官報資料版 平成12年12月20日




                  ▽防衛白書のあらまし……………………………………………………防 衛 庁

                  ▽家計収支(八月分)……………………………………………………総 務 庁

                  ▽新年一般参賀について…………………………………………………宮 内 庁

                  ▽普通世帯の消費動向調査(平成十二年九月実施調査結果)………経済企画庁

                  ▽月例経済報告(十一月報告)…………………………………………経済企画庁











防衛白書のあらまし


平成12年版 日本の防衛


防 衛 庁


 平成十二年版「日本の防衛」(防衛白書)は、去る七月二十八日の閣議で了承され、公表された。
 白書のあらましは、次のとおりである。

第1章 国際軍事情勢

第1節 国際軍事情勢概観

1 国際軍事情勢全般
 冷戦終結後、世界的規模の武力紛争が生起する可能性は低下したが、複雑で多様な地域紛争が発生し、また、大量破壊兵器などの移転・拡散の増大が強く懸念されている。これに対し、国連の活動や、米露や欧州における軍備管理・軍縮の動きなど、国際関係の一層の安定化を図るための様々な取組が進展している。
 また、人権侵害や難民などの武力侵攻以外の事態が一国内の問題にとどまらず、これが国際社会全体の問題として認識される場合に、軍事力を行使して、国際社会の利益の実現を図る事例が見られるようになっている。

2 複雑で多様な地域紛争
 冷戦終結後も国家間の武力紛争が依然として発生し、民族の対立などに起因する内戦が引き続き生起している。中東では、イスラエルとパレスチナ解放機構との間で、現在停滞している包括的和平合意締結に向けて努力が続けられている。
 インド、パキスタン両国は、九八年五月に核実験、昨年四月には弾道ミサイルの発射実験を実施した(朝鮮半島については第3節で記述)。

3 兵器の移転・拡散など
 近年、一部の国では、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの運搬手段を含む兵器の取得や開発が顕著な形で進められており、このような兵器の移転・拡散問題への対応は、今まで以上に国際社会の抱える緊急の課題となっている。

4 軍事科学技術の動向
 軍事科学技術の大幅な進歩に伴い、戦闘状況の変化はより迅速となり、戦域が広域化しており、兵器の破壊力の向上に加え、精密誘導技術や指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・監視・偵察(CISR)技術を含む情報関連技術の研究開発が重視されてきている。

第2節 主要国の国防政策と国際社会の安定化への対応

1 主要国の国防政策
○ 米軍は平素からの軍事的関与を通じて好ましい国際環境の構築に努めるとともに、海外における大規模戦域戦争から、小規模緊急事態、米国にも及び得る大量破壊兵器・弾道ミサイル、テロや情報戦など、あらゆる脅威に対処しうる態勢の整備を図っている。
○ ロシアは、「安全保障コンセプト」を改定し、ロシアに対する直接的武力侵略の可能性を含む脅威認識と、他のすべての手段が尽きた場合には、核を使用できるとの認識を示した。通常戦力の量的削減が続き、即応態勢の低下が見られている。

2 国際連合などによる国際社会の安定化のための努力
 兵器の移転・拡散問題への対応は、国際社会の抱える緊急の課題となっており、大量破壊兵器の移転・拡散を防止する努力、通常兵器や関連汎用品・技術に関する輸出管理が行われている。
 包括的核実験禁止条約(CTBT)については、昨年十月に同条約を推進してきた米国が上院において批准を否決するなど、現在、速やかな条約発効の見通しは立っていない。

3 米露及び欧州における国際社会の安定化への対応
 ロシアは、第二次戦略核兵器削減条約(STARTU)を批准したものの、米国がいまだ批准していないため、今後の第三次戦略核兵器削減条約(STARTV(ママ))の進展についてその動向が注目される。欧州諸国は、旧ユーゴでの紛争発生など新たな問題に直面し、欧州としての安全保障を追求している。

第3節 アジア太平洋地域の軍事情勢

1 全般情勢
 冷戦終結後、アジア太平洋地域では、極東ロシア軍の量的削減などの変化が見られるものの、依然として大規模な軍事力が存在している。加えて、多くの国々で経済成長を背景に、軍事力の拡充・近代化が行われてきた。この地域には、不透明・不確実な要素が残されており、引き続き注目していく必要がある。このような状況の下、米国を中心とする二国間の同盟・友好関係とこれに基づく米軍の存在が、この地域の平和と安定に重要な役割を果たしている(第1図参照)。

2 朝鮮半島
○ 北朝鮮では、九八年九月に約四年半ぶりに最高人民会議が開催されて以降、二年連続の国家予算の採択、法律の承認などの動きから、金正日国防委員会委員長を中心とする政治体制が名実共に整備され、その国家統治については、一定の軌道に乗ってきていると考えられる。
○ 北朝鮮は、深刻な経済困難に直面しているにもかかわらず、軍事力の近代化、即応態勢の維持に努めており、その動向については必ずしも明確ではなく、引き続き細心の注意を払っていく必要がある。
○ 北朝鮮の核開発疑惑は、日本の安全に影響を及ぼす問題であるのみならず、大量破壊兵器の拡散の観点から、国際社会全体にとっても重要な問題である。また、北朝鮮のミサイル開発は、核兵器開発疑惑とあいまって、アジア太平洋地域のみならず、国際社会全体に不安定さをもたらす要因となっており、その開発動向が強く懸念される。
○ 韓国の金大中政権は、和解と交流を積極的に進める「包容政策」と呼ばれる対北朝鮮政策を、就任以来一貫して進めている。こうした政策の下で、民間レベルでの交流は増大し、本年六月、南北分断後、初の南北首脳会談が行われた。
○ 南北会談の結果、南北共同宣言が署名され、国の統一問題の自主的な解消、離散家族問題の早期解決などについて合意された。こうした南北対話の進展によって、半島の緊張緩和が期待される。それと同時に、軍事的対峙の緩和や、北朝鮮の核兵器開発疑惑や弾道ミサイルの開発問題の解決にどのように結びついていくか、注意深く見極めていく必要がある。

3 極東ロシア
 極東ロシア軍は、依然として大規模かつ近代化された戦力が蓄積された状態にあり、その一部は更新・近代化されている。他方、その規模自体は縮小傾向にあり、訓練などの活動は依然として低調と見られている。極東ロシア軍の将来像については、ロシア軍とロシア国内の流動的な情勢とあいまって必ずしも明確でなく、引き続き注目していく必要がある。

