官報資料版 平成13年7月11日




                  ▽高齢社会白書のあらまし…………………………内 閣 府

                  ▽家計総世帯集計・単身世帯収支調査結果………総 務 省











高齢社会白書のあらまし


平成十二年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告


平成十三年度において講じようとする高齢社会対策


内 閣 府


 高齢社会白書は、高齢社会対策基本法に基づき、政府が毎年国会に提出するものである。「平成十三年版高齢社会白書」は、「平成十二年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告」及び「平成十三年度において講じようとする高齢社会対策」の二つから成っており、去る六月一日、閣議決定され、同日国会に提出された。
 白書のあらましは次のとおりである。

平成十二年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告

概 説 高齢社会の動向

第1節 世代の視点からみた高齢社会の動向

○ 人口の世代構成の変化と高齢化の進展に的確に対応するためには、高齢世代の自立と世代間の連帯が重要である。本節においては、このような観点から、中高年世代や児童・生徒の意識などに基づいて、年齢にとらわれない生活様式や世代間交流に関し、その意義と行政の取組について記述し、「すべての世代のための社会」(国際高齢者年の主題)を展望する。

1 世代における自立と連帯
○ 現在最も人口の多い中高年世代(昭和二十一年〜三十年生まれ)が高齢者となっていく過程において、高齢化は更に加速され、平成三十二(二〇二〇)年には、高齢化率二六・九%、老年人口指数四一・六%と、国民の四人に一人超が高齢者となり、生産年齢人口二・四人に対し高齢者人口一人という本格的な高齢社会に移行するとともに、高齢者の半数が戦後生まれとなると見込まれている(第1図参照)。
○ 高齢社会対策の推進に当たっての基本的な姿勢として、人口の世代構成の変化と高齢化の進展に経済や社会の構造を適合させ、その「持続可能性」に対する国民の信頼を確保するとともに、高齢者の価値観と生活様式の多様化に適切に対処していくことが重要である。
○ 社会保障給付費は、平成十二(二〇〇〇)年度(予算ベース)の約七十八兆円(対国民所得比で20 1/2%)から平成三十七(二〇二五)年度には約二百七兆円(同31 1/2%)に増加し、国民負担率は約五一%(国及び地方の財政赤字を含めない場合)となると推計されている。
○ 社会保障制度は、戦後の経済や社会の変化に伴う伝統的な家族や地域社会の相互扶助機能の低下を代替するものとして整備されてきたが、社会保障制度をつくり、それを支えてきた国民の連帯感は、個人の価値観や生活様式の多様化、制度の持続性や公平性に対する若い世代の懸念などによって揺らいでいる。
○ 「社会保障構造の在り方について考える有識者会議」の報告(平成十二年十月)及びこれを受けて政府・与党社会保障改革協議会が策定した「社会保障改革大綱」(平成十三年三月末)においては、社会保障給付費の負担について、若い世代とともに高齢者にも能力に応じて負担することを求めている。これは、社会保障制度を個人の自立、自助努力を基礎とする社会の在り方に適合したものとし、世代間の共感を育み、持続可能な社会保障制度への展望を開く一つの方策とも言えるものである。
○ 経済や社会の仕組みを持続可能なものとし、伝統や文化などとともに、子や孫の世代に引き継ぐため、高齢世代の自立と世代間の連帯の在り方が今改めて問われている。

2 中高年世代とこれからの高齢者像
○ 中高年世代は、いわゆる「団塊の世代」(昭和二十二(一九四七)年〜二十四(一九四九)年生まれ)を含んでおり、今なお残る社会的・経済的な弱者という画一的な見方を払拭して、新しい「自立」した高齢者像をつくる潜在力を持っている。
○ 「中高年齢層の高齢化問題に関する意識調査結果」(平成十年)(総務庁)などをみると、
 ・ 何歳から高齢者とみるかについて、七十歳以上とする者が多く,また、退職年齢について、年齢にこだわらずに働く方がよいとする者もかなり存在する。
 ・ 高齢期における生活費を賄う手段について、公的年金のほか「就業による収入」など多様な自助努力を想定している。
 ・ 子供の結婚後は別居を望む、高齢期の生活費の援助や自分の介護を子供に期待しないなど、子供に負担をかけずに、一定の距離をおいて生活する意向が強い。
 ・ 子供よりも配偶者や社会保障制度に対する期待が強く、配偶者の健康や社会保障の持続性が高齢期の不安の種となっている。
 ・ レジャー・余暇生活などを楽しむ姿勢も強く、生涯学習に対する関心や情報通信技術の高度化が生活様式に与える影響に対する適応能力も高い。
○ 本格的な高齢社会には、年齢にとらわれず、自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る、そういう生活様式がふさわしく、行政には、そうした生活様式への転換を円滑に行えるよう、適切な支援が求められる。
 ・ 定年の引上げや継続雇用の推進などによって高齢者の需要に応じた雇用の機会を確保するとともに、高齢者が、健康で、意欲のあるかぎり、年齢にかかわりなく働ける社会の実現を目指す必要がある。
 ・ 価値観や生活様式が多様化する中で、ボランティア活動や生涯学習を通じて心の豊かさや生きがいを充足させる機会や、能力等を重視した雇用体系などへの対応に必要な新たな知識や技術を習得する機会が求められるとともに、高等教育機関の役割も変化していく。
 ・ 年齢にとらわれない生活様式を維持するには、生涯にわたる健康づくりが重要であり、「二十一世紀における国民健康づくり運動」を推進していく。
 ・ 年齢にとらわれない生活様式を実践している高齢者を「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」などを通じて紹介していく。

