官報資料版 平成12年9月13日




                  ▽環境白書のあらまし………………………………………………環 境 庁

                  ▽景気予測調査(五月調査)………………………………………大 蔵 省

                  ▽消費者物価指数の動向(東京都区部六月中旬速報値)………総 務 庁











環境白書のあらまし


―平成11年度 環境の状況に関する年次報告―


環 境 庁


 平成十二年度版環境白書(「平成十一年度環境の状況に関する年次報告」及び「平成十二年度において講じようとする環境の保全に関する施策」)が、五月三十日の閣議で決定の後、国会に提出され、公表された。
 第一部・総説のあらましは、次のとおりである。

〈序 章〉 二十一世紀の人類社会が直面する地球環境問題

第1節 地球環境にとっての二〇〇〇年の意味

1 地球環境のマクロ的変貌と将来予測
 二十世紀において私たち人類は、活動規模と影響力を拡大させながら、地球環境を利用することで、今日の繁栄を築いてきた。その結果、地球環境が著しく劣化するという結果を招いた。二十世紀における地球環境や資源に関する変化の様子は、人類社会がこのままでは存続できないこと、現状を放置していては崩壊を回避できない時期に近づいていることを物語っている。

2 地球環境の劣化に歯止めをかけるべき転換期
 人類社会の明るい未来は、地球環境を消耗することと引き替えに物質的繁栄を追求してきた現代文明の延長線上には見つからない。二十一世紀において、人類とりわけ先進工業国に住む私たちは、豊かさを拡大しつつも資源の消耗や環境への負荷が増大しない、環境効率性の高い経済社会への構造転換を図らなければならない(第1図参照)。

第2節 人類社会が健全に存続することのできる「環境の世紀」の実現に向けて

1 人類社会の存続という観点から考察する「環境の世紀」の意義
 私たちは、二十一世紀が“環境”を人類の味方にして持続的発展を可能にする「環境の世紀」となるように努めなければならない。例えばわが国の物質収支の現状を見ても、依然として資源採取から消費、廃棄へと向かう一方通行が主流となっており、今後は「循環型社会」に向けた飛躍的な進展が求められる(第2図参照)。

2 二十一世紀の持続的発展に向けた日本の挑戦
 二十一世紀において、私たち人類社会が持続的発展への明るい展望を拓くためには、人類全体の努力が必要であり、とりわけ日本が率先して国際社会をリードすることが求められている。二十一世紀を「環境の世紀」とするため、行政、国民、事業者等、それぞれの活動主体が足元からの変革を着実に進めていかなければならない。

第1章 環境の世紀に向けた世界の潮流と日本の政策展開

第1節 地球規模での社会の変化と環境保全のための取組の方向

 地球上に人類が現れたのは、地球の歴史の中ではごく最近であるが、産業革命以降の社会経済活動は地球環境に深刻な影響を及ぼしている。しかし、日常生活の中で認識されるほど急激なものではなかったため、顕在化しないまま進行し、近年の科学技術の進歩や情報化の進展などによって、初めて人々の目に触れることとなった。

1 地球規模での環境問題の深刻化と認識の深まり
(1) 地球温暖化
 地球温暖化は、気候の変動に伴う極地域の氷の融解による海面の上昇、生態系の破壊、食料危機、災害の増加や健康への影響など、様々な影響をもたらす。
 温室効果ガスの排出量については、一九九七年(平成九年)十二月、気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)において、二〇〇八年から二〇一二年までの間の削減目標を定めた「京都議定書」が採択された。この議定書の実施に必要となる京都メカニズムのルール等について、二〇〇〇年十一月のCOP6で合意すべく準備作業の強化をCOP5で確認している。
(2) オゾン層の保護対策の徹底
 オゾン層は、現代の生活で広く使われたフロンを始めとする物質による破壊が進行しており、皮膚ガンや白内障など人の健康に影響を及ぼすおそれがある。このため、先進国、途上国いずれの側においても保護対策の徹底が求められる。
(3) 酸性雨の原因解明と国際的な取組が重要
 酸性雨は、石炭、石油などの化石燃料の燃焼が主な原因と考えられており、北米、ヨーロッパ、中国を始め多くの地域で観測されている。原因解明と国際的な取組が重要である。
(4) 生物多様性の減少への対応
 種の絶滅の主な原因として、種の移入、生息・生育地の減少、狩猟と意図的な根絶等が考えられる。また、装飾品やペット、医薬品としての需要もあって、密輸も行われており、ワシントン条約などの遵守が必要である。
(5) 有害廃棄物の輸出規制
 有害廃棄物の越境移動は、一九八〇年代後半に、アフリカや南米諸国に急速に広がり始めた。わが国でも、平成十一年にフィリピンへの廃棄物違法輸出事件が発生した。有害廃棄物については、輸出を行う際、輸出国が事前に通報し、同意を受けることを義務付けた「有害廃棄物の越境移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」に基づいた、一層の取組強化が必要である。
(6) 残留性有機汚染物質の拡散防止
 DDTやPCB、ダイオキシンなどの残留性有機汚染物質は、排出国のみならず様々な要因で地球全体に広がり、人や環境に影響を及ぼすことから、その根絶、低減等を図るため国際条約などの策定が求められる。
(7) 環境への認識の深まりと環境保全行動
 世界の科学者、経済学者などからなるローマクラブの「成長の限界」や、アメリカの「西暦二〇〇〇年の地球」により、「地球環境問題」という認識が確立した。また、一九七二年の国連人間環境会議や、一九九二年の地球サミットの開催につながり、民間団体レベルでも世界的な環境保全活動が行われるようになった。

