官報資料版 平成13年1月17日




                  ▽国民生活白書のあらまし………………………………………………………………経済企画庁(現内閣府)

                  ▽毎月勤労統計調査(九月分)…………………………………………………………厚生労働省

                  ▽労働力調査(平成十二年九月及び平成十二年七〜九月平均結果の概要)………総 務 省

                  ▽月例経済報告(十二月報告)…………………………………………………………経済企画庁(現内閣府)











国民生活白書のあらまし


ボランティアが深める好縁


経済企画庁(現内閣府)


 平成十二年度「国民生活白書」は、平成十二年十一月十日の閣議に報告され、同日公表された。白書のあらましは次のとおりである(なお一部掲載を省略した節がある)。

 (副題解説:経済社会のあり方が大きく変化しつつあり、好みの縁で国民がつながる動きが始まっている。ボランティア活動やNPO(Nonprofit Organization、民間非営利団体)に参加することは、好縁のひとつのきっかけになる。これからは、ボランティア活動が何か特別なものではなく、普段の生活の中で誰でもがふつうに行っているような社会を目指すことが大切である。)

はじめに

 本年の国民生活白書では、ボランティアとNPOの活動を取り上げ、その役割と課題、支援の必要性や方策を検討する。
 まず、ボランティア活動が注目される理由を明らかにしておこう。第一には、経済社会のあり方が大きく変化しつつあり、国民がボランティア活動やNPOに参加することが交流を深める一つのきっかけになるからである。第二には、ボランティアが創意工夫して提供するサービスの有用性が認められ始めているからである。そして、第三には、ボランティア活動が地域における暮らしの豊かさを高めるために大きな貢献をなし得るからである。
 国民生活を豊かにしていく上でボランティア活動の可能性やNPOの役割には大きな期待がかけられていると言えよう。しかしながら、それらの活動には限界や課題があることにも留意することが必要である。自発的なボランティア活動が全て人のためになる善行であると決まっているわけではない。人々の役に立ち、社会の評価と支持を得るように努めていくことが大切である。

第T部 国民生活を豊かにするボランティア活動

第1章 活躍するボランティア

 ボランティアが国民生活の色々な場面で活躍している。本章では、国民生活を豊かにする上で大きな可能性を持つと考えられるボランティア活動について、現状と意識の動向を明らかにする。

第1節 ボランティアの現状

(多様なボランティア)
 二〇〇〇年にも多くのボランティアが活躍している。北海道有珠山噴火災害では、地元ボランティアのほか、全国からボランティアが駆け付け、火山灰の清掃をはじめ多面的な活動によって街の復興を手伝っている。そして、鳥取県西部地震の被災者救援活動に多くのボランティアが参加している。九州・沖縄サミット(二〇〇〇年七月)では、一千四百人を上回る市民がボランティアとして通訳、環境美化、交通案内、受付事務等の活動を行った。

(九〇年代後半から伸びを高めるボランティア数)
 ボランティア活動は多様である。環境保護や社会福祉、国際交流等、様々な場面で人々はボランティア活動を行っている。社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国ボランティア活動振興センターが把握しているボランティア数は、九九年四月時点で六百九十六万人となっている。また、地域赤十字奉仕団の団員数は二〇〇〇年三月末時点で四百一万人にのぼるなど、生活の身近なところで数多くのボランティアが活動している。

(ボランティアの中心は主婦)
 ボランティアの特徴を、@年齢別参加率、A職業の観点から調べてみよう。
 第一に、総務庁「社会生活基本調査報告」(一九九六年)によると、社会奉仕活動行動者率(過去一年間に「社会奉仕活動」をした人の割合、以下、本節ではボランティア活動参加率とする)は二五%(男女計、以下同じ)となっている。これを世代別にみると、二十代までは一五%以下であるが、三十代で三〇%となり、四十代で三三%と最も高くなっている。さらに男女別にみると、三十〜四十代では女性の参加率が男性より特に高く、六十代以降では男性の参加率の方が高くなっている。
 第二に、全国社会福祉協議会「全国ボランティア活動者実態調査報告書」(一九九六年)によると、職業別にみたボランティアの構成比は、主婦が四二%と半数近くにのぼり、次いで定年退職者が一六%となっている。このように、ボランティアには主婦が多く、また、定年退職後に活動する男性も多い。

(アメリカ、イギリスと比べ低い参加率)
 我が国のボランティア活動参加率を諸外国と比較すると、韓国よりも高いものの、アメリカ、イギリスの参加率の半分にとどまっている。また、大陸ヨーロッパ諸国と比較すると、ドイツよりは高く、フランスやオランダと同じ程度となっている。年齢別の参加率については、アメリカ、イギリスと比較して我が国はどの年齢においてもかなり低くなっている。特に十五〜三十四歳の若い世代の参加率が低い(第1図参照)。

(都道府県別にみたボランティア活動参加者の特徴)
 前述「社会生活基本調査報告」により、九六年における各都道府県のボランティア活動参加率をみると、東北、北陸、中国地方等で全国平均参加率よりも高い県が多く、かつ八六年と比べて上昇している県が多い。他方、東京都、青森県や埼玉県等の合計七都道県では、参加率は全国平均より低く、かつ八六年と比べて低下している。

(ボランティア活動をする動機)
 当庁「国民生活選好度調査」(二〇〇〇年)によると、国民の四人に三人は、社会の一員として何か社会の役に立ちたいと考えている。年齢別では、男女とも五十代が最も高く、八割の人が役に立ちたいと回答している。
 次に、実際にボランティア活動への参加意欲を持つ人の割合を調べたところ、「今後ボランティア活動に是非参加してみたい」、「機会があれば参加してみたい」と回答した人の割合は、合計で六五%であった。また、これまでにボランティア活動をしたことがないが活動への参加意欲を持っている人は三七%であり、国民の三人に一人が潜在的参加希望者であることが明らかになった。

第2節 ボランティア活動の魅力と始まり

(好縁のきっかけとなるボランティア活動)
 ボランティア活動における交流の現実を調べてみると、国民の日常生活における交流において、ボランティアの仲間がいるとの回答者が三六%にのぼっている。他方、ボランティア活動をしていないので、その仲間がいない人が全体の六四%を占めている。しかし、仲間が今はいない人でも、そのうち二九%の人は今後交流をしたいという希望を持っている。
 したがって、現状はボランティア仲間のいない人が過半数であるが、何かがきっかけとなれば、ボランティア活動を通じて人々の交流が高まると期待できよう。

