官報資料版 平成13年7月25日




                  ▽首都圏白書のあらまし……………国土交通省

                  ▽交通安全白書のあらまし…………内 閣 府

                  ▽労働力調査(五月)………………総 務 省

                  ▽月例経済報告(七月報告)………内 閣 府











首都圏白書のあらまし


―平成十二年度首都圏整備に関する年次報告―


国土交通省


 「首都圏整備に関する年次報告」は、首都圏整備法(昭和三十一年法律第八十三号)第三十条の二の規定に基づき、首都圏整備計画の策定及び実施に関する状況について、報告を行うものである。

全体構成

序章 トピックで見る首都圏この一年
第1章 首都圏整備をめぐる最近の動向
 第1節 産業に関する最近の動向
  〜首都圏におけるソフト系IT産業の動向〜
 第2節 人口・居住に関する最近の動向
  〜東京都心部への人口の回帰現象〜
 第3節 国際化に関する最近の動向
  〜外国人ビジネスマンの暮らしから見た首都圏〜
 第4節 社会基盤整備に関する最近の動向
  〜北関東自動車道や常陸那珂港の整備に伴う北関東地域の新たな展開の萌芽〜
第2章 首都圏の現況
 第1節 人口の状況
 第2節 我が国の活力創出に資する自由な活動の場の状況
 第3節 個人主体の多様な活動の展開
 第4節 環境との共生
 第5節 安全・快適で質の高い生活環境の整備
 第6節 将来に引き継ぐ社会資本の整備
第3章 首都圏整備の推進
 第1節 首都圏整備計画の推進
 第2節 首都圏整備計画に基づく主要な事業の実施状況

序章 トピックで見る首都圏この一年

☆さいたま新都心街びらき<平成十二年五月五日>
 平成十二年五月五日、さいたまスーパーアリーナにおいて、「さいたま新都心街びらき記念式典」が開催され、関連イベントを含め、約十七万人の人出でにぎわった。
 さいたま新都心には、閣議決定に則り進められてきた九省庁十七機関の国の行政機関の集団的移転が行われたほか、土地区画整理事業等による都市基盤整備、首都高速道路高速大宮線やJR「さいたま新都心駅」といった交通施設、「けやき広場」、「さいたまスーパーアリーナ」といった中核的施設が整備され、埼玉中枢都市圏業務核都市の中心的役割を果たす新しい街が誕生した。
☆都営地下鉄大江戸線全線開業<平成十二年十二月十二日>
 都営地下鉄として既に開業していた「光が丘〜国立競技場」に加えて、平成十二年十二月十二日には、都庁前から、国立競技場、六本木、月島、蔵前、上野御徒町、飯田橋等を経て都庁前に戻る環状区間が開業し、都営地下鉄大江戸線が全線開業した。
 この環状部の二十八駅のうち両国等の二十一駅で他線との乗換えが可能になるとともに、山手線内のほぼ全域が駅から徒歩十分圏となる等、東京都区部の新たな交通ネットワークとして、利便性の向上に大いに寄与している。
 このほか、
 ・「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の成立<平成十二年五月十九日>
 ・常陸那珂港における外貿コンテナ航路の開設<平成十二年八月三日>
 ・国勢調査の実施<平成十二年十月一日>
 ・東京国際空港(羽田空港)の国際チャーター便就航<平成十三年二月十六日>
 ・ETC(ノンストップ自動料金収受システム)の本格運用開始<平成十三年三月三十日>
 ・国際研究交流大学村の竣工<平成十三年三月>
等のトピックを紹介している。

第1章 首都圏整備をめぐる最近の動向

1 産業に関する最近の動向
 〜首都圏におけるソフト系IT産業の動向〜

(1) ソフト系IT産業の集積状況
 ソフト系IT産業(*)の事業所は、首都圏に一万五千五百二十三存在し、全国の半数近くを占めている。このうち、東京二十三区には九千二百六十六と特に立地が多く、秋葉原・神田、新宿、渋谷・恵比寿等のターミナル駅周辺に著しい集積が見られる。
  (*)ソフト系IT産業:「ソフトウェア業」、「情報処理業」及び「インターネット」をいう。

(2) ソフト系IT産業の事業所の姿
 首都圏に立地するソフト系IT産業の事業所の姿を見ると、以下のとおりである。
  @創業時期では、一九九〇年以降に創業した企業が過半を占めており、創業後間もない企業が多い。
  A事業所の規模では、従業員数十九人以下の事業所が六割以上を、いわゆる中小企業に当たる従業員百人以下の事業所が九割を占めている。
  B事業所内の年齢構成では、従業員の平均年齢が二十五〜三十四歳の事業所が約七割を占め、また、経営者の年齢が五十九歳以下の事業所が約八割(四十九歳以下の事業所が四割以上)を占めている。

(3) ソフト系IT産業の事業所の立地要因
 首都圏に立地するソフト系IT産業の事業所にアンケート調査した結果、事業所の立地を決定する際に考慮した要因としては、「賃料の妥当性」を九割以上の事業所が挙げており、ついで「鉄道によるアクセスの良さ」、「営業先企業へのアクセスの良さ」をそれぞれ八割以上の事業所が挙げている。
 一方、考慮しなかった要因としては、「自治体の誘致策」、「資金調達が容易」、「大学・研究機関との近接性」、「余暇・娯楽施設の充実」、「若年層の文化に接しやすい」を、それぞれ八割以上の事業所が挙げている(第1図参照)。

2 人口・居住に関する最近の動向
 〜東京都心部への人口の回帰現象〜

(1) 増加に転じた東京都の人口
 東京都の人口は、平成十三年一月一日現在一千二百万人を突破(一千二百七万三千四百六人)し、過去最高となった。特に、都心三区の人口を見ると、昭和四十年から減少を続けていたが、平成九年より五年連続で増加している。
 平成九年以降平成十三年三月までに都心八区(*)の分譲マンションへ入居した人を対象にアンケート調査を行った結果、
  @転居前の居住地については、東京二十三区内からの転居が七〇%近くを占める一方、近隣三県からの転居が約二〇%を占めている(第1表参照)。
  A転居の動機・理由については、「転勤」等の転居者自身の選択によらない動機が一〇%未満と少ない一方、「通勤・通学が便利」等の自発的な動機が多い(第2表参照)。
  (*)都心八区:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区及び豊島区

(2) 新築分譲マンション供給の動向
 平成十二年、東京圏における新築分譲マンションの供給戸数は、過去最高だった平成十一年を約一割上回る九万五千六百三十五戸になった。
 マンション購入者の距離帯別分布を見ると、東京都心から二十キロメートル圏内の割合は平成九年度以降増加しており、平成十二年度では全体の五六%を占めている。
 東京圏のマンションへの入居者像について見ると、購入者の年齢では、五十歳以上の人の割合が全国に比べて高く、その傾向は都心に近づくにつれて顕著であり、年々増加する傾向にある(平成十一年の購入者に占める五十歳以上の人の割合:都心八区一六・八%、二十三区一五・一%、東京都一五・一%、全国一四・二%)。
 また、全国に比べ単身者の割合が高く、特に単身女性の割合が高い。これは、女性の購入物件は、男性の購入物件に比べ、床面積が狭く価額が高い(単身女性:三千七百三十二万円 六二・九平方メートル、単身男性:三千五百八十一万円 六七・五平方メートル)ことから、女性が床面積・価額よりも都心への立地を重視してマンションを選択するためと考えられる(第2図第3図参照)。