2 地球規模での経済活動の拡大が及ぼす環境への影響
(1) 貿易の拡大による環境への影響
 貿易の拡大と経済の発展による環境への影響が懸念されている。また、環境政策が自由貿易に歪みを与え得ると指摘されており、経済協力開発機構(OECD)や世界貿易機関(WTO)などにおいて、持続可能な開発のため、貿易政策と環境政策を相互に支え合うものとすること(相互支持化)について検討されている。
(2) 国際的な企業活動による環境への影響
 国際的に活動する企業である多国籍企業は、自らの活動が地球規模で環境に影響を与え得ることを認識し、バルディーズ原則のような企業責任の考え方を一層発展させていく必要がある。
(3) 人の長距離移動による環境への影響
 貿易の自由化や企業の多国籍化によって物の移動が増加するとともに、人の移動の増加も招いている。
 運輸部門の輸送機関別の二酸化炭素排出量は、自動車が八八%を占めている。また、二酸化炭素排出原単位(一人を一キロメートル運ぶ際の二酸化炭素排出量)でも自家用乗用車、次いで航空の順で大きくなっている。二酸化炭素の排出量の抑制を図るためには、排出量や排出原単位が大きいものへの対策を促進する必要がある。

3 地球規模での変化に対応した環境対策の課題
(1) 地球環境問題への認識の深まりを共有した国際的な取組が必要
 地球環境問題と密接に関わっている二酸化炭素、フロン、硫黄酸化物や窒素酸化物などは、気候変動枠組条約、モントリオール議定書や長距離越境大気汚染条約を始めとした様々な国際的な取り決めに基づいて、各国が対策を進めているが、今後も取組の充実強化が必要である。
(2) 各国政府や多国籍企業は国際的な責任に応じた取組が必要
 地球環境問題は、地球の宇宙船地球号的性格が強まったという意味で究極的な環境問題であるが、その対策をめぐって、南北間あるいは世代間の公平をどう図るかが最大の問題である。地球規模の共有財という概念の下、国際社会が適切に責任を分担し合いながら保全していくことが重要である。
(3) 具体的な行動につなげるきっかけとしての情報伝達が重要
 様々な情報機器の発達により、入手できる情報は飛躍的に増えている。各国政府やマスコミは、正確でわかりやすい科学的知見に基づいた情報の提供や、環境教育の推進により、個人が具体的な行動を起こす枠組みや機会、きっかけづくりに積極的に取り組むことが必要である。

第2節 国内における社会の変化と環境への影響

 二十世紀は、わが国にとってめざましい成長の世紀であった。しかし、現在、これまでの成長を支えてきた基盤である経済社会システムが大きく変わりつつある。環境問題も少子高齢化等の人口構成の変化、情報化など技術の変化、産業構造の変化等経済社会システムの転換により、大きく影響を受けると考えられる。

1 少子高齢化及び過疎過密問題と環境影響
(1) 少子高齢化の進行が環境に与える影響とその対策への環境配慮の組み込み
 人口の減少や高齢化は、モノの需要を減らしサービスの需要を高め、環境負荷が減ると考えられるが、都市の人口規模の縮小に伴い、郊外における人口集積、非都市圏における過疎化などによる自動車依存度の高まりや、一人暮らし高齢者の増加などによる一人当たりのエネルギー消費の増大の可能性もある。
 一方、人口の減少や高齢化対策として、公共空間を十分に確保した街づくりや公共交通機関の整備、省エネルギー型住居を普及することで環境負荷の低減が図られる。例えば「歩いて暮らせる街づくり」は、歩行者専用空間と公共交通機関を組み合わせたトランジットモールなど環境対策ともなる施策である。
(2) 地域的な人口の偏りが環境に与える影響と対策への環境配慮の組み込み
 都市の過密地域における大気汚染や水質汚濁問題、廃棄物問題、焼却施設の整備、最終処分場の確保等、また、過疎地域における農林水産業従事者の減少や高齢化による森林や農地の管理不足や放棄の問題等がある。
 これらの課題に対し、過疎過密地域における都市再開発や社会資本の整備に環境配慮の観点を盛り込み、住み良い都市を構築し、活性化を図るなど、過疎過密対策と環境対策との相乗効果を高める手法が有効である。

2 情報化及び環境技術の発展と環境影響
(1) 情報技術の進展と環境への影響
 近年の情報技術の革新は、環境や資源、エネルギーに直接的、間接的に影響を与えると考えられる。例えば、在宅勤務や高度道路交通システム(ITS)による渋滞緩和などを通じたエネルギー消費の削減、環境関連情報の提供による、環境配慮型製品の購入量の増加などが期待される。
 一方、情報化により代替された時間や所得が別の経済活動に振り向けられ、環境負荷が増加する可能性がある。さらに、情報機器のエネルギー消費の増大、情報機器の廃棄物や紙等の二次廃棄物の問題もあり、適切な対応が必要である。
(2) 環境技術の発展の方向性
 環境技術の発展に伴い、より効果的な環境対策が増えている。長期的には、生産コストの削減や生産の効率化により、産業などの競争力が向上し、ひいては、国際市場をリードし、国際社会に貢献する大きな要素となる。今後の環境技術開発に当たっては、@総合的な観点からの技術開発、A評価手法の開発、結果の公表、B技術に関する情報基盤の整備、C技術開発基盤の整備等が求められる。

3 産業構造の変化と環境影響
(1) 産業構造の変化が環境に与える影響
 わが国の産業構造は、第一次、第二次産業が縮小し第三次産業が拡大してきた。第三次産業化はモノの消費からサービスの消費へと環境負荷を低減させる。
 第三次産業における環境対策は、業態が多様なため対策が難しく、環境に関する目的・目標の設定等に取り組む企業の割合も相対的に低くなっている。
(2) 今後のエコビジネスの可能性
 現在、公害防止、廃棄物処理、リサイクル、再生可能エネルギーの利用、自然保護等の様々なエコビジネス(環境関連産業)の成長が見られ、わが国のエコビジネスの市場規模は、二〇一〇年時点で三十九兆八千億円になると見込まれている。
 エコビジネスには、環境悪化に対する社会的費用の節約と新たな付加価値の創造が同時に可能となるという利点や、環境保全型の製造工程などの環境技術を開発することにより、企業の競争力が高まるという利点がある。
 しかし、現時点では、エコビジネスの認識は十分でなく、民間事業者の創造力や活力を導きつつ自立的に発展させるため、行政の支援も必要である。具体的には、企業の環境保全に関する取組状況の開示や、客観的な評価のための環境マネジメントシステムや、環境報告書、環境会計の整備などの基盤確立などがあげられる。

