官報資料版 平成13年8月22日




                  ▽土地白書のあらまし………………………………………………国土交通省

                  ▽中小企業白書のあらまし…………………………………………中小企業庁

                  ▽家計収支(五月分)………………………………………………総 務 省

                  ▽普通世帯の消費動向調査(六月実施調査結果)………………内 閣 府

                  ▽消費者物価指数の動向(東京都区部七月中旬速報値)………総 務 省











土地白書のあらまし


―平成十二年度 土地の動向に関する年次報告―


国土交通省


 政府は、土地基本法(平成元年法律第八十四号)第十条の規定に基づき、「平成十二年度 土地の動向に関する年次報告」及び「平成十三年度において土地に関して講じようとする基本的な施策」(土地白書)を六月二十九日に閣議決定した。
 本年の土地白書では、第一部「土地に関する動向」において、土地の利用や所有・取引の動向、地価の動向などを概観するとともに、国民や企業の土地に対する意識が変化し、我が国の土地市場が利便性・収益性といった個々の土地の利用価値が重視される実需中心の市場へと構造的に変化していることを明らかにしている。
 また、我が国における不動産の証券化の現状と促進に向けた課題、土地情報の整備・提供を始めとする土地市場の条件整備の必要性、国際的な都市間競争に対応できる都市への再生、地方都市における中心市街地活性化の動きなど、今後の土地政策の展開に当たって重要と考えられる点について考察している。
 第二部「土地に関して講じた基本的な施策」では、平成十二年度を中心として政府が最近において講じた土地に関する施策について取りまとめている。
 さらに、「土地に関して講じようとする基本的な施策」では、平成十三年度に政府が講じようとする施策について取りまとめている。
 以下、第一部の概要について紹介する。

T 我が国社会経済と土地

〈第1章〉 土地を取り巻く社会経済の変化と土地の有効利用のための課題

第1節 国民の土地に関する意識の動向

 国土交通省が実施した「土地問題に関する国民の意識調査」(平成十三年一月に全国の二十歳以上の者三千人を対象に実施。回収率は七五・二%)の調査結果を紹介している。

1 土地資産の有利性に関する意識
 土地の資産としての有利性に関して、「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産である」と考えるかを尋ねたところ、「そうは思わない」(三八・八%)と考える者が、「そう思う」(三四・二%)と考える者を初めて上回った(第1図参照)。

2 土地・建物の所有に関する意識
 自分自身で住むための住宅(土地・建物)について所有の意向を尋ねたところ、全体では「土地・建物については、両方とも所有したい」と回答した割合が七九・二%となっており、国民の持ち家志向は依然として根強いものの、その割合は減少する傾向にある。

3 居住に関する意識
 望ましいと考える住宅の形態についてみると、一戸建てが望ましいと考える割合が依然として高い(七七・九%)ものの、その割合は年々減少している。地域別にみると、一戸建てを望ましいと考える割合は、大都市圏(六八・九%)では地方圏(八四・六%)を大きく下回っている。

第2節 企業の土地に関する意識の動向

 国土交通省が実施した「土地所有・利用状況に関する企業行動調査」(平成十三年一月に、資本金一千万円以上の主要都市(札幌市、仙台市、東京都区部、名古屋市、京都市、大阪市、広島市及び福岡市)に本社を置く企業九千社を対象に実施。回収率四一・〇%)の結果等を紹介している。

1 企業の土地所有に関する意識
(1) 企業の土地所有の有利性についての意識
 企業の土地所有に関する意識に関して、今後、土地・建物について、所有と借地・賃借ではどちらが有利になると思うかを尋ねたところ、今回調査において、初めて「今後、借地・賃借が有利になる」(四五・八%)が「今後、所有が有利になる」(三九・三%)を上回った(第2図参照)。

2 未利用地の動向と企業の意識
(1) 未利用地の動向
 「平成十年土地基本調査」確報集計結果によると、法人が所有する未利用地は、平成十年一月時点で四万四千八百九十九ヘクタールであり、平成五年調査の五万六千六百四十六ヘクタールと比べて二〇・七%減少している。業種別にみると、特に卸売・小売業、製造業などで大幅に減少しているが、金融業・保険業では増加している。
(2) 未利用地についての今後の対応
 「土地所有・利用状況に関する企業行動調査」の結果によると、実際に未利用地を所有する企業に対して、未利用地についての今後の対応策を尋ねたところ、「売却する」(三九・五%)が前回調査の結果と比べて増加している。
 さらに、「売却する」と回答した企業に対して、未利用地の売却の目途として考える期間について尋ねたところ、「一年以内」が三五・七%、「一年〜三年以内」が三三・六%となっている。
 このように、未利用地に対する企業の意識は、早期に売却を進める方向へと変化している。