4 中国
○ 台湾問題は中国の内政問題であるとの原則を堅持しており、本年二月、「一つの中国の原則と台湾問題」(台湾白書)を発表した。中台間には基本的立場になお隔たりが存在しているため、今後の台湾をめぐる問題の平和的解決に向けた動向が注目される。
○ 軍事力については、量から質への転換を企図している。本年三月の全人代政府活動報告では、「科学技術による軍事力強化の堅持」といった方針が示された。また、江沢民主席は五十万人の兵力削減も達成したと表明した。国防費については八九(平成元)年以降、十二年連続で対前年度比一〇%以上の伸びを示しており、本年度は約一五%であった(第2図参照)。
○ 弾道ミサイルについては、現在、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を若干基保有するほか、新型ICBM及び潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの開発も進めており、昨年八月には自国内で新型ICBMである東風31と考えられる長距離地対地ミサイルの発射実験を行った。
 また、中距離弾道ミサイルについては、日本を含むアジア地域を射程に収めるミサイルを合計七十基保有しており、新型の東風21への転換が進みつつある。さらに、短距離弾道ミサイルも保有しており、台湾対岸における新たなミサイル基地の建設の動きも伝えられている。
○ 日本の近海においては、日本領海を含む海域において、近年、中国の海洋調査船により、海洋調査とみられる活動が行われている。また、中国の海軍艦艇の航行も増加しており、海上自衛隊が視認した航行は、九八年には二隻であったが、昨年は二十七隻、本年六月末時点で十四隻である。
 さらに、本年五月には、海軍に所属する砕氷艦兼情報収集艦が我が国を周回し、その間、対馬海峡及び津軽海峡では反復運動を行っていることが確認された。このような最近の中国の海軍艦艇の我が国周辺における活動の活発化については、その動向に注目していく必要がある。

5 東南アジア・大洋州
 依然として、この地域には南沙群島などの領有権をめぐる対立や少数民族問題などが不安定要素として存在しており、南シナ海などにおいて、船舶の安全な航行を妨害する海賊行為も発生している。
 東チモールでは現在、国連東チモール暫定行政機構(UNTAET)の下、国家建設に向けた取組が行われている。

6 アジア太平洋地域の米軍
 本年二月の国防報告においても、「東アジア・太平洋地域に引き続き同レベルの軍事能力を維持する」ことが記されている。

7 各国の安定化努力
 近年、二国間の軍事交流などの機会の増加や、地域的な安全保障に関する努力が定着しつつあるものの、安全保障上の諸問題に対する具体的な寄与については、これからの課題となっている。

第2章 日本の防衛政策

第1節 防衛の基本的考え方

1 我が国の安全保障
 我が国の安全保障のためには、外交や内政の分野のみならず、自らの防衛努力と日米安保体制の堅持が必要である。

2 憲法と自衛権
 日本国憲法は、主権国家としての我が国固有の自衛権を否定するものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは認められている。自衛権の発動は、いわゆる自衛権発動の三要件に該当する場合に限られ、また、集団的自衛権の行使は憲法上許されない。

3 防衛政策の基本
 国防の基本方針において、平和への努力の促進などによる安全保障基盤の確立や、効率的な防衛力の整備と日米安保体制を基調とすることを掲げている。その他に、専守防衛、非核三原則の堅持、文民統制の確保などがある。

第2節 日米安全保障体制

1 日米安全保障体制の意義
 我が国は、米国との二国間の同盟関係を継続し、その抑止力を機能させることで、適切な防衛力の保持と合わせて、国の安全を確保する。

2 日米安全保障共同宣言
 日米安保条約を基調とする日米同盟関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域で安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した上で、我が国防衛のための効果的な枠組みは、日米両国間の緊密な防衛協力であることや、米国が約十万人の前方展開兵力を維持することなどを改めて確認した。

第3節 防衛計画の大綱

1 大綱が前提としている国際情勢
 我が国周辺地域では、依然として大規模な軍事力が存在するとともに、その拡充・近代化など不透明・不確実な要素が残っている。

2 我が国の安全保障と防衛力の役割
 基盤的防衛力構想を基本的に踏襲するとともに、防衛力の規模及び機能の見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層進める。日米安保体制の重要性を再確認する。また、防衛力の役割として、我が国の防衛、大規模災害など各種の事態への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献を掲げている。

3 我が国が保有すべき防衛力の内容
 各自衛隊の体制を明示し、基幹となる部隊や主要装備の具体的な規模などを示している。

第3章 我が国の防衛と日米安全保障体制に関連する諸施策

第1節 我が国の防衛

1 警戒監視活動など
 自衛隊は、平素から周辺海域での警戒監視や対領空侵犯措置、軍事情報の収集などを実施している。

2 各種の作戦
 自衛隊は、外部からの武力攻撃が生じた場合においては、防空のための作戦、周辺海域の防衛と海上交通の安全確保のための作戦、着上陸侵攻対処のための作戦を実施する。

3 有事法制の研究など
 政府としては、有事法制は、我が国への武力攻撃などに際し、自衛隊が文民統制の下で適切に対処し、国民の生命・財産を確保するために必要なものであり、平時においてこそ備えておくべきものであると考えている。

第2節 防衛力の整備と新たな体制への移行

1 中期防衛力整備計画とその達成状況
 中期防の検討課題のうち、弾道ミサイル防衛については、必要な調査研究及び「日米共同技術研究」を行っている。空中給油機能については、昨年十二月の安全保障会議において、次期防において速やかに整備することとされ、これを受けて運用研究に必要な経費を平成十二年度予算に計上した(第3図参照)。

2 自衛隊の新たな体制への移行
 各自衛隊の基幹部隊の見直しを進めており、中期防で計画していたもの(五師団の改編(うち二個は旅団へ)、十個護衛隊を八個護衛隊に、要撃戦闘機部隊十個飛行隊を九個飛行隊に)は本年度末に達成の見込みである。

3 平成十二年度の防衛力整備
 重要事態への対応として、不審船対処のための特別警備隊の新編、核、生物、化学(NBC)対処のための部外有識者を中心とした会議の開催などのほか、ゲリラ・コマンドウ攻撃対処、在外邦人などの輸送任務への対応、災害派遣対策、弾道ミサイル防衛などの分野における事業が計画されている。

第3節 防衛力を形成する基盤

1 自衛隊の組織と人
 自衛隊は、陸・海・空各自衛隊を中心に、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所、技術研究本部、調達実施本部、防衛施設庁など、各種の機能を備えた様々な組織で構成されている。自衛隊員は、自衛官、即応予備自衛官及び予備自衛官、事務官などからなっている。

