官報資料版 平成13年6月13日




                  ▽平成十二年人口移動の概要……………………………総 務 省

                  ▽平成十二年度平均全国消費者物価指数の動向………総 務 省

                  ▽労働力調査特別調査(二月)…………………………総 務 省

                  ▽毎月勤労統計調査(三月分)…………………………厚生労働省

                  ▽月例経済報告(五月報告)……………………………内 閣 府











平成12年


住民基本台帳人口移動報告に基づく


人口移動の概要


総 務 省


 住民基本台帳人口移動報告は、国内における人口移動の状況を明らかにするため、住民基本台帳法に基づき、総務省統計局が都道府県を通じて全国各市町村から毎月の転入者(男女別、従前の住所地別)について報告を求め、これを統計として取りまとめたものである。
 同一市町村内で住所変更をした者、日本国籍を有しない者など、住民基本台帳に係る転入の届出を伴わない移動者は含まれない。
 去る三月三十日に公表した、平成十二年の我が国における人口移動の概要は、次のとおりである。

一 移動者総数

 移動率は昭和二十九年の調査開始以来最低に
 平成十二年の全国における市区町村間の移動者の総数は、六百十四万六千六百七十人で、前年に比べ三万九千八百二十人(〇・六%)減少した。
 移動者総数は、我が国の経済が高度成長期にあった昭和三十年代から四十年代半ばにかけて急速に増加し、四十八年には八百五十三万八千八百二十人と最多を記録した。
 しかし、昭和四十八年の第一次石油危機以降減少に転じ、六十一年までほぼ一貫して減少が続き、六十二年から平成六年まで六百五十万人前後で推移した。平成七年には阪神淡路大震災の影響を受けて六百六十万人台に増加したが、八年からは再び減少に転じ、十二年まで五年連続の減少となった。
 また、移動率(十月一日現在の日本人人口に対する移動者数の比率)は四・八九%と、前年(四・九三%)に比べて〇・〇四ポイント低下し、昭和二十九年の調査開始以来の最低値を更新した。
 移動者を都道府県内移動者と都道府県間移動者に分けてみると、都道府県内移動者数は三百三十三万三千二百六人(移動者総数の五四・二%)、都道府県間移動者数は二百八十一万三千四百六十四人(移動者総数の四五・八%)で、前年に比べ、それぞれ八千二百三十八人(〇・二%)、三万一千五百八十二人(一・一%)減少し、ともに五年連続の減少となった。
 都道府県内移動と都道府県間移動を比べてみると、人口移動が活発であった昭和四十年代は、おおむね都道府県間移動が都道府県内移動を上回っていたが、四十七年以降は一貫して都道府県内移動の方が上回っている(第1図第1表参照)。

二 三大都市圏の転出入の状況

 東京圏は五年連続して転入超過
 三大都市圏(東京圏、名古屋圏及び大阪圏)における転出入超過の状況は、東京圏は八万七千九百九十五人の転入超過、名古屋圏は二千百四十一人、大阪圏は三万一千六百五十二人の転出超過となった。
 各都市圏別にみると、東京圏は、調査開始以来、転入超過が続いていたが、平成六年、七年の一時的な転出超過を経て、八年以降再び転入超過となり、十二年まで五年連続の転入超過となっている。
 名古屋圏は、調査開始以来、昭和四十九年までは転入超過、五十年から五十九年は転出超過、六十年以降はほぼ転入超過が続き、平成八年に一時的な転出超過の後、九年から十一年まで三年連続して転入超過が続いたが、十二年は転出超過となった。ただし、昭和四十九年以降は転入者数と転出者数にそれほど大きな差がなく、ほぼ横ばいといえる状況で推移している。
 大阪圏は、調査開始以来、昭和四十八年までは転入超過が続いたが、以降は一貫して転出超過が続いている(第2図参照)。

