官報資料版 平成13年5月23日




                  ▽原子力安全白書のあらまし………………………原子力安全委員会

                  ▽家計収支(二月分)………………………………総 務 省

                  ▽労働力調査(二月)………………………………総 務 省

                  ▽法人企業動向調査(三月実施調査結果)………内 閣 府











平成12年版


原子力安全白書のあらまし


原子力安全委員会


 原子力安全委員会は、原子力安全について国民の理解と信頼を得るため、「平成十二年版原子力安全白書」を取りまとめ、三月二十七日の閣議を経て、公表した。
 第一編の「原点からの原子力安全確保への取組み」と題した特集では、「原子力は絶対に安全」とはいえず、たゆまぬ安全確保の努力が必要であるという原子力安全確保の原点に立ち返り、安全確保に向けた取組みや、今後の課題等について特集している。具体的には、原子力利用における潜在的危険性や過去の事故事例、安全確保への取組み、原子力災害対策を紹介し、さらにいくつかの課題について具体的に紹介している。
 第二編では、「平成十二年の動き」と題し、東海村ウラン加工工場臨界事故を受けて委員会決定した「原子力安全委員会の当面の施策の基本方針」の実施状況、原子力安全委員会における過去約一年間の活動状況を紹介している。
 第三編では、「原子力安全確保のための諸活動」と題し、我が国における原子力施設等の安全規制体制、防災体制、原子力安全研究、原子力安全に関する国際協力等について紹介している。
 また、資料編では、原子力安全委員会関係の各種資料、安全確保の実績に関する各種資料等を取りまとめている。
 本白書第一篇の概要は、以下のとおりである。 なお、本白書の全文は、原子力安全委員会のホームページ(http://nsc.jst.go.jp)で公開されている。

第一編 原点からの原子力安全確保への取組み

 「原子力は『絶対に』安全」とは誰にもいえない。二十一世紀に一歩足を踏み出しつつ、人類が初めて原子力の火を手にした二十世紀を振り返ると、原子力の利用は、電力の供給や各種の放射線の利用など、多大な恩恵を我々にもたらす一方で、安全確保のためのたゆまぬ努力を不可欠なものとして求め続けることが分かる。原子力安全確保のための不断の努力には、「これで終わり、もう絶対安全」という安住の地は用意されていない。このことを忘れ、謙虚さを失うようなことがあれば、そこには新たな事故・災害が待っている。
 原子力は、これまで人類が利用してきた石油、石炭といった化石燃料などと比べると密度が高く、かつ桁違いに大きなエネルギーを発生する。このエネルギーの巨大さは、原子力がエネルギー源として有用性を持つゆえんであるが、同時に潜在的な危険性も伴っており、原子力の安全確保の対策を、原子力の特徴をわきまえた上で構築する必要がある。原子力を利用し、その恩恵を受ける者は、謙虚に、常にこの原点に立ち返る必要がある。

第一章 原子力の平和利用に伴う潜在的危険性と事故・災害

 原子力の安全を確保するのは人間である。しかし、人間は決して完璧ではあり得ず、安全確保を完全に達成することには無理がある。人間の不完全性に対する冷徹な認識に基づき、安全確保のレベルを向上する努力を続け、社会的に容認され得る安全確保のレベルを維持することが大切である。
 そのためには、原子力安全に関わる者が、それぞれの立場で、施設の設計、建設、運転等を通じて、その安全確保の対策を行うとともに、潜在的危険性を監視し、事故の予防対策を怠らないことが重要である。

第一節 原子力利用における潜在的危険性
○原子力と放射線
 放射線を人体が受けるとき、その量によっては健康上不利益な影響を受けることがある。したがって、原子力利用においては、その際発生する様々な種類の放射性物質を閉じ込め、発生する放射線を制御・遮蔽し、人体が不用意に放射線にさらされないよう放射線防護・放射線管理の徹底を図ることが重要である。
○原子力利用に伴う潜在的危険性とは何か
 原子力利用の際には、取り扱う放射性物質あるいは、加速器、X線発生装置等からの放射線により、周辺環境に汚染を引き起こしたり、当事者又は周辺住民に対し予期しない過度の放射線被ばくや健康障害を与える可能性がある。こうした、事故によって初めて現れる危険性を潜在的危険性という。原子力利用に伴う潜在的な危険性は、設計、建設、運転、保守という各段階での要求により、顕在化しないように厳しく管理されなければならない。
○放射線被ばくの影響
 人体の防御能力を超える放射線を浴びた場合、放射線の影響は、被ばくするレベルによってその影響の性質や程度が異なる。不幸にして大量の放射線を被ばくした場合は、被ばくした線量に応じて様々な早期影響(急性影響とも呼ばれる)と晩発影響とが生ずる。
 早期影響とは、放射線被ばく後数十日以内に現れる影響であるが、この影響は一定の放射線量以下では、医学的に検知できるほどには現れないとされており、この境界の放射線量を「しきい線量」という。
 放射線の晩発影響とは、放射線被ばく後数年以上経ってから現れる影響であり、悪性腫瘍(がん)や白血病の発生が知られている。発がんは、人体と環境との関わりの中で長い時間をかけ、多くの段階を経て進行するため、被ばくした人すべてに同じような影響が現れるわけではないが、放射線の量に比例して影響が発生する確率が高くなると考えられている。
○放射線管理上の線量限度
 公衆の年間一ミリシーベルトの線量限度は、日常被ばく以外の被ばくに対する制限目標を示す管理基準である。原子力ないし放射線業務に関わる行政関係者も事業者も、作業者や公衆の無用な放射線被ばくを避けるため、放射線防護の基準を厳しく守る努力をしている。
 国際放射線防護委員会(ICRP)では、影響が現れるとされるレベル以下のごく低い線量であっても、放射線防護の観点から、「すべての被ばくは、経済的社会的要因を考慮し、合理的に達成し得る限り低くおさえるべきである」とするALARA(As Low As Reasonably Achievable)の基本的考え方を勧告し、この原則は国外でも我が国でも遵守されている。