第3節 企業による土地利用の動向

1 経営環境の変化と今後の企業の土地利用動向
(1) 資金調達を中心とした経営環境の変化
 最近の企業経営のスタンスに影響を及ぼしている要因の一つとして、企業の資金調達方法の変化が挙げられる。すなわち、戦後の企業金融は、銀行等の金融機関が企業の経営状況等を審査した上で、土地を担保にとって融資を行う間接金融が中心であった。しかしながら、バブル崩壊後、これまでの間接金融に依存した形での企業の資金調達が困難になってきており、直接金融の重要性が相対的に高まっていると言われている。
 このような間接金融中心から直接金融重視への流れともあいまって、企業において株式市場や社債市場といった資本市場の関係者による評価を意識する傾向が強まっている。
 また、金融・資本市場の国際化の進展等に伴い、近年、会計基準の国際的な調和の観点から、我が国の企業会計制度の変更が進んでいる。こうしたことも、所有する資産全般について効率化を追求する企業の意識を強めているものと考えられる。
(2) 今後の保有不動産の見直しに関する意識
(保有不動産の見直しの必要性)
 全般的に資産の効率化が求められる中で、企業が保有不動産についてどのような意向をもっているかを、国土交通省が実施した「経営環境の変化と不動産の処分・購入に関するアンケート調査」(平成十三年二月に全国の上場企業、店頭公開企業など約四千四百社を対象として実施。回収率二四・〇%)の結果等をもとに分析する。
 売却等により実際に処分を行うことも含めた保有不動産の見直しの必要性とその実施状況について尋ねたところ、「現在見直しを行っている」、「すでに実施済みである」、「今後、必要性を検討したい」と回答した企業は全体の四分の三を占めている。このように、大半の企業では、保有不動産について何らかの対応の必要性を認識している。
(企業が処分したいと考える不動産)
@ 優先的に処分したいと考える不動産の内容
 また、できるだけ優先的に処分したいと考える不動産の具体的な用途・種類はどのようなものか尋ねたところ、福利厚生施設(三一・六%)や資材置場・駐車場(一七・三%)を挙げる割合が高くなっている。
A 福利厚生施設用地の動向
 「平成十年土地基本調査」確報集計結果によると、平成十年一月時点において法人が所有する土地のうち、福利厚生施設に利用されている土地面積は二万三千九百五十一ヘクタールで、平成五年(二万八千六百五十八ヘクタール)に比べて一六・四%減少しており、上記のような企業の意向を裏付ける傾向を示している。

2 オフィスビルの供給状況と敷地の従前用途
 近年のオフィスビルの供給に関しては、都心部における大規模な物件の割合が高まっていると言われている。
 そこで、東京都区部において、平成二年以降に供給されたオフィスビル及び今後五年程度の間に供給が予定されているオフィスビルのうち、延べ床面積が五千坪以上のものを対象として、建設前の主な用途(敷地面積に占める割合が最も高い用途)がどのようなものであったのか全体的な傾向をみると、@既存のオフィスビルの更新(二〇・二%)が最も多いが、A空き地、駐車場、埋立地等の低未利用地(一四・二%)、B工場、鉄道施設跡地、倉庫・配送センターからの利用転換等の割合も高くなっている(第3図参照)。
 このように、近年のオフィスビルの供給は、バブル崩壊後の企業の土地に対する意識の変化、さらに都市部における製造業からサービス業等への産業構造の転換や物流の効率化などを背景として、低未利用地の有効利用やオフィス以外の用途からの利用転換が進んでいることが要因となっていることがうかがえる。

3 企業の移転の状況からみたオフィスの立地選択の動向
 近年、企業は土地利用に対するコスト意識を高め、その利用価値を重視していると言われる。
 そこで、近年の東京都区部における本社オフィスの移転の事例をもとに分析した結果、全体的な傾向としては、比較的都心に近い周辺三区(新宿区、渋谷区、品川区)を中心とした、竣工年が新しい大規模物件への移転が進んでいることが明らかになった。その中には、例えば都心三区(千代田区、中央区、港区)の老朽化したオフィスビルから周辺三区の新築の大規模オフィスビルに移転するケースなど、既成のオフィスエリアにとらわれない移転の動きもみられた。
 このように、オフィスの選択に当たって、企業は、立地エリアにとどまらず、執務スペースや設備面なども含めた個々の物件の利用価値を厳しく判断するようになっている。今後、このような企業側のニーズに対応することが難しい既存のオフィスビルについては、大規模な修繕や建て替え、周辺も含めた再開発等により、周辺環境も含めた機能の向上を図ることが課題になっていくと思われる。

第4節 住宅供給・選択の動向(都心回帰現象の分析)

 近年、東京都心部において居住人口の増加がみられるなど、人口の都心回帰が進んでいるが、その背景として、近年活発に供給されている分譲マンションへの転居者が増加していることが指摘されている。

1 都心部のマンション敷地の従前用途
 そこで、東京の都心部で新たに供給された分譲マンションの敷地が、どのような用途の土地から利用転換されているのかについて、都心八区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、豊島区、台東区、文京区)で平成七年から平成十二年までの間に分譲されたマンション(九百五十三棟)を対象として分析した。
 調査対象であるマンションの敷地について、建設前の主な用途(敷地面積に占める割合が最も高い用途)がどのようなものであったかをみると、住宅は二七・〇%にとどまっている。これに対して、@低未利用地(駐車場、空き地、資材置場)が四〇・九%、Aオフィス(九・九%)、商業施設(九・一%)からの利用転換があわせて一九・〇%と、かなり高い割合となっている(第4図参照)。
 都心部において、過去の地価高騰期には、住宅からオフィス等の業務系用途への転用や、いわゆる「地上げ」の過程で住宅地が低未利用地化するケースがみられた。
 しかしながら、近年の都心部におけるマンション敷地供給についてみると、これとは逆に、全体的に低未利用地の有効利用や住宅以外の他の用途からの利用転換が進んでいることが分かる。

2 マンション敷地の従前所有者の傾向
 主に低未利用地の有効利用や他の用途からの利用転換により、近年のマンション敷地の供給が行われているが、この背景には、厳しい経済環境が続き、資産保有の効率性が求められる中で、企業が収益に結び付かない土地の処分等を進めていることがある。
 調査対象であるマンションの敷地について、登記簿等をもとに従前の所有者を確認したところ、法人が所有していた土地が含まれている割合が約六割(うち「法人のみ」で所有していた土地が五二・六%、「個人と法人」で所有していた土地が七・一%)に達しており、企業が所有する土地の処分を進めていることが要因となっていることを示している。

