官報資料版 平成12年8月23日




                  ▽高齢社会白書のあらまし…………………………………総 務 庁

                  ▽法人企業の経営動向(平成十二年一〜三月期)………大 蔵 省











高齢社会白書のあらまし


平成11年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告


平成12年度において講じようとする高齢社会対策


総 務 庁


 「平成十二年版高齢社会白書」は、高齢社会対策基本法に基づき、政府が毎年国会に提出するものであり、「平成十一年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告」及び「平成十二年度において講じようとする高齢社会対策」の二つから成っている。
 今回の白書は、去る五月三十日、閣議決定され、同日国会に提出された。
 白書のあらましは次のとおりである。

平成十一年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告

概 説 高齢社会の動向

第1節 国際高齢者年の取組と今後の高齢社会対策の展望

1 序
○ 世界的な人口高齢化に対応した一九九九年の国際高齢者年の諸活動を振り返るとともに、国際的な視野に立った今後の高齢社会対策について展望する。

2 人口高齢化の国際的動向
○ 世界の総人口に占める六十五歳以上の人の割合(高齢化率)は、二〇〇〇年の六・九%から二〇五〇年には一六・四%にまで上昇するものと見込まれている。
○ 人口の高齢化は、先進地域はもとより開発途上地域でも急速に進展するものと見込まれ、とりわけ中国・韓国などで顕著である(第1図参照)。

3 国際高齢者年に至る経緯
○ 世界的な人口の高齢化に対応するため、国連主催による初めての「高齢化に関する世界会議」が一九八二年(昭和五十七年)に開催され、「高齢化に関する国際行動計画」を採択し、同年の国連総会で決議された。
○ 一九九一年(平成三年)の国連総会において、「高齢化に関する国際行動計画」を促進するため、高齢者の自立、参加、ケア、自己実現、尊厳の五つの原則を内容とする「高齢者のための国連原則」が採択された。
○ 一九九二年(平成四年)の国連総会において、一九九九年を国際高齢者年とすることが決定された。

4 国際高齢者年の取組
○ 国際高齢者年は「高齢者のための国連原則」を促進することを目的とし、高齢化が社会全体を含む多様な問題を含んでいることから、テーマを「すべての世代のための社会をめざして」に設定した。
○ 我が国では、国際高齢者年の趣旨を踏まえ、国際高齢者年中央記念式典を始めとして、シンポジウム等の開催、高齢者向けの新しい体操の制定、国際高齢者年ニュースの発行等を行った。
○ 各国においても様々な取組が行われたほか、国連では「国際高齢者年のフォローアップのための特別会議」が開催され、各国における国際高齢者年の取組状況等が報告された。

5 国際高齢者年におけるNGOの活動
○ 国際高齢者年においては、内外の様々なNGOが活発な活動を行うとともに、我が国では高齢者年NGO連絡協議会が結成されるなど自主的な連携への取組も進められた。
○ NGO自ら国際会議等を開催し、日本からも積極的に参加するなど、NGOの国際的な取組と交流が行われた。

6 国際高齢者年を踏まえた今後の高齢社会対策の展望
○ 我が国の高齢社会対策は、「高齢化に関する国際行動計画」、「高齢者のための国連原則」の趣旨を踏まえ、高齢社会対策基本法、高齢社会対策大綱に基づき、推進されている。
○ 我が国は、高齢化に関する国際協調・協力として、サミット(主要国首脳会議)において世界福祉構想やアクティブ・エージング(活力ある高齢化)を提唱するとともに、高齢化に係る技術協力や人材交流、人材派遣等を実施している。今後、高齢化先進国として、更なる協力・取組等が期待されるものと考えられる。
○ 国際高齢者年の活動を通して、NGOの活発な活動や国際高齢者年のテーマ「すべての世代のための社会をめざして」と密接に関係する世代間の問題等が改めて注目されたものと考えられる。
○ 国際高齢者年での取組及びそこで得られた知見をいかし、来るべき本格的な高齢社会の到来を、負担としてではなく、むしろ新しい社会への変化のための良い機会と捉え、次世代に豊かで活力ある社会を引き継いでいくことが重要である。

第2節 高齢社会対策の動向

1 高齢社会対策関係予算
 一般会計予算における高齢社会対策関係予算は、平成十一年度においては十兆三千二百十五億円、十二年度においては十兆五千六百九十九億円となっており、各年度の一般会計予算全体に占める割合はそれぞれ一二・六%、一二・四%となっている。
 施策・事業の主な予算額(平成十二年度)をみると、国民年金及び厚生年金保険(国庫負担分)が五兆一千五百二十九億円、老人医療費の確保が三兆三千百二十七億円、介護保険制度の実施が一兆二千九百十二億円などとなっている。

