官報資料版 平成13年3月14日




                  ▽平成十一年度 決算検査報告の概要………会計検査院











平成十一年度


決算検査報告の概要


会計検査院


<はじめに>

 会計検査院は、日本国憲法第九十条の規定により、国の収入支出の決算を検査し、会計検査院法第二十九条の規定に基づいて平成十一年度決算検査報告を作成し、平成十二年十一月三十日、これを内閣に送付した。
 この検査報告には、歳入歳出の決算に関する事項、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項、意見を表示し又は処置を要求した事項、会計事務職員に対する検定等について記載した。また、国有財産、物品等国の財産等に関する検査事項及び会計検査院法その他の法律の規定により検査をしている政府関係機関等の会計に関する事項についても記載した。
 なお、会計検査院は、平成十二年九月二十九日、内閣から平成十一年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて平成十二年十一月三十日内閣に回付した。
 会計検査院が検査を終えた国の平成十一年度の歳入歳出決算額は、次のとおりである。
 〔一般会計決算額〕
 歳 入  九十四兆三千七百六十三億三千六百四十四万余円
 歳 出  八十九兆三百七十四億三千百三十九万余円
 〔各特別会計決算額の合計額〕
 歳 入  三百十兆一千七百五十五億九千二百十一万余円
 歳 出  二百七十九兆三千六百八十九億三千三百二十五万余円

◇検査の概要

<第1節> 検査活動の概況

第1 検査の方針

 会計検査院は、平成十二年次の検査に当たって、会計検査の基本方針を次のとおり定めた。

平成十二年次会計検査の基本方針
    (平成十一年十月八日策定)

1 会計検査院の使命
 会計検査院には、内閣から独立した憲法上の機関として、国の収入支出の決算の検査を行うほか、法律に定める会計の検査を行い、これを常時実施することにより、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ、是正を図るとともに、検査の結果により、国の収入支出の決算を確認し、検査報告を作成して内閣を通じて国会に報告するという使命が課せられている。

2 社会経済の動向等と会計検査院をめぐる状況
(1) 我が国の社会経済の動向と財政の現状
 戦後五十年以上が経過し、その間に我が国は経済的に高度に発展し、国民生活の水準も向上してきた。しかし、近年、我が国の社会経済は、少子・高齢化の進展、経済のグローバル化などにみられるように大きく変容してきている。そして、今まで我が国の社会経済を支えてきたシステムがこうした変化に適切に対応できず、その見直しや再構築が求められている。
 我が国の財政をみると、連年の公債発行により公債残高は年々増加の一途をたどり、平成十一年度末には約三百二十七兆円に達すると見込まれており、公債償還等に要する国債費は一般会計歳出の二割を超えていて、財政の健全化が課題となっている。
 また、政府は、行政改革等の諸改革を推進している。
(2) 会計検査院をめぐる状況
 行政改革の一環として中央省庁等改革関連の諸法律が成立し、国の行政機関等はその政策について自ら評価することとなった。
 また、行政改革会議の最終報告(平成九年十二月)においては、評価は政府部内のそれとともに政府の部外からもなされることが重要であるとして、会計検査院による評価に対して期待が表明されている。さらに、会計検査院法が改正(平成九年十二月)され、@国会から検査の要請があった事項について検査を行いその結果を国会に報告できること、A正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性その他会計検査上必要な観点から検査を行うことが新たに規定されている。
 このように会計検査院の役割及び機能はますます重要となり、国民の期待も増大している。
 なお、近年、諸外国の最高会計検査機関では、その組織、権限、活動の形態などが様々に異なっている中にあって、政策目的からみてその施策は適切なものであるかどうかという広い意味の有効性の観点からの評価に強い関心を持って活動を行ってきている。

3 会計検査の基本方針
 会計検査院は、従来から、事務・事業の業績の評価を指向した検査を行うなど、社会経済の動向などを踏まえて国民の期待にこたえる検査に努めてきたところであるが、以上のような状況の下で今後ともその使命を的確に果たすため、国民の関心の所在や国会における審議の状況に常に注意を払い、厳正かつ公正な職務の執行に努めるとともに、次のような姿勢で検査に取り組む。
 ア 少子・高齢化の進展、経済のグローバル化などにみられるような我が国の社会経済の動向や財政の現状を十分踏まえた検査を行っていく。
 すなわち、平成十二年次においては、主として次に掲げる施策の分野に重点を置いて検査を行う。
  @ 少子・高齢化に伴う社会保障等
  A 社会資本の整備
  B 防衛力の整備
  C 科学技術の振興
  D 環境保全
  E 国際化に伴う経済協力等
 イ 不正不当な事態に対する検査を行うことはもとより、さらに事務・事業の業績の評価を指向した検査を行っていく。そして、必要な場合には、制度そのものの存否も視野に入れて検査を行っていく。
 すなわち、これまで会計検査院は、主として次のような観点から検査を行ってきた。
  (ア) 検査対象機関の決算の表示が予算執行の状況を正確に表現しているかという正確性の観点
  (イ) 検査対象機関の会計経理が予算や法律、政令等に従って適正に処理されているかという合規性の観点
  (ウ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行が、より少ない費用で実施できないか、あるいは同じ費用でより大きな成果が得られないかという経済性・効率性の観点
  (エ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかという有効性の観点
 今後も、上記の正確性や合規性の観点からの検査を十分行うことはもとよりであるが、さらに経済性・効率性及び有効性の観点からの検査を重視し、特に有効性の観点から、事務・事業の遂行及び予算の執行に問題がある場合には、原因の究明を徹底して行うことなどにより、事務・事業及び予算執行の効果について積極的に取り上げるよう努める。
 また、検査対象機関に係る決算の分析や評価を指向した検査を行っていくよう努める。
 ウ 社会経済の複雑化とそれに対応した行政の拡大に伴い、新しい検査手法の開拓を行うなどして検査を行っていく。
 すなわち、コンピュータや検査用機器の活用、検査手法や検査領域を多様化するための調査研究、専門分野の検査に対応できる人材の育成などを行い、会計経理はもとよりそれに関連するあらゆる事務・事業について検査を行う。

4 的確な検査計画の策定
 上記の基本方針に従い、限られた人員、予算、時間等を効率的に活用して、会計検査院として課せられた使命を達成するため、検査実施部局において、国その他の検査対象機関の事務・事業の動向などを的確に把握した上で、多種多様な検査の領域の中から本年次の検査に当たって重点的に取り組むべき事項を検査上の重要項目として設定することにより、的確な検査計画を策定し、検査を効率的・効果的に行う。

第2 検査の実施

1 検査の対象
 会計検査院は、国の一般会計及び特別会計の収入支出をはじめ、国の所有する現金、物品、国有財産、国の債権、債務等すべての分野の国の会計を検査の対象としている。
 また、会計検査院は、次の会計を検査の対象としている。
@ 国が資本金の二分の一以上を出資している法人の会計
A 法律により特に会計検査院の検査に付するものと定められた会計
 平成十二年次の検査(検査実施期間 平成十一年十一月〜十二年十月)において検査の対象となったものは、国の会計のほか、@として政府関係機関、公団、事業団等九十五法人の会計、Aとして日本放送協会の会計である。
 このほか、会計検査院は、次の会計についても必要に応じて検査することができることになっている。
@ 国が資本金の一部を出資しているものの会計
A 国が資本金を出資したものが更に出資しているものの会計
B 国が補助金その他の財政援助を与えた都道府県、市町村、各種組合、学校法人等の会計
 平成十二年次の検査において検査の対象としたものは、@として三法人の会計、Aとして二十三法人の会計、Bとして五千七百八十の団体等の会計である(以上の検査の対象については、第1図参照)。

2 書面検査及び実地検査
 検査対象機関に対する検査の主な方法は、書面検査及び実地検査である。
 書面検査は、検査対象となる会計を取り扱う機関から、会計検査院の定める計算証明規則により、当該機関で行った会計経理の実績を計数的に表示した計算書、及びその裏付けとなる各種の契約書、請求書、領収書等の証拠書類等を提出させ、これらの書類について在庁して行う検査である。
 また、実地検査は、検査対象機関である省庁等の官署、事務所等に職員を派遣して、実地に、関係帳簿や事務・事業の実態を調査したり、関係者から説明を聴取したりなどして行う検査である。 これらの方法により、会計検査院が平成十二年次に実施した検査の実績は、次のとおりである。
@ 書面検査については、平成十一年度分の計算書二十二万余冊及びその証拠書類七千七百四十八万余枚を対象に実施した。
A 実地検査については、次表のとおり、検査対象機関である省庁等の官署、事務所等三万八千余箇所のうち、三千二百余箇所について実施したほか、国が補助金その他の財政援助を与えた前記五千七百八十の団体等について実施した。これらの実地検査に要した人日数は、四万四千六百余人日となっている(第1表参照)。
 検査の進行に伴い、検査上疑義のある事態について、疑問点を質したり、見解を求めたりなどするために、関係者に対して書面をもって質問を発しているが、平成十二年次の検査において発した質問は九百余事項となっている。