第二節 主要な事故事例の経緯と反省
○原子力船「むつ」放射線漏れ事故
 本事故は、我が国の原子力界に大きな影響を与えた。この報告を受けて、昭和五十三年十月四日に、原子力政策における開発推進機能と安全規制機能を分離し、原子力安全確保体制を強化するため、新たに原子力安全委員会が設置された。
 また、行政庁においても、安全確保に関する行政庁の責任の明確化を図るため、実用発電炉は通商産業省(当時)、試験研究用及び研究開発段階炉は科学技術庁(当時)、舶用炉は運輸省(当時)という一貫した規制が実施されることとなった。
○米国スリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所事故
 結果的にこの事故は、多重防護の考え方に基づく原子炉の安全対策により、設計上の想定を超えた事故に対しても、この原子炉施設が放射性物質の大量放出に至らぬよう対応できたことを示している。しかし、人的要因が複雑に絡むことにより、設計上の対策を超えて炉心が重大な損傷を受ける可能性があることを現実に示し、当時の世界各国の安全規制に大きな警鐘を鳴らした。
 我が国においてもTMI事故の教訓を、安全基準、安全設計、運転管理、防災及び安全研究といった幅広い分野にわたって反映するなど、安全確保対策の一層の向上が図られた。
○旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所事故
 国際原子力機関(IAEA)が中心となって進められた事故調査の過程において、設計面における多重防護の考え方等の安全認識の欠如、運転現場における規則違反等が明らかになった。このため、改めて安全確保を最優先するという意識とその実践を個人と組織に徹底するという原子力安全文化の考え方を明確にし、安全意識の醸成を図るべきであるとの気運が高まった。
 こうして、この事故の最大の教訓として、「安全文化(セイフティカルチャー)」の重要性が認識された。同時に原子力安全の分野における国際協力の重要性が再認識され、安全確保のための国際協力活動が一層活発に行われるようになった。
○(株)ジェー・シー・オー ウラン加工工場臨界事故
 この事故の原因は、原子力安全確保の第一義的な責任を持つ事業者の特殊少量生産における工程管理、安全管理が不十分であったことであり、さらに、作業に伴う潜在的危険性の理解不足や違反行為に伴い事故が発生するかもしれないという危機認識の欠落により、遵守すべき規範からの逸脱行為をエスカレートさせたことである。
 国では、安全規制、運転管理体制、事故時の防災体制について問題点が整理され、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という)の改正による保安検査制度の導入等の規制強化が行われた。また、原子力災害対策特別措置法制定による防災体制の整備等が行われた。
 この事故を契機として、いわゆる「原子力の安全神話」や観念的な「絶対安全」という標語を捨て、「リスクを基準とする安全の評価」へ意識を転回することが求められることとなった。同時にチェルノブイリ事故の最大の教訓であり、安全確保を支える基本理念である安全文化(セイフティカルチャー)の定着と浸透に努めることの重要性が再確認された。
○まとめ
 現在までの事故・トラブルから得られた知見・教訓を踏まえて、施設・機器の安全性を一層高めるための努力や、国の安全規制体制・防災体制の強化のための取組みが進められてきている。このような取組みにもかかわらず、事故が繰り返され、同じような教訓と対策がその度に議論されるのはなぜかを考えることは、個別の事故の教訓を活かすこととともに、将来の事故の発生を防止していく上で重要である。
 事故の発生要因としては、人的要因、組織要因、及び技術要因の三つを指摘することができる。これに沿って検討してみると、人間がどのような状況で、いかなるふるまいをとるのかということについての理解に現時点では限界があること、したがって、人間の形作る組織の行動や管理方法に関しても、同様に完全な理解がなされているわけではないこと、また技術的には、設計時には明らかになっていない新たな技術的要因が存在し得ること、などの事情が、事故が繰り返される要因として考えられる。こうした要因を十分に認識した上で、その克服を図っていくことが重要である。
 そのために、過去の事故を教訓として学び継承することはもちろん、原子力以外の分野での経験や知見を学ぶことや、様々な事故の可能性についてシミュレーションを行って対策を検討すること、常に最新の技術的知見を安全確保に的確に反映させること、などを通じて、事故の発生を科学的に防ぐ努力を継続することも重要である。
 さらに、「こうした努力によって、もはや事故は起こらない」のではなく、「人間のなす業である以上、万一の事故はあり得る」という認識に立って、事故の影響を最小限にするための多重防護の徹底や、防災体制の整備に引き続き努力することが必要である。

第三節 「安全神話」について
 原子力の利用においては、不幸にして周辺住民に影響を与える事故も経験している。一方、平成十一年九月三十日のJCO事故の発生後、「原子力は絶対に安全」という過信に依存した原子力関係者の姿勢が事故の背景にあったとの指摘(いわゆる「安全神話」批判)がなされた。多くの原子力関係者が「原子力は絶対に安全」などという考えを実際には有していないにもかかわらず、こうした誤った「安全神話」がなぜ作られたかという理由としては、外の分野に比べて高い安全性を求める設計への過剰な信頼、長期間にわたり人命に関わる事故が発生しなかった安全の実績に対する過信、過去の事故経験の風化、原子力施設立地促進のためのPA(パブリック・アクセプタンス=公衆による受容)活動のわかりやすさの追求、絶対的安全への願望などが考えられる。
 こうした事情を背景として、いつしか原子力安全が日常の努力の結果として確保されるという単純ではあるが重大な事実が忘れられ、「原子力は安全なものである」というPAのための広報活動に使われるキャッチフレーズだけが人々に認識されていったのではないか。
 しかし、こうした状況は、関係者の努力によって安全確保のレベルの維持・向上を図るという、「安全文化」に著しく反するものである。過去の事故・故障はいわゆる人的要因によって多く起きており、原子力関係者は、常に原子力の持つリスクを改めて直視し、そのリスクを明らかにして、そのリスクを合理的に到達可能な限り低減するという安全確保の努力を続けていく必要がある。