(政府や営利企業の制約から自由なボランティア)
 ボランティアには、政府や営利企業には提供できないよさがある。
 ボランティアは、政府や営利企業が直面する制約から自由である。すなわち、@公平性や平等性にこだわらず、自らが必要だと判断した活動を行う、Aしたがって、柔軟で極めてすばやい、Bまた、活動が収益的かどうかは無関係であるため、経済的見返りを考慮しない、Cさらに、活動のコストや継続性を深く考えないですむという気軽さがある。

第3節 高まるボランティア意識の背景とその国際比較

(日米で異なる動機)
 日本とアメリカにおいて、ボランティア活動や寄付をするための動機やきっかけについて調べたところ、両国の間で次のような特徴がみられた(第2図参照)。
 第一に、我が国では、「自分や家族が関係している活動への支援」が最も高く、次いで、「貧しい人を支援すべきという気持ち」、「職業人や住民としての義務を果たすこと」となっている。アメリカでは、「貧しい人を支援すべきという気持ち」が最も高く、次いで、「満足感を得ること」、「利益の社会への還元」となっている。
 「貧しい人を支援すべきという気持ち」は両国とも挙げる人の割合が高い。しかし、それ以外では両国間に違いがある。我が国では知り合いへの活動や義務感がきっかけになる人の割合が高いが、アメリカでは自分自身の満足を高めようとする姿勢が相対的に強く働いているという違いがある。
 第二に、「他人の模範となること」が、アメリカでは六九%(五位)と高くなっているが、我が国では三四%と最も低い。

第2章 ボランティアが広まるために

 本章では、ボランティア活動への参加意欲を持つ人にとって、実際に活動することを困難にしている要因を明らかにし、その対応策を検討する。さらに、どのようなことにより参加意欲が高まっていくのかについて検討する。

第1節 ボランティア活動をする人が直面する課題

(活動を困難にする要因)
 当庁「国民生活選好度調査」(二〇〇〇年)によると、「活動する時間がないこと」がボランティア活動の妨げの要因となると考える人は六割を占める。

(時間的制約を減らすボランティア休暇・休職制度)
 雇用者が平日に活動しやすくなるためには、ボランティア休暇・休職制度の導入、普及が有効である。こうした制度は、社員が平日でもボランティア活動に参加する道を開くものであり、社員の自主性を後押しする制度として有効である。企業は、この制度を通じて社員のボランティア活動への参加を支援することにより、社員と一体となって地域社会の発展に貢献できる。さらに、社員が活動を通じて様々な経験を積むことにより、人材育成にもつながることが期待される。

(ボランティア休暇・休職制度の普及や取得しやすい環境づくりが必要)
 現状では、企業においてボランティア休暇・休職制度はまだあまり普及していない。労働組合を対象とした調査である(財)連合総合生活開発研究所「労働組合とボランティア活動」(一九九七年)によると、ボランティア休暇・休職制度がある企業はともに二割にとどまっている。また、ボランティア休暇・休職制度の利用状況について、(社)国際経済労働研究所「勤労者のゆとり感とあそび」(一九九九年)の調査によると、当該制度を有する企業の社員のうち、今までに制度を利用したことがある社員は五%にすぎない。
 したがって、制度の利用が進むためには、社員が制度を利用しやすい環境づくりが望まれる。

第2節 ボランティア活動の意欲に関わる問題

(教育でボランティアを取り上げることへの期待は高まってきている)
 当庁「国民生活選好度調査」(二〇〇〇年)によると、ボランティア活動への理解を深めるために「ボランティア活動を行っている人が学校でその体験を教えること」に期待する人が六三%、「授業(講義)や放課後、夏休み中などに、ボランティア活動に参加させること」に期待する人が五三%となっている。一方、「ボランティア活動を単位として認定すること」については、肯定派は二五%となっており、「どちらともいえない」人が半数を超えている(第3図参照)。

(ボランティアが実費、謝礼、報酬を受けること)
 前述「国民生活選好度調査」により、実費、謝礼や報酬を受けることについての意識を調べると、ボランティア活動をした人は実費や謝礼を一切受け取るべきではないと考える人の割合は、九三年の三〇%から二〇〇〇年には一九%に低下している。また、若干の謝礼、あるいは報酬を受けてもよいとの回答計は、九三年と比べてわずかながら増えている(第4図参照)。ボランティアは無償でなくてもよいことに対する理解がみられる。

(幅広いボランティア活動の理解が必要)
 ボランティア活動は無償であるべきだと制約してしまうと、活動が広まらないだけでなく、活動の継続も困難になる。したがって、ボランティアにとって、対価を目的としない無償性は重要な要素の一つであろうが、ボランティア活動の中には、実費を受け取る活動や、提供した労働価値を超えない範囲で報酬を受け取る活動もあるのだと幅広く理解することが必要であろう。それにより、ボランティア活動の多様性、継続性は高まっていくことが期待される。

第3節 ボランティア活動の領域

 行政とボランティア活動の役割分担に関しては次のように課題を整理することができよう。
 第一に、健康な生活を保ち、家計を維持していくための基本的な安全ネットを整備するのは、行政の責任である。
 第二に、生活上の多様なニーズで個別性の高いものについては、行政が対応しない分野であり、ボランティア活動が役割を果たすと期待される。
 第三に、創意工夫のあるボランティア活動が先駆となって、その活動をやがて行政が取り込み、制度的にサービスを提供していくようになる場合もある。
 生活の質を高め、国民生活をより豊かなものにしていくためには、こうした役割分担の下で、ボランティア活動が社会に根付いていくことが必要になっている。

第3章 寄付の活性化に向けて

 本章では、我が国の寄付の特徴を明らかにするとともに、その活性化に向けた方策を考察する。

第1節 寄付の現状と課題

(アメリカと比べ少ない家計の寄付)
 総務庁「家計調査年報」(一九九九年)によると、我が国の二人以上世帯における一世帯当たりの寄付金額(寄付をしていない世帯を含む)は、九九年の一年間で三千二百円、同「単身世帯収支調査年報」(一九九九年)によると、単身世帯では二千九百円となっている。一方、九八年のアメリカでは、一世帯当たり七百五十四ドル(九万八千八百円、寄付をしていない世帯を含む)となっており、我が国の三十倍を超えている。

(社会貢献の意識だけではない寄付行動)
 九九年六月〜二〇〇〇年五月の一年間に寄付をした人の動機は(複数回答)、「町内会の付き合いの一環として」が五三%と最も高く、次いで「困っている人の役に立ちたいと思ったから」が四一%となっている。「社会の役に立ちたいと思ったから」は二〇%であり、「職場の付き合いの一環として」の一七%をわずかに上回る程度となっている。
 また、社会福祉法人 中央共同募金会の意識調査(二〇〇〇年)によると、共同募金に寄付した際、「強制感を感じた」人の割合は一一%となっており、十人に一人が強制感を感じている。このように、人々が寄付をする背景には、純粋な社会貢献の意識だけではなく、付き合いの意識や強制感も働いている。

