官報資料版 平成12年9月6日




                  ▽平成十二年度 農業観測………農林水産省











平成12年度


農業観測


農林水産省


 農林水産省は、農林水産統計観測審議会(農業観測部会)の答申を得て、去る六月九日に「平成十二年度農業観測」を公表した。その概要は次のとおりである。なお、生産見通しについては平年作を前提としており、見通しの増減、騰落幅については、表の用語で記述している。

第1 農産物需給をめぐる動向

1 国内経済

 最近の我が国経済の動向をみると、九年度は、在庫調整圧力の高まりや生産、雇用の減少等により、最終需要の停滞の影響が実体経済全体にまで及んだことから景気は停滞し、実質国内総生産の伸びはマイナス〇・一%と、昭和四十九年度以来、二十三年ぶりにマイナス成長となった。
 十年度は、金融機関の経営に対する信頼の低下、リストラや企業倒産の増大による雇用不安や年金の先行きに対する不安等から、家計や企業のマインドが冷え込み、設備投資や住宅投資といった民間需要が低迷したため、きわめて厳しい状況となり、実質国内総生産の伸びはマイナス一・九%となった。
 十一年度は、十年十一月の緊急経済対策等の各種の政策効果やアジア経済の回復等の影響で、実質国内総生産の四半期ごとの伸び率がプラスになるなど、緩やかな改善が続いており、機械受注や設備投資等の企業活動に積極性もみられるようになるなど、自律的回復に向けた動きが徐々に現れ始めた。
 部門別にみると、個人消費は、依然として収入が低迷したこと等から足踏み状態となった。住宅建設は、住宅ローン減税等の住宅建設促進施策を背景に比較的堅調に推移した。設備投資は、製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がった。鉱工業生産・出荷は、持ち直しの動きが続き、鉱工業生産者製品在庫は、調整を終了し、在庫率は前年度を下回って推移した。雇用情勢は、完全失業率が過去最高水準で推移し、有効求人倍率は依然として低水準となった。国内卸売物価は弱含みで推移した。経常収支黒字は輸入金額が原油価格の上昇等により輸出金額以上に伸びたこと等から、縮小した。
 十二年度は、公的需要の下支えに加え、民間需要中心の本格的回復軌道に乗るとみられることから、政府経済見通し(一月二十八日閣議決定)において、実質経済成長率は一・〇%程度と見込んでいる。

2 食料経済

(1) 食生活
 我が国の食料消費は、米の消費量が減る一方、畜産物や油脂類の消費量が増加するなど消費内容に大きな変化がみられたが、近年ではこのような変化も緩やかなものとなっている。十年度の国民一人一日当たり供給純食料は一千三百九十グラムとなっており、国民一人一日当たり供給熱量は、近年においては供給純食料と同様に、ほぼ飽和水準に達したものとみられる。
 しかしながら、十年の栄養の摂取状況を平均所要量に対する摂取量の割合(充足率)でみると、エネルギーの摂取は、男女別・年齢階層別で過不足があり、また、栄養素別の比率では、脂質が二六・三%と適正比率の上限値とされる二五%を超えている。また、カルシウムは、一部年齢層を除き不足している状況にある。さらに、食習慣の乱れや食品の廃棄の増加等がみられる。
 このような状況を踏まえ、農林水産省では、厚生省や文部省と連携して検討を進め、三月に「食生活指針」を策定した。

(2) 食料消費第1図参照
 一人当たり実質食料消費支出(全世帯)の動向を総務庁「家計調査」でみると、十一年度は、調理食品は一・七%増加したものの、調理食品を除く加工食品が二・六%の減少、外食が一・三%の減少、生鮮食品が〇・七%の減少となったことから、全体では一・三%減少した。調理食品では、主食的調理食品以外の調理食品の割合が低下傾向にある一方、主食的調理食品の大半を占める弁当類の割合が、七年度の二三・七%から十一年度の二六・七%へと三・〇ポイント上昇した。年齢階層別に調理食品の動向をみると、主食的調理食品では、四十歳以上の世帯で、年齢階層の上昇に伴い増加する傾向がみられるとともに、七年から十一年にかけて毎年増加している。一方、他の調理食品は年齢階層の上昇とともに増加しているものの、七年から十一年にかけてはほとんど増加していない。
 十二年度の食料消費は、個人消費が緩やかに増加するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。また、食料品消費者価格は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(3) 食品産業
(概 況)
 飲食費の動向を「産業連関表」を用いた農林水産省の試算でみると、平成七年では十六兆二千億円(国内生産十三兆円、輸入三兆二千億円)の農水産物が、食品産業を経る過程で、徐々に付加価値を高め、最終的な消費額として八十兆四千億円となった。その内訳をみると、加工食品及び外食の最終飲食費支出に占める割合が上昇した一方で、生鮮食品は一貫して割合を低下させており、金額の伸びも小さくなった。
(外食産業)
 外食及び中食の動向を(財)外食産業総合調査研究センターが推計した市場規模でみると、近年、伸びが鈍化していた外食では、十一年は個人消費の低迷等により、一・二%減の二十八兆一千億円と二年連続で前年を下回った。その内訳をみると、飲食店は〇・一%増の十三兆二千億円となったものの、宿泊施設、料亭・バー等、喫茶店・酒場等、事業所給食、病院給食、学校給食は減少した。
 また、着実な伸びを示していた弁当、そう菜等の中食も増加率が縮小し、十一年は一・二%増の五兆八千億円にとどまった。
(食品流通業)
 食料品販売額(既存店)の動向をみると、スーパー、百貨店では七年度以降、前年度を下回って推移しており、十一年度はそれぞれ三・三%、一・三%の減少となった。また、チェーンストアでは十年度に〇・三%の増加となったものの、十一年度は三・〇%の減少となった。
(食品工業)
 加工食品の消費支出における投入構造の推移を「産業連関表」でみると、原料食料の割合が低く、食料以外の資材や食品製造業の付加価値、関連流通経費の割合は年々高まる傾向にある。原料食料は、金額においても二年に比べて七年は減少した。
 外食及び中食の動向を、(財)外食産業総合調査研究センターが推計した市場規模でみると、十年は個人消費の低迷等により、外食の伸びが鈍化し、〇・九%減の二十八兆九千億円と四年ぶりに前年を下回った。また、着実な伸びを示していた中食でも増加率が縮小し、二・九%増の五兆八千億円にとどまった。

3 世界の食料需給

(1) 近年の穀物等の需給動向
 近年の穀物等の国際需給の動向をみると、需要面では、開発途上国を中心とした人口の増加に加え、畜産物消費の増加に伴う飼料需要が増大していること等から、消費量は着実に増加している。
 一方で、供給面では、八〇年代前半には、米国での豊作、EUでの共通農業政策(CAP)の効果、品種改良の進展や農業資材投入量の増加などによる単収の伸び等の影響により、生産量は大きく増加し、農産物の過剰問題が深刻化した。
 九〇年代に入ると、米国やEUなど主要輸出国において財政負担の軽減にむけて在庫水準を削減するために生産調整による供給管理が行われたことに加え、八八年の北米地域を中心とする干ばつや、ソ連、中国の不作等により過剰在庫は解消し、九五/九六年度穀物の期末在庫率は、米国の天候不順による不作等により、七〇年代前半のひっ迫期の水準を下回るまでに至った。
 九六/九七年度以降、米国においては九六年農業法によって減反が廃止されたほか、EUにおいても同年度から実質減反率を大きく縮小させる方向が打ち出され、作付面積の増加により生産量が再び大きく増加していること、中国においても九六年以降、生産刺激策がとられたことから生産が拡大していること、さらに、潜在的な生産力が高いアルゼンチンやブラジル等、南米諸国においても最近急速に生産が拡大していること等もあり、ここ数年需給は緩和傾向で推移していた。
 一九九九/二〇〇〇年度における世界の穀物生産量については、米はアジア諸国での豊作等により増産となるものの、小麦及び粗粒穀物が米国、EUでの作付面積の減少等により減産になるとみられることから、〇・五%減の十八億六千四百五十万トンになると見込まれる。消費量は、いずれの品目においても増加し、一・三%増の十八億七千六百八十万トンになると見込まれる。期末在庫量については、消費量が生産量を上回るとみられることから、三・五%減の三億四千十万トンになり、期末在庫率は一八・一%と前年度から〇・九ポイント低下すると見込まれる。

(2) 価格の推移第2図参照
 近年の小麦、とうもろこし及び大豆の価格動向を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九五年は、低水準の在庫率等を背景に穀物等の価格はほぼ一貫して上昇を続けた。これは、九三年の米国中西部の洪水、九四年のオーストラリアの干ばつ及び中国の洪水と干ばつ、九五年の米国中西部の作付期における長雨及び夏期の高温等、主要生産国において天候不順が続いたため、九三/九四年度から九五/九六年度までの三年間、穀物の生産量が消費量を下回り、期末在庫率が低下したことによる。特に、九五/九六年度は、世界の消費量は引き続き増加するなかで、最大の輸出国である米国の生産量が、小麦で六・〇%、とうもろこしで二六・四%、大豆で一三・五%と減少し、供給力が著しく低下したこと等から、期末在庫率は史上最低となり、小麦及びとうもろこしの価格は、九六年四月から七月にかけて過去最高を記録するとともに、大豆の価格もこれに連動して高騰した。
 しかし、九六/九七年度は中国で過去最高の豊作となったのをはじめとして、米国、カナダ、EU等でも記録的な豊作となったことから、四年ぶりに生産量が消費量を上回り、九六年夏をピークに小麦、とうもろこしの価格は下落に転じた。また、大豆についても、九六年秋に一時下落した後、九七年夏頃までは、中国の堅調な飼料需要等により上昇していたが、夏をピークに価格は下落に転じた。
 特に、九七年夏以降は、アジア諸国における経済危機を背景として、それまで堅調であった穀物等の需要が鈍化する一方、生産面において、米国や南米諸国、中国での豊作等により輸出国間での競争が激化したこと等から下落を続け、九九年七月には小麦が約二十二年ぶり、とうもろこしが約十一年ぶり、大豆が約二十七年ぶりの安値をつけるなど低迷が続いている。
 なお、世界の穀物の在庫率をみると、一九九九/二〇〇〇年度は、一八・一%と見込まれており、価格の高騰した九五/九六年度の一四・六%に比べると若干高い水準にあるものの、過去の水準からみると決して高い水準とはいえず、気象変動等によっては、需給状況が大きく変わる可能性があることに留意する必要がある。