2 日々の教育訓練
 自衛隊は、種々の制約の中で、事故防止など安全確保に細心の注意を払いつつ、隊員の教育や部隊の訓練などを行い、精強な隊員及び部隊の練成に努めている。

3 防衛生産・技術基盤の維持
 装備面においても、防衛力を支える基盤を維持していくことが不可欠である。

第4節 日米安全保障体制に関連する諸施策

1 日米防衛協力のための指針(指針)
 指針は、より効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための堅固な基礎を構築することなどを目的としている。

2 指針の実効性を確保するための諸施策
○ 指針の実効性確保のための措置
  政府は、周辺事態安全確保法、日米物品役務相互提供協定を改正する協定、自衛隊法の一部を改正する法律について政府案を国会に提出し、昨年五月、これらの法律が成立し、承認をみた。
○ 船舶検査活動は、国会での審議の結果、別途立法措置をとるとの前提で削除された。政府としては、その重要性にかんがみ、早期に結論が得られることを期待している。現在、日米両国政府は、包括的メカニズムの下で共同作業を行っており、調整メカニズムの早期の構築に向けて検討している。

3 平素から行っている協力
 政策協議・情報交換、日米共同訓練、装備・技術面での相互交流などを行っている。

4 在日米軍の駐留を円滑にするための施策など
 日本は、在日米軍駐留経費負担について、できる限りの努力を払ってきた。政府は、在日米軍施設・区域に係る諸施策について、日米安保条約の目的達成と周辺地域社会の要望との調和を図りながら、問題の解決のための努力を重ねてきた。

第4章 多様化する防衛庁・自衛隊の施策と活動

第1節 求められる各種の事態等への対応

1 緊急事態への対応
○ 在外邦人などの輸送態勢の整備
  陸上自衛隊などでは、必要に応じ「誘導隊」を編成する。また、陸・海・空各自衛隊はそれぞれ在外邦人などの輸送に係る訓練を行った。
○ 沿岸・重要施設の警備などへの対応
  政府としては、自衛隊と警察機関との連携要領の策定など、現行の法制度の下での対応の強化を進めており、今後とも自衛隊の対応の在り方や関係省庁間の連携について、法的な観点も含め、更なる検討を行う考えである。

2 ミサイル発射への対応
○ ミサイル発射事案に関する教訓と対応
  防衛庁は、弾道ミサイルに関する情報の収集・分析・伝達面において問題があったことから、今後のミサイル発射などに、より的確に対応するため、所要の措置を講じた。
○ 情報収集衛星の導入
  政府は、北朝鮮によるミサイル発射を契機として、衛星による画像情報の利用方法について検討を行い、平成十四年度をめどに情報収集衛星を導入することを閣議決定した。

3 不審船対処
○ 教訓・反省事項などを踏まえたその後の対応
  政府においては、現行法の枠組みの下での必要な措置について、昨年六月の関係閣僚会議で教訓・反省事項の取りまとめを行い、関係省庁間の情報連絡や協力の強化、対応能力の整備などを図ることとした。
○ 具体的な対応策と関連する法整備
  防衛庁では順次、不審船関連事業、海上保安庁との連携強化、不審船対処に関連する法的整理といった対応策をとってきた。

4 災害への対応
○ 災害派遣の実施状況
  昨年度は、西日本を中心とする集中豪雨に係る捜索・救助、水防活動、玄倉川での救助活動、東海村臨界事故、有珠山噴火、コンピュータ西暦二〇〇〇年問題に関連する派遣待機などを行った(第4図参照)。
○ 原子力事故対処
  昨年九月、茨城県東海村のウラン加工工場で臨界事故が発生、陸上自衛隊第一〇一化学防護隊などを派遣・待機させた。
  この事故の教訓を踏まえ、同年十二月「原子力災害対策特別措置法」が成立した。同法では、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)が緊急事態応急対策の的確かつ迅速な実施のため、防衛庁長官に対し、自衛隊の支援を要請することができると規定され、これに伴って自衛隊法が一部改正された。

5 様々な事態への対応に関する研究など
○ 弾道ミサイル防衛に関する日米共同技術研究
  弾道ミサイル防衛(BMD)が専守防衛を旨とする我が国の防衛政策上の重要な課題であり、また、純粋に防御的なシステムであり、専守防衛という我が国の政策に適することから、我が国の主体的取組が必要であるとの認識の下、これまで検討を行ってきた。
○ NBC対処
  生物兵器などの対処に関する研究、各種防護器材の充実、教育訓練体制の充実・部隊の新編、米国での研修の実施などに取り組んでいく。
○ コンピュータ・セキュリティ
  仮に防衛庁のコンピュータ・システムへの侵入などが行われた場合には、我が国の防衛に重大な支障が生じ得るため、防衛庁は、本年度予算においてコンピュータ・セキュリティのための施策を推進する。
○ 自衛隊の運用上の重要問題に関する研究
  本年三月から、自衛隊の運用に関する諸課題の検討の進捗を図るため、防衛庁長官の下で、運用上の重要問題に関する研究を実施している。

第2節 より安定した安全保障環境の構築への貢献

1 国際平和協力業務
 東チモールにおける昨年八月以降の治安悪化の状況に対処するため、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を始めとする各種の人道援助機関が援助活動を実施した。我が国に対してもUNHCRから活動支援の要請があり、政府は自衛隊の部隊などを現地に派遣することとした。航空自衛隊は、同年十一月から本年二月までの間、スラバヤとクパン間でのUNHCRのための物資輸送などを行い、多大な成果を挙げた。

2 国際緊急援助活動
 昨年八月に発生したトルコ北西部地震災害に際して、海上自衛隊の輸送艦などが行った、国際緊急援助活動のための物資(仮設住宅)の海上輸送は、国際社会に対する我が国の貢献として、意義あるものであった。

3 安全保障対話・防衛交流
○ 日韓防衛交流においては、昨年一月に防衛庁長官が、本年三月には統合幕僚会議議長が訪韓した。本年五月には韓国国防部長官が訪日し、意見交換を行った。また、昨年八月には、海上自衛隊と韓国海軍による捜索・救難活動に関する初の海上共同訓練を実施した。
○ 日露防衛交流については、昨年八月に防衛庁長官が訪露し、ロシア国防相(代行)との間で「覚書」に署名し、双方間の信頼関係の増進と相互理解の向上を図るとの決意を表明した。
○ 日中防衛交流については、九八年五月の日中防衛首脳会談での合意を受けて、昨年十一月に事務次官が訪中し、さらに本年四月に中国人民解放軍総参謀長が初めて公式訪問した。
○ 防衛庁は、アジア・太平洋地域防衛当局者フォーラムなど、自らが主体となって、様々な対話の機会を設けてきている。