第2節 寄付の活性化の方策

(ボランティア活動をしている人は寄付にも積極的という相乗効果)
 ボランティア活動を現在している人(活動者)、過去にしたことがある人(経験者)、これまでにしたことはない人(未経験者)に分けると、活動者の方が、活動経験者や未経験者よりも世帯寄付金額が多い分布となっている。

(寄付の多様性に貢献するマッチングギフト制度)
 マッチングギフト制度(社員がある団体に寄付をしたときに、企業がその寄付金に上乗せして寄付金を拠出する仕組み)は、多くのメリットがある。社員にとっては、自分が貢献したいと考える団体に対して、個人の寄付金以上の金銭的貢献ができる。企業は、社員の意向を尊重して社会に貢献できる。さらに、寄付の多様性が確保されることに加え、寄付を受けようとする団体は、個人から寄付先に選ばれるように今まで以上に努めることが大切になる。

(マッチングギフト制度が普及していくために)
 マッチングギフト制度については、我が国でも回答者の七割がマッチングギフト制度を肯定的にとらえている。しかし、現状では普及率は低くなっており、マッチングギフト制度が導入されていると答えた労働組合は五%にすぎない。アメリカにおいては、マッチングギフト制度は七千五百を超える企業で導入されている。我が国でも、寄付の活性化にはマッチングギフト制度が重要な役割を果たすと期待され、企業におけるさらなる取り組みが望まれる。

(寄付金の税制上の優遇について)
 我が国の現行の所得税においては、個人は特定の寄付金についてのみ、所得控除をすることができる。しかし、NPO法で認証されたNPO法人に対する寄付金は、所得控除の対象となっていない。NPO法人の活動を支援する一つの方法として、NPO法人への寄付金に対して税制上の優遇措置を求める考えがあり、現在検討が進められている。

第4章 ITからみた交流とボランティア

 本章では、IT(Information Technology、情報通信技術)がどのように人と人とのつながりを変化させ、新しい「縁」をもたらしているかについて明らかにする。そして、ITを活かして活躍するボランティアの事例を考察する。

第1節 ITが進める人と人とのつながり

(インターネットによって広がる交流)
 インターネットの利用により、「遠くの友人と連絡をとる回数」と「それまで疎遠となっていた人と連絡をとる回数」が増えたと答える人がそれぞれ五割近くにのぼっている。次いで、「直接会ったことのない友人の数」が増えたとする人が四割近くに達している。
 このように、インターネットによって旧知の友人との交流がより頻繁になる一方で、趣味や考え方を共有する新しい友人との縁が結ばれつつあるという変化が生じている。

第2節 ITを活用する新しいボランティア

(知恵が物言う新しいボランティア)
 ITを活用する新しいボランティア活動が誕生している。例えば、@阪神・淡路大震災時に、災害関連情報を社会に広める活動を行った「情報ボランティア」、Aパソコン技術を小学校の教員、高齢者や障害者に教える「パソコンボランティア」、Bインターネットを使い遠隔教育をしたり、病院等にいる人を訪問する「バーチャルボランティア」が挙げられる。
 ボランティア活動は、個人の時間や労力を他の人のために役立てるものである。それらに制約がある人でも、知恵の観点から色々な方法で人の役に立つことができる。ITは、ボランティアの可能性を一層広げていくと期待される。

第5章 ボランティア活動の促進とNPO

第1節 高まるNPOへの期待

(ボランティア活動からNPOへ)
 ボランティアとNPOとを厳密に特徴付けるのは困難であるが、いくつかの違いがある。第一に、NPOには事務所やスタッフが必要になる。第二に、NPOには報酬を受けるスタッフが働いているところもある。第三に、NPOは日常的、継続的に活動することが可能である。しかし大切な点は、両者はばらばらのものではなく、NPOの活動の中心にボランティアがいることである。

(NPOの定義)
 組織化されたボランティア団体や市民活動団体は「NPO」と呼ばれる。しかし、NPOという語は、国民の間ではまだまだ知られていない。
 NPOにどのような団体を含むかについては、色々な考え方が存在している。狭義から広義まで、国内でも海外でも統一されていない。
 本書におけるNPOは、@NPO法に則して認証されたNPO法人、A法人格は取得していない市民活動団体やボランティア団体、と二つの類型を含むものと考えて議論をしている。

(NPO法施行により増加するNPO法人)
 NPO法の施行によって、ボランティア団体や市民活動団体も法人格を取得できるようになった。NPO法に基づき法人格を取得した団体は、二〇〇〇年十月二十日時点で二千七百六十三団体となっている。今後も、その数は増加するものと考えられる。

(活発化するNPOの活動)
 NPO法は、特定非営利活動として十二の活動分野を規定している。したがって、NPOが法人格を取得するためには、そのいずれかの分野に該当する必要があるが、一方で、複数の分野の活動を行うことも可能である。
 NPO法人の活動分野について調べてみると(複数回答)、「保健・医療・福祉」が三分の二を占め、最も高くなっている。以下、「まちづくり」、「子供の健全育成」、「社会教育」、「文化・芸術・スポーツ」、「環境保全」、「国際協力」の順になっており、NPO法人の活動分野は多様なものになっている(第5図参照)。

(NPOの活動の利点)
 NPOとして組織的かつ継続的な活動が行われていくと、個人や社会にとって便益が生まれる。
第一に、NPOは個人の自発的な参加によって創られる組織であり、好縁社会における重要な主体である。したがって、人々はNPOの活動を通じて新しい人との交流を深め、生きがいを高めることが可能になっている。
 第二に、創造性に富んだ活動を行うNPOは、生活する人々の多様なニーズに応えることができ、地域に生活の豊かさがもたらされる。
 第三に、NPOの活動を通じて地域の人々の交流が深まり、そこに住む生活者同士の連携が強まる結果、地域生活がより活き活きとしたものになり、暮らしの豊かさを高めることが可能になる。

第2節 NPOを育てるために

(NPOが直面する課題)
 NPOは、活動基盤の脆弱なものが多い。年間の収入総額は二百万円未満が最多で収入基盤が弱く、事務所の確保も困難という問題に直面している。
 また、NPOが活動をしていくためには、会員や専従スタッフ、理事等、様々な人材が必要であるが、会員集めやスタッフの不足についても課題として挙げられる。