<第2節> 検査結果の大要

第1 事項等別の検査結果

T 事項等別の概要

 検査の結果、決算検査報告に掲記した事項等(第2図参照)には、次のものがある。
 ア 「個別の検査結果」に掲記した事項
  (ア) 「不当事項」(法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項)
  (イ) 「意見を表示し又は処置を要求した事項」
  (会計検査院法第三十四条又は第三十六条(注)の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項)
  (ウ) 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」(本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項)
  (エ) 「特に掲記を要すると認めた事項」(前記(ア)から(ウ)の各事項に該当しないもので、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項)
 イ 「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」
  (ア) 「国会からの検査要請事項に関する検査状況」(国会法第百五条の規定による会計検査の要請を受けて検査した事項についての検査の状況の記述)
  (イ) 「特定検査対象に関する検査状況」(本院の検査業務のうち特にその検査の状況を報告する必要があると認めたものの記述)
(注) 会計検査院法
 第三十四条 会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。
 第三十六条 会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。
 これらの事項等の件数、金額は、次表のとおりである(第2表参照)。

U 事項別の検査結果の概要

 「個別の検査結果」に掲記した各事項のうち、特に掲記を要すると認めた事項を除く不当事項等について、省庁等別にその件数、金額を示すと第3表のとおりである。

【不当事項】
 検査の結果、「不当事項」として計二百五十二件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。
@ 収入に関するもの 計二十二件
    七十七億一千百六十二万余円
 この内訳を態様別にみると第4表のとおりである。
ア 租税 一件
    十二億六千五十七万余円
<租税の徴収が適正でなかったもの>
◇大蔵省
・租税の徴収に当たり、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりなどしていたため、納税者四百五十八人からの徴収額に過不足があったもの
イ 保険料 二件
    六十二億二千三百八十一万余円
<保険料の徴収が適正でなかったもの>
◇厚生省
・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、小売業及び飲食業の事業主等が、常用的に使用している短時間就労者等について被保険者資格取得届の提出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、一千八百七十四事業主からの徴収額が不足していたもの
    (一件 五十九億一千六百二十八万余円)
◇労働省
・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告書における賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、五百七十四事業主からの徴収額に過不足があったもの
    (一件 三億七百五十三万余円)
ウ 医療費 十五件
    一億五千百五十一万余円
<診療報酬の請求が適切でなかったもの>
◇総理府(防衛庁)
・防衛医科大学校病院等における診療報酬の請求に当たり、手術を実施しているのに所定点数を算定していなかったり、注射料に係る加算を行っていなかったり、放射線治療管理料を算定していなかったりなどしたため、二病院で請求額が不足していたもの
    (二件 四千八百三万余円)
◇文部省
・大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術において使用した特定保険医療材料の費用を算定していなかったり、麻酔の実施時間を誤って麻酔料を算定していたり、検体検査判断料を算定していなかったりなどしたため、十大学病院で請求額が不足していたもの
    (十件 七千八百七十二万余円)
◇労働福祉事業団
・労災病院における診療報酬の請求に当たり、手術料を所定の点数より低い診療点数により算定していたり、麻酔料に係る加算を行っていなかったりなどしたため、三労災病院で請求額が不足していたもの
    (三件 二千四百七十五万余円)
エ 不正行為 三件
    六千七百五十六万余円
<現金等が領得されたもの>
◇大蔵省
・税務署の職員が、国税の還付事務に従事中、不正に還付金額を水増しするなどして還付金を領得したり、国税の収納事務等に従事中、納税者から受領した現金や収入印紙を領得したりしたもの
オ 不正行為・予算経理 一件
    八百十五万余円
<現金が領得されたもの及び事後の経理が不当なもの>
◇文部省
・国立大学において、職員が授業料収納事務に従事中、学生から現金で納入された授業料収入金を領得し、大学では、この事実を把握したにもかかわらず、これを文部大臣へ報告せず、当該職員から返還された領得金について不適切な処理を行うなど、会計法令等に違背する不正な経理処理を行っていたもの
A 支出に関するもの 計百八十四件
    四十八億九千五百二十六万余円
 この内訳を態様別にみると第5表のとおりである。
ア 工事 一件
    九百一万余円
<設計が適切でなかったもの>
◇日本下水道事業団
・ポンプ場建設工事の施行に当たり、流入暗きょの管種及び管基礎は土圧等の応力計算を行って設計すべきであったのに、これを行うことなく、施工条件が異なる参考資料により設計していて、設計が適切でなかったため、流入暗きょの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
イ 物件 一件
    一千八百二十六万余円
<予定価格の算定が適切でなかったもの>
◇総理府(防衛庁)
・護衛艦の製造請負契約に当たり、契約の相手方が消費税の免税事業者であるのに、免税されている消費税相当額を含めて契約金額を確定したため、支払額が過大になっていたもの
ウ 保険給付 三件
    十三億八千四百六十七万余円
<保険の給付が適正でなかったもの>
◇厚生省
・厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、受給権者が事業所に常用的に使用されていて、年金の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得届が提出されず、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、一千五百六十九人に対して支給停止の手続が執られず支給が適正でなかったもの
    (一件 十二億六千五百十万余円)
◇労働省
・雇用保険の失業等給付金の支給決定に当たり、受給者が、再就職していながらその事実を申告書に記載していなかったり、事実と相違する再就職年月日を記載したりなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、三百一人に対する支給が適正でなかったもの
    (一件 六千五十九万余円)
・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったなどのため、五十七事業主に対する支給が適正でなかったもの
    (一件 五千八百九十六万余円)
エ 医療費 二件
    十四億二千六百五十九万余円
<医療費の支払が適切でなかったもの>
◇厚生省
・特定入院料、看護料、入院環境料等の診療報酬の支払に当たり、医療機関から適正とは認められない診療報酬の請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったなどのため、三百八医療機関に対する医療費の支払が適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるもの
    (一件 十三億六千九百十二万余円)
◇労働省
・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関が手術料、入院料、リハビリテーション料等を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でなかったため、三百四十七医療機関に対する支払が適正でなかったもの
    (一件 五千七百四十六万余円)
オ 補助金 百六十七件
    十八億四千百八十六万余円
<補助事業の実施及び経理が不当なもの>
◇総理府(環境庁)
・低公害車普及推進事業の実施に当たり、消費税の申告において補助金により賄われる課税仕入れに係る消費税額が控除されることになっているのに、その消費税相当額を補助対象経費に含めていたため、補助金が過大に交付されていたもの
    (一件 二千四百二十四万余円)
◇文部省
・義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の実数又は標準定数の算定を誤ったり、国庫負担の対象にならない教員等に係る給与費等を国庫負担対象額に含めたりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたもの
    (十件 一億一千百八十一万余円)
・公立学校施設整備費負担金及び公立学校施設整備費補助金の算定において、補助の対象とは認められない工事費や面積を含めて補助対象事業費を算定するなどしていたため、負担金等が過大に交付されていたもの
    (六件 四千四百二十一万余円)
・私立学校施設整備費補助金の算定において、実際の契約額を水増しした工事費に基づいて補助対象事業費を算定していたため、補助金が過大に交付されていたもの
    (一件 三百七十七万余円)
・民間スポーツ振興費等補助金の交付に当たり、事業主体がその加盟団体に委託して実施する選手強化事業において、加盟団体が事業費のうちの滞在費、旅費等を全く支払っていなかったり、一部しか支払っていなかったりしたため委託金が過大となっていて、補助金が過大に交付されていたもの
    (一件 四千六百二十五万余円)
◇厚生省
・医療施設運営費等補助金の算定において、医師派遣先のへき地診療所から徴収した派遣に必要な経費を事業費から控除していなかったため、補助金が過大に交付されていたもの
    (一件 四百九十二万円)
・社会福祉施設等施設整備費補助金等の算定において、社会福祉法人等が、スプリンクラー設備工事費の算出方法を誤ったり、補助の対象とはならない法人本部に係る施設の工事費を含めて補助対象事業費を算定したりなどしていたため、補助金が過大に交付されていたもの
    (四件 八百十五万余円)
・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されていたもの
    (八件 一億四千九百二十七万余円)
・老人保健健康増進等事業の実施に当たり、事業のために支出した事実がない額を当該事業に係る経費の支出額に含めていたため、補助対象事業費が過大に精算されていたもの
    (一件 九百十四万余円)