2 高齢社会対策の動き
 平成十一年度に推進された高齢社会対策について、主な動きを挙げれば次のとおりである。

(1) 法律の制定・改正
@ 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案の国会提出
 急速な高齢化の進展等に対応し、高年齢者の雇用の安定の確保等を図るため、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案を第百四十七回国会に提出した。
 改正法案では、事業主は定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講ずるよう努めなければならないものとするとともに、高年齢者等の再就職の促進に関する措置を充実すること、シルバー人材センターの業務の拡大等を内容としている。
A 国民年金法等の改正
 少子高齢化の一層の進展等に対応し、公的年金制度の長期的安定を図り、あわせて将来の活力ある長寿社会の実現に資するため、国民年金法(昭和三十四年法律第一四一号)等の改正が行われた。
 この改正では、将来世代の保険料負担の上昇を抑制するため、国民年金及び厚生年金保険について、給付水準の適正化、給付額の改定方法の見直し、六十歳台前半の厚生年金の支給開始年齢引上げ等を内容としている。
 また、保険料負担の公正を確保するため、厚生年金制度において賞与を一般の保険料や給付額に反映させる総報酬制度の導入等を行うとともに、国民年金制度及び厚生年金保険制度の長期的な安定等を図るため、厚生年金保険及び国民年金の積立金を自主運用することとしている。
B 平成十二年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律の成立
 現下の経済情勢にかんがみ、平成十一年平均の全国消費者物価指数は十年平均の全国消費者物価指数を下回ったが、平成十二年度の特例として、国民年金法による年金の額等を据え置くため、平成十二年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律(平成十二年法律第三四号)が成立した。
C 確定拠出年金法案の国会提出
 国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、公的年金と相まって国民の生活の安定と福祉の向上を図るため、確定拠出年金法案を第百四十七回国会に提出した。
 同法案は、個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、確定拠出年金に係る規約、加入者等の資格、掛金及びその運用、給付並びに資産の移管について必要な事項を定めること等を内容としている。
D 民法の改正等
 高齢社会への対応、高齢者福祉等の充実の観点から、痴呆性高齢者等の判断能力が不十分な者の保護を図るため、禁治産・準禁治産制度の改正等を内容とする民法(明治二十九年法律第八九号)の改正が行われるとともに、任意後見制度の新設を内容とする任意後見契約に関する法律(平成十一年法律第一五〇号)が成立した。
 民法の改正は、現行の禁治産・準禁治産制度を、各人の判断能力及び保護の必要性の度合いに応じた柔軟かつ弾力的な措置を可能とする制度とするため、補助(新設)・保佐(準禁治産の改正)・後見(禁治産の改正)の制度に改めるとともに、社会福祉協議会等の法人や複数の者が成年後見人等となることを可能とし、成年後見人等の権限濫用を防止するために監督制度の充実を図ることなどを内容としている。
 任意後見契約に関する法律においては、本人が自ら選んだ任意後見人に対し、判断能力の不十分な状況における自己の後見事務について代理権を付与する任意後見契約を締結することにより、公的機関の監督の下で任意後見人による保護を受けることができることとしている。
E 健康保険法等の一部を改正する法律案の国会提出
 医療保険制度の安定的運営を確保し、併せて給付と負担の公平等を図るため、老人保健法(昭和五十年法律第八〇号)の一部改正を含む健康保険法等の一部を改正する法律案を第百四十七回国会に提出した。
 老人保健法の改正内容は、薬剤一部負担金を廃止すること、一部負担金における定率制の導入、老人医療受給対象者が支払った一部負担金等の患者負担の合計額が著しく高額であるときは、高額医療費を支給すること等である。
F 高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律案の国会提出
 急速な高齢化の進展に対応し、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動に係る身体の負担を軽減することによりその移動の利便性及び安全性の向上を促進するため、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律案を第百四十七回国会に提出した。
 同法案は、交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設・大改良及び車両等の新規導入に際し、移動円滑化基準への適合を義務づけるほか、旅客施設を中心とした一定の地区における道路、駅前広場、その他の施設の整備の推進等を内容としている。

(2) 地方分権の推進
 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成十一年法律第八七号)成立により、地域のニーズに合った施策が効果的に展開できるよう、高齢社会対策に関しては、老人保健施設・病院・薬局の開設許可等が自治事務となった。
 また、これまで都道府県知事の機関委任事務とされてきた社会保険関係事務は、国の直接執行事務とされ、平成十二年四月から、新しい社会保険の実施体制の下で、地方公共団体との連携により、制度の一層の安定の確保を図ることとしている。

(3) 介護保険制度の実施に向けての取組
 介護保険制度が平成十二年四月から実施されることから、十一年十月に要介護認定が開始され、十二年二月には介護報酬等が設定された。
 また、介護保険制度の円滑な実施を図るため、高齢者保険料の特別措置や家族介護支援対策等を内容とする特別対策が取りまとめられた。

第1章 高齢化の状況

第1節 高齢者人口の状況

○ 六十五歳以上の高齢者人口は、「人口推計」(総務庁)でみると、平成十一年十月一日現在、二千百十九万人で、総人口(一億二千六百六十九万人)に占める割合(高齢化率)は一六・七%となっている。一年前の十年十月一日と比較すると、高齢者人口は六十八万人増加し、高齢化率は〇・五ポイント上昇している(第1表参照)。
○ 今後の高齢化の推移を「日本の将来推計人口」(平成九年一月推計、中位推計)(厚生省)でみると、六十五歳以上の高齢者人口及び高齢化率は、平均寿命の伸長や低い出生率を反映して今後も上昇を続け、平成二十七年(二〇一五年)には、高齢者人口は三千百八十八万人、高齢化率は二五%を超え、国民の約四人に一人が六十五歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと見込まれている。

第2節 高齢者世帯の状況

○ 高齢者のいる世帯について、「国民生活基礎調査」(平成十年)(厚生省)でみると、六十五歳以上の者のいる世帯数は一千四百八十二万世帯であり、全世帯(四千四百五十万世帯)の三三・三%を占めている。
○ 六十五歳以上の者のいる世帯の内訳は、「単独世帯」が二百七十二万世帯(一八・四%)、「夫婦のみの世帯」が三百九十六万世帯(二六・七%)、「親と未婚の子のみの世帯」が二百三万世帯(一三・七%)、「三世代世帯」が四百四十万世帯(二九・七%)であり、六十五歳以上の者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し、単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている(第2図参照)。