(大切なNPOへの支援)
 様々な課題にNPOが対処していく上で、行政の協力や支援が重要になっている。NPO法人への寄付に対する優遇税制を含め、NPOに対する支援については、その実態を見極めた上で、広範な観点から検討していくことが必要と考えられている。NPOは、行政に対して自主性・自立性に配慮した支援を求めている。

(支援策として重要なNPOへの事業委託)
 行政からNPOへの事業委託について、行政がNPOに期待する点を調べてみると、「市民ニーズにより合ったサービスの向上が図られる」が最も高く、次いで「行政だけではできないサービスができる」、「コストの削減につながる」となっている。

(市民が選び育てるNPO)
 NPO法人は、政府から活動の「お墨付き」を得ているわけではない。NPOは、透明性の高い活動を続け、市民生活に有益なサービスを提供する中で、市民の理解や評価を得ていくことが必要である。他方、市民は会員になったり、NPOのサービスを利用したり、あるいはボランティアや寄付を行うことによってNPOを支援していくことができる。
 それは、市民がNPOを選び、支援を通じて育成し、そして有益な事業が続くように見守っていくことが、今後のNPOにとって重要なポイントになることを意味する。

第U部 家計の消費貯蓄動向と寄付への支出

 家計の情報関連支出の動向、高齢者の楽しみに関する支出の特徴、家計調査に基づいた寄付金の動向等のトピックについて分析した。
 情報関連支出については、特に三十代までの若い世帯で支出が顕著に増加している。
 阪神・淡路大震災のあった九五年を除くと、九〇年代の寄付金は三千円台でほぼ横ばいで推移した。年間収入と寄付額の関係については、@年間収入が多いほど寄付金額も多くなっている、A九四年から九五年の変化では、どの年間収入階級でも寄付金額は増えているという特徴がみられる。

むすび

(ボランティア活動が生活の中でふつうのことになるために)
 ボランティアは好きなことをするのが始まりである。そのとき、個人から社会へ「窓」を開き新しいつながりを求めていくと、見知らぬ世界を発見する喜びが生まれる。そこでは、仲間と夢や希望を共有することができる。個人の自発的な参加によって創られるNPOは、窓を開く上で大きな可能性を持っている。
 自分発で開いていく窓は、一つ一つをみれば小さなものにすぎない。しかし、多彩な窓があちらこちらで開いていくとき、社会全体としてみれば交流の可能性が無数に広がる。そして、行政や企業には対応できない多様なニーズが満たされ、生活に豊かさがもたらされる。これは、ボランティア活動が何か特別なものではなく、普段の生活の中で誰でもがふつうに行っているような社会であると考えられる。
 我が国では陰徳の美風という意識があり、善行は人知れず行うものと考えられる傾向がある。しかし、ボランティア活動が生活のふつうの一こまになれば、国民の四人に三人が社会のために役に立ちたいと考えているという恵まれた土壌が大きく生きてくる。
 経済社会の流れは、規格化、大量化、大型化の方向から、多様化、ソフト化、情報化に変化している。この流れの中で、無数の窓が開いているような社会を着実に実現していくために、市民、NPO、企業、行政が力を合わせて前進を始める時が到来している。




歳時記


御降り

 「御降(おさが)り」というのは、元日または、三が日に降る雨や雪のことです。
 普通、「御下がり」というと、神仏の供え物をおろして人が食べることとか、年長の人から譲られた衣服などのことを指します。
 しかし、季語の場合は昔、一月一日や三が日に雨や雪が降ると豊作の吉兆として喜ばれたことから、「御降り」または「お降り」と表現するようです。
 御降りに 眉目濡らして 三輪詣(もう)で
                     北野民夫
 毎年のしきたりになっている三輪神社への初詣。この年は御降りがあり、眉目を濡らしつつ詣でることに。縁起がよいといわれる御降りなので、雨をいやがるのでなく、むしろいそいそと出かける感じが出ています。
 三輪神社は大神(おおみわ)神社の別称。奈良県桜井市の三輪山を神体としている神社で、二十二社(朝廷が畿内を中心に建てた神社)の内の一つです。
 御降りの 呟(つぶや)き止(や)みて 昏(く)れにけり
                            阿部みどり女(じょ)
 御降りの、しとしととした風情が感じられます。この時期の雨は豪雨となることは少なく、いつのまにか御降りが止んで、一月一日の夜が静かに昏れていく―心静かに正月を迎えた気分が伝わってきます。
 豪雨の心配はあまりしなくてもいいようですが、地震などの災害はこの時期でも起こります。一月十七日は「防災とボランティアの日」です。自主防災組織に参加する心構えを身につけたいものです。
(『広報通信』平成十三年一月号)



今年は巳年


約二千七百種も生息

 蛇は爬虫(はちゅう)類ヘビ亜目の動物で、トカゲと同じ祖先をもつといわれています。
 体は細長く、四肢はありません。細い舌の先端は二またに分かれていてよく動きます。こんな異様な外見から、蛇を嫌う人が多いようです。
 蛇は温帯、熱帯、亜熱帯に多く生息し、アラスカ、シベリアなど寒い地方にもいます。全世界に約二千七百種もいるといわれています。

蛇は悪者? 神?

 日本の神話に登場する蛇はヤマタノオロチ(八岐大蛇)といって、頭が八つ尾が八つ、体の長さは八つの谷を越えるほどだったといいます。そのオロチが娘を食いにきて、スサノオノミコトという神に退治されたという話です。
 一方、蛇は神格化され、聖書や神話にもしばしば登場します。また、水の神として信仰されたり、家の守り神として家に住みつくのを喜んだりする例もあります。
 このように、蛇は悪者として恐れられてもいますが、神としてあがめられることもあり、いろいろな話が世界各地に伝わっています。
 また、毒蛇が恐れられ、嫌われるのはもちろんですが、それを薬用に使う例もあり、強壮剤としても珍重されています。

蛇の絵に足を書きたす

 蛇は、古くから人間とかかわりが多い動物だけに、蛇に関する故事やことわざもいろいろあります。
 「蛇足(だそく)」。これはよく知られている言葉で日常会話にも使われていますが、こんな由来があります。
 昔、楚(そ)の国の役人が、蛇の絵を一番早く書いた者が酒を飲むことができるという競争をしました。一人がいち早く完成したのにもかかわらず、時間に余裕があったので足を書きたしてしまい、負けてしまったという話です。
 そのことから、あっても意味のないもの、余計なことという意味に使われています。
 「蛇(じゃ)の道はへび」も、よく聞くことわざです。「じゃ」といい「へび」といっても、呼び方が違うだけで同じもの。同じ仲間のやったことならすぐに分かるという意味です。
 「薮蛇(やぶへび)」「薮をつついて蛇を出す」。しなくてもよいことをして、かえってよくない結果になることです。