第5節 不動産の証券化

 我が国における不動産の証券化に関しては、不動産の所有者や投資家のニーズに応じて、法制度の整備など制度改善が行われるとともに、証券化のノウハウが蓄積され商品の多様化が進んできている。その結果、幅広い層の投資家の参入を通じて不動産投資が促進され、土地市場が活性化し、ひいては土地の有効利用につながることが期待される。

1 不動産の証券化の意義
 このような状況の中で、不動産の証券化は、以下のような意義を有する。
 @ 投資家が直接不動産事業に資金を供給する仕組みであり、また、多額の資金を必要とする不動産投資を小口化することができるため、これまで難しかった個人投資家の小口資金による不動産投資を可能とする効果があり、新しい資金の流れのひとつとして、預貯金に偏った個人金融資産の資産配分に変化をもたらす可能性があること
 A 新しい資金調達手段として不動産事業を活発化する効果が期待でき、民間資金を活用した都市基盤の推進による優良な都市ストックの形成の可能性があること
 さらに、不動産の証券化では、投資対象である不動産取引が、多くの投資家の監視の下で、十分な情報が開示されながら行われることとなることから、透明な不動産市場の形成にも資するものである。また、不動産取引の活発化を通じて、不動産の流動化を促進する効果も期待できる。

2 我が国における証券化手法等を活用した不動産の流動化の現状
 証券化の手法等を活用した不動産の流動化について、国土交通省が実施した「不動産の証券化実態調査」(平成十三年三月に(社)信託協会に加盟する信託銀行を対象として実施した調査結果に、SPC法に基づく実績及び不動産特定共同事業の実績を加えたもの)の結果をもとに、その現状をみることとする。
 @ オリジネーターからSPV(不動産の流動化という特別の目的のために設立された会社、信託・組合等のこと)への譲渡等により流動化された不動産又はその信託受益権の額は、平成十年度以降、急激な伸びを示し、平成十三年三月末までの累計で三兆三千億円に達している。
 A 流動化された不動産の主な用途について資産額ベースでみると、オフィス(四六・九%)の割合が最も高く、商業施設(二三・五%)、住宅(八・八%)と続いており、これらで全体の約八割を占めている。
 最近では、リースバックの活用等により、工場、倉庫、ホテルなど自らが事業で利用する不動産についても流動化の対象となっており、対象不動産の多様化が進んでいる。

3 不動産証券化の方向と課題
 今後の不動産の証券化の活用促進に向けた課題として、主に以下のような点を挙げることができる。
 @ 魅力ある証券化商品の提供
  ア 商品性の向上(低リスク商品の設計・提供、市場の立上り期における誘導施策)
  イ 不動産証券化商品の特性についての投資家に対する分かりやすい説明
 A 証券化促進のための環境整備
  ア 賃貸借契約の合理化(定期借家制度やネットリースなどの安定的な賃貸借契約の普及)
  イ 不動産投資インデックスの整備、提供
  ウ 収益性を重視した不動産鑑定評価の実施
  エ 不動産投資顧問業等の関連サービス産業の育成
 B その他
  ア 優良不動産の供給促進
  イ 開発型の証券化の活用に向けた課題(既存物件の証券化と組み合わせること等によるリスク軽減、事業の初期段階における政策金融や債務保証等の活用など)

第6節 土地市場の条件整備

1 土地情報の整備・提供の推進
(1) 新たな観点からの土地情報の整備・提供の必要性
 バブル崩壊後、商業地を中心に収益性を重視した実需中心の市場への構造変化が進む中で、収益性を重視した土地取引の前提である売買価格や賃料等の情報に対するニーズが高まっている。
 さらに、今後、不動産の証券化が本格化する中で、投資家の保護の観点や最適なポートフォリオの組成の観点から、@投資対象不動産の取引価格や賃料等の収益に関する情報、A不動産証券化商品のリスク・リターン、B他の金融商品との収益性の比較等に関するデータなど合理的な投資判断を行う基礎となる各種の情報が、他の金融商品に匹敵する水準で提供されることが求められている。
(2) 不動産投資インデックスの整備・提供
(不動産投資インデックスの役割)
 最近、不動産投資に関する情報を投資家に分かりやすく提供するための手法の一つとして、不動産から生じる収益(賃貸することによって生ずる収益と価格変動による損益の合計)を用途、地域等ごとに指標化した不動産投資インデックスの整備が注目されている。
(不動産投資インデックスに対する機関投資家の意識)
 ここで、国土交通省が実施した「不動産投資インデックスに関する意識調査」(平成十三年二月に約二百七十社・団体の機関投資家を対象に実施。回収率五六・六%)をもとに、不動産投資インデックスの作成・提供の必要性について尋ねたところ、「必要である」(七〇・一%)、「どちらかといえば必要である」(二一・五%)と回答した割合が合わせて九割以上に達しており、不動産投資インデックスの必要性に対する認識は極めて高い。
(今後の方向と課題)
 このように、不動産投資インデックスの整備に対する関係者の期待は非常に強い。しかし、市場において信頼され得る不動産投資インデックスを整備していくためには、@必要なデータの定義、具体的内容を統一すること、A十分な水準のサンプル数で、実際の取引に基づいた賃料等のデータを集めること、B市場から信頼される不動産評価基準を整備し、それに基づき不動産が評価されること、C必要なデータを収集し、市場の動向をありのままに、タイムリーに反映して不動産投資インデックスを作成・提供できる仕組みを整備すること等の課題が指摘されている。
 不動産投資インデックスは、基本的には民間により整備・提供されるものであるが、初期段階においては、ガイドラインの整備等を通じて、民間と行政が協力してこれらの課題に取り組んでいくことが必要である。