第3節 人口高齢化の要因

○ 我が国の平均寿命について、最近の状況を「平成十年簡易生命表」(厚生省)でみると、平成十年(一九九八年)には男性が七七・一六年で九年(七七・一九年)をわずかに下回り、女性は八四・〇一年と九年(八三・八二年)より伸びている。
  また、六十五歳時の平均余命は、昭和二十二年(一九四七年)には男性が一〇・一六年、女性が一二・二二年となっていたものが、平成十年(一九九八年)には男性が一七・一三年、女性が二一・九六年となっており、男性で六・九七年、女性で九・七四年、それぞれ高齢期が長くなってきている(第3図参照)。
○ 出生の最近の状況を「人口動態統計」(平成十年)(厚生省)でみると、平成十年の合計特殊出生率は一・三八で、過去最低を更新している。
  なお、平成十年の出生数は百二十万三千百四十七人で九年と比べて一万一千四百八十二人増加し、出生率(人口千人当たりの出生数)は、十年は九・六で、九年(九・五)を上回った(十一年は、推計値で一一七・五万人、九・四)。
○ 我が国では婚姻外での出生が少なく、有配偶女性の出生児数は大きく低下していないことから、出生率低下は、主として初婚年齢の上昇(晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられる。晩婚化・非婚化の進行により、結婚する人が減り、結婚に伴う出生数が減少していることが、出生率の低下につながっている。
○ 未婚率の推移を「国勢調査」(総務庁)でみると、昭和五十年頃から二十五〜三十九歳の男性及び二十歳代の女性で上昇が際立っている。
  生涯未婚率を「人口統計資料集」(平成十一年)(厚生省)でみると、男女とも上昇傾向にあって、平成七年(一九九五年)には男性八・九二%、女性五・〇八%となっており、特に男性において上昇幅が大きくなっている。また、初婚年齢も男女とも上がってきている。

第4節 高齢化と経済

○ 平成十一年(一九九九年)の労働力人口総数(十五歳以上労働力人口)は、六千七百七十九万人であったが、そのうち六十歳以上は九百二十四万人であり、一三・六%を占めている。労働力人口の高齢化は着実に進んでおり、労働力人口総数が二十一世紀に入ると減少していくと予想される中で、今後一層進展していくものと見込まれる。
○ 年金・医療・福祉における社会保障給付を「社会保障給付費」(厚生省)でみると、平成九年度(一九九七年度)は六十九兆四千百八十七億円であり、国民所得に占める割合は、昭和四十五年度(一九七〇年度)の五・八%から一七・八%に上昇している。
  租税負担、社会保障負担及び財政赤字を合わせた潜在的な国民負担率(対国民所得)は、昭和四十五年度(一九七〇年度)の二四・九%から平成十二年度(二〇〇〇年度)には四九・二%に上昇すると見込まれている。

第5節 高齢者の経済生活

○ 高齢者世帯の年間所得(平成九年の所得)について、「国民生活基礎調査」(平成十年)(厚生省)でみると、三百二十三万一千円であり、その内訳をみると、公的年金・恩給が六三・六%を占めている。高齢者世帯の年間所得は、全世帯(六百五十七万七千円)の半分程度に過ぎないが、世帯人員一人当たりでは大きな差はみられなくなる。
○ 世帯主の年齢が六十五歳以上の世帯の貯蓄の状況について、「貯蓄動向調査」(平成十一年)(総務庁)でみると、一世帯平均の貯蓄現在高は、二千五百二十七万一千円となっており、全世帯(一千七百三十七万七千円)の約一・五倍となっている(第4図参照)。
○ 住宅・宅地資産について、「全国消費実態調査」(平成六年)(総務庁)でみると、高齢者夫婦世帯(夫六十五歳以上、妻六十歳以上の夫婦のみの世帯)の平均住宅・宅地資産額は、六千七十八万三千円となっており、一般世帯(四千二百九十四万四千円)の約一・四倍となっている。
○ 高齢者の就業状況について、「高年齢者就業実態調査」(平成八年)(労働省)でみると、男性の場合、就業者の割合は、六十〜六十四歳で七〇・〇%、六十五〜六十九歳で五三・四%となっている。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(三〇・〇%)のうち六割以上が、六十五〜六十九歳の不就業者(四六・六%)のうち四割近くの者が、就業を希望している。
  女性の就業者の割合は、六十〜六十四歳で四一・一%、六十五〜六十九歳で二八・一%となっている。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(五八・九%)のうち三割以上が、六十五〜六十九歳の不就業(七一・九%)のうち二割以上が、それぞれ就業を希望している。

第6節 高齢者の健康

○ 健康の維持増進に心がけていることがあるかどうかについて、六十歳以上の者を対象とした「高齢者の健康に関する意識調査」(平成九年)(総務庁)でみると、約四分の三の者が心がけていることがあるとしており、その内容を同調査でみると、食事・休養・運動といった健康の三大要素に関する項目が上位となっている。
○ 高齢者の健康状態について、「国民生活基礎調査」(平成十年)(厚生省)でみると、六十五歳以上の高齢者の有訴者率(人口千人当たりの病気やけが等で自覚症状のある者の数)は、五三〇・三と半数以上の者が自覚症状を訴えている。
  また、日常生活に影響のある六十五歳以上の高齢者(健康上の問題で、日常生活の動作・外出・仕事・家事・学業・運動・スポーツ等に影響のある者)の割合は、高齢者人口千人当たりで、二〇三・三となっている。
○ 七十歳以上の高齢者の一人当たりの老人医療費は、「老人医療事業年報」(平成九年)(厚生省)によると、七十九万円となっており、国民一人当たり医療費(約二十三万円)の約三・四倍となっている。
○ 六十五歳以上の在宅の「寝たきり」(「全く寝たきり」及び「ほとんど寝たきり」を合わせたもの)の高齢者について、その寝たきりの期間を、「国民生活基礎調査」(平成十年)(厚生省)でみると、「三年以上」となっている割合が半数近くになっている。
○ 六十五歳以上の要介護等の高齢者の割合について、六十五歳以上人口千人当たりの数でみると、在宅の要介護者は四八・七、特別養護老人ホームの在所者は一二・七、老人保健施設の在所者は八・〇となっている。また、病院・一般診療所に六か月以上入院している六十五歳以上の高齢者は、六十五歳以上人口千人当たり一五・六となっている。これらの割合は、年齢階層が上がるにつれて大きく上昇する傾向がある。

第7節 高齢者の活動

○ 六十歳以上の高齢者の社会参加活動に対する意識について、「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、「グループや団体で自主的に行われている活動(地域活動)に、今後とも(又は今後は)、参加したいと思うか」という質問に対し、「参加したい」が四七・九%と約半数となっており、「参加したいが事情があって参加できない」が一四・八%、「参加したくない」は三二・六%となっている。
○ 高齢者の各種サークルや団体への参加状況について、「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、六十歳以上で何らかのサークルや団体に参加している者は六六・四%となっている。参加している団体では、「町内会・自治会」が三四・六%、「老人クラブ」が二四・八%、「趣味のサークル・団体」が一九・八%となっている。