(3) 一九九九/二〇〇〇年度の穀物等の需給動向
(生 産)
 一九九九/二〇〇〇年度の穀物等の生産量は、小麦は、支持価格の引下げ等により作付面積が減少したものの高単収となった中国、干ばつの影響により大減産となった前年度から増加した旧ソ連、生育期に好天に恵まれ高単収となったカナダ、作付面積が増加したオーストラリア等で増加したとみられるものの、価格の低迷等により作付面積が減少した米国、天候不順により単収が低下したEU等で減少したとみられることから、全体では〇・四%減の五億八千七百二万トンになるとみられる。
 粗粒穀物は、干ばつの影響により不作となった前年度に比べ単収が上昇した南アフリカ、とうもろこしの作付面積が増加したアルゼンチン等で増加するとみられるものの、主産地で生育期の干ばつによりとうもろこしの単収が低下した中国、とうもろこし、大麦の作付面積が減少した米国等で減少したとみられることから、全体では一・七%減の八億七千四百九十六万トンになるとみられる。品目別には、とうもろこしは、中国、米国の減産等により、〇・三%減少するとみられる。また、大麦は、オーストラリア、米国、EUの減産等により六・五%減少し、ソルガムは、ほぼ前年度並みになるとみられる。
 大豆は、アルゼンチンでわずかに増加するものの、最大の生産国である米国でやや減少したとみられるのをはじめ、ブラジルや中国でも減少するとみられることから、全体では二・九%減の一億五千四百七十四万トンになるとみられる。
 米は、天候不順により単収が低下したブラジルでやや減少するとみられるものの、作付面積の増加に加え、好天に恵まれ高単収であったとみられる中国、タイ、バングラデシュ、米国等で過去最高の生産量がみられるほか、その他のアジア主要生産国においても、おおむね増加するとみられることから、全体では二・二%増の四億二百五十万トン(精米ベース)となり、過去最高になるとみられる。
(消 費)
 消費量については、小麦は、米国で飼料需要が減少するものの、中国やインドで食料需要が増加するとみられることから、〇・九%増の五億九千六百八十七万トンになるとみられる。また、用途別には、飼料消費が一・四%減少し、食料その他の消費が一・四%増加するとみられる。
 粗粒穀物は、旧ソ連において畜産部門の縮小等により、かなりの程度減少するとみられるほか、EUにおいては配合飼料に大豆かすや低品質小麦が多く使われ、とうもろこしや大麦の割合が減少するとみられることから、わずかに減少するとみられるものの、米国で工業需要が増加しているほか、中国でも家畜飼養頭数の増加により飼料需要が増加していることから、全体では一・二%増の八億八千四十七万トンになるとみられる。
 大豆は、中国やブラジルを中心に堅調な油脂需要がみられることから、二・〇%増の一億五千九百八十万トンになるとみられる。また、油糧種子全体の消費量は、なたねの消費量がかなり大きく増加するとみられること等から、三・五%増の二億九千九百二十四万トンになるとみられる。
 米は、米国でわずかに減少するとみられるものの、中国、インド、ベトナム等の主要消費国で増加するとみられることから、全体では、二・六%増の三億九千九百五十三万トンになるとみられる。
(貿 易)
 貿易量(輸入)については、小麦は、飼料消費が減少する韓国、生産の回復が見込まれるエジプト等で減少するものの、干ばつ被害により減産となったイラン、生産が十分回復していないロシア等で増加すること等から、四・二%増の一億四百五十六万トンになるとみられる。
 粗粒穀物は、最大の輸入国である日本では家畜の飼養頭羽数の減少等により、わずかに減少するとみられるものの、韓国では、とうもろこしの輸入量が大幅に増加するとみられるほか、北アフリカ諸国においても干ばつの影響から大麦を中心に輸入量が増加すること等から、一・八%増の九千七百五十万トンになるとみられる。
 大豆は、インドネシアでパーム油の増産により大豆の輸入量は減少するとみられるものの、消費量が伸びる一方で生産量の減少するとみられる中国で、大幅に輸入が増加するとみられること等から、五・二%増の四千百六十六万トンになるとみられる。
 米(二〇〇〇暦年)は、インドネシアにおいて前年度の約半分程度に減少するとみられ、他の輸入国においても国内生産の豊作により減少すること等から、一二・二%減の二千二百四万トンになるとみられる。
(在 庫)
 期末在庫量は、小麦は、生産量が減少する一方で消費量は着実に増加するため、七・三%減の一億二千五百九十三万トンになるとみられる。在庫率については、一・八ポイント低下し二一・一%になるとみられる。
 粗粒穀物は、消費量が生産量をわずかに上回るため、三・五%減の一億五千百六十七万トンとなり、在庫率は〇・八ポイント低下して一七・二%になるとみられる。なお、世界の全在庫量の三分の一を占めている米国の期末在庫量は、二・五%減少するとみられる。
 大豆は、生産量が消費量を下回るとみられることから、一五・二%減の二千八百二十七万トンとなり、在庫率は三・六ポイント低下して一七・七%になるとみられる。なお、米国の期末在庫量は、輸出が好調なことから二二・一%減の七百四十八万トンになるとみられ、世界全体の在庫量に占める割合は二六・五%になるとみられる。
 米は、生産量が消費量を上回ることから、期末在庫量は四・九%増の六千二百五十五万トンと、過去最高の水準となり、在庫率も〇・四ポイント上昇し一五・七%になるとみられる。

(4) 二〇〇〇/二〇〇一年度の穀物等の需給動向の見通し
@ 小 麦
(生 産)
 二〇〇〇/二〇〇一年度の小麦の生産量は、南半球の作付けが行われていないため流動的な要素はあるが、EU、東欧等で増加するとみられるものの、米国、カナダ、中国等で減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
(消費、貿易)
 消費量については、旧ソ連諸国の飼料消費が減少するとみられるものの、開発途上国を中心とした人口増加及び食生活の高度化による食料消費が増加するとみられることから、全体ではほぼ前年度並みになると見込まれる。貿易量については、生産が回復するロシア等で輸入量が減少するとみられるものの、干ばつにより減産になる北アフリカ諸国、中国で増加するとみられること等から、全体ではわずかに増加すると見込まれる。
(在庫、価格)
 期末在庫量は、消費量が生産量を上回ることから、かなり大きく減少すると見込まれる。特に、過剰在庫を処分している中国で在庫量は大幅に減少すると見込まれる。
 価格の動向を小麦の国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九九年は、一月に供給過剰感や輸出需要の低迷等から大きく下落し、三月に中国や米国冬小麦地帯での乾燥懸念等から一時値を戻したものの、四月以降は再び下落傾向が続いた。その後七月下旬から八月上旬にかけて米国産地の乾燥懸念により急伸した後は、九月下旬まで総じて落ち着いた動きとなっていたが、十月以降は米国の在庫が高水準であること等から再び下落し、十二月初旬には二十二年ぶりの安値となった。二〇〇〇年一月中旬に米国の乾燥懸念等から急伸した後は、一進一退で推移していたが、五月に入り、再び米国や中国の乾燥懸念により上昇し、五月二十三日現在、二・八一ドル/ブッシェル(期近)となっている。今後については、二〇〇〇/二〇〇一年度の作付けが確定していないため流動的な要素もあるが、世界全体の在庫が低い水準になるとみられるものの、米国やカナダ、EU等、主要輸出国において、豊富な持越在庫により供給余力はあるとみられること等から、当面は現在の水準で推移すると見込まれる。
A 粗粒穀物
(生 産)
 二〇〇〇/二〇〇一年度の粗粒穀物の生産量は、北半球で現在作付けが行われており(五月二十二日現在の進捗状況(とうもろこし):米国九六%)作付けが始まったばかりであり、南半球での作付けは秋以降とかなり先であるため、流動的な要素があるが、中国、南アフリカ等で減少するとみられるものの、米国、カナダ、旧ソ連等で増加するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。品目別には、とうもろこし、大麦、ソルガムともに増加すると見込まれる。
(消費、貿易)
 消費量は、経済危機から回復しつつあるアジア、生産が回復する旧ソ連で増加するとみられることから、わずかに増加し、過去最高になると見込まれる。貿易量は、開発途上国における飼料消費の伸びを受けて、わずかに増加すると見込まれる。
(在庫、価格)
 期末在庫量は、消費量が過去最高に達するものの、生産量が消費量を上回るとみられることから、やや増加すると見込まれる。
 価格(とうもろこし)を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九九年は、二月末から三月末にかけて、南アフリカの乾燥懸念、米国の作付面積減少の見込み等から大きく上昇したが、四月以降下落に転じ、特に、七月中旬には米国での豊作予想を受け、約十一年ぶりの安値となった。その後、米国中西部で乾燥懸念が広がったことから八月中旬にかけて急伸したが、新穀の収穫前に農家の売りが活発になったことや、収穫が順調に進展したこと等から再び下落に転じ、中国からの輸出圧力が強まったこと等から十一月末にかけて下落が続いた。十二月に入り、米国の順調な輸出等により、やや値を戻した後、二〇〇〇年一月中旬には米国の在庫減少の見込み等から急伸した。二月に入り、比較的落ち着いた動きとなっていたが、三月中旬、米国中西部の乾燥懸念から上昇した。その後の降雨により一時値を戻したものの、四月中旬に再び中西部の乾燥懸念が広がったことから急伸し、五月二十三日現在、二・三八ドル/ブッシェル(期近)となっている。
 今後については、堅調な輸入需要が見込まれる一方で、生産量の増加に加え、豊富な持越在庫により主要輸出国における供給余力は高水準にあるとみられること等から、当面は現在の水準で推移すると見込まれる。ただし、秋以降については、二〇〇〇/二〇〇一年度の作付けが確定していないことや、気象条件により流動的であるため、今後の動向を注視する必要がある。
B 大 豆
(生 産)
 二〇〇〇/二〇〇一年度の大豆の生産量は、北半球で現在作付けが行われており(五月二十二日現在の進捗状況:米国七六%)、南半球では秋以降に作付けられるため流動的な要素があるが、米国でかなりの程度増加するとみられるほか、ブラジル、中国等その他の主要生産国でも増加するとみられることから、かなりの程度増加すると見込まれる。
(消費、貿易)
 消費量は、中国をはじめとしたアジア諸国を中心として引き続き油脂需要が堅調とみられることから増加すると見込まれ、貿易量も増加が見込まれる。
(在庫、価格)
 期末在庫量は、消費量が生産量を上回るとみられることから、減少すると見込まれる。
 大豆の価格動向を国際取引指標となるシカゴ商品取引所の期近価格でみると、九九年は、ブラジルの通貨下落や南米での豊作見通し等から、ほぼ十二年ぶりに五ドル/ブッシェルを割り込むなど、大きく下落を続け、二月下旬から三月下旬にかけて、降雨による南米産地での収穫遅延の懸念等から一時上昇したものの、その後は米国での面積増加予想や順調な作付けの進展、輸出需要の低迷等から再び下落し、七月八日には、四・一〇ドル/ブッシェルと約二十七年ぶりの安値となった。七月中旬以降、米国中西部の乾燥懸念等の気象条件により乱高下しながらも九月上旬まで上伸を続けたが、その後は、米国においては減産にもかかわらず在庫量が高水準であるほか、南米諸国において安定した生産が見込まれること等から再び緩やかに値を下げた。二〇〇〇年に入ると、南米の乾燥懸念、期末在庫量の減少等により一月末まで急伸したが、二月に入ると南米の降雨等により一時軟化したものの、三月中旬以降は、米国中西部の乾燥懸念等により堅調に推移しており、五月二十三日現在、五・四九ドル/ブッシェル(期近)となっている。
 なお、非遺伝子組換え大豆の取引価格は、安全性に対する消費者の関心の高まり等により、食品用を中心に需要が高まっていることから割高になっており、契約取引等も増加しているとみられる。我が国においても表示義務化の動きに合わせて非遺伝子組換え大豆への需要が増加しており、今後の価格動向を注視する必要がある。
 今後については、油脂需要を中心に消費量は着実に増加するものの、主要生産国である米国、ブラジル等で増産になるとみられること等から、当面は現在の水準で推移すると見込まれる。ただし、秋以降については、二〇〇〇/二〇〇一年度の作付けが確定していないことや、気象条件により流動的であるため、今後の動向を注視する必要がある。

第2 農産物

1 概 況

(1) 国内農業生産第3図参照
(十一年度の動向)
 十一年度の農業生産の動向を生産指数でみると、果実、野菜のほか麦類、大豆等の増加により、全体では二%程度増加したとみられる。
 耕種作物では、米は水稲の単収が前年産を上回ったことから二%程度の増加、麦類は作付面積が増加したこと等から九%程度の増加、大豆は前年産に比べ単収が上昇したこと等から一九%程度の増加、野菜は秋冬野菜が前年産に比べ増加したとみられること等から二%程度の増加、果実はみかん、りんご等が増加したことから七%程度の増加、花きは球根類が減少したとみられるものの、切花類等が増加したとみられることから二%程度の増加、いも類、工芸作物は、それぞれ五%、二%程度の減少となったとみられる。これらの結果、耕種作物は、二%程度増加したとみられる。
 また、畜産物では、肉用牛がわずかに増加したとみられるものの、他の品目ではわずかに減少したとみられることから、全体では〇・五%程度減少したとみられる。
(十二年度の見通し)
 十二年度は、麦類、大豆、花き等で増加、果実等で減少するとみられることから、全体ではほぼ前年度並みになると見込まれる。
 耕種作物では、米は前年産並み、麦類は作付面積がやや増加し、前年産の作柄が悪かった小麦の単収が上昇するとみられること等からかなりの程度増加、大豆は作付面積の増加等によりやや増加、野菜は春野菜、秋冬野菜が減少するとみられることからわずかに減少、果実はみかん等が減少するとみられることからかなりの程度減少、花きは球根類がわずかに減少、切花類、鉢もの類がわずかに増加、花壇用苗もの類がかなり大きく増加するとみられること等からわずかに増加すると見込まれる。これらの結果、耕種作物は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
 また、畜産物では、肉用牛がわずかに増加、豚、ブロイラーがわずかに減少、生乳がほぼ前年度並み、鶏卵が前年度並み、ないしわずかに増加するとみられることから、全体ではほぼ前年度並みになると見込まれる。