2 収益性を重視した不動産の鑑定評価
(1) 収益性重視の背景
 バブル崩壊後の社会経済構造の変化を背景に、我が国の不動産を取り巻く状況にも構造的な変化がみられている。この結果、不動産の鑑定評価においても、投資用不動産を土地建物一体の複合不動産としてとらえ、そのキャッシュフローを価格に的確に反映させる評価ニーズなどが生じている。
 このように多様化・高度化したニーズに対応するため、より詳細な市場動向の分析や対象不動産の調査(いわゆるデューデリジェンス)、これらに基づく収益還元法を中心とした高度な評価手法の適用などが不可欠となっている。
(2) 収益性を重視した不動産の鑑定評価を行うに当たっての課題
 こうしたことを踏まえ、国土交通省としても、多様化・高度化する評価ニーズに対応するため、不動産の有する収益力を的確かつ詳細に把握するための調査手法の確立及び不動産の生み出すキャッシュフローを価格に的確に反映させる評価手法の確立などの点を中心に、現行の不動産鑑定評価基準の見直しを行うこととしている。

第7節 土地の適正利用に向けた新たな取組

1 都市再生への動き
(1) 大都市における土地利用の構造的な変化
 大都市圏では、高度成長期を中心に人口、産業や諸機能が集中し、市街地の外延的な拡大が進んだが、その過程において、周辺部から郊外にかけての住宅地のスプロール的な開発や長距離通勤、交通混雑などにみられる都市構造の歪みが発生した。さらに、バブル期には、急激な業務需要の増大に伴う住宅地から商業地への転換や「地上げ」などにより、都市中心部において居住人口が減少するとともに、住宅地の郊外化がさらに進行した。
 しかし、近年、大都市への人口集中が沈静化するとともに、産業構造の変化に伴って都心部や臨海部で工場跡地等の低未利用地が発生するようになっており、社会経済の変化に対応して円滑に土地利用の転換を図っていくことが課題となっている。さらに、バブル崩壊後の大幅な地価下落を通じて、我が国の土地市場は、個々の土地の利用価値が重視される実需中心の市場へと変化してきている。
 こうした中で、近年、企業の土地所有に対する意識が変化し、資産保有の効率化の観点から所有不動産を絞り込む動きがみられる。オフィスビルに関しては、いわゆる「近・新・大」の物件とそれ以外の物件との間で空室率や賃料水準に大きな格差が生じ、一部にはオフィスビル用地からマンション用地に利用転換される動きもみられる。
(2) 都市再生の必要性
 大都市においては、都心部の空洞化や職住の遠隔化等の都市構造の歪み、大規模地震等の災害に対する脆弱性、低未利用地の発生等の様々な問題を解決し、国際的な都市間競争の激化に対応できる魅力と活力に満ちた都市への再生を図ることが緊急の課題となっている。
 ここでは、大規模な都市拠点整備の効果、低未利用地の整形・集約化による有効利用、道路・公園等の公共基盤整備の必要性、防災公園の整備等による防災性の向上などの点について、都市再生に向けた取組事例などをもとに考察する。
@ 都市拠点の整備
 近年、都心部において大規模オフィスビルの供給が相次いでおり、今後も平成十五年まで大量供給が続くと言われている。
 このようなビル開発の中で最近特徴的なことは、鉄道施設跡地、工場跡地等を対象に再開発事業等の手法を活用することにより、オフィスにとどまらず、商業施設、住宅等の機能を一体的に備えた大規模な都市拠点を整備した事例が相次いでいることである。
 これらについては、土地利用の転換を通じて低未利用地から高度商業地に生まれ変わり、開発が完成した時期から、周辺地価の下げ止まり又は上昇につながっており、土地の利用価値を高める積極的な取組の有効性を示している。
A 低未利用地の整形・集約化による有効利用
 社会経済の構造的な変化に伴って、今後とも低未利用地の発生が予想されるが、その有効利用を図り、都市再生を進めていくためには、例えば虫食い状の低未利用地の整形・集約化や基盤整備を実施することにより、土地の利用価値を高めていくことが必要である。
 バブル崩壊後、基盤整備を伴い、完成までに長期間を要する開発事業に対する民間事業者の積極的な取組が難しくなっている中で、まちづくりに関するノウハウを有する公的主体が、民間事業者と連携しながら優良な事業を立ち上げていくことが重要になっている。
 しかし、大都市の既成市街地では、土地に関して複雑な権利関係が事業実施の障害になるケースも多くみられることから、事業を円滑に進めるため、地籍の明確化や境界紛争を裁判外で早期解決するための仕組みづくりなどの条件整備も求められている。
B 都市基盤整備の必要性
 近年の大都市における土地利用の大きな変化の動きや地価の下落は、これまで立ち遅れていた道路、公園等の都市基盤施設の整備を促進し、公共空間を拡大する好機をもたらしていると考えられる。
 このような機会を捉えて計画的かつ早期に都市基盤施設の整備を進め、都市の再生を図っていくためには、都市基盤施設の配置等も含めたまちづくりのプログラムについて、住民・地権者等の関係者の理解と協力のもとに策定するとともに、その過程を通じて、土地についての「公共の福祉優先」の考え方が根付いていくことが求められる。
C 防災性の向上
 大都市の既成市街地は、災害等に対して脆弱な構造になっており、特に地震災害等に強い都市構造を実現することが緊急の課題となっている。
 こうした中で、大都市における今後の土地利用の変化に伴い発生する低未利用地等を、防災公園を核とした大規模な防災拠点や避難路等を整備することなどにより、防災性の向上を図るための公共空間として利用転換していくことが必要である。
 さらに、同様の観点から、防災上危険な木造密集市街地の改善等が引き続き重要な課題である。