・老人福祉施設保護費負担金の算定において、老人の収入を誤認するなどして対象収入を過小に算定したり、国の徴収基準ではなく独自の徴収基準を適用したり、徴収金の額の集計を誤ったりなどして、徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの
    (三十八件 五千九百六十九万余円)
・児童保護費等負担金の算定において、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの
    (十八件 一千七百二十万余円)
・国民健康保険の療養給付費補助金の交付に当たり、国民健康保険組合において、減額調整される組合員分の医療給付費を集計する際に、診療報酬の点数を誤ってそのまま診療報酬の金額とするなどして交付申請を行っていたため、補助金が過大に交付されていたもの
    (一件 一千二百七十八万余円)
・国民健康保険の療養給付費負担金の交付に当たり、市町において、一般被保険者に係る医療給付費の計算を誤っていたり、負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を行っていなかったりして交付申請を行っていたため、負担金が過大に交付されていたもの
    (六件 一億五千六百五十八万余円)
・国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、市町村において、交付額算定の基礎となる調整対象収入額を過小に算定したり、調整対象需要額を過大に算定したりなどして交付申請を行っていたため、交付金が過大に交付されていたもの
    (三十八件 七億二千二百三十三万余円)
◇農林水産省
・農業集落排水事業の実施に当たり、回分槽の基礎底版にかかる荷重を誤って過小に算出していて、設計が適切でなかったため、回分槽等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 一千二百九万余円)
・漁港修築事業の実施に当たり、ケーソン製作におけるフローティングドックの運転費を積算する際、運転日数に一日当たりの運転単価を乗じて算出すべきところ、誤って製作日数に一日当たりの運転単価を乗じて算出したため、工事費が割高となっているもの
    (一件 五百四万余円)
・農業経営育成対策事業の実施に当たり、建築工事の入札において高率な最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除していたため、割高な契約を締結することとなっていたもの
    (一件 六千四十二万余円)
・経営基盤強化林業構造改善事業等の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還しておらず、国庫補助金を過大に受給していたもの
    (二件 二千九百三万余円)
・農業集落排水事業の実施に当たり、壁式構造の建築物である汚水処理施設管理棟の施工において耐力壁の配筋が設計と著しく相違していたため、工事の目的を達していないもの
    (一件 一千十四万余円)
・農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業の実施に当たり、農道新設工事の岩掘削工費の積算に用いたリッパ装置付ブルドーザによる軟岩掘削の歩掛かりは、軟岩を掘削して破砕する作業と破砕した軟岩を集積する作業の複合作業の歩掛かりとなっているのに、誤って、破砕した軟岩を集積するためのブルドーザによる押土費を別途計上したため、工事費が割高となっているもの
    (一件 二百五十万余円)
・農林業地域改善対策事業の実施に当たり、林道の舗装工の施工において、路盤がほとんど施工されていなかったり、コンクリート舗装厚が不足したり、鉄網が路床の上に直接配置されたりしていて、施工が著しく粗雑であったため、工事の目的を達していないもの
    (一件 四百一万余円)
・経営基盤確立農業構造改善事業の実施に当たり、農用地の整地工費を積算する際、ブルドーザ畑面整地の歩掛かりを適用すべきところ、誤って、ブルドーザ敷均し・締固めの歩掛かりを適用するなどしたため、工事費が割高となっているもの
    (一件 四百八万余円)
◇通商産業省
・地域産業集積中小企業等活性化補助金等の交付に当たり、事業主体が、補助の対象とならない経費を事業費に含めていたり、補助の対象である機械装置等を購入していなかったりしていたため、補助金が過大に交付されていたもの
    (三件 四百九十三万余円)
・国庫補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、借主が、設備の設置に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸付けを受けたり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したりなどして過大な貸付けとなっていて、補助の目的に沿わない結果となっていたもの
    (四件 一千五百七十九万余円)
◇建設省
・道路改良事業の実施に当たり、人工張芝を施工する法枠内に客土された土に多数の礫が混入するなどしていて、施工が著しく粗雑であったため、芝が生育しておらず、工事の目的を達していないもの
    (一件 四百三十四万余円)
・公営住宅整備事業費補助金の交付額の算定において、住宅の建設に要した工事費を住宅の種類ごとにあん分する際、誤って、実際の工事費を反映しない標準工事費の比率であん分していたため、補助金が過大に交付されているもの
    (一件 三百七万余円)
・道路災害復旧事業の実施に当たり、橋台の基礎底面地盤の支持力を計算する際、橋台基礎の有効根入れ深さを誤るなどしていて、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 五百二十二万余円)
・街路事業の実施に当たり、橋台と桁との接点である支承部の設計図面を作成する際、誤って、固定支承部と可動支承部を逆に設置することとしていて、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 五千三百九十七万余円)
・街路事業の実施に当たり、橋脚の柱部に配置する中間帯鉄筋は、その両端部を外側の帯鉄筋にかけた配置とすべきところ、設計図書を作成する際に、誤って外側の帯鉄筋にかけることができない長さで表示していて、設計が適切でなかったため、帯鉄筋と中間帯鉄筋とが一体となっておらず、橋脚の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (二件 八千百万余円)
・道路災害防除事業の実施に当たり、ポケット式落石防止網を支えるルーフアンカーは法面の岩盤に直接打ち込むこととされているのに、打込み箇所の表土を取り除くことなく打ち込んでいて、施工が著しく粗雑であったため、ルーフアンカーが岩盤に固定されておらず、工事の目的を達していないもの
    (一件 四百十七万余円)
・道路改良事業の実施に当たり、法面工の中詰工費等を積算する際、施工数量は、施工面積に施工厚さを乗じて算出すべきであるのに、施工面積に施工厚さを乗じていなかったなどのため、施工数量が過大に算出されるなどしていて、工事費が割高となっているもの
    (一件 三百二万余円)
・準用河川改修事業の実施に当たり、ブロック積護岸の胴込めコンクリート等を打ち継ぐ際、硬化したコンクリート面を覆っていた土砂を取り除き表面を湿潤な状態にすることを怠っていて、施工が著しく粗雑であったため、ブロック積護岸が上下一体化しておらず、工事の目的を達していないもの
    (一件 三百八万余円)
・公共下水道事業の実施に当たり、放流ポンプ施設を設計する際、土木構造物であるく体下部については土木構造物の設計基準も満たさなければならないのに、誤って建築物の設計基準のみに基づいて設計していたため、施設の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 四千八百七十六万余円)
◇農畜産業振興事業団
・畜産廃棄物有効活用体制整備事業の実施に当たり、動物油脂を保管するためのタンク設備の材質を変更するなどして助成対象事業費より低額で実施していたため、助成金が過大に交付されていたもの
    (一件 四千四百二万余円)
◇日本私立学校振興・共済事業団
・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、学校法人から提出された資料に、補助金の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額に含めないこととされている建物の工事費等の支出額が計上されるなどしているのに、この資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大となっていたもの
    (六件 七千二百六十八万余円)
カ 貸付金 五件
    二千二十万余円
<貸付金の経理が不当なもの>
◇農林水産省
・国の貸付金等を原資とする農業改良資金の貸付けにおいて、借受者が、貸付けの対象とならない事業について貸付けを受けたり、貸付対象機械を購入していなかったりなどしていて、これに係る国の貸付金等相当額が貸付け等の目的に沿わない結果となっていたもの
キ 不正行為 三件
    六千九百十九万余円
<現金が領得されたもの>
◇文部省
・国立大学の職員が、予算執行事務に従事中、物品購入を装って虚偽の支出負担行為書及び支出決議書を作成し、自ら管理する架空業者名義の金融機関口座等に振り込ませるなどして支出金等を領得したもの
    (一件 一千四百八十四万余円)
◇厚生省
・社会保険事務所の職員が、厚生年金保険老齢年金等の審査等の事務に従事中、端末装置を使用し、架空の人物名や被保険者期間を入力して虚偽の被保険者記録を作成するなどし、自ら開設した金融機関口座に振り込ませるなどして厚生年金保険老齢年金等を領得したもの
    (一件 四千四百四十三万余円)
◇労働省
・公共職業安定所の職員が、雇用保険の失業の認定等の事務に従事中、端末装置を使用して複数の架空労働者名により虚偽の被保険者記録を作成するなどし、自ら開設した金融機関口座に振り込ませるなどして失業等給付金を領得したもの
    (一件 九百九十万余円)
ク その他 二件
    一億二千五百四十五万余円
<助成金の経理が不当なもの>
◇日本体育・学校健康センター
・国の出資金を財源とするスポーツ振興基金助成金の交付に当たり、助成先のスポーツ団体が、選手強化活動事業等の事業費のうち、滞在費、旅費等を全く支払っていなかったり、一部しか支払っていなかったりしたため、助成金が過大に交付されていたもの
    (一件 五千百二十五万余円)
◇雇用・能力開発機構
・中小企業雇用創出人材確保助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において実際には支払っていない施設又は設備等の費用を支払ったこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったなどのため、二十九事業主に対する支給が適正でなかったもの
    (一件 七千四百二十万余円)
B 収入支出以外のもの 計四十六件
    五億一千五百十八万余円
 不正行為 四十六件
    五億一千五百十八万余円
<現金等が領得されたもの>
◇文部省
・国立大学の職員が、委任経理金の出納保管事務に従事中、出納官吏名義の定期預金を不正に解約して払出しを受け領得したもの
    (一件 三千三万余円)
◇郵政省
・郵便局等の出納員等四十六名が、契約者から受領した保険料、預金者から受領した定額郵便貯金預入金、預金者の依頼により交付を受けた定額郵便貯金払戻金等を領得したもの
    (四十五件 四億八千五百十五万余円)