(2) 農産物輸入第4図参照
(十一年度の動向)
 十一年度の農産物輸入の動向を数量指数でみると、全体では四・五%増加した。
 品目別にみると、穀物及びその調製品は、小麦、大麦・裸麦、とうもろこし等が増加したことから三・二%の増加、野菜及びその調製品は、生鮮野菜が作柄の悪くなったトマト、たまねぎで増加したことからやや増加し、野菜調製品がかなりの程度増加したことから、七・二%の増加、果実及びその調製品は、生鮮果実が前年度不作で減少したバナナ、グレープフルーツ等が増加したことからかなり大きく増加し、果実調製品が果汁を中心に大幅に増加したこと等により、一三・六%の増加となった。
 鳥獣肉類及びその調製品では、牛肉がほぼ前年度並みになり、豚肉、鶏肉が国内生産の減少幅の拡大等から、かなりないし大幅に増加したことから九・八%の増加、酪農品・鳥卵は、乳製品がやや増加、鶏卵がかなり大きく増加したこと等から六・一%の増加となった。
(十二年度の見通し)
 十二年度は、全体ではわずかに増加すると見込まれる。
 品目別にみると、穀物及びその調製品は、ミニマム・アクセス分として米が増加するとみられるものの、小麦がほぼ前年度並みになるとみられること等から、ほぼ前年度並み、野菜及びその調製品は、消費量が停滞ないし減少傾向にあるものの、国産野菜の収穫量がわずかに減少するとみられることから、ほぼ前年度並み、果実及びその調製品は、生鮮果実がオレンジ、バナナ等の増加から増加し、果実調製品が果汁需要の堅調なことにより増加するとみられることから増加すると見込まれる。
 鳥獣肉類及びその調製品では、牛肉がわずかに増加、豚肉がほぼ前年度並み、鶏肉がやや増加するとみられること等からわずかに増加、酪農品・鳥卵は、乳製品がチーズ等の需要増加によりわずかに増加するとみられること等から、わずかに増加すると見込まれる。

(3) 農産物生産者価格
 十一年度の農産物生産者価格は、全体では八・七%下落した。
 耕種作物では、米は七・八%、野菜は一六・一%、果実は二二・一%、花きは一五・九%下落した。これらの結果、全体では一一・〇%程度下落した。
 また、畜産物では、肉畜はやや下落したものの、鶏卵は大幅に上昇したこと等から、全体では〇・五%上昇した。
 十二年度は、全体ではわずかに上回ると見込まれる。
 耕種作物では、野菜は、春野菜、秋冬野菜が上回るとみられることからわずかに上回り、果実は、みかん、りんご等が安値であった前年産を上回るとみられること等から大幅に上回り、花きは、ほぼ前年度並みになると見込まれる。これらのこと等から、耕種作物ではやや上回ると見込まれる。
 また、畜産物では、肉畜、生乳はわずかに下回り、鶏卵はわずかないしやや下回るとみられること等から、全体ではわずかに下回ると見込まれる。

(4) 農業生産額第5図参照
 十一年度の農業生産額は、八%程度減少し、十兆三千億円程度になったとみられる。これは、農業生産数量が果実、野菜のほか麦類、大豆等の増加によりわずかに増加したとみられるものの、農産物生産者価格が野菜、果実、花き等の下落によりかなりの程度下落したとみられることによるものである。
 十二年度については、農業生産数量がほぼ前年度並みになるとみられるものの、農産物生産者価格がわずかに上回るとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。
 また、農業純生産は、かなりの程度増加すると見込まれる。

2 穀物及び特産物

(1) 米
(消 費)
 米の一人当たり消費量(供給純食料)は、減少傾向が続いており、十年度は二・二%減の六十五・九キログラム(主食用二・〇%減の六十三・三キログラム)となった。
 十一年度の世帯別の消費量をみると、消費世帯では〇・七%の減少となった十年度に引き続き一・〇%の減少となり、生産世帯においても〇・九%の減少となったことから、全世帯では一・一%の減少となった。
 また、十一年度の米の一人当たり購入数量(家計消費)については、〇・四%の減少となった。
 米については、食生活が多様化しているなか、これまで減少傾向で推移してきているが、関係者が消費拡大に向けて一体となった取組を展開することにより、十二年度の米の消費量は前年度並みになると見込まれる。
(供 給)
 十一年産水陸稲の作付面積は、〇・七%減少したものの、水稲の作況指数が一〇一となったこと等から、水陸稲の収穫量は二・四%増の九百十七万五千トンとなった。
 十二年産水陸稲の作付面積は、十二年度の生産調整目標面積が十一年度と同じ九十六万三千ヘクタールとされていることから、前年産並みになると見込まれる。収穫量は、平年収量によれば、前年産並みになると見込まれる。
 なお、十二年度における外国産米の輸入量は七十七万玄米トンとされており、国内の需給動向を踏まえつつ、輸出国の輸出余力、国際相場等を勘案して契約月ごとに決定される。また、在庫量(十二年十月末)は、「水田を中心とした土地利用型農業活性化対策大綱」に基づき、需要に応じた米の計画的生産を推進することから、減少すると見込まれる。

(2) 麦
(消 費)
 近年の小麦の一人当たり消費量(供給純食料)は、三十二〜三十三キログラムとなっている。十一年度の小麦加工品の一人当たり購入数量(家計消費)の動向をみると、めん類は〇・四%の増加となり、パン類は食パンが三・三%の増加となるなど、パン類全体では一・九%の増加となった。めん類とパン類の合計では一・二%の増加となった。また、麦加工品の生産動向でみると、パンはわずかながら生産量を伸ばしており、十一年度においても、一・八%の増加となった一方、めん類については、近年わずかながら減少しており、十一年度についても一・四%の減少となった。これらの計では前年度並みの生産量となっている。
 十二年度の小麦の消費量は、家庭における小麦加工品の消費が引き続きわずかに伸びているものの、最近の麦加工品の生産動向からみて、十二年度の小麦の消費量は、前年度並みになると見込まれる。
(供 給)
 十一年産の麦類の作付面積は、引き続き畑作、水田裏作は減少したものの、転作麦が一〇・三%増加したことから、全体では一・七%増の二十二万七百ヘクタールとなった。収穫量は、都府県産が作柄不良であった前年産に比べ五八・八%の増加となったことから、一〇・六%増の七十八万八千四百トンとなった。麦種別では、小麦は、作況指数九二の「不良」となったものの、作付面積の増加から二・四%の増加、二条大麦は、作況指数一一二の「良」となり四〇・四%の増加、六条大麦は、作況指数一〇〇の「平年並み」となり、七四の「不良」となった前年産に比べ三五・九%の増加、裸麦は作況指数一一四の「良」となり、五八の「不良」となった前年産に比べ八五・二%の増加となった。
 十二年産の作付面積は、小麦、二条大麦はわずかに増加し、六条大麦はかなり大きく、裸麦はかなりの程度増加すると見込まれる。収穫量は、作付面積が増加すること、前年産の作柄が良くなかった小麦で単収が上昇するとみられることから、かなりの程度増加すると見込まれる。小麦の輸入量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(3) 大 豆
(消 費)
 十一年度の大豆の需要量は、食品用が二・八%減の百一万七千トンとなったものの、需要の大宗を占める製油用が三・七%増の三百七十五万一千トンとなったことから、全体では二・二%増の四百八十七万三千トンとなった。大豆の一人当たり消費量(供給純食料)は、横ばいで推移しており、十年度は前年度同の六・六キログラムとなった。十一年の食品用需要の動向を家庭における大豆加工品の一人当たり実質支出金額(家計消費)でみると、豆腐は四・七%の減少、油揚げは四・八%の減少、納豆は一・四%の減少と、近年増加傾向にあった豆腐、納豆ともに減少に転じた。また、しょう油の一人当たり購入数量(家計消費)は〇・四%、みそは三・〇%の減少となった。
 なお、減少した背景にはGMO食品の表示問題や東海村のウラン加工施設事故の影響などにより、近年増加を続けていた納豆需要が減少したこと等があるとみられる。
 十二年の大豆の需要量については、食品用は、前年の消費量の落ち込みが一時的なものとみられ、引き続き健康志向の高まりから前年を上回るとみられるものの、需要量の大宗を占める製油用が減少するとみられることから、わずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 近年の大豆の国内消費仕向量は、年による変動はあるものの、四百八十〜四百九十万トン台で推移していたが、九年度は、消費の大宗を占める加工用(主に製油用)が増加したことから一・五%増の五百四万トンとなった。十年度は、飼料用が四・五%減少したほか、加工用が四・二%減少したことから、全体で三・四%減の四百八十七万トンとなった。
 作付面積は、昭和六十二年産の十六万二千七百ヘクタールをピークとして、昭和六十三年産以降減少し、平成六年産では六万九百ヘクタールとなったが、米の生産調整規模の拡大により平成七年産から増加に転じた。十一年産は、田作は一・五%の増加となったものの、畑作が七・二%減少したことから、全体では〇・八%減の十万八千二百ヘクタールとなった。
 十一年産の収穫量は、北海道は生育期間を通じて高温・多照に経過したことから 一八・三%増の四万百トン、都府県では八月下旬以降の多雨・日照不足や台風第一八号等の影響があったものの、天候不順の影響により作況指数八〇の「不良」となった前年産に比べ一八・五%増の十四万七千百トンとなったことから、全国では一八・五%増の十八万七千二百トンと七年ぶりに十八万トン台となった。
 主に製油用に使用される大豆の輸入量は、近年では四百七十〜五百万トンで推移しており、十一年は二・八%増の四百八十八万四千トンとなった。輸入量が増加した背景には、需要の大宗を占める製油用について、大豆かす価格が低水準にあることを背景として、配合・混合飼料用へのたん白資源としての需要が前年を上回ったこと、二〇〇〇年問題に関して仮需要が発生したことがあるとみられる。輸入価格(CIF価格)は、国際価格の下落を背景に二九・四%安の一千六百七十六円/六十キログラムとなっている。国別にみると、近年、米国からはおおむね八割程度が輸入されており、十一年は三・五%増の三百八十六万七千トンとなり、そのシェアは〇・六ポイント上昇し七九・二%となった。
 十二年産大豆の作付面積は、米の生産調整目標面積が前年と同じであることに加え、「水田を中心とした土地利用型農業活性化対策大綱」及び「新たな大豆政策大綱」に基づき、諸般の施策が積極的に展開されることから、わずかに増加すると見込まれる。収穫量は、やや増加すると見込まれる。
 十二年の大豆の輸入量は、需要量がわずかに減少するとみられることに加え、国産の出回量が増加するとみられることから、前年並み、ないしわずかに減少すると見込まれる。

(4) 茶
(消 費)
 緑茶の消費量は近年増加していたが、十一年の一人当たり消費量は、〇・一%減の七百八十グラムとなった。
 十二年の緑茶の消費量は、健康志向により需要が拡大してきたものの、十一年にはその傾向にも鈍化のきざしがみられたこと等から、ほぼ前年並みになると見込まれる。
(供 給)
 茶の栽培面積は、高齢化等から小規模農家を中心に栽培を中止したこと等により近年減少傾向で推移しており、十一年は一・〇%減の五万七百ヘクタールとなった。
 十二年産の栽培面積は引き続きわずかに減少すると見込まれる。十二年産の荒茶生産量は、栽培面積が減少すると見込まれるが、国内消費がほぼ前年並みになると見込まれることに加え、海外における緑茶への関心が高いことにより輸出が増加するとみられることから、わずかに増加すると見込まれる。十二年の緑茶の輸入量は、前年からの繰越在庫量が多いこと、国内生産量が増加すると見込まれることから、大幅に減少すると見込まれる。十二年産の荒茶価格は、大幅な高値となった前年産に比べ、かなりの程度下回ると見込まれる。