第8節 高齢者と生活環境

○ 高齢者世帯の住宅について、最低居住水準(「住宅建設五箇年計画」において定めている居住水準の一つ)を満たしているかを「住宅・土地統計調査」(平成十年)(総務庁)でみると、高齢者夫婦主世帯(夫婦のいずれかでも六十五歳以上の夫婦一組のみの主世帯)では九九・四%、高齢者単身主世帯(六十五歳以上の単身者のみの主世帯)では九六・一%が水準を満たしている。借家に住む世帯では、水準を満たしていない世帯が、高齢者夫婦主世帯で二・八%、高齢者単身主世帯で一〇・一%となっている。
○ 六十歳以上の高齢者の住宅に対する意識について、「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成十一年)(総務庁)でみると、現在住んでいる住宅に対する不満な点は、「特に不満はない」が七三・六%と七割以上を占めており、不満があるとする者では、「住宅が古くなったりいたんだりしている」が一三・四%と最も多く、そのほかに「住宅が狭い」が六・五%、「住宅の構造や設備が使いにくい」が五・六%となっている。
○ 六十歳以上の高齢者の外出時の障害について、「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成十一年)(総務庁)でみると、「特にない」が六一・六%と六割を超えている。障害があるとする者では、「道路に階段、段差、傾斜があったり、歩道が狭い」が一四・五%と最も多く、外出先でも階段や段差に悩まされている高齢者の姿がうかがえる。
○ 高齢者の交通安全に関して、六十五歳以上の高齢者の交通事故死者数を「交通事故統計」(平成十一年)(警察庁)でみると、三千百四十三人で交通事故死者全体の三四・九%を占めている。
  交通事故死者数は、平成四年までは十六〜二十四歳の若者が多かったが、五年に高齢者が若者の死者数を上回り、その後も高齢者の割合の増加と若者の割合の低下が続いている。
○ 高齢者と犯罪、災害に関し、六十五歳以上の高齢者の犯罪による被害の状況について「犯罪統計書」(平成十年)(警察庁)の刑法犯被害認知件数でみると、平成十年は十三万九千六十九件で、九年と比較すると二万一千三百二十九件、一八・一%増加しており、被害認知件数全体に占める割合も上昇を続けている。
  また、六十五歳以上の高齢者の火災による死者数(放火自殺者を除く。)について、「消防白書」(平成十一年)(自治省)でみると、平成十年は五百七十二人であり、全死者数の約半分を占めている。

第2章 高齢社会対策の実施の状況

第1節 高齢社会対策の基本的枠組み

○ 我が国の高齢社会対策の基本的枠組みは、高齢社会対策基本法(平成七年法律第一二九号)に基づいている。
○ 高齢社会対策会議は、内閣総理大臣を会長とし、委員には閣僚が任命されており、高齢社会対策を総合的に推進するための中心となっている。
○ 高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり、政府の高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針となるものである。
  高齢社会対策大綱は、平成八年七月五日、高齢社会対策会議における案の作成を経て、閣議において決定された。

第2節 高齢社会対策関係予算

○ 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進という広範な施策にわたり、着実な進展をみせている。一般会計予算における関係予算をみると、平成十一年度においては十兆三千二百十五億円となっている。
  これを各分野別にみると、就業・所得五兆二千九十五億円、健康・福祉四兆九千六百九十四億円、学習・社会参加五百八十三億円、生活環境三百九十九億円、調査研究等の推進四百四十五億円となっている。

第3節 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得
○ 高齢者の雇用・就業の機会の確保については、継続雇用の推進、再就職の促進、定年退職後等における臨時・短期的な就業の場の確保等に重点を置いて、多様化する高齢者の就業ニーズを踏まえつつ、総合的な雇用・就業対策を推進している。
○ 六十五歳までの継続雇用を推進するため、継続雇用制度の導入又は改善に関する計画の作成指示、計画の適正実施勧告など事業主に対する指導や相談援助を行うとともに、各種の高齢者雇用関係助成金の活用により継続雇用の促進を図っている。
○ シルバー人材センター連合において、事業主団体等との連携の下、六十歳台前半の者を対象に技能講習、合同面接会等を一体的に行うシニアワークプログラムを実施している。
○ 平成十一年度からは、高齢者のための自営開業講座等を実施するとともに、高齢者と事業主双方の意識改革を促し、雇用に関するミスマッチを解消する高年齢者マッチング支援事業を実施している。また、中高年ホワイトカラー求職者の主体的な求職活動を支援するため、就職支援セミナー等を行う「キャリア交流プラザ」を設置している。
○ 勤労者の生涯を通じた能力の発揮については、職業能力の開発、労働時間の短縮、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の一層の確保、育児・介護休業制度の定着及び普及などの施策を推進している。
○ 高齢期における所得の確保については、公的年金制度の安定的運営により、高齢期における生活の基本的部分の保障を図るとともに、企業年金や個人年金等の自助努力による資産形成等の促進を行っている。
○ 平成十二年三月、給付水準の適正化、老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢の段階的な引上げ等を内容とする国民年金法等の改正を行った(第2表参照)。