3 世代間の公平をめぐる議論と世代間交流
○ 「社会保障構造の在り方について考える有識者会議」では、世代間の公平が一つの論点として議論されたが、世代間の公平については、世代の損得勘定ではなく、すべての世代が「連帯」して高齢社会を共に支えていく姿勢に立って、世代間の対話を進める必要がある。しかし、高齢者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し、高齢者世帯と子供世帯の交流も少ないという状況にあり、高齢者と若い世代との交流を政策的に促進していく必要がある。
○ 「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果」(平成十年)(総務庁)及び「児童・生徒の高齢化問題に関する意識調査結果」(平成十一年)(総務庁)をみると、
 ・ 高齢者は、児童・生徒など若い世代との交流を持つ機会が少ない一方、児童・生徒については、高齢者との交流経験を持っている者は比較的多い。
 ・ 世代間交流により、児童・生徒の高齢者への理解度が増しており、高齢化教育又は児童・生徒の健全育成の観点からも、その一層の促進が求められる。
 ・ 世代間交流への参加意向については、高齢者、特に年齢の高い後期高齢者は低く、児童・生徒、特に年齢の低い小学生が高くなっている。高齢者の関心をいかに高めるのか、小学生の持つ交流を求める気持ちをいかに育んでいくのかが課題である。
 ・ 参加したくない理由についてみると、高齢者、児童・生徒ともに「話が合わない」とする者が多い。他方、参加したい内容についてみると、高齢者、児童・生徒ともに「一緒に楽しめる活動」が最も高く、両世代の意識は共通している。
 ・ 参加したい内容として、他の世代に「教える」ことよりも、他の世代から「教わる」ことを挙げる者が多い。「地域の伝統文化」や「高齢者の特技」について教わりたい児童・生徒の割合は、これらについて教えたい高齢者の割合を上回っている。自信をもって若い世代に語りかけることが重要である。
 ・ 世代間交流を促進するための条件として、高齢者、児童・生徒ともに「交流の機会」を増やすことを挙げている。また、後期高齢者では「お年寄りに配慮した交通機関の整備」が挙げられている。
○ 世代間交流については、@高齢者の社会参加、A青少年の体験活動など様々な目的の下に、地方自治体、民間団体等によって積極的に取り組まれており、国からは教育行政、福祉行政などの立場から必要な支援が行われている。
 ・ 学校が地域社会の拠点となるよう、社会教育施設・福祉施設との連携を進めるとともに、余裕教室を「地域ふれあい交流センター」と位置付け、子供や高齢者による異年齢交流を始めとした大人と子供のふれあい交流プログラムを展開していく。
 ・ 公共交通機関のバリアフリー化の推進や、交通バリアフリーボランティア教室の実施などにより、世代間交流に参加したくともできない高齢者の障壁の除去につながることが期待される。
 ・ 「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」については、次代を担う青少年など若い世代の参加について、配慮していく。

4 すべての世代のための社会
○ 高齢化は、多次元、多分野、多世代にわたる問題であり、個人の生活様式、世代間の関係、社会の成熟度といった多様な問題を含んでいる。このため高齢化問題への取組には様々な概念が使用されてきた。上記で取り上げてきた生活様式や世代間の関係を一言で言えば「忘年」という言葉に集約される。「忘年」とは、本来、「自分の年齢を忘れる」、「年齢の隔たりを忘れる」の意である。
○ 老いや高齢期の価値が見失われ、高齢者の社会的な位置付けが明確でなくなるとともに、高齢者と若い世代との交流を支える慣習が失われつつある。持続的な社会保障、日本の良き伝統や文化など、次代に継承すべきものを継承していくためにも、高齢世代の自立と世代間の連帯を結び付けて高齢化問題に取り組む視点が求められるが、「忘年」は、それにふさわしい概念ではないか。
○ また、「忘年」は、国際高齢者年の主題である「すべての世代のための社会」の理念を我が国において具体化していくための取組の視点としても適切である。
○ 「忘年」によって目指すべき「すべての世代のための社会」とは、
 ・ 年齢にかかわりなく意欲と能力に応じて就業その他の社会参加活動が可能である社会、
 ・ その前提として、各人の能力を伸ばすのに適切な教育・訓練等を必要に応じ受けることができ、加齢による心身の能力の低下があったときにも、尊厳ある暮らしができる社会的安全網が整備されている社会、
 ・ 年齢の差を忘れて親しむ「交流」や「対話」が積極的に行われ、世代間の理解と尊敬が確保される社会
 であり、それを目指して議論を深めていくことが今後の課題である。

第2節 高齢社会対策の動向

1 高齢社会対策関係予算
 一般会計予算における高齢社会対策関係予算は、平成十二年度においては十兆七千四百六十七億円、十三年度においては十一兆二千五百十一億円となっており、各年度の一般会計予算全体に占める割合はそれぞれ一二・六%、一三・六%となっている。
 施策・事業の主な予算額をみると、国民年金及び厚生年金保険(国庫負担分)が五兆二千九百五十四億円、老人医療費の確保が三兆五千二百九十三億円、介護保険制度の着実な実施が一兆四千二百三十七億円などとなっている。