3 野 菜

(1) 最近の動向
(消 費)
 野菜の一人当たり消費量(供給純食料)は、八年度以降、減少傾向にあり、十年度は、二・六%減の九十九・〇キログラムとなった。生鮮野菜の一人当たり購入数量(家計消費)をみると、十一年度については前年度並みとなった。これを季別にみると、春野菜が天候に恵まれ生育も順調なことから三・三%増加したほか、秋冬野菜も天候に恵まれ生育は順調なことから一・七%増加したが、夏秋野菜が天候不順の影響による入荷量の減少により七〜八月が高値となったことから、四・四%減少した。また、一人当たりの支出金額(家計消費)は、百グラム当たりの購入単価が一〇・五%安となったことから、一〇・五%減少した。
(供 給)
 野菜の作付延べ面積は、農家の高齢化の進行、重量野菜にみられる労働の過重感等から減少傾向にある。十一年産は、春野菜、夏秋野菜、たまねぎが前年産並み、ないしわずかに増加したとみられるものの、秋冬野菜がわずかに減少したとみられることから、全体ではわずかに減少したとみられる。
 収穫量は、作付延べ面積の減少に伴い減少傾向で推移しているが、天候要因による作柄の変動も大きく、十一年産は、夏秋野菜が天候の影響でわずかに減少したとみられるほか、たまねぎも北海道産が大幅に減少したとみられるものの、春野菜は天候に恵まれ生育が順調であったことからやや増加したとみられ、秋冬野菜も天候不順により収穫量の減少した前年に比べ、やや増加したとみられることから、全体ではわずかに増加したとみられる。
 十一年度の野菜の輸入量は、野菜全体では八・九%の増加となった。生鮮野菜は一六・九%の増加と引き続き高い伸びを示しており、野菜加工品については、塩蔵野菜が二・四%減少したものの、酢調製品が一九・四%増加したのをはじめ、トマト加工品が八・〇%の増加、冷凍野菜が一・一%の増加となったこと等から、全体では三・八%の増加となった。
 十二年産は、春野菜の作付面積は、前年産並みないしわずかに減少すると見込まれ、収穫量は、天候に恵まれ生育が順調であった前年産に比べ、わずかに減少すると見込まれる。夏秋野菜の作付面積は、引き続き果菜類が減少するとみられることから、わずかに減少すると見込まれ、収穫量は、天候不順の影響から作柄が悪かった前年産に比べ、やや増加すると見込まれる。秋冬野菜の作付面積は、重量野菜が減少するとみられること等から、わずかに減少すると見込まれ、収穫量は、前年産に比べ単収が低下するとみられることから、やや減少すると見込まれる。たまねぎの作付面積は、わずかに増加し、収穫量はかなりの程度増加すると見込まれる。これらの結果、作付面積、収穫量ともにわずかに減少すると見込まれる。また、十二年度の輸入量は、円相場や海外産地の動向等にもよるが、消費量が停滞ないし減少傾向にあるものの、国産野菜の収穫量がわずかに減少するとみられることから、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
(価 格)
 十一年産野菜の卸売価格は一四・三%安の百九十五円/キログラムとなった。季節区分別にみると、春野菜は、入荷量が一・七%増加したことから、天候不順により入荷量が減少し高値となった前年産に比べ一八・七%安の百九十五円/キログラムとなった。夏秋野菜は、梅雨後半の大雨と梅雨明け後の猛暑の影響で入荷量が二・四%減少したものの、高値であった前年産に比べ四・七%安の二百十四円/キログラムとなった。秋冬野菜は、前年産の十一〜十二月が高値であったことに加え、本年産の入荷量が増加したこと、輸入が増加したことから一九・一%安の百八十一円/キログラムとなった。たまねぎについては、上期(四〜九月)は、天候に恵まれ生育が順調であったことから国産の入荷量は増加し、また、市場経由量は減少したものの、輸入量が増加したことを背景に、三三・三%安の七十八円/キログラムとなった。下期(十〜三月)では北海道産の作柄が悪く入荷量が減少したことから、一一・七%高の八十五円/キログラムとなった。通期では、一五・一%安の八十一円/キログラムとなった。
 十二年産については、春野菜は、最近増加している生鮮野菜等の輸入動向いかんにもよるが、天候に恵まれ生育も順調であった前年産に比べ入荷量がわずかに減少するとみられることから、わずかに上回ると見込まれる。夏秋野菜は、入荷量が増加するとみられることから、やや下回ると見込まれる。秋冬野菜の卸売価格は、入荷量が減少するとみられることから、安値となった前年産をかなりの程度上回ると見込まれる。たまねぎは、上期は、収穫量がわずかに増加するとみられることから、わずかに下回ると見込まれ、下期は、収穫量がかなり大きく増加すると見込まれることにより、やや下回るとみられることから、年間を通じては、やや下回ると見込まれる。
 これらの結果、十二年産野菜の卸売価格は、わずかに上回ると見込まれる。

(2) 夏秋野菜(主要出回り時期七〜十月)
(生 産)
 近年の夏秋野菜の作付面積の動向をみると、果菜類が労働力不足等により減少傾向が続いていること等から、全体でも減少傾向で推移している。十一年産については、引き続き果菜類での減少が続いているものの、根菜類でやや増加したことから、全体では〇・二%増加したとみられる。収穫量は、七〜八月の天候不順の影響により、一・七%減少したとみられる。
 十二年産夏秋野菜の作付面積は、引き続き果菜類が減少するとみられることから、わずかに減少すると見込まれる。収穫量は、天候不順の影響から作柄が悪かった前年産に比べ、やや増加すると見込まれる。
(価 格)
 十一年産夏秋野菜の卸売価格は、梅雨後半の大雨と梅雨明け後の猛暑の影響で入荷量が減少した八月には二一・〇%高の二百三十五円/キログラムと高騰し、また通期でみても入荷量は二・四%減少したが、高値となった前年に比べると四・七%安の二百十四円/キログラムとなった。
 十二年産夏秋野菜の卸売価格は、輸入動向いかんにもよるが、入荷量が増加するとみられることから、やや下回ると見込まれる。

(3) 秋冬野菜(主要出回り時期十一月〜翌年三月)
(生 産)
 最近の秋冬野菜の作付面積の動向については、だいこん、はくさい等の重量野菜を中心に減少傾向にある。十一年産についても、その傾向が続いていること等から、わずかに減少したとみられる。収穫量は、根菜類及び葉茎菜類が八月下旬以降の天候不順により作柄の悪かった前年産に比べ増加したとみられることから、やや増加したとみられる。
 十二年産秋冬野菜の作付面積は、労働力不足等により重量野菜が減少するとみられること、十一年産の卸売価格が低下したこと等により生産意欲が低下していること等により、わずかに減少すると見込まれる。収穫量は、作付面積が減少するとみられること、暖冬傾向で単収が上昇した前年産より単収が低下するとみられることから、やや減少すると見込まれる。
(価 格)
 十一年産秋冬野菜の卸売価格は、前年産の十一〜十二月が高値であったことに加え、当年産の入荷量が増加したこと、輸入量が増加したことから、一九・一%安の百八十一円/キログラムとなった。
 十二年産秋冬野菜の卸売価格は、輸入動向いかんにもよるが、入荷量が減少するとみられることから、安値となった前年産をかなりの程度上回ると見込まれる。

(4) たまねぎ
(生 産)
 たまねぎの作付面積は、都府県は減少傾向にあるものの、北海道では増加傾向にある。
 十一年産は、都府県産は、佐賀県で関係機関による作付指導等により増加したものの、兵庫県で近年の市場価格の低迷や他野菜への転換があったこと等から、一・〇%減少したが、北海道が二・〇%増加したことから、全体では〇・二%増の二万六千八百ヘクタールとなった。収穫量は都府県産では、定植期以降おおむね天候に恵まれ生育は順調に推移したことから、作柄の悪かった前年産に比べて八・〇%増加したものの、北海道産は、五月中旬以降、高温・少雨で経過したことから葉数は確保されたものの、草丈は短く、肥大期に入ってからも高温・少雨で経過したことから肥大が進まず、外葉の倒伏も早まり、小玉傾向となったことにより、作柄が良好であった前年産に比べ二三・〇%と大幅に減少したとみられる。このため全体では一〇・一%の減少となったとみられる。
 十二年産たまねぎの作付面積は、都府県産は前年産並みになるとみられるものの、北海道産がわずかに増加するとみられることから、全体ではわずかに増加すると見込まれる。収穫量は、都府県産はわずかに増加するとみられ、北海道産はかなり大きく増加するとみられることから、全体ではかなりの程度増加すると見込まれる。
(価 格)
 十一年産たまねぎの卸売価格は、上期は、作柄の悪かった前年産に比べ収穫量が増加したことに加え、輸入量も増加したことから、三三・三%安の七十八円/キログラムとなった。下期は、北海道産の収穫量が大幅に減少したものの、輸入量が大幅に増加したことから、一一・七%高の八十五円/キログラムにとどまり、通期では一五・一%安の八十一円/キログラムとなった。

4 果 実

(1) 概 況
(消 費)
 近年の果実の一人当たり消費量(供給純食料)は六年度をピークに減少傾向にある。十年度は国内生産量、輸入量ともに減少して七・四%減の三十七・六キログラムと減少した(農林水産省「食料需給表」)。
 果実消費(供給純食料ベース)の約六割を占める生鮮果実の一人当たり購入数量(家計消費)は、近年、バナナは増加しているものの、みかん、りんご、輸入かんきつ類は減少傾向、他の品目はほぼ横ばい傾向にあることから、全体では微減傾向で推移している。十一年度は、年度前半は貯蔵りんご等が減少したものの、バナナが年度を通して増加したほか、秋以降はみかん等が増加したことから、全体としては一・七%の増加となった。
(供 給)
 果実の国内消費仕向量(国内生産量+輸入量−輸出量±在庫の増減)をみると、十年度は、前年産が豊作であったこと、天候不順の影響により作柄不良となった品目が多かったこと等から国内生産量が減少したことに加えて、輸入量も引き続き減少したことから、七・一%の減少となった。また、国内消費仕向量に占める国内生産量の割合は四八・八%となり、前年度よりも四・〇ポイント低下した。なお、十一年度については、国内生産量、輸入量ともに増加していることから、国内消費仕向量は再び増加に転じるものとみられる。
 果樹の栽培面積は、生産者の高齢化に伴う労働力不足等による老木園や管理不良園の廃園等から、毎年わずかずつ減少しており、十一年も消費の多様化等を受けて西洋なし、おうとう等増加している品目もみられるものの、みかん、晩かん類、りんご等、主要な品目が引き続き減少傾向にあることから、全体では一・六%減の二十九万七百ヘクタールとなった。
 果実の収穫量は、気象条件等による変動がみられるものの、栽培面積の減少等により減少傾向にあるなかで、十一年産はおおむね天候に恵まれて主要な品目が前年産を上回ったこと等から、全体では七%程度増加したとみられる。十二年の栽培面積については同様の傾向が続いてわずかに減少すると見込まれ、十二年産の収穫量については、前年産が豊作であったみかん、りんご等が減少するとみられ、全体ではかなりの程度減少すると見込まれる。
 七年度以降、減少傾向で推移していた生鮮果実の輸入量は、十一年度は、十年十二月のカリフォルニアにおける寒波による被害の影響が年度前半まで残ったオレンジや各産地が不作であったキウイフルーツが減少したものの、前年、原産国の天候不順等で減少したバナナやグレープフルーツ等が増加したことから、全体では一三・八%の増加となった。
(卸売価格)
 国産果実の卸売価格(主要卸売市場におけるキログラム当たり平均価格。以下同じ。)は、入荷量の増減や品質の良否等により、年度ごとに大きく変動している。
 十一年度は、年度前半はおうとうや貯蔵りんごの品薄高、前年の前進出荷で安値であったもも等、夏果実の上昇により高値傾向で推移したものの、秋以降に出回る主要品目のみかん、りんご、かき、くり等が品薄であった前年産に比べ入荷量が増加したこと等から下落し、九月以降は全体でも安値傾向に転じて、高値であった前年度比で八・九%安の三百八円/キログラムとなった。