三 東京圏、東京都、東京都特別区部の転出入の状況

 東京都特別区部は四年連続転入超過で都心回帰の現象
 東京圏は昭和二十九年の調査開始以来、平成五年までの四十年間転入超過が続き、六年、七年に一時転出超過となったものの、八年以降再び転入超過が続いている。
 一方、東京都は昭和四十二年から平成八年までの三十年間(一年限りの転入超過であった昭和六十年を含む)、東京都特別区部は昭和三十九年から平成八年までの三十三年間、いずれも転出超過が続いていたが、東京都も東京都特別区部も、平成九年に転入超過に転じた後、四年連続で転入超過が続いている。
 この地域の平成十二年の転入超過数をみると、東京圏は八万七千九百九十五人、東京都は五万四千九百二十人、東京都特別区部は四万二百三十四人で、東京都の転入超過は東京圏全体の転入超過の六割強の大きさ、東京都特別区部の転入超過も東京圏全体の転入超過の四割強の大きさとなっている。
 さらに、平成九年から十二年までの三年間で、東京圏は四万八千三百三十人、東京都は三万七千六百二十九人、東京都特別区部は三万一千七百六十八人、転入超過幅がいずれも拡大している。
 長期的な転入と転出を東京都特別区部についてみると、転出は昭和四十年代後半の七十万人台からほぼ一貫して減少し、平成六年には四十万人を切り、平成十二年も十一年より八千四百四十八人減少して三十二万一千八百八十九人となった。
 一方、転入は昭和四十年前後の六十万人台から同様に減少して、平成五年には三十三万五千五百六十九人となった。しかし、その後は増加傾向に転じており、平成十二年は十一年より九千二百九十六人増加して三十六万二千百二十三人となり、都心回帰の現象がみられる(第2表参照)。

四 都道府県別転出入の状況

 十四都県が転入超過、三十三道府県が転出超過
 転入超過数を都道府県別にみると、東京都が五万四千九百二十人と最も多く、これに、神奈川県(一万九千二百三十七人)、千葉県(九千六百十六人)が続き十四都県が転入超過となっている。このうち、東京都は昭和六十一年以来、転出超過が続いていたが、平成九年には十二年ぶりに転入超過(一万七千二百九十一人)に転じ、十年(三万一千三百十九人)、十一年(三万七千百五十六人)、十二年(五万四千九百二十人)と四年連続の転入超過となり、転入超過幅も三年連続して拡大した。
 一方、転出超過となったのは三十三道府県となっており、転出超過数が最も多かったのは大阪府の二万六千六百五十四人で、これに、北海道の八千九百十八人が続いている。
 転入超過率(当該地域の十月一日現在の日本人人口に対する転入超過数の比率)をみると、東京都が〇・四六%で最も高く、これに、滋賀県(〇・三七%)、神奈川県(〇・二三%)、千葉県及び沖縄県(〇・一六%)が続いている。
 また、転出超過率(当該地域の十月一日現在の日本人人口に対する転出超過数の比率)は大阪府が〇・三一%と最も高く、これに長崎県(〇・三〇%)、秋田県(〇・二六%)、和歌山県(〇・二五%)、山口県(〇・二四%)が続いている。

五 十三大都市の転出入の状況

 八都市が転入超過、五都市が転出超過
 十三大都市(東京都特別区部及び十二の政令指定都市)のうち、平成十二年に転入超過となったのは八都市で、転入超過数は東京都特別区部が四万二百三十四人で最も多く、次いで横浜市(一万八千八百八十九人)、神戸市(六千七百九人)の順となっている。
 一方、転出超過となったのは五都市で、転出超過数は北九州市が三千二百九十一人で最も多く、次いで京都市(二千五百十三人)、名古屋市(一千八百五十一人)の順となっている。