2 中心市街地の活性化に向けた取組
 近年、多くの都市において、モータリゼーションの進展等を背景として中心市街地の空洞化が深刻になっているが、中心市街地は歴史的に都市機能が集積して形成された「街の顔」と言うべき地域が多く、その活性化が重要な課題となっている。
 そこで、いったん地価の下落、空室率の上昇や空き店舗の増加などが進行したが、このような状況を新たな事業展開に結びつけ、地域を挙げて起業者の誘致や空き店舗対策等に取り組んだ結果、土地の有効利用を実現するとともに、地域経済の活性化にもつながっているケースとして、名古屋市、札幌市、滋賀県長浜市の事例を紹介している。

3 土地利用の調整による地域活性化の取組
 近年、歴史的に形成されてきた地域の身近な自然や景観などの価値に目を向けながら個性的で魅力ある地域づくりを進め、地域の活性化を図ることが重要になっている。
 そこで、条例等による土地利用調整を通じて、その地域の特性を活かしたまちづくりを行っている大分県湯布院町と石川県金沢市の取組事例を紹介している。

U 土地の動向

〈第2章〉 土地の利用の動向

 我が国の国土面積三千七百七十九万ヘクタールのうち、六六%を占める森林(二千五百十一万ヘクタール)及び一三%を占める農用地(四百九十五万ヘクタール)は、微減から横ばいとなっており、五%を占める宅地と三%を占める道路は、宅地化の進行により逐年増加傾向にある。
 また、平成十一年の土地利用転換面積は三万二千百ヘクタールとなっており、近年減少傾向にある。

〈第3章〉 土地所有・取引の動向

 我が国の国土のうち、約八五%を占める宅地・農用地及び森林・原野について、所有主体別の状況をみると、平成十一年度では国公有地が三七%(うち国有地が二八%、公有地が九%)、私有地は六三%となっている。
 土地取引件数は、地方圏では低調に推移しているものの、東京圏・大阪圏では不動産証券化に伴うオフィスビル需要や旺盛なマンション需要を背景に土地取引が活性化し、取引件数の増加がみられる。

〈第4章〉 地価の動向

 平成十三年地価公示により昨年一年間の全国の地価の状況をみると、大都市圏では住宅地(五・六%下落)・商業地(八・三%下落)ともに下落幅は縮小し、特に、商業地は二年連続して下落幅が縮小した。
 地方圏では、住宅地(二・八%下落)はわずかな下落、商業地(七・〇%下落)は前回公示と同じ下落幅であった。
 住宅地・商業地ともに、全体としては下落しているが、大都市圏においては、前回公示と比べ下落幅が縮小した地域の増加がみられ、また、利便性・収益性の差による地価の二極化がより進行し、都心部を中心に、上昇や横ばいの地点が増加した。


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中小企業白書のあらまし


―目覚めよ! 自立した企業へ―


中小企業庁


○今回の中小企業白書の特色

1 現下における典型的な中小企業の悩みを分析している。悩みの解決という観点から構造面での変化を見るとともに、具体的な解決事例を提示している。
2 事例については分かりやすく、かつ深掘りした分析を実施しており、一般の中小企業経営者の参考に資するものを多数掲載している。
3 近年の中小企業の経営課題という観点から、@ITの導入、A高齢者生活支援や環境など新分野への挑戦、B「第二創業」としての事業承継、等について分析を行っている。

T 中小企業への期待
  〜「自立した企業」に向けて〜

 近年、我が国の中小企業の行動には変化が見られる。財務省「法人企業統計季報」によると、平成十一年以降、中小企業(資本金一千万円以上一億円未満の法人)の売上高はほぼ横ばいで推移しているが、経常利益を見ると平成十二年一〜三月期以降、急激に回復している。この増収は主に人件費の抑制が影響しているものと考えられる。また、中小企業の設備投資とキャッシュフローの推移を見ると、平成十一年四〜六月以降キャッシュフローが設備投資を上回っており、設備投資のスタンスも慎重になっている(第1図参照)。中小企業は売上不振の下で、こうした人件費の抑制や設備投資の合理化等を行い、業績の回復に向けて必死にリストラクチャリングに取り組んでいる。
 しかし、このような状況の中でも、様々な経営革新を行い、業績を向上させている中小企業も数多く見られる。経済の停滞期は自社を見直す良い機会でもある。これからの中小企業は、前述のようなリストラクチャリングと並行して、自社が直面する経営環境や自社の強み・弱みを把握した上で、多角的な視点から、前例や他社・業界の慣行にとらわれない思い切った経営を行う企業、すなわち、「自立した企業」として活躍することが期待されている。

U 中小企業が抱える経営課題とその対応

1 需要の停滞
 現在の我が国の中小企業にとって「需要の停滞」は「大企業の進出による競争の激化」や「新規参入業者の増加」など、企業間の競争に関する経営課題を上回り、最も深刻な経営課題として認識されている。このことは、中小企業の経営者が、「不況の長期化」と認識しながらも、「自社は、顧客・取引先が何を必要としているのか十分把握できていないのではないか」という不安を抱えていることを示唆している。
 なぜなら、一九九〇年代を通して見ると、従来は安定的と思われてきた中小企業と顧客・取引先との間には、@下請中小企業比率の低下、A流通経路の短縮化(いわゆる「卸の中抜き」現象)、B消費の多様化、などに代表される大きな変化が生じており、中小企業の経営者は顧客の確保に不安を抱いているからである。
 今後は中小企業においても、「顧客・取引先が何を必要としているか」という情報に絶えず耳を傾けることが重要であり、商品を販売した後であっても利用者に感想を聞き、商品の改良を重ねるといった地道な取組が必要であろう。
【取組事例】
〈顧客の生の声を聞いて商品の用途を拡大〉
 衛生機器の製造・販売会社であるA社は、防災訓練等に参加して顧客の生の声を吸い上げ、災害時用と考えていた自社製品の簡易トイレが介護用、アウトドア用等の幅広いニーズがあることに気付き、病院やアウトドアショップなどに営業を展開し、売上を伸ばしている。