第3節 環境の世紀への展望と新たな政策展開

1 新たな世紀における循環型社会の実現
 二十一世紀には、環境保全の視点を重要な構成要素にした新しい原則に基づいた社会経済活動を行うことが必要となろう。具体的には、生産、流通、消費、廃棄等の社会経済活動の全段階を通じて資源等の効率的な利用を進め、廃棄物等の発生抑制や適正処理を図る必要がある。また、国民、企業、行政等が公平な役割分担の下で連携して環境に配慮した行動をとることが必要となる。
 この結果、自然資源の過剰利用という現在の状況が修正され、少ない資源でより多くの満足が得られる環境への負荷の少ない循環型社会の形成が可能となる。

2 循環型社会の形成に向けた行政の役割
 循環型社会の形成に向けて、国民や企業の側では、多くの試みが始まっているが、行政の取組も重要である。OECDの調査によると、政府活動における環境配慮などが世界各国で進んでいる。ただし、現時点では規制や許可、補助金の構築等の政策決定に環境配慮を行っている国は、カナダやスウェーデンなどごく一部である。

3 環境配慮の組み込みに向けた行政の具体的な展開
(1) 環境政策の充実・強化
 環境政策については、予防原則を第一の基本とし、環境の状況や汚染物質の排出状況の把握、汚染の状況と環境影響の因果関係の究明等が必要である。
 さらに、環境問題の複雑な構造に鑑み、統一的な対策が必要であり、わが国の環境基本計画を始め、各国で環境政策を総合的に示す計画が定められている。
 環境政策には、規制的手法、経済的手法等、様々なものがある。これらの施策を環境問題の状況によって組み合わせて実施するポリシーミックスの認識が高まってきた。例えば現在、ヨーロッパ各国では経済的手法の利用が大きく広がっており、特に二酸化炭素の排出を削減するため、ドイツ、イタリアがエネルギーに対する税を導入した。さらにイギリスも二〇〇一年の導入を目指して法案が議会で審議中であり、フランスも同年の導入について閣議決定を行っている(第3図参照)。
(2) 他の目的の施策や事業への環境配慮の組み込み
 現在、行政の様々な意思決定に当たっては、環境への影響をあらかじめ検討することが重要であるとの認識が高まっている。こうした観点から、戦略的環境アセスメントが効果的であるとして注目されており、アメリカ、ヨーロッパ諸国で制度の導入が行われているほか、EUでも導入に向けた検討が進んでいる。
(3) 事業者としての行政の活動における環境配慮
 わが国の経済活動において、行政活動の割合が大きいため、国において平成七年六月に閣議決定された「率先実行計画」の目標達成に向け、一層の取組が必要である。地方公共団体においても、率先実行計画の策定が進んでいる。しかし、グリーン購入については、区市町村では取組の割合が低いなどの課題がある。

第2章 「持続可能な社会」の構築に向けた国民一人一人の取組

第1節 環境問題及び経済社会における個人の役割

 大気汚染問題や廃棄物問題、地球温暖化などの地球環境問題の原因は、企業側だけでなく、便利で快適な生活をしている人々の「資源・エネルギー浪費型のライフスタイル」が注目されている。
 こうした中、一九九〇年代初頭のいわゆる「バブル崩壊」とその後の不況を背景に、個人が様々な活動に積極的に取り組むことが、特に環境問題について求められている。具体的には、個人の環境保全活動のみならず、企業に対する消費者の立場から積極的に働きかけ、環境保全への取組を促すことなどである。

第2節 個人の生活がもたらす環境負荷

1 個人の生活に身近な環境負荷の現状
(1) 家庭ごみ排出の現状
 家庭ごみと事業系ごみを合わせた平成八年度の一人一日当たりのごみ排出量は約一・一キログラムであり、このうち家庭ごみは約七割(約八百グラム)に当たり、家庭ごみの容積の約六割が容器包装類である。なお、食生活における外食や中食(持ち帰りや宅配の食事)の増加が、食品廃棄物の増加をもたらしている側面もある。
(2) 家庭ごみの処分による環境負荷
 家庭ごみの約八割は焼却処理されているが、焼却処理はダイオキシン類が発生するおそれがある。平成十二年一月施行の「ダイオキシン類対策特別措置法」において、大気、水質、土壌の環境基準や特定施設からの排出が規制されており、ダイオキシン類の発生防止、廃棄物の発生抑制に積極的に取り組む必要がある。
(3) 個人の生活のあり方と環境負荷
 各種家電製品の普及に伴い、廃家電製品の数量も増加している。また、生活雑排水による水質への負荷は、産業排水よりも高い割合を占めている。
 このような個人の生活からもたらされる環境負荷を低減するため、「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」などによる制度づくりも進められている。

