官報資料版 平成13年5月16日




                  ▽地方財政白書のあらまし………………………総 務 省

                  ▽家計収支(一月分)……………………………総 務 省

                  ▽家計調査 平成十二年平均結果の特徴………総 務 省











地方財政白書のあらまし


―地方財政の状況―


総 務 省


 「地方財政の状況」(地方財政白書)は、平成十三年三月二十三日の閣議決定を経て、国会に報告された。これは、地方財政法第三十条の二の規定に基づき、内閣が地方財政の状況を明らかにして、毎年国会に報告するものであり、その内容は次の二部構成となっている。
 第一部では、平成十一年度地方公共団体の決算を中心として、地方財政の状況を明らかにしている。第二部では、最近の地方財政の動向を要約し、当面する主要な課題について取りまとめている。
 以下、平成十一年度の地方公共団体の普通会計決算の状況を中心に、白書のあらましについて紹介する。

<第一部> 平成十一年度の地方財政

一 地方財政の役割

 地方公共団体は、その自然的・歴史的条件、産業構造、人口規模等がそれぞれ異なっており、これに即応してさまざまな行政活動を行っている。地方財政は、このような地方公共団体の行政活動を支えている個々の地方公共団体の財政の集合であり、国の財政と密接な関係を保ちながら、国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。

 (1) 国・地方を通じた財政支出
 国と地方の財政が担っている役割について、その財政規模と目的別支出からみると、次のとおりである。
 なお、ここでは、国・地方を通じた財政支出として、国(一般会計と交付税及び譲与税配付金、公共事業関係等の十特別会計の純計)と地方(普通会計)の財政支出の合計から重複分を除いた歳出純計額を用いている。
 <財政規模>
 国と地方の歳出純計額は百六十三兆二千四百十億円で、前年度と比べると四・四%増(前年度五・一%増)となっている。
 歳出純計額の目的別歳出額の構成比の推移についてみると、平成十一年度においては、社会保障関係費が最も大きな割合(二四・一%)を占め、以下、公債費(一九・六%)、国土保全及び開発費(一九・一%)、教育費(一三・〇%)の順となっている。
 なお、公債費の構成比が高い水準にあるのは、昭和五十年度以降の巨額の財源不足、平成四年度以降の経済対策等に対処するため、国・地方を通じて大量の公債が発行されたことによるものである。
 この歳出純計額を最終支出の主体に着目して国と地方とに分けてみると、国が六十三兆二千二百二十五億円、地方が百兆百八十五億円で、前年度と比べると、社会保障関係費、公債費の増加等により、国が九・一%増(前年度一〇・七%増)、地方が一・六%増(前年度二・一%増)となっている。また、歳出純計額に占める割合は、国が三八・七%、地方が六一・三%となっている。
 <目的別支出>
 歳出純計額の目的別及び支出主体別の規模は、第1図のとおりである。これによると、防衛費等のように国のみが行う行政に係るものは別として、公衆衛生、清掃等の衛生費、小学校、中学校、高等学校等の学校教育費、警察、消防等の司法警察消防費、道路整備、都市計画、土地改良等の国土開発費等、国民生活に直接関連する経費については、最終的に地方公共団体を通じて支出されている割合が高いことがわかる。
 なお、公営企業会計を含めた地方財政における、道路、都市計画、環境衛生、厚生福祉、教育文化、上・下水道、交通、病院等の生活環境・福祉・文化機能に係る事業の現状をみると、これらの事業が歳出純計額、普通建設事業費(建設投資額)及び単独事業費に占める割合は、それぞれ七一・七%、七一・二%、七八・八%となっており、地方公共団体は住民生活に密接に関連した社会資本の整備等、国民生活の質的向上につながる分野に、公共投資基本計画の割合(計画上六〇%台前半)を上回る費用を支出している。

 (2) 国民経済と地方財政
 政府部門は、国民経済計算上、中央政府、地方政府及び社会保障基金からなっており、家計部門に次ぐ経済活動の主体として、資金の調達及び財政支出を通じ、資源配分の適正化、所得分配の公正化、経済の安定化などの重要な機能を果たしている。その中でも、地方政府は、中央政府を上回る最終支出主体であり、国民経済上、大きな役割を担っている。
 <国内総支出と地方財政>
 国民経済において地方政府が果たしている役割を国内総支出(名目ベース。以下同じ)に占める割合でみると、第2図のとおりである。平成十一年度の国内総支出は五百十三兆六千八百二十二億円であり、その支出主体別の構成比は、家計部門が六〇・三%(前年度五九・六%)、政府部門が二三・七%(同二三・五%)、企業部門が一四・四%(同一五・〇%)となっている。
 政府部門のうち、地方政府及び中央政府が国内総支出に占める割合は、地方政府が一四・〇%(同一四・一%)、中央政府が四・五%(同四・三%)となっており、地方政府の構成比は中央政府の約三倍となっている。なお、地方政府のうち普通会計分は六十一兆二百九十二億円で、国内総支出の一一・九%(同一二・〇%)を占めている。
 <公的支出の状況>
 政府部門による平成十一年度の公的支出は、政府最終消費支出が引き続き前年度を上回ったことから、前年度と比べると〇・九%増(前年度一・〇%増)の百二十一兆八千七十億円となった。また、国内総支出に占める割合も、前年度と比べると〇・二%ポイント上昇の二三・七%となっている。
 公的支出の内訳をみると、政府最終消費支出が八十三兆二千八百八十四億円、公的総資本形成(公的総固定資本形成と公的在庫品増加の合計額)が三十八兆五千百八十六億円となっており、これらを前年度と比べると、政府最終消費支出は二・五%増(前年度二・〇%増)、公的総資本形成は二・五%減(同〇・九%減)となっている。
 さらに、公的支出の内訳を最終支出主体別にみると、第3図のとおりである。中央政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が一・〇%増(前年度六・一%増)、公的総資本形成が五・八%増(同二・〇%減)で合計三・二%増(同二・二%増)であり、公的支出に占める中央政府の割合は前年度(一八・四%)より〇・四%ポイント上昇の一八・八%となっている。
 なお、平成十一年度から導入された新しい国民経済計算(93SNA)では、新たに社会資本に係る固定資本減耗を計上等することとされている。このため、政府最終消費支出に従来計上されていなかった一般政府の保有する道路、ダム等に係る固定資本減耗が、計上されている。
 地方政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が二・三%増(前年度一・六%増)、公的総資本形成が五・三%減(同〇・三%減)で、合計〇・八%減(同〇・八%増)であり、公的支出に占める地方政府の割合は、前年度(六〇・一%)より一・〇%ポイント低下の五九・一%となっている。
 また、政府最終消費支出及び公的総資本形成に占める地方政府の割合をみると、政府最終消費支出においては前年度(五三・四%)と比べると〇・一%ポイント低下の五三・三%、公的総資本形成においては前年度(七三・八%)と比べると二・一%ポイント低下の七一・七%となっており、依然七割を超える額を地方政府が支出している。
 なお、ここでいう公的支出には、国・地方の歳出に含まれる経費の中で、移転的経費である扶助費、普通建設事業費のうち所有権の取得に要する経費である用地取得費、金融取引に当たる公債費及び積立金等といった付加価値の増加を伴わない経費は除かれている。したがって、公的支出に占める中央政府及び地方政府の割合と歳出純計額に占める国と地方の割合は一致していない。