心豊かに暮らせる年に

 「蛇穴(へびあな)を出(い)づ」という言葉もあります。冬眠していた蛇が、春暖になって地上に出てくることをいいます。
 二十一世紀の始まりの今年は巳(み)年。低迷していた景気から脱出して春を迎え、みんなが安心して心豊かに暮らせる年にしたいものです。
(『広報通信』平成十三年一月号)





目次へ戻る

賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十二年九月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十二年九月分結果の主な特徴点は、次のとおりである。

◇賃金の動き

 九月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は二十八万八千四百九十一円、前年同月比は一・〇%増であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万四千二百九十八円、前年同月比一・〇%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万五千八百八十九円、前年同月比〇・八%増、所定外給与は一万八千四百九円、前年同月比は五・四%増であった。
 また、特別に支払われた給与は四千百九十三円、前年同月比は一・五%減であった。
 実質賃金は、二・〇%増であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に不動産業七・六%増、鉱業及び金融・保険業三・七%増、建設業二・二%増、製造業及び運輸・通信業〇・九%増、卸売・小売業,飲食店及びサービス業〇・八%増、電気・ガス・熱供給・水道業〇・四%減であった。

◇労働時間の動き

 九月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は百五十五・五時間、前年同月比一・〇%増であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は百四十五・七時間、前年同月比〇・八%増、所定外労働時間は九・八時間、前年同月比四・二%増、所定外労働時間の季節調整値は前月比一・一%増であった。
 製造業の所定外労働時間は十四・〇時間、前年同月比九・三%増、季節調整値の前月比は〇・九%減であった。

◇雇用の動き

 九月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・二%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・九%減、パートタイム労働者では二・五%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは不動産業二・〇%増、サービス業一・六%増であった。前年同月を下回ったものは建設業〇・二%減、運輸・通信業〇・五%減、卸売・小売業,飲食店〇・六%減、製造業一・五%減、金融・保険業及び鉱業三・二%減、電気・ガス・熱供給・水道業七・四%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・七%減、パートタイム労働者六・九%増、卸売・小売業,飲食店では一般労働者〇・七%減、パートタイム労働者〇・五%減、サービス業では一般労働者〇・九%増、パートタイム労働者五・一%増であった。










言葉の履歴書


鏡開き

 「かがみ」は光の反射を利用して、姿や形を映して見る道具。語源としては、光の赫(かが)やきを見る「赫見」の意、あるいはものの面影を見る「影見」の転とする説があります。
 青銅など金属性のかがみ(鏡・鑑)は、中国から渡来したもの。「鏡」は竟(きよう)(ものの姿形)を映す金属器を指し、古くは金属の監(かん)(水の入った盤)をのぞく「鑑」が使われました。ガラスを用いた鏡がヨーロッパで普及したのは、十七世紀以後のことです。
 日本では古代から「鏡は神の正体」として神社の御神体とされ、神聖な祭具となってきました。
 「知恵の鏡」は知恵のすぐれたことを鏡に例えた表現。また、「昔は今の鏡」といえば、歴史上の出来事が、現代でもお手本となる意味に用いられています。
 鏡のように円い大小の餅(もち)を重ねた「鏡餅」は、新年用の「お供え」。江戸時代から正月二十日(のち十一日)には、鏡餅を割って雑煮や汁粉にして食べました。「割る」の忌み言葉「開く」を使う「鏡開き」の風習は、今も行われています。
(『広報通信』平成十三年一月号)





目次へ戻る

九月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十二年九月及び平成十二年七〜九月平均結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十二年九月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千四百八十万人、完全失業者は三百二十万人、非労働力人口は四千三十四万人で、前年同月に比べそれぞれ三十四万人(〇・五%)減、三万人(〇・九%)増、八十二万人(二・一%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千四百八十万人で、前年同月に比べ三十四万人(〇・五%)の減少となっている。男女別にみると、男性は三千八百三十六万人、女性は二千六百四十四万人で、前年同月と比べると、男性は二十万人(〇・五%)減、女性は十四万人(〇・五%)減となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百九十七万人、自営業主・家族従業者は一千七十一万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は四十二万人(〇・八%)増、自営業主・家族従業者は六十七万人減となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百六十一万人で、四十万人(〇・八%)増、五か月連続の増加
 ○常 雇…四千六百九十一万人で、六万人(〇・一%)増、三か月ぶりの増加
 ○臨時雇…五百七十五万人で、六十三万人(一二・三%)増、平成八年九月以降増加が継続
 ○日 雇…九十四万人で、二十九万人(二三・六%)減、五か月ぶりの減少

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百二十八万人で、五万人(一・五%)減
○建設業…六百七十七万人で、十一万人(一・七%)増、五か月ぶりの増加
○製造業…一千三百二十六万人で、十二万人(〇・九%)減、平成九年六月以降、減少が継続
○運輸・通信業…四百十一万人で、六万人(一・五%)増、六か月連続で増加
○卸売・小売業,飲食店…一千四百六十万人で、四十五万人(三・〇%)減、四か月連続で減少
○サービス業…一千七百十七万人で、三十六万人(二・一%)増、七か月連続で増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百六十万人で、十二万人(二・二%)増
○製造業…一千二百十五万人で、一万人(〇・一%)減
○運輸・通信業…三百九十一万人で、九万人(二・四%)増
○卸売・小売業,飲食店…一千百九十五万人で、二十二万人(一・八%)減
○サービス業…一千四百八十八万人で、五十四万人(三・八%)増

(4) 従業者階級

 企業の従業者階級別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百三十万人で、三十一万人(一・八%)減、十二か月連続の減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百八十万人で、五十八万人(三・四%)増
○五百人以上規模…一千二百七十五万人で、二十一万人(一・七%)増、十二か月連続で増加

(5) 就業時間

 九月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百六万人で、四十六万人(三・二%)減少
 ・うち一〜三十時間未満…一千二十七万人で、十六万人(一・五%)減少
○三十五時間以上…四千九百七十万人で、十六万人(〇・三%)増加
 ・うち四十九時間以上…一千八百七十一万人で、七十七万人(四・三%)増加、十五か月連続で増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四十三・一時間で、前年同月に比べ〇・四時間の増加となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百二十万人で、前年同月に比べ三万人(〇・九%)増と、五か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は百九十三万人、女性は百二十六万人で、前年同月に比べ、男性は七万人(三・八%)の増加、女性は五万人(三・八%)の減少となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりである。
○非自発的な離職による者…九十九万人で、一万人増加
○自発的な離職による者…百九万人で、九万人減少
○学卒未就職者…十七万人で、二万人増加
○その他の者…八十五万人で、十二万人増加