2 健康・福祉
○ 国民の健康に対する認識と自覚を深め、健康の増進、疾病の予防、早期発見、早期治療を図り、栄養、運動、休養のバランスのとれた生涯にわたる健康づくりを推進している。
  平成十二年三月には、「保健事業第四次計画」を策定したほか、国民の健康づくりを総合的に推進するため、二十二年(二〇一〇年)を目途とした目標等を提示する「二十一世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)を策定した。
○ 老人保健や母子保健など住民に身近で利用頻度の高いサービスは、市町村が市町村保健センター(平成十一年十二月末現在一千六百三十か所)等を拠点として一元的に提供し、専門的・技術的サービスは、保健所(十一年四月一日現在六百四十一か所)が提供している。
○ 高齢者の保健・医療・福祉サービスについては、在宅サービスや施設サービスなど高齢者介護サービス基盤の整備目標、今後取り組むべき高齢者介護サービス基盤の整備に関する施策の基本的枠組みを示した新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)(平成六年、大蔵・厚生・自治三大臣合意)に基づき、保健・医療・福祉サービスの充実を図った。
  また、平成十一年十二月には、十二年度からの高齢者介護サービス基盤の整備を始めとする高齢者保健福祉施策の基本的な枠組みとなる「今後五か年間の高齢者保健福祉施策の方向」(ゴールドプラン21)を策定した(第3表参照)。
○ 平成十一年度には、痴呆性高齢者等の自己決定能力が低下している者に対して、その者の権利を擁護し、自立した地域生活が送れるよう、社会福祉士等の生活支援員を派遣し、福祉サービス等の利用援助や日常的金銭管理サービス等の支援を行う地域福祉権利擁護事業を創設した。
○ 平成十一年度には、十二年四月に施行される介護保険法に基づき、介護報酬単価等を定めたほか、要介護認定の事務に要する経費、高齢者保険料の軽減等のため市町村が設置する基金等について補助を行った。
  なお、介護保険制度を円滑に実施するため、平成十二年四月から半年間は高齢者の保険料を徴収せず、その後一年間は経過的に保険料を軽減することができることとする等の特別措置を講ずることとしている。
○ 健康・福祉サービスに対する高度化及び多様化したニーズに迅速かつ的確に対応し、サービスの効率化を図るため、民間事業者による健康・福祉サービスの積極的な活用を推進している。
○ 少子化への対応に関し、平成十一年十二月には、今後中長期的に進めるべき総合的な少子化対策の指針となる「少子化対策推進基本方針」を、少子化対策推進関係閣僚会議において決定するとともに、少子化対策推進基本方針に基づき、十二年度を初年度として十六年度までに重点的に推進する保育サービス等少子化対策の具体的実施計画として、「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」(新エンゼルプラン)(大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治六大臣合意)を策定した。

3 学習・社会参加
○ 地域における生涯学習の推進体制の整備については、生涯学習担当部局の設置(平成八年九月現在全都道府県及び七百四十二市町村で設置)、都道府県生涯学習審議会の設置(十一年四月現在三十六都道府県で設置)、生涯学習推進会議の設置(八年九月現在全都道府県及び一千九百九十四市町村で設置)等を促進している。
○ 生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、科目等履修生制度の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、社会人特別選抜の実施などを行い、履修形態の柔軟化を図って、社会人の受入れを促進している。
○ 放送大学においては、テレビ・ラジオの放送を利用して大学教育の機会を提供している。同大学の放送対象地域は関東地域の一部に加え、平成十年一月から衛星放送により全国に拡大された。また、放送授業を視聴するための学習センターを全都道府県において整備している(平成十一年度現在四十九か所)。
○ 公民館を始め、図書館、博物館、婦人教育施設等の社会教育施設や教育委員会において、青少年から高齢者まで幅広い年齢の人々を対象とした多くの学習機会が提供されている。この中には、高齢社会について理解を促進するためのものや高齢者を直接の対象とする学級・講座も開設されている。
○ 高齢者自身が積極的に社会に参加できる各種社会環境の条件整備を図るため、地域においてボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い、その振興を図っている。
○ 平成十一年度からは、退職後間もない、又はこれから定年を迎えるサラリーマン等が、それまでの仕事で蓄積した知識や経験を社会の様々なシステムの中でいかし、充実した人生を送れるよう、電子メール等を活用してボランティア活動等社会参加に関する相談・アドバイスなどを行う高齢者のボランティア活動相談事業を実施している。
○ ボランティア活動に対する興味・関心は年々高まっており、平成十一年四月におけるボランティア活動者総数は六百九十五万八千人、ボランティアグループ数は九万七百グループに達している(第5図参照)。

4 生活環境
○ 公営住宅において、老人世帯向公営住宅を供給するとともに、五十歳以上の者の単身入居を認めている。また、公団賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対して、募集時に当選率を優遇するとともに、一階又はエレベーター停止階への住宅変更を認めるなどの優遇措置を行っている。
○ 住宅金融公庫においては、高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに、ホームエレベーターの設置や住宅リフォーム時において高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施している。
○ シルバーハウジング・プロジェクト事業として、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常の生活指導や安否確認などのサービスが受けられ、かつ、高齢者の生活特性に配慮した設備・仕様を備えた公共賃貸住宅の供給を推進している。
○ 鉄道駅、旅客船・空港ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーター等の施設整備を促進している。
  平成十一年度においては、鉄道駅について、駅前広場、自由通路等周辺の都市機能整備と一体的にその構造を総合的に改善する事業に対して補助を行う制度を創設した。
  また、乗合バス事業者が行うノンステップバス等の車両の導入及び中小鉄軌道事業者が行う低床型路面電車等の導入に対して、補助及び融資を行っている。
○ 高齢者等が安全、快適に、また不便なく歩行できるよう、各種施設の整備等を推進しているほか、良好な歩行空間の形成を図っている。
○ 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に基づき認定を受けた建築物に対しては、補助、税制上の特例措置及び融資を実施している。
○ 市街地再開発事業、土地区画整理事業等の面的な都市整備と併せて、社会福祉施設等の適正かつ計画的な立地を推進している。また、福祉・医療施設と一体となった公園の整備を推進している。
○ 第六次交通安全基本計画等に基づき、高齢者への交通安全意識の普及徹底、高齢者等が安心してくらせる道路環境づくり、高齢者の安全運転対策等を実施した。
○ 高齢者を犯罪や事故から保護するため、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するほか、痴呆症等によってはいかいする高齢者を発見、保護する体制づくりを地方公共団体等と協力して推進している。
○ 病院、老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施、高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害、土砂災害を受けた場合の再度災害防止等を図っている。
○ 都市公園等整備七箇年計画に基づき、都市公園等の緊急かつ計画的な整備を行った。また、農山漁村地域の農林漁業生産基盤と生活環境の一体的・総合的な整備を積極的に推進している。