(2) みかん
(消 費)
 みかんの一人当たりの消費量は近年減少傾向にあるが、十一年産の購入数量(家計消費)は、収穫量の増加により六・九%の増加となった。また、加工仕向量も収穫量の増加に伴い、減少した前年産に比べ増加したとみられる。
 十二年産は、収穫量が大幅に減少するとみられること等から、生食消費量はかなり減少し、減少幅が大きいとみられる加工仕向量は大幅に減少すると見込まれる。
(生 産)
 結果樹面積は、高齢化による廃園等から引き続き減少しており、十一年産は一・五%減の五万九千七百ヘクタールとなった。収穫量は、不作であった前年産の影響で着果数が増加したこと等により、生産出荷安定指針の発動に伴う摘果等の取組が行われたものの、二一・一%増の百四十四万七千トンとなった。
 十二年産は、結果樹面積が引き続きわずかに減少するとみられることや単収が前年産の豊作等の影響で結果母枝数が減少しているとみられること等により、かなり大きく低下するとみられることから、収穫量は大幅に減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回時期(十月〜翌年三月)における卸売価格は、入荷量の増減、品質の良否等から隔年ごとに大きく変動する傾向にあり、十一年産は入荷量がかなり大きく増加したことに加え、品質が良くなかったこと等により、四九・四%安の百二十九円/キログラムと安値になった。
 十二年産は、入荷量が大幅に減少するとみられること等により、大幅に上回ると見込まれる。

(3) 晩かん類
(消 費)
 晩かん類の消費量は増減を伴いつつ、ほぼ横ばいで推移しているが、十一年産の購入数量(家計消費)は、収穫量が減少していることや、出荷の前進化から増加した前年に比べ、二四・一%減少している。十二年産は、収穫量が減少するとみられること等から、かなりの程度減少すると見込まれる。
(生 産)
 結果樹面積は他のかんきつ類への転換等により減少傾向にあり、十一年産も三%程度減少したとみられる。十一年産の収穫量は、はっさくが四%程度増加したものの、いよかんが一〇%程度、なつみかんは八%程度、ネーブルオレンジが五%程度減少したとみられることから、全体では七%程度減少したとみられる。
 十二年産は、結果樹面積はやや減少し、単収はやや低下すると見込まれ、収穫量は、なつみかんはやや減少、いよかん、はっさくはかなりの程度減少し、ネーブルオレンジはかなり大きく減少するとみられることから、全体ではかなりの程度減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回時期における十一年産の卸売価格は、入荷量(三月まで)は前年より少なめであるものの、みかん等の果実市況が安値で推移している影響等を受け、いよかん、なつみかん、はっさく、ネーブルオレンジのいずれも下落している。十二年産は、入荷量が前年産よりも減少するとみられ、みかんの価格が大幅に上回るとみられること等により、いよかん、はっさく、ネーブルオレンジは大幅に上回り、なつみかんはかなりの程度上回ると見込まれる。

(4) りんご
(消 費)
 りんごの一人当たり消費量は、最近は供給純食料ベースで伸び悩んでおり、購入数量(家計消費)も微減傾向にある。十一年産(九〜三月)は、出回初期に出荷が増加した前年同期と比べ一・八%の減少となっている。加工仕向量は、収穫量の増加と購入単価の下落から増加するとみられる。
 十二年産の生食消費量、加工仕向量は、収穫量がやや減少することや購入単価が前年産を上回るとみられること等から、ともにやや減少すると見込まれる。
(生 産)
 結果樹面積は毎年わずかに減少しており、十一年産は二・〇%減の四万四千六百ヘクタールとなった。収穫量は、夏期の高温や干ばつ傾向で肥大がやや不足したものの、着果数の増加等により主産県で単収が上昇したことから、五・五%増の九十二万七千七百トンとなった。品種別には、結果樹面積の減少が大きいつがる、デリシャス系がそれぞれ一・五%、七・九%の減少となったものの、ふじが一一・〇%の増加、ジョナゴールドが四・二%の増加、王林が〇・六%の増加となった。
 十二年産は、結果樹面積はわずかに減少し、単収はやや低下するとみられることから、収穫量はやや減少すると見込まれる。品種別には、ジョナゴールドはわずかに減少、ふじ、つがる、王林はやや減少、デリシャス系はかなり大きく減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回時期(九月〜翌年五月)の卸売価格は、十一年産(九〜三月)は、前年高値となったふじを中心に、入荷量の増加と小玉傾向や着色不足から安値となって、国産果実全体の市況も安値で推移していることもあり一七・一%安の二百三十三円/キログラムとなっている。
 十二年産は、入荷量がやや減少するとみられることから、安値となった十一年産をかなり大きく上回ると見込まれる。

(5) な し
(消 費)
 なしの一人当たり購入数量(家計消費)はほぼ横ばいで推移しているが、十一年産は夏期の需要が強く四・六%増加した。十二年産はやや減少すると見込まれる。
(生 産)
 収穫量は、結果樹面積が一・二%減少し、単収がおおむね天候に恵まれ果実肥大も良好であったこと等により二・七%上昇したことから、一・五%増の四十一万五千七百トンとなった。
 十二年産は、結果樹面積がわずかに減少し、単収はやや低下するとみられることから、やや減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回時期(七〜十一月)における卸売価格は、十一年産は、入荷量は前年産並みであったものの需要が堅調であったことから、四・三%高の三百十二円/キログラムとなった。十二年産は、入荷量が減少するとみられること等により、わずかに上回ると見込まれる。

(6) ぶどう
(消 費)
 ぶどうの一人当たり購入数量(家計消費)は、近年は微減傾向で推移してきたが、十一年産は収穫量の増加等により六・五%増加した。十二年産は、生食消費量、加工仕向量ともにかなりの程度減少すると見込まれる。
(生 産)
 収穫量は、十一年産は結果樹面積が一・九%減少したものの、単収が五・九%上昇したことから、三・九%増の二十四万二千トンとなった。十二年産は、結果樹面積がわずかに減少し、単収がやや低下するとみられることから、かなりの程度減少すると見込まれる。
(価 格)
 主要出回時期(六〜十一月)における卸売価格は、入荷量が増加したこと等から、十一年産は一・七%安の六百九十二円/キログラムとなった。十二年産は、入荷量がかなりの程度減少するとみられること等により、やや上回ると見込まれる。

5 花 き

(1) 概 況
(消 費)
 切花の一人当たり支出金額(家計消費)は、十一年度は、四月及び六月を除いては前年を下回って推移し、一・八%の減少となった。
 鉢もの類、花壇用苗もの類等を含む園芸品・同用品の支出金額は、ガーデニングの流行等による鉢もの類、花壇用苗もの類や園芸用品等の伸びから増加傾向で推移してきている。十一年度は十年度に引き続き堅調な需要に支えられ、特に週末の天候が不順であったにもかかわらず黄金週間をはさんだ需要期の四〜五月や、猛暑の影響で切花から消費が流れたとみられる七〜八月には前年同月比で一〇%以上の伸びとなったこともあって、五・〇%の増加となった。
(供 給)
(主な花きの供給量)
 切花類の供給量は、十一年は国内生産の回復と輸入量の増加によりわずかに増加したとみられる。
 鉢もの類、花壇用苗もの類については、国内出荷量の増加により供給量は堅調な伸びが続いており、十一年も同様の傾向とみられる。
 球根類については、国内出荷量は減少傾向にあり、また球根切花の原材料需要等により増加してきた輸入量も最近は切花消費の低迷等から需要が伸び悩んでいることから、全体の供給量は微減傾向で推移している。十一年も輸入量はわずかに増加したものの、全体としては減少したとみられる。
(国内生産)
 花きの作付(収穫)面積は、切花類、鉢もの類、花壇用苗もの類、地被植物は増加傾向、観賞用樹木、芝はほぼ横ばい、球根類は減少傾向にあり、全体ではわずかずつ増加してきた。
 十一年産の生産量については、各品目の作付けは同様な傾向が続き、球根類はわずかに減少したものの、切花類は前年のきくの作柄不良が回復してわずかに増加、鉢もの類はやや増加、花壇用苗もの類はかなり大きく増加し、全体では二%程度(生産指数ベース)増加したとみられる。生産額は、切花類、鉢もの類、花壇用苗もの類の増加等により増加傾向にある。
(輸 入)
 花きの輸入動向を輸入検疫実績(本数、個数、暦年ベース)でみると、輸入量は八年以降、国内需要の低迷等から切花を中心に伸び悩んでいたが、十一年については、円高が進むなど輸入環境が好転したこと等から増加したとみられる。
 球根類は、伸びは緩やかになりつつも国内生産量が減少傾向にあることから、増加傾向にある。十年は、小売需要の伸び等もあってチューリップ属が一〇・五%の増加となったこと等から全体でも一・九%の増加となった。十一年も同様の傾向が続いたとみられる。
 このように輸入量は増加しているものの、金額ベースでは円高の影響で単価が下落していること等により、十一年は前年を下回って推移した(大蔵省貿易統計)。
(卸売価格)
 花きの卸売価格(主要花き卸売市場における一本(鉢)当たり平均価格。以下同じ。)については、まず切花類では、近年卸売価格は横ばい傾向であったが、十一年度は、前年高値であったきくが入荷量の回復等により低下したほか、トルコギキョウ等の洋花も地域的な天候の影響による品質低下等によって下落した品目が多いことから、全体でも九・六%安となった。
 鉢もの類は、堅調な需要を背景とした出荷量の増加に加え、市場や物流施設の整備により最近は入荷量が増加しており、さらに多様化に伴う小鉢化が引き続き進展していることから下落しており、十一年度は、夏の暑さにより切花類から流れたとみられる需要の増加はあるが、小鉢化傾向が続いたため、五・一%安となった。
 花壇用苗もの類は、ガーデニング等の家庭需要が引き続き堅調なことから出荷量、市場経由量ともに増加して入荷量は毎年一〇%以上の伸びを示しているものの、需要が堅調であるため卸売価格はほぼ横ばいで推移しており、十一年度は、秋以降年内は暖冬傾向で推移したことも幸いして消費が根強かったものの、年明けに入荷量が大きく増加したことから下落し、通期では五・七%安となった。

(2) 切花類
(消 費)
 切花の消費は、近年、伸び率が鈍化し、減少と増加を繰り返しながら横ばいないし減少傾向で推移している。十一年度は、四月及び六月を除いては前年を下回って推移し、秋以降も彼岸需要、年末需要とも振るわず、全体では一・八%減少した。十二年度は、個人消費全体の回復がみられないなど厳しい状況が続いているが、年度後半に明るい見通しもあることから、前年度並み、ないしわずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 切花類の作付面積は、近年約二%の増加で推移してきたが、九年産から伸びが鈍化しており、十年産も一・〇%の増加にとどまった。十一年産はわずかに増加したとみられる。十年産の出荷量は天候不順の影響を受けて二・一%の減少となった。十一年産は、作付面積がわずかに増加したとみられ、前年産のような大きな天候被害もないので、わずかに増加したとみられる。十二年産の切花類の作付面積は、伸び率が鈍化しているもののわずかずつ増加を続けていること、品種によっては規模拡大や産地形成等への取組も行われていることから、わずかに増加すると見込まれる。出荷量もわずかに増加すると見込まれる。十二年度の輸入量は、世界的な供給過剰のなかでアジア等新興産地の生産が増加していること等から、やや増加すると見込まれる。
(価 格)
 十一年度の卸売価格は、春先から続いた安値が猛暑の品質低下で夏になっても回復しないまま、秋以降も前年高値であったきくを中心に続いたことから、通期でも前年度を下回った。十二年度の卸売価格は、入荷量がわずかに増加するとみられるものの、かなり下落した十一年度に対し、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(3) 鉢もの類等
(生 産)
 鉢もの類の収穫面積は、伸びは鈍化しつつも堅調な需要を背景に増加傾向にあり、十一年産も引き続き需要が堅調であること等から、わずかに増加したとみられる。出荷量も、十一年産はやや増加したとみられる。
 十二年産は、規模拡大等により収穫面積がわずかに増加し、出荷量もわずかに増加すると見込まれる。
 球根類の収穫面積は減少傾向にあり、十一年産も引き続きやや減少したとみられ、出荷量もわずかに減少したとみられる。十二年産は、生産農家の規模縮小等により、収穫面積、出荷量ともにわずかに減少すると見込まれる。
 花壇用苗もの類の作付面積は、家庭用需要の増加等により増加傾向にあり、十一年産はかなり大きく増加したとみられる。出荷量もかなり大きく増加したとみられる。十二年産は、需要の増大を背景に作付面積、出荷量ともにかなり大きく増加すると見込まれる。
(価 格)
 鉢もの類の卸売価格は、入荷量の増加や小鉢化等により下落傾向にあり、十一年度もやや下回った。十二年度は、入荷量がわずかに増加し、小鉢化も進むとみられること等から、やや下回ると見込まれる。
 また、花壇用苗もの類の卸売価格は、入荷量が増加しているものの、需要が堅調であること等からほぼ横ばいとなっており、十一年度は年明けに下落したことからやや下回った。十二年度は、需要が引き続き堅調であるとみられるものの、入荷量がかなり大きく増加するとみられることから、卸売価格はわずかに下回ると見込まれる。