3 国際化に関する最近の動向
 〜外国人ビジネスマンの暮らしから見た首都圏〜

(1) 外国人ビジネスマンの暮らしに関する満足度
 日本における外国人居住者数は毎年増加し、首都圏の一九九九年末の外国人登録者数は六十三万人で、一九九〇年の約一・六倍となっている。このうち、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の登録者数は五十三万人で、首都圏の約八割を占めている。
 外資系企業に勤める外国人に対し、東京圏での生活についてアンケート調査を行い、赴任前に重視していた事項を現状と比較した結果、赴任前の重視度は、ビジネス環境が飛び抜けて高く、教育・居住環境が続き、逆に医療は重視度が低い。また、現状の満足度では、ビジネス環境が高く、医療が低い。

(2) ビジネス環境に関する満足度
 ビジネス環境全般については、非常に満足度が高いが、空港へのアクセスについては半数近くが、オフィスの賃料については四割近くが不満としている(第4図参照)。

(3) 居住環境に関する満足度
 居住環境については、通勤の利便性や治安に関し満足度が高い一方、スポーツ施設や文化施設が身近にないことに不満が多い。また、自然環境が不足していることにも三割以上が不満としている。
 居住環境全般については、一定の満足度が示されているが、これは、今回の調査の回答者のうち、経営・管理職層が約七割を占めており、会社の家賃負担で、高級マンション等に居住する者の割合が高い点に留意する必要がある(第5図参照)。

4 社会基盤整備に関する最近の動向
 〜北関東自動車道や常陸那珂港の整備に伴う北関東地域の新たな展開の萌芽〜

(1) 京浜港から常陸那珂港への転換の動き
 常陸那珂港は、最新鋭の国際海上コンテナターミナルを有する中核的な国際港湾として順次整備が進められており、平成十三年三月末現在で国内二航路、国外五航路が開設されている。
 北関東自動車道は、平成十一年度から一部区間で供用開始され、常陸那珂港とも東水戸道路等を介して直結している。
 現在首都圏における輸出入貨物のほとんどは京浜港に集中しており、港湾での待ち時間の発生、道路の渋滞による輸送効率の低下や陸上輸送のコスト高が課題となっている。このため、従来京浜港で扱っていた貨物を常陸那珂港にシフトする動きが活発化しつつある。また、こうしたシフトがCOやNOの削減といった環境の観点から見ても評価される例も見られる。

(2) 北関東自動車道と常陸那珂港の連携
 栃木県、群馬県、茨城県の企業のうち、北関東自動車と常陸那珂港が本格供用された場合に、これらをセットで利用する意向を有している企業の割合を見ると、栃木・群馬両県の割合は地元茨城県とほぼ同水準となっている(第6図参照)。
 このように、常陸那珂港への物流のシフトは、北関東自動車道との連携により、北関東地域一帯に拡がり、北関東から東京を経由しない物流ルートの形成にとって、相乗効果を発揮するものと考えられる。
 具体的な事例で見ても、北関東自動車道の沿線や常陸那珂港の背後地において、工業団地・リサーチパーク、物流拠点の整備が進められる等、北関東自動車道や常陸那珂港の本格供用を見込んだ動きが既に見られている。

第2章 首都圏の現況

1 業務機能の状況
 〜優良賃貸オフィスビルに対する需要が旺盛に〜

 東京都区部における賃貸オフィスビルの空室率は、平成十一年十二月以降減少傾向にあり、平成十二年十二月には三%台の低水準になった。
 また、立地が都心に近く、設備が充実し、かつ延床面積が大規模な優良オフィスビル(*)の空室率は、平成十年以降減少傾向にあり、平成十二年には一%以下と著しく低い状況となった。これは、近年、外資系企業やIT関連産業が優良オフィスビルに対し旺盛な需要を示していることが大きな要因であり、この旺盛な需要が東京都区部におけるオフィスビル全体の空室率の減少に大きく寄与していると考えられる。
  (*)優良オフィスビル:以下の条件を満たすオフィスビル
  ・都心五区(千代田区、中央区、港区、新宿区及び渋谷区)に立地
  ・延床面積が一万坪以上
  ・昭和五十七年以降に竣工
  ・床配線及び電気容量が、IT化に対応等
  資料:(株)生駒データサービスシステム資料により国土交通省国土計画局作成

2 安全な暮らしの実現
 〜木造密集市街地の解消に向けた取組〜

 震災等の災害時に多大な被害が発生するおそれのある木造密集市街地は、東京都の調査によると、JR山手線周辺や中央線一帯を中心に、都内で約二万四千ヘクタール存在するとしており、このうち約五千八百ヘクタールが、特に災害時の危険性が高く早急に整備すべき地域として指定されている。
 木造密集市街地については、市街地再開発事業等の手法により一体的な市街地整備が行われているほか、密集住宅市街地整備促進事業という事業手法により、老朽木造住宅の段階的な建替えと狭隘道路の拡幅等が進められている。
 さらに、世田谷区・中野区内の三地区においては、都市計画上の手法(防災街区整備地区計画)を用い、地域の特性に応じた市街地の面的な更新が進められている。
 このほか、人口、産業、住民参加、環境との共生、社会基盤の整備等に関する首都圏の状況について記述している(第7図参照)。

第3章 首都圏整備の推進

1 首都圏整備計画の推進

 第五次首都圏基本計画(平成十一年三月策定)を推進し、「分散型ネットワーク構造」の形成を図るため、広域的な連携・交流の要となる業務核都市の育成整備を図った。また、首都圏整備計画の円滑な実施を図り、近郊整備地帯及び都市開発区域の社会基盤の整備を引き続き促進するため、平成十二年度末に適用期限を迎えたこれらの区域の整備のための国の財政上の特別措置について、五年間の延長が図られた。

2 東京圏のリノベーションプログラムの策定

 二十一世紀の国土のグランドデザイン(平成十年三月策定)及び第五次首都圏基本計画に示された「大都市のリノベーション」の実現に向け、五十年後を見据えた長期的展望のもと、地域構造の抜本的再編の方向を描いた「東京圏のリノベーションプログラム」が平成十二年十二月に策定された。

3 国の行政機関等の移転の推進

 平成十二年度においては、埼玉県大宮・与野・浦和地区(さいたま新都心地区)への九省庁十七機関(移転当時は十省庁十七機関)の地方支分部局等の集団的移転が完了したほか、東京外国語大学が府中市へ移転した。この結果、平成十二年度末現在で、四十三機関十一部隊等が移転を完了した。

4 筑波研究学園都市の整備

 平成十二年度においては、国等の試験研究・教育機関の施設整備事業として、つくばWAN(Wide Area Network)の整備に着手したほか、公共公益的施設の整備の進捗を図った。

5 首都機能移転に関する検討

 平成十一年十二月の国会等移転審議会の答申を踏まえ、国会において、大局的な観点から、首都機能移転について検討が進められている。

6 「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の成立

 通常利用されることのない「大深度地下」について、公共の利益となる事業の円滑な実施を図り、都市部の土地の有効活用を目的とする「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が平成十二年五月十九日に成立、平成十三年四月一日に施行された。
 本制度の概要を紹介するとともに、諸外国における地下利用の先進事例として、米国ボストンにおける地下の活用事例を紹介している。