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・七%で、前月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は四・八%、女性は四・五%で、男女とも前月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は四・七%で、前年同月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は四・八%で〇・二ポイントの上昇、女性は四・五%で、〇・二ポイントの低下となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…四十万人(三万人減)、一〇・五%(〇・二ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十六万人(六万人増)、五・〇%(〇・六ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十二万人(一万人減)、二・八%(〇・一ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…三十三万人(五万人増)、三・五%(〇・五ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十三万人(同数)、六・三%(〇・一ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十六万人(三万人減)、三・九%(〇・七ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…二十七万人(三万人増)、九・八%(一・一ポイント上昇)
○六十五歳以上…十万人(一万人増)、三・一%(〇・三ポイント上昇)
 [女]
○十五〜二十四歳…三十一万人(一万人減)、八・四%(〇・二ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十万人(四万人減)、六・八%(〇・六ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…十七万人(二万人減)、三・三%(〇・四ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…二十二万人(二万人増)、三・三%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十六万人(一万人増)、三・七%(〇・三ポイント上昇)
○六十五歳以上…一万人(同数)、〇・五%(同率)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

○世帯主…八十五万人(三万人増)、三・一%(〇・一ポイント上昇)
○世帯主の配偶者…三十八万人(五万人減)、二・六%(〇・四ポイント低下)
○その他の家族…百四十六万人(同数)、七・九%(同率)
○単身世帯…五十一万人(五万人増)、六・六%(〇・八ポイント上昇)

(6) 地域別完全失業率

 平成十二年七〜九月平均の地域別完全失業率及び対前年同期増減は、次のとおりとなっている。
北海道…四・七%(〇・一ポイント低下)
東 北…四・二%(〇・二ポイント上昇)
南関東…四・九%(〇・四ポイント低下)
北関東・甲信…三・五%(同率)
北 陸…三・五%(〇・三ポイント上昇)
東 海…三・五%(〇・五ポイント低下)
近 畿…五・八%(〇・一ポイント低下)
中 国…三・九%(〇・三ポイント上昇)
四 国…四・七%(〇・一ポイント上昇)
九 州…五・三%(〇・四ポイント上昇)












目次へ戻る

月例経済報告(十二月報告)


経済企画庁(現内閣府)


概 観

 景気は、家計部門の改善が遅れるなど、厳しい状況をなお脱していないが、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては、緩やかな改善が続いている。
 需要面をみると、個人消費は、収入がやや回復してきたものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、このところ増加してきた持家の着工が減少し、直近ではやや水準を下げている。設備投資は、製造業を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。輸出は、おおむね横ばいとなっている。
 生産は、堅調に増加している。
 雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。
 企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、全体としては改善のテンポが緩やかになってきており、先行きに慎重な見方もみられる。一方、倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。
 政府は、経済を自律的な回復軌道に乗せるため引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を二十一世紀にふさわしい構造に改革する。このため、先般決定した「日本新生のための新発展政策」を強力に推進する。

◇    ◇    ◇

我が国経済
 需要面をみると、個人消費は、収入がやや回復してきたものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、このところ増加してきた持家の着工が減少し、直近ではやや水準を下げている。設備投資は、製造業を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。
 十二年七〜九月期(速報)の実質国内総生産は、前期比〇・二%増(年率一・〇%増)となり、うち内需寄与度は〇・三%となった。
 産業面をみると、生産は、堅調に増加している。企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、全体としては改善のテンポが緩やかになってきており、先行きに慎重な見方もみられる。一方、企業倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。
 雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。
 輸出は、おおむね横ばいとなっている。輸入は、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、原油価格の上昇などから、緩やかに減少している。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十一月は百七円台から百八円台で推移した後、月末には百十一円台に下落した。
 物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、やや弱含んでいる。
 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十一月はやや上昇した。長期金利は、十一月は低下した。株式相場は、十一月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落した。マネーサプライ(M+CD)は、十一月は前年同月比二・一%増となった。民間金融機関の貸出は依然低調である。また、企業金融のひっ迫感緩和は一服している。

海外経済
 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、二〇〇〇年四〜六月期前期比年率五・六%増の後、七〜九月期は同二・四%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は伸びが鈍化している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、十一月十五日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据え置きを決定した(それぞれ六・五〇%、六・〇〇%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。十一月の長期金利(十年物国債)は、月初に上昇した後、低下した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、上昇で始まったが、その後下落基調で推移した。月初と月末を比較すると、下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は安定した拡大が続いている。鉱工業生産は、ドイツではこのところ横ばいで推移している。フランスでは増加している。イギリスではこのところ横ばいで推移している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、景気は拡大を続けてきたが、このところ生産の伸びが鈍化するなど、先行きに不透明感が広がっている。貿易は、輸出入ともに増加が続いている。
 国際金融市場の十一月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移したが月末に減価した。
 国際商品市況の十一月の動きをみると、CRB商品先物指数は月初から上昇基調で推移し、月末にかけほぼ一か月半ぶりに二三〇ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬まで上昇基調で推移し、その後は反落した。