5 調査研究等の推進
○ 痴呆疾患、骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については、長寿科学総合研究事業等において調査研究が行われており、平成十一年度までに、免疫不全症の治療法開発の進展、アルツハイマー病の早期確定診断法の開発、骨粗しょう症治療のガイドラインの作成等が行われている。
○ 福祉機器に関しては、使用者ニーズに対応する新しい技術の可能性(シーズ)に関する調査を行っている。
  医療機器に関しては、老化等により失われた身体の機能を代替・補完する人口臓器、高齢者でも軽い負担で治療が受けられる医療機器、患者のQOL(生活の質)を高める在宅医療機器等の研究開発を促進している。
○ 情報通信等の新たな技術の活用は、高齢者の生活の様々な局面に利便をもたらすものと考えられることから、ハード及びソフトの両面において研究開発を推進している。
  平成十一年度からは、情報通信技術を用いて日常生活支援や社会参加促進を目指すコミュニケーションケア技術の研究開発をはじめ、効率的な福祉サービスの提供と高齢者等の自立・社会参加を可能とする福祉支援情報通信システムの研究開発を行っている。
○ 長寿科学研究を推進するため、国立療養所中部病院に設置された長寿医療研究センターを中心に老人性痴呆症、寝たきりの予防、支援機器の開発に関する研究等に取り組んでいるほか、長寿科学総合研究事業等において、自然科学から人文社会科学に至るまでの幅広い分野の研究を行っている。
○ 科学技術の進歩は、研究開発に携わる人々の能力や創造力に依存する面が多く、科学技術の振興を図るために人材の養成、確保、資質の向上及び流動化に努めている。

平成十二年度において講じようとする高齢社会対策

第1 平成十二年度の高齢社会対策

○ 高齢社会対策関係予算
 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたり着実に実施する。
 一般会計予算における平成十二年度の高齢社会対策の関係予算は、十兆五千六百九十九億円であり、各分野別では、就業・所得五兆三千三百八十六億円、健康・福祉五兆八百七十六億円、学習・社会参加五百十九億円、生活環境三百九十三億円、調査研究等の推進五百二十五億円となっている。

第2 分野別の高齢社会対策

1 就業・所得
○ 「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について」(内閣総理大臣決定)の一環として、平成十二年度から、今後の新規・成長分野や高齢化が急速に進行する産業分野について、高齢者が年齢に関わりなく働き続けることができる職場の創造に関する調査研究プロジェクトを実施する。
○ 平成十二年度からは、定年、解雇等により離職する中高年齢者のために、事業主が離職前から再就職援助の措置を講じることについて、公共職業安定機関や高年齢者雇用安定センターにおいて相談等の支援を行うほか、事業主等が一定の再就職援助措置を講じた場合に助成を行う在職者求職活動支援助成金(仮称)を創設する。
○ 男女共同参画基本法に基づき、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的な計画を策定する。
○ テレワーク、SOHOの普及・促進を図るため、税制上の特例措置を行うとともに、平成十二年度から、テレワーク・SOHOの施設整備に対し、日本政策投資銀行による融資を実施する。
○ 老後における所得確保を図るため、確定給付型の企業年金等に加え、新たな選択肢として、自己責任を原則とする確定拠出年金を導入する。
○ 高齢者の財産管理の支援等に資する痴呆性老人等の権利擁護のための新たな成年後見制度を平成十二年四月から導入する。

2 健康・福祉
○ 生涯にわたる健康づくりを推進するため、国民の健康寿命の延長及び生活の質の向上等を目指す「二十一世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)を推進する。
○ 壮年期からの健康づくりを支援するため、老人保健法に基づく保健事業について策定した「保健事業第四次計画」を推進することとし、平成十二年度からは、新たに健康評価事業(ヘルスアセスメント)及び個別健康教育を実施する。
○ 高齢者の保健・医療・福祉サービスについては、ゴールドプラン21に基づき総合的に推進する。
○ ゴールドプラン21に基づき推進する元気高齢者づくり対策(ヤング・オールド作戦)を推進するほか、地域福祉権利擁護事業により、痴呆性高齢者等の自己決定能力が低下している者に対して、社会福祉士等の生活支援員を派遣し、福祉サービス等の利用援助や日常的金銭管理サービス等の支援を行う。
○ 要介護状態にある者等がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むために必要な保健医療サービス及び福祉サービスを総合的に提供するため、国民の共同連帯の理念に基づく介護保険制度を平成十二年四月から実施する。
○ 「少子化対策推進基本方針」(少子化対策推進関係閣僚会議決定)及び「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」(大蔵・文部・厚生・労働・建設・自治六大臣合意)に基づき、子育て支援施策を総合的・計画的に推進する。
  平成十二年六月からは、児童手当の支給対象年齢を現行の三歳未満から義務教育就学前に拡大する。

3 学習・社会参加
○ 平成十二年度から、専修学校において高度職業人を育成するため、産学連携による教育の高度化や企業家育成事業、中高年を対象とした就職支援講座等を行う総合プロジェクトを推進する。
○ 社会教育施設や教育委員会が開設する各種の学級・講座を始め、地域住民の多様な社会教育活動を総合的に推進するため、市町村が実施する地域社会教育活動総合事業に対し補助を行う。
○ 平成十二年度から、人々の学習の成果をまちづくり等に生かしていくため、民間非営利団体(NPO)等と連携してまちづくり支援事業を行い、地域社会の活性化を図る。
○ ボランティア活動入門講座の開催、情報誌の発行、登録・あっせん・相談等を行う市区町村ボランティアセンター活動事業、地域の特性に見合ったきめ細かな福祉サービスが効率的、総合的に提供される体制をつくる地域福祉総合推進事業(ふれあいのまちづくり事業)に対し補助を行う。
○ 高校生が保育や介護に関するボランティア活動などの体験活動に取り組み、子育ての意義や介護・福祉など少子高齢社会の課題に対する認識を深めることができるよう、平成十二年度から、保育・介護体験の実践的活動を推進する。