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交通安全白書のあらまし


交通事故の状況及び交通安全施策の現況


内 閣 府


 交通安全白書は、交通安全対策基本法(昭和四十五年法律第百十号)第十三条に基づき、毎年政府が国会に報告しているものである。
 今回の白書(平成十三年版交通安全白書)は昭和四十六年に第一回の報告がなされて以来三十一回目のものであり、その構成は次のとおりとなっている。
 本冊の「平成十二年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに、近年の交通事故の状況と平成十二年度中の交通安全施策の実施状況を記述するとともに、本年三月十六日に作成された交通安全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱である第七次交通安全基本計画について、その背景と重点施策を中心に分かりやすく説明している。
 分冊の「平成十三年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」では、陸上(道路及び鉄軌道)、海上及び航空の各交通分野ごとに、平成十三年度の交通安全施策の実施計画について記述している。
 本冊の概要は次のとおりである。

<第1編> 陸上交通

<第1部> 道路交通

<第1章> 道路交通事故の動向と交通安全対策の今後の方向

道路交通事故の長期的推移

 道路交通事故死者数は、昭和四十五年に史上最悪の一万六千七百六十五人を記録した。このため、同年に交通安全対策基本法が制定され、同法に基づき四十六年度以降、交通安全基本計画を五年ごとに策定し、交通安全対策を総合的・計画的に推進してきた。
 交通事故死者数は、四十六年以降着実に減少を続け、五十四年には八千四百六十六人にまで減少した。しかし、その後増勢に転じ、五十七年以降九千人台を続けた後、六十三年から八年連続して一万人を超えていたが、平成七年を境に減少傾向となり、八年には一万人を下回った。

平成十二年中の道路交通事故の状況

1 概況
 平成十二年の交通事故の発生件数は九十三万一千九百三十四件で、これによる死者数は九千六十六人、死傷者数は百十六万四千七百六十三人であった。
 死者数は四年連続して一万人を下回ったものの、五年ぶりに増加に転じた。また、事故発生件数は八年連続して最悪の記録を更新し、さらに、死傷者数は三年連続して最悪の記録を更新した(第1図参照)。

2 年齢層別交通事故死者数及び負傷者数
 死者数は、八年連続で六十五歳以上の高齢者が最も多く(三千百六十六人、三四・九%)、次に十六〜二十四歳の若者となっており(一千五百六十三人、一七・二%)、この二つの年齢層で全交通事故死者数の五二・一%を占めている(第2図参照)。
 負傷者数は、十六〜二十四歳の若者(二十六万六千七百二十八人)が最も多く、全負傷者数の二三・一%を占めている。また、前年と比較してすべての年齢層で増加している。

3 状態別交通事故死者数及び負傷者数
 死者数は、自動車乗車中が三千九百五十三人と最も多く、全死者数の四三・六%を占めている。
 負傷者数は、自動車乗車中が七十万八千六百四十五人と最も多く、全負傷者数の六一・三%を占めている。

4 シートベルト着用の有無別死者数
 自動車乗車中の死傷者についてシートベルト着用者率(死傷者数中のシートベルトを着用している者の割合)をみると、平成五年以降上昇しており、十二年では八四・一%となっている。
 着用者の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)は、非着用者の致死率の約九分の一程度である(第3図参照)。

道路交通安全対策の今後の方向

1 道路交通を取り巻く状況の展望
 道路交通を取り巻く状況は、以下のように現状よりも更に厳しいものになることが予想される。
 @ 運転免許保有者数は、年々増加しており、平成十二年十二月末現在七千四百六十九万人と、免許取得が可能な国民の一・四人に一人が保有している。また、平成十七年の運転免許保有者数は八千百二十二万人、うち、六十五歳以上の高齢者は一千八十八万人に達するものと推定される。
 A 平成十二年の自動車保有台数は七千五百八十六万台となっている。特に乗用車の増加が著しく、十二年には四千二百五十四万台となっている。
 B 自動車走行台キロは、昭和四十九年に石油危機の影響等により一時的に減少した以外は一貫して増加しており、平成十年には六千百三十九億台キロとなっている。
 C 我が国の人口の高齢化が急速に進み、総人口に占める六十五歳以上の高齢者の割合は、平成十七年には一九・六%になると推計されており、高齢運転者数についても増加していくものと考えられる。

2 道路交通事故の見通し
 「交通事故の長期予測及び効果的な交通安全計画策定に関する調査研究」等によると、今後の死者数は次のように予測される。
 @ 平成十年までの実績を基に予測すると、新たな対策を実施しない場合、平成十七年の道路交通事故死者数は九千〜一万八百人程度になる(第4図参照)。
 A 平成十一年及び十二年の実際の交通事故死者数を踏まえると、今後高位に推移する蓋然性が高い。
 B 年齢層別にみると、七十五歳以上の後期高齢者と二十五〜六十四歳の年齢層の死者数が大きく増加する。
 C 状態別では、自動車乗車中の死者数が最も大きく、また、今後は、歩行中、自転車乗用中の死者数が増加する。