6 畜産物

(1) 食 肉
(消 費)
 食肉全体の一人一年当たり消費量は、八年度、九年度とわずかに減少したが、十年度以降は前年度をわずかに上回り、十一年度は一・三%増の二十八・〇キログラムとなった。
 十二年度の食肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、家計消費は前年度並みないしわずかに減少すると見込まれ、加工・外食等消費は調理食品等に対する需要が堅調であること、安価な輸入食肉調製品の供給増が継続するとみられること等により、わずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 食肉全体の国内生産量は、九年度は豚肉の増加により〇・二%の増加となったが、十年度以降は前年度をわずかに下回り、十一年度は一・〇%減の三百万四千トンとなった。
 十二年度の食肉の国内生産量は、わずかに減少すると見込まれる。このうち、二割弱を占める牛肉がわずかに増加すると見込まれるものの、四割前後を占める豚肉、鶏肉はともにわずかに減少すると見込まれる。
 また、食肉全体の輸入量は、九年度は豚肉が大幅な減少となったこと等から七・六%の減少となったが、十年度以降は、消費量が増加に転じるなか国内生産量が減少していることから増加し、十一年度は九・二%増の二百五十七万七千トンとなった。
 十二年度の食肉の輸入量は、消費量の増加や国内生産量の減少から、わずかに増加すると見込まれる。このうち、四割強を占める牛肉がわずかに増加し、三割強を占める豚肉がほぼ前年度並み、三割弱を占める鶏肉がやや増加すると見込まれる。

(2) 牛 肉
(消 費)
 牛肉の一人一年当たり消費量は、九年度、十年度と加工・外食等消費の伸びに支えられて増加したが、十一年度は加工・外食等消費の伸び率が鈍化したこと等から、〇・二%増の七・三キログラムとなった。
 十二年度の牛肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、家計消費はほぼ前年度並みになると見込まれ、加工・外食等消費はわずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 成牛枝肉生産量は、七年度から九年度まで減少したが、十年度以降は乳用種の増加等から前年度をわずかに上回り、十一年度は二・七%増の五十四万三千七百トン(部分肉ベース:三十八万六百トン)となった。
 十二年度の成牛枝肉生産量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、肉用種はほぼ前年度並みになると見込まれ、乳用種はわずかに増加すると見込まれる。
 また、牛肉の輸入量は、九年度、十年度と増加したが、十一年度は加工・外食等消費の伸び率が鈍化したことに加え、国内生産量の増加幅が拡大したこと等から、〇・一%増の六十八万二千六百トンとなった。
 十二年度の牛肉の輸入量は、消費量、国内生産量ともにわずかに増加すると見込まれることから、わずかに増加すると見込まれる。このうち、冷蔵品はわずかに減少すると見込まれ、冷凍品はやや増加すると見込まれる。
 なお、牛肉の在庫量は、十二年三月末で一〇・二%増の九万三千三百トンとなった。
(価 格)
 牛枝肉卸売価格(省令規格)は、八年度、九年度と前年度を上回ったが、十年度以降は前年度を下回り、十一年度は二・九%安の一千五十八円/キログラムとなった。
 十二年度の牛枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量、国内生産量ともにわずかに増加すると見込まれること等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(3) 豚 肉
(消 費)
 豚肉の一人一年当たり消費量は、十・三〜十・四キログラムの範囲で増減を繰り返していたが、十年度以降は家計消費、加工・外食等消費ともに前年度をわずかに上回り、十一年度は二・〇%増の十・六キログラムとなった。
 十二年度の豚肉の消費量は、家計消費、加工・外食等消費ともにほぼ前年度並みになると見込まれることから、全体でもほぼ前年度並みになると見込まれる。
(供 給)
 豚枝肉生産量は、九年度、十年度とわずかに増加したが、十一年度は一・三%減の百二十七万五千トン(部分肉ベース:八十九万二千三百トン)となった。
 十二年度の豚枝肉生産量は、最近の子取り用めす豚の飼養動向等からみて、わずかに減少すると見込まれる。
 また、豚肉の輸入量は、九年度は、台湾産の輸入禁止等から大幅に減少したが、十年度以降は消費量が増加する一方、国内生産量が伸び悩んでいること等から前年度を上回り、十一年度は一九・六%増の六十五万二千九百トンとなった。
 十二年度の豚肉の輸入量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。このうち、冷蔵品は国内生産量の減少等からかなり増加すると見込まれ、冷凍品は期首在庫の増加により、わずかに減少すると見込まれる。
 なお、豚肉の在庫量は、十二年三月末で四四・六%増の十一万二百トンとなった。
(価 格)
 豚枝肉卸売価格(省令規格)は、冷蔵品輸入が増加していることや、輸入先における原産地価格が低水準であること等から、十年度以降は前年度を下回り、十一年度は調整保管の実施もあって一・五%安の四百四十八円/キログラムにとどまった。
 十二年度の豚枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量がほぼ前年度並みになると見込まれ、国内生産量がわずかに減少すると見込まれるものの、安価な輸入品の出回りや冷蔵品の増加等から、わずかに下回ると見込まれる。

(4) 鶏 肉
(消 費)
 鶏肉の一人一年当たり消費量は、九年度から十年度にかけては景気動向等の影響により、家計消費、加工・外食等消費ともに前年度をわずかに下回ったが、十一年度は一・三%増の十・〇キログラムとなった。
 十二年度の鶏肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、家計消費はほぼ前年度並みになると見込まれ、加工・外食等消費は安価な輸入鶏肉調製品の供給増等から、わずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 鶏肉の生産量は、飼養戸数の減少を背景に減少傾向となっており、十一年度は東日本における猛暑の影響等もあって、二・二%減の百十八万五千トンとなった。
 十二年度の鶏肉の生産量は、主要生産地域における飼養羽数の減少や国産鶏肉の需要減退等を背景に、ひな導入が減少傾向にあること等から、わずかに減少すると見込まれる。
 また、鶏肉の輸入量(調製品等を含む)は、九年度はかなりの程度の減少となったが、十年度以降は前年度を上回っており、十一年度は一〇・〇%増の六十五万トンとなった。
 十二年度の鶏肉の輸入量は、消費量がわずかに増加すると見込まれるなか、約七割を占める国内生産量がわずかに減少すると見込まれることから、やや増加すると見込まれる。
 なお、鶏肉の在庫量は、十二年三月末で六・八%増の九万六千五百トンとなった。
(価 格)
 十一年度のブロイラーの正肉卸売価格(東京)は、国内生産の減少幅が拡大するなかで、「もも肉」は八月以降の家計消費の低迷や中国産冷蔵品の輸入動向等から低下し三・八%安の五百九十一円/キログラムとなり、「むね肉」は安価な輸入品との競合等から一五・九%安の二百二十一円/キログラムとなった。
 十二年度のブロイラーの正肉卸売価格は、「もも肉」は家計消費がほぼ前年度並みになると見込まれるなか、国内生産量がわずかに減少すると見込まれるものの、安価な輸入品の出回りによる下落要因も潜在すると見込まれることから、やや下回ると見込まれる。一方、「むね肉」は安価な輸入鶏肉や輸入調製品との競合等から、かなり下回ると見込まれる。

(5) 牛乳・乳製品
(消 費)
 牛乳・乳製品の一人一年当たり消費量は、九年度から十年度にかけて乳製品の伸び率が鈍化したこと等から減少したが、十一年度は〇・八%増の九十三・〇キログラムとなった。このうち、飲用牛乳等は一・九%減の三十八・六キログラムとなり、乳製品は二・七%増の五十四・三キログラムとなった。
 十二年度の牛乳・乳製品の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、飲用牛乳等は最近の動向等からわずかに減少し、乳製品はチーズ等の需要増加によりわずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 生乳生産量は、都府県が減少傾向にあること等から九年度以降前年度を下回っており、十一年度は、北海道が〇・八%の増加となり、都府県が一・三%の減少となったことから、全国では〇・四%減の八百五十一万四千トンとなった。十一年度の用途別処理量は、飲用牛乳等向けは一・七%の減少となり、乳製品向けは一・六%の増加となった。
 十二年度の生乳生産量は、前年度並みの計画生産が設定されていること等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。用途別処理量は、飲用牛乳等向けはわずかに減少、乳製品向けはわずかに増加すると見込まれる。
 また、十一年度の乳製品の輸入量は、ナチュラルチーズ等が増加していること等から、五・〇%増の三百六十八万三千トンとなった。
 十二年度の乳製品の輸入量は、乳製品の消費量、国内生産の乳製品向け処理量ともにわずかに増加すると見込まれることから、わずかに増加すると見込まれる。
 なお、乳製品の在庫量は、十二年三月末で、脱脂粉乳が五・二%減の四万四千六百トン、バターが一九・五%増の三万八千二百トンとなった。
(価 格)
 十一年度の生乳の生産者価格(総合乳価、全国)は、加工原料乳処理比率が低下したものの、加工原料乳に対する奨励金が見直されたこと等から、〇・六%安の八十二・二円/キログラムとなった。
 十二年度の生乳の生産者価格(総合乳価、全国)は、飲用牛乳等向け乳価の交渉結果いかんによるが、飲用牛乳等向け処理量の割合が低下すると見込まれること、加工原料乳保証価格の一部が別途対策に転換されたこと等から、わずかに下回ると見込まれる。

(6) 鶏 卵
(消 費)
 鶏卵の一人一年当たりの消費量は、家計消費の減少等から九年度から十年度にかけて減少し、十一年度は〇・一%減の十七・三キログラムとなった。このうち、家計消費は〇・九%減の九・一キログラムとなり、加工・外食等消費は〇・八%増の八・二キログラムとなった。
 十二年度の鶏卵の消費量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。このうち、家計消費はわずかに減少すると見込まれ、加工・外食等消費はわずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 鶏卵の生産量は、九年十二月以降の卵価低迷等により十年度は一・六%減の二百五十三万三千トンとなり、十一年度は最近の卵価上昇による生産意欲の回復等から減少幅は縮小し、〇・五%減の二百五十二万二百トンとなった。
 十二年度の鶏卵の生産量は、最近のひなえ付け羽数の動向や成鶏の採卵供用期間の短縮が見込まれること等からみて、前年度並み、ないしわずかに増加すると見込まれる。
 また、鶏卵(卵黄液、卵白粉等)の輸入量は、十一年度は、円高傾向にあったこと、低迷していた国産鶏卵の卸売価格が回復したこと等から一四・九%増の十一万九千百トンとなった。
 十二年度の鶏卵の輸入量は、国産鶏卵の卸売価格は前年度を下回ると見込まれるものの、加工向けを中心に輸入品の需要が増加すると見込まれること等から、増加すると見込まれる。
(価 格)
 鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、九年十二月以降下落したが、十一年度は国内生産量が引き続き減少傾向にあること、需要に回復のきざしもみられること等から上昇に転じ、一七・四%高の二百円/キログラムとなった。
 十二年度の鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、消費量はほぼ前年度並みになると見込まれるものの、需要の回復は主として加工向けとなる輸入品需要の増加によるものと見込まれ、国産鶏卵の需要は、家計消費、加工・外食等消費ともに低迷すると見込まれること、国内生産量が前年度を上回る水準まで回復すると見込まれること等から、わずか、ないしやや下回ると見込まれる。