第二章 安全確保の取組み

第一節 安全確保の基本的な視点と原則
○管理責任の一元化
 原子力安全確保のためには、施設(例えば原子力発電所)を実際に運転する組織が安全に対する責任を持つこととされている。これは、責任の所在が分散化され、不明確になることを回避するためである。原子力事業が国の許認可により実施されるものであり、その許認可の前提としての安全確保については、当然その事業者に第一義的責任がある。
○「多重防護」の採用
 原子力施設の安全確保のためには、従来、各種の技術的措置が講じられており、安全技術の土台を形成するものとして、多重の防護という考え方に立つ安全対策がとられている。
○一般化された技術原則の適用
 原子力技術は、総合的科学技術の結晶であり、一部に原子力固有の特殊性はあるものの、大部分は一般的技術の集合体として構築されている。原子力固有の技術だけでなく、外の分野において常識的となっている技術を積極的に活用する努力も必要である。

第二節 民間事業者による安全確保の取組み
 原子力の安全確保については、事業者自らが管理責任を負うことが基本原則である。個別の事業者により、自主保安による安全確保への取組み、原子炉等規制法に基づき国が行う保安規定遵守状況検査(保安検査)への対応等の安全確保の取組みが行われている。
 JCO事故を契機に、事業者自ら安全管理の見直しや教育訓練等を強化していることは適切なことである。これらのほかに事業者では、定期安全レビュー等による原子力施設の高経年度化対策、過去の事故や最新の安全研究の成果を活用した、より安全性の高い施設・設備の導入、施設の改造等に積極的に取り組んでいる。
 さらに、事業者間での知見の共有や、原子力安全への取組みの相互評価を行うことが有益である。この観点から、我が国でも、JCO事故を契機として、電力事業者、燃料加工事業者、プラントメーカー、研究機関からなるニュークリアセイフティネットワーク(NSネット)が設立された。
 また、茨城県の東海村、那珂町、大洗町、旭村、ひたちなか市に所在する二十一の原子力事業所(日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構、日本原子力発電株式会社等)により、「原子力事業所安全協力協定(東海ノア協定)」が平成十二年一月二十日に締結された。

第三節 安全性確認のための規制システム
○原子炉等規制法
 原子炉等規制法では、原子炉の設置、原子力関係の事業等を国の許可等によることとし、施設の位置、構造及び設備が災害防止上支障がないものであるか、あるいは事業者等は十分な技術的能力を有しているか、といったことを国が審査することにより、原子力安全確保の徹底を図ることとしている。
 また、原子炉の設置、原子力関係の事業等が開始された後も、施設の定期検査、現地に派遣されている保安検査官による保安規定遵守状況検査を行うこと等により、安全確保を図ることとしている。
 さらに、このような行政庁の活動に加え、原子力安全委員会が安全審査のダブルチェック、規制調査活動を実施するという多重補完的システムによって、国の規制は慎重かつ適切に行われている。JCO事故を受けた原子炉等規制法の改正により、法律に定められた項目を事業所または施設ごとに定めた保安規定の改正が行われた。
○規制調査
 JCO事故を踏まえ、原子力安全委員会では、このダブルチェックに加え、設置許可等の後の建設段階及び運転段階の行政庁による安全規制を把握及び確認することを目的とした調査活動(規制調査)を新たに行うこととした。
 このため、平成十一年度中に、規制調査に着手するに当たっての実施方針を検討していくために必要な基本データの取得を目的として、現地調査を中心に試行的な調査を実施し、その結果を踏まえて、平成十二年六月十九日に、「原子力安全委員会の当面の規制調査の実施方針について」を委員会決定した。

第四節 中央省庁再編による原子力安全行政の体制の変更
 平成十三年一月、中央省庁再編により、原子力安全行政の体制についても大幅な変更があった。具体的には、エネルギーとしての利用に係る原子力について、規制権限を一元化して責任の所在を明確化するため、従来の実用発電用原子炉に加え、原子力発電に関わる一連の核燃料サイクル施設についても、経済産業省が安全規制の責任を持つこととなり、「原子力安全・保安院」が設立され、体制の強化が図られた。
 他方、発電の用に供さない研究開発段階の原子炉や試験研究の用に供する原子炉及び核燃料物質等の使用施設については文部科学省が、船舶に設置される原子炉については国土交通省が、それぞれ安全規制の責任を持つこととなった。
 総理府に設置されていた原子力安全委員会については、今般の省庁再編に先立って、既に平成十二年四月に、その事務局機能を科学技術庁から総理府に移管して独立性を高めるとともに、職員の大幅な増員等を通じて機能を強化した。さらに、平成十三年一月には、原子力安全委員会、事務局とも内閣府へと再編されるとともに、四課体制からなる事務局が設置されるなど、機能のさらなる強化が図られた。

第五節 原子力安全委員会の役割と組織
○原子力安全委員会の役割
 原子力安全委員会は、「原子力基本法」及び「原子力委員会及び原子力安全委員会設置法」に基づき設置されている審議機関である。原子力の研究、開発及び利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、及び決定する権限を有しており、所管事項について必要なときは、内閣総理大臣を通じて、関係行政機関の長に勧告することができるなど、通常の審議機関に比べて強い機能を有している。
 また、原子炉等規制法では、原子力施設の設置段階において、対象施設に応じ経済産業省、文部科学省、国土交通省が安全審査を行い、その結果について原子力安全委員会、原子力委員会に意見を求め(いわゆるダブルチェック)、その意見を聴いて設置許可等の可否を判断することとなっている。
 さらに、JCO事故の反省を踏まえて制定された原子力災害対策特別措置法に基づき、内閣総理大臣等への技術的な助言など、原子力安全委員会の原子力災害時の役割が法律上明確に位置付けられた。