2 資金調達環境の悪化
 中小企業においては、「既往借入金の返済負担」が深刻な課題となっている。既往借入金の返済負担の重さを、有利子負債とキャッシュフローの比率(必要返済期間)で見ると、中小企業の場合、平成元年以降平成十年までは増加し、必要返済期間は直近で十九年と、大企業・中堅企業と比較しても高い水準にある(第2図参照)。また、借入金依存度を見ても、一九九〇年代は上昇傾向にある。
 他方、金融機関の中小企業に対する融資の姿勢に変化が見られ、中小企業に対して融資を実行する際には、当該企業の安全性をこれまで以上に重視する傾向にある。国民生活金融公庫の調査においても、借入依存度が高くなるほど、また、自己資本比率が小さくなるほど、貸付金利のばらつきは拡大する傾向にあることが検証されている。
 このように中小企業は既往債務の返済負担を抱え、金融機関からは安全性を求められるようになっており、中小企業の資金調達をめぐる環境は厳しい状況にあるといえる。
【取組事例】
〈財務関連資料の整備による無担保借入〉
 食肉プラント製造業者B社は、事業に関する損害賠償訴訟中に資金繰りが苦しくなったが、顧問税理士の勧めで、以前から作成していた会計関連法規に基づく決算報告書と財務体質の改善を示した経営計画書により、取引金融機関に対して黒字経営を証明できたため、無担保でのつなぎ融資を確保することができた。

3 人材の確保
 中小企業では全体としては人員過剰でありながら、IT技術者に代表されるような専門的知識を有する技術者が不足の状態にあり、優秀な技術者を確保することが経営課題の一つとなっている(第3図参照)。一方、技術者の世界では専門能力の向上を強く求める傾向にあり、自分の能力を磨く機会がどれだけあるかを転職先選びで重視するようになってきている。
 今後、労働移動が増加し、転職率が高まると、企業は「能力開発を行っても従業員が辞めてしまう」といった理由により従業員への能力開発支援を抑制し、教育訓練費を削減したいと考えるかもしれないが、「最新技術を学べる環境にある」ということが技術者の転職先選びで重視されている現状を踏まえると、能力開発支援の制度が充実していない中小企業は、技術者のみならず優秀な人材を採用できなくなるとも考えられる。今後、人材不足に悩む中小企業にとっては、従業員のやる気を引き出すための創意工夫により魅力的な組織作りを行い、従業員にとっての企業価値を高めていくことがこれまで以上に重要となっていくのではないだろうか。
【取組事例】
〈独自の技能士資格制度を創設し、人材育成を強化〉
 金型・工具メーカーC社は、独自の技能士資格制度を創設し、人材育成を強化するとともに、古参従業員から若手従業員への円滑な技能承継により高度な技術力を保持している。また、こうした能力開発支援制度を外部にPRしたことで、高専卒等の優秀な人材を多数確保することが可能となるなど、人材の採用面にも好影響が生まれている。

4 IT時代における経営革新
 中小企業においてもITの基礎インフラともいえるインターネットの導入が確実に進展しており、インターネットを利用して外部や社内での情報交換に前向きに取り組んでいる状況にあるが、近時では情報交換にとどまらず、積極的に売上やサービスの質の向上にいかすよう試みる傾向がうかがわれる。
 ただし、IT導入による具体的な効果を尋ねたところ、「業務の合理化、効率化」、「社内情報の共有化」が進んだとの回答が上位を占める一方で、「新サービス等の開始」、「新規顧客の獲得」との回答は低い水準にとどまり、大企業と比較しても低くなっている(第4図参照)。今後、中小企業においてはITの導入による業績の向上、企業体質の強化に結びつけるための一層の工夫が必要である。
 また、IT投資には、初期投資コストのほかに、システムを稼働するためのランニングコスト、さらにはシステムのバージョンアップに係る追加コスト、あるいはシステム導入当初の初期の混乱や、新たな人件費負担などの様々なコストが発生する。IT導入により経営成果の向上を果たすには、@既存業務の効率化を徹底して、従来発生していた費用を低減する、A新たな市場を開拓する、など投資コストを上回るメリットを確保する必要がある。
【取組事例】
〈社内情報の共有化・業務の効率化〉
 精密機械器具卸売業D社は、従来は営業報告書等を主に紙ベースで回覧していたため、顧客情報を定量的に分析することが困難であったが、共有ソフトを効果的に活用することにより、情報検索の容易化・苦情の類型化等を図ることが可能となり、苦情処理を迅速に行うことができるようになった。
〈電子商取引等受発注業務への応用〉
 金型メーカーE社は、下請構造からの脱却のためインターネットでの受発注を開始した。ネットワーク上で自社の技術知識を提示するとともに、ネット上の技術相談にも一日四時間を費やすほどの緻密な対応を試みることで信用力の向上と顧客ニーズの把握に成功しており、現在では売上の約七〇%をインターネット経由の受注で確保している。
〈経営の高度化(業務・組織の見直し)〉
 靴下卸売業F社は、協力企業すべてのPOSデータを共有して生産から販売までの大胆な業務見直しを行い、従来の固定概念にとらわれず既存の業務プロセスの改革に取り組んだ結果、小口受注(一足から)・納期短縮(一〜二日で納品)など売れ筋の激しい移り変わりにも柔軟かつスピーディーに対応でき、精緻な在庫管理が行える体制作りに成功している。