【意見を表示し又は処置を要求した事項】
 「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計六件掲記した。
@ 会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求した事項 一件
◇厚生省
・医療用の酸素に係る診療報酬の請求について
 医療機関が処置等に酸素を使用した場合の診療報酬は、地方社会保険事務局長に届け出た酸素の単価を基に購入価格を算定して請求することとされている。しかし、レセプトに補正率を記載することとされていないことや医療機関の制度に対する認識不足などから、二百二十五医療機関において酸素の購入価格の算定を誤るなどして過大な診療報酬を請求していた。また、審査支払機関等においては、酸素の届出単価に係る情報の提供を受けていなかったり、単価の届出の時期が七月とされていたりしていることから審査を十分に行うことができない状況となっていた。したがって、厚生省において、酸素の単価等の届出を遅くとも三月までに行うように改めるとともに、補正率を摘要欄に記載するようレセプトの記載要領を改め、また、地方社会保険事務局に対し、酸素の届出単価に関する情報を審査支払機関等へ適時適切に提供するよう指導するなどして、酸素の使用に係る診療報酬が適正に請求されるよう処置を講ずる要がある。
    (指摘金額 三億九千五百三十八万円)

A 会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求し及び同法第三十六条の規定により改善の意見を表示した事項 一件
◇文部省
・国立大学附属病院における患者給食業務について
 直営又は委託により実施している国立大学附属病院の患者給食業務において、診療報酬の請求上は特別食に該当しない食種を特別食として取り扱い、これにより給食材料の調達額や委託料を算定していて適切とは認められない事態が見受けられた。また、患者給食業務を外部委託するに当たり、随意契約を採用しているものについて一般競争契約の導入を図る要があると認められる事態が見受けられた。したがって、文部省において、特別食の範囲を診療報酬の範囲と同一とする処置を講ずるとともに、大学病院に対し外部委託契約について一般競争契約に移行するための改善の方策を検討し、適切な措置を講ずるよう指導を行う要がある。
    (指摘金額 一億三千百五十万円)
    〔背景金額 四十八億七千二百三十九万円〕
(契約方式を改める要があると認められる経費の額)
B 会計検査院法第三十六条の規定により改善の意見を表示し又は改善の処置を要求した事項 四件
ア 改善の意見を表示したもの
◇厚生省
・国民年金の第三号被保険者に係る種別変更の届出の適正化について
 国民年金保険料の納付を要しない第三号被保険者については、年間収入が基準額未満であることなどが認定基準として定められているが、基準額以上の年間収入を得ていながら種別変更の届出を適正に行っていない者が多数見受けられた。したがって、社会保険庁において、第三号被保険者のうち種別変更の届出が必要な者を把握したり、事業所得等の総収入額から控除する必要経費の範囲を明確にしたりするとともに、被保険者の種別変更の届出の義務について周知徹底して、第三号被保険者に係る種別変更の届出の適正化を図る要がある。
    (指摘金額 二億五千四百十一万円)
◇郵政省
・郵便局における硬貨過超金の保管について
 郵政省では、郵便局において、業務上保管すべき額を超える現金である過超金を滞留させることのないよう日本銀行本支店又は代理店に預入することとしている。しかし、近年、過超金のうち硬貨の増加が著しく、日本銀行代理店の多くでこの硬貨過超金の全量預入が困難となったため、郵便局で硬貨過超金が滞留し、外部委託して保管せざるを得なくなっている。郵政省は、日本銀行等と協議して滞留の解消に努めているが、依然として解消していない。したがって、硬貨過超金の滞留を解消して効率的な資金管理が行えるよう、日本銀行と引き続き協議してその円滑な処理に努めるとともに、近隣の日本銀行本支店を預入先とする郵便局に移送するなどして滞留を解消する要がある。
    〔背景金額 七十四億六千四十二万円〕
(外部委託実施郵便局で保管中の硬貨過超金の滞留額)
イ 改善の処置を要求したもの
◇文部省
・学校給食施設の整備に係る補助対象面積等の算定について
 学校給食施設整備事業の補助対象面積等を算定する際の基礎となる基準面積等は、児童生徒数に応じて段階的に区分されているが、事業実施年度における児童生徒数に応じて算定されることとなっており、児童生徒数の減少傾向を考慮することになっていない。このため、事業実施の翌年度において、児童生徒数が減少し、基準面積等が一段階低位となるものが十六都道府県において四十事業見受けられた。したがって、文部省において、児童生徒数が減少している状況を踏まえ、現行の補助制度を見直すなどして、補助金の効率的な使用を図る要がある。
    〔背景金額 一億七千二万円〕
(補助対象面積等の算定が児童生徒数の減少に対応していない事業において節減できた計算となる国庫補助金)
◇農林水産省
・水田麦・大豆等の生産振興を図るための技術対策の実施について
 水田麦・大豆等の生産振興を図るための技術対策を実施する事業において、実証する技術の判定方法が明確でないなどのため事業が効果的に実施されていなかったり、記録がないなどのため事業の実施状況を十分確認できなかったりしている事態が見受けられた。また、事業全体として目標の設定及び実績の把握を行う仕組みとなっていないため、事業の実効性を十分確保することができない状況となっていた。したがって、農林水産省において、栽培技術の実施及び確認並びに事業実施による効果の把握に関し、実施要綱等を改正するなどして具体的な判定方法、確認方法等を明確に示すとともに、都道府県等に対し実施要綱等の周知徹底を図り、栽培技術の実施等の確認を的確に行うよう指導して、事業効果の発現及び確保を図る要がある。
    〔背景金額 百五十四億八百九十九万円〕
(効果的に実施される仕組みとなっていない事業のうち検査した事業に係る国庫補助金交付額)