2 高齢社会対策の動き
 平成十二年度に推進された高齢社会対策について、主な法律の制定・改正の動きを挙げれば次のとおりである。
@ 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正
 急速な高齢化の進展等に対応し、高年齢者等の雇用の安定の確保等を図るため、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)の改正が行われた。
 この改正では、事業主は定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置を講ずるように努めなければならないものとするとともに、高年齢者等の再就職の促進に関する措置の充実、シルバー人材センターの業務拡大等を内容としている。
A 雇用保険法等の改正
 急速な高齢化の進展等に対応し、労働者の雇用の安定等を図るため、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)等の改正が行われた。
 この改正では、中高年層を中心とする求職者給付の重点化及び再就職手当の見直しを行うとともに、育児休業給付及び介護休業給付の給付率を引き上げることを内容としている。
B 雇用対策法等の一部を改正する法律案の国会提出
 事業主による離職予定者の再就職支援を促進するとともに、地方公共団体の自主性をいかした地域雇用開発の推進、職業能力の適正な評価のための制度の整備等を内容とする雇用対策法等の一部を改正する法律案を第百五十一回国会に提出した。
C 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の改正
 政府目標である「年間総実労働時間千八百時間の達成・定着」の実現を図るため、平成十三年三月三十一日に廃止期限を迎えた「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」の廃止期限の延長等を内容とする労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正が行われた。
D 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案の国会提出
 子育てをしながら働き続けることのできる環境を整備するため、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案を第百五十一回国会に提出した。
 改正法案は、育児休業及び介護休業を理由とした不利益取扱いの禁止、時間外労働の免除請求権の創設、子の看護のための休暇の努力義務等を内容としている。
E 農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案の国会提出
 被用者年金制度の再編成の一環として、農林漁業団体職員共済年金を厚生年金保険に統合するため、厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案を第百五十一回国会に提出した。
F 確定給付企業年金法案の国会提出
 確定給付型の企業年金について、受給権保護等を図る観点から、労使の自主性を尊重しつつ、統一的な枠組みの下に必要な制度整備を行う確定給付企業年金法案を第百五十一回国会に提出した。
G 確定拠出年金法案の国会提出(継続審議)
 老後における所得の確保にかかる自助努力を支援し、公的年金とあいまって国民の老後の生活の安定と福祉の向上を図るため、確定拠出年金制度を創設することを内容とする確定拠出年金法案を第百五十回国会に再提出した(第百五十一回国会において継続審議)。
H 健康保健法等の改正
 医療保険制度の安定的運営を確保し、併せて給付と負担の公平等を図るため、老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)の一部改正を含む健康保険法等の改正が行われた。
 老人保健法の改正内容は、薬剤一部負担金を廃止すること、一部負担金における定率制の導入、老人医療受給対象者が支払った一部負担金等の患者負担の合計額が著しく高額であるときは、高額医療費を支給すること等である。
I 学校教育法の一部を改正する法律案の国会提出
 小・中・高等学校等において、社会奉仕体験活動等の充実を図ることとすること等を内容とする学校教育法の一部を改正する法律案を第百五十一回国会に提出した。
J 社会教育法の一部を改正する法律案の国会提出
 教育委員会の事務に、家庭教育に関する講座の開設とその奨励、青少年に対して社会奉仕体験活動等の体験活動等の機会を提供する事業の実施とその奨励等の事務を規定すること等を内容とする、社会教育法の一部を改正する法律案を第百五十一回国会に提出した。
K 高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)の成立
 高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成十二年法律第六十八号)が成立した。
 同法は、交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設・大改良及び車両等の新規導入に際し、移動円滑化基準への適合を義務付けるとともに、鉄道駅等の旅客施設を中心とした一定の地区において、市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、周辺の道路、駅前広場等の重点的・一体的なバリアフリー化を進める制度を導入することを内容としている。
L 高齢者の居住の安定確保に関する法律の成立
 高齢者の居住の安定を図るため、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)が成立した。
 同法は、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度の創設、高齢者の入居に適した良好な居住環境が確保された高齢者向けの賃貸住宅の供給に係る計画認定制度及び助成措置の創設、高齢者を対象とする終身建物賃貸借制度の整備等を内容としている。

第1章 高齢化の状況

第1節 高齢者人口の状況

○ 六十五歳以上の高齢者人口は、「人口推計」(総務省)でみると、平成十二年十月一日現在、二千百九十三万人で、総人口(一億二千六百九十二万人)に占める割合(高齢化率)は一七・三%となっている。一年前の十一年十月一日現在と比較すると、高齢者人口は七十四万人増加し、高齢化率は、〇・六ポイント上昇している(第1表参照)。
○ 今後の高齢化の推移を「日本の将来推計人口」(平成九年一月推計、中位推計)(以下「将来推計人口」という。)(国立社会保障・人口問題研究所)でみると、六十五歳以上の高齢者人口及び高齢化率は、平均寿命の伸長や低い出生率を反映して今後も上昇を続け、平成二十七(二〇一五)年には、高齢者人口は三千百八十八万人、高齢化率は二五%を超え、国民の約四人に一人が六十五歳以上の高齢者という本格的な高齢社会が到来するものと見込まれている。
○ 高齢者を前期高齢者(六十五〜七十四歳)と後期高齢者(七十五歳以上)に分けてみると、「人口推計」(総務省)によれば、平成十二年十月一日現在、前期高齢者人口は千二百九十八万人、後期高齢者人口は八百九十五万人となっている。
  平成十一年十月一日現在と比較すると、前期高齢者人口が二・三%の増加であるのに対し、後期高齢者人口は五・三%増と大きな増加となっている。
○ 今後の前期、後期別の高齢者人口の推移を「将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)でみると、前期高齢者人口は平成二十八(二〇一六)年の千六百九十八万人をピークに、その後は減少していくものと見込まれている。一方、後期高齢者人口は増加を続け、三十四(二〇二二)年には前期高齢者人口を上回るものと見込まれており、高齢者数が増加する中で後期高齢者の占める割合は、一層大きなものになるとみられる。

第2節 高齢者世帯の状況

○ 高齢者のいる世帯について、「国民生活基礎調査」(平成十一年)(厚生省)でみると、六十五歳以上の者のいる世帯数は千四百八十八万世帯であり、全世帯(四千四百九十二万世帯)の三三・一%を占めている。
○ 六十五歳以上の者のいる世帯の内訳は、「単独世帯」が二百七十万世帯(一八・二%)、「夫婦のみの世帯」が四百十三万世帯(二七・七%)、「親と未婚の子のみの世帯」が二百二十六万世帯(一五・二%)、「三世代世帯」が四百六万世帯(二七・三%)であり、六十五歳以上の者のいる世帯における三世代世帯の割合が低下し、単独世帯及び夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている(第2図参照)。