2 地球温暖化と個人の生活から排出される二酸化炭素
(1) 家庭から排出される二酸化炭素
 平成九年度のわが国の二酸化炭素排出量のうち、一二・六%が家庭からのものである。用途別には、「照明・家電製品・他」が全体の四割を占め、供給エネルギー源別には、電力使用に伴う排出が半分近くを占めており、家電製品の使用が二酸化炭素の排出に大きな影響を与えることを示している。
(2) 自家用乗用車の使用と二酸化炭素の排出
 運輸部門から排出される二酸化炭素は、全体の二〇・九%(平成九年度)に当たる。このうち、自家用乗用車は旅客部門全体の約半分を担っているが、エネルギー消費量は全体の約八割を超えており、自家用乗用車の使用に伴う二酸化炭素の排出が、運輸部門全体の排出量に大きな影響を与えている(第4図第5図参照)。
(3) 個人と産業部門の関わり
 わが国最大の二酸化炭素排出源である産業部門(四〇・一%:平成九年度)は、一見個人の生活と無縁のようだが、製品の一生(ライフサイクル)を通して排出される二酸化炭素は、個人が製品を購入、消費、廃棄することによって排出が誘発されているともいえる。このことから、個人のライフスタイルのあり方が、経済社会システム全体の二酸化炭素排出量に大きな影響力を持っているといえる。

第3節 個人の環境保全への取組と他の主体に与える影響

 本節では、次の三つの側面から、個人の環境保全への取組や企業を始めとする他の主体に与える影響について考察する。
@ 企業が生産する財・サービスを消費する主体である「消費者」
A 企業に資本を提供する主体である「投資者(または資金提供者)」
B 社会活動を通じて行政施策を補完・補充する「民間団体」を組織する主体

1 消費者による環境保全への取組の広がりとその社会的影響
(1) グリーン購入
 「グリーン購入」とは、環境負荷の少ない製品・サービスを優先的に購入することをいう。これにより、事業者の環境負荷低減への取組を促進することとなる。
 近年の意識調査によれば、消費者のグリーン購入に対する意識は高いが、十分に実践されていない。その要因は、「環境に配慮した製品は価格が高い」、「環境に配慮した製品に関する情報が少ない」といった問題があげられている。
(2) グリーン購入に係る価格面の問題
 省エネ型機器と非省エネ型機器のコスト差は、電気代節減によるコスト低減によって補われることがあり、環境に配慮した製品の価格は必ずしも高いとは言えない。また、政府やグリーン購入の促進団体(「グリーン購入ネットワーク」など)による大量購入が、環境に配慮した製品のコストを下げることも期待される。
(3) グリーン購入に係る情報面の問題
 グリーン購入に係る情報については、わが国のエコマークなどの「環境ラベル」による、製品・サービスの環境に関する情報の提供が考えられる。
 事業者自身が、製品の環境負荷に関する情報を提供する取組も進展している。
 さらに、製品や店舗の選択を環境の視点から行うためのガイドブックも多数作成されており、消費者の消費行動の大きな力としていくことが求められる。
(4) 消費のグリーン化
 グリーン購入の発展型として、消費者がその活動に環境への配慮を組み込む「消費のグリーン化」というアプローチも考えられる。
@ 農産物の選択購入:減農薬、減化学肥料等の農産物や地場産の農産物を選択することにより、環境負荷の低減に資することができる。
A 家庭における省エネルギー行動:節電、節水などの省エネルギー行動は、資源、経済的負担の節約のみならず、環境負荷の低減を図ることにもなる。
B 電力の選択購入:スウェーデン、ノルウェー、アメリカなどでは、太陽光、風力などで発電された電力の選択により環境負荷の低減を図っている。
C モノの消費から機能・サービスの利用への転換:従来の「所有」という概念にとらわれず、機能・サービスを利用する「ストック活用型」の消費形態は、新しい「消費のグリーン化」の胎動といえる。
 (ア) 「移動」機能の利用:一台の自動車を複数の世帯が共同利用する「カーシェアリング(自動車共用)」(横浜市、神戸市などの事例)
 (イ) 「居住」機能・サービスの利用:人生のライフステージに応じた住宅の住み替え。定期借地権などを利用した新しい居住方式(つくば方式)など

2 個人の資産選択における環境保全意識の高まりとその社会的影響
 平成十一年九月現在、約一千三百三十二兆円に上るわが国の個人金融資産は、銀行や保険会社、証券会社等を通じ、その一部が民間部門における投資資金となっている。
 なかでも、昨年登場したエコファンド(環境への配慮の度合いが高く、かつ株価のパフォーマンスも高いと判断される企業の株式に集中投資する投資信託)などの金融商品を通じ、個人の資産を環境保全に役立てる動きが注目されている。
(1) 日本におけるエコファンドの登場の意味
 欧米では、投資対象の収益面のみならず、倫理的・社会的な側面に配慮した「社会的責任投資」の考え方が早くから登場している。
 日本においても、長引く不況の中で定期預貯金などの低金利などにより、平成十二年三月現在、五社から発売されたエコファンドが良いパフォーマンスを示している。購入者の特徴は約九割が個人投資家で、投資信託の初心者や女性が多い。
(2) 個人の資産選択による環境保全型社会への変革
 エコファンドの人気や環境ベンチャーなどに対する融資制度の登場は、個人が金融資産を運用する際に、環境保全を考慮するという概念(グリーンインベストメント)が浸透しつつあることを反映している。金融機関が企業を、あるいは、個人が企業や金融商品を選択する際に、環境という要素が重要になってくることが予想される。
 金融機関の融資に当たって、企業の環境配慮の状況を判断材料とすることが企業行動に影響を与え、ひいては社会全体を環境保全型に変革することが可能となる。