V 社会の新たなニーズにこたえる中小企業

1 高齢者生活支援ビジネス
 介護保険制度の導入によって、介護サービスへの民間企業の参入が促進され、多くの企業が介護市場に参入してきている。また、介護サービスにとどまらず、人口構造の高齢化は高齢者生活全般を支援する多様なビジネスニーズを創出している。
 これら高齢者生活支援ビジネスは、@福祉用具、サービス(ソフト)ともにニーズが多種多様であり、きめ細やかな対応が必要である、A顧客のニーズを正確に把握するためには地域に密着することが必要である、といった点から中小企業に適していると判断される。
【取組事例】
〈高齢者が好むカラフルな服を開発〉
 服装メーカーG社は、高齢者に関する勉強会を毎週開催することで知識を蓄積するとともに、老人ホーム訪問等を通じて高齢者自身が好む「カラフルで自らが脱着しやすい服」を開発し、売上の増加に成功している。

2 環境ビジネス
 環境ビジネスは今後発展する分野であり、経済産業省の試算では、市場及び雇用規模について、平成十年では約二十一兆円、約八十八万人であるが、平成二十二年には約三十八兆円、約百三十六万人の規模になるとされており、特にリサイクルと廃棄物処理の市場規模が大きくなっている。
 このような状況の中で、中小企業は、リサイクル等の分野をはじめとして、環境問題に対応した新たなビジネスを展開し始めている。リサイクルビジネス等における顧客は環境意識の高い行政や地域住民であることが多く、これらのニーズに合致したリサイクルビジネス等の展開を図っていくことが重要である。
【取組事例】
〈自社の生ゴミを堆肥化することにより有機農産物を安価で提供〉
 スーパーH社は、自社から排出される生ゴミを堆肥化して安価な有機農産物を提供するという独自のシステムを確立することで、自社の利益のみならず、地域住民の環境意識の醸成にも努めている。

W 「第二創業」としての事業承継の円滑化

 既存の中小企業の多くは経営者の高齢化という構造変化が進んでおり、後継者が決まらないため事業が存続できず、そのまま廃業に至っている企業も少なくない。
 また、廃業まで至っていなくとも、経営課題として後継者難を挙げる企業も多い。中小企業にとって、後継者を選び、事業を継承させていくことは、それぞれの企業での重要な経営課題であると同時に、我が国経済全体の活力維持の観点から創業と同様に重要な政策課題である。
 したがって、事業承継が経営者だけの問題にとどまらず、後継者にも大いにかかわってくるとの理由から、円滑な事業承継の実現のためには、経営者と後継者双方で企業の経営基盤の強化に努めるなど、個々の企業の経営努力によって対処することが求められる。
【取組事例】
〈後継者が「新規事業の創出」を事業承継の条件に提示〉
 有機化学品メーカーI社の経営者は、次男であり、もともと承継する意思はなかったが、前経営者が興した事業をそのまま継承するのではなく、新規事業を立ち上げることを条件として平成九年に事業承継を実現させている。承継後は財務体質の改善を課題として掲げ、従業員にも業務に対する動機付けをしながら自社の経営課題の解決を図っている。


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消費支出(全世帯)は実質二・三%の減少


―平成十三年五月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十三年一月に実質減少となった後、二月、三月は二か月連続の実質増加となったが、四月、五月は二か月連続の実質減少となった。
 一人当たりの消費支出は九万三千二百六十六円で、前年同月に比べ実質一・四%減少した。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十二年六月以降四か月連続の実質減少となった後、十月、十一月は実質増加となり、十二月以降六か月連続の実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十二年十月、十一月に実質減少となった後、十二月は実質増加、十三年一月は同水準、二月、三月は実質増加となったが、四月、五月は二か月連続の実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十七万四千五百三十五円となり、前年同月に比べ、名目一・六%の減少、実質一・〇%の減少となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質一・四%の増加となった。
 勤労者世帯の消費支出は、前月に比べ実質〇・一%の増加となった。












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普通世帯の消費動向調査


―平成十三年六月実施調査結果―


内 閣 府


 消費動向調査は、家計消費の動向を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とするために、全国の普通世帯(単身世帯及び外国人世帯を除いた約三千万世帯)を対象に、約五千世帯を抽出して、消費者の意識、主要耐久消費財等の購入状況、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定について、四半期ごとに調査している。また、年度末にあたる三月調査時には、主要耐久消費財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成十三年六月に実施した調査結果の概要である。

1 調査世帯の特性

 平成十三年六月の調査世帯の世帯主の平均年齢は五二・六歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・五人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は七四・六%となっている。また、有効回答率は九九・八%(有効回答世帯数は五千三十一世帯)となっている。

2 消費者の意識

(1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果
 消費者意識指標七項目中五項目を総合した消費者態度指数は、「雇用環境」に関する意識が悪化したものの、「物価の上がり方」、「耐久消費財の買い時判断」、「収入の増え方」及び「暮らし向き」に関する意識が改善したため、四〇・九(前期差〇・七ポイント上昇)となり、三期ぶりで上昇した(第1図参照)。
(2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果
 各消費者意識指標について十三年六月の動向を前期差でみると、「雇用環境」に関する意識(〇・三ポイント低下)が悪化したものの、「物価の上がり方」に関する意識(二・四ポイント上昇)、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(一・一ポイント上昇)、「収入の増え方」に関する意識(〇・五ポイント上昇)及び「暮らし向き」に関する意識(〇・三ポイント上昇)が改善を示した(第1表参照)。

3 サービス等の支出予定(季節調整値)