二 地方財政の概況

 地方公共団体の歳入及び歳出は、一般会計と特別会計に区分経理されているが、各団体の会計区分は全団体一様ではない。このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。
 以下、平成十一年度の地方財政について、普通会計を中心にその状況を述べるとともに、地方公営事業会計についても、その概要を述べる。

 (1) 決算規模
 地方公共団体(四十七都道府県、三千二百二十九市町村、二十三特別区、二千百六十一部事務組合及び六十一広域連合(以下、一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という)の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入百四兆六十五億円(前年度百二兆八千六百八十九億円)、歳出百一兆六千二百九十一億円(同百兆一千九百七十五億円)で、歳入、歳出いずれも過去最大となっている。また、前年度と比べると、歳入一・一%増(前年度三・〇%増)、歳出一・四%増(同二・六%増)となっている。
 このように決算規模が前年度決算額を上回ったのは、国の補正予算に伴い、雇用対策、介護保険円滑導入、少子化対策等に係る経費が追加計上されたこと、平成十一年度に元金償還が開始された既発債の発行額が高水準であったこと等により、公債費が増加したことが、主な要因となっている。

 (2) 決算収支
 <実質収支>
 実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第2表のとおりである。平成十一年度の実質収支は、一兆二十五億円の黒字(前年度八千四百二十億円の黒字)で、昭和三十一年度以降黒字が続いている。
 実質収支が赤字である団体数をみると、平成十年度に赤字であった二十七団体(四都府県、二十一市町村、二一部事務組合。合併に伴う打切り決算による赤字団体は除いている)のうち十九団体(四都府県、十五市町村)が引き続き赤字であり、更に七団体(七市町)が新たに赤字団体となった結果、赤字団体数は二十六団体で、前年度と比べると一団体減少した。
 なお、標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移についてみると、平成十一年度の実質収支比率は前年度と比べると〇・三%ポイント上昇の一・六%となっている。これを団体種類別にみると、都道府県は〇・二%ポイント上昇の△〇・一%、市町村は〇・三%ポイント上昇の三・一%となっている。
 <単年度収支及び実質単年度収支>
 単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、二年ぶりに黒字(前年度二千四百三億円の赤字)となり、その黒字額は一千五百八十八億円となっている。これを団体種類別にみると、都道府県は六百七十七億円の黒字(前年度二千三百二十二億円の赤字)、市町村は九百十一億円の黒字(前年度八十一億円の赤字)となっている。
 また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、三年ぶりに黒字(前年度二千六百五十九億円の赤字)となり、その黒字額は二千七百八十八億円となっている。これを団体種類別にみると、都道府県は六十二億円の黒字(前年度二千五百六十二億円の赤字)、市町村は二千七百二十六億円の黒字(前年度九十六億円の赤字)となっている。

三 地方財源の状況

 (1) 歳入の概況
 歳入純計決算額は百四兆六十五億円で、前年度と比べると一・一%増(前年度三・〇%増)と前年に引き続き増加した。
 決算額の主な内訳をみると、第3表のとおりである。
 地方税は、個人住民税や法人事業税の恒久的な減税の実施や法人企業の業績低迷等により、道府県民税、市町村民税、事業税等が減収となったため、前年度に引き続き減少した(二・五%減)。十一年度に地方特例交付金が創設されたことや、地方交付税(一五・六%増)が増加したことから、一般財源は増加し(四・七%増)、五年連続して前年度決算額を上回った。また、国庫支出金(五・四%増)が増加した一方、地方債(一三・六%減)は大幅に減少した。
 <租税収入及び租税負担率>
 国及び地方公共団体の行政活動に要する経費は、最終的にはその大部分が租税によって賄われている。国税と地方税を合わせ租税として徴収された額は八十四兆二千四百億円で、前年度と比べると三・三%減(前年度五・一%減)となっている。
 国民所得に対する租税総額の割合である租税負担率をみると、近年、低下傾向にあり、十一年度においては、前年度と比べると〇・八%ポイント低下の二二・〇%となった。なお、主要な諸外国の租税負担率をみると、アメリカ二六・七%(一九九七暦年計数)、イギリス四〇・〇%(同)、ドイツ二九・四%(同)、フランス三九・四%(同)となっている。
 次に、租税を国税と地方税の別でみると、国税四十九兆二千百三十九億円(三・九%減)、地方税三十五兆二百六十一億円(二・五%減)といずれも二年連続して減収となった。租税総額に占める国税と地方税の割合は、第4図のとおりであり、国税五八・四%(前年度五八・八%)、地方税四一・六%(同四一・二%)となっている。また、地方交付税及び地方譲与税を国から地方へ交付した後の租税の実質的な配分割合は国四二・九%(同四一・七%)、地方五七・一%(同五八・三%)となっている。
 <地方税>
 地方税の決算額は三十五兆二百六十一億円で、前年度と比べると二・五%減(前年度〇・六%減)となっており、二年連続の減収となった。このように地方税が前年度決算額を下回ったのは、個人住民税や法人事業税の恒久的な減税の実施や法人企業の業績低迷等により、道府県民税、市町村民税、事業税等が減収となったことによるものである。

 (2) 地方譲与税
 地方譲与税の決算額は六千八十九億円で、前年度と比べると二・三%増(前年度四四・九%減)と増加となった。また、歳入総額に占める割合も〇・六%(同〇・六%)となった。
 地方譲与税の内訳をみると、地方道路譲与税が二千八百八十四億円(一・九%増)、自動車重量譲与税が二千七百八十六億円(二・九%増)、航空機燃料譲与税が百六十四億円(〇・七%増)、石油ガス譲与税が百四十五億円(〇・二%増)及び特別とん譲与税が百九億円(一・八%増)となっている。