3 環境保全活動の社会的広がりと民間団体の果たすべき役割
(1) わが国における民間の環境保全活動の特徴
 環境保全活動を行う団体の活動分野としては、リサイクル・廃棄物が最も多く、以下、自然保護、環境教育の順になっている。組織的には、会員百人以下、財政規模が百万円未満の団体が約半数を占めている。
(2) 民間非営利団体に期待される役割〜環境パートナーシップの構築
@ 個人では困難な環境保全の取組を団体で行うことにより、個人が参加しやすい環境を作る。
 (例)太陽光発電設備の共同購入・設置、自然保護活動の実施等
A 行政、企業、個人といった各主体の持つ情報や関心などの橋渡しを行うとともに、自らその専門的能力を活かし提言、行動を行う。
 (例)環境に配慮した製品・サービスに関する評価等
(3) 民間の環境保全活動が社会的に広がるために行政が果たすべき役割
@ 情報の場の提供
 環境庁と国連大学で共同運営している「地球環境パートナーシッププラザ」や、東京都板橋区の「エコポリスセンター」などにおいて、各主体の活動に関する情報の収集・発信、ネットワーク作りなどが実施されている。
A 財政的措置
 環境事業団に創設された地球環境基金は、民間非営利団体に対し助成している。平成十一年度は、二百十七件に対し、約七億円の助成が実施された。
B 参加の制度化
 地球温暖化対策の推進に関する法律に基づいて、全国地球温暖化防止活動推進センターが(財)日本環境協会に設置され、民間非営利団体がその運営体制の中核を担うこととなった。

第4節 住民主導による環境保全を通じた地域コミュニティの再興

1 リサイクル活動などを通じた地域の活性化
 (例)東京都八丈町の空き缶などのデポジット制度
 東京都八丈町では、平成十年九月から、アルミ・スチール缶とペットボトルを対象に、デポジット制度(預託金払戻制度)を試行している。開始当初の対象製品の累計回収率は三四・三%と低かったが、住民のごみ問題に対する意識の高まりなどから、その後、平成十二年二月現在、七九・六%に伸びている。

2 豊かな自然環境の復元による地域の憩いの場の形成
 (例)東京都武蔵野市「木(こ)の花小路(はなこうじ)公園」の建設
 東京都武蔵野市では、住民参加による公園整備計画の策定を進めるとともに、平成十年四月に完成した「木の花小路公園」の維持管理、運営を市民グループである「生きものばんざいクラブ」へ委託し、実施している。

3 自然環境を「持続可能な資源」として活用することを通じた地域の振興
 (例)三重県宮川村の「森の番人」
 三重県宮川村は、日本有数のきれいな河川である宮川を守るため、有志が集まり、この宮川源流の水を「森の番人」という名称で販売する事業を開始した。その結果、観光客の増加や地域住民の自然保護に対する意識啓発につながった。

第5節 個人の視点から見た「持続可能な社会」への道筋

1 個人、行政、企業等、各主体間のパートナーシップを確立するための条件
(1) 各主体の環境コミュニケーションの確立
 ア 企業活動における環境情報の開示
  近年、企業は消費者・投資家・地域住民等に対する説明責任を負うという考えなどから、自らの活動を積極的に情報開示するようになりつつある。主な開示手段としては、環境報告書、環境会計、環境ラベル等があげられる。
 イ 円滑な環境コミュニケーションを確立するために必要な条件
  (ア) 簡易な形でも環境コミュニケーションを始めるなど、環境情報の公開と情報の拡大を進めることが必要である。
  (イ) 環境情報が、消費者、投資家などの意思決定に活かされ、環境保全に役立つためには、相互比較が可能なものになることが望ましい。
  (ウ) 様々な情報に対し、受け手が理解しやすいよう、行政、民間非営利団体、研究機関、マスコミ等が、情報の仲介者として機能することが重要である。
(2) 個人の環境保全施策への参加プロセスの確立
 行政施策の意思決定段階での個人参加を促進することが必要である。例えば、環境影響評価法では、スコーピング段階や準備書段階で、意見を提出できるようになった。
(3) 地域住民が主体となることが可能な地域コミュニティの基盤の整備
 地域の環境保全を進めるためには、地域住民が主体となることが可能な地域コミュニティの基盤を整備する必要がある。
(4) 具体的行動につながる環境教育・環境学習の推進
 環境教育・環境学習の推進を通じて、持続可能な社会の創造に主体的に参画できる人材を育成することが必要であり、こどもエコクラブ事業、環境カウンセラー登録制度などによる指導者育成、環境学習プログラムの整備等を推進している。

2 循環型社会を構築する上での個人の取組の重要性
 従来の大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会システムを、最適生産・最適消費・最少廃棄型の循環型社会に変えるために、消費者としてのグリーン購入、投資者としてのエコファンドへの投資信託により、企業に環境配慮型製品を開発、製造するインセンティブを与えることができる。また、廃棄物の排出者として、排出の極小化やリサイクルのための分別回収への協力が求められる。
 個人、企業、行政各主体それぞれが循環型社会の構成員として自覚し、パートナーシップの下に適切な役割分担と相互連携を図り、自主的かつ積極的な取組を行うことにより、初めてシステム全体が機能し、相乗的な効果があげられる。

第3章 わが国の環境の現状

 環境問題の多くは、私たちの通常の社会経済活動に起因し、その影響は、地球環境や将来の世代にまで及ぶ。これらは、地球の温暖化、都市の大気汚染、水質汚濁、廃棄物の増大等の多様な問題となって現れる。

1 酸性雨
 酸性雨とは、硫黄酸化物や窒素酸化物等の酸性雨原因物質から生成した硫酸や硝酸が溶解した酸性の強い雨や雪のことである。平成五年度から九年度までの第三次調査結果では、PHは四・八〜四・九(年平均値の全国平均)と、第二次調査の結果とほぼ同レベルであり、森林、湖沼等の被害が報告されている欧米とほぼ同程度であった。また、日本海側で冬季に硫酸イオン、硝酸イオン濃度の増加が認められ、大陸からの影響が示唆された。一方、原因不明の樹木衰退が第二次調査に引き続き確認されるとともに、酸性雨による影響が生じている可能性のある湖沼が確認された。