【本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項】
 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計三十七件掲記した。
◇総理府(警察庁)
・警備艇建造契約における一般管理費等の積算について
 警備艇建造契約の一般管理費等の積算に当たり、市販品で特段の加工等を要しない主機関の購入費にも船体の材料費や工費等と同率の一般管理費等の率を乗じるなどとしていたため、一般管理費等の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 一千四百七十万円)
◇総理府(防衛庁)
・医学科学生に対する給食の実施に係る糧食の調達について
 医学科学生に対する給食の実施に当たり、臨床実習などにより食事ができない学生がいることなどを把握しないまま糧食を調達していたことなどから、食事をしなかった学生に係る糧食費が不経済となっていた。
    (指摘金額 二千九百八十万円)
・八一式短距離地対空誘導弾地上装置の部品の調達について
 地対空誘導弾地上装置の部品の調達に当たり、定期整備時に点検・計測を行って不具合と判断された場合に交換する官給部品について、過去の交換実績を反映することなくそのすべてを交換する前提で調達所要量を算定していたため、調達数量が過大となっていた。
    (指摘金額 七千二百九十万円)
◇法務省
・無停電電源装置の賃借料の支払について
 登記情報システム用の無停電電源装置の賃貸借契約において、同一会社からの同一装置の賃借期間が長期に及び、賃借料の合計額が会社が要した費用の合計額を上回っているものについても賃借期間の長短に関わりなく同額の賃借料を支払っていたため、法務局において賃借料が不経済となっていた。
    (指摘金額 三千七百万円)
◇外務省
・国際電話料金の割引制度の利用について
 本省から在外公館への国際電話の利用に当たり、利用料金の割引制度についての検討を行い、国際電話会社にその適用を申し込めば利用料金が割安となるのに、割引制度の内容の把握及び利用についての検討が十分でなかったため、使用実態に応じた割引制度の適用を受けておらず、国際電話の利用料金が不経済となっていた。
    (指摘金額 三千五百八十万円)
◇大蔵省
・消費税の課税仕入れに係る消費税額の計算について
 課税仕入れに係る消費税額の算出に当たり、申告書に添付する計算表に計算式が記載されていなかったことなどから、課税売上高に対する消費税額から控除する消費税額を国税分の四%のみとすべきところ、事業者がこれに地方消費税分の一%を含めていたことなどのため、納付税額が不足していた。
    (指摘金額 一億一千三百五十六万円)
◇厚生省
・救急医療施設運営費等補助金(在宅当番医制事業分)の算定について
 救急医療施設運営費等補助金の算定に当たり、補助の対象となる経費の範囲について交付要綱等で明確に示していなかったことなどのため、補助事業に直接関係のない経費を計上するなどしていて、国庫補助金が過大に交付されていた。
    (指摘金額 四千三百三十万円)
・年金受給権者への通知書等の郵送に係る郵便料金について
 年金受給権者への通知書等の郵送に当たり、利用者区分割引を利用する際、差出日から送達期限等までに余裕期間があるのに、標準送達日数に更に三日程度の余裕を承諾する場合の特別割引率の適用を受けていなかったり、より高い基本割引率の適用を受けていなかったりしたため、郵便料金が不経済となっていた。
    (指摘金額 三億八百二十五万円)
・福祉施設の経営委託契約に係る経理処理について
 福祉施設の経営委託に当たり、受託団体において、委託契約に係る特別会計の利益剰余金を特別損失の計上により減額してこれを他の会計へ繰り入れたり、特別会計からの繰入金の運用による利息収入や特別会計からの資産を取得するための繰入金を一般会計の収益として計上したりするなど、国の事業である福祉施設事業と受託団体自らの事業との経理を明確に区分しておらず、委託契約に係る経理処理が適切を欠いていた。
    〔背景金額 五十九億四千二百二十二万円〕
(適切を欠いていた経理処理に係る金額)
◇農林水産省
・地域農業経営確立総合対策における事業効果の発現について
 地域農業経営確立総合対策の実施に当たり、都道府県及び事業主体に対する農林水産省の指導が十分でなかったことなどのため、ファームサービスグループを組織するなどして担い手による農作業の受委託の推進等を図る推進事業と、これを支援するために小規模土地基盤整備、農業近代化施設整備等を行う支援事業とが有機的に連携して実施されておらず、十九地区において事業の効果が発現していなかった。
    (指摘金額 十億三千百三十三万円)
・指定野菜価格安定対策事業の運営について
 指定野菜価格安定対策事業の実施に当たり、野菜指定産地の産地要件を満たしていないのに指定解除などの適切な処置が執られないまま資金が造成されていたり、交付対象にならない野菜を出荷数量に含めるなどして生産者補給交付金が過大に交付されていたりなどしていて、事業の運営がその目的に沿わないものとなっていた。
    (指摘金額 八千二十三万円)
    〔背景金額 十八億九千二百六十七万円〕
(産地要件を満たしていない産地に係る資金造成額のうち国庫補助金相当額)
・農業集落排水事業における汚水処理区の設定について
 農業集落排水事業の実施に当たり、複数の汚水処理区を隣接して設定している市町村において、それらの汚水処理区を接続した場合の経済性の検討を十分行うなどして、隣接した汚水処理区を接続したり、接続する計画としたりすることにより事業費の低減が見込まれるものが三十一市町村において七十汚水処理区あった。
    〔背景金額 三十六億円〕
(接続した場合の推計事業費の低減額に対する国庫補助金相当額)
・造林補助事業における間伐の標準単価の設定について
 造林補助事業において、伐倒、枝払い、玉切り等の作業からなる間伐の実施に当たり、木材価格の低迷などにより伐倒後の作業が十分に行われなくなってきているのに、伐倒のほかに枝払い等の作業を含めて設定されている標準単価を適用するものとなっていて、作業の実態に適合しておらず、補助事業が効率的に実施されていなかった。
    (指摘金額 一億七千二百六十万円)
・国有林野の素材生産事業等における素材の輸送費の積算について
 国有林野の素材生産事業等における素材の輸送費の積算に当たり、要領に定められた使用車両の標準車種及び素材の積載量について、林道の整備状況等に即した見直しを行っていなかったなどのため、森林管理局において輸送費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 一億二千九百四十万円)
◇運輸省
・防波堤等工事に使用する消波ブロックの規格について
 防波堤等工事に使用する消波ブロックの規格の選定に当たり、算定式で求めた最小重量を満たす直近上位の規格の消波ブロックよりも大型の規格のものを選定すれば使用個数が少なくなって経済的となる場合があるのに、その選定方法を明確にしていなかったため、経済比較を行わないまま直近上位のものを選定しており、消波ブロックの製作費及び運搬据付費等が不経済となっていた。
    (指摘金額 五千七百三十万円)
・自動車事故対策費補助金(救急医療設備整備事業)における補助対象施設の要件について
 自動車事故対策費補助金の交付に当たり、補助対象とする公的病院の要件の見直しの検討が十分でなかったため、自由診療単価が基準案単価を超えている四十九公的病院に対し補助金が交付されている一方で、自由診療単価が基準案単価以下で自動車事故救急患者数等の他の要件に差が見受けられない百二十九公的病院に対し補助金が交付されておらず、補助事業が効率的に実施されていなかった。
    〔背景金額 七億九千三百二十九万円〕
(補助対象施設の要件の見直しを行うことで効率的に交付されることになる国庫補助金相当額)
◇郵政省
・逓信病院における特定疾患療養指導料等の診療報酬の請求について
 逓信病院における特定疾患療養指導料等の診療報酬の請求に当たり、治療計画に基づく指導の要点の記録や診療計画等の説明・指導などの文書化が徹底していなかったり、診療報酬の請求の前提となる届出についての検討が十分でなかったりなどしたため、診療行為等の実態に適合した適切な診療報酬を請求していなかった。
    (指摘金額 四千五百九十万円)
◇建設省
・公営住宅家賃対策補助金に係る近傍住宅家賃の算定について
 公営住宅家賃対策補助金の補助基本額の算定基礎となる近傍住宅家賃の算定に当たり、その算定の基礎となる容積率等の取扱いや共同施設の範囲を通達等で明確にしていなかったなどのため、補助金が過大に交付されていた。
    (指摘金額 三千八百七十万円)
・公社等が先行取得した土地を事業主体が取得する場合の国庫補助基本額の算定について
 土地開発公社等が先行取得した土地を国庫債務負担行為等により事業主体が取得する際の国庫補助基本額の算定に当たり、限度利率等の内容について通達等で明確にしていなかったり、国庫補助基本額の算定方法についての指導及び周知徹底が十分でなかったりしたため、利子支払額が限度利率等により算定した額を超えているなどして、土地取得費に係る国庫補助基本額が過大となっていた。
    (指摘金額 一億六千二百七十一万円)
◇住宅金融公庫
・宅地造成資金の貸付けに係る再申込みの取扱いについて
 宅地造成資金の貸付けに係る再申込みの取扱いにおいて、宅地造成事業者が既に交付された資金を含めて再申込みを繰り返し行うことを認めていることにより、実質的に貸付金利の大幅な引下げを受けることとなるなど、著しく有利な貸付条件の変更を行う結果となっていた。
    〔背景金額 四十億二千八百八十五万円〕
(資金交付した時点の金利のままで貸し付けた場合に徴収できた利息と実際に徴収した利息との開差額)
◇日本道路公団
・橋りょう新設工事における補修塗装費の積算について
 橋りょう新設工事における補修塗装費の積算に当たり、橋りょうの構造や施工方法の変化に伴い、補修塗装の施工面積が減少しているのに、施工の実態を積算に反映していなかったため、補修塗装費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 九千二百十万円)
◇首都高速道路公団
・高速道路の地盤改良工事における高圧噴射攪拌工費の積算について
 地盤改良工事における高圧噴射攪拌工費の積算に当たり、ボーリングマシンと注入マシンを二台ずつ配置する場合には、一台で施工する場合よりも労務及び機械編成が低減されるのに、一台当たりの労務及び機械編成をそのまま二台分計上していて、二台ずつ配置する場合の施工の実態を積算に反映していなかったため、高圧噴射攪拌工費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 六千七百五十万円)
◇阪神高速道路公団
・トンネル工事における鋼アーチ支保工費の積算について
 トンネル工事における鋼アーチ支保工費の積算に当たり、支保工本体の材料費について計上する必要のない端部処理費を計上したり、さや管の溶接費についてほとんどの工事では片側のみの溶接となっているのに両側を溶接するものとして積算したりなどしていたため、鋼アーチ支保工費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 五千三百八十万円)
◇都市基盤整備公団
・土地区画整理事業において譲渡した住宅用地に係る固定資産税等の負担方法について
 土地区画整理事業において譲渡した住宅用地に係る固定資産税等について、換地処分後に土地を譲渡する場合は譲渡後の分を譲受人に負担させることについての検討が十分でなかったため、固定資産税等の負担額の節減が図られていなかった。
    (指摘金額 六千八百六十六万円)
◇農畜産業振興事業団
・肥育素牛導入事業における基金の規模について
 肥育素牛導入事業の実施に当たり、事業が当初の予定より普及していないことから、この事業に充てるために造成された基金の規模に対して事業の実績が大きく下回り、基金として造成された資金の多くが有効に活用されないまま長期にわたって滞留していた。
    (指摘金額 四十五億二千百九十八万円)
◇日本中央競馬会
・環境整備事業における事業費の算定について
 環境整備事業費の交付に当たり、交付先から提出された事業実施報告書等の調査確認が十分でなかったなどのため、交付額が所定の限度交付額を超えていたり、事業費を減額調整することとなっているのにその処理を行っていなかったりしていて、環境整備事業費の交付が適切に行われていなかった。
    (指摘金額 五千九百万円)
◇日本原子力研究所
・イオン照射研究施設の利用料金の算定について
 イオン照射研究施設を民間企業、大学等に利用させた場合の利用料金の算定に当たり、利用者が一回の利用時間内に複数の試料を照射したときに要する照射試料交換等の作業時間を利用料金算定の対象時間に含めていなかったため、利用料金が徴収不足となっていた。
    (指摘金額 二千百四十万円)
◇帝都高速度交通営団
・駅構内清掃業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算について
 駅構内清掃業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算に当たり、保険料の徴収対象外等となっている高年齢者が多数雇用されているのに、その実態を反映させていなかったため、厚生年金保険料等の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 六千八百六十万円)
◇北海道旅客鉄道株式会社
・車両清掃作業等業務委託契約における健康保険料等の事業主負担額の積算について
 車両清掃作業等業務委託契約における健康保険料等の事業主負担額の積算に当たり、保険料の徴収対象外等となっている短時間就労者等が多数雇用されているのに、その実態を反映させていなかったため、健康保険料等の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 二千五百八十万円)
◇西日本旅客鉄道株式会社
・新幹線におけるリネンサプライ作業について
 新幹線におけるリネンサプライ作業の委託に当たり、列車へのおしぼりの積込本数に乗客数の実態を考慮していなかったことなどのため、使用されないまま洗濯加工しているおしぼりの本数が多量に上っていて、委託費が不経済となっていた。
    (指摘金額 三千二百九十万円)
◇九州旅客鉄道株式会社
・軌道整備工事における道床整理作業の方法について
 軌道整備工事における道床整理作業の方法について、作業車には車体の両側にブレードが装着されていることから、道床法面の両側で同時に道床バラストのかき上げ及び道床肩の整形を行う方法が一般的であるのに、片側のみについて行う方法を定めた作業要領により施工するなどしていたため、道床整理作業費が不経済となっていた。
    (指摘金額 二千四百六十万円)
◇東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社
・加入者光ケーブル敷設工事の光損失試験の設計について
 加入者光ケーブル敷設工事の光損失試験の設計に当たり、オフィスビル等の加入者まで敷設する配線光ケーブルに接続していない幹線光ケーブルの心線についても光損失試験の対象としていたため、光損失試験の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 三千九百九十万円、四千七百九十万円)
・中継線路のメタリックケーブルの保守業務の委託費の算定について
 中継線路のメタリックケーブルの保守業務を委託するに当たり、既に光ファイバケーブル等への切替えが終了していて保守業務を実施する必要がないものを委託契約の対象に含めて委託費を算定していたため、委託費が不経済となっていた。
    (指摘金額 二千八百四十万円、二千六百十万円)
・電話料金請求書等各種郵便物の郵送について
 電話料金等の請求・催促、商品・サービスの広告等に係る各種の郵便物の郵送に当たり、それぞれバーコード割引又は広告郵便割引を受けることができるのに、これらの割引制度を利用していなかったため、郵便料金が不経済となっていた。
    (指摘金額 三千二百四十万円、四千百十万円)