 (3) 地方特例交付金
 地方特例交付金は、恒久的な減税に伴う地方税の減収の一部を補てんするため、地方税の代替的性格を有する財源として、平成十一年度に創設された。その総額は、毎年度算定する恒久的な減税に伴う減収見込額の総額の四分の三から、国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置及び法人税の地方交付税率の引上げによる補てん額を控除した額であり、平成十一年度の決算額は六千三百九十九億円で、歳入総額に占める割合は〇・六%となっている。

 (4) 地方交付税
 地方交付税の決算額は、当初、国税五税の収入見込額に基づき算定された額十二兆三千二百七十一億円と地方交付税法附則第四条第二号から第五号までの加算額等五千五百六十億円との合算額に、交付税特別会計借入金八兆四千百九十三億円及び交付税特別会計剰余金一千五百億円等を加算し、同特別会計借入金利子五千八百八十三億円を減額した二十兆八千六百四十二億円とされていた。
 その後、国税の自然減収により、地方交付税に四千三百八十七億円の減が生じることになったが、交付税特別会計の借入れにより完全に補てんされたため、平成十一年度地方交付税総額の決算額は、当初どおり二十兆八千六百四十二億円で、前年度と比べると一五・六%増(前年度五・四%増)となっており、六年連続して前年度決算額を上回っている。その内訳は、普通交付税が十九兆六千百二十四億円、特別交付税が一兆二千五百十九億円となっている。また、歳入総額に占める割合は、二〇・一%(前年度一七・五%)である。
 なお、基準財政需要額は四十六兆三千九百二十五億円(財源不足団体分四十一兆八千六百五十三億円、財源超過団体分四兆五千二百七十二億円)、基準財政収入額は二十七兆三千百五十九億円(財源不足団体分二十二兆二千三百十億円、財源超過団体分五兆八百四十九億円)で、財源不足団体の財源不足額は十九兆六千三百四十三億円、財源超過団体の財源超過額は五千五百七十七億円となっている。
 普通交付税の交付状況をみると、不交付団体は、都道府県においては前年度と同じく東京都一団体となっており、市町村においては前年度(百十八団体)より三十四団体減少の八十四団体となっている。

 (5) 一般財源
 一般財源は、地方税、地方譲与税、地方特例交付金及び地方交付税の合計額(市町村決算においては、これらに加えて、都道府県から交付される地方消費税交付金等各種交付金を加えた合計額)であり、決算額は五十七兆一千三百九十一億円で、前年度と比べると四・七%増(前年度〇・四%増)となっており、五年連続して増加した。また、歳入総額に占める割合は、五四・九%(前年度五三・〇%)となっている。

 (6) 国庫支出金
 国庫支出金の決算額は十六兆五千九百九十億円で、前年度と比べると五・四%増(前年度九・六%増)となっており、二年連続して増加した。また、歳入総額に占める割合も一六・〇%(同一五・三%)と二年連続して上昇した。
 次に、国庫支出金の内訳をみると、普通建設事業費支出金が六兆一千六十八億円で最も大きな割合(国庫支出金全体の三六・八%)を占め、以下、義務教育費負担金が三兆二億円(同一八・一%)、生活保護費負担金が一兆三千九百八億円(同八・四%)となっており、以上の支出金等で国庫支出金総額の六三・二%を占めている。

 (7) 地方債
 地方債の決算額は十三兆七百三十三億円で、地方税収等の落込みや減税に伴う減収に対処するための地方債の発行が減少したこと、普通建設事業が減少したこと等から、前年度と比べると一三・六%の減少(前年度七・五%増)に転じた。この結果、地方債依存度(歳入総額に占める地方債の割合)も前年度と比べると二・一%ポイント低下の一二・六%(前年度一四・七%)となっている。
 地方債の決算額を団体種類別にみると、都道府県においては七兆六千三百五億円で一一・九%減(前年度一二・六%増)、市町村においては五兆五千百九十六億円で一五・九%減(同一・三%増)となっている。
 また、地方債の目的別の発行状況をみると、一般単独事業債が五兆二千五百九十四億円で最も大きな割合(地方債発行総額の四〇・二%)を占め、以下、一般公共事業債が三兆六千三十七億円(同二七・六%)、減収補てん債が五千四百九十億円(同四・二%)、一般廃棄物処理事業債が四千五百九十九億円(同三・五%)の順となっている。

四 地方経費の内容

 歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と、経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

 (1) 目的別歳出
 地方公共団体の経費は、その行政目的によって、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、公債費等に大別することができる。
 歳出純計決算額は百一兆六千二百九十一億円で、前年度と比べると一・四%増(前年度二・六%増)となった。
 目的別歳出の構成比は、第4表のとおりであり、主な目的別歳出の構成比は、土木費(二〇・六%)、教育費(一七・九%)、民生費(一四・八%)、公債費(一一・六%)、総務費(九・〇%)の順となっており、土木費、教育費及び民生費で全体の五割以上を占めている。
 これらの項目の伸び率をみると、土木費が四・五%減(前年度三・〇%増)、教育費が二・二%減(同一・〇%減)、民生費が一二・〇%増(同五・七%増)、公債費が八・二%増(同五・八%増)、総務費が六・〇%増(同〇・四%減)となっており、民生費及び公債費は引き続き高い伸び率を示している。
 なお、一般財源総額(五十七兆一千三百九十一億円)に占める目的別歳出の割合をみると、教育費が最も大きな割合(二〇・一%)を占め、以下、公債費(一七・三%)、民生費(一三・四%)、土木費(一二・四%)の順となっている。