2 光化学オキシダント
 光化学オキシダントは、工場や自動車から排出される窒素酸化物や炭化水素類を主体とする物質が、太陽光線を受けて、光化学反応により二次的に生成されるオゾンなどの総称であり、いわゆる光化学スモッグの原因となる。強い酸化力をもち、高濃度では眼やのどへの刺激や呼吸器へ影響を及ぼし、農作物などへも影響を与える。
 平成十年の光化学オキシダントの注意報発令の延べ日数は百日(十九都府県)、光化学大気汚染によると思われる被害届出人数は四百二人(六府県)であった。地域別には、首都圏、近畿圏及び中国・四国圏に注意報の発令が集中している。一方、平成十一年は、警報(各都道府県が独自に要綱等で定めているもので、一般的には、光化学オキシダント濃度の一時間値が〇・二四ppm以上の場合に発令)の発令はなかった。

3 浮遊粒子状物質
 浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter SPM)とは、大気中に浮遊する粒子状物質のうち粒径が十μm(マイクロメートル)以下のものをいう。大気中に滞留し、肺や気管等に沈着して呼吸器に悪影響を及ぼす。発生源から直接大気中に放出される一次粒子と、硫黄酸化物、窒素酸化物等のガス状物質が大気中で粒子状物質に変化する二次生成粒子がある。一次粒子の発生源には、工場等から排出されるばいじんやディーゼル車の排出ガスの人為的発生源と、土壌の巻き上げ等の自然発生源がある。浮遊粒子状物質濃度の年平均値は、近年ほぼ横ばいである。平成十年度の環境基準の達成率は、一般局では六七・四%、自排局では三五・七%と、いずれも平成九年(一般局六一・九%、自排局三四・〇%)よりも上昇している。

4 悪臭
 悪臭は、悪臭原因物が大気中に放出されるために発生し、騒音・振動と同様の感覚公害である。現在、主に悪臭防止法により規制が行われている。
 悪臭苦情件数は、昭和四十七年をピークにおおむね減少傾向にあったが、平成十年度は二万九十二件で、前年度に比べ五千五百三十八件(三八・一%)増加した。この原因としては、廃棄物の野外焼却の増加と、ダイオキシン問題などを契機とした臭気問題に対する国民の意識が高まったことによるものと考えられる。

5 公共用水域での水質汚濁
 水環境は有機汚濁により大きな影響を受けるため、BOD(河川)及びCOD(湖沼・海域)等について環境基準の達成率を評価している。
 平成十年度のBOD又はCODの環境基準達成率は、全体で七七・九%(平成九年度七八・一%)、河川で八一・〇%(同八〇・九%)、湖沼で四〇・九%(同四一・〇%)、海域で七三・六%(同七四・九%)であった。河川は、平成六年度から着実に改善しつつある。湖沼は、近年は低いレベルで推移している。海域は、近年、八〇%前後で推移していたが、平成十年度は河口付近海域の水質悪化等もあり、前年度と同程度であった。

6 地下水汚染
 地下水は、温度変化が少なく一般に水質も良好であるため、重要な水資源として広く活用されているが、流速が極めて緩慢であり、希釈も期待できない等の理由から、一旦汚染されると、その回復は非常に困難である。地下水の水質保全のため、平成元年度から水質汚濁防止法に基づいて地下水質の測定が行われているが、平成十年度の地下水質測定では、汚染の継続的な監視等により、依然として地下水汚染が続いている状況がみられた。

7 土壌汚染及び地盤沈下
 土壌の汚染は、汚染状態が長期にわたる、人の健康に間接的に影響するなどの特徴を持つ。農用地では、汚染検出面積七千百四十五ヘクタールに対し、対策事業完了面積は五千六百三十一ヘクタールである(平成十一年十一月末)。近年、工場跡地などの再開発に伴う有害物質の不適切な取扱い等による汚染事例が増えている。
 地盤沈下は、地下水取水制限等により、沈静化に向かっており、平成十年度では年間四センチメートル以上の地盤沈下は、前年に引き続いてゼロであった。

8 資源リサイクル率
 スチール缶の平成十年の再資源化率は八二・五%(平成九年七九・六%)、アルミ缶の平成十年度の再資源化率は七四・四%(平成九年度七二・六%)とそれぞれ増加している。ガラスびんは、平成十年で七三・九%となっており、古紙の再利用率は平成十年で五四・九%で、ともに増加傾向にある。PETボトルは、約一千の地方公共団体で分別収集が始まっており、平成八年のリサイクル率二・九%に対し、年々リサイクル率が向上し、平成十年には一六・九%となっている。

9 内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)
 生体内にとりこまれて内分泌系(ホルモン)に影響を及ぼす化学物質は、内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)と呼ばれている。
 平成十年度に実施された環境ホルモン緊急全国一斉調査によると、ノニルフェノールなどが広い範囲で検出されたほか、野生生物のうち、食物連鎖で上位に位置するクジラ類や猛禽類に、PCBなどの蓄積が見られた。

10 自然環境
 世界でも比較的新しい地殻変動帯にある日本列島は、種々の地学的現象が活発である。地形は起伏に富み、山は一般に急傾斜で、平野・盆地の多くは小規模で、山地との間や海岸沿いに点在している。気候は湿潤で、四季の別が一般に明確である。
 自然植生は国土の一九・一%であり、このうちの五八・八%が北海道に分布している。一方、近畿、中国、四国、九州地方では、小面積の分布域が山地の上部や半島部、離島等に点在しているにすぎない。

11 日本の野生生物種
 わが国の絶滅のおそれのある野生生物の個々の種の生息状況等は、平成三年に、「日本の絶滅のおそれのある野生生物(通称:レッドデータブック)―脊椎動物編―、同―無脊椎動物編―」として取りまとめられた。植物についても、平成九年八月にレッドリスト(レッドデータブックの基礎となる日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)をまとめ、現在レッドデータブックを作成中である。これによると、わが国に生息する哺乳類、両生類、汽水・淡水魚類の二割強、爬虫類、維管束植物の二割弱、鳥類の一割強の種が存続を脅かされている。

12 自然とのふれあい
 近年、身近な自然の減少や国民の環境に対する意識の向上などに伴い、自然とのふれあいのニーズが高まっている。自然公園を訪れる人々の数(利用者数)は、平成十年は九億四千六百七十一万人であった。