【特に掲記を要すると認めた事項】
 「特に掲記を要すると認めた事項」として一件掲記した。
・契約未済財産の管理及び処分について
 大蔵省所管の普通財産のうちには、売払い、貸付け等の契約を締結しないまま使用されている土地で、その使用者に売払い等を行うことを目的に管理している契約未済財産がある。この契約未済財産について検査したところ、その処理が図られず滞留している財産の多くは、それぞれが歴史的経緯を有するなどのため、使用者の買受け意欲が薄かったり、境界及び面積を確定するための使用者等の協力が得られなかったり、その事務手続きに多大な費用等を要したりすることなどから、管理の適正化及び売払い等の処理が進展しない状況になっている。
 したがって、滞留財産については、大蔵省において、営利目的等に使用されている経済的価値の高いものから使用者の国有財産の使用に対する認識をより一層喚起するとともに、それぞれの財産の現状や歴史的経緯に応じ、経済性にも留意した適切な財産管理及び処分の在り方について検討し、関係機関等と協議することにより事態の改善が図られることが望まれる。
    〔背景金額 五百十一億七千二百九十七万余円〕
(平成十一年度末現在における契約未済財産の土地の台帳価格の合計額)

V 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況の概要

 「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」に掲記したものは次の十二件である。
ア 国会からの検査要請事項に関する検査状況
 国会から検査の要請を受けて検査を実施しその結果を報告したものは一件である。
・「政府開発援助に関する決議」の実施状況に関する会計検査の結果について
 本院は、参議院からの検査の要請を受け、第百四十五回国会の同院行政監視委員会において行われた「政府開発援助に関する決議」のうち、@被援助国の実情に即した国別援助計画の作成、A事業の重点化と事業間の連携強化、B評価制度の充実、CODAの不正防止及びD重債務貧困国に対する債務救済の五事項に関する実施状況について、外務省、国際協力銀行及び国際協力事業団を対象に検査を実施した。
 検査の結果、外務省等において、これら五事項について「政府開発援助に関する決議」を受けおおむね適切な取組みを行っていると認められたものの、効率的、効果的な政府開発援助の実施のため、今後、更なる工夫や取組みの一層の強化を要する点等も見受けられた。
イ 特定検査対象に関する検査状況
 特定検査対象に関する検査状況として十一件掲記した。
@ 金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について
 金融システムの安定化のための緊急対策については、依然として多額の国債の償還等が行われていることから、昨年に引き続き、平成十一年度における緊急対策の実施状況について検査を実施した。
 検査したところ、金融システムの安定化のための緊急対策については、預金保険法等各法律の枠組みに沿って様々な措置が講じられていた。そして、金融機関の破綻処理の際、預金保険機構が資産の買取りを実施するに当たっては、担保による回収可能額の評価を適切に行って決定することが重要であることから、同機構において、担保による回収可能額の評価が客観的、合理的な方法で実施されているかなどについて今後も十分配慮していく要があると認められた。また、特別公的管理銀行となっていた日本長期信用銀行の株式売却の処理等においては、地価の下落等により、時間の経過等とともに資産が劣化し金銭の贈与額が増加する傾向も見受けられたことから、金融機関の破綻処理を行うに当たっては、資産の劣化という点についても十分留意して措置することが肝要であると認められた。このほか、十一年三月に資本増強を受けた金融機関は、金融機関の健全化をみる上で重要な指標のうち、不良債権の償却及び引当ての処理等の各項目において、十二年三月期までの一年間の実績を見る限りでは、全体として、経営健全化計画を達成している状況となっていた。
 金融システムの安定化のための緊急対策の枠組みについては、十二年五月の預金保険法等の改正により、特別資金援助の期間が十四年三月まで延伸され、また、特別資金援助における救済金融機関への金銭の贈与等を行うため、預金保険機構に交付される国債が、既に交付されている七兆円に追加して六兆円増加されることなどが定められた。
 このような状況を踏まえ、また、これまでの資金援助等の実施に伴い多額の国債の償還等が行われていることから、金融再生委員会、預金保険機構等においては、緊急対策における各法律に基づく措置を実施するに当たり、当該措置の方針、内容等について国民に十分説明し、その理解を得る必要がある。本院としては、金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について、その事態の推移を引き続き注視していくこととする。
A 装備品等の調達に係る過払事案の処理等について
 本院では、平成九年度決算検査報告の「特定検査対象に関する検査状況」において記述した、東洋通信機株式会社及びニコー電子株式会社の過払事案の処理について、今回、個別の契約ごとに過払額の算定に努めることとしたが、原始伝票等の一部が保存されていなかったことなどから、その算定が不可能であった。
 また、防衛庁では、過払事案処理要領を制定し、これに基づき新たに発覚した過払事案を処理しているが、一部、過払事案処理要領が想定していない事態が見受けられたことから、防衛庁において、より一層の充実を図ることが望まれる。
 さらに、防衛庁では、国民の信頼が著しく損なわれたことを踏まえ、過払事案についての各種再発防止策等を講じているが、必ずしも万全とは認められないことから、防衛庁において、引き続き過払事案の発生原因、背景等を究明し、過払事案の再発を防止する有効な対策を講じるとともに、装備品等の調達の特殊性を踏まえ、会社の保有する装備品等に関する情報のより一層の収集、蓄積に努める要がある。
B 政府開発援助について
 我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、無償資金協力や円借款、プロジェクト方式技術協力などの政府開発援助を実施している。
 この政府開発援助については、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、八箇国の八十九事業について現地調査を実施した。その結果、三事業においては、相手国における事業環境の変化、予算の不足などのため、援助の対象となった施設が十分活用されておらず、援助の効果が十分発現していなかったり、移転された技術による援助効果の発現が遅延したりしていると認められた。これは、主として相手国の事情によるものであるが、我が国援助実施機関としては、今後も相手国の自助努力を絶えず促すとともに、相手国が実施する事業に対する支援のための措置をより一層充実させることが重要である。また、一事業においては、無償資金協力の調達機材が無断で変更されている事態が見受けられたので、今後は、外務省において再発防止策を着実かつ確実に実施していく要がある。
C 中小企業金融安定化特別保証制度の実施状況について
 中小企業金融安定化特別保証制度は、信用保証協会による信用保証と中小企業総合事業団(平成十一年六月三十日以前は中小企業信用保険公庫)による信用保険からなる信用補完制度の枠組みの中で、金融機関の貸し渋り等により必要な事業資金の調達に支障を来している中小企業者に対して積極的な保証を実行すべく、十年十月から十二年三月までの臨時異例の措置として創設されたものであり、その後、十三年三月まで一年間延長されている。本制度では、保証規模は三十兆円とされ、従来より高い事故率を想定して総額一兆四千五百億円の資金を確保することが必要な設計となっており、国の負担も大きい。
 このため、同制度の目的である事業資金の融通の円滑化のほか、倒産等の抑制などの効果にも着眼して、同制度を利用した中小企業者の経営状態を併せて調査したところ、貸し渋りを受けているとする中小企業者の割合は、十年十月の三五%から最近では一九%程度まで減少してきている。一方、企業倒産件数は、本制度が創設された十年度下期及び十一年度上期では対前年同期比で減少したが、十一年度下期では対前年同期比で再び増加に転じている。このように、本制度は、資金融通の円滑化の面からは、なお一定の効果が認められるものの、消費不況の長期化に伴い、その効果が限定的なものとなってきていると考えられる。また、同制度を利用した中小企業者のうち、小規模企業のその後の財務状況の推移をみると、営業利益、経常利益が大きく減少しているなど依然として厳しい経営状況となっていて、現時点では必ずしも財務体質の強化となって現れていない。
 そして、代位弁済及び回収の状況をみると、条件変更が増加していることなどから今後事故率が上昇する事態も懸念され、また、無担保の比率が高いことなどから回収体制を早急に整備して回収に努めなければ、想定した回収率を下回る事態も懸念される。
 したがって、本院としては、今後とも特別保証制度の実施状況について引き続き注視していくこととする。
D 日本鉄道建設公団が建設し第三セクター等に譲渡した民鉄線に係る譲渡代金の償還状況等について
 日本鉄道建設公団では、運輸大臣の指示により、東京、名古屋及び大阪の大都市圏において、民間鉄道事業者に係る新線の建設等に必要となる資金を調達して当該工事を実施し、その完成後当該鉄道事業者に譲渡する業務を行っている。
 既存路線を持たない第三セクター等が譲渡を受けた民鉄線七線について検査したところ、鉄道事業者の経営が破綻したり、公団から償還条件の変更を受けるなどの事態が五線において見受けられた。
 そして、公団では、これに対する措置として、経営が破綻したものに係る債務の処理、償還条件の変更に係る利子の元本化等を行っている。また、これに伴って、国から公団に対し利子補給金が交付されている。
 したがって、民鉄線制度の適用を希望する者においては、その経営の安定及び公団への譲渡代金の円滑な償還のための方策として、建設費の見積及び輸送需要予測の精度の向上を図ること、建設費が増こうした場合には、出資者に対して追加出資を要請するなどして償還を要する資金の増加を抑制することなどについて検討することが重要である。そして、鉄道事業の許可を行っている運輸省においては、上記方策の重要性にかんがみ、今後更に第三セクター等に対し適切な指導を行う要がある。
 本院としては、第三セクター等が譲渡を受けたものに係る鉄道事業者の経営状況、公団に対する譲渡代金の償還状況等について引き続き注視していくこととする。また、公団では現在第三セクターが鉄道事業者となっている新線の建設を行っていることから、今後も適切に工事が実施されているかについて注視していくこととする。