3 道路交通安全対策の今後の方向
 道路交通を取り巻く環境は今後もますます厳しくなるものと予想され、それに伴い、交通事故の状況もより一層憂慮される事態となることが懸念される。このような状況に対処するため、政府は、平成十三年三月十六日に中央交通安全対策会議を開催し、十三年度から十七年度の五年間において国及び地方公共団体が実施すべき交通安全施策の大綱を定めた第七次交通安全基本計画を作成したところである。
 この交通安全基本計画においては、各般の交通安全対策を充実し、関係機関・団体の緊密な連携の下に、総合的かつ計画的に推進することにより、自動車保有台数当たりの死傷者数を可能な限り減少させるとともに、平成十七年までに、年間の二十四時間死者数を交通安全対策基本法施行以降の最低であった昭和五十四年の八千四百六十六人以下とすることを目指すこととしている。
 以下、第七次交通安全基本計画における施策のうち、特に重点となる施策について、その概要を紹介していくこととする。
(1) 高齢者の交通安全対策の推進
 六十五歳以上の高齢者の交通事故の状況をみると、死者数は平成五年に若者(十六〜二十四歳)の死者数を上回り、その後ほぼ横ばいで推移しており、死者数全体に占める割合は年々増加しているなど深刻な状態となっている。また、高齢化の進行に伴い、高齢者の交通事故は今後とも増加することが懸念されている。
 このため、第七次交通安全基本計画においては、高齢者の交通安全対策の大幅な充実を図ることとし、交通安全意識の普及徹底を図るための参加・体験・実践型の交通安全教育などの推進、高齢者が安心して暮らせる道路交通環境の整備、高齢運転者の安全運転対策の推進などを図っていくこととしている。
ア 参加・体験・実践型交通安全教育の推進
 高齢者が各種の道路交通環境や事故の発生する危険のある状況や夜間における反射材の効果等について実際に体験したり、危険な状況における対応を自ら考える参加・体験・実践型の交通安全教育を積極的に推進するとともに、家庭訪問による個別指導、高齢者と日常的に接する機会を利用した助言等が地域ぐるみで行われるよう努めることとしている。
 さらに、高齢者交通安全指導員(シルバーリーダー)の養成等高齢者の自主的な交通安全活動を展開し、地域・家庭における交通安全活動の主導的役割を果たすよう指導・援助を行うこととしている。
イ 高齢者が安心して暮らせる道路交通環境の整備
 高齢者、身体障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保するため、駅、公共施設等の周辺を中心に「平坦性が確保された幅の広い歩道」、高齢者等感応信号機、道路標識の高輝度化・大型化・可変化、道路標示の高輝度化等を推進することとしている。
 また、交通バリアフリー法に基づき、公共交通機関等のバリアフリー化と連携しつつ、誰もが歩きやすい幅の広い歩道等の整備が面的かつネットワークとして行われるよう配慮することとしている。
ウ 高齢者の安全運転対策の推進
 高齢者講習の充実及び更新時講習における高齢者学級(高齢者を対象とする、高齢運転者の運転の特性、交通事故の特徴等を重点に取り上げた講習)の拡充に努めるなど高齢者の身体的な機能の変化を踏まえた適切な指導等を行うこととしている。
(2) シートベルト及びチャイルドシート着用の徹底
 シートベルト及びチャイルドシートの着用効果及び正しい着用方法についての理解を求め、正しい着用の徹底を図るとともに、あわせて、後部座席におけるシートベルトの着用推進を図る必要があることから、地方公共団体、関係機関・団体等との協力の下、あらゆる機会・媒体を通じて積極的に普及啓発活動を展開するとともに、シートベルト及びチャイルドシート着用義務違反に対する指導取締りの充実を図ることとしているほか、特に、チャイルドシートについては、正しい着用を指導する指導員の養成、利用しやすい環境づくり等を推進することとしている。
(3) 安全かつ円滑な道路交通環境の整備
 事故多発地点のうち緊急度の高い場所について、詳細な事故分析に基づく交差点改良、視距の改良、付加車線等の整備を重点的に実施することとしている。また、対策実施後は、その効果を評価し、対策効果が不十分な箇所における追加的な対策の実施等を行うこととしている。
 さらに、コミュニティ・ゾーンの形成、高度道路交通システムの研究開発等の推進、輸送効率の向上や交通量の時間的・区間的平準化を図る交通需要マネジメント施策の推進等を図ることとしている。
(4) 交通安全教育の推進
 交通安全教育指針等を活用し、幼児から成人に至るまでの段階的かつ体系的な交通安全教育及び高齢者、身体障害者等に対する適切な交通安全教育を、国、地方公共団体、警察、学校、関係民間団体及び家庭が互いに連携して実施する。特に、指導者の養成・確保、参加・体験・実践型の教育の普及を図ることとしている。また、免許取得前、取得時、取得後の運転者教育の充実を図ることとしている。
(5) 車両の安全性の確保
 先進安全自動車の開発・普及を図るほか、自動車アセスメント事業を推進するとともに、リコール制度の充実を図ることとしている。
(6) 効果的な指導取締りの実施
 交通事故実態等を的確に分析し、死亡事故等重大事故に直結する悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた交通指導取締りを推進するとともに、初動捜査及び科学的捜査の充実強化等を図ることとしている。
 また、凶悪化する暴走族に対しては、関係機関・団体が連携し、暴走族追放気運の高揚及び家庭、学校等における青少年の指導の充実、暴走行為をさせないための環境づくり、指導取締りの強化、暴走族関係事犯者の再犯防止、車両の不正改造の防止等の対策を強力に推進することとしている。
(7) 救助・救急体制の整備
 救急救命士の養成・配置等の促進、ドクターカーの活用の推進を図るとともに、消防・防災ヘリコプターによる救急業務、ドクターヘリによる救命医療の実施、高速自動車国道のサービスエリア等における緊急離着陸用ヘリポートの整備の推進等を図ることとしている。
(8) 被害者対策の充実
 重度後遺障害者に対する介護料の支給及び重度後遺障害者の治療・看護を専門に行う療護センターの設置・運営に対する援助措置の充実を図ることとしている。
 また、交通事故被害者の心情に配慮した相談業務を、警察署の交通相談係、交通安全活動推進センター、検察庁の被害者支援員等により推進することとしている。
 さらに、被害者等に対して、交通事故の概要、捜査経過、事件処理結果、不起訴記録等の情報を提供するほか、ひき逃げ事件、死亡事故等の被害者等に被疑者の検挙、送致状況、裁判結果を連絡する被害者連絡制度の充実等を図ることとしている。
(9) 交通事故調査・分析の充実
 事故調査・分析の充実強化を図る観点から、交通事故総合分析センターの充実・活用を図るとともに、官民の保有する交通事故調査・分析に係る情報を国民に対して積極的に提供することとしている。
(10) 市民参加型の交通安全活動の推進
 交通安全対策に関して住民が計画段階から実施全般にわたり積極的に参加できる仕組みづくり、住民や道路利用者が主体的に行う「ヒヤリ地図」の作成、交通安全総点検等により市民参加型の交通安全活動を推進することとしている。

<第2章> 道路交通に対する主な安全施策

1 交通安全施設等の重点的整備
 平成十二年度は、交通安全施設等整備事業七箇年計画の第五年度として、次のような事業を実施した。
 @ 幅の広い歩道等の整備、住居系地区等におけるコミュニティ・ゾーンの形成、信号機の高齢者感応化等の高性能化、道路照明灯、道路標識等の整備等を行った。
 A 通学路における交通事故防止のために、歩道等の整備を始め、信号機、立体横断施設、道路標識等を整備した。
 B 幹線道路における事故多発地点について、事故の要因を分析し、これに応じた交差点改良、道路照明・信号機の設置、交通規制の見直し等の事故削減策を推進した。
 C 車両の事故防止のために、信号機の高度化改良、交差点等の改良や付加車線等の整備を行うとともに、夜間の事故防止のために、道路照明灯、高速走行抑止システム等を整備した。
 D 新交通管理システム(UTMS)としての中央装置や交通情報提供装置を整備するなど交通管制システム機能を充実・高度化した。

2 高度情報通信技術等を活用した道路交通システムの整備
 平成八年に策定したITS全体構想に基づき、研究開発、フィールドテスト、インフラの整備等を推進している。

3 交通需要マネジメント施策等の推進
 輸送効率の向上や交通量の時間的・空間的平準化を図る「交通需要マネジメント(TDM)施策」を総合的に推進した。
 また、交通容量拡大策、TDM施策、マルチモーダル施策の支援措置を講じた。
 さらに、バスの利用促進を図るための施策を関係省庁が連携して総合的に実施するオムニバスタウン構想を推進している。

4 安全な道路交通環境整備の推進体制の拡充
 今後の安全な道路交通環境整備の基本的な考え方等について「安全な道路交通環境の整備に関する推進方針」として定めるとともに、この方針に基づき、コミュニティ・ゾーン形成事業、事故多発地点緊急対策事業等の各施策を推進した。

5 チャイルドシートの着用の徹底
 平成十二年四月から六歳未満の幼児についてチャイルドシートの着用が義務化されたことから、春・秋の全国交通安全運動で普及促進キャンペーン等を実施するとともに、チャイルドシートの無料貸出し制度の活動を支援する等着用促進のための施策を推進した。

6 交通安全総点検の実施
地域の人々や道路利用者の主体的な参加の下、「交通安全総点検」を実施し、その結果を歩道の補修、信号機の設置等に反映した。

7 車両の安全対策の推進
 「車両安全対策総合検討会」において、対策の事前効果予測・事後効果評価等を検討し、車両安全対策の長期計画等を策定した。

8 自動車アセスメント情報の提供等
 自動車の衝突安全性能等の比較試験の結果を公表する自動車アセスメント事業において、オフセット前面衝突試験を追加し、二十四車種の比較試験の結果を公表するとともに、エアバッグ等の安全装置の正しい使い方をユーザーに提供した。