む す び

 経済社会を持続可能なものとすることは、「循環型社会元年」とも呼ばれる現在をおいてない。日本が率先して循環型社会のモデルを示すことで、二十一世紀の世界の潮流に環境配慮を組み込むことが求められている。そのためには、政策主体そして国民一人一人が主人公として、足元からの変革を着実に進める必要がある。
 環境と共生するため、環境の価値に対する認識と、それを大切にする行動が根付くことが求められる。このため、環境についての知識、環境情報、環境技術などが活かされることが不可欠である。
 環境保全と経済活動が統合することが「環境の世紀」実現の鍵となるが、環境保全のためのコストが市場のメカニズムにうまく反映されることを通じて、経済社会に環境配慮が組み込まれていくことが、今後特に重視されよう。
 「環境の世紀」に向けた経済社会の構造変革には、相当のエネルギーが必要であるため、政策主体は、各分野の行政施策が個人や企業等の環境保全への取組と整合するように努め、互いに補強し合って、相乗的な効果が上がるようにしなければならない。
 人や組織における個々の変革努力が組み合わさったとき、思わぬ相乗効果を発揮する。今回の環境白書では、このような足元からの変革努力により、社会が大転換を遂げる可能性があることを強調した。
 私たち人類は、“環境を味方にする”ための社会変革の処方箋を生み出す英知と素早い実行力を持ち合わせているはずである。二十一世紀は、そうした可能性を秘めた「環境の世紀」なのである。私たちが、未来世代の命運を握っており、環境問題への対応を誤るわけにはいかない重い責任を担っていることを忘れてはならない。


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景 気 予 測 調 査


―平成十二年五月調査―


大 蔵 省


<はじめに>

 大蔵省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百十八万社のうち約一万二千社を対象として、四半期ごとに大蔵省景気予測調査を実施している。
 以下は、十二年五月に実施した第六十九回調査結果の概要である。今回の調査では一万四百四十一社を対象とし、八千三百十二社(回収率八〇%)から回答を得ている。
 なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。

 景 況第1表第1図参照

 十二年四〜六月期の景況判断BSI(前期比「上昇」−「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業は「上昇」超、中堅企業、中小企業は「下降」超となっている。
 先行き十二年七〜九月期を全産業でみると、大企業は引き続き「上昇」超の見通し、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。
 先行き十二年十〜十二月期を全産業でみると、大企業は引き続き「上昇」超の見通し、中堅企業は「上昇」超に転じる見通し、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。

 売上高第2表参照

 十二年度上期の売上高は、全産業合計で前年比二・六%の増収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、窯業・土石製品、繊維工業が減収となるものの、電気機械器具、石油製品等などが増収となり、全体では三・五%の増収見込みとなっている。
 非製造業では、不動産、その他の非製造業が減収となるものの、卸売・小売、建設などが増収となり、全体では二・二%の増収見込みとなっている。
 十二年度下期の売上高は、全産業合計で前年比一・七%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業のいずれも増収の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、船舶製造・修理、窯業・土石製品などが減収となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増収となり、全体では二・一%の増収の見通しとなっている。
 非製造業では、その他の非製造業、電気、ガス・水道が減収となるものの、卸売・小売、建設などが増収となり、全体では一・六%の増収の見通しとなっている。
 十二年度通期の売上高は、全産業合計で前年比二・一%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。

 経常損益第3表参照

 十二年度上期の経常損益は、全産業合計で前年比一九・二%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、輸送用機械器具、その他の製造業などが減益となるものの、電気機械器具、食料品などが増益となり、全体では一八・〇%の増益見込みとなっている。
 非製造業では、不動産、運輸・通信などが減益となるものの、卸売・小売、建設などが増益となり、全体では一九・九%の増益見込みとなっている。
 十二年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比一八・六%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、窯業・土石製品、衣服・その他の繊維製品などが減益となるものの、電気機械器具、輸送用機械器具などが増益となり、全体では二二・六%の増益の見通しとなっている。
 非製造業では、電気、ガス・水道、その他の非製造業などが減益となるものの、卸売・小売、事業所サービスなどが増益となり、全体では一六・〇%の増益の見通しとなっている。
 十二年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一八・八%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。

 中小企業の設備投資第4表参照

 設備投資については中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における十二年度の全産業の設備投資計画額を前年比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で一二・三%減、除く場合(以下「除く」という)で七・四%減の見通しとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で一二・七%ポイントの上方修正、「除く」で一四・三%ポイントの上方修正となっている。
 十二年六月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業で「不足」超となっている。
 先行きについては、全産業でみると「不足」超で推移する見通しとなっている。

 中小企業の販売製(商)品在庫

 十二年六月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超で推移する見通しとなっている。

 中小企業の仕入れ価格

 十二年四〜六月期の仕入れ価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「上昇」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業は「上昇」超、小売業は「低下」超で推移する見通しとなっている。

 中小企業の販売価格

 十二年四〜六月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。

 雇 用第5表参照

 十二年六月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」−「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「過剰気味」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「過剰気味」超で推移する見通しとなっている。
 十二年四〜六月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「増加」超となっている。
 先行きについては、大企業、中堅企業では「増加」超で推移する一方、中小企業では「減少」超に転じる見通しとなっている。
 十二年四〜六月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業では「増加」超、中小企業では「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超の見通しとなっている。

 企業金融第6表参照

 十二年四〜六月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」−「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業は「ゆるやか」超、中小企業は「きびしい」超となっている。
 先行きについては、大企業は十二年十〜十二月期に「きびしい」超に転じる見通しとなっている。中堅企業、中小企業は「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
 十二年四〜六月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」−「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業は「改善」超、中堅企業、中小企業は「悪化」超となっている。
 先行きについては、大企業は十二年七〜九月期に「悪化」超となった後、十〜十二月期に「改善」超に転じる見通しとなっている。中堅企業、中小企業は引き続き「悪化」超で推移する見通しとなっている。
 十二年六月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、いずれの規模においても「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