目次へ戻る

平成12年度平均


全国消費者物価指数の動向


―総合指数は前年度比〇・五%の下落―


総 務 省


1 概 況

 平成十二年度平均全国消費者物価指数は、平成七年を一〇〇とした総合指数で一〇一・五となり、前年度に比べ〇・五%の下落となった。
(1) 近年の総合指数の動きを前年度比でみると、平成六年度は工業製品の下落幅が拡大したことなどにより〇・四%上昇と、昭和六十三年度以来六年ぶりに一%を下回った。七年度は工業製品の下落に加え、米類や生鮮野菜が値下がりしたことなどにより〇・一%下落と、比較可能な昭和四十六年度以降初めて下落となった。八年度は工業製品などの下落幅が縮小したことに加え、生鮮魚介や衣料が値上がりしたことなどにより〇・四%の上昇となった。九年度は消費税率引上げの影響などにより二・〇%上昇と、三年度以来六年ぶりに二%台の上昇となった。十年度は天候不順により生鮮野菜が高騰したことに加え、医療保険制度改正の影響が残ったことなどにより〇・二%の上昇となったが、十一年度は前年度に高騰した生鮮野菜が下落したことに加え、耐久消費財などの工業製品が下落したことなどにより〇・五%の下落となった。
  平成十二年度は、耐久消費財や繊維製品などの工業製品が下落したことに加え、生鮮食品や外食なども値下がりしたことにより〇・五%の下落となった。
  また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・七となり、前年度に比べ〇・四%の下落となった。
  なお、総合指数が二年連続、生鮮食品を除く総合指数が三年連続で前年度の水準を下回ったのは、比較可能な昭和四十六年度以降初めてのことである。
(2) 十大費目指数の動きを前年度比でみると、食料は外食などの値下がりにより一・三%下落、家具・家事用品は家庭用耐久財などの値下がりにより三・一%下落、被服及び履物は衣料などの値下がりにより一・四%下落、教養娯楽は教養娯楽用耐久財などの値下がりにより一・〇%下落とそれぞれ総合の下落より大きな下落となった。このほか、諸雑費は身の回り用品などの値下がりにより〇・四%の下落となった。一方、住居は家賃の値上がりにより〇・二%上昇、光熱・水道は電気・ガス代などの値上がりにより一・八%上昇、交通・通信は自動車等関係費などの値上がりにより〇・一%上昇、教育は授業料等などの値上がりにより一・一%上昇とそれぞれ上昇となった。
  なお、保健医療は前年度と変わらなかった。
(3) 商品・サービス分類指数の動きを前年度比でみると、商品は〇・九%の下落となった。これは、耐久消費財や繊維製品などの値下がりにより工業製品が〇・七%下落したことに加え、生鮮商品などの値下がりにより農水畜産物が二・五%下落したことなどによる。サービスは〇・二%の下落となった。これは、外食が一・二%下落したことに加え、公共サービス料金が〇・四%下落したことなどによる。
  なお、サービスが前年度に比べて下落したのは、比較可能な昭和四十六年度以降初めてのことである。












目次へ戻る

労働力調査特別調査


―平成十三年二月結果の概要―


総 務 省


〔就業者〕

(1) 雇用形態別の構成
 役員を除く雇用者は四千九百九十九万人と、前年に比べ九十六万人の増加となっている。これを雇用形態別にみると、正規の職員・従業員は三千六百四十万人と、前年に比べ十万人増加した。パート・アルバイトは一千百五十二万人と、前年に比べ七十四万人の増加となり、七年連続の増加となっている。役員を除く雇用者に占めるパート・アルバイトの割合(パート・アルバイト比率)は二三・〇%と七年連続上昇した。また、労働者派遣事業所の派遣社員は四十五万人と、前年に比べ十二万人の増加となっている(第1図参照)。

(2) パート・アルバイト比率
 パート・アルバイト比率を男女別にみると、男性では六十五歳以上と十五〜二十四歳(在学中の者を除く)で高く、女性では三十五歳以上の年齢階級で高い。
 年齢階級別(十五〜二十四歳は在学中の者を除く)のパート・アルバイト比率を前年と比べると、男女共に三十五〜四十四歳以外のすべての年齢階級で上昇となっている(第2図参照)。

〔完全失業者〕

(1) 失業期間
 完全失業者数は三百十八万人と、前年に比べ九万人の減少となっている。
 失業期間別にみると、「三か月未満」の完全失業者は百二十五万人と、前年に比べ七万人増加するとともに、「一年以上」の完全失業者数も八十三万人と、前年に比べ一万人の増加となっている(第3図参照)。