E 地方公共団体が管理する空港の整備・運営状況について
 我が国では、国が設置・管理する空港を含めると、地方と二大都市圏を結ぶネットワークは概成しつつあるとされている。一方、地方空港の新設、滑走路の延長等の整備事業が補助事業として実施されている。
 地方公共団体が管理する空港のうち離島に所在する空港を除く二十一空港を対象として検査したところ、@比較が可能な十四空港中九空港において、平成十一年度の乗降客数の実績が地方公共団体の需要予測を下回っていた。A二十一空港中十九空港において、運営に伴う支出が収入を上回っていた。B規制緩和の進展を背景として、地方公共団体が、現行の便数及び路線の維持等のため、着陸料の引下げ、航空会社の費用の一部負担等を行っており、これが収入の減少や支出の増加を招いている。
 こうした状況から、地方空港は関係方面において十分な利用がなされるような対応が望まれるとともに、運輸省において、まず、需要予測手法の調査研究を始めとして、一層予測精度の向上を図るための取組みが望まれる。
 今後、地方空港の新設・滑走路延長等の整備に当たっては、まず精度の高い需要予測を実施した上で、これに基づく費用と事業効果の評価を適切に実施することが重要であり、地方空港の利用が効率的かつ有効に行われていくことが肝要である。
F 社会資本整備促進融資等により整備された事業について
 日本政策投資銀行の社会資本整備促進融資等は、第三セクターが実施する特定事業等において、資金供給面で重要な役割を担っている。そして、特定事業等には、周辺の相当程度広範囲の地域に対して適切な経済的効果を及ぼすことなどが期待されているが、近年、経済環境の変化等により、一部の第三セクターにおいては経営が悪化し、事業遂行に支障を来しているものも見受けられる。
 このため、特定事業等を実施した第三セクター三百六十五社の経営状況等について検査したところ、二十六社は事業を閉鎖又は縮小していて、融資の効果が限定的にしか発現されていない。また、融資残高のある三百三十五社の経営状況については、五社が延滞を生じていたり、十八社が償還方法の変更等の経営支援を受けていたりなどして、経営の厳しい会社が相当数見受けられた。
 したがって、第三セクターにおいては、経営の合理化等による財務体質の一層の改善を図り、自立的で安定した経営が行えるよう努めることが望まれる。一方、日本政策投資銀行においては、既に融資を行った第三セクターについては経営安定のために地方公共団体等と調整・連携を図りながら、豊富な融資実績により蓄積された情報を活用するなど多方面から協力していくことが肝要である。また、今後、融資を行う第三セクターについては、特定事業における適切な事業計画の策定及び事業実施における事前の支援体制の重要性を周知させるとともに、将来の経済状況等に十分留意しながら、独立性を認められた政策金融機関として自主的な判断の下に適切な対応を図っていくことが肝要である。
G 東京湾アクアラインの運営について
 東京湾アクアラインは、日本道路公団が実施している一般有料道路事業の一つとして、民間の資金、経営能力等を活用して多額の有利子資金等により建設されたものであり、その建設資金は今後、料金収入をもって償還されることとなる。
 その収支に係る計画及び実績並びに一般有料道路事業に与える影響に着眼して検査したところ、計画時の推定交通量の算定の基になっている経済指標等についてその実績が予測とかい離していたり、他の有料道路に比べて料金が高額なものとなっていたりすることなどから、営業開始時の計画において見込んだ交通量が確保できず、収支状況が低迷し、その多額の収支差損は一般有料道路事業全体の収支にも非常に大きな影響を与えている。
 また、公団では、平成十二年の変更許可により、関連道路プール制の導入、料金の引下げ、国からの利子補給金による金利の低減とともに償還期間を五十年間に延長している。しかし、償還期間がこのように長期にわたると、その間に社会経済情勢に大きな変化が生ずることも予想される。
 したがって、公団において、今後とも社会経済情勢の変化を十分に見極めながら、償還の状況を的確に把握するとともに、その達成に努めていくことが必要である。
 本院としては、その償還計画の達成状況について、引き続き注視していくこととする。
H H―Uロケット及びM―Xロケットの開発について
 我が国の宇宙開発は、宇宙開発政策大綱及び宇宙開発計画に基づいて実施されており、H系ロケットの開発は宇宙開発事業団、M系ロケットの開発は文部省宇宙科学研究所が中心となって進められている。
@ 事業団においては、H―UAロケットの開発を本格化させつつあるが、その開発の基礎となっているH―Uロケットに要した費用は四千十八億円と多額に上っており、五号機、八号機が、いずれもエンジンの不具合により打上げに失敗するなど、その信頼性を揺るがせるとともに我が国の宇宙開発に大きな影響を与える事態が生じている。大型で高性能なロケットやこれに搭載された人工衛星の開発には多額の資金が必要であり、これら資金のほぼ全額が国からの出資金で賄われていることから、ロケットの打上げが失敗すると、これらの国の資金がその有効性を損なうことになる。
 したがって、事業団においては、(ア)資源を効率的に活用することにより当面はH―UAロケット開発への一層の重点化を図る、(イ)開発において、大学や関係研究機関からの知見を積極的に導入し、技術基盤の向上に努める、(ウ)技術面での審査・評価に当たっては、外部専門家の招へいも視野に入れるなど、その充実強化を図る、(エ)技術的に困難な問題を伴う可能性のある製作会社間のインターフェース部分については、一つの製作会社が責任を持つ体制へ移行することも検討するなどして、H―UAロケットの信頼性を向上させ、国から投入される資金が宇宙開発で有効に活用されるよう開発体制について所要の見直しを図ることが望まれる。
A 宇宙科学研究所が開発したM―Vロケット四号機は、第十九号科学衛星ASTRO―Eを搭載し打ち上げられたが、第一段モータの燃焼圧の低下により、衛星を所定の軌道に投入することができず、打上げは失敗に終わった。その結果、M―Vロケット四号機(製作費六十八億円)及びそれに搭載された第十九号科学衛星(製作費百十六億円)は、その目的を達成することができなかった。
 宇宙開発委員会の報告書によれば、失敗の原因は、第一段ロケットのスロートインサートに用いられているグラファイトに内部欠陥等が存在していたことが原因であったと推定されている。事故原因と推定された部品の製造管理、納入検査の状況などについて検査したところ、製作会社での検査及び同研究所での成果物引渡しの際の完成検査では外観検査等を行っていたが、グラファイトの非破壊検査は行われていなかった。
 検収の適正を期するため、今後、ロケット構成部品の非破壊検査の能力向上、新しい検査手法の研究開発などが必要と思料される。
I 年金福祉事業団の事業運営及び実施について
 厚生年金保険及び国民年金の被保険者から徴収された保険料は、年金給付の財源となるものであり、毎年度の剰余金については年金積立金として資金運用部に全額が預託されている。年金福祉事業団では、この資金運用部に預託された資金の一部を借り入れてこれを財源としつつ、また、国の年金特別会計から政府出資金及び政府交付金を受けて、貸付事業、施設事業及び資金運用事業を行っている。
 本院では、事業団が平成十三年四月一日に年金資金運用基金に業務を承継し、解散することから、事業団のこれまでの事業実績等を決算報告書等により総括的に調査・分析するとともに、今後の基金の事業運営に資することなどを目的として検査した。
 その結果、上記三事業については次のような状況となっている。
@ 貸付事業については、事業の大半を占める被保険者住宅資金貸付が、近年、貸付けの需要が大きく減退しており、また、繰上償還に伴う貸付利子補給金としての政府交付金の額が増こうしたり、延滞金が増加したりしている。
A 施設事業については、近年は需要の変化に対応しきれていなかったり、立地条件が悪かったりしたために、利用実績が減少しており、また、基地業務からの撤退は決定しているものの、基地の譲渡が進展していない。
B 資金運用事業については、運用に係る市場環境の悪化等もあって、五年度以降は欠損金が生じており、国庫納付等の所期の事業目的が十分に達成されていない。
 以上の三事業には、年金特別会計から、政府出資金、政府交付金として多額の年金財源が投入されてきており、また、欠損金も多額に上っている状況である。事業団の事業実績の低下や多額の欠損金の発生については、社会経済情勢の変化等に起因する点があるものの、近年の少子・高齢化の進展などにより公的年金財政がひっ迫している現状にかんがみ、業務を承継する基金においては、より一層適切かつ効率的な事業運営の推進に努めることが肝要である。
 本院としては、今後、基金の各事業の運営について上記の点に留意して検査に努めていくこととする。
J 山陽新幹線におけるトンネル、高架橋等のコンクリート構造物等について
 JR西日本管内の福岡トンネル、北九州トンネルにおいて、平成十一年六月及び十月にコンクリート剥落事故が発生した。また、高架橋等においても、昭和六十年頃からコンクリート片の剥落等が相次いでいる。そこで、本院では、トンネル、高架橋等のコンクリート構造物の建設当時の施工管理及びこれまでの維持管理が適切に行われていたか、また、今後改善を図る点はないかという観点から、それらの内容、点検の結果等を検査した。その結果、建設当時、請負人が示方書等を遵守しなかったり、発注者の施工管理が十分でなかったりしていたため、一部に適切でない施工があったと認められた。また、これまで実施してきた定期検査等は、剥落に結びつく変状に対して十分でなかったと認められた。
 JR西日本では、剥落事故後、維持管理方法の見直しを進めているが、トンネルについては、劣化度の高いものに留意して重点的に検査したり、検査の精度に留意しつつ早期に自動検査システム等の導入を図ったりする要があると認められた。また、高架橋等については、劣化が進行しているものに留意して重点的に検査したり、コンクリートの中性化及び鉄筋の腐食は放置すれば経年進行することなどから、維持管理計画を定め適切な補修を早期に行ったり、高架橋等ごとに経年劣化が把握できるよう検査記録簿をシステム化するなどして整備したりする要があると認められた。
 今後、構造物の建設に当たっては、施工管理を適切に行うことにより高品質の構造物を建設するとともに、現存する構造物の維持管理を適切に行うことにより構造物を健全な状態に保つことが、ライフサイクルコストを低減させ、ひいては、経営の安定に資することになる。