 (2) 性質別歳出
 地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。
 義務的経費は、職員の給与等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、人件費が約六割を占めている。
 また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、普通建設事業費が大部分(九七・四%)を占めている。
 歳出純計決算額の性質別内訳をみると、第5表のとおりである。
 義務的経費は、人件費(〇・〇%増)の伸びが職員給の減少等により過去最低であったものの、扶助費(五・六%増)及び公債費(八・二%増)が増加したことから、前年度決算額を上回った(二・八%増)。投資的経費は、災害復旧事業費(二五・六%増)が増加したものの、普通建設事業費(七・七%減)等が減少したことから、前年度決算額を下回った(七・一%減)。また、その他の経費は、投資及び出資金(一一・九%減)等が減少したものの、補助費等(一五・一%増)及び積立金(九〇・三%増)等が増加したことから前年度決算額を上回った(八・二%増)。
 <義務的経費>
 義務的経費は、人件費、扶助費及び公債費からなっている。
 義務的経費の決算額は四十五兆七千百六十二億円で、前年度と比べると二・八%増(前年度二・五%増)となっている。また、義務的経費の歳出総額に占める割合は四五・〇%で、前年度と比べると〇・六%ポイント上昇となっている。
 義務的経費の内訳をみると、人件費が二十七兆四百七十五億円で、義務的経費に占める割合は五九・二%(前年度六〇・八%)、公債費が十一兆七千五百六十億円で二五・七%(同二四・四%)、扶助費が六兆九千百二十七億円で一五・一%(同一四・七%)となっており、近年は公債費及び扶助費の構成比が上昇する一方、人件費の構成比は低下している。
 (人件費)
 人件費は、職員給、地方公務員共済組合等負担金、退職金、委員等報酬、議員報酬手当等からなっている。
 この人件費の決算額は二十七兆四百七十五億円で、これまで(昭和二十九年度以降)で最も低い伸び率であった前年度(〇・四%)を下回る低い伸び率(〇・〇%)であった。
 人件費が歳出総額に占める割合及び人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合の推移は、第5図のとおりである。人件費の歳出総額に占める割合は二六・六%で、前年度を〇・四%ポイント下回っている。人件費の歳出総額に占める割合を団体種類別にみると、都道府県(二九・三%)が、市町村立義務教育諸学校教職員の給与を負担していること等から、市町村(二〇・六%)を上回っている。
 人件費の主な内訳は、職員給が七五・〇%を占め、以下、地方公務員共済組合等負担金(一三・一%)、退職金(七・〇%)の順となっている。また、各費目の伸び率をみると、職員給は前年度と比べると〇・九%減となっており、初めて(昭和三十三年度以降)減少となった。また、地方公務員共済組合等負担金は前年度と比べると〇・六%減(前年度〇・四%減)、退職者の増により退職金は一二・四%増(同五・七%減)となっている。
 (扶助費)
 扶助費は、社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、老人、心身障害者等を援助するために要する経費である。
 この扶助費の決算額は六兆九千百二十七億円であり、前年度と比べると五・六%増(前年度六・二%増)となった。また、扶助費の歳出総額に占める割合は、平成四年度以降上昇しており、十一年度も前年度と比べると〇・三%ポイント上昇の六・八%となった。
 扶助費の目的別内訳は、生活保護費が一兆八千七百三十億円で最も大きな割合(扶助費総額の二七・一%)を占めており、以下、児童福祉費の一兆八千六百六十六億円(同二七・〇%)、老人福祉費の一兆五千六百四十八億円(同二二・六%)、社会福祉費の一兆一千四百八十四億円(同一六・六%)の順となっている。これら各費目の伸び率をみると、生活保護費が七・六%増(前年度五・六%増)、児童福祉費が四・四%増(同五・六%増)、老人福祉費が六・二%増(同七・三%増)、社会福祉費が五・三%増(同七・七%増)となっている。扶助費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が三兆二千二百三十九億円と最も大きな割合を占めており、次いで、生活保護費負担金及び児童保護費等負担金等の国庫支出金が三兆一千八百三十九億円となっている。
 (公債費)
 公債費は、地方債元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費である。
 この公債費の決算額は十一兆七千五百六十億円で、前年度と比べると八・二%増(前年度五・八%増)となった。また、歳出総額に占める公債費の割合は、平成五年度以降上昇しており、十一年度においても、前年度と比べると〇・八%ポイント上昇の一一・六%となった。これは、近年、地方税収等の落込みや減税による減収補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により急増した地方債の元利償還金が増加したこと等によるものである。
 公債費の内訳をみると、地方債元金償還金が七兆五千百二十九億円で最も大きな割合(六三・九%)を占め、以下、地方債利子が四兆二千二百六億円(三五・九%)、一時借入金利子が二百二十五億円(〇・二%)となっている。
 各費目の伸び率をみると、平成七年度の経済対策等により平成十一年度に元金償還が開始された既発債の発行額が高水準であったこと等から、地方債元金償還金が一四・八%増(前年度一〇・七%増)、低金利の影響により新発債及び借換債の金利が低下しているため、地方債利子が一・五%減(同〇・九%減)となり、その結果、地方債元利償還金としては八・四%増(同五・八%増)となっている。
 また、一時借入金利子は三六・四%減(同二三・五%増)となっている。公債費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が十兆八千四百四十三億円で全体の九二・二%(前年度九二・八%)でその大部分を占めており、使用料、手数料等の特定財源は九千百十七億円で七・八%(同七・二%)を占めている。
 <投資的経費>
 投資的経費は、道路・橋りょう、公園、学校、公営住宅の建設等、社会資本の整備に要する経費であり、普通建設事業費、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっている。
 投資的経費の決算額は二十六兆八千百四十八億円で、前年度と比べると七・一%減(前年度二・一%増)と二年ぶりに前年度決算額を下回った。投資的経費の歳出総額に占める割合は二六・四%で、前年度と比べると二・四%ポイント低下となっている。
 投資的経費の内訳をみると、普通建設事業費が九七・四%を占め、以下、災害復旧事業費(二・五%)、失業対策事業費(〇・一%)の順となっている。
 (普通建設事業費)
 普通建設事業費は、道路・橋りょう、学校、庁舎等、公共又は公用施設の新増設等の建設事業に要する経費である。
 この普通建設事業費の決算額は二十六兆一千百十九億円で、前年度と比べると七・七%減(前年度一・九%増)と二年ぶりに前年度決算額を下回った。
 普通建設事業費の内訳は、単独事業費(四九・四%)、補助事業費(四四・六%)、国直轄事業負担金(六・〇%)の順となっている。また、各費目の伸び率をみると、単独事業費は一二・〇%減(前年度五・二%減)と四年連続して、補助事業費は二・五%減(同八・〇%増)と二年ぶりに、さらに国直轄事業負担金は、七・一%減(同三六・九%増)と二年ぶりに、それぞれ前年度決算額を下回った。これは、厳しい財政状況を反映した単独事業の重点化・効率化と公共投資の減少が主な要因である。
 普通建設事業費の目的別内訳は、第6図のとおりであり、土木費が最も大きな割合(五七・〇%)を占め、以下、農林水産業費(一六・一%)、教育費(九・三%)の順となっている。さらに、これらの費目の内訳別に普通建設事業費に占める割合をみると、土木費のうちの道路橋りょう費(二三・六%)が最も大きく、以下、都市計画費(一五・六%)、河川海岸費(一〇・四%)の順となっている。
 また、これを団体種類別にみると、都道府県においては道路橋りょう費(二七・二%)、河川海岸費(一六・二%)、農地費(一三・六%)、都市計画費(九・九%)、林業費(五・四%)の順となっており、市町村においては都市計画費(二一・七%)、道路橋りょう費(一六・八%)、清掃費(七・八%)、農地費(五・二%)、住宅費(五・一%)の順となっている。
 補助事業費は、地方公共団体が国からの負担金又は補助金を受けて実施する事業に要する経費である。
 この補助事業費の決算額は十一兆六千五百四億円で、前年度と比べると二・五%減(前年度八・〇%増)と二年ぶりに減少した。これを団体種類別にみると、都道府県においては一・九%減(同七・八%増)、市町村においては二・九%減(同七・二%増)といずれも二年ぶりに減少した。
 単独事業は、地方公共団体が国の補助等を受けずに自主的・主体的に地域の実情等に応じて実施する事業であり、住民生活に身近な生活関連施設等の整備や地域の特性を活かした個性豊かで魅力ある地域づくりにおいて大きな役割を担っており、地域経済の下支えを図るうえでも重要な機能を果たしている。
 この単独事業に要する経費である単独事業費の決算額は十二兆八千八百八十六億円で、前年度と比べると一二・〇%減(前年度五・二%減)と四年連続して減少した。これを団体種類別にみると、都道府県においては一四・三%減(同四・二%減)、市町村においては一〇・二%減(同六・〇減)とともに減少した。
 普通建設事業費に充当された主な財源の内訳をみると、地方債が四二・九%と最も大きな割合を占めており、以下、一般財源等が二五・二%、国庫支出金が二二・六%等となっている。
 これを前年度と比べると、国庫支出金及び一般財源等はそれぞれ一・一%ポイント、〇・六%ポイント上昇する一方、地方債は二・一%ポイント低下している。また、補助事業費及び単独事業費に分けてみると、補助事業費については、国庫支出金が五一・一%、地方債が三六・〇%、一般財源等が七・五%となっており、単独事業費については、地方債が四五・四%、一般財源等が四一・五%となっている。
 <災害復旧事業費>
 災害復旧事業費は、暴風、洪水、地震その他異常な自然現象等の災害によって被災した施設を原形に復旧するために要する経費である。
 この災害復旧事業費の決算額は六千七百三十二億円で、梅雨前線、台風等による豪雨災害等により、前年度に引き続き、対前年度二五・六%増(前年一三・八%増)と大幅な増加になっている。
 災害復旧事業費の目的別内訳の構成比をみると、道路、河川、海岸、港湾、漁港等の公共土木施設関係(災害復旧事業費総額の七一・二%)と農地、農業用施設等の農林水産施設関係(同二四・六%)で全体の九五・八%を占めている。
 さらに、災害復旧事業費に充当された財源の内訳をみると、国庫支出金(災害復旧事業費総額の六〇・八%)と地方債(同二七・一%)で全体の八七・九%を占めている。