(2) 仕事につけない理由
 完全失業者(三百十八万人)について、年齢階級別に仕事につけない理由の割合をみると、四十五〜五十四歳、五十五歳以上では「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」が最も高い割合となっており、特に五十五歳以上では五〇・七%を占めている。また、十五〜二十四歳、二十五〜三十四歳では「希望する種類の仕事がない」が最も高い割合となっている(第4図参照)。

〔非労働力人口〕

 非労働力人口は四千百六十二万人と、前年と同数となっている。このうち就業希望者は九百八十二万人で、前年に比べ四十一万人減少となっている。就業希望者のうち、仕事を探していない理由が「適当な仕事がありそうにない」とする者は四百二十万人で、このうち仕事があれば「すぐつける」とする者は百三十三万人となっている(第1表参照)。




目次へ戻る

賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十三年三月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十三年三月分結果の主な特徴点は、次のとおりである。

◇賃金の動き

 三月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は三十万三千八百二十一円、前年同月比は〇・三%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万三千三百八十八円、前年同月比〇・六%減であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万四千三百九十五円、前年同月比〇・六%減、所定外給与は一万八千九百九十三円、前年同月比は一・三%減であった。
 また、特別に支払われた給与は二万四百三十三円、前年同月比は四・二%増であった。
 実質賃金は、〇・一%増であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に金融・保険業二・三%増、電気・ガス・熱供給・水道業〇・九%増、不動産業〇・七%増、鉱業〇・六%増、卸売・小売業,飲食店〇・一%増、製造業は前年と同水準、建設業〇・四%減、サービス業一・五%減、運輸・通信業二・六%減であった。

◇労働時間の動き

 三月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一五二・四時間、前年同月比は三・一%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一四二・二時間、前年同月比三・三%減、所定外労働時間は一〇・二時間、前年同月比〇・九%減、所定外労働時間の季節調整値は前月比〇・七%増であった。
 製造業の所定外労働時間は一三・八時間、前年同月比三・五%減、季節調整値の前月比は三・九%減であった。

◇雇用の動き

 三月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・二%減、常用労働者のうち一般労働者では一・一%減、パートタイム労働者では三・五%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものは不動産業二・九%増、サービス業一・七%増、建設業一・〇%増であった。前年同月を下回ったものは運輸・通信業〇・五%減、卸売・小売業,飲食店一・〇%減、製造業一・二%減、鉱業二・七%減、金融・保険業五・二%減、電気・ガス・熱供給・水道業六・八%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者一・七%減、パートタイム労働者一・九%増、卸売・小売業,飲食店では一般労働者二・六%減、パートタイム労働者一・五%増、サービス業では一般労働者〇・八%増、パートタイム労働者五・九%増であった。










借り過ぎにご注意ください!


 多重債務キャッシングやクレジットカードのローンなどの返済ができなくなり、さらに複数の金融業者からお金を借りて返済できなくなること。借りたり返したりを繰り返すうちに多額の債務を背負い、自分の収入では返済できなくなるケースが多いようです。
 近年、こうした多重債務による自己破産が増えています。
 一九九六年に約五万六千件だった個人の自己破産は、九九年には約十二万三千件、二〇〇〇年には十三万九千件に急増しています。
 キャッシングやクレジットカードのローンは節度をもった利用を心がけ、安易な借り入れで生活が破綻しないよう計画的な借り入れをすることが大切です。借り入れの際には、
@本当に必要なのか
A無理のない返済ができるのか
B手数料や金利はいくらになるのか
C契約書の内容は理解できたか
をよく考えましょう。
 借金を返すために借金をするのが多重債務や自己破産に陥る典型的なパターン。もし、返済が難しくなったり無理がでてきたりしたときは、親や家族など身近な人、借入先の業者、公的な機関などに相談してください。
◇主な相談機関
●国民生活センター(相談専用)
 пZ三―三四四六―〇九九九
●各地の消費生活センター
●各都道府県貸金業協会(苦情・相談窓口)
●各弁護士会の法律相談窓口
●日本クレジットカウンセリング協会
 пZ三―三二二六―〇一二一
●金銭管理カウンセリング事業団
 (東京)пZ三―五二八二―七五〇〇
 (大阪)пZ六―六二四二―二二〇〇
●救済更生事業団
 пZ六―六三五五―〇九四七