○原子力安全委員会の組織
 原子力安全委員会は、国会の同意を得て内閣総理大臣により任命された五名の委員から構成される。そのほか、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法に基づき、原子炉安全専門審査会、核燃料安全専門審査会、緊急事態応急対策調査委員が設置されている。
 また、必要に応じて専門的な事項について調査審議する専門部会を設置することとされており、現在七つの専門部会が設置されている。また、平成十三年の省庁再編を機に、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法が改正され、原子力安全委員会に事務局が設置された。

第六節 諸外国の状況
 原子力発電主要国として、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデン、スペイン、カナダ、ロシア、中国、韓国などがあるが、概して、各国とも、原子力の安全確保を前提に所要の法体系を整備しており、規制の実施体制については、各国の政治・社会の変遷を背景として、それぞれの実情に応じた体制がとられているといえる。

第七節 国際協力
○国際協力の意義
 原子力安全の確保のためには、各国が安全に関わる知見・経験を共有することが有益であり、国際協力の重要性は強調されるべきである。深刻な原子力災害が発生すれば、その影響は国境を越えて拡大する可能性がある。我が国においても、原子力開発の当初から国際協力の重要性が認識されており、積極的な国際協力が進められている。
○多国間協力と二国間協力
 我が国における原子力安全に関する国際協力としては、アメリカ、フランス等との情報の交換、専門家の交流、国際会議の開催・参加を通じた二国間協力と、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)などの国際機関を通じた多国間協力がある。二国間協力については、多くの国との間で積極的に行われている。

第三章 原子力災害対策

第一節 原子力災害対策特別措置法等による防災体制
○原子力災害対策特別措置法の制定
 平成十一年九月三十日のJCO事故の反省を踏まえ、原子力災害対策特別措置法が平成十二年六月十六日に施行された。原子力災害対策特別措置法は、災害対策に関する一般法である災害対策基本法及び原子力規制に関する原子炉等規制法の特別法として、原子力災害に関する原子力事業者の義務、国の原子力災害対策本部の設置等についての措置を講じることで、原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的としている。
○法施行後の体制整備状況
 原子力災害対策特別措置法が平成十二年六月に施行されたが、関係機関においては原子力災害対応の実効性向上のための努力が続けられている。

第二節 緊急被ばく医療等
○JCO事故と被ばく医療等
 いうまでもなく、事故や災害への対応の上で、最も優先されるべきは人命の救助であり、その視点から、JCO事故への対応において学ぶべきことは多く、緊急被ばく医療の充実強化を図る必要があることが強く再認識された。
 このため緊急被ばく医療の充実強化を目指して、緊急時医療検討ワーキング・グループが平成十二年五月に、原子力発電所等周辺防災対策専門部会の下に設置され、既存の緊急時医療体制を臨床医学と保健衛生行政等の立場から根本的に見直し、より実効性のある体制を整備すべく鋭意検討が進められている。
○緊急被ばく医療体制
 被ばく患者に対する医療は、原子力災害対策本部が設置されるか否かにかかわらず、速やかに開始されなければならないという基本的認識に基づき、現行の「緊急時医療」(Medicine at the time of Nuclear Emergency)という用語と概念とを、「緊急被ばく医療」(Radiation Emergency Medicine)に改訂し、併せてその体系全般を現行の救急医療の体系に整合させることにより、実効性の向上を目指す。
○緊急被ばく医療ネットワーク
 緊急被ばく医療のネットワークは、医療機関間の連携をシステム化した地域のネットワークを全国的に有機的に結ぶものであり、放医研緊急被ばく医療ネットワーク会議と各地域ブロックの中核医療機関のネットワークがその運営を担当することとして具体的に検討が進められている。

第四章 原点からの取組み 〜その課題〜

 原子力の利用には、安全確保のためのたゆまぬ努力が必要である。この単純だが厳粛な事実こそ、原子力の事業に携わる者が常に謙虚に立ち返らねばならない原点である。これまで原子力利用に伴う潜在的危険性に対し、原子力関係者が様々な取組みを行い、安全確保や万一の場合に備えた対応のために努力を続けてきたのも、正にこの原点からの取組みの遂行にほかならない。

第一節 新たな規制行政体制における活動
 原子炉等規制法の改正、原子力災害対策特別措置法の制定、原子力安全委員会の事務局機能の独立性と機能の強化などを経て、今般の省庁再編では一層の体制の整備が図られた。
 今後は、この新たな体制の下、原子力安全確保の実効性をいかに高めていくかが重要である。大規模な再編の利点を活かしつつ、新たな体制の信頼性と実効性が高まるよう、着実に、謙虚に、関係者は努力を続けていく必要がある。

第二節 現場重視
○原子力安全における現場の重要性
 原子力の安全確保は、原子力事業に関わる組織と個人の不断の努力によって維持される。現場こそが安全確保の最前線であり、現場を構成する事業者、協力会社を含む個々の作業者が安全確保に責任を持って活動できるよう、現場環境を整備するよう努めなければならない。
 まずは、個人の能力をより一層向上し、安全確保の最前線に立つものとしての高い意識を持つことが望まれる。安全文化の醸成に向けて、各個人が果たすべき役割を認識し、確実に役割を果たすことが重要である。さらに、現場の声を会社の運営に反映させること、協力会社まで含めた作業者について保安教育を徹底することなどが望まれる。
○原子力安全委員会における対応
 JCO事故を受けて、行政庁が行う規制活動を把握・確認し、必要に応じて現地調査も行う規制調査を実施することとした。現場こそが安全確保の最前線である。今後は、現地調査も含めた規制調査を着実に実施し、行政庁とともに一層の安全確保に努めるとともに、積極的に現場に出て、事業者や個人と直接対話を行うなど、安全文化の醸成、定着に努めることとしている。
○行政庁における対応
 原子炉等規制法の改正などによる安全規制の強化により、現場を重視する観点から、行政庁は施策を実施している。今般の省庁再編により、これらの実施のため一層の体制が整備された。