9 交通事故被害者の心情に配慮した対策の推進
 ひき逃げ事件、交通死亡事故等の被害者・遺族に対して、事故の概要、捜査状況等の被害者連絡を適時、適切に実施するとともに、「交通事故被害者の手引」の配布や各種相談活動等被害者等の心情に配意した対策を実施している。

<第2部> 鉄軌道交通

<第1章> 鉄軌道交通事故の動向と交通安全対策の今後の方向

鉄軌道交通事故の状況

 踏切事故防止対策の推進、各種の運転保安設備の整備の充実、制御装置の改善、乗務員等の資質の向上など総合的な安全対策を実施してきた結果、運転事故は、長期にわたり減少傾向が続いており、平成十二年の運転事故件数は九百三十六件、運転事故による死傷者七百四十九人(うち死亡者三百九人)であった(第5図参照)。
 運転事故の種類別の発生件数では、踏切障害(四七・四%)、人身障害(三七・三%)、道路障害(一一・三%)となっている。

鉄軌道交通安全対策の今後の方向

1 事故調査体制の充実
 より安全な鉄軌道を目指すためには、事故の原因を調査し、事故等の教訓をいかして、同種事故を未然に防止することが極めて重要であることから、鉄軌道事故調査・分析体制の強化・充実を図るため、常設の鉄軌道事故調査機関を設置し、必要な事故調査体制の整備を進める。
 なお、第百五十一回国会において航空事故調査委員会を改組し、航空・鉄道事故調査委員会を設置すること等を内容とする「航空事故調査委員会設置法等の一部を改正する法律」が成立し、公布された。

2 事故の未然防止体制の推進
 鉄軌道事業者からの事故等の報告制度について、事故報告の内容及び事故速報の対象範囲の見直し等を行い、重大インシデント分析の充実を図り、事故等の未然防止に有効な対策を推進する。
 さらに、事故等に関する情報公開を積極的に推進する。

3 踏切事故防止対策の推進
 平成十三年三月に改正された踏切道改良促進法及び十三年度を初年度とする第七次踏切事故防止総合対策に基づき、踏切道の立体交差化、構造の改良、踏切保安設備の整備、交通規制の実施、統廃合の促進その他踏切道における交通の安全と円滑化を図るための措置を総合的かつ積極的に推進する。

<第2章> 鉄軌道交通に対する主な安全施策

1 線路施設、運転保安設備等の整備
 線路施設、信号保安設備等の整備を促進するとともに、乗務員の教育の充実等により乗務員等の資質の向上を図っている。また、迅速かつ的確な運転指令体制づくりに努めるよう鉄軌道事業者を指導している。

2 鉄道構造物の耐震性の強化
 鉄道施設耐震構造検討委員会が平成十年十一月に取りまとめた耐震設計基準に基づき、新設構造物の設計を行うよう、鉄道事業者等を指導している。

3 営団日比谷線事故を踏まえた再発防止対策の実施
 営団日比谷線中目黒駅構内での列車脱線衝突事故については、事故の発生原因等の検討を行い、静止輪重の管理や脱線防止ガードの設置など五項目にわたる再発防止対策を取りまとめたところであり、全国の鉄軌道事業者に対し、同対策の徹底を図っている。

4 踏切事故防止対策
 第六次踏切事故防止総合対策に基づき、踏切道の立体交差化、構造改良及び保安設備等の整備を推進している。また、踏切道の統廃合についても併せて実施している。

<第2編> 海上交通

<第1章> 海難の動向と海上交通安全対策の今後の方向

海難の動向

 @ 救助を必要とする海難に遭遇した船舶(要救助船舶)の隻数は、平成十二年は前年に比べ二百八十一隻増(一五%)の二千二百一隻となった。
 A 近年のマリンレジャー活動の活発化に伴い、プレジャーボート等の海難の全要救助船舶隻数に占める割合が高くなってきており、平成九年には漁船を上回り、十二年は、四七%と過去最高となった。
 B 要救助船舶の乗船者(八千二百三十人)のうち死亡・行方不明者数は、平成十二年は百六十三人であった(第6図参照)。

海上交通安全対策の今後の方向

 海上交通を取り巻く環境は、厳しさを増しており、総合的な海上交通安全対策を推進する必要がある。
 このため、第七次交通安全基本計画では、海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数について、平成十七年までに二百人以下にするという目標値を設定した上で、特に、以下の重点施策及び新規施策を推進することとしている。

1 ふくそう海域における海上交通安全の確保
 東京湾等の海上交通のふくそうする海域における管制対象船舶のノンストップ航行及び港湾EDIシステム等による港湾諸手続きのワンストップ化を実現する航行管制制御システムの確立等を行う。
 さらに、「海上ハイウェイネットワーク」の構築を推進するなど、海上交通の安全確保に必要な施策を総合的かつ積極的に推進し、ふくそう海域における海上交通の安全を図ることとしている。

2 プレジャーボート等の安全対策の推進
 プレジャーボート等の海難の増加傾向に歯止めをかけるためには、マリンレジャー愛好者自らが安全意識を十分に持つことが重要であることから、海難防止講習会や訪船指導等を通じ、レジャーの目的に応じたきめ細かな海難防止指導を実施するほか、安全にクルージングができる環境を整備するためマリンロード構想を推進することとしている。

3 漁船の安全対策の推進
 漁船の海難を防止するため、海難防止講習会の開催や訪船指導の実施等により、乗組員の安全運航の意識向上に努めるとともに、見張りの励行等について、積極的に指導・啓発を図ることとしている。

4 救命胴衣の着用率の向上及び救助体制の強化
 海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者を減少させるためには、救命胴衣の着用率を高めるとともに、落水しても救助を要請できるよう連絡手段を確保しておくことが極めて有効であることから、常時着用型救命胴衣の導入等の対策を講ずるとともに、漁船、プレジャーボート等の乗組員を対象とした、救命胴衣常時着用の徹底、携帯電話等の連絡手段の確保、緊急用電話番号「118」の有効利用を基本とする「自己救命策確保」キャンペーンを強力に推進することとしている。
 さらに、事故情報入手後、直ちに巡視船艇を現場に急行させる体制を構築するほか、ヘリコプターの高速性、捜索能力、吊り上げ救助能力等の積極的な活用等を図ることとしている。

5 外国船舶の監督の強化
 海上人命安全条約、海洋汚染防止条約等の国際条約に基づき、我が国に寄港する外国船舶に対する監督を実施し、国際基準に適合していない船舶の排除に努めることとしている。