目次へ戻る

月例経済報告(五月報告)


―景気は、さらに弱含み―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)
 景気は、さらに弱含んでいる。
・アメリカ経済の減速から輸出が減少し、それに伴い、生産が減少している中で在庫が増加している。
・企業部門の自律的回復に向けた動きはなお続いているが、このところ弱まっている。設備投資は増加しているが、企業収益の伸びが鈍化し、企業の業況判断は製造業を中心に急速に悪化している。
・失業率は高水準で推移し、個人消費はおおむね横ばいの状態が続いている。
 先行きについては、アメリカ経済の減速や設備投資に鈍化の兆しなど、懸念すべき点がみられる。

(政策の基本的態度)
 政府としては、日本経済の再生を最重要課題として位置づけ、まずは、緊急経済対策を速やかに実行に移す。さらに、不良債権の最終処理、二十一世紀の環境にふさわしい競争的経済システムの構築、財政構造の改革等の経済・財政の構造改革を断行する。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、家電リサイクル法施行前の駆け込み需要があったものの、おおむね横ばいの状態が続いている。
 個人消費は、需要側統計である家計調査でみると、平成十三年三月は、家電リサイクル法施行前の駆け込み需要がみられたもののマイナスに転じた。また、購入頻度の低い高額商品等による振れを除去し、国民経済計算と概念を調整するため、自動車等購入、住居、仕送り金等を除いたベースでみても、ほぼ同様な動きとなっている。
 販売側統計をみると、小売業売上高は、改善の動きが続いている。家電販売金額は、家電リサイクル法施行前の駆け込み需要によって引き続き前年を大きく上回っている。旅行は、国内旅行、海外旅行ともに前年を上回っているものの、減速感がみられる。
 一方、百貨店販売額は弱い動きが続いており、新車販売台数も伸び悩んでいる。
 こうした需要側、販売側の動向を総合してみると、個人消費は、家電リサイクル法施行前の駆け込み需要の一時的な要因があるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。
 個人消費の動向を左右する家計収入の動きをみると、定期収入が三か月連続で減少となるなど弱い動きがみられ、三月は現金給与総額が二か月連続で前年割れとなった。一方、実質賃金はやや増加した。また消費者マインドは、このところ弱含んでいる。

◇設備投資は、増加している。当面は製造業を中心として堅調に推移すると見込まれるものの、先行きについては鈍化の兆しがみられる。
 設備投資は、平成十一年末に持ち直しに転じて以降増加基調が続いており、景気を支える要素となっている。これまで電気機械を中心とする製造業から他の業種へと広がりをみせながら増加してきた。「法人企業統計季報」でみると、十〜十二月期は、製造業は増加を続け、非製造業も前年比プラスに転じている。大中堅企業について「法人企業動向調査」でみると、一〜三月期(実績見込み)は、製造業、非製造業ともに前期比プラスとなっている。
 設備投資の今後の動向については、先行指標である機械受注が、昨年後半は増勢が続いていたため、当面は製造業を中心として堅調に推移すると見込まれる。しかしながら、日銀短観の平成十三年度設備投資計画において非製造業を中心に減少が見込まれていること、一〜三月期の機械受注が減少の見通しとなっていることなど、先行きについては鈍化の兆しがみられる。

◇住宅建設は、弱含みとなっている。
 住宅建設は、平成十一年以降おおむね年率百二十万戸前後で推移してきたが、このところ弱含んでいる。直近の動きをみると、一月、二月と二か月連続で減少した後、三月はマンション着工の大幅増などにより年率百二十万七千戸となった。しかし、平成十三年一〜三月期でみると年率百十七万戸程度で、前期と比べ減少している。
 また、住宅金融公庫融資の申し込み戸数が減少していることなど、先行き、住宅着工を減少させる要因もみられる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、公共工事請負金額が昨年六月以降継続して前年を下回るなど、総じて低調に推移している。平成十二年度の公共事業関連予算の動向をみると、国においては、前年度の予算が比較的高水準であったため、補正後予算は前年度の規模を下回っている。地方においては、厳しい財政状況から投資的経費を抑制する動きが続いている。
 工事の受注動向をみると、年度内での発注時期の差異による影響から十月以降は前年を上回る動きがあったが、この影響がおおむね解消されてきたことから、一〜三月期に入り再び前年を大きく下回る指標がみられている。
 四〜六月期の公共投資については、平成十三年度当初予算における国の公共事業関係費については前年度とほぼ同額を確保していること、地方の投資的経費の削減幅が前年度に比べ縮小していることなどから、一〜三月期のように前年を大きく下回ることはないものと考えられる。