第2 観点別の検査結果

 会計検査院は、第1節の<第1 検査の方針>で述べたとおり、正確性の観点、合規性の観点、経済性・効率性の観点、有効性の観点といった多角的な観点から検査を実施した。その結果は<第1 事項等別の検査結果>で述べたとおりであるが、これらの事項等について、検査の観点に即して事例を挙げると次のとおりである。

1 主に業務が予算、法令等に従って適正に実施されているかに着眼したもの
 検査対象機関は、予算、法令等に従って適正に業務を実施しなければならない。この業務の執行に際し、予算、法令等が守られているか、さらには予算、法令等の趣旨に適合した制度の運用が行われているかに着眼した検査の結果として次のようなものがある。
@ 会計に関する事務を処理する職員は、会計法令等の定めるところに従って、その取り扱う資金等の出納保管は適切に行い、また、その受払等の経理処理は適正確実に行うべきものであるので、これらが会計法令等に従って適正に行われているかを検査した。その結果、「職員の不正行為による損害が生じたもの及びこれに対する当局の処置が不当と認められるもの」を掲記した。
A 租税及び保険料は法令等に従って適正に徴収すべきものであるので、個々の徴収額に過不足がないかを検査した。その結果、「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」、「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」及び「労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」を掲記した。また、適正な徴収が行われていない事態について、それが行政運営等に起因していないかを検査した。その結果、「国民年金の第三号被保険者に係る種別変更の届出の適正化について」として改善の意見を表示し、「消費税の課税仕入れに係る消費税額の計算に係る様式を改めることなどにより、適正な課税を図るよう改善させたもの」を掲記した。
B 実績額に基づいて契約金額を変更のうえ支払うこととなっている契約において、その支払額が実績額に基づく適正なものであるかを検査した。その結果、「護衛艦「さみだれ」製造請負契約において、契約金額の確定に当たり、消費税相当額の取扱いが適切でなかったため支払額が過大になっているもの」を掲記した。
C 補助金の交付申請や実績報告が適正に行われているかを検査した。その結果、「民間スポーツ振興費等補助金の経理が不当と認められるもの」や「スポーツ振興基金助成金の経理が不当と認められるもの」を掲記した。
D 社会福祉や雇用対策のための給付金や助成金の支給が適正に行われているかを検査した。その結果、「生活保護費負担金の経理が不当と認められるもの」や「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」、「中小企業雇用創出人材確保助成金の支給が適正でなかったもの」を掲記した。
E 医療機関からの診療報酬や労災診療費の請求に対する支払が適正かを検査した。その結果、「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」及び「労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの」を掲記し、「医療用の酸素に係る診療報酬の請求について」として是正改善の処置を要求した。
F 老齢厚生年金等の支給は適正かを検査した。その結果、「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」を掲記した。
G 国有財産である福祉施設の経営を受託している団体において、その利益金等が他の事業に使用されていないか、また自らの事業と明確に区分して経理されているかなどに着眼して検査した。その結果、「福祉施設の経営委託契約に係る経理処理を適切なものとするよう改善させたもの」を掲記した。

2 主に業務が経済的・効率的に実施されているかに着眼したもの
 検査対象機関の業務は、その事業目的を達成する上で、経済的・効率的に実施されなければならない。すなわち、経費は節減できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという観点であるが、この点に着眼した検査の結果として次のようなものがある。
@ 国立大学病院の患者給食業務において、収入面も考慮して経費が経済的・効率的に使用されているか、また、外部委託を行っている場合の契約事務は競争性が確保されるものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、「国立大学附属病院における患者給食業務について」として是正改善の処置を要求し及び改善の意見を表示した。
A 工事の設計や工事費の積算は経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「防波堤等工事の消波工等に使用する消波ブロックの規格の選定方法を適切なものとし、経済的な設計を行うよう改善させたもの」や「橋りょう新設工事における補修塗装費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの」を掲記した。
B 物件の調達が実態に適合した適切かつ経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「警備艇建造契約における一般管理費等の積算を業務の実態に適合するよう改善させたもの」や「八一式短距離地対空誘導弾地上装置の交換部品の調達に当たり、数量の算定に交換の実績を反映させることにより調達額の節減を図るよう改善させたもの」を掲記した。
C 役務契約の予定価格の積算は適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、「駅構内清掃業務委託契約における厚生年金保険料等の事業主負担額の積算を適切に行うよう改善させたもの」や「車両清掃作業等業務委託契約における健康保険料等の事業主負担額の積算を適切に行うよう改善させたもの」を掲記した。
D 各種公共サービスにおける料金割引制度を適切に利用して経費の節減を図っているかに着眼して検査した。その結果、「国際電話の使用実態に応じた割引制度の適用を受けることにより、国際電話料金の節減を図るよう改善させたもの」、「年金受給権者への通知書等の郵送に当たり、割引制度を活用することにより郵便料金の節減を図るよう改善させたもの」及び「電話料金請求書等各種郵便物の郵送について、郵便料金の割引制度を活用することにより経費の節減を図るよう改善させたもの」を掲記した。
E 補助金で整備する学校施設の規模が児童生徒数の減少に応じたものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「学校給食施設の整備に係る補助対象面積等の算定について」として改善の処置を要求した。
F 農業集落排水施設に係る汚水処理区を接続することにより経済性が発揮され、事業の効率的な実施が図られているかに着眼して検査した。その結果、「農業集落排水事業における汚水処理区の設定に当たり、経済性の検討を十分行うことにより、事業の効率的な実施を図るよう改善させたもの」を掲記した。
G 郵便局における資金の管理は効率的に行われているかなどに着眼して検査した。その結果、「郵便局における硬貨過超金の保管について」として改善の意見を表示した。
H 外部に利用させている研究施設の利用料金は適切に算定されているかに着眼して検査した。その結果、「イオン照射研究施設を民間企業、大学等に利用させるに当たり、利用の実態に応じて利用料金を適切に算定して、徴収するよう改善させたもの」を掲記した。

3 主に事業が所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼したもの
 検査対象機関の事業の中には、一定の目的の下に、財政援助・助成措置を講じたり、社会資本を整備したり、財産を保有・活用したりなどしているものがあるが、これらが所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼した検査の結果として次のようなものがある。
@ 水田麦・大豆事業における技術営農実証事業が適切に行われ、生産性や品質の向上等の課題に対応した効果を上げているかなどに着眼して検査した。その結果、「水田麦・大豆等の生産振興を図るための技術対策の実施について」として改善の処置を要求した。
A 農業の担い手の育成と担い手への農用地利用の集積を図るために、いわゆるソフト事業とハード事業が一体として仕組まれた事業において、両事業が有機的に連携して実施されているかに着眼して検査した。その結果、「地域農業経営確立総合対策において推進事業と支援事業を有機的に連携させることなどにより事業効果の発現を図るよう改善させたもの」を掲記した。
B 農産物の価格安定を目的とする事業が適切に運営されているかなどに着眼して検査した。その結果、「指定野菜価格安定対策事業の運営が適切に行われるよう改善させたもの」を掲記した。
C 農畜産業等の健全な発展を図るために補助金を交付して資金を造成させ畜産農家等に貸付け等を行う基金について、その規模は適切か、また造成された基金は有効に活用されているかなどに着眼して検査した。その結果、「平均払農家に対する肥育素牛導入事業に充てるために造成した基金の規模を適正なものとするよう改善させたもの」を掲記した。
D 政府開発援助が効果を発現し、援助の相手となる開発途上国の経済開発及び福祉の向上などに寄与しているかなどに着眼して検査し、「政府開発援助について」を掲記した。
E 中小企業金融安定化特別保証制度について、その目的である事業資金の融通の円滑化の側面のほか、倒産等の抑制にも寄与しているかなど、制度の効果に着眼して検査し、「中小企業金融安定化特別保証制度の実施状況について」を掲記した。
F 社会資本整備促進融資等による施設の整備において、地域に経済的効果が波及し融資の効果が発現するためには、融資先である第三セクターの経営が安定することが必要であることから、施設の利用状況や会社の経営状況等の側面から融資の効果が発現されているかに着眼して検査し、「社会資本整備促進融資等により整備された事業について」を掲記した。





    <3月21日号の主な予定>

 ▽消防白書のあらまし………………………消 防 庁 

 ▽法人企業統計調査(七〜九月期)………財 務 省(大 蔵 省) 




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