第3 農業資材

1 農業資材の動向

(需 要)
 農業経営における農業生産資材購入額(実質)の推移をみると、七年以降横ばい、ないしわずかな減少傾向にあり、十一年は一・二%減少した。
 〈農業生産要素〉
 十一年一月一日現在の全国販売農家戸数は一・九%減少し二百四十七万五千戸となった。
 十年の作付延べ面積は、米の生産調整面積の増加による水稲作付面積の減少等からわずかに減少したと見込まれる。
 水稲作サービス事業体の事業体数は二・三%増加して一万三千百二十事業体となった。
 十一年の作付延べ面積は麦は増加したものの、稲作、豆類の減少からわずかに減少したとみられる。
 十二年度の農業資材の需要は、農業生産資材価格の上昇はあるものの、農産物生産者価格の上昇から、交易条件は改善されるとみられ農業経営は好転するとみられること等、増加要因はあるものの、引き続き、販売農家の減少や経営面積等の集約は進むとみられること等から前年並み、ないしわずかに減少すると見込まれる。
(供 給)(第6図参照
 十一年度の農業資材の供給は、全体でほぼ前年度並みになったとみられる。
 個別資材別にみると、以下のとおりである。
 十一年度の農業機械の実質国内向け出荷額は、国内需要の回復からトラクターを中心に五・四%増加した。
 十一肥料年度(十一年七月〜十二年六月)のうち十一年七月〜十二年一月の化学肥料(窒素、りん酸、加里の三成分換算合計)の国内向け出荷量は、前年同期が天候不順の影響から野菜の追肥需要が減少していたこと等もあり九・四%増加している。なお、十一肥料年度のうち十一年七月〜十二年三月の製品出荷ベースでみると、わずかに減少しているとみられる。
 十一農薬年度(十年十月〜十一年九月)は稲作でカメムシの発生が全国的にみられたが、葉いもち病、ウンカについての発生が少なかったことから、農薬の出荷量はかなりの程度、出荷額はわずかに減少したとみられる。
 十一年度の飼料の供給量(可消化養分総量(TDN)ベース)は、濃厚飼料が〇・六%の減少となり、粗飼料が二・二%の減少となったことから、全体では一・〇%の減少となったとみられる。
 十一年度の諸材料の供給量は、農業用フィルムが前年度同、青果物用段ボール箱がほぼ前年同期並みとなった。
 十一年度(四〜二月)の農林業向け石油製品(灯油、重油、軽油、家庭用を含む。)の販売量は、一一・四%減少している。
 十二年度の農業資材の供給(出荷)は、需要が前年度並み、ないしわずかに減少すると見込まれることから、前年度並み、ないしわずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 農業生産資材の農家購入価格は、十年度以降下落しており、十一年度は一・五%下落した。
 また、十一年度の下落を個別資材ごとに要因分解をすると、主に飼料の下落が寄与している。
 資材別に十一年度の動向をみると、農機具、肥料はそれぞれ前年度同、光熱動力は原油等の輸入価格の上昇等から一・〇%上昇した。農業薬剤は七年連続でメーカー出荷価格が引き下げられ〇・五%、飼料は八・六%、諸材料は〇・九%、それぞれ下落した。
 十二年度の農業生産資材の農家購入価格は、肥料、農薬がわずかに下落すると見込まれるものの、光熱動力がかなり、諸材料がわずかに上昇すると見込まれることから、全体では前年度並み、ないしわずかに上昇すると見込まれる。

2 個別資材

(1) 農業機械
(需 要)
 全国販売農家一戸当たりの大農具・農業用自動車(以下、農機具とする。)購入金額(名目)をみると、近年は、農外所得が横ばいで推移していること等から、おおむね前年の農業所得等の増減と連動した動きを示しており、八年以降減少している。十年は、前年の農業所得の大幅な減少に加え、水稲作付面積の減少が稲作関連機械の投資を抑制したとみられること等から一二・六%下落した。十一年は、前年に野菜収入が増加したことや、前年後半から本年前半まで米の価格が回復し、稲作収入が増加してきたこと等から三・九%増加している。
 次に実質化して動向をみると、十年は一三・三%下落し、十一年は三・九%増加した。
 十二年度の農業機械の需要は、生産努力目標の設定等今後の農政の基本方向が定まったことや、麦・大豆の生産対策の推進、中山間地域直接支払いの導入等により、農家の投資意欲が増加するとみられることや、農業労働の外部化、集約化等から農家以外の農業事業体や農業サービス事業体、集落営農における新規需要等もあるとみられ、全体ではわずかに増加すると見込まれる。
 十二年の全国販売農家の一戸当たりの大農具・農業用自動車の購入額(実質)は、農家の投資意欲の増加要因はあるものの、十一年の農業所得が減少したこと等から、前年並み、ないしわずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 農業機械の生産額(輸出分を含む。)は、七年度をピークに国内需要の減少から減少傾向にあり、十年度は、一九・〇%減少した。十一年度は、国内需要の回復と輸出の増加により一七・〇%増加した。
 国産農業機械の出荷額(輸出分を含む。)は、六〜八年度は堅調に推移したが、稲作経営をめぐる環境の悪化から、九年度以降減少傾向にあり、十年度は一〇・三%減少した。十一年度は、輸出の増加や国内需要の回復からトラクターを中心に六・〇%増加した。輸出額は、八年度以降、米国の好景気等から増加しており、十年度は引き続き二・九%増加し一千三百九十八億円となった。十一年度は一〇・五%増加し一千五百四十四億円となった。輸入額は、九年度以降、国内農業機械需要の減少から減少傾向にあり、十年度は二二・八%と大幅に減少し二百三十二億円となった。十一年度は八月以降増加に転じる月もみられたが、全体を通しては三・三%減少し二百二十四億円となった。出荷額及び輸出入額から国内向出荷額を推計すると、十年度は一五・一%減少し、十一年度は三・八%増加した。また、実質国内向出荷額は五・四%増加した。
 十二年度の農業機械の国内向出荷額は、農業全体の需要の動向を反映し、わずかに増加すると見込まれる。
(価 格)
 メーカー出荷価格は、六〜十二年まで、七年連続して据え置かれた。
 農家の購入価格は、十年度が〇・三%、十一年度が前年同期同と、ほぼ前年度並みで推移している。なお、シンプル農機の出荷割合が十年度はトラクター、コンバイン、田植機の機種によって異なるが三〜五割と増えており、農家にとっては実質的な価格引下げの効果が期待できる。
 十二年度の農機具の農家購入価格は、厳しい農業情勢を反映し、十二年のメーカー出荷価格が据え置かれたこと等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。

(2) 肥 料
(需 要)
 全国販売農家一戸当たりの肥料購入額(名目)をみると、販売農家の平均規模が上昇していること等から増加傾向で推移しているものの、肥料購入額(実質)をみると、七年以降、農業収支の悪化や稲作等の単位面積当たりの投入量の減少傾向等から減少傾向にある。十一年は一・〇%減少した。しかし、最近の肥料費低減等による減少傾向から、有機肥料や、有機入り化学肥料等の機能性のある肥料の投入へと変化している影響があるとみられ、減少幅は小さくなっている。
 十二年度の肥料の需要は、米の単位面積当たりの肥料投入量が減少するとみられること等から、わずかに減少すると見込まれる。
 十二年の全国販売農家一戸当たりの肥料購入額(実質)は、販売農家の平均規模が上昇するとみられることから、わずか、ないしやや増加すると見込まれる。
(供 給)
 化学肥料(窒素、りん酸、加里の三成分換算合計)の国内向出荷量(工業用内需を除く。)は、作付延べ面積の減少や、稲作等の単位面積当たり肥料投入量の減少から、おおむね減少傾向で推移している。十一肥料年度のうち十一年七月〜十二年一月は、前年同期が天候不順の影響から野菜の追肥需要が減少していたこと等もあり、九・四%増加している。なお、十一肥料年度のうち十一年七月〜十二年三月の製品出荷ベースをみると、わずかに減少しているとみられる。
 十一肥料年度(十一年七月〜十二年六月)の化学肥料の国内向け出荷量は、需要の減少等から、わずか、ないしやや減少すると見込まれる。
(価 格)
 化学肥料の農家購入価格は、肥料の国内生産がオイルショック以降、急速に国内仕向けに変化していくなか肥料メーカーの合理化努力から、おおむね輸入化学肥料(原料)の価格動向を反映して推移してきた。
 世界の化学肥料の主要原材料の価格の動向をみると、中国の輸入規制措置等の影響から八年夏以降急落していた尿素は、中東市場において、原油の高騰からナフサ価格が上昇していることにより上昇している。りん安は、オーストラリア、インドで、りん酸質肥料プラントの増設が期待されたこと等から下落したものの、北米の大手りん酸質肥料生産企業各社の大幅な減産からわずかに上昇している。加里については、主要輸出国が限られており、中国、インド、ブラジル等での需要が増加しているなか、価格は堅調に推移している。輸入価格(CIF価格)についてみると、国際価格、為替相場、フレート(船賃)の動向を反映して推移しており、十一年の輸入価格は特に円高の影響により下落している。これらのことから、肥料のメーカー出荷価格は、十一年七月に、最近の円高やりん安、尿素等の国際価格の下落を反映し、四年ぶりに引き下げられた。肥料の農家購入価格は、おおむねメーカー出荷価格の動きに連動して推移しており、十年度は一・一%上昇した。十一年度は七月以降、メーカー出荷価格の下落に伴い下落傾向で推移しており、ほぼ前年同期並みとなっている。
 十二年度の化学肥料の原材料の国際価格は、尿素は、ナフサ価格が上昇していること等から、わずかに上昇するとみられる。りん安は、需要期に向けて上昇傾向にあり、前年度を下回っているものの、北米の大手りん酸質肥料生産企業による需給調整が行われていること、オーストラリア、インドの新規プラントの稼働が遅れていること等、価格の上昇要因があることから、通期ではほぼ前年度並みになるとみられる。塩化加里は、世界的な肥料需要の増大等を反映し、わずかに上昇するとみられる。
 十二年度の化学肥料の原材料の輸入価格は、国際価格が上昇基調にあるものの、為替相場が円高傾向であること等から、全体では、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
 十二年度の肥料の農家購入価格は、原材料価格がほぼ前年度並みになるとみられるものの、生産・流通の合理化等から、わずかに下落すると見込まれる。