第3節 人口高齢化の要因

○ 我が国の平均寿命について、最近の状況を「簡易生命表」(平成十一年)(厚生省)でみると、平成十一(一九九九)年には男性が七七・一〇年、女性は八三・九九年と、それぞれわずかに十年(男性七七・一六年、女性八四・〇一年)を下回っている。
  また、六十五歳時の平均余命は、昭和二十二(一九四七)年には男性が一〇・一六年、女性が一二・二二年となっていたものが、平成十一(一九九九)年には、男性が一七・〇二年、女性が二一・八九年となっており、男性で六・八六年、女性で九・六七年、それぞれ高齢期が長くなっている(第3図参照)。
○ 出生の最近の状況を「人口動態統計」(平成十一年)(厚生省)でみると、平成十一年の合計特殊出生率は一・三四で、過去最低を更新している。
  なお、平成十一年の出生数は百十七万七千六百六十九人で、十年と比べて二万五千四百七十八人減少し、出生率(人口千人当たりの出生数)は、十一年は九・四で、十年(九・六)を下回った(十二年は、推計値で百十八万九千人、九・五)。
○ 我が国では婚姻外での出生が少なく、有配偶女性の出生児数は大きく低下していないことから、近年の出生率低下は、主として初婚年齢の上昇(晩婚化)や結婚しない人の増加(非婚化)によるものと考えられる。
○ 未婚率の推移を「国勢調査」(総務庁)でみると、昭和五十年頃から二十五〜三十九歳の男性及び二十歳代の女性で上昇が際立っている。
  生涯未婚率を「人口統計資料集」(平成十二年)(厚生省)でみると、男女とも上昇傾向にあって、平成七(一九九五)年には男性八・九九%、女性五・一〇%となっており、特に男性の上昇幅が大きくなっている。また、初婚年齢も男女とも上がってきている。

第4節 高齢化と経済

○ 平成十二(二〇〇〇)年の労働力人口総数(十五歳以上労働力人口)は、六千七百六十六万人であったが、そのうち六十歳以上は九百十九万人であり、一三・六%を占めている。労働力人口の高齢化は着実に進んでおり、労働力人口総数が今後減少していくと予想される中で、今後一層進展していくものと見込まれる。
○ 年金・医療・福祉における社会保障給付を「社会保障給付費」(国立社会保障・人口問題研究所)でみると、平成十(一九九八)年度は七十二兆千四百十一億円であり、国民所得に占める割合は、昭和四十五(一九七〇)年度の五・八%から一八・九%に上昇している。
  租税負担、社会保障負担及び財政赤字を合わせた潜在的な国民負担率(対国民所得)は、昭和四十五(一九七〇)年度の二四・九%から平成十三(二〇〇一)年度には四五・三%に上昇すると見込まれている。

第5節 高齢者の経済生活

○ 高齢者世帯の年間所得(平成十年の所得)について、「国民生活基礎調査」(平成十一年)(厚生省)でみると、三百三十五万五千円であり、その内訳をみると、公的年金・恩給が六四・五%を占めている。高齢者世帯の年間所得は、全世帯(六百五十五万二千円)の半分程度に過ぎないが、世帯人員一人当たりでみると、大きな差はみられなくなる。
○ 世帯主の年齢が六十五歳以上の世帯の貯蓄の状況について、「貯蓄動向調査」(平成十二年)(総務省)でみると、一世帯平均の貯蓄現在高は、二千七百三十九万四千円となっており、全世帯(千七百八十一万二千円)の約一・五倍となっている(第4図参照)。
○ 高齢者の就業状況について、「高年齢者就業実態調査」(平成八年)(労働省)でみると、男性の場合、就業者の割合は、六十〜六十四歳で七〇・〇%、六十五〜六十九歳で五三・四%となっている。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(三〇・〇%)のうち六割以上が、六十五〜六十九歳の不就業者(四六・六%)のうち四割近くの者が、それぞれ就業を希望している。
  女性の就業者の割合は、六十〜六十四歳で四一・一%、六十五〜六十九歳で二八・一%となっている。不就業者であっても、六十〜六十四歳の不就業者(五八・九%)のうち三割以上が、六十五〜六十九歳の不就業者(七一・九%)のうち二割以上が、それぞれ就業を希望している。

第6節 高齢者の健康と疾病

○ 健康の維持増進に心がけていることがあるかについて、六十歳以上の者を対象とした「高齢者の健康に関する意識調査」(平成九年)(総務庁)でみると、約四分の三の者が心がけていることがあるとしており、食事・休養・運動といった健康の三大要素に関する項目が上位となっている。
○ 高齢者の健康状態について、「国民生活基礎調査」(平成十年)(厚生省)でみると、六十五歳以上の高齢者の有訴者率(人口千人当たりの病気やけが等で自覚症状のある者の数)は、五三〇・三と半数以上の者が自覚症状を訴えている。
  また、日常生活に影響のある六十五歳以上の高齢者(健康上の問題で、日常生活の動作・外出・仕事・家事・学業・運動・スポーツ等に影響のある者)の割合は、高齢者人口千人当たりで、二〇三・三となっている。
○ 七十歳以上の高齢者の一人当たりの老人医療費は、「老人医療事業年報」(平成十年)(厚生省)によると、約八十万円となっており、国民一人当たり医療費(約二十四万円)の約三・四倍となっている。
○ 六十五歳以上の在宅の「寝たきり」(「全く寝たきり」及び「ほとんど寝たきり」を合わせたもの)の高齢者について、その寝たきりの期間を「国民生活基礎調査」(平成十年)(厚生省)でみると、「三年以上」となっている割合が半数近くになっている。
○ 六十五歳以上の要介護等の高齢者の割合について、六十五歳以上人口千人当たりの数でみると、在宅の要介護者は四八・七、特別養護老人ホームの在所者は一三・一、介護老人保健施設の在所者は八・九となっている。また、病院・一般診療所に六か月以上入院している六十五歳以上の高齢者は、六十五歳以上人口千人当たり一四・三となっている。これらの割合は、年齢階級が上がるにつれて大きく上昇する傾向がある。