 (3) その他の経費
 その他の経費には、物件費、維持補修費、補助費等、繰出金、積立金、投資及び出資金、貸付金並びに前年度繰上充用金があり、その決算額は二十九兆九百八十一億円で、前年度と比べると八・二%増(前年度三・二%増)となった。
 また、これらの経費の歳出総額に対する割合をみると、物件費が七・九%(前年度七・八%)、補助費等が七・〇%(同六・一%)、貸付金六・三%(同六・三%)、繰出金が三・二%(同三・三%)、積立金が二・五%(同一・三%)等となっている。

五 財政構造の弾力性

 (1) 経常収支比率
 地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政分析においては、財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。
 この経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。
 平成十一年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、集計開始(昭和四十四年度)以降で最も高かった前年度より一・九%ポイント低下の八七・五%となり、十年ぶりに低下した。また、その内訳をみると、人件費が三八・五%(前年度四〇・六%)、公債費が一九・〇%(同一八・七%)等となっている。
 なお、恒久的な減税等による減収額を埋めるために発行された減税補てん債の発行額を経常一般財源に加えた場合の経常収支比率を求めると、八七・一%となる。
 近年の経常収支比率の推移をみると、第6表のとおりである。平成二年度以降上昇傾向にあり、特に公債費充当分が大幅に上昇している。
 経常収支比率の段階別分布状況をみると、経常収支比率が七五%以上の団体数は、都道府県においては四十五団体(前年度四十六団体)、特別区及び一部事務組合等を除く市町村においては、全体の八三・四%を占める二千六百九十四団体(同二千七百五十二団体)となり、前年度より減少しているが、引き続き、多くの団体の経常収支比率が高い水準にある。

 (2) 公債費負担比率及び起債制限比率
 地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性を判断する場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費の状況を把握するための指標として、公債費負担比率及び起債制限比率が用いられている。
 公債費負担比率は、公債費充当一般財源(公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。
 平成十一年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度より〇・八%ポイント上昇の一七・二%となり、八年連続して上昇した。
 公債費負担比率の段階別分布状況についてみると、公債費負担比率が一五%以上の団体数は、都道府県においては全体の八五・一%を占める四十団体(前年度三十五団体)、特別区及び一部事務組合等を除く市町村においては、全体の六二・一%を占める二千五団体(同千九百三十九団体)であり、合わせて全団体の六二・四%を占める二千四十五団体(同千九百七十四団体)となっており、公債費負担比率が高い団体数が増加している。
 起債制限比率は、地方債元利償還金から繰上償還された額を除き、さらにこれに充当された一般財源のうち地方交付税が措置されたものを除いたものが、標準財政規模に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。
 平成十一年度の起債制限比率(一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と比べると〇・三%ポイント上昇の一一・〇%と、八年連続して上昇している。

六 将来にわたる財政負担

 地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように、将来にわたって財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように、年度間の財源調整を図り、将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況等についても、併せて、総合的に把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりとなっている。