1 国内需要
―設備投資は、製造業を中心に増加―

 個人消費は、収入がやや回復してきたものの、おおむね横ばいの状態が続いている。
 家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で九月〇・四%増の後、十月(速報値)は〇・二%減(季節調整済前月比〇・五%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比〇・一%減、勤労者以外の世帯では同〇・二%増となった。形態別にみると、財は減少、サービスは増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比〇・三%増、勤労者世帯では同〇・七%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で九月一・〇%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で九月一・三%減の後、十月(速報値)は二・四%減(季節調整済前月比〇・〇%)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で九月〇・三%減の後、十月(速報値)三・六%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で九月七・六%減の後、十月四・九%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で十一月(速報値)は二・九%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で十月は四・二%増となった。レジャー面を大手旅行業者十三社取扱金額でみると、十月は前年同月比で国内旅行が〇・六%減、海外旅行は五・八%増となった。
 賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模五人以上では前年同月比で九月〇・九%増の後、十月(速報)は一・一%増(事業所規模三十人以上では同一・三%増)となり、うち所定外給与は、十月(速報)は同四・四%増(事業所規模三十人以上では同五・二%増)となった。実質賃金は、前年同月比で九月一・九%増の後、十月(速報)は二・三%増(事業所規模三十人以上では同二・四%増)となった。
 住宅建設は、このところ増加してきた持家の着工が減少し、直近ではやや水準を下げている。
新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で九月は〇・一%増(前年同月比三・一%減)となった後、十月は四・六%減(前年同月比一・五%増)の九万七千戸(年率百十六・四万戸)となった。十月の着工床面積(季節調整値)は、前月比五・四%減(前年同月比五・〇%増)となった。十月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比一〇・〇%減(前年同月比七・八%増)、貸家は同〇・四%減(同二・七%減)、分譲住宅は同〇・七%減(同〇・二%増)となっている。
 設備投資は、製造業を中心に増加している。
 日本銀行「企業短期経済観測調査」(十二月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の十二年度設備投資計画は、製造業で前年度比一六・四%増(九月調査比二・三%上方修正)、非製造業で同二・五%増(同一・〇%上方修正)となっており、全産業では同七・六%増(同一・五%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比一四・六%増(九月調査比四・一%上方修正)、非製造業で同〇・一%増(同一・六%上方修正)となり、中小企業では製造業で同一一・三%増(同五・八%上方修正)、非製造業で七・二%減(同三・四%上方修正)となっている。
 なお、十二年七〜九月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で〇・二%増(うち製造業一三・〇%増、非製造業五・九%減)となった。
 先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で九月は一六・五%減(前年同月比一八・〇%増)の後、十月は八・三%増(同二五・四%増)となり、基調は、全体として増勢が続いている。
 なお、十〜十二月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で七・六%増(前年同期比二六・四%増)と見込まれている。
 民間からの建設工事受注額(五十社、非住宅)をみると、おおむね横ばいで推移しており、十月は季節調整済前月比五・二%減(前年同月比五・八%減)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比三一・〇%増(前年同月比九二・五%増)、非製造業は同一六・三%減(同二四・八%減)となった。
 公的需要関連指標をみると、公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。
 公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年の公共工事着工統計調査と比較して、九月は二五・九%減(参考値)の後、十月は二・三%減(同)となった。同じく大手五十社の受注額は、前年同月比で九月は二五・五%減の後、十月は二七・五%増となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で九月は一〇・八%減の後、十月は一八・六%減となった。

2 生産雇用
―生産は、堅調に増加―

 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、堅調に増加している。在庫は、十月は増加した。
 鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で九月三・四%減の後、十月(速報)は、一般機械、化学等が低下したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、一・五%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で十一月は輸送機械、鉄鋼等により〇・一%増の後、十二月は輸送機械、一般機械等により、一・〇%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で九月三・六%減の後、十月(速報)は、耐久消費財、非耐久消費財が増加したことから、〇・八%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で九月一・〇%減の後、十月(速報)は、精密機械等が減少したものの、石油・石炭製品、輸送機械等が増加したことから、一・三%増となった。また、十月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は一〇一・〇と前月を二・〇ポイント上回った。
 主な業種について最近の動きをみると、電気機械及び輸送機械では、生産は十月は増加し、在庫も十月は増加した。化学では、生産は二か月連続で減少し、在庫は二か月連続で増加した。
 第三次産業の動向を通商産業省「第三次産業活動指数」(九月調査、季節調整値)でみると、前月比で八月一・二%増の後、九月(速報)は、サービス業、運輸・通信業が増加したものの、卸売・小売業,飲食店、不動産業等が減少した結果、一・一%減となった。
 雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。
 労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、九月〇・六二倍の後、十月〇・六四倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、九月一・一一倍の後、十月一・一一倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、九月は前年同月比〇・八%増(前年同月差四十二万人増)の後、十月は同一・〇%増(同五十二万人増)となった。常用雇用(事業所規模五人以上)は、九月前年同月比〇・二%減(季節調整済前月比〇・〇%)の後、十月(速報)は同〇・一%減(同〇・〇%)となり(事業所規模三十人以上では前年同月比一・一%減)、産業別には製造業では同一・二%減となった。十月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差一万人減の三百十七万人、完全失業率(同)は、九月四・七%の後、十月四・七%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模五人以上では九月前年同月比一〇・九%増(季節調整済前月比〇・五%増)の後、十月(速報)は同一〇・〇%増(同一・二%減)となっている(事業所規模三十人以上では前年同月比一一・八%増)。
 前記「全国企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると、企業の雇用人員判断は、過剰感が低下傾向にある。また、労働省「労働経済動向調査」(十一月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、低下傾向にある。
 企業の動向をみると、企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、全体としては改善のテンポが緩やかになってきており、先行きに慎重な見方もみられる。
 前記「企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は十二年度上期には前年同期比三三・三%の増益の後、十二年度下期には同三・一%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では十二年度上期に前年同期比四一・一%の増益の後、十二年度下期には同二〇・五%の増益が見込まれている。また、非製造業では十二年度上期に前年同期比二六・六%の増益の後、十二年度下期には同一一・九%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では十二年度上期に四・四五%になった後、十二年度下期は四・五八%と見込まれている。また、非製造業では十二年度上期に二・九八%となった後、十二年度下期は二・三四%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業は横ばいとなり、非製造業は「悪い」超幅が拡大した。
 また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は十二年度上期には前年同期比四六・一%の増益の後、十二年度下期には同一〇・三%の増益が見込まれている。また、非製造業では、十二年度上期に前年同期比一三・九%の増益の後、十二年度下期には同一・五%の減益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。
 企業倒産の状況をみると、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。
 銀行取引停止処分者件数は、十月は一千二件で前年同月比五・〇%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(三二・七%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(一七・六%)、小売業(一七・六%)の順となった。

3 国際収支
―輸出は、おおむね横ばい―

 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で九月二・九%減の後、十月は四・三%減(前年同月比三・〇%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。
 輸入は、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で九月五・九%減の後、十月は三・八%増(前年同月比一六・九%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、機械機器、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。
 通関収支差(季節調整値)は、九月に九千九百十一億円の黒字の後、十月は六千九十七億円の黒字となった。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、原油価格の上昇などから、緩やかに減少している。
 十月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大したもののサービス収支の赤字幅が拡大したことから、その黒字幅は縮小し、五千五十五億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小したが、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が縮小したことから、その黒字幅は縮小し、九千五百八億円となった。投資収支(原数値)は、八千七百四十一億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、八千九百三十六億円の赤字となった。
 十一月末の外貨準備高は、前月比五十五億ドル増加して三千五百四十六億ドルとなった。
 外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十一月は百七円台から百八円台で推移した後、月末には百十一円台に下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、十一月は九十一円台から九十三円台で推移した後、月末には九十五円台に下落した。