第7節 高齢者の活動

○ 六十歳以上の高齢者の社会参加活動に対する意識について、「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、「グループや団体で自主的に行われている活動(地域活動)に、今後とも(又は今後は)、参加したいと思うか」という質問に対し、「参加したい」が四七・九%と約半数となっており、「参加したいが事情があって参加できない」が一四・八%、「参加したくない」が三二・六%となっている。
○ 高齢者の各種サークルや団体への参加状況について、「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成十年)(総務庁)でみると、六十歳以上で何らかのサークルや団体に参加している者は六六・四%となっている。参加している団体では、「町内会・自治会」が三四・六%、「老人クラブ」が二四・八%、「趣味のサークル・団体」が一九・八%となっている。

第8節 高齢者と生活環境

○ 高齢者世帯の住宅について、最低居住水準(「住宅建設五箇年計画」において定めている居住水準の一つ)を満たしているかを「住宅・土地統計調査」(平成十年)(総務庁)でみると、高齢夫婦主世帯(夫婦のいずれかでも六十五歳以上の夫婦一組のみの主世帯)では九九・四%、高齢単身主世帯(六十五歳以上の単身者のみの主世帯)では九六・一%が水準を満たしている。借家に住む世帯では、水準を満たしていない世帯が、高齢夫婦主世帯で二・八%、高齢単身主世帯で一〇・一%となっている。
○ 六十歳以上の高齢者の住宅に対する意識について、「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成十一年)(総務庁)でみると、現在住んでいる住宅に対する不満な点は、「特に不満はない」が七三・六%と七割以上を占めており、不満があるとする者では、「住宅が古くなったりいたんだりしている」が一三・四%と最も多く、そのほかに「住宅が狭い」が六・五%、「住宅の構造や設備が使いにくい」が五・六%となっている。
○ 六十歳以上の高齢者の外出時の障害について、「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成十一年)(総務庁)でみると、「特にない」が六一・六%と六割を超えている。障害があるとする者では、「道路に階段、段差、傾斜があったり、歩道が狭い」が一四・五%と最も多く、外出先でも階段や段差に悩まされている高齢者の姿がうかがえる。
○ 高齢者の交通安全に関して、六十五歳以上の高齢者の交通事故死者数を「交通統計」(平成十二年)(警察庁)でみると、三千百六十六人で交通事故死者全体の三四・九%を占めている。
  交通事故死者数は、平成四年までは十六〜二十四歳の若者が多かったが、五年に高齢者が若者の死者数を上回り、その後も高齢者の割合の増加と若者の割合の低下が続いている。
○ 高齢者と犯罪、災害に関し、六十五歳以上の高齢者の犯罪による被害の状況について、「犯罪統計書」(平成十一年)(警察庁)の刑法犯被害認知件数でみると、平成十一年は十六万五千八百七十三件で、十年と比較すると二万六千八百四件、一九・三%増加しており、被害認知件数全体に占める割合も上昇を続けている。
  また、六十五歳以上の高齢者の火災による死者数(放火自殺者を除く)について、「消防白書」(平成十二年)(消防庁)でみると、平成十一年は六百九十一人であり、全死者数の約半分を占めている。

第2章 高齢社会対策の実施の状況

第1節 高齢社会対策の基本的枠組み

○ 我が国の高齢社会対策の基本的枠組みは、高齢社会対策基本法(平成七年法律第百二十九号)に基づいている。
○ 高齢社会対策会議は、内閣総理大臣を会長とし、委員には閣僚が任命されており、高齢社会対策に関する重要事項の審議等が行われている。
○ 高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり、政府の高齢社会対策の基本的かつ総合的な指針となるものである。
  高齢社会対策大綱は、平成八年七月五日、高齢社会対策会議における案の作成を経て、閣議において決定された。

第2節 高齢社会対策関係予算

○ 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進という広範な施策にわたり、着実な進展をみせている。一般会計予算における関係予算をみると、平成十二年度においては十兆七千四百六十七億円となっている。
  これを各分野別にみると、就業・所得五兆三千三百八十六億円、健康・福祉五兆二千二百九十七億円、学習・社会参加五百十六億円、生活環境四百十八億円、調査研究等の推進八百五十一億円となっている。