 (1) 地方債現在高
 平成十一年度末における地方債現在高は百二十五兆五千九百九十七億円で、前年度末と比べると四・六%増(前年度末七・七%増)となった。
 地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、昭和五十年度末では歳入総額の〇・四四倍、一般財源総額の〇・八八倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補てん、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことから、平成四年度以降急増し、十一年度末には歳入総額の一・二一倍、一般財源総額の二・二〇倍となっている。なお、標準財政規模に対する比率では、前年度末と比べると一一・七%ポイント上昇の二二八・八%にまで増大している。
 地方債現在高を目的別にみると、一般単独事業債が最も大きな割合(四〇・一%)を占め、以下、一般公共事業債(一七・一%)、減税補てん債(四・六%)、減収補てん債(四・四%)、義務教育施設整備事業債(四・三%)の順となっている。

 (2) 債務負担行為額
 地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができるが、この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように、翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように、債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。
 これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成十一年度末では十五兆三千四百九十九億円であり、前年度末と比べると三・六%減(前年度末八・二%減)となっている。
 翌年度以降支出予定額を目的別にみると、土地の購入に係るもの(七・三%減)、製造・工事の請負に係るもの(六・八%減)が減少したこと等から、物件の購入等に係るものは減少(六・六%減)となり、また、債務保証又は損失補償に係るものも減少した(四三・七%減)。

 (3) 積立金現在高
 平成十一年度末における積立金現在高は十五兆七千九百九十四億円で、前年度末と比べると五千四百七十一億円増(三・六%増)となっており、七年ぶりに増加している。また、標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると一・二%ポイント上昇の二八・八%となっている。
 積立金現在高の内訳をみると、財政調整基金は〇・五%増と三年ぶりに増加、減債基金は六・五%減と七年連続して減少、その他特定目的基金は国の補正予算に追加計上された介護保険円滑導入、少子化対策等に係る基金の造成等により、八・八%増と六年ぶりに増加している。

 (4) 将来にわたる実質的な財政負担
 地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の将来にわたる実質的な財政負担は百二十五兆一千五百二億円で、前年度末と比べると三・七%増(前年度末七・四%増)となっている。
 なお、標準財政規模に対する比率では、前年度末と比べると九・七%ポイント上昇の二二八・〇%となっており、また、名目国内総生産に対する割合では、前年度末と比べると〇・九%ポイント上昇の二四・四%となっている。

 (5) 普通会計が負担すべき借入金残高
 交付税特別会計借入金残高のうち、地方財政全体で負担することとなるものと、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第7図のとおりである。これをみると、近年の地方税収等の落込みや平成四年度以降の数次にわたる経済対策に加え、六年度以降は、減税等の財源を借入金に依存したこと等から、普通会計が負担すべき借入金残高は急増しており、十一年度末には、前年度末と比べると六・七%増(前年度末八・六%増)の百七十三兆七千九百二億円にまで増大している。
 また、その内訳は、地方債現在高が百二十五兆五千九百九十七億円、交付税特別会計借入金残高が二十二兆二千百九十二億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが二十五兆九千七百十四億円となっている。
 なお、この普通会計が負担すべき借入金残高の標準財政規模に対する比率は、前年度末と比べると二二・一%ポイント上昇の三一六・五%にまで増大しており、また、名目国内総生産に対する割合は、二・二%ポイント上昇の三三・八%となっている。

<第二部> 最近の地方財政の状況と課題

一 地方財政の動向

 平成十二年四月一日、国及び地方公共団体が分担すべき役割の明確化、機関委任事務制度の廃止、国の地方公共団体に対する関与の新たなルールの整備、必置規制の見直し、地方公共団体の行政体制の整備・確立等を内容とする「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(地方分権一括法)が施行された。この改革は、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う主体として地方公共団体を位置づけるものであり、ここに、地方分権改革は、いよいよ現実の歩みを始めることとなった。
 地方公共団体の役割はますます重要となり、さまざまな行政課題に対応することが求められているが、第一部でみたように、平成十一年度の地方財政は、極めて厳しい状況にあり、その健全化が強く求められる状況になっている。

二 地方財政の課題

 (1) 地方分権の進展のための行財政基盤の整備
 地方財政の状況が極めて厳しくその健全化が求められる一方、「地方分権一括法」等を踏まえ、現下の社会経済情勢の中で地方分権を進展させるためには、さまざまな角度から制度と行財政運営のあり方について不断の点検・検討を行いつつ、行財政基盤の整備に向けた努力を傾注していくことが求められている。

 (2) 健全化への努力
 地方財政の健全化を図るためにも、また、地方公共団体が社会経済情勢の変化に柔軟かつ弾力的に対応できるよう体質を強化するためにも、行政改革への取組が不可欠である。
 このため、地方公共団体においては、「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」(平成九年十一月十四日付け自治事務次官通知)に沿って、住民の一層の理解と協力を得ながら、独自の工夫を加えつつ、限られた財源及び人的資源の重点的な配分、全体としての一層の簡素効率化を旨として、行財政運営全般にわたる改革を主体的かつ積極的に進めていくことが求められている。
 また、地方分権の進展に伴い地方公共団体の行政の自己決定権・自己責任が拡大されることに対応し、行政手続の公正を確保するとともに、透明性の向上を図っていくことが求められている。