4 軍備管理・軍縮分野への協力
○ 化学兵器禁止条約(CWC)、生物兵器禁止条約(BWC)に関して、職員を随時派遣するとともに、包括的核実験禁止条約に関し、防衛庁は、外務省などに対しできる限りの協力を行っている。
○ 対人地雷禁止条約の発効に伴い、防衛庁は、条約上の対人地雷に該当しない代替手段の導入などを行うこととした。また、自衛隊が保有する対人地雷の廃棄は、本年一月から処分を実施している。

第5章 身近な自衛隊と諸問題への取組

第1節 自衛隊と国民及び地方公共団体などとのかかわり

1 国民生活への貢献など
 自衛隊は、危険物の処理、医療面での貢献、運動競技会に対する協力、国家的行事での礼式、輸送への協力、密航船対策への協力、教育訓練の受諾、南極地域観測への協力などを通じ、国民生活とかかわっている。

2 自衛隊への理解を深めてもらうための活動など
 防衛庁は、広報活動や、国民からの情報公開の要請に応える取組などを行っている。

3 災害派遣などにおける地方公共団体などとのかかわり
 自衛隊の災害派遣については、日ごろから連携強化を図ってきており、今後も、引き続き関係強化を進めていかなければならない。
 派遣形態には、災害派遣のほか、地震防災派遣及び原子力防災派遣がある。また、自衛隊の災害派遣は、次のような流れで行われる(第5図参照)。

4 自衛隊の活動や自衛官の募集・就職援護などに対する協力
 自衛隊の活動などに対する、地方公共団体や各種の団体による様々な支援・協力は、不可欠なものである。

5 即応予備自衛官及び予備自衛官制度の運用に対する協力
 即応予備自衛官及び予備自衛官が訓練招集に応じるには、雇用企業などの理解と協力が不可欠であり、防衛庁は即応予備自衛官雇用企業給付金の支給などにより、その理解を深めるよう努めている。

第2節 地域社会と防衛施設

1 防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策
 政府は、防衛施設と周辺地域との調和を図るため、騒音対策や生活関連施設の整備への助成などの施策を行っている。

2 環境保全への取組など
 自衛隊は、全国に演習場などの施設を有するとともに、多数の装備を維持管理しており、粉塵などが発生する場合には、環境保全の観点からその防止、軽減に努めている。
 在日米軍施設・区域をめぐる環境問題について、政府は、米側と十分協議の上、我が国の公共の安全や市民生活に妥当な考慮がなされるよう対処している。また、厚木海軍飛行場米軍家族住宅地区の大気環境保全問題については、関係省庁が一致協力して取り組んでいる。

3 在日米軍施設・区域に係る諸施策
 空母艦載機の着陸訓練場を確保するための施策などを行ってきている。

第3節 沖縄に所在する在日米軍施設・区域

 在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小を始めとする、沖縄に関連する諸課題については、内閣の最重要課題の一つとして、政府を挙げて取り組んできている。

1 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)設置以前における整理・統合・縮小への取組
 沖縄の復帰後、日米両国は地元の要望の強い事案を中心に、米軍施設・区域の整理・統合・縮小のための努力を継続的に行ってきた。

2 SACO設置以降の在日米軍施設・区域に係る問題解決への取組
○ SACO設置などの経緯
  政府は、沖縄県に所在する米軍施設・区域に係る諸問題を協議する目的で、九五年十一月、日米間にSACOを設置した。九六年十二月、普天間飛行場の全面返還を始めとする土地の返還などの諸問題の改善に向けた計画及び措置を取りまとめ(SACO最終報告)、安全保障協議委員会(SCC)に報告し了承を得た。
○ SACO最終報告の進捗状況
  普天間飛行場の返還については、沖縄県及び地元から、住民生活や自然環境への特別の配慮、沖縄県北部地域の振興などの要請が寄せられている。政府は、こうした経緯及び要請を踏まえ、昨年十二月、「普天間飛行場の移設に係る政府方針」を閣議決定し、今後の取組方針を明らかにした。

第4節 新しい時代に向けた管理施策

1 職場の一層の活性化を目指して
 防衛庁では、新しい時代に向けて、種々の新たな人事施策を行っている。

2 調達改革の現況
○ 調達改革の具体的措置とその実施状況
  現在、各種の改革施策などの徹底と実施状況のフォローアップに努めており、本年四月に「調達改革の具体的措置の実施状況について」を公表した。
○ 過払事案への対応
  国からニコー電子(株)に対して、損害賠償などの支払いを求める訴訟を提起し、係属中である。
○ 入札に関する諸問題への対応
  昨年秋、石油製品入札談合問題や自衛艦の修理契約問題などが生起したことを、防衛庁として深刻に受け止め、改善措置を講じるとともに、昨年十一月からは、防衛庁自ら入札契約の競争性の確保等に取り組んでいる。


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消費支出(全世帯)は実質四・一%の減少


―平成十二年八月分家計収支―


総 務 庁


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の消費支出は平成十一年九月以降五か月連続の実質減少となった後、十二年二月は実質増加、三月は実質減少、四月は実質増加となり、五月以降四か月連続の実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は平成十一年七月以降九か月連続の実質減少となった後、十二年四月は同水準、五月は実質増加となり、六月以降三か月連続の実質減少となった。
 前年同月比でみると、消費支出は平成十一年八月以降六か月連続の実質減少となった後、十二年二月は実質増加、三月は実質減少、四月は実質増加となり、五月以降四か月連続の実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十七万二千三百五円。
 前年同月に比べ、名目六・三%の減少、実質五・四%の減少。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質二・三%の減少。
 勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質一・八%の減少。