第3節 分野別の施策の実施の状況

1 就業・所得
○ 平成十二年四月、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律が改正され、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置について、事業主に対し努力義務が課されるとともに、高年齢者等の再就職の促進に関する措置の充実等が図られることとなった(同年十月施行)。
○ また、平成十二年九月、「高年齢者等職業安定対策基本方針」を策定した。同方針においては、向こう十年程度の間に、原則として希望者全員が、その意欲及び能力に応じて六十五歳まで継続して働くことのできる制度の普及を図るとともに、将来的には、高年齢者が健康で、意欲と能力のある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会の実現を目指すこととしている。
○ 六十五歳までの継続雇用を推進するため、公共職業安定所による指導や、高年齢者等雇用安定センターによる相談・援助、啓発活動を推進している。また、継続雇用定着促進助成金等により事業主等に対する助成を行っている(第5図参照)。
○ 平成十二年度からは、中高年齢者の再就職のため、公共職業安定所において再就職援助計画作成・提出事業主に対する支援や指導を実施するとともに、定年、解雇等によって離職が予定されている高齢者等のうち離職後再就職を希望する者に対し、離職前の再就職援助を事業主が実施することを促進するための助成金を支給している。
○ 事業主による離職予定者の再就職支援を促進するとともに、地方公共団体の自主性をいかした地域雇用開発の推進、職業能力の適正な評価のための制度の整備等を内容とする雇用対策法等の一部を改正する等の法律案を第百五十一回国会に提出した。
○ 平成十二年五月には、雇用保険法等が一部改正され、十三年一月より、育児休業給付及び介護休業給付の給付率を引き上げるとともに、同年四月より、中高年層を中心とする求職者給付の重点化及び再就職手当の見直しを行うこととなった。
○ 平成十二年度から、育児休業中の労働者の労働力を補うための事業主による代替要員の確保等に対し、新たな助成金の支給を開始した。
○ 育児休業及び介護休業を理由とした不利益取扱いの禁止、時間外労働の免除請求権の創設、子の看護のための休暇の努力義務等を内容とする育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案を第百五十一回国会に提出した。
○ 被用者年金制度の再編成の一環として、農林漁業団体職員共済年金を厚生年金保険に統合するため、厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案を第百五十一回国会に提出した。
○ 確定給付型の企業年金について、受給権保護等を図る観点から、労使の自主性を尊重しつつ、統一的な枠組みの下に必要な制度整備を行う確定給付企業年金法案を第百五十一回国会に提出した。
○ 老後における所得の確保にかかる自助努力を支援し、公的年金とあいまって国民の老後の生活の安定と福祉の向上を図るため、確定拠出年金制度を創設することを内容とする確定拠出年金法案を第百五十回国会に再提出した(第百五十一回国会において継続審議)。

2 健康・福祉
○ 生涯にわたる健康づくりについては、国民の健康寿命の延伸、生活の質の向上等を目指し、平成二十二(二〇一〇)年度を目途とした目標等を提示する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を推進している。
○ 市町村が実施主体となり、四十歳以上の者を対象に、老人保健法に基づく健康教育、健康相談、健康診査、機能訓練等の保健事業を総合的かつ着実に推進している。平成十二年度からは、「保健事業第四次計画」に従い、新たに健康度評価事業(ヘルスアセスメント)及び個別健康教育等を実施している。
○ 老人保健や母子保健など住民に身近で利用頻度の高いサービスは、市町村が市町村保健センター(平成十二年十二月末現在千六百六十一か所)等を拠点として一元的に提供し、専門的・技術的サービスは、保健所(十二年四月一日現在五百九十四か所)が提供している。
○ 高齢者の保健・医療・福祉サービスについては、平成十一年十二月に策定された「今後五か年間の高齢者保健福祉施策の方向(ゴールドプラン21)」に基づいて、その充実を図っている。
○ 平成十二年度からは、介護予防・生活支援事業として、市町村が地域の実情に応じて高齢者等の生活支援、在宅高齢者の介護予防・生きがい活動支援等を選択して実施する場合に補助を行うとともに、家族介護支援対策として、市町村が高齢者を介護する家族等に対し家族介護教室の開催、家族介護用品の支給等を選択して実施する場合に補助を行っている。
○ 平成十二年度からは、訪問介護員の供給が困難な離島、山間、へき地等における訪問介護員養成事業等を実施している。
○ 平成十二年十一月、老人に係る薬剤一部負担の廃止、老人に係る一部負担金における定率制の導入等を内容とする健康保険法等の一部改正が行われた(十三年一月施行)。
○ 介護保険法に基づいて、平成十二年四月から介護保険制度が施行されている。なお、介護保険制度を円滑に実施するため、十二年四月から半年間は高齢者の保険料を徴収せず、その後一年間は経過的に保険料を軽減することができることとする等の特別措置を講じている。
○ 少子化への対応については、「少子化対策推進基本方針」及び「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について(新エンゼルプラン)」に基づき、子育て支援施策を総合的に推進している。
○ 児童手当については、平成十二年六月から、当分の間の措置として、児童手当の支給対象年齢が現行の三歳未満から義務教育就学前に拡大されている。

3 学習・社会参加
○ 地域における生涯学習の推進体制の整備については、生涯学習担当部局の設置(平成十二年四月現在全都道府県及び七百四十二市町村で設置)、都道府県生涯学習審議会の設置(十二年四月現在三十六都道府県で設置)、生涯学習推進会議の設置(十二年四月現在全都道府県及び千九百九十四市町村で設置)等を促進している。
○ 生涯学習のニーズの高まりに対応するため、大学においては、科目等履修生制度の実施、夜間大学院の設置、昼夜開講制の実施、社会人特別選抜の実施などを行い、履修形態の柔軟化等を図って、社会人の受入れを促進している。
○ 放送大学においては、テレビ・ラジオの放送を利用して大学教育の機会を提供している。また、放送授業を視聴するための学習センターを全都道府県において整備している(平成十二年度現在四十九か所)。
○ 平成十二年度から、学校施設をコミュニティの拠点として整備していくため、地方公共団体などに「コミュニティの拠点としての学校施設整備に関するパイロット・モデル研究」の委嘱を行っている。また、専修学校において、高度職業人を育成するため、社会人等を対象とした産学連携による教育プログラムの開発等を行っている。
○ 公民館を始め、図書館、博物館、婦人教育施設等の社会教育施設や教育委員会において、青少年から高齢者まで幅広い年齢の人々を対象とした多くの学習機会が提供されている。この中には、高齢社会について理解を促進するためのものや高齢者を直接の対象とする学級・講座も開設されている。
○ 高齢者自身が社会における役割を見出し、生きがいを持って積極的に社会に参加できるよう、各種社会環境の条件整備を図るため、地域において、ボランティア活動などを始めとする社会参加活動を総合的に実施している老人クラブに対し助成を行い、その振興を図っている。
○ 中高年層の海外技術協力の一環として、豊富な知識、経験、技術を有し、かつ途上国の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年を海外に派遣するシニア海外ボランティア事業(平成十一年度実績八十七名)等を行っている。
○ ボランティア活動に対する興味・関心は年々高まっており、平成十一年四月におけるボランティア活動者総数は六百九十五万八千人、ボランティアグループ数は九万七百グループに達している。