◇輸出は、減少している。輸入は、おおむね横ばいで推移している。貿易・サービス収支の黒字は、減少している。
 輸出は、アメリカやアジアの景気減速を背景として、半導体等電子部品などの電気機器を中心に減少している。アジア向けは、中国向けが増加しているものの、アジアNTEs向けを中心に減少しており、アメリカ向け、EU向けも減少している。今後は、アメリカ経済の減速が持続した場合、これが我が国輸出の下押し要因として作用するものと見込まれる。
 輸入は、TT関連財を中心とした機械機器が減少していることなどから、これまでの伸びが鈍化し、おおむね横ばいで推移している。増加を牽引してきたアジアからの輸入は、中国からの輸入が繊維製品を中心に緩やかに増加しているものの、全体では機械機器の減少によっておおむね横ばいで推移している。アメリカ、EUからの輸入は弱含んでいる。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、二月単月では輸入金額が大幅に減少したことを主因に大幅に増加したものの、基調としては、輸出数量が減少していることから、黒字は減少している。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は減少している中で、在庫が増加している。
 鉱工業生産は、平成十一年初めの景気回復初期から増加基調を続けてきたが、平成十二年秋頃から増加のテンポが緩やかになり、今年に入ってからは減少している。輸出の減少等により、TT関連品目の生産が減少に転じたことが主因である。
 生産の先行きについては、四月、五月ともに減少が見込まれており、実績が見込みを大幅に下回る状況が続いていることにも留意しておく必要がある。また、電子部品等の生産財を中心に在庫が増加していることも、生産の先行きに関して懸念すべき点である。
 第三次産業活動の動向をみると、サービス業を中心に、このところ緩やかに増加している。

◇企業収益は、これまでの高い伸びが鈍化している。また、企業の業況判断は、製造業を中心に急速に悪化している。倒産件数は、やや高い水準となっている。
 企業収益は、平成十一年以降改善しており、特に平成十二年半ば以降は大幅な改善が続いていた。今回の改善の背景としては、企業のリストラ努力が挙げられるが、製造業において売上高が伸びていることや、非製造業において平成十二年初までは変動費を削減してきたことも大きく寄与していた。しかし、日銀短観によると平成十二年度下期から平成十三年度上期にかけて伸びが鈍化する見込みとなっており、「法人企業動向調査」によると平成十三年一〜三月期における大中堅企業の経常利益の判断(前期比「増加」−「減少」)は、「減少」超幅が拡大した。
 企業の業況判断については、日銀短観をみると、電気機械を中心に製造業で急速に悪化するなど、大企業・中小企業、製造業・非製造業の別を問わず悪化がみられる。また、「法人企業動向調査」で業界景気の判断をみると、製造業、非製造業ともに悪化している。
 また三月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで一千七百三件となるなど、やや高い水準となっている。

◇雇用情勢は、依然として厳しい。完全失業率が高水準で推移し、求人や残業時間も弱含んでいる。
 完全失業率は、三月は四・七%と前月比横ばいで推移し、依然として高水準にある。
 また、雇用情勢の先行きを懸念すべき動きが引き続きみられる。企業の雇用過剰感が製造業で強まっている中で、新規求人数は、前年同月比でみると依然として増加している(三月前年同月比八・三%増)が、前月比では三か月連続で減少した(三月前月比四・〇%減)。製造業の残業時間は生産の動きを反映し、五か月連続で前月比減となった。雇用者数についても弱含んでいる。