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新年一般参賀について


宮 内 庁


 新年一般参賀は、一月二日、皇居で次のとおり行われます。
 天皇皇后両陛下が、おおむね七回長和殿ベランダにお出ましになる予定です。
 そのうち、二回目までは皇太子同妃両殿下始めお出ましになれる成年の皇族殿下方が、三回目以降は皇太子同妃両殿下、秋篠宮同妃両殿下及び紀宮殿下が、御一緒にお出ましになる予定です。
 参賀者は、午前九時三十分から午後三時までに、皇居正門(二重橋)から参入し、宮殿東庭の参賀会場を経て、坂下門、桔梗門又は乾門から退出することとなります。
 なお、お出ましは、午前十時十分頃、同十一時頃、同十一時五十分頃、午後零時四十分頃、同一時三十分頃、同二時二十分頃及び同三時二十分頃の七回が予定されておりますが、混雑が予想されますので、参賀者は余裕を持ってお越しください。
 皇居東御苑は休園ですので、入園できません。
 参賀当日は非常な混雑が予想されますので、次の点に御注意ください。
(1) 一般参賀の閉門時刻は午後三時となっていますが、多数の参賀者が参集されると思われますので、早目にお越しください。
(2) 混雑する場合は、参入の際、あらかじめ、正門前で列を作って入門するようになりますが、入門する場合は、列を崩したり、立ち止まったりなどしないでください。
(3) 雑踏による転倒事故が生じやすいので、履物には十分御注意ください。特に、移動コース上には坂道がありますので、ハイヒール、下駄ばきの方は御注意ください。
 危険物を携行する者、旗ざお、大きな荷物等で参賀行事を妨げ、又は他に危害、迷惑等を及ぼすおそれのある物を携行する者、その他参賀行事の運営上支障があると認められる者は、入門をお断りします。
 参賀者は、皇居内においては、次に挙げる行為をしないでください。
 これに反した場合は退去を求めることがあります。
(1) 立入りを禁じた場所に入ること。
(2) 喫煙所以外での喫煙等火災の危険がある行為をすること。
(3) 施設その他の物を破損し、又は移動すること。
(4) 業として写真又は映画を撮影すること。
(5) 集会又は示威行為をすること。
(6) 貼紙をし、又はビラ類を配布し若しくは散布すること。
(7) その他皇居内の秩序又は風紀を乱す行為等参賀行事運営上支障があると認められる行為をすること。
 その他
(1) 荒天等の場合は、お出ましが中止されることがあります。
(2) 混雑や危険を防止するため、参入門の外で携帯品をお預かりすることがあります。
(3) 駐車場の用意はありませんので御注意願います。


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普通世帯の消費動向調査


―平成十二年九月実施調査結果―


経済企画庁


 消費動向調査は、家計消費の動向を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とするために、全国の普通世帯(単身世帯及び外国人世帯を除いた約三千万世帯)を対象に、約五千世帯を抽出して、消費者の意識、主要耐久消費財等の購入状況、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定について、四半期ごとに調査している。また、年度末にあたる三月調査時には、主要耐久消費財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成十二年九月に実施した調査結果の概要である。

1 調査世帯の特性

 平成十二年九月の調査世帯の世帯主の平均年齢は五二・三歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・四人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は九九・九%(有効回答世帯数は五千三十四世帯)となっている。

2 消費者の意識

 (1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果
 消費者意識指標七項目中五項目を総合した消費者態度指数は、「物価の上がり方」、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識が悪化したものの、「雇用環境」、「収入の増え方」及び「暮らし向き」に関する意識が改善したため、四三・三(前期差〇・二ポイント上昇)となり、五期連続で上昇した(第1表第1図参照)。
 (2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果
 各消費者意識指標について十二年九月の動向を前期差でみると、「物価の上がり方」に関する意識(一・〇ポイント低下)、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(〇・七ポイント低下)が悪化したものの、「雇用環境」に関する意識(二・三ポイント上昇)、「収入の増え方」に関する意識(〇・五ポイント上昇)及び「暮らし向き」に関する意識(〇・三ポイント上昇)が改善を示した(第1表参照)。

3 サービス等の支出予定(季節調整値)

 十二年十〜十二月期のサービス等の支出予定八項目の動きを「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値(サービス支出DI)でみると、以下のとおりである(第2図参照)。
 (1) 高額ファッション関連支出DIは、このところマイナスとなっているが、前期がマイナス七・〇%のところ、今期はマイナス七・六%となっている。
 (2) 学習塾等補習教育費DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が七・六%のところ、今期は七・七%となっている。
 (3) けいこ事等の月謝類DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が四・三%のところ、今期は三・四%となっている。
 (4) スポーツ活動費DIは、このところプラスに転じており、前期が二・二%のところ、今期は二・八%となっている。
 (5) コンサート等の入場料DIは、このところプラスに転じており、前期が三・六%のところ、今期は四・五%となっている。
 (6) 遊園地等娯楽費DIは、このところマイナスとなっているが、前期がマイナス八・五%のところ、今期はマイナス七・一%となっている。
 (7) レストラン等外食費DIは、このところマイナスとなっているが、前期がマイナス一四・〇%のところ、今期はマイナス一一・九%となっている。
 (8) 家事代行サービスDIは、おおむね安定した動きが続いており、前期がマイナス一・七%のところ、今期はマイナス〇・八%となっている。

4 旅行の実績・予定(季節調整値)

 (1) 国内旅行
 十二年七〜九月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は、前期差で一・五ポイント低下し三三・九%となった。旅行をした世帯当たりの平均人数は、前期差で横ばいの二・九人となった。
 十二年十〜十二月期に国内旅行をする予定の世帯割合は、十二年七〜九月期計画(以下「前期計画」)差で一・一ポイント上昇し三三・〇%、その平均人数は、前期計画差で〇・一人増加し二・九人となっている。
 (2) 海外旅行
 十二年七〜九月期に海外旅行をした世帯割合は、前期差で横ばいの五・七%となった。その平均人数は、前期差で〇・三人減少し一・五人となった。
 十二年十〜十二月期に海外旅行をする予定の世帯割合は、前期計画差で〇・一ポイント上昇し五・五%、その平均人数は、前期計画差で横ばいの一・八人となっている。

〈参 考〉

1 消費者意識指標(季節調整値)
 (レジャー時間、資産価値)

 十二年九月の「レジャー時間」に関する意識は、前期差で〇・四ポイント低下し四四・八となった。
 「資産価値」に関する意識は、前期差で〇・五ポイント上昇し四三・〇となった。

2 主要耐久消費財等の購入状況品目別購入世帯割合の動き(原数値)

 十二年七〜九月期実績は、二十八品目中十七品目の購入世帯割合が前年同期に比べて減少し、九品目が増加した。なお、二品目が横ばいとなった。
 十二年十〜十二月期実績見込みは、二十八品目中六品目の購入世帯割合が前年同期に比べて減少し、十八品目が増加している。なお、四品目が横ばいとなっている(第2表参照)。

3 主要耐久消費財の買替え状況

 十二年七〜九月期に買替えをした世帯について買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気冷蔵庫、電気洗たく機などは八〜十二年となっており、その理由については故障が多い。また、「上位品目への移行」による買替えが多いものとしてビデオカメラ、「住居の変更」による買替えが多いものとしては、ルームエアコンがあげられる。