第三節 安全確保の基本の確立 〜安全目標〜
○安全目標とその意義
 「安全目標」とは、安全確保活動の目指すべき目標、すなわちリスク管理の主体が災害を発生させないという使命に対し、どの程度の確かさをもって実現しようとしているかを示すものということができる。安全目標の議論が活発化している背景には、リスク情報を考慮に入れた安全管理の有用性に対する認識の高まりに加え、安全確保体系のわかりやすさ並びに原子力分野における整合性、さらには科学技術分野全体における安全の考え方との整合性が求められていることにある。
○我が国における取組みと今後の課題
 我が国においては、ここに述べたような安全目標を明示的に示すにはいまだ至っていない。原子力安全委員会では、平成十二年九月に新たに安全目標専門部会を設置した。同部会では、我が国における安全目標の策定に向けて本格的に検討中である。また、これらの検討も含めて、現行の安全審査指針、基準類の総合的見直しも行っていく。

第四節 安全文化
○安全文化の重要性
 多くの事故・故障は、重点的配慮や情報・知識が十分に行き届かなかった所や、定常運転でないときに発生しており、このような状況下で原子力安全を確保していくためには、関係者に共有される「安全文化」の醸成が何よりも重要である。
 安全文化の醸成を通じた原子力安全確保とは、安全最優先という枠組みに配慮する組織の責任が重要であると同時に、経営者、管理者、現場の作業者すべてのレベルにおける原子力に関わる一人一人の「誠実な努力」と「責任感」に依存するものである。
 このような「安全文化」を一朝一夕にさらに高いレベルに一挙に引き上げ、維持するには、原子力関係者が常に自戒し、謙虚に安全を優先するという姿勢を堅持することが唯一の常備薬である。

第五節 安全確保の基盤整備
○人材問題
 原子力に関する人材確保の問題も大きな課題である。原子力開発利用及び緊急時の応急対策において、それを担う優秀な人材の確保は欠かせないが、近年、人材の確保が難しくなりつつある。人材の確保には、原子力安全研究の着実な実施などを通じ、人材の維持・向上を図ることが必要である。さらには、安全を開発と並ぶ価値として正当に評価し、それに携わる人材についても評価がなされる社会環境の整備が必要である。
○安全研究
 原子力の安全研究とは、原子力の安全規制をより適切に行っていくため、国として取り組むべき研究のことである。安全研究の成果は、国の安全規制に反映され、安全確保に貢献している。原子力の開発・利用に当たっては、その安全確保に十分な人的、財政的負担が必要不可欠であるという認識に立ち、安全研究推進体制の一層の充実・強化が図られることが重要である。
○国際的連携
 原子力安全は一国で閉じる問題でない。チェルノブイリ事故により我が国まで放射性物質が飛来したことからも明らかである。それゆえ世界レベルで高い原子力安全を確保することが必要である。IAEA、OECD/NEAなどの国際機関において、原子力安全の国際基準の策定や、原子力安全に係る情報交換等が実施されている。

第六節 事故への備え
 原子力利用に伴う放射線被ばく事故の発生の可能性(潜在的危険性)を認識し、日頃から万全な備えをすることが重要であり、実効的な災害対策体制の一層の整備を進めることが重要である。原子力安全委員会として、今後とも、事故のリスクを認識した万全な備えを行っていく所存であり、行政庁、地方公共団体、事業者においても、同様の努力を期待する。

第七節 国民の信頼
○国民の信頼とわかりやすい情報公開の重要性
 原子力安全の確保は、国民の信頼を得られるものでなければならない。国民の信頼を獲得するためには、原子力関係者それぞれの日々の努力と実績の積み重ねが重要であることは論を待たない。
 さらに、信頼を得る大前提として、徹底した情報公開が重要である。原子力安全に関わる者は、その専門性のために平易に説明することの難しさがあるとしても、国民に対してできる限りの理解を得るためのわかりやすい情報公開を怠ることは許されない。国民に対する説明責任を有していることを認識し、関係者は国民に判断ができる情報を提供することが重要である。
 原子力安全委員会では、一般国民に対するわかりやすい形での情報提供に常に努力しており、会議の公開、ホームページの活用、地方原子力安全委員会の開催、原子力安全・意見質問箱の設置などを積極的に実施してきている。さらに情報公開法の施行に伴い、情報公開のさらなる徹底を行う予定である。
○国民への期待
 情報の受け手となる国民には、受け取った情報を基に、原子力安全を自らに関わりの深い問題として理解し、考えることを期待したい。原子力の利用は、潜在的危険性を持つがために常に安全確保の努力が必要な問題であり、この意味で、国民一般に深く関わる問題である。国民の関心の高さは、安全を確保する上で大きな力になり得るものである。マスメディアには、情報を国民に伝えるという責務を持つ者として、正確でわかりやすい情報伝達を期待したい。

第五章 終わりに

 原子力の安全は、原子力利用の内部に存在する潜在的危険性を正確に認識した上で、地道に努力を積み重ねることで達成される。安全確保の最前線ともいうべき現場(設計、製造、建設、運転の各段階における現場)での安全確保のあり方は極めて重要であり、関係者によって日々確認されることを重視したい。
 また、原子力安全は、国民の信頼を得ることができなければならない。そのための要諦は、関係者の「正直」、「公正」、「能力」である。原子力安全委員会としても、正直であるか、公正であるか、十分な能力を保持しているか、といった点について常に自省しつつ、新たに強化された独立性と機能を活かした安全確保のための諸活動が、国民の信頼を得られるよう最善の努力を継続する決意である。


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消費支出(全世帯)は実質〇・一%の増加


―平成十三年二月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十二年五月以降、四か月連続の実質減少となった後、九月は実質増加、十月、十一月は実質減少、十二月は実質増加、十三年一月は実質減少となり、二月は実質増加となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十二年五月に実質増加となった後、六月以降四か月連続の実質減少、十月、十一月は実質増加となり、十二月以降、三か月連続の実質減少となった。
 前年同月比でみると、消費支出は、平成十二年五月以降四か月連続の実質減少となった後、九月は実質増加、十月、十一月は実質減少、十二月は実質増加、十三年一月は同水準となり、二月は実質増加となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十五万八千四百三十七円。
 前年同月に比べ、名目〇・四%の減少、実質〇・三%の減少となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質二・三%の増加となった。
 勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質三・一%の増加となった。