 中期的な経営課題第2図参照

 中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、次いで、大企業、中堅企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業は「後継者、人材の確保、育成」の順となっている。
 業種別にみると、製造業では、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」が最も多く、次いで「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」の順となっている。非製造業では、いずれの規模においても「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多い。




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消費者物価指数の動向


―東京都区部(六月中旬速報値)・全国(五月)―


総 務 庁


◇六月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇〇・六となり、前月比は〇・五%の下落。前年同月比は三月〇・七%の下落、四月〇・九%の下落、五月〇・九%の下落と推移した後、六月は一・二%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・〇となり、前月比は〇・五%の下落。前年同月比は三月〇・四%の下落、四月〇・五%の下落、五月〇・四%の下落と推移した後、六月は〇・九%の下落となり、下落幅は前月に比べ〇・五ポイント拡大。これは、家賃の下落幅が拡大したことなどによるもの。

二 前月からの動き

(1) 食料は九九・五となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  生鮮魚介は二・七%の下落。
   <値上がり> ぶり、あさりなど
   <値下がり> いか、かつおなど
  生鮮野菜は三・四%の上昇。
   <値上がり> ねぎ、だいこんなど
   <値下がり> トマト、さやいんげんなど
  生鮮果物は七・八%の下落。
   <値上がり> グレープフルーツ、オレンジなど
   <値下がり> すいか、メロン(アンデスメロン)など
  乳卵類は二・三%の下落。
   <値下がり> 鶏卵など
(2) 住居は九九・五となり、前月に比べ〇・八%の下落。
  家賃は〇・九%の下落。
   <値下がり> 民営家賃(木造中住宅)など
(3) 家具・家事用品は九〇・八となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は一・〇%の下落。
   <値下がり> ルームエアコンなど
(4) 被服及び履物は一〇四・五となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  衣料は〇・八%の下落。
   <値下がり> スーツ(夏物)など
(5) 教養娯楽は九九・〇となり、前月に比べ一・八%の下落。
  教養娯楽サービスは三・〇%の下落。
   <値下がり> 宿泊料など

三 前年同月との比較

 ○上昇した主な項目
  (特になし)
 ○下落した主な項目
  家賃(一・七%下落)、生鮮果物(一六・九%下落)、外食(一・五%下落)、教養娯楽サービス(一・七%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇〇・四となり、前月に比べ〇・二%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇〇・八となり、前月に比べ〇・四%の下落となった。

◇五月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・八となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は二月〇・六%の下落、三月〇・五%の下落、四月〇・八%の下落と推移した後、五月は〇・七%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇二・二となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は二月〇・一%の下落、三月〇・三%の下落、四月〇・四%の下落と推移した後、五月は〇・二%の下落となった。

二 前月からの動き

(1) 食料は一〇〇・五となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  生鮮魚介は三・一%の下落。
   <値上がり> あさり、まぐろ
   <値下がり> かつお、あじなど
  生鮮野菜は四・三%の下落。
   <値上がり> ほうれんそう、ねぎなど
   <値下がり> キャベツ、トマトなど
  生鮮果物は〇・一%の下落。
   <値上がり> りんご(ふじ)、キウイフルーツ
   <値下がり> メロン(プリンスメロン)、いちごなど
(2) 住居は一〇三・八となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  家賃は〇・三%の上昇。
   <値上がり> 民営家賃(木造中住宅)など
(3) 家具・家事用品は九二・一となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財は〇・七%の下落。
   <値下がり> ルームエアコンなど
(4) 被服及び履物は一〇六・二となり、前月に比べ一・一%の上昇。
  衣料は一・八%の上昇。
   <値上がり> スーツ(夏物)など
(5) 教養娯楽は九九・九となり、前月に比べ一・二%の上昇。
  教養娯楽サービスは二・一%の上昇。
   <値上がり> 宿泊料など

三 前年同月との比較

 ○上昇した主な項目
  自動車等関係費(二・〇%上昇)、家賃(〇・五%上昇)、教養娯楽サービス(一・四%上昇)
 ○下落した主な項目
  生鮮野菜(一三・二%下落)、生鮮果物(一三・五%下落)、生鮮魚介(四・〇%下落)、外食(一・三%下落)
 (注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

四 季節調整済指数

 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇一・三となり、前月に比べ〇・二%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・九となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。




















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言葉の履歴書


 月とスッポン

 形が似ていても実質がひどく異なるときに「月とスッポン」という例えが、よく使われます。
 鳴き声がスポンスポンと聞こえるところから名付けられたとされるスッポン(鼈)は、川・池・沼に住むカメ(亀)の一種で、別名「泥亀」。肉は美味で、血は強精剤として珍重されます。
 中国で「団魚」と書かれたのは、背中の甲羅が亀よりも円いからで、日本でも関西地方では「まる」と俗称されました。
 お月見が行われる天上の月と比べると、同じ円型でも、まさに「雲泥の差」があるわけです。もっとも「月と朱盆」から転化した言葉とする異説もありますが……。
 「提灯(ちょうちん)に釣り鐘」は「月とスッポン」と同様に、形が近くても釣り合いのとれない例え。これは重さが比べものにならないほど違う「片重い」で「片思い」のことを「提灯と釣り鐘」としゃれていう人もいました。
 しかし、提灯や釣り鐘が身近なものでなくなった現在では、やはり「月とスッポン」の方が実感を伴う表現のようです。
(『広報通信』平成十二年九月号)



    <9月20日号の主な予定>

 ▽月例経済報告(八月報告)………………………………………経済企画庁 

 ▽第百四十七回国会で審議された法律案・条約の一覧表………内閣官房 




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