4 生活環境
○ 高齢者の居住の安定を図るため、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度の創設、高齢者の入居に適した良好な居住環境が確保された高齢者向けの賃貸住宅の供給に係る計画認定制度及び助成措置の創設、高齢者を対象とする終身建物賃貸借制度の整備等を内容とする高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成十三年法律第二十六号)が成立した。
○ 平成十二年度には、住宅の品質確保の促進、住宅市場の条件整備等を図るため、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度の運用が開始され、高齢者等への配慮が性能表示事項に位置付けられた。
○ 公営住宅において、老人世帯向公営住宅を供給するとともに、五十歳以上の者の単身入居を認めている。また、公団賃貸住宅においては、高齢者同居世帯等に対して、募集時に当選率を優遇するとともに、一階又はエレベーター停止階への住宅変更を認めるなどの措置を行っている。
○ 住宅金融公庫においては、高齢者に対応した構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対して割増貸付けを行うとともに、ホームエレベーターの設置や住宅リフォーム時において高齢者用の設備設置を行う場合に割増貸付けを実施している。
○ シルバーハウジング・プロジェクト事業として、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による日常の生活指導や安否確認などのサービスが受けられ、かつ、高齢者の生活特性に配慮した設備・仕様を備えた公共賃貸住宅の供給を推進している。
  また、民間の土地所有者等が供給する、高齢者向け優良賃貸住宅についても、生活援助員による生活支援サービスに対し補助を行っている。
○ 平成十二年五月、高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)が成立した(十二年十一月施行)。
  同法は、交通事業者等に対して、鉄道駅等の旅客施設の新設・大改良及び車両等の新規導入に際し、移動円滑化基準への適合を義務付けるとともに、鉄道駅等の旅客施設を中心とした一定の地区において、市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、周辺の道路、駅前広場等の重点的・一体的なバリアフリー化を進める制度を導入することを内容としている。
○ 交通バリアフリー法に基づき「移動の円滑化の促進に関する基本方針」が策定され、これに沿って、バリアフリー化を総合的かつ計画的に推進している(第2表参照)。
○ 駅・空港等の公共交通ターミナルにおけるエレベーター・エスカレーターの設置等の高齢者の利用に配慮した施設の整備、ノンステップバス等の車両の導入などを推進している。
  平成十二年度からは、乗継等情報提供システム及び共通乗車カードシステムの整備、鉄道の相互乗入れ、直通化などの乗継円滑化事業に対し補助を行うとともに、低床型路面電車の導入、鉄道駅のバリアフリー施設整備に関する税制上の特例措置を講じている。
○ 高齢者等が安全、快適に、また不便なく歩行できるよう、各種施設の整備等を推進しているほか、良好な歩行空間の形成を行っている。
  平成十二年度からは、駅、商店街、福祉施設の周辺等において、バリアフリーの歩行空間をネットワークとして総合的に整備する歩行空間ネットワーク総合整備事業を実施している。
○ 高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)に基づいて認定を受けた建築物に対しては、補助、税制上の特例措置及び融資を実施している。
○ 市街地再開発事業、土地区画整理事業等の面的な都市整備と併せて、社会福祉施設等の適正かつ計画的な立地を推進している。また、福祉・医療施設と一体となった公園の整備を推進している。
○ 第六次交通安全基本計画等に基づいて、高齢者への交通安全意識の普及徹底、高齢者等が安心して暮らせる道路環境づくり、高齢者の安全運転対策等を実施した。
○ 高齢者を犯罪や事故から保護するため、交番、駐在所の警察官を中心に、巡回連絡等を通じて高齢者宅を訪問するほか、痴呆症等によってはいかいする高齢者を発見、保護する体制づくりを地方公共団体等と協力して推進している。

5 調査研究等の推進
○ 痴呆疾患、骨粗しょう症等の高齢者に特有の疾病については、長寿科学総合研究事業等において調査研究が行われており、平成十二年度までに、免疫不全症の治療法開発の進展、アルツハイマー病の早期確定診断法の開発、骨粗しょう症治療のガイドラインの作成等に関する研究が推進されている。
○ また、ヒトゲノム解析による五大疾患(痴呆、がん、糖尿病、高血圧、気管支喘息)の克服及び自己修復能力を用いた再生医療の実現のための研究を行っている。
○ 福祉機器に関しては、使用者ニーズに対応する新しい技術の可能性(シーズ)に関する調査を行っている。
○ 情報通信等の新たな技術の活用は、高齢者の生活の様々な局面に利便をもたらすものと考えられることから、ハード及びソフトの両面において研究開発を推進している。
○ 長寿科学研究を推進するため、国立療養所中部病院に設置された長寿医療研究センターを中心に、老人性痴呆症、寝たきりの予防、支援機器の開発に関する研究等に取り組んでいるほか、長寿科学総合研究事業等において、自然科学から人文社会科学に至るまでの幅広い分野の研究を行っている。
○ 科学技術の進歩は、研究開発に携わる人々の能力や創造力に依存する面が多く、科学技術の振興を図るため、人材の養成、確保、資質の向上及び流動化に努めている。

平成十三年度において講じようとする高齢社会対策

第1 平成十三年度の高齢社会対策

○ 高齢社会対策関係予算
 高齢社会対策は、就業・所得、健康・福祉、学習・社会参加、生活環境、調査研究等の推進の各分野にわたり着実に実施する。
 一般会計予算における平成十三年度の高齢社会対策の関係予算は、十一兆二千五百十一億円であり、各分野別では、就業・所得五兆四千八百八十一億円、健康・福祉五兆五千八百五十八億円、学習・社会参加三百六十五億円、生活環境三百八十四億円、調査研究等の推進千二十三億円となっている。