<第2章> 海上交通に対する主な安全施策

 @ 巡視船艇・航空機による救助体制の強化、海難情報の入手体制の整備及び民間救助体制の整備を行い、プレジャーボート等の救助体制の充実強化を図っている。
 A 漁船やプレジャーボート等に対し、海難防止講習会や訪船指導等を通じて、海難防止思想の普及徹底、安全指導を実施している。
 B 港湾及び航路の整備の進展、船舶の高速化等により変化する海上交通環境に適応した航路標識の整備を実施している。
 C 船舶交通のふくそうする海域においては、特別な交通ルールを定めるとともに、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムである海上交通情報機構等の整備・運用を行っている。また、海図・水路書誌等の整備及び水路通報、気象情報等の充実を図っている。
 D タンカーの事故による油濁損害は損害額が巨額に上ることから、油濁損害賠償保障法に基づき、油濁損害の被害者に対する適正な補償を確保している。
 E 国際条約の基準に適合していない船舶を排除するため、我が国に入港する外国船舶の監督を実施している。
 F 国際海事機関での国際条約等の検討結果を踏まえ、国内法令の整備を行うとともに、交通バリアフリー法に基づくバリアフリー義務化に対して説明会等必要な対策を講じた。また、「船舶の総合的安全評価」を実施するとともに、漁船「第五龍寶丸」事故を踏まえ、同種漁船事故の再発防止対策を取りまとめた。

<第3編> 航空交通

<第1章> 航空交通事故の動向と交通安全対策の今後の方向

航空交通事故の動向

 我が国における民間航空機の事故の発生件数は、航空輸送が急速に拡大したにもかかわらず、ここ数年多少の変動はあるものの、ほぼ横ばいの傾向を示しており、平成十二年の事故件数は三十件であった(第1表参照)。

航空交通安全対策の今後の方向

1 重大インシデント分析に基づく安全対策の推進
 平成十二年二月より機長に重大インシデント(結果的には事故に至らないものの、事故が発生するおそれがあると認められる事態)の報告義務を課し、重大インシデントの調査を開始したところである。

2 外国航空機の安全の確保
 近年、外国航空機の事故が我が国において発生していること、外国航空機を利用する我が国の利用者が多いこと等から、外国航空機の安全性についても関心が高まってきており、平成十一年十二月から新東京国際空港において、外国航空機に係る立入検査(ランプ・インスペクション)を開始し、十三年二月までに九空港において検査を実施した。

3 次世代航空保安システム
 航空交通の増大や多様化に対応して、航空機の安全運航の確保を最優先としつつ、空域の有効利用方策の充実等による航空交通容量の増大を図るため、運輸多目的衛星(MTSAT)を中核とした「次世代航空保安システム」の整備を着実に推進する。

<第2章> 航空交通に対する主な安全施策

 @ 第七次空港整備七箇年計画(平成八〜十四年度)に基づき、空港、航空保安施設等の整備を計画的に推進している。
 A 空港、航空保安施設の耐震性の強化については、既存施設の耐震補強(庁舎等の点検・改修等)及び管制施設の多重化(管制機能の代替等の整備)等を推進した。
 B 空港内の工事に伴う安全確保、飛行場標識施設等の高規格化、オーバーラン等した航空機に対する安全対策等、航空機運航の安全に直接関わる空港安全技術について基準等の強化を図った。
 C 小型航空機の事故を防止するため、法令及び安全関係諸規定の遵守、無理のない飛行計画による運航の実施、的確な気象情報の把握、操縦士の社内教育訓練の充実等を内容とする事故防止の徹底を指導している。
 D スカイレジャーについては、愛好者に対する安全知識の普及や技能の向上訓練等について関係航空団体を指導するとともに、安全対策に関する調査の実施等により安全確保を図っている。



 百日紅


  「ヒャクジツコウってどんな花?」と首をかしげる方も、「サルスベリ」のことと聞けば納得されるのではないでしょうか。
 原産地は中国南部で、「百日紅」は中国名。それに「サルスベリ」という和名を当てたのは、木肌がつるつるとなめらかで、木登りが大得意のサルでさえ滑り落ちるからだとか。ユーモアのセンスあふれたネーミングだと思いませんか。
 日本に渡来した時期は定かではありませんが、遅くとも江戸時代初期には寺院の庭などに植えられていたらしいと言われます。
 高さ二〜十メートルの落葉潅木で、春の芽吹きは他の木々に比べると遅いのですが、花の季節は七月から九月までと長く、「百日紅」の名の由来もここにあります。
 花の色は名前のとおり紅色のものが多く見られますが、紅紫や白もあります。
 散れば咲き 散れば咲きして 百日紅 
              (千代女) 
 散っても散ってもまた次々と花が咲き競う様子を詠んだこの句は、背景の夏空と紅色の花の群生という色彩的な美しさをも感じさせます。
 百日紅は、つるつるした木肌をこすると枝葉が一緒に動くことから「怕痒樹(はくようじゆ)」とも呼ばれています。中国の古人たちの目には、木がくすぐったそうにしていると映ったのでしょう。日本でも「くすぐりの木」という別名があります。
 また、木材は粘り強く、工作しやすいことから、ステッキやろくろ細工などに用いられます。





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五月の雇用・失業の動向


―労働力調査 平成十三年五月結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十三年五月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千四百七十三万人、完全失業者は三百四十八万人、非労働力人口は四千五十二万人と、前年同月に比べそれぞれ三十万人(〇・五%)減、二十万人(六・一%)増、六十八万人(一・七%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者

 就業者数は六千四百七十三万人と、前年同月に比べ三十万人(〇・五%)の減少となり、二か月連続の減となっている。男女別にみると、男性は三千八百七万人、女性は二千六百六十六万人で、前年同月と比べると、男性は二十八万人(〇・七%)減、女性は一万人(〇・〇%)減となっている。

(2) 従業上の地位

 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千四百十三万人、自営業主・家族従業者は一千三十四万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は三十九万人(〇・七%)増、自営業主・家族従業者は七十五万人減となり、雇用者は十三か月連続の増加となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者 五千三百七十五万人と、三十七万人(〇・七%)増、十三か月連続の増加
 ・常 雇…四千七百十一万人と、十二万人(〇・三%)増、七か月連続の増加
 ・臨時雇…五百五十二万人と、三十五万人(六・八%)増、平成八年九月以降増加が継続
 ・日 雇…百十二万人と、十一万人(八・九%)減、三か月ぶりの減少

(3) 産 業

 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百十七万人と、十四万人(四・二%)減
○建設業…六百三十四万人と、八万人(一・二%)減、六か月連続の減少
○製造業…一千二百九十一万人と、二十一万人(一・六%)減、四か月ぶりの減少
○運輸・通信業…四百九万人と、七万人(一・七%)減、六か月連続の減少
○卸売・小売業,飲食店…一千五百万人と、六万人(〇・四%)減、三か月ぶりの減少
○サービス業…一千七百五十八万人と、二十六万人(一・五%)増、十五か月連続の増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百二十八万人と、十一万人(二・〇%)減
○製造業…一千百九十四万人と、六万人(〇・五%)増
○運輸・通信業…三百九十万人と、六万人(一・五%)減
○卸売・小売業,飲食店…一千二百二十六万人と、四万人(〇・三%)増
○サービス業…一千五百三十五万人と、四十六万人(三・一%)増

(4) 従業者規模

 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百二十一万人と、七万人(〇・四%)減、七か月ぶりの減少
○三十〜四百九十九人規模…一千七百九十二万人と、五十万人(二・九%)増、九か月連続の増加
○五百人以上規模…一千二百九十三万人と、五万人(〇・四%)減、四か月ぶりの減少

(5) 就業時間

 五月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千三百九十二万人と、十七万人(一・二%)増加
 ・うち一〜三十時間未満…九百九十六万人と、同数
○三十五時間以上…四千九百五十九万人と、六十一万人(一・二%)減少
 ・うち四十九時間以上…一千八百三十七万人と、四十万人(二・一%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四三・〇時間で、前年同月と比べ〇・二時間の減少となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数

