、破壊、焼失させ、破壊力が大きく極めて恐ろしい火山現象です。
 わが国では平成二年から始まった雲仙岳の噴火活動において、火砕流という言葉が広く知られるようになりました。雲仙岳では平成三年六月に発生した大火砕流で死者・不明四十三人という大災害となったほか、その後も繰り返し発生した火砕流により家屋等の被災が相次ぎました。このような火山災害を防ぐため、気象庁では全国に八十六ある活火山について活動を監視しており、火山活動が活発になった場合には、随時火山情報を発表しています。火山情報は地方自治体等の防災対策に活用されるほか、報道機関を通じて住民に周知され、警戒を促すようになっています。
(『広報通信』平成十二年八月号)







    <8月23日号の主な予定>

 ▽高齢社会白書のあらまし…………………………………総 理 府 

 ▽法人企業の経営動向(平成十二年一〜三月期)………大 蔵 省 




目次へ戻る