(3) 農 薬
(需 要)
 農薬の需要は、その年々の、病害虫の発生状況や、天候等の農薬散布条件によって変化するが、作付延べ面積が減少していることや、効率的な農薬利用の推進が図られていること等により、近年は減少傾向にある。
 十一年の病害虫の発生は、水稲のいもち病に関する注意報が十一件(前年は七十七件)出されたが、五年の冷害以来、最低数となった。ウンカについての注意報は一件出された(前年二十三件)。一方、斑点米カメムシ類が全国的に多発生となり、注意報が二十件出された(前年九件)。また、十一年の作付延べ面積は、稲作(〇・七%減少)、豆類(三・二%減少)を中心に減少した。
 全国販売農家一戸当たりの農業薬剤購入額(名目)をみると、販売農家の平均規模が上昇していること等から増加傾向で推移している。十、十一年はそれぞれ〇・二%、一・一%増加した。なお、農業薬剤購入額(実質)についても増加傾向にあり、十、十一年はそれぞれ〇・二%、一・四%増加した。
 十二年度の農薬の需要は、病害虫の発生状況にもよるが、野菜畑作等への新規薬剤の普及や、水稲の箱処理剤の普及等による、需要の増加がみられるものの、効率的な農薬利用の推進等もあり、やや減少すると見込まれる。
 十二年の全国販売農家一戸当たりの農業薬剤購入額(実質)は、十一年が病害虫の発生状況が少ないにもかかわらず、前年並みで推移していること等から、大規模な病害虫の発生がなければ、今後も基幹防除を中心に、ほぼ前年並みになると見込まれる。
(供 給)
 農薬の生産・出荷動向は、年々の病害虫の発生により使用する薬剤の種類や量が変化するにつれ変動しており、六年からは、新しい剤型として、水稲用除草剤において従来の薬剤と単位面積当たりで同等の効果があり、三分の一に軽量化された一キロ粒剤や、散布機が不要でけい畔から散布ができるフロアブル剤、ジャンボ剤等の普及が進んでいる。また、育苗箱に施用する箱処理剤が定着してきており、商品種類も多くなっている。
 十一農薬年度は出荷量がかなりの程度、出荷額がわずかに減少したとみられる。十一農薬年度の出荷額を使用分野別にみると、水稲がわずかに、果樹等がやや減少し、野菜畑作がわずかに増加した。このことから、水稲の構成比は前年並みの三六%となり、野菜畑作が一ポイント増加し三二%となった。
 これを種類別にみると、殺虫剤は野菜畑作でハスモンヨトウ等の発生により増加したものの、稲作では、主に箱処理剤において、殺虫殺菌処理できる混合剤の普及等により殺虫剤の単剤から混合剤へ移行したこと等から殺虫剤全体ではわずかに減少した。殺菌剤は野菜畑作が土壌処理剤の増加からわずかに増加したものの、稲作では混合剤の普及等により、いもち単剤を中心に減少したこと等から殺菌剤全体ではやや減少した。混合剤は稲作の混合剤が箱処理剤の普及により大幅に増加したことから混合剤全体でも大幅に増加した。除草剤は野菜畑作がかなりの程度減少し、水稲の一発処理剤で、ジャンボ剤、フロアブル剤等の省力化に寄与する薬剤がわずかに増加したものの、近年大きく増加した一キロ粒剤が減少したことによりわずかに減少したことから、全体ではやや減少した。
 十二年度の農薬の出荷額は需要の減少から、やや減少すると見込まれる。
(価 格)
 農薬のメーカー出荷価格は、六年以降、前年を下回って推移した。十一農薬価格年度、十二農薬価格年度は、それぞれ、〇・三%下落してほぼ前年並みとなった。
 農薬の農家購入価格は、メーカー出荷価格の動向を反映し、六年以降は横ばい、ないしわずかに下落した。十年度は〇・四%下落した。十一年度は、メーカー出荷価格の下落等から、〇・五%下落している。また、農薬種類別にみると、殺虫剤、除草剤、殺菌剤が、それぞれ、〇・一%、〇・五%、〇・九%下落している。
 十二年度の農薬の農家購入価格は、需要が減少するなかで、十二農薬価格年度(十一年十二月〜十二年十一月)のメーカー出荷価格がほぼ前年同期並みになったことから、前年度並み、ないしわずかに下落すると見込まれる。

(4) 飼 料
(需 要)
 飼料の需要量(TDNベース)は、家畜の飼養動向等を反映し、わずかな減少傾向で推移しており、十一年度は、全ての畜種で総じて減少したとみられること等から、全体では一・〇%減の二千五百九十一万四千トンとなった。
 十二年度の飼料の需要量は、肉用牛や豚ではほぼ前年度並みになると見込まれるものの、乳用牛や採卵鶏ではわずかに減少すると見込まれること等から、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 十一年度の配合・混合飼料の生産量は、養豚用や肉用牛用で減少したこと等から、〇・五%減の二千四百三十九万トンとなった。飼料作物の収穫量は、十一年は、天候要因等の影響もあり、二・七%減の三千八百三万二千トン(生草収量ベース)となったとみられる。
 十二年度の配合・混合飼料の生産量は、肉用牛用や養豚用がほぼ前年度並みになると見込まれるものの、他の畜種用は減少するとみられることから、全体ではわずかに減少すると見込まれる。飼料作物の収穫量は、作付面積がわずかに増加し、単収がやや上昇するとみられることから、かなりの程度増加すると見込まれる。
 また、粗飼料の輸入量(TDNベース)は、十年度は一・〇%の増加となったが、十一年度は二・一%減の百二十二万九千トンとなったとみられる。
 十二年度の粗飼料の輸入量は、国内生産の増加等から、わずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 十一年度の配合飼料の農家購入価格は、飼料穀物の国際価格が下落傾向にあったこと、為替相場が円高傾向にあったこと等から八・八%下回った。
 十二年度の配合飼料の農家購入価格は、飼料穀物の国際相場は低水準にあるものの、最近では強含みで推移していること等の動向もあり、相場がこの水準で推移すれば上回る可能性も否定できない状況にある。

(5) 諸材料
(需 要)
 全国販売農家一戸当たりの諸材料購入額(実質)をみると、八年以降、米の生産量の減少による穀物用袋の減少や農業用フィルム需要の減少により、減少傾向で推移した。十一年は、三・五%減少した。
 十二年度の諸材料の需要は、農業用フィルムが長期耐用性フィルムの普及や露地野菜のマルチ栽培等の減少傾向からわずかに減少すると見込まれ、青果物用段ボール箱が、花きや夏秋野菜が増加すると見込まれるものの、春野菜、秋冬野菜がそれぞれ減少すると見込まれることから、わずかに減少すると見込まれ、全体ではわずかに減少すると見込まれる。
 十二年の全国販売農家一戸当たりの諸材料の購入額(実質)は、需要と同様にわずかに減少すると見込まれる。
(供 給)
 露地野菜のマルチ栽培やパイプハウスの被覆用資材として用いられる農業用フィルム(ビニール、ポリエチレン等)の出荷量は、園芸用ハウスの設置面積は増加しているものの、露地野菜作付面積やトンネル栽培面積の減少や、従来一〜三年程度で張り替えが必要であったハウスの被覆用のビニールが、五年以上の長期の展張が可能な長期耐用フィルムへと転換が進んでいるとみられること等から減少傾向にある。十一年度は前年度同となった。なお、生産調整もあり、在庫量がおおむね前年同期を下回る水準で推移した。
  青果物用段ボール箱の需要量は、青果物及び切り花の生産量の変動に左右される。この動向を、一貫生産メーカーの次行程投入部門別内訳(青果物)でみると、十一年度は夏秋野菜の収穫量がわずかに減少したことから七〜九月は前年を下回ったものの、果実の収穫量が増加したため、全体ではほぼ前年同期並みの十一億九千八百万平方メートルとなった。
 十二年度の諸材料の供給は、需要の減少から、わずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 農業用ビニール、農業用ポリエチレンの農家購入価格は、需要が減少するなか、消費税率引上げによる影響を除けば、八年度以降、原料の上昇はあるものの、ほぼ前年度並みで推移した。十年度は農業用ビニールが〇・二%、農業用ポリエチレンが〇・一%上昇した。十一年度は、国内の低密度ポリエチレン卸売価格が横ばいで推移していること等から、農業用ビニール、農業用ポリエチレンが、それぞれ、〇・一%、〇・四%下落し、ほぼ前年同期並みとなった。
 青果物用段ボール箱の農家購入価格は、消費税率の引上げによる影響を除けば、段ボール全体の市況の悪化から下落しており、十年度は、一・七%下落した。十一年度は前年末に中芯原紙、四〜六月にライナー等の段ボール原紙の卸売価格が上昇したものの、段ボール箱卸売価格は上昇していないこと等から、一・八%下落した。これらのことから、十一年度の諸材料全体の農家購入価格は、〇・九%下落した。
 十二年度の農業用フィルムのメーカー出荷価格は、為替相場が円高傾向にあるものの、原油価格の上昇からアジアのプラスチック相場が上昇しており、その影響により、国内の素材価格も上昇するとみられること等により、わずかに上昇すると見込まれる。青果物用段ボール箱のメーカー出荷価格は、段ボール原紙等の価格が上昇していること等から、わずかに上昇すると見込まれる。これらのことから、諸材料の農家購入価格は、わずかに上昇すると見込まれる。

(6) 光熱動力
(需 要)
 全国販売農家一戸当たりの光熱動力の購入額(実質)は、冷害のあった五年を除き増加傾向で推移している。十年は三年連続して暖冬であったこともあり、〇・二%増のほぼ前年並みとなった。十一年は農業生産が堅調なことから三・五%増加した。
 十二年度の光熱動力の需要は農家戸数の減少等から、わずかに減少すると見込まれる。
 十二年の全国販売農家一戸当たりの光熱動力の購入額(実質)は、農業機械等の利用増加に伴う新たな需要や販売農家では平均規模の拡大が進んでいることから、わずかに増加すると見込まれる。
(供 給)
 農林業向け石油製品(灯油、重油、軽油、家庭用を含む。)の販売量をみると、八年度以降減少傾向にあり、十年度は暖冬や、農家戸数、農家の家計需要、農業関連施設需要の減少等から七・五%減少した。十一年度(四〜二月)は一一・四%減少している。製品別にみると、灯油、軽油、重油はそれぞれ、七・八%、一四・七%、一二・七%減少している。
 十二年度の光熱動力の供給は、需要の減少から、わずかに減少すると見込まれる。
(価 格)
 原油の輸入価格(CIF)を月別でみると、原油の国際価格の下落や十年秋以降の円高から下落していたが、十一年に入り五月以降は大きく上昇し、十一年度は円高の影響はあるものの、前年同期に対して四〇・七%上昇している。
 十二年度の国際原油価格は十二年三月末のOPEC総会以降、下落に転じているものの、全体として堅調な需要に支えられ、十二年四月以降の下落は一定の範囲内に収まり、その後は安定的に推移するとみられる。
 十二年度の原油輸入価格は、三月にOPECが増産を決定したことから、今後は下落傾向で推移するとみられるものの、前年度は年末にかけて大幅に上昇しているため、十二年末までは前年同期を上回って推移するものとみられ、通期ではかなり上昇すると見込まれる。
 十二年度の光熱動力の農家購入価格は、原油輸入価格を対前月でみれば下落傾向で推移するとみられるものの、製品市況の回復のため、原油精製の減産は引き続き行われるものとみられること、ガソリンの輸入は品質等の問題や、大幅に増加しても供給に占める割合が小さいことから価格に与える影響はあまり見込めないこと、国内のガソリン販売は、強力なブランド販売であること等から、当面ガソリンの国内価格は上昇するとみられる。また、灯油は輸入価格が卸売価格を上回っていることから、不需要期に入るものの、減産の影響から上昇するとみられる。A重油の国内価格については、輸入A重油との競合から原油輸入価格の動向が反映されるとみられる。このような動向から、また、十一年度前半は低い水準で推移してきたこと等から、全体では原油輸入価格の上昇に対応し、かなり上昇すると見込まれる。








言葉の履歴書


被災者生活再建支援法

 阪神・淡路大震災を契機として、平成十年十一月六日、「被災者生活再建支援法」が施行されました。九月は一年の内でも、台風が多く上陸する月。また、日本は地震国でもあります。この時期に、改めて本法律についてみてみましょう。
 この法律は、自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた世帯を対象に、自立した生活の開始を支援するための被災者生活再建支援金を支給することを目的としています。自然災害とは、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、その他の異常な自然現象により生ずる被害のことを指します。支給上限額は、自然災害により居住する住宅が全壊、あるいは同等の被害を受けた、年収が五百万円以下の世帯には百万円、年収が五百万円を超え七百万円以下である世帯で、世帯主が四十五歳以上または(*)要援護世帯、年収が七百万円を超え八百万円以下である世帯で、世帯主が六十歳以上または要援護世帯には、五十万円などとなっています。
 *心神喪失・重度知的障害者、一級の精神障害者、一、二級の身体障害者などを構成員に含む世帯。
(『広報通信』平成十二年九月号)



    <9月13日号の主な予定>

 ▽環境白書のあらまし……………………環 境 庁 

 ▽景気予測調査(五月調査)……………大 蔵 省 

 ▽消費者物価指数の動向(六月)………総 務 庁 




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