三 物価と金融情勢

◇国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。
 国内卸売物価は、電気機器や鉄鋼の下落などにより、平成十三年入り後弱含んでいる。三月は、石油・石炭製品などが上昇したものの、鶏卵などの食料用農畜水産物が前月上昇した反動で下落したほか、電気機器や一般機器などが値下がりしたことから、前月比〇・一%の下落となり、前年比でみても〇・五%の下落とマイナス幅を拡大している。輸出物価(円ベース)は、契約通貨ベースでは電気機器(集積回路)を中心に値下がりしたものの、円安の影響を受けて上昇した。輸入物価(円ベース)は、契約通貨ベースで原油などが上昇したことに加え、円安の影響を受けて上昇した。なお企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、繊維製品や外食の下落などにより、平成十二年秋以降弱含んでいる(生鮮食品を除く総合:三月前年同月比〇・六%下落)。なお、四月の東京都区部では、三月に比べ前年同月比で下落幅が縮小している(同:四月前年同月比〇・九%下落)。
 こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

◇金融情勢については、長期金利は、債券市場で利益確定売りが強まったことなどを受けて、三月下旬より上昇傾向で推移した。
 短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、四月は、日本銀行による一段の金融緩和措置を受けて、〇・〇二%前後で推移した。二、三か月物はおおむね横ばいで推移した。長期金利は景気の先行きを懸念する市場の見方などもあって、昨年秋より低下基調で推移し、三月下旬には一・〇%台まで低下したが、その後、債券市場で利益確定売りが強まったことなどを受けて上昇傾向で推移した。
 株式相場は、昨年春より下落基調で推移してきたが、四月は、緊急経済対策への期待感や、堅調な米国株価の動向等を受けて徐々に上昇した。
 対米ドル円相場は、昨年末から円安が進んできたが、四月は、月初の百二十六円台(九八年十月以来の水準)から、一時百二十一円台まで上昇した後、月末は百二十三円台となった。対ユーロ相場は、昨年末からユーロ独歩高が進んできたが、四月は、百十二円台から百七円台で推移した。
 M+CD(月中平均残高)は、昨年後半以降、おおむね前年同月比二・〇%増程度で推移してきたが、年明け以降、郵便貯金からの資金シフト等を受けて、やや伸び率を高めている(三月速報:前年同月比二・六%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷などを背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、ゼロ金利政策解除後緩やかに上昇してきたが、二月はやや低下した。

四 海外経済

◇アメリカの景気は、昨年末に比べれば減速は緩やかになっているものの、企業収益の悪化などで先行きに不透明感がある。アジアでは景気の拡大テンポは鈍化している。
 世界経済をみると、全体として成長に減速がみられる。
 アメリカでは、耐久財消費や住宅投資などに底堅い動きがみられ、消費者心理や企業の景況感に下げ止まりの兆しもみられる。一方で、企業収益の悪化から設備投資が抑制されているなど、内需は緩やかな伸びにとどまっている。在庫調整が進むなかで、生産活動が停滞している。雇用は製造業や人材派遣業を中心に減少し、失業率が上昇している。景気は、昨年末に比べれば減速は緩やかになっているものの、企業収益の悪化などで先行きに不透明感がある。
 ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大しているものの、製造業の景況感は悪化している。フランスでは、固定投資が内需の伸びを支え、景気は安定した拡大を続けている。イギリスでは、景気は緩やかに拡大している。
 アジアをみると、中国では、輸出の伸びに鈍化がみられるものの、個人消費や固定資産投資が堅調に推移しており、景気の拡大テンポはやや高まっている。韓国では、生産や個人消費の伸びの鈍化に加えて、輸出の伸びが鈍化したことから、景気は減速している。
 金融情勢をみると、アメリカでは、四月十八日のFOMC臨時会合で短期金利の誘導目標水準が〇・五%ポイント引き下げられ、四・五〇%とされた。
 国際商品市況をみると、夏場のガソリン需要期を控え、原油価格は上昇した。





    <6月20日号の主な予定>

 ▽漁業白書のあらまし………水 産 庁 

 ▽家計収支(三月分)………総 務 省 




目次へ戻る