 完全失業者数は三百四十八万人と、前年同月に比べ二十万人(六・一%)増となり、二か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は二百十一万人、女性は百三十六万人で、前年同月に比べ、男性は十五万人(七・七%)の増加、女性は三万人(二・三%)の増加となっている。
 また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非自発的な離職による者…百二万人と、一万人増加
○自発的な離職による者…百二十二万人と、十四万人増加
○学卒未就職者…二十一万人と、一万人減少
○その他の者…八十七万人と、同数

(2) 完全失業率(季節調整値)

 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・九%と前月に比べ〇・一ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・一%、女性は四・六%と、前月に比べ男性は〇・一ポイントの上昇、女性は〇・二ポイントの上昇となっている。

(3) 完全失業率(原数値)

 完全失業率は五・一%と、前年同月に比べ〇・三ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・三%と〇・四ポイントの上昇、女性は四・九%と〇・一ポイントの上昇となっている。

(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…四十五万人(四万人増)、一一・三%(一・五ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十三万人(九万人増)、五・七%(〇・九ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十二万人(三万人減)、二・八%(〇・四ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…三十一万人(同数)、三・三%(同率)
○五十五〜六十四歳…四十七万人(一万人減)、七・二%(〇・一ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十七万人(一万人減)、四・五%(同率)
 ・六十〜六十四歳…三十万人(同数)、一一・一%(〇・一ポイント上昇)
○六十五歳以上…十二万人(二万人増)、三・九%(〇・七ポイント上昇)
 [女]
○十五〜二十四歳…三十四万人(二万人増)、九・〇%(〇・六ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十四万人(七万人増)、七・一%(〇・九ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十一万人(四万人減)、四・一%(〇・七ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…二十一万人(一万人減)、三・〇%(〇・二ポイント低下)
○五十五〜六十四歳…十五万人(一万人減)、三・七%(〇・一ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…八万人(一万人減)、三・二%(〇・二ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…七万人(同数)、四・四%(同率)
○六十五歳以上…二万人(一万人増)、一・一%(〇・六ポイント上昇)

(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)

 世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十二万人(二万人減)、三・四%(〇・一ポイント低下)
○世帯主の配偶者…四十一万人(四万人減)、二・八%(〇・三ポイント低下)
○その他の家族…百六十一万人(二十三万人増)、八・六%(一・二ポイント上昇)
○単身世帯…五十三万人(二万人増)、六・四%(〇・一ポイント上昇)












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月例経済報告(七月報告)


―景気は、悪化している―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)
 景気は、悪化している。
・個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。失業率は高水準で推移している。
・輸出、生産が引き続き減少している。
・企業収益、設備投資は頭打ちとなっている。
 先行きについては、在庫の増加や設備投資の弱含みの兆しなど、懸念すべき点がみられる。

(政策の基本的態度)
 政府は、経済財政諮問会議答申を受けて「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」を六月二十六日に閣議決定した。この基本方針に従い、不良債権問題を抜本的に解決するとともに、構造改革のための七つのプログラムをパッケージとして実施するなど、日本経済の再生のための構造改革を断行する。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。
 消費総合指数をみると、足元で弱い動きがみられる。
 また、需要側統計である家計調査でみると、実質消費支出は、二か月連続で前月を下回った後、平成十三年五月は増加した。
 販売側統計をみると、小売業販売額は、二か月連続で前月を下回った後、五月はほぼ横ばいとなっており、依然として弱い動きが続いている。チェーンストア販売額も、依然として前年を下回っており、弱い動きが続いている。一方、百貨店販売額は、営業時間の延長などの影響もあり、前年比減少幅が縮小している。
 耐久消費財についてみると、新車販売台数は、伸び悩みが続いている。家電販売金額は、パソコンの大幅な減少が続いていることなどから引き続き前年を下回った。
 旅行は、国内旅行は前年をやや上回ったものの、先月減少に転じた海外旅行は前年比減少幅がさらに拡大しており、総じてみると引き続き減速感がみられる。
 こうした需要側と販売側の動向を総合してみると、個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。
 個人消費の動向を左右する家計収入の動きをみると、定期給与が五か月連続で前年を下回るなど弱い動きが続いている。また、現金給与総額は二か月ぶりに前年を下回った。

◇設備投資は、頭打ちとなっている。産業別にみると、製造業は堅調に増加しているものの、非製造業では弱含んでいる。
 設備投資は、平成十一年末に持ち直しに転じて以降増加基調が続き、これまで景気を支える要素であった。しかしながら、「法人企業統計季報」でみると、一〜三月期の設備投資は、製造業は堅調に増加しているものの、非製造業で前年比減少となり、全体として頭打ちとなっている。また、機械設備投資の参考指標である資本財出荷は、このところ弱含んでいる。
 設備投資の今後の動向については、日銀短観の平成十三年度設備投資計画において非製造業を中心に減少が見込まれていること、機械設備投資の先行指標である機械受注が一〜三月期は前期比マイナスとなっており四〜六月期もほぼ横ばいの見通しとなっていることなど、弱含みの兆しがみられる。

◇住宅建設は、弱含みとなっている。
 住宅建設は、平成十一年以降おおむね年率百二十万戸前後で推移してきたが、平成十三年二月以降弱含んでいる。これは、昨年堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、年明け以降公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移していることが主因である。五月は年率百二十万戸となり単月では水準を戻したが、これは民間資金貸家の着工が前月と比べ大幅に増加したことによる。
 先行きについてみると、住宅金融公庫融資の申し込み戸数が減少していることなど、住宅着工を減少させる要因が引き続きみられる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、総じて低調に推移している。平成十二年度の公共事業関連予算は、国の補正後予算が比較的高水準であった前年度を下回り、地方も厳しい財政状況から投資的経費を抑制する動きが続いた。このような状況を反映して、工事の前払金保証契約実績に基づく公共工事請負金額は、昨年六月以降三月まで継続して前年を下回っていた。また、年度末にかけて発注が集中する一〜三月期の受注には、前年を大きく下回る指標がみられた。
 新年度に入り、四月には大手五十社受注額、請負金額が前年を上回ったが、五月にはいずれも再び大きく前年を下回っている。これらには前年度当初の発注が五月以降にずれ込んだために、前年四月の水準が大きく落ち込んでいたことなどの影響が考えられる。また、年度当初は発注額が比較的小さく、前年比が振れやすいことにも留意する必要がある。
 四〜六月期の公共投資については、平成十三年度当初予算における国の公共事業関係費については前年度とほぼ同額を確保していること、地方の投資的経費の削減幅が前年度に比べて縮小していることなどから、一〜三月期のように前年を大きく下回ることはないものと考えられる。