暮らしのワンポイント


フリージング

 食品を凍らせて保存するフリージング。買い込み過ぎた食材だけでなく、最近は、はじめから冷凍することを考えて、おかずを多めに作っておく家庭が増えています。味や鮮度をできるだけ落とさないポイントを紹介しましょう。
 フリージングのコツは、食品をできるだけ空気に触れさせないこと。せっかくラッピングをしても、中に空気が含まれていると凍りにくくなり、酸化して味も栄養も落ちます。
 調理済みのハンバーグなどは、冷ました後に一個ずつラップで包み、さらに市販のファスナーつき冷凍パックに。中にすき間が残らないように空気を押し出し、ぎりぎりまで閉めたファスナーの端からストローを入れ、中の空気を吸い出して密封します。
 カレーやシチューなど非固形物は直接冷凍パックに。一パックを一人分程度に小分けしておけば、食べるときに必要な量だけ解凍できるので便利です。
 このとき、なるべく薄く平らな形にすること。収納しやすく、凍りやすく、解凍しやすいメリットがあります。ごはんをラップに包んで保存するときも、形を薄くすると効率的です。
 熱を通した食品は冷ましてから冷凍するのが基本。そして、冷凍庫に入れてからは急速冷凍で。食品は凍るまでの間に細胞が破壊されるので、ゆっくり凍らせると味や栄養が損なわれます。
 最近は急速冷凍機能がついた冷蔵庫もありますが、熱伝導の早いアルミのトレーに載せたりアルミ箔(はく)に包んだりすることでも冷凍が早く進みます。
 冷凍パックは、中身が分かるように食品名と冷凍した日を書いておきましょう。なまものは二週間、調理品は一か月が保存の目安。計画的な献立で、効率よく使い切るようにしましょう。
(『広報通信』平成十二年十二月号)





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月例経済報告(十一月報告)


経済企画庁


概 観

 景気は、家計部門の改善が遅れるなど、厳しい状況をなお脱していないが、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては、緩やかな改善が続いている。
 需要面をみると、個人消費は、収入に回復への動きがみられるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどの着工は減少しているが、持家が増加したため、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化している。
 生産は、堅調に増加している。
 雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。
 企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。
 政府は、経済を自律的な回復軌道に乗せるため引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を二十一世紀にふさわしい構造に改革する。このため、十月十九日に、日本新生プランの具体化策等を中心とした「日本新生のための新発展政策」を決定したところであり、その強力な推進を図ることとする。

 我が国経済
 需要面をみると、個人消費は、収入に回復への動きがみられるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどの着工は減少しているが、持家が増加したため、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。
 産業面をみると、生産は、堅調に増加している。企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、企業倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。
 雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。
 輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化している。輸入は、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十月は百七円台から百九円台で推移した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、やや弱含んでいる。
 最近の金融情勢をみると、長短期金利は、十月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、十月は月末にかけて大幅に下落した。マネーサプライ(M+CD)は、九月は前年同月比一・九%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和傾向にあるが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

 海外経済
 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、二〇〇〇年四〜六月期前期比年率五・六%増の後、二〇〇〇年七〜九月期は同二・七%増(暫定値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。十月の長期金利(十年物国債)は、低下基調で推移した後、月末に上昇した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、大きく下落した後、下旬に上昇した。月初と月末を比較すると、上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは増加している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。
 国際金融市場の十月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。
 国際商品市況の十月の動きをみると、CRB商品先物指数は上旬に上昇し、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬にかけ三十三ドル台まで上昇し、その後は三十一ドル前後で推移した。

1 国内需要
―設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加―

 個人消費は、収入に回復への動きがみられるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で八月四・一%減の後、九月(速報値)は〇・四%増(季節調整済前月比二・九%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比一・〇%増、勤労者以外の世帯では同〇・三%増となった。形態別にみると、財は増加、サービスは減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比一・一%増、勤労者世帯では同一・五%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で八月二・三%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で八月一・三%減の後、九月(速報値)は一・五%減(季節調整済前月比一・二%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で八月四・三%減の後、九月(速報値)〇・一%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で八月五・七%減の後、九月七・六%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で十月(速報値)は三・九%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で九月は五・五%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、九月は前年同月比で国内旅行が〇・六%増、海外旅行は二・九%増となった。
 当庁「消費動向調査」(九月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、六月に前期差〇・九ポイント上昇の後、九月には同〇・二ポイントの上昇となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で八月一・〇%増の後、九月(速報)は一・〇%増(事業所規模三十人以上では同〇・九%増)となり、うち所定外給与は、九月(速報)は同五・四%増(事業所規模三十人以上では同五・六%増)となった。実質賃金は、前年同月比で八月二・〇%増の後、九月(速報)は二・〇%増(事業所規模三十人以上では同一・九%増)となった。なお、平成十二年夏季賞与は、事業所規模五人以上では前年比〇・五%増(前年は三・七%減)となった。
 住宅建設は、マンションなどの着工は減少しているが、持家が増加したため、全体ではおおむね横ばいとなっている。
 新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で八月は四・七%増(前年同月比三・八%減)となった後、九月は〇・一%増(前年同月比三・一%減)の十万二千戸(年率百二十二・〇万戸)となった。九月の着工床面積(季節調整値)は、前月比一・六%増(前年同月比一・二%減)となった。九月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比五・七%増(前年同月比一・六%増)、貸家は同三・七%減(同九・七%減)、分譲住宅は同〇・五%減(同〇・四%増)となっている。
 設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加している。
 当庁「法人企業動向調査」(十二年九月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で十二年四〜六月期(実績)三・一%減(うち製造業三・九%増、非製造業八・八%減)の後、十二年七〜九月期(実績見込み)は九・二%増(同六・一%増、同一一・五%増)となっている。年度計画では、前年比で十一年度(実績)一・六%減(うち製造業八・三%減、非製造業二・〇%増)の後、十二年度(計画)は三・〇%増(同五・八%増、同一・七%増)となっている。
 なお、十二年四〜六月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で二・二%増(うち製造業三・四%増、非製造業一・六%増)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で七月は一一・七%減(前年同月比一七・九%増)の後、八月は二六・六%増(同四五・八%増)となり、基調には回復への動きがみられる。
 なお、七〜九月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で一〇・七%増(前年同期比三〇・〇%増)と見込まれている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、八月は季節調整済前月比二四・七%増の後、九月は季節調整済前月比一一・四%減(前年同月比一一・五%減)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比一九・七%減(前年同月比一五・九%増)、非製造業は同一〇・七%減(同一七・三%減)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。
 公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年の公共工事着工統計調査と比較して、七月は七・八%減(参考値)の後、八月は一二・四%減(同)となった。同じく大手五十社の受注額は、前年同月比で八月は一九・三%減の後、九月は二五・五%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で八月は七・一%減の後、九月は一〇・八%減となった。