 (3) 地域の政策課題への対応
 地域の総合的な行政主体である地方公共団体は、IT革命の推進等、新たな発展基盤の整備、環境問題への対応、総合的な地域福祉施策の充実、地域の特性に応じた社会基盤の整備等、地域の政策課題に積極的に対応し、住民福祉の向上を図る必要がある。主な地域の政策課題についてみると、次のとおりである。
 @ 情報化の推進
 情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済構造の変化に的確に対応し、その便益を最大限活用することは、これからの社会がさらに新しいかたちで繁栄を維持していくために必要不可欠である。このため、国においては、平成十三年一月、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」に基づいて設置された「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」において、知識創発型社会の実現に向け、我が国の官民が総力を挙げて取り組むべき国家戦略である「e−Japan戦略」が決定され、すべての国民がITを積極的に活用し、その恩恵を最大限に享受できるように、重点事項として、超高速ネットワークインフラの整備、電子商取引の普及、電子政府の平成十五年度までの実現、人材の育成等が盛り込まれたところである。
 地方公共団体においても、高度な情報通信技術の便益を最大限に活用し、行政事務の効率化、高度化、住民サービスの向上、地域の振興、地域間の情報格差の是正等に取り組んできたところであるが、さらに、地方公共団体の電子化(電子自治体)の実現及び地域の社会・経済活動の活性化に資するための情報基盤の整備等の施策を総合的・戦略的に推進する必要がある。
 A 良質な環境の保全・創造
 地方公共団体は、環境への負荷の少ない持続的発展の可能な循環型社会の構築を推進する基本的枠組みとなる「循環型社会形成推進基本法」等を踏まえ、廃棄物の発生抑制・リサイクルの推進、産業廃棄物の不法投棄対策の強化等を総合的かつ計画的に実施する必要がある。
 B 総合的かつ効率的な地域福祉施策の推進
 地方公共団体においては、今後急速に進行する少子・高齢化に対応し、ゴールドプラン21、新エンゼルプラン、障害者プラン等を着実に推進するとともに、地域のニーズに応じた地方単独施策等により、総合的かつ効率的な地域福祉施策を積極的に推進していく必要がある。
 C 地域の特性に応じた社会資本の整備
 道路、港湾、住宅、下水道などの生産活動や生活を営むうえで欠くことのできない施設や治山、治水などの国土保全施設等の社会資本は、公的主体・民間主体双方の努力により着実に整備が進められ、その整備水準は年々向上してきている。
 しかしながら、なお立ち遅れている部門も残されており、また、景気を自立的回復軌道に乗せるためにも、地域の特性に応じた重点化・効率化に留意しつつ、地域経済の振興に必要な事業量を確保し、住民に身近な社会資本の一層の充実を図ることが求められている。

 (4) 地方公営企業の経営基盤の強化等
 地方公営企業の平成十一年度の決算の状況をみると、地方公営企業の経営状況は、事業間に差異はあるが、未だ一割以上の事業で赤字が生じているなど、全体として引き続き厳しい状況となった。地方公営企業は住民生活に身近な社会資本を整備し、必要なサービスを提供する役割を果たしてきたが、将来にわたってその本来の目的である公共の福祉を増進していくためには、次の諸点に留意しつつ、規制緩和の進展、地方分権の推進及び公的なサービスの供給方法の多様化等、地方公営企業を取り巻く環境の変化に適切に対応し、経営の一層の効率化、透明性の向上等、経営基盤の一層の強化を図る必要がある。
 地方公社等については、経営の適否が地方財政に重大な影響を及ぼす可能性があることから、経営状況を的確に把握するとともに、行政改革大綱(平成十二年十二月一日閣議決定)等を踏まえ、経営環境の変化への対応、経営主体の経営効率化、地方公共団体の財政運営のより一層の健全化の観点から、その経営改善等について積極的に取り組む必要がある。
 また、地方公共団体が出資・出えんを行っている商法法人及び民法法人(第三セクター)については、「第三セクターに関する指針について」(平成十一年五月二十日自治政第四十五号)を踏まえ、その事業内容や公的関与の内容について積極的な情報開示に努めるとともに、経営状況の点検評価を行い、経営が深刻なものについては抜本的な経営改善を促すことが必要である。


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 消費支出(全世帯)は実質〇・五%の減少


―平成十三年一月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十二年五月以降四か月連続の実質減少となった後、九月は実質増加、十月、十一月は実質減少、十二月は実質増加となり、十三年一月は実質減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十二年五月に実質増加となった後、六月以降四か月連続の実質減少、十月、十一月は実質増加となり、十二月、十三年一月は実質減少となった。
 前年同月比でみると、消費支出は、平成十二年五月以降四か月連続の実質減少となった後、九月は実質増加、十月、十一月は実質減少、十二月は実質増加となり、、十三年一月は同水準となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十七万一千三百四十六円。
 前年同月に比べ、名目〇・〇%、実質〇・〇%。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質一・四%の減少となった。
 勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質〇・八%の増加となった。












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家計調査 平成十二年平均結果の特徴


総 務 省


一 一人当たりの消費支出の推移

 <四年ぶりに実質増加となった一人当たりの消費支出>
 一世帯当たりの消費支出は、平成五年以降八年連続で実質減少を続けている。この間、世帯人員は三・四九人から三・二四人に減少しており、一人当たりの消費支出は、平成六年に実質減少となった後、七年及び八年に実質増加となり、九年から十一年まで三年連続で実質減少が続いたものの、十二年は四年ぶりに実質増加となった(第1図参照)。

二 消費者の低価格志向

 一世帯当たりの消費支出のうち、「食料」と「被服及び履物」はそれぞれ一・七%、六・八%の実質減少となり、いずれも現行の調査開始(昭和三十八年)以降で最長となる十年連続の実質減少となっている。このような長期的な減少傾向の要因として、世帯規模の縮小とともに、消費者の低価格志向の影響が挙げられる。

(1) 生鮮食品

 <五年ぶりに増加した生鮮食品の一人当たり購入数量>
 生鮮食品(生鮮魚介、生鮮肉、生鮮野菜及び生鮮果物の合計)について、一人当たり支出金額、購入数量及び購入価格の推移を、昭和六十年を一〇〇とした指数でみると、一人当たり購入数量指数は、平成八年以降四年連続で低下が続いていたが、十二年は五年ぶりの上昇となった。
 一方、購入価格指数は、好天による生鮮野菜の価格低下の影響などもあって、平成十一年、十二年と二年連続で低下しており、一人当たり支出金額指数も、十一年から二年連続で低下している(第2図参照)。
 <生鮮魚介、生鮮肉、生鮮野菜、生鮮果物いずれも一人当たり購入数量が増加>
 生鮮魚介、生鮮肉、生鮮野菜、生鮮果物それぞれについて、一人当たり支出金額、購入数量及び購入価格の推移を、昭和六十年を一〇〇とした指数でみると、一人当たり購入数量指数は、生鮮魚介が平成七年以来五年ぶりの上昇、生鮮肉が十一年に続き二年連続の上昇、生鮮野菜も二年連続の上昇、生鮮果物が九年以来三年ぶりの上昇となっており、四年以来八年ぶりに四費目とも上昇している。
 一方、 購入価格指数は四費目とも低下しており、 一人当たり支出金額指数も四費目とも低下している。
 <生鮮肉のうち単価が高い牛肉の一人当たり購入数量は減少が続く>
 生鮮肉について、品目別にみると、牛肉の平成十二年の購入単価は、七年を下回っているのに対し、豚肉及び鶏肉の購入単価は、七年を上回っている。一方、牛肉の一人当たり購入数量は、平成七年に比べて大幅に減少しているのに対し、豚肉の一人当たり購入数量は増加、鶏肉はほぼ横ばいとなっている。
 このように、牛肉は、相対的にみると単価が低下しているにもかかわらず、一人当たり購入数量が減少し、単価の低い豚肉の一人当たり購入数量が増加している。また、単価の高い牛肉から単価の低い豚肉に需要がシフトしていることから、生鮮肉全体の平均購入単価指数の平成七年からの低下幅は、牛肉よりも大きくなっている。