◇輸出、輸入は、ともに減少している。貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。
 輸出は、アメリカやアジアの景気減速を背景として、半導体等電子部品などの電気機器を中心に減少している。地域別にみると、アジア、アメリカ、EUのいずれの地域向けも減少している。
 輸入は、IT関連需要の鈍化を背景に、半導体等電子部品などIT関連財を中心とした機械機器が減少傾向にあり、全体としても減少している。地域別にみると、アジアからの輸入はアジアNIEsからの輸入が機械機器を中心に減少するなどやや弱含んでおり、アメリカ・EUからの輸入は減少している。
 国際収支をみると、昨年秋以降、輸出数量の減少などから減少してきた貿易・サービス収支の黒字は、輸入数量の減少などから、おおむね横ばいの範囲内の動きとなっている。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、引き続き減少する中で、在庫が増加している。
 鉱工業生産は、今年に入ってから減少が続いている。輸出の減少等により、IT関連品目の生産が減少していることが主因である。
 生産の先行きについては、六月は増加、七月は減少が見込まれているが、六月がこの見込みどおりに推移した場合、四〜六月期も前期比減少となることには留意しておく必要がある。また、電子部品や化学、鉄鋼等の生産財を中心に在庫が増加していることも、生産の先行きに関して懸念すべき点である。
 一方、第三次産業活動の動向をみると、サービス業を中心に、緩やかに増加している。

◇企業収益は、頭打ちとなっている。また、企業の業況判断は、製造業を中心に引き続き悪化している。倒産件数は、やや高い水準となっている。
 企業収益は、平成十一年以降改善しており、特に平成十二年半ば以降は大幅な改善が続いていた。今回の改善の背景としては、企業のリストラ努力が挙げられるが、製造業において売上高が伸びていることや、非製造業において平成十二年初までは変動費を削減してきたことも大きく寄与していた。しかし、日銀短観によると平成十三年度上期は減益に転じる見込みとなっており、「法人企業統計季報」によると平成十三年一〜三月期における経常利益は前年同月比横ばいとなった。
 企業の業況判断について日銀短観をみると、大企業非製造業では横ばいとなったが、電気機械を中心に製造業で引き続き大幅に悪化するなど、厳しさがみられる。
 また、五月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで一千六百六十四件となるなど、やや高い水準となっている。

◇雇用情勢は、完全失業率がこれまでの最高水準にあるなど、依然として厳しい。一部で底固さがみられるものの、製造業では弱い動きがみられる。
 完全失業率は、五月は前月比〇・一%上昇し、これまでの最高水準の四・九%となった。
 また、生産の減少を反映した動きが製造業を中心にみられる。新規求人数は、前月比でみると五月は四月に続き増加となった(五月前月比三・〇%増)が、製造業では弱い動きがみられる。製造業の残業時間は、七か月連続で前月比減となっている。雇用者数のここ二か月の動きをみると、前月比で製造業では減少したものの、非製造業では増加したため、全体としては増加となっている。企業の雇用過剰感は引き続き強まっており、中堅、中小製造業で悪化幅が大きくなっている。

三 物価と金融情勢

◇国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。
 輸入物価は、このところ、契約通貨ベースでは下落しているが、円ベースでは円安の影響を受けて上昇している。国内卸売物価は、平成十三年入り後弱含んでいる。最近の動きをみると、石油・石炭製品などは値上がりしているものの、電気機器や輸送機器などが値下がりしていることから、下落している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、外食の下落の効果が一巡したことなどにより一般サービスは前年と比べやや上昇しているものの、繊維製品の下落幅拡大や石油製品の上昇幅縮小などにより一般商品は下落幅を拡大していることから、全体としては下落幅を拡大している。
 こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

◇金融情勢については、長期金利は、景気の先行きを懸念する市場の見方などもあって、昨年秋より低下基調で推移し、六月は、一段と低下した。
 短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、六月は、中旬にかけて〇・〇一%で推移したが、下旬から上昇し、月末には〇・〇六%となった。二、三か月物は、年明け以降、低下傾向で推移しているが、六月は、横ばいで推移した。長期金利は、景気の先行きを懸念する市場の見方などもあって、昨年秋より低下基調で推移し、三月下旬には一・〇%まで低下した。その後は一旦上昇したものの再び低下傾向となり、六月は、一段と低下した。
 株式相場は、昨年春より下落基調で推移してきたが、三月中旬以降反転し、四月末から五月上旬にかけて構造改革期待の高まりや堅調な米国株価の動向等を背景に上昇した後、六月末にかけて下落傾向で推移した。
 対米ドル円相場は、昨年末から円安が進み、四月に百二十六円台となった後、ユーロ安につられる形で一時百十九円台まで上昇したが、六月は、円安基調で推移し、百二十四円台まで下落した。対ユーロ相場は、三月以降、百十円を挟んで一進一退の動きが続いていたが、五月下旬から六月初めにかけて百円台まで大きく上昇した後、下旬にかけて百七円台まで下落した。
 M+CD(月中平均残高)は、昨年後半以降、おおむね前年同月比二・〇%増程度で推移してきたが、年明け以降、郵便貯金からの資金シフト等を受けて、やや伸び率を高めている(六月速報:前年同月比三・二%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷などを背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、ゼロ金利政策解除後緩やかに上昇してきたが、年明け以降低下している。

四 海外経済

◇アメリカの景気は、弱い状態となっている。アジアでは景気は減速している。
 世界経済をみると、全体として成長に減速がみられる。
 アメリカでは、個人消費や住宅投資などに底堅い動きがみられ、消費者心理に下げ止まりもみられる。一方で、企業収益の悪化から設備投資が抑制されているなど、内需は緩やかな伸びにとどまっている。在庫調整が進むなかで、生産活動が停滞し、稼働率が低下している。雇用は製造業等を中心に減少しており、失業率は上昇傾向にある。景気は、弱い状態となっている。先行きに対する懸念材料としては、企業収益の悪化、稼働率の低下などがある。
 ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気の拡大テンポは鈍化している。フランスでは、景気は安定した拡大を続けているものの、企業の先行き見通しは悪化している。イギリスでは、景気は緩やかに拡大している。
 アジアをみると、中国では、輸出の伸びに鈍化がみられるものの、個人消費や固定資産投資が堅調に推移しており、景気の拡大テンポはやや高まっている。韓国では、生産や個人消費の伸びの鈍化に加えて、輸出の伸びが鈍化したことから、景気は減速している。
 金融情勢をみると、アメリカでは、六月二十六、二十七日のFOMCで短期金利の誘導目標水準が〇・二五%ポイント引き下げられ、三・七五%とされた。
 国際商品市況をみると、在庫増加によりガソリンの供給不足懸念が後退したことから、原油価格は下落した。





 ソーラーシステム


  太陽エネルギーの利用方法には、大きく分けて、太陽の光を電力として利用する太陽光エネルギーと、太陽の熱を給湯や冷暖房に利用する太陽熱エネルギーの二つがあります。ソーラーシステムは、家の屋根などに集熱器、地上に貯湯槽を設置し、太陽熱エネルギーを集めて温水を作り、給湯に利用したり、その温水を家の中で循環させて暖房などに利用したりするシステムです。
 標準的な住宅用ソーラーシステム一台当たりのエネルギー節約量は、原油に換算すると年間約三百四十リットルとなり、太陽熱エネルギーは二酸化炭素(CO)の排出量を削減し、地球温暖化の改善に貢献する、環境にやさしいエネルギーといえます。
 ソーラーシステムは住宅を中心に学校や福祉施設、産業用などで幅広く利用されており、日本の太陽熱利用システムの普及台数は世界のトップクラスとなっています。最近では太陽光エネルギーと太陽熱エネルギーの両方を組み合わせたシステムも開発されています。






    <8月1日号の主な予定>

 ▽男女共同参画白書のあらまし…………内 閣 府 

 ▽景気予測調査(五月)…………………財 務 省 

 ▽消費者物価指数の動向(六月)………総 務 省 




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