2 生産雇用
―雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、堅調に増加している。在庫は、九月は減少した。
 鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で八月三・四%増の後、九月(速報)は、石油・石炭製品が増加したものの、電気機械、一般機械等が減少したことから、三・四%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で十月は電気機械、一般機械等により三・四%増の後、十一月は輸送機械、鉄鋼等により、〇・五%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で八月三・九%増の後、九月(速報)は、生産財、耐久消費財等が減少したことから、三・六%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で八月〇・三%増の後、九月(速報)は、プラスチック製品、化学等が増加したものの、輸送機械、石油・石炭製品等が減少したことから、一・一%減となった。また、九月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は九八・八と前月を二・八ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、電気機械及び一般機械では、生産は九月は減少し、在庫も九月は減少した。化学では、生産は九月は減少し、在庫は九月は増加した。
 第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(八月調査、季節調整値)でみると、前月比で七月一・三%減の後、八月(速報)は、電気・ガス・熱供給・水道業が減少したものの、卸売・小売業,飲食店、運輸・通信業等が増加した結果、一・一%増となった。
 農業生産の動向をみると、平成十二年産水稲の全国作況指数(十月十五日現在)は、一〇四の「やや良」となっている。
 雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、八月〇・六二倍の後、九月〇・六二倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、八月一・〇八倍の後、九月一・一一倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、八月は前年同月比〇・二%増(前年同月差十一万人増)の後、九月は同〇・八%増(同四十二万人増)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、八月前年同月比〇・二%減(季節調整済前月比〇・〇%)の後、九月(速報)は同〇・二%減(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・三%減)、産業別には製造業では同一・五%減となった。九月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差十一万人増の三百十八万人、完全失業率(同)は、八月四・六%の後、九月四・七%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では八月前年同月比一二・八%増(季節調整済前月比一・四%増)の後、九月(速報)は同九・三%増(同〇・九%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比九・九%増)。
 企業の動向をみると、企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。
 大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(九月調査)でみると、十二年七〜九月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」−「減少」)は、売上高、経常利益ともに「増加」超幅が拡大した。また、十二年七〜九月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」−「下降」)は、「上昇」超幅が拡大した。
 また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(九月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」−「減少」)は、十二年七〜九月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」−「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」−「悪化」)は、十二年七〜九月期は「悪化」超幅が拡大した。
 企業倒産の状況をみると、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。
 銀行取引停止処分者件数は、九月は一千二十件で前年同月比九・三%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(三四・五%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(二〇・六%)、小売業(一七・〇%)の順となった。

3 国際収支
―輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化―

 輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で八月七・五%増の後、九月は二・九%減(前年同月比六・三%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が増加した。
 輸入は、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で八月一〇・三%増の後、九月は五・九%減(前年同月比八・二%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、機械機器、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、八月に八千九百六十七億円の黒字の後、九月は九千九百十一億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 八月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、貿易収支の黒字幅が縮小したことから、その黒字幅は縮小し、五千六百一億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が拡大したことから、その黒字幅は拡大し、一兆一千八十一億円となった。投資収支(原数値)は、六千四百十六億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、六千七百九億円の赤字となった。
 十月末の外貨準備高は、前月比一億ドル増加して三千四百九十一億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十月は百七円台から百九円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、十月は月初の九十五円台から月末にかけて八十九円台に上昇した後九十一円台に下落した。

4 物価
―消費者物価は、やや弱含み―

 国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。
 九月の国内卸売物価は、非鉄金属(銅地金)等が上昇したものの、電気機器(電子計算機本体)等が下落したことから、前月比〇・一%の下落(前年同月比〇・一%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比一・五%の下落(前年同月比二・二%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比一・一%の下落(前年同月比五・三%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比〇・四%の下落(前年同月比〇・三%の上昇)となった。
 企業向けサービス価格は、九月は前年同月比〇・六%の下落(前月比〇・一%の下落)となった。
 商品市況(月末対比)は鋼材等は上昇したものの、非鉄等の下落により十月は下落した。十月の動きを品目別にみると、H形鋼等は上昇したものの、亜鉛地金等が下落した。
 消費者物価は、やや弱含んでいる。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で八月〇・三%の下落の後、九月は繊維製品の下落幅が拡大したこと等により〇・五%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比〇・三%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で八月〇・八%の下落の後、九月は〇・八%の下落(前月比〇・三%の上昇、季節調整済前月比〇・一%の下落)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で九月一・〇%の下落の後、十月(中旬速報値)は、公共料金(広義)の下落幅が拡大した一方、繊維製品の下落幅が縮小したこと等により一・〇%の下落(前月比〇・一%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で九月一・四%の下落の後、十月(中旬速報値)は一・二%の下落(前月比〇・二%の上昇、季節調整済前月比〇・一%の下落)となった。

5 金融財政
―株式相場は、十月は月末にかけて大幅に下落―

 最近の金融情勢をみると、長短期金利は、十月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、十月は月末にかけて大幅に下落した。M+CDは、九月は前年同月比一・九%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、二、三か月物ともに、十月はおおむね横ばいで推移した。
 公社債市場をみると、国債利回りは、十月はおおむね横ばいで推移した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、八月は前月比で短期は〇・〇八二%ポイント上昇し、長期は〇・一一一%ポイント低下したことから、総合では〇・〇三一%ポイント上昇し一・七八八%となった。
 マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、九月(速報)は前年同月比一・九%増となった。また、広義流動性は、九月(速報)は同三・一%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、九月(速報)は前年同月比四・〇%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後一・八%減)となった。十月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が三百億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は六千九百十億円(うち銀行起債分三千三百億円)となった。
 前記「企業短期経済観測調査」(九月調査)によると、資金繰り判断は、おおむね横ばいとなっているものの、金融機関の貸出態度は、引き続き改善傾向にあり、「緩い」超が続いている。
 以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和傾向にあるが、民間金融機関の貸出は依然低調である。
 株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、十月は月末にかけて大幅に下落した。日経平均株価もほぼ同様の動きとなった。