4 物価
―消費者物価は、やや弱含み―

 国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。
 十一月の国内卸売物価は、化学製品(感冒薬)等が上昇したものの、電気機器(集積回路)等が下落したことから、前月比〇・一%の下落(前年同月比〇・二%の下落)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると製商品需給バランスは、改善傾向に一服がみられる。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことから円ベースでは前月比〇・三%の下落(前年同月比一・八%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことに加え、円安から円ベースでは前月比一・〇%の上昇(前年同月比八・〇%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比保合い(前年同月比〇・三%の上昇)となった。
 企業向けサービス価格は、十月は前年同月比〇・四%の下落(前月比〇・三%の上昇)となった。
 商品市況(月末対比)は繊維等は下落したものの、石油等の上昇により十一月は上昇した。十一月の動きを品目別にみると、生糸等は下落したものの、灯油等が上昇した。
 消費者物価は、やや弱含んでいる。
 全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で九月〇・五%の下落の後、十月は公共料金(広義)が上昇から下落に転じたこと等により〇・六%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比〇・一%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で九月〇・八%の下落の後、十月は〇・九%の下落(前月比〇・一%の上昇、季節調整済前月比〇・三%の下落)となった。
 東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で十月一・〇%の下落の後、十一月(中旬速報値)は、繊維製品が下落から上昇に転じたこと等により〇・九%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で十月一・二%の下落の後、十一月(中旬速報値)は一・一%の下落(前月比〇・四%の下落、季節調整済前月比〇・一%の上昇)となった。

5 金融財政
―株式相場は、十一月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落―

 最近の金融情勢をみると、短期金利は、十一月はやや上昇した。長期金利は、十一月は低下した。株式相場は、十一月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落した。M+CDは、十一月は前年同月比二・一%増となった。
 短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、十一月はおおむね横ばいで推移した。二、三か月物は、十一月はやや上昇した。
 公社債市場をみると、国債利回りは、十一月は低下した。
 国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、十月は前月比で短期は〇・二二三%ポイント上昇し、長期は〇・一三一%ポイント上昇したことから、総合では〇・一八〇%ポイント上昇し一・九三〇%となった。
 マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、十一月(速報)は前年同月比二・一%増となった。また、広義流動性は、十一月(速報)は同三・〇%増となった。
 企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、十一月(速報)は前年同月比四・〇%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後一・八%減)となった。十一月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は五千百六十二億円(うち銀行起債分百億円)となった。
 前記「企業短期経済観測調査」(十二月調査)によると、資金繰り判断は、横ばいとなっている。金融機関の貸出態度判断は、横ばいとなっており、「緩い」超が続いている。
 以上のように、民間金融機関の貸出は依然低調である。また、企業金融のひっ迫感緩和は一服している。
 株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、十一月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落した。日経平均株価もほぼ同様の動きとなった。

6 海外経済
―西ヨーロッパ、安定した景気拡大が続く―

 主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、二〇〇〇年四〜六月期前期比年率五・六%増の後、七〜九月期は同二・四%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は伸びが鈍化している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は十月前月差七・七万人増の後、十一月は同九・四万人増と拡大している。失業率は十一月四・〇%となった。物価は総じて安定している。十月の消費者物価は前年同月比三・四%の上昇、十月の生産者物価(完成財総合)は同三・六%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、十一月十五日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据え置きを決定した(それぞれ六・五〇%、六・〇〇%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。十一月の長期金利(十年物国債)は、月初に上昇した後、低下した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、上昇で始まったが、その後下落基調で推移した。月初と月末を比較すると、下落した。
 西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は安定した拡大が続いている。七〜九月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率二・三%増、フランス同二・七%増(速報値)、イギリスは同二・九%増(改訂値)となった。鉱工業生産は、ドイツではこのところ横ばいで推移している。フランスでは増加している。イギリスではこのところ横ばいで推移している(鉱工業生産は、ドイツ十月前月比〇・三%減、フランス九月同〇・一%増、イギリス十月同〇・二%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ十一月九・三%、フランス十月九・四%、イギリス十月三・六%)。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ十一月前年同月比二・四%、フランス十月同一・九%、イギリス十月同二・〇%)。
 東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、景気は拡大を続けてきたが、このところ生産の伸びが鈍化するなど、先行きに不透明感が広がっている。貿易は、輸出入ともに増加が続いている。
 国際金融市場の十一月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移したが月末に減価した。月初と月末を比較すると増価した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(一九九〇年=一〇〇)をみると、十一月三十日現在一一七・四、十月末比〇・一%の増価となっている。内訳をみると、十一月三十日現在、対円では十月末比一・二%増価、対ユーロでは同二・六%減価した。
 国際商品市況の十一月の動きをみると、CRB商品先物指数は月初から上昇基調で推移し、月末にかけほぼ一か月半ぶりに二三〇ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬まで上昇基調で推移し、その後は反落した。




一月の気象


 一月は一年のうちで最も寒い月の一つといえます。特に、一月下旬から二月にかけては寒さが厳しく、全国の百五十四地点の気象官署のうち約半数の七十五地点で、一月に最低気温を記録しています。

◇冬型の気圧配置
 冬型の気圧配置は「西高東低」といわれます。大陸には高気圧が発達し、その中心示度は一千四十ヘクトパスカル以上にもなることがあります。一方、北海道の東海上の低気圧は九百八十ヘクトパスカル以下になり、台風並に発達することもあります。この気圧差により、大陸の冷たい空気が日本列島を覆い北西の季節風となって、寒さが厳しくなります。強い冬型の目安としては、地上天気図では、等圧線が南北に走りその間隔が込んでいること、日本上空五千メートル付近の気温がマイナス三十六度以下となっていることが挙げられます。

◇一月の気象災害
 一月には雪や強風による重大な災害が起こります。最近三十年の統計を見ると、雪によるものが全体の半数以上、強風によるものが全体の四分の一程度を占めます。
 過去の重大な災害としては、昭和五十三(一九七八)年一月二十一日に、強風と波浪により、長崎県沖で海難事故があり十三人が死亡しました。近年では、平成七(一九九五)年一月四日に長野県で、雪崩による遭難により六人が死亡しました。このように、冬にも重大な災害が起こることがありますので、気象情報には十分注意が必要です。
(気象庁)






    <1月24日号の主な予定>

 ▽我が国の文教施策のあらまし………文 部 省 

 ▽法人企業動向調査(九月)…………経済企画庁(現内閣府) 

 ▽労働力調査(十月)…………………総 務 省 




目次へ戻る