4 生活環境
○ 平成十二年度においては、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づき、住宅性能表示制度を創設する。
○ 市町村の総合的な高齢者住宅施策の下、シルバーハウジング・プロジェクト事業を推進する。
  また、平成十二年度より、高齢者向け優良賃貸住宅についても生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による生活支援サービスの導入を図る。
○ 平成十二年度から、ノンステップバス等の導入、乗継等情報提供システム、共通乗車カードシステムの整備に対し補助を行うほか、鉄道の相互乗入れ、直通化などの乗継円滑化事業に対し補助を行うとともに、低床型路面電車の導入、鉄道駅におけるバリアフリー施設の整備に関する税制上の特例措置を講ずる。
○ 平成十二年度から、駅、商店街、福祉施設の周辺等において、歩行空間ネットワーク総合整備事業により、バリアフリーの歩行空間をネットワークとして整備する。
○ 平成十二年度においては、地域における高齢者対策の円滑な実施を内容とする地域農業マスタープランを策定するとともに、高齢者の能力発揮のための高齢者農業活動支援施設等の整備や高齢者の自立活動の促進を行う。

5 調査研究等の推進
○ 「ミレニアム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)について」(内閣総理大臣決定)の一環として、ヒトゲノム解析による五大疾患(痴呆、がん、糖尿病、高血圧、気管支喘息)の克服及び自己修復能力を用いた再生医療の実現のための研究を行う。
○ 平成十二年度からは、高齢者向け製品等の開発を促進するための高齢者特性データベースの蓄積の推進及び身体機能が低下した高齢者の日常生活を支援する機器システムの開発を行う。
○ 平成十二年度においては、「障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針」(平成十年郵政省告示第五一五号)の具体化として策定されるガイドラインの普及・定着に努めるとともに、ウェブアクセシビリティの確保(インターネット等へのアクセス支援等)に向けた研究を行う。
○ 国立大学等においては、老化等の長寿関連の研究を行うほか、科学研究費補助金等により大学等の研究者に対し研究費等の補助を行う。


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法人企業の経営動向


法人企業統計 平成十二年一〜三月期


大 蔵 省


 この調査は、統計法(昭和二十二年法律第一八号)に基づく指定統計第一一〇号として、我が国における金融・保険業を除く資本金一千万円以上の営利法人を対象に、企業活動の短期動向を把握することを目的として、四半期ごとの仮決算計数を調査しているものである。
 その調査結果については、国民所得統計の推計をはじめ、景気判断等の基礎資料等として広く利用されている。
 なお、本調査は標本調査であり(計数等は、標本法人の調査結果に基づいて調査対象法人全体の推計値を算出したもの)、標本法人は層別無作為抽出法により抽出している。
 今回の調査対象法人数等は次のとおりである。
  調査対象法人   一、一八一、二三三社
  標本法人数       二三、三〇九社
  回答率           七八・七%
 当調査結果から平成十二年一〜三月期の企業の経営動向をみると、売上高については、製造業、非製造業ともに増収となり、全産業ベースの対前年同期増加率(以下「増加率」という。)は二・六%となった。営業利益については、製造業、非製造業ともに増益となったことから、全産業ベースの増加率は二八・五%となった。また、経常利益についても、製造業、非製造業ともに増益となったことから、全産業ベースの増加率は三八・七%となった。
 また、設備投資については、製造業は減少し、非製造業では増加したことにより、全産業ベースの増加率は三・三%となった。

一 売上高と利益の動向第1図第2図参照

(1) 売上高第1表参照
 売上高は、三百四十八兆三千七百九十二億円であり、前年同期(三百三十九兆六千五百九十一億円)を八兆七千二百一億円上回った。増加率は二・六%(前期二・二%)と、二期連続の増収となった。
 業種別にみると、製造業の売上高は百三兆一千百四十一億円で、増加率は七・四%(同四・二%)となった。また、非製造業の売上高は二百四十五兆二千六百五十一億円で、増加率は〇・七%(同一・三%)となった。
 製造業では、「食料品」などが減収となったものの、「電気機械」「一般機械」などで増収となった。一方、非製造業では、「建設業」「サービス業」などが減収となったものの、「卸・小売業」「運輸・通信業」などで増収となった。資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は百四十四兆三千五百五十八億円で、増加率は二・二%(同二・七%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は五十四兆六千百七十二億円で、増加率は△一・七%(同△三・三%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は百四十九兆四千六十三億円で、増加率は四・六%(同三・八%)となった。

(2) 営業利益第2表参照
 営業利益は、十二兆四千九百三十二億円であり、増加率は二八・五%(前期三五・一%)と、五期連続の増益となった。
 業種別にみると、製造業の営業利益は四兆四千三百二十八億円で、増加率は四三・四%(同五五・〇%)となった。また、非製造業の営業利益は、八兆六百四億円で、増加率は二一・六%(同二四・四%)となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は五兆三千五百六十七億円で、増加率は一五・九%(同五四・九%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一兆六千二百三十三億円で、増加率は二一・五%(同三二・四%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は五兆五千百三十一億円で、増加率は四六・四%(同一三・五%)となった。

(3) 経常利益第3表参照
 経常利益は、十兆九千八百十二億円であり、前年同期(七兆九千百七十一億円)を三兆六百四十一億円上回り、増加率は三八・七%(前期四一・八%)と、五期連続の増益となった。
 業種別にみると、製造業の経常利益は四兆七百十九億円、増加率は四六・五%(同六四・六%)となった。また、非製造業の経常利益は六兆九千九十四億円で、増加率は三四・五%(同二八・〇%)となった。
 製造業では、「化学」が減益となったものの、「電気機械」等で増益となったほか、「鉄鋼」等が黒字となった。また、非製造業では、「運輸・通信業」が減益となったものの、「サービス業」「建設業」等で増益となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は四兆四千五百七十五億円で、増加率は二二・四%(同七八・〇%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一兆五千二百八十六億円で、増加率は四六・三%(同六二・六%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は四兆九千九百五十二億円で、増加率は五四・六%(同六・六%)となった。