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二月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十三年二月結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十三年二月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千三百五十二万人、完全失業者は三百十八万人、非労働力人口は四千百七十一万人と、前年同月に比べそれぞれ四十一万人(〇・六%)増、九万人(二・八%)減、三万人(〇・一%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千三百五十二万人と、前年同月に比べ四十一万人(〇・六%)の増加となり、五か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は三千七百六十一万人、女性は二千五百九十一万人で、前年同月と比べると、男性は五万人(〇・一%)減、女性は四十六万人(一・八%)増となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百四十九万人、自営業主・家族従業者は九百八十一万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は七十二万人(一・四%)増、自営業主・家族従業者は三十三万人減となり、雇用者は十か月連続の増加となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百十六万人と、七十五万人(一・四%)増、十か月連続の増加
 ・常 雇…四千六百三十三万人と、二十七万人(〇・六%)増
 ・臨時雇…五百七十万人と、五十七万人(一一・一%)増、平成八年九月以降増加が継続
 ・日 雇…百十三万人と、九万人(七・四%)減、六か月連続の減少

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百三十二万人と、四万人(一・七%)減
○建設業…六百二十二万人と、二十三万人(三・六%)減、三か月連続の減少
○製造業…一千三百四万人と、四万人(〇・三%)増、四十五か月ぶりの増加
○運輸・通信業…四百一万人と、十三万人(三・一%)減、三か月連続の減少
○卸売・小売業,飲食店…一千四百五十四万人と、十六万人(一・一%)減、五か月ぶりの減少
○サービス業…一千七百六十七万人と、百二万人(六・一%)増、十二か月連続の増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百二十一万人と、十一万人(二・一%)減
○製造業…一千百九十五万人と、二十一万人(一・八%)増
○運輸・通信業…三百八十一万人と、十三万人(三・三%)減
○卸売・小売業,飲食店…一千百八十三万人と、十五万人(一・三%)減
○サービス業…一千五百二十四万人と、九十三万人(六・五%)増

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百四万人と、十三万人(〇・八%)増、四か月連続の増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百四十九万人と、四十四万人(二・六%)増、六か月連続の増加
○五百人以上規模…一千二百八十一万人と、二万人(〇・二%)増、四か月ぶりの増加

(5) 就業時間

 二月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千三百六十一万人と、十四万人(一・〇%)増加
 ・うち一〜三十時間未満…九百八十三万人と、十五万人(一・五%)増加
○三十五時間以上…四千八百六十万人と、二十九万人(〇・六%)増加
 ・うち四十九時間以上…一千八百五十五万人と、三十八万人(二・一%)増加
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四三・四時間で、前年同月と同数となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百十八万人と、前年同月に比べ九万人(二・八%)減となり、六か月ぶりの減少となっている。男女別にみると、男性は百九十三万人、女性は百二十五万人で、前年同月に比べ、男性は十一万人(五・四%)の減少、女性は二万人(一・六%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…九十五万人と、二十万人減少
○自発的な離職による者…百十三万人と、三万人減少
○学卒未就職者…十三万人と、一万人増加
○その他の者…八十三万人と、九万人増加

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・七%で、前月と比べ〇・二ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は四・八%、女性は四・五%と、前月に比べ男性は〇・一ポイントの低下、女性は〇・三ポイントの低下となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は四・八%と、前年同月に比べ〇・一ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は四・九%と〇・二ポイントの低下、女性は四・六%と前年同月と同率となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…三十四万人(五万人減)、九・六%(〇・九ポイント低下)
○二十五〜三十四歳…四十九万人(二万人増)、五・三%(〇・二ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十四万人(同数)、三・一%(同率)
○四十五〜五十四歳…二十九万人(五万人減)、三・一%(〇・五ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…四十六万人(二万人減)、七・〇%(〇・一ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…十八万人(二万人減)、四・六%(〇・三ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…二十八万人(同数)、一〇・三%(〇・一ポイント低下)
○六十五歳以上…十一万人(同数)、三・七%(同率)
 [女]
○十五〜二十四歳…二十九万人(一万人増)、八・五%(〇・四ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…三十八万人(一万人減)、六・三%(〇・四ポイント低下)
○三十五〜四十四歳…二十一万人(一万人増)、四・〇%(〇・一ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十一万人(一万人増)、三・一%(〇・一ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十四万人(同数)、三・五%(〇・一ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…八万人(同数)、三・二%(〇・一ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…六万人(同数)、三・九%(〇・一ポイント低下)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・二%(同率)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…八十七万人(十万人減)、三・三%(〇・三ポイント低下)
○世帯主の配偶者…三十七万人(二万人減)、二・六%(〇・二ポイント低下)
○その他の家族…百四十三万人(一万人減)、八・〇%(同率)
○単身世帯…五十万人(三万人増)、六・二%(〇・二ポイント低下)