(2) 衣料品

 <二年連続の増加となった衣料品の一人当たり購入数量、一方、支出金額は減少が続く>
 衣料品(男子用洋服、婦人用洋服、子供用洋服、男子用シャツ・セーター類、婦人用シャツ・セーター類及び子供用シャツ・セーター類の合計)について、一世帯当たり購入数量の推移を、昭和六十年を一〇〇とした指数でみると、平成六年をピークに十年まで低下が続き、九年以降は昭和六十年の水準を下回っている。しかし、世帯人員の減少の影響を除去するため、一人当たりに換算してみると、平成九年以降も昭和六十年を上回っており、平成十年を底にして二年連続で上昇している。
 一方、衣料品の購入価格指数は、平成十年以降低下が続き、十二年は昭和六十年を下回っている。このため、支出金額指数は、購入数量指数が上昇に転じた平成十一年以降も低下が続いており、四年以降九年連続の低下となっている(第3図参照)。
 <伸びが大きい男子用及び婦人用シャツ・セーター類の一世帯当たり購入数量、一方、支出金額は全費目で減少>
 男子用洋服、婦人用洋服、子供用洋服、男子用シャツ・セーター類、婦人用シャツ・セーター類、子供用シャツ・セーター類それぞれについて、一世帯当たり購入数量の推移を昭和六十年を一〇〇とした指数でみると、男子用洋服は平成五年をピークに七年連続で低下、婦人用洋服も六年をピークに低下傾向が続いている。
 これに対し、子供用洋服及び男子用シャツ・セーター類は平成十一年以降二年連続、婦人用及び子供用シャツ・セーター類は十年以降三年連続で上昇しており、特に十二年は男子用及び婦人用シャツ・セーター類の上昇幅が大きくなっている。
 一方、購入価格指数は、各費目とも平成十年以降低下しており、特に十二年は低下幅が大きくなっている。このため、各費目とも平成十二年は支出金額指数が低下している。
 <婦人用シャツ・セーター類のうち、単価が低い他の婦人用シャツの一世帯当たりの購入数量は三年連続の増加、一方、単価が高いブラウスの購入数量は十年連続の減少>
 婦人用シャツ・セーター類について、品目別にみると、ブラウス、他の婦人用シャツ、婦人用セーターのいずれも平成十二年の購入単価が七年を下回っているが、他の婦人用シャツの低下幅はブラウス及び婦人用セーターに比べて小さくなっている。
 一方、一世帯当たり購入数量は、他の婦人用シャツが平成十年以降三年連続で増加し、七年の水準を上回っているのに対し、婦人用セーターはおおむね横ばい、ブラウスは三年以降十年連続で減少が続いている。
 このように、ブラウス及び婦人用セーターは他の婦人用シャツに比べて単価が相対的に低下しているにもかかわらず、購入数量が減少若しくはおおむね横ばいとなっており、単価の低い他の婦人用シャツは購入数量が増加している。
 また、このような需要の変化により、婦人用シャツ・セーター類全体の平均購入単価指数の平成七年からの低下幅は、ブラウス及び婦人用セーターよりも大きくなっている。

三 住宅ローン返済世帯の家計収支

 <調査開始以来最高となった住宅ローン返済世帯の割合>
 勤労者世帯に占める住宅ローン返済世帯(土地家屋借入金のある世帯)の割合をみると、昭和六十年から平成元年までおおむね上昇傾向で推移した後、三年連続で低下し、四年には三〇%を下回った。平成五年に再び三〇%台に上昇した後、九年まで三〇〜三一%台で推移していたが、十年に三三%台に上昇し、十一年はやや低下したものの、十二年は三四・〇%に上昇し、調査開始以来最高となった。
 <住宅ローン返済額の可処分所得に占める割合も調査開始以来最高の一八%台>
 勤労者世帯を住宅ローン返済の有無別にみると、平成十二年の住宅ローン返済世帯の実収入は、一世帯当たり一か月平均六十五万三千七百六十円で、前年に比べ実質一・一%の減少、住宅ローン返済のない世帯では五十一万三千四十円、前年に比べ実質二・二%の減少となった。また、可処分所得は、それぞれ五十四万五千三百三十四円、実質一・〇%の減少、四十三万五千三百八十七円、実質二・一%の減少となった。
 住宅ローン返済世帯の住宅ローン返済額(土地家屋借金返済)は、一世帯当たり一か月平均十万一千七百七十円(年間約百二十二万円)となり、前年に比べ名目二・六%の増加となった。この結果、可処分所得に占める住宅ローン返済額の割合は、一八・七%と、前年(一七・八%)に比べ〇・九ポイント上昇し、調査開始以来初めて一八%台となった(第4図参照)。



 大切な財産を守るのはあなた自身です


<悪質商法の被害に遭わないための五か条>
@うまい話にご用心
 うまい話はまずないと思ってください。「あなただけ特別に…」はだれにでも言っています。
Aはっきり言おう「いりません」
 相手はプロです。中途半端な態度が一番危険です。特に「結構です」という答え方は肯定の意味にもとられかねません。
B説明内容は書面で確認
 説明内容は契約書面に記載されているかどうか確認する必要があります。
C日ごろの備えが自分を救う
 悪質業者は次にあなたをねらっているかもしれません。日ごろから被害防止対策を考えておく必要があります。
Dおかしいなと思ったら早めに確認
 不審に思った場合は早めに近くの警察や消費者センターなどの相談窓口に相談しましょう。契約後でもクーリング・オフ(無条件解除)ができる場合があります。

<クーリング・オフ制度とは?>
 契約(申込み)後の定められた期間内に、手紙やはがきで申込みの撤回・解除の意思を知らせると、無条件で申込みの撤回・解除ができます。



    <5月23日号の主な予定>

 ▽原子力安全白書のあらまし………原子力安全委員会 

 ▽労働力調査(二月)………………総 務 省 



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