(4) 利益率第4表参照
 売上高経常利益率は三・二%で、前年同期(二・三%)を〇・九ポイント上回った。
 業種別にみると、製造業は三・九%で、前年同期(二・九%)を一・〇ポイント上回り、非製造業は二・八%で、前年同期(二・一%)を〇・七ポイント上回った。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三・一%(前年同期二・六%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は二・八%(同一・九%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三・三%(同二・三%)となった。

二 投資の動向第3図参照

(1) 設備投資第5表参照
 設備投資額は、十二兆九千六百九十四億円であり、増加率は三・三%(前期△〇・七%)と、9四半期ぶりの増加となった。
 業種別にみると、製造業の設備投資額は三兆七千七百九十六億円で、増加率は△六・一%(同△八・二%)の減少となった。また、非製造業の設備投資額は九兆一千八百九十八億円で、増加率は七・七%(同二・九%)となった。
 製造業では、「電気機械」「食料品」等が増加となったものの、「一般機械」「輸送用機械」等で減少した。一方、非製造業では、「運輸・通信業」「電気業」などが減少したものの、「サービス業」「卸・小売業」等で増加となった。
 設備投資額を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は八兆二千七百二十三億円、増加率は一・六%(同△八・二%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一兆七千百十六億円、増加率は△一一・七%(同△五・二%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二兆九千八百五十五億円で、増加率は二〇・三%(同二五・七%)となった。

(2) 在庫投資第6表参照
 在庫投資額(期末棚卸資産から期首棚卸資産を控除した額)は、△十三兆七千九百二十五億円(前年同期△十六兆三千三百五十三億円)、前年同期差二兆五千四百二十八億円となり、二期連続前年同期差が増加となった。
 在庫投資額を業種別にみると、製造業の投資額は△三兆二千七十四億円(前年同期△四兆三千百六十二億円)、前年同期差一兆一千八十八億円となり、二期連続前年同期差が増加となった。一方、非製造業の投資額は△十兆五千八百五十一億円(前年同期△十二兆百九十億円)、前年同期差一兆四千三百三十九億円となり、二期連続前年同期差が増加となった。
 在庫投資額を種類別にみると、製品・商品が△三兆六千四百十一億円(前年同期△三兆八千二百六十一億円)、仕掛品が△九兆五千五百九十七億円(同△十一兆八千八十億円)、原材料・貯蔵品が△五千九百十七億円(同△七千十二億円)となった。また、在庫率は八・四%であり、前期(一〇・一%)を一・七ポイント下回り、前年同期(九・二%)を〇・八ポイント下回った。
 在庫率は、季節的要因により変動(四〜六、十〜十二月期は上昇する期)する傾向がみられる。

三 資金事情第7表参照

 受取手形・売掛金は二百二十三兆三千九百五十九億円で、増加率は〇・六%(前期〇・六%)、支払手形・買掛金は百八十四兆一千四百九十八億円で、増加率は三・四%(同一・三%)となった。借入金をみると、短期借入金は二百十六兆五千八百七十三億円で、増加率は一・四%(同△二・二%)、長期借入金は二百七十六兆一千五百九十八億円で、増加率は〇・七%(同四・七%)となった。
 現金・預金は百二十九兆九千百八十二億円で、増加率は〇・三%(同四・六%)、有価証券は三十三兆八千七百三十二億円で、増加率は△九・二%(同△八・二%)となった。
 また、手元流動性は一一・八%であり、前期(一二・六%)を〇・八ポイント下回り、前年同期(一二・三%)を〇・五ポイント下回った。

四 自己資本比率第8表参照

 自己資本比率は二四・〇%で、前年同期(二三・四%)を〇・六ポイント上回った。
 自己資本比率を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三一・五%で、前年同期(二九・八%)を一・七ポイント上回り、資本金一億円以上十億円未満の階層は一八・八%で、前年同期(一六・三%)を二・五ポイント上回り、また、資本金一千万円以上一億円未満の階層は一七・一%で、前年同期(一八・五%)を一・四ポイント下回った。

※   ※   ※

 なお、次回の調査は平成十二年四〜六月期について実施し、法人からの調査票の提出期限は平成十二年八月十日、結果の公表は平成十二年九月十日前後の予定である。




歳時記


鵜飼

 おもしろうて やがてかなしき 鵜舟(うぶね)かな
                        芭蕉
 この芭蕉の句は、華やかな鵜飼が終わって、かがり火が消えていく風情を詠んでいるのでしょうか。
 昔、鵜使いは「献上鮎(あゆ)」のため、領主の手厚い保護を受けていました。鵜飼は、鵜使いがよく飼いならした鵜を使って川で鮎を取らせる漁法で、古くから各地で行われていました。しかし、現在は、観光用以外はほとんど見ることができません。
 有名な岐阜県長良川の鵜飼の期間は五月十一日から十月十五日までですが、俳句の季語として、「鵜飼」は夏となっています。
 長良川では、鵜を扱う鵜匠が六人います。鵜舟は六隻で、一人の鵜匠が最大十二羽の鵜をあやつります。鵜匠は夜に漁を行い、かがり火をたいて鮎を誘い寄せ、あらかじめ飲み込まないようにしてある、手縄(たなわ)を首に巻いた鵜に鮎を取らせて、吐き出させます。
 観光客は「観覧船」という屋形船に乗って酒をたしなみ、鮎料理に舌つづみをうちながら見物します。最近では、薬膳料理など、工夫されているようです。
 鵜飼は川で行い、涼しさを感じることができますが、夏は川で遊ぶのに適した季節でもあります。しかし、それだけに川辺のキャンプは指定された所で行い、水量などに十分注意することが必要です。また、山岳事故も増える時期です。装備を十分準備し、登山計画書を家族や警察などに提出しておきましょう。
(『広報通信』平成十二年八月号)



    <8月30日号の主な予定>

 ▽防災白書のあらまし……………………………………国 土 庁 

 ▽家計収支(四月分)……………………………………総 務 庁 

 ▽平成十一年平均消費者物価地域差指数の概況………総 務 庁 

 ▽月例経済報告(七月報告)……………………………経済企画庁 




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