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法人企業動向調査


―平成十三年三月実施調査結果―


内 閣 府


◇調査要領

 本調査は、資本金一億円以上の営利活動法人を対象として、設備投資の実績及び計画並びに企業経営者の景気と経営に対する判断及び見通しを調査したものである。
 調査対象:調査は、原則として国内に本社又は主たる事務所をもって企業活動を営む資本金一億円以上の全営利活動法人(約三万四千社)から、内閣府が定める方法により選定した四千五百四十社を対象とした。
 調査時点:平成十三年三月十日
 調査方法:調査は、調査客体法人の自計申告により行った。
 なお、資本金百億円以上の法人については原則として全数調査、百億円未満の法人は、層化任意抽出法により選定した法人について調査した。
 有効回答率:調査対象法人四千五百四十社のうち、有効回答法人四千百七十八社、有効回答率九二・〇%。
〔利用上の注意〕
(1) 今期三か月の判断とは、平成十二年十〜十二月期と比較した場合の十三年一〜三月期の判断、来期三か月の見通しとは、十三年一〜三月期と比較した場合の十三年四〜六月期の見通し、再来期三か月の見通しとは、十三年四〜六月期と比較した場合の十三年七〜九月期の見通しである。ただし、在庫水準と生産設備については、それぞれの調査期間における判断と見通しである。
(2) 第1図、第1〜8表の十三年一〜三月以前は今期の判断、十三年四〜六月は来期の見通し、十三年七〜九月は再来期の見通しである。
(3) 判断指標(BSI)とは「上昇(強くなる・増加・過大)の割合−下降(弱くなる・減少・不足)の割合」である。
(4) 設備投資の公表数値は、母集団推計値である。また、算出基準は工事進捗ベース(建設仮勘定を含む有形固定資産の減価償却前増加額)である。
(5) 季節調整法は、センサス局法U、X−11で算出した。
(6) 集計上の産業分類は、日本標準産業分類を基準とする会社ベースでの主業分類に基づいて行った。
(7) 昭和六十三年三月調査より、日本電信電話(株)、第二電電(株)等七社、JR関係七社及び電源開発(株)を調査対象に加えるとともに、日本電信電話(株)、第二電電(株)等七社については六十年四〜六月期、JR関係七社については六十二年四〜六月期に遡及して集計に加えた。
(8) 平成元年六月調査より消費税を除くベースで調査した。
(9) 平成十年六月調査より、以下のとおり産業分類の見直しを行い、昭和五十九年六月調査に遡及して集計を行った。
 @ 「造船」を「その他の輸送用機械」に合併。
 A 「印刷・出版」を「その他の製造業」に合併。
 B 「卸売・小売業,飲食店」の内訳を廃止し、「卸売業」と「小売業,飲食店」に分割。
 C 「運輸・通信業」の内訳を廃止し、「運輸業」と「通信業」に分割。
 D 「電力業」と「ガス業」を合併し、「電力・ガス業」とする。
 E 「サービス業」を「サービス業(除くリース業)」と「リース業」に分割。
 F 製造業を素材型、加工型に分類。

一 景気見通し(全産業:季節調整値)

(一) 国内景気第1表参照

 企業経営者による国内景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十二年十〜十二月期「マイナス一」の後、十三年一〜三月期は「マイナス三一」と「下降」超幅が拡大した。
 先行きについては、四〜六月期「マイナス一九」、七〜九月期「マイナス六」と「下降」超が縮小する見通しとなっている。
 産業別にみると、製造業は、十二年十〜十二月期「三」の後、十三年一〜三月期は「マイナス三三」と「下降」超に転じた。先行きについては、四〜六月期「マイナス一九」、七〜九月期「マイナス六」と「下降」超幅が縮小する見通しとなっている。
 他方、非製造業は、十二年十〜十二月期「マイナス三」の後、十三年一〜三月期は「マイナス二九」と「下降」超幅が拡大した。先行きについては、四〜六月期「マイナス二〇」、七〜九月期「マイナス五」と「下降」超で推移する見通しとなっている。

(二) 業界景気第2表参照

 所属業界の景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十二年十〜十二月期「マイナス六」の後、十三年一〜三月期は「マイナス二五」と「下降」超幅が拡大した。
 先行きについては、四〜六月期「マイナス一八」、七〜九月期「マイナス五」と「下降」超で推移する見通しとなっている。
 産業別にみると、製造業は、十二年十〜十二月期「マイナス一」の後、十三年一〜三月期は「マイナス二七」と「下降」超幅が拡大した。先行きについては、四〜六月期「マイナス一九」、七〜九月期「マイナス六」と「下降」超で推移する見通しとなっている。
 他方、非製造業は、十二年十〜十二月期「マイナス八」の後、十三年一〜三月期は「マイナス二四」と「下降」超幅が拡大した。先行きについては、四〜六月期「マイナス一七」、七〜九月期「マイナス六」と「下降」超で推移する見通しとなっている。

二 需要・価格関連見通し(季節調整値)

(一) 内外需要(製造業)(第3表参照

 企業経営者による国内需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)をみると、平成十二年十〜十二月期「〇」の後、十三年一〜三月期には「マイナス二七」と「弱くなる」超に転じた。
 先行きについては、四〜六月期「マイナス一九」、七〜九月期「マイナス九」と「弱くなる」超で推移する見通しとなっている。
 他方、海外需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)をみると、十二年十〜十二月期「マイナス四」の後、十三年一〜三月期は「マイナス二二」と「弱くなる」超幅が拡大した。
 先行きについては、四〜六月期「マイナス二二」、七〜九月期「マイナス七」と「弱くなる」超で推移する見通しとなっている。

(二) 在庫水準(製造業)(第4表参照

 原材料在庫水準に関する判断指標(BSI:「過大」−「不足」)をみると、平成十二年十二月末「一〇」の後、十三年三月末は「一三」と「過大」超幅が拡大した。
 先行きについては、六月末「一〇」、九月末「七」と「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。
 他方、完成品在庫水準に関する判断指標をみると、十二年十二月末「一四」の後、十三年三月末は「二二」と「過大」超幅が拡大した。
 先行きについては、六月末「一六」、九月末「一二」と「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

(三) 価 格(製造業、農林漁業、鉱業)(第5表参照

 原材料価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十二年十〜十二月期「九」の後、十三年一〜三月期は「五」と「上昇」超幅が縮小した。
 先行きについては、四〜六月期に「〇」となった後、七〜九月期は「マイナス四」と「下降」超に転じる見通しとなっている。
 他方、製品価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、十二年十〜十二月期「マイナス一〇」の後、十三年一〜三月期は「マイナス二一」と「下降」超幅が拡大した。
 先行きについては、四〜六月期「マイナス二〇」、七〜九月期「マイナス一四」と「下降」超幅が縮小する見通しとなっている。