第2 分野別の高齢社会対策

1 就業・所得
○ 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて、有識者会議を開催し、国民的合意の形成を図るとともに、有識者会議の下、研究会を開催し、実務的な検討を進める。
○ 老後における所得確保を図るため、確定給付型の企業年金に加え、新たな選択肢として、自己責任を原則とする確定拠出年金を導入する。

2 健康・福祉
○ 身体拘束の廃止に向けての幅広い取組(身体拘束ゼロ作戦)など、介護サービスの質の向上を図るための取組を推進する。
○ 平成十三年六月から、児童手当について、扶養する親等の所得制限を大幅に緩和し、支給対象児童の拡充を図る。

3 学習・社会参加
○ 学校が地域のコミュニティの拠点となるよう、社会教育施設・福祉施設との連携を推進するとともに、余裕教室を「地域ふれあい交流センター」と位置付け、高齢者と子供のふれあい交流プログラムを展開する。
○ 高齢者が日常生活において適切に情報を得ることができるよう、郵便局や公民館の施設等において開催する高齢者等を対象としたパソコン教室の全国展開を推進する。
○ 平成十三年は「ボランティア国際年」であることを受けて、広報、啓発活動を行う。
○ 交通バリアフリーボランティアの活動方策の検討を行うとともに、国民一般が交通バリアフリーについての理解を深め、高齢者等への介助の方法を学ぶことができるバリアフリー教室を実施する。

4 生活環境
○ 高齢者の円滑な入居を促進するための賃貸住宅の登録制度の創設、高齢者向けの賃貸住宅の供給の促進、終身建物賃貸借制度の整備等により、高齢者の居住の安定の確保を図る。
○ 低床型路面電車を地方中核都市における中心的な公共交通機関として整備する。
○ 市町村が行う高齢者のはいかいを探知できるシステムや在宅の高齢者の安否の確認が容易にできる緊急通報システムの構築などへの補助を行う。
○ 高齢者福祉施策との連携を図りつつ、農村における公共施設等のバリアフリー化や在宅福祉を可能とする情報基盤の整備などを行う。

5 調査研究等の推進
○ IT(情報通信技術)の活用により、高齢者等と健常者との間の社会生活・仕事上の格差や情報格差を解消するため、高齢者等にとって使いやすいITの開発・普及を支援する。
○ 高齢者痴呆介護研究センターを通じて、痴呆介護の質的向上・専門職の養成等を行う。






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家計総世帯集計・単身世帯収支調査結果


―平成十三年一〜三月期平均及び平成十二年度平均速報―


総 務 省


T 平成十三年一〜三月期平均

1 全世帯の家計
 家計総世帯の全世帯の消費支出は、一人当たり十万二千百九十五円となり、前年同期に比べ、名目〇・四%の減少、実質〇・二%の減少となった。

2 勤労者世帯の家計
 家計総世帯の勤労者世帯の実収入は、実質減少となった。
 平均消費性向は、前年同期を上回った。
 消費支出は、実質増加となった。

3 勤労者以外の世帯の家計
 家計総世帯の勤労者以外の世帯の消費支出は、一人当たり九万七千六百六十二円となり、前年同期に比べ、名目一・〇%の減少、実質〇・八%の減少となった。

4 財・サービス区分別の支出
 半耐久財、非耐久財は実質減少したものの、耐久財が実質増加したことから、財(商品)全体では、実質一・四%の増加となった。
 サービスは、実質一・四%の減少となった。

U 平成十二年度平均

全世帯の家計
 平成十二年度の家計総世帯の全世帯一か月平均消費支出は、一世帯当たり二十八万百七十七円となり、二人以上の世帯の一か月平均消費支出(三十一万七千九百三円)の〇・八八倍、単身世帯の一か月平均消費支出(十七万六千六百七十八円)の一・五九倍となった。














 地上テレビジョン放送のデジタル化


 平成十二年十二月一日、日本で初めて衛星放送を利用した「BSデジタル放送」が開局されました。従来のテレビにはない高音質、高画質を可能にし、視聴者がドラマやクイズ番組に参加できる双方向のテレビ番組など、テレビの新たな可能性を切り開くメディアとして、社会の熱い関心を集めています。
 平成十五年には、このデジタル放送を地上波でも楽しむことができるようになります。
     *     *     *     
 総務省では、すでに始まっているCS放送(通信衛星を使った放送)、BSデジタル放送に続いて、皆さんの一番身近な地上テレビジョン放送のデジタル化を推進しています。
 平成十五年の開設が実現すれば、地上波でもハイビジョンやCD並みの美しい映像や音声を体験することができ、デジタル放送の特徴である「視聴者参加型テレビ番組」を、より身近に楽しむことができるようになります。
 また、地上デジタル放送ならではの地域に密着した番組も充実していきます。
 視聴者それぞれの楽しみ方を実現する地上デジタル放送。平成十五年のスタートにぜひご期待ください。
*「地上デジタルテレビジョン放送」を実現させるためには、デジタル放送用の周波数が必要となります。しかし、現在の地上テレビジョン放送も並行しなければならず、そのためにテレビ放送用の周波数は、一時的に過密状態になります。これは、デジタル放送が十分に普及して、現在の地上テレビジョン放送が終了するまでの期間には避けられない現象です。
 このため、一部の地域にお住まいの皆さんには、テレビチャンネルの再設定や、アンテナを取り替えていただく場合があります。これらの情報については逐次皆さんにお知らせしていく予定です。
(総務省)





    <7月18日号の主な予定>

 ▽環境白書のあらまし………………………環 境 省 

 ▽個人企業営業状況調査結果の概要………総 務 省 

 ▽家計収支(四月分)………………………総 務 省 




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