6 海外経済
―アメリカ、落ち着く景気拡大―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、二〇〇〇年四〜六月期前期比年率五・六%増の後、二〇〇〇年七〜九月期は同二・七%増(暫定値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は九月前月差十九・五万人増の後、十月は同十三・七万人増と拡大している。失業率は十月三・九%となった。物価は総じて安定している。九月の消費者物価は前年同月比三・五%の上昇、九月の生産者物価(完成財総合)は同三・三%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。十月の長期金利(十年物国債)は、低下基調で推移した後、月末に上昇した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、大きく下落した後、下旬に上昇した。月初と月末を比較すると、上昇した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。実質GDPは、ドイツ四〜六月期前期比年率四・七%増、フランス同二・九%増、イギリスは七〜九月期同二・八%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ八月前月比一・〇%増、フランス七、八月同一・六%増、イギリス九月同一・一%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ九月九・四%、フランス九月九・五%、イギリス九月三・六%)。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ十月前年同月比二・三%、フランス九月同二・二%、イギリス九月同二・二%)。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。
 国際金融市場の十月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、十月三十一日現在一一七・三、九月末比二・三%の増価となっている。内訳をみると、十月三十一日現在、対円では九月末比〇・九%増価、対ユーロでは同四・〇%増価した。
 国際商品市況の十月の動きをみると、CRB商品先物指数は上旬に上昇し、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬にかけ三十三ドル台まで上昇し、その後は三十一ドル前後で推移した。



放火による火災の防止


 「放火」および「放火の疑い」による火災は、昭和六十年以降連続して出火原因のトップを占めるとともに、平成四年以降連続して一万件を超えています。また、放火火災の傾向としては、冬から春先および夜間から明け方(二〇時以降翌朝の六時まで)にかけて多く発生しています。
 放火予防対策の基本は、地域住民自ら放火火災に対する危機意識をもち、安全で住み良いまちづくりをすすめていくことです。特に次の点に注意し、放火を防ぐ環境をつくるよう心がけましょう。

建物に対する放火防止

 建物に放火されたケースをみると、建物外周部、倉庫・物置、共同住宅等の玄関ホール、階段室等の共用部分など、侵入されやすい場所や人気のない暗がりが目立ちます。
 侵入を防ぐという観点からは、施錠管理をきちんと行うこと、照明器具を設置すること、防犯機器として市販されている侵入監視センサーなどを設置して警戒することなどが、放火火災を防止するうえで有効です。また、建物の周囲に燃えやすい物を放置せずにきちんと片づけておくようにしましょう。夜間無人となる工事現場や空き家なども、放火されるおそれが高い場所であることから同様の措置を講ずるとともに、敷地内への侵入を防ぐための囲い等の設置、巡回監視などを行う必要があります。

ゴミなどに対する放火防止

 夜間にゴミ捨て場のゴミや放置された新聞・雑誌等に放火されるケースが多くみられます。
 夜間にゴミを出さない、放置しないなど地域ぐるみで気をつけ合うこと、また、ゴミ集積場所のライトアップやコンテナ化などの放火防止対策も必要です。

車両に対する放火防止

 路上、建物外周および屋外駐車場に駐車中の車両の荷台やボディーカバーなどに放火されるケース、施錠がされていない車両の内部に放火されるケースなどがあります。防止対策としては、不用意に車を放置しないことが最も重要ですが、ボディーカバーに防炎製品を使用すること、また、駐車場に常夜灯の設置や車の施錠管理を徹底することも重要です。

放火危険箇所の改善など

 放火火災は道路が狭く、死角の多いところや街頭などの明りが少ない場所、また不用意に可燃物が放置されている場所で多く発生しています。
 このような場所を改善するため、危険箇所チェック用マップ等を作成して自分の住むまちを診断し、危険要因を排除するように努めること、巡回広報等の警戒活動を実施していることをアピールするといった「見せる警戒活動」を実施していくことも有効です。
 放火は不特定多数の人間の生命、および財産に危険をもたらす極めて悪質な犯罪です。放火の危険から地域社会を守るためには、住民、事業所、関係機関等が一体となって、放火されにくい地域環境を作り出す必要があります。
 地域の実情に即して、町内会、自治会、自主防災組織、事業所、関係機関等が連携し、協力体制を確立することによって地域全体で放火に立ち向かうようにしましょう。
(消防庁)



遺言と不動産登記


Q 遺言をするのはどんな場合ですか?

 人が死亡すると、その人が死亡のときに有していた財産(相続財産)について相続が開始します。相続人は、配偶者や子など、被相続人(死亡者)と一定の親族関係にあった者であり、その相続分も法律で定められています(法定相続分)。
 相続財産について、具体的にだれがどの財産(不動産、預金など)をどのような割合で相続するかは、相続人が協議して決めること(遺産分割)もできますが、協議が整わず相続人の間で争いになることもあります。生前に遺言で分割の方法を定めておけば、このような争いを未然に防ぐことが期待できます。
 また、遺言で、財産の全部または一部を処分(遺贈)することもできます。遺贈の相手方は、相続人でも相続人以外の者でも構いませんが、遺留分(一定の相続人のために法律上必ず留保されなければならない遺産の一定割合)に反する遺贈をすることはできません。
 このほか、遺言では、遺言執行者(遺言の内容を実現するための職務を行う者)を選任しておくこともできます。

Q 遺言はどのようにするのでしょうか?

 遺言は、原則として、自筆証書、公正証書等、一定の方式に従ってしなければなりません。自筆証書で遺言をするには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自分で書いて、これに印を押さなければなりません。自筆証書の遺言は、遺言者が死亡すると、遺言の保管者または相続人が家庭裁判所に遺言書を提出して、検認を受けなければなりません。
 公正証書で遺言をするには、公証人の面前で、二人以上の証人が立ち会って、一定の手続に従ってしなければなりません。また、遺言者の印鑑証明書、戸籍謄本、不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書、証人の住民票などの書類が必要なほか、手数料も必要です。遺言公正証書の原本は、公証役場で保管され、遺言者には原本と同一の効力を有する正本が渡されます。万一、正本を紛失しても再交付を受けることができますし、自筆証書による遺言のような家庭裁判所の検認手続は不要です。

Q 遺言がある場合の不動産登記手続はどのようになりますか?

 遺言で分割方法が指定されている場合には、その指定により特定の不動産を相続することになった相続人は、当該遺言書、被相続人が死亡し自己がその相続人であることを証明する戸籍・除籍の謄本などの書類を添付して、相続による所有権移転の登記を申請することができます。
 遺言で遺贈がされている場合には、受遺者は、遺言執行者(遺言で指定されていない場合には、家庭裁判所で選任してもらうことができます。)または相続人全員と共同で、当該遺言書、相続を証する戸籍・除籍の謄抄本などの書類を添付して、遺贈による所有権移転の登記を申請することができます。
(法務省)





    <12月27日号の主な予定>

 ▽警察白書のあらまし…………………………………………警 察 庁 

 ▽平成十二年八月 労働力調査特別調査結果の概要………総 務 庁 

 ▽消費者物価指数の動向(十月)……………………………総 務 庁 




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