三 経営見通し(季節調整値)

(一) 売上高(全産業:金融・保険業、不動産業を除く)(第6表参照

 売上高に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)をみると、平成十二年十〜十二月期「一」の後、十三年一〜三月期は「マイナス一〇」と「減少」超に転じた。
 先行きについては、四〜六月期「マイナス七」、七〜九月期「マイナス六」と「減少」超幅が縮小する見通しとなっている。
 産業別にみると、製造業は、十二年十〜十二月期「四」の後、十三年一〜三月期は「マイナス一七」と「減少」超に転じた。先行きについては、四〜六月期「マイナス八」、七〜九月期「マイナス五」と「減少」超幅が縮小する見通しとなっている。
 他方、非製造業は、十二年十〜十二月期「マイナス二」の後、十三年一〜三月期は「マイナス六」と「減少」超幅が拡大した。先行きについては、四〜六月期に「マイナス八」と引き続き「減少」超幅が拡大した後、七〜九月期には「マイナス五」と「減少」超幅が縮小する見通しとなっている。

(二) 経常利益(全産業:金融・保険業、不動産業を除く)(第7表参照

 経常利益に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)をみると、平成十二年十〜十二月期「マイナス一」の後、十三年一〜三月期は「マイナス一三」と「減少」超幅が拡大した。
 先行きについては、四〜六月期「マイナス九」、七〜九月期「マイナス四」と「減少」超幅が縮小する見通しとなっている。
 産業別にみると、製造業は、十二年十〜十二月期「一」の後、十三年一〜三月期は「マイナス一五」と「減少」超に転じた。先行きについては、四〜六月期「マイナス一一」、七〜九月期「マイナス六」と「減少」超幅が縮小する見通しとなっている。
 他方、非製造業は、十二年十〜十二月期「マイナス四」の後、十三年一〜三月期は「マイナス一一」と「減少」超幅が拡大した。先行きについては、四〜六月期「マイナス七」、七〜九月期「マイナス四」と「減少」超幅が縮小する見通しとなっている。

四 生産設備見通し(製造業:季節調整値)(第8表参照

 生産設備に関する判断指標(BSI:「過大」−「不足」)をみると、平成十二年十〜十二月期「一七」の後、十三年一〜三月期は「二一」と「過大」超幅が拡大した。
 先行きについては、四〜六月期に「二二」と引き続き「過大」超幅が拡大した後、七〜九月期には「二〇」と「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

五 設備投資の動向(全産業:原数値)

(一) 半期別動向第9表参照

 設備投資の動向を半期別に前年同期比でみると、平成十二年度四〜九月期(実績)〇・五%減の後、十二年度十〜三月期(実績見込み)は七・〇%増と増加に転じた。
 先行き十三年度四〜九月期(計画)は、二・三%増と引き続き増加した後、十〜三月期(計画)は、一二・〇%減と減少に転じる見通しとなっている。
 産業別にみると、製造業は、十二年度四〜九月期二・三%増の後、十〜三月期は一六・五%増と引き続き増加した。先行き十三年度四〜九月期は一二・〇%増と引き続き増加した後、十〜三月期は一二・三%減と減少に転じる見通しとなっている。
 他方、非製造業では、十二年度四〜九月期二・〇%減の後、十〜三月期は二・七%増と増加に転じた。先行き十三年度四〜九月期は二・八%減と減少に転じた後、十〜三月期は一一・八%減と引き続き減少する見通しとなっている。

(二) 資本金規模別動向第10表参照

 資本金規模別に前年同期比でみると、資本金十億円以上の大企業では、平成十二年度四〜九月期(実績)一〇・四%減の後、十〜三月期(実績見込み)は七・二%増と増加に転じた。先行き十三年度四〜九月期(計画)は三・〇%減と減少に転じた後、十〜三月期(計画)は一八・六%減と引き続き減少する見通しとなっている。
 他方、資本金一〜十億円の中堅企業では、十二年度四〜九月期二二・五%増の後、十〜三月期は六・八%増と引き続き増加した。先行き十三年度四〜九月期は一一・三%増、十〜三月期は〇・一%増と引き続き増加する見通しとなっている。

(三) 年度の動向第11表参照

 設備投資の動向を前年度比でみると、平成十一年度(実績)一・六%減の後、十二年度(実績見込み)は三・五%増と増加に転じた。先行き十三年度(計画)は五・五%減と減少に転じる見通しとなっている。
 産業別にみると、製造業は、十一年度八・三%減の後、十二年度は九・五%増と増加に転じた。先行き十三年度は一・二%減と減少に転じる見通しとなっている。
 他方、非製造業は、十一年度二・〇%増の後、十二年度は〇・五%増と引き続き増加した。先行き十三年度は七・八%減と減少に転じる見通しとなっている。

(四) 四半期別動向(季節調整値)

 四半期の動向を前期比でみると、平成十二年十〜十二月期(実績)の六・八%増の後、十三年一〜三月期(実績見込み)は八・二%増と引き続き増加した。
 産業別にみると、製造業は、十二年十〜十二月期四・六%増の後、十三年一〜三月期は七・〇%増と引き続き増加した。
 他方、非製造業は、十二年十〜十二月期八・〇%増の後、十三年一〜三月期は八・五%増と引き続き増加した。

(五) 四半期別動向(原数値)

 四半期別の動向を前年同期比でみると、平成十二年十〜十二月期(実績)七・六%増の後、十三年一〜三月期(実績見込み)は六・六%増と引き続き増加した。
 産業別にみると、製造業は、十二年十〜十二月期一二・五%増の後、十三年一〜三月期は二〇・一%増と引き続き増加した。
 他方、非製造業は、十二年十〜十二月期五・三%増の後、十三年一〜三月期は〇・六%増と引き続き増加した。











 <5月30日号の主な予定> 

 ▽食料・農業・農村白書のあらまし………農林水産省 

 ▽月例経済報告(四月報告)………………内 閣 府 




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