 十三年七〜九月期のサービス等の支出予定八項目の動きを「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値(サービス支出DIでみると、以下のとおりである(第2図参照)。
(1) 高額ファッション関連支出DTは、このところマイナスとなっているが、前期がマイナス六・七%のところ、今期はマイナス九・〇%となっている。
(2) 学習塾等補習教育費DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が五・七%のところ、今期は七・〇%となっている。
(3) けいこ事等の月謝類DIは、他の支出DIと比較して高い水準にあり、前期が二・九%のところ、今期は三・〇%となっている。
(4) スポーツ活動費DIは、このところプラスが続いていたが、前期がマイナス〇・一%のところ、今期もマイナス〇・一%となっている。
(5) コンサート等の入場料DIは、このところプラスになっているが、前期が二・六%のところ、今期は二・三%となっている。
(6) 遊園地等娯楽費DIは、このところマイナスとなっているが、前期がマイナス一〇・三%のところ、今期はマイナス一一・四%となっている。
(7) レストラン等外食費DIは、このところマイナスとなっているが、前期がマイナス一七・〇%のところ、今期はマイナス一八・七%となっている。
(8) 家事代行サービスDIは、おおむね安定した動きが続いており、前期がマイナス一・二%のところ、今期はマイナス一・八%となっている。

4 旅行の実績・予定(季節調整値)

(1) 国内旅行
 十三年四〜六月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は、前期差で〇・七ポイント上昇し三五・〇%となった。旅行をした世帯当たりの平均人数は、前期差で〇・一人増加し三・〇人となった。
 十三年七〜九月期に国内旅行をする予定の世帯割合は、十三年四〜六月期計画(以下「前期計画」)差で〇・九ポイント低下し三一・〇%、その平均人数は、前期計画差で横ばいの二・九人となっている。
(2) 海外旅行
 十三年四〜六月期に海外旅行をした世帯割合は、前期差で〇・三ポイント上昇し五・三%となった。その平均人数は、前期差で〇・一人減少し一・五人となった。
 十三年七〜九月期に海外旅行をする予定の世帯割合は、前期計画差で〇・六ポイント上昇し五・二%、その平均人数は、前期計画差で〇・一人減少し一・七人となっている。
<参 考>
1 消費者意識指標(季節調整値)
  (レジャー時間、資産価値)
 十三年六月の「レジャー時間」に関する意識は、前期差で〇・三ポイント上昇し四三・一となった。
 「資産価値」に関する意識は、前期差で一・一ポイント上昇し三九・八となった。

2 主要耐久消費財等の購入状況
  品目別購入世帯割合の動き(原数値)
 十三年四〜六月期実績は、二十七品目中十一品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、十一品目が減少した。なお、五品目が横ばいとなった。
 十三年七〜九月期実績見込みは、二十七品目中六品目の購入世帯割合が前年同期に比べて増加し、十一品目が減少している。なお、十品目が横ばいとなっている(第2表参照)。

3 主要耐久消費財の買替え状況
 十三年四〜六月期に買替えをした世帯について買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気冷蔵庫、電気洗たく機などは八〜十二年となっており、その理由については故障が多い。また、「上位品目への移行」による買替えが多いものとしてパソコン、携帯電話、「住居の変更」による買替えが多いものとしては、ルームエアコンがあげられる。




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消費者物価指数の動向


―東京都区部(七月中旬速報値)・全国(六月)―


総 務 省


◇七月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として九九・五となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は四月〇・九%の下落、五月〇・七%の下落、六月〇・七%の下落と推移した後、七月は〇・九%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二十三か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九九・九となり、前月比は〇・四%の下落。前年同月比は四月〇・九%の下落、五月一・〇%の下落、六月〇・七%の下落と推移した後、七月は〇・九%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二十二か月連続で前年同月の水準を下回っている。
二 前月からの動き
(1) 食料は九八・六となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  生鮮魚介は二・八%の下落。
   <値上がり> まぐろ、さんまなど
   <値下がり> いか、かつおなど
  生鮮野菜は〇・八%の下落。
   <値上がり> キャベツ、さやえんどうなど
   <値下がり> なす、きゅうりなど
  生鮮果物は四・四%の下落。
   <値上がり> キウイフルーツ、レモンなど
   <値下がり> ぶどう(デラウェア)、すいかなど
(2) 家具・家事用品は八七・七となり、前月に比べ〇・七%の下落。
  家事用消耗品が一・九%の下落。
   <値下がり> 柔軟仕上剤など
(3) 被服及び履物は九九・九となり、前月に比べ三・〇%の下落。
  衣料が三・三%の下落。
   <値下がり> 背広服(夏物)など
(4) 教養娯楽は九七・二となり、前月に比べ一・三%の下落。
  教養娯楽サービスが二・三%の下落。
   <値下がり> ゴルフプレー料金など
(5) 諸雑費は一〇二・四となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  身の回り用品が一・七%の下落。
   <値下がり> ハンドバッグなど
三 前年同月との比較
○上昇している主な項目
 授業料等(一・六%上昇)、保健医療サービス(二・三%上昇)
○下落している主な項目
 家賃(一・一%下落)、通信(五・五%下落)、シャツ・セーター・下着類(五・二%下落)、家庭用耐久財(六・二%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は九九・九となり、前月に比べ〇・一%の上昇となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇〇・一となり、前月と変わらなかった。

◇六月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況
(1) 総合指数は平成七年を一〇〇として一〇一・〇となり、前月比は〇・三%の下落。前年同月比は三月〇・四%の下落、四月〇・四%の下落、五月〇・五%の下落と推移した後、六月は〇・五%の下落となった。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は一〇一・四となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は三月〇・六%の下落、四月〇・五%の下落、五月〇・七%の下落と推移した後、六月は〇・六%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二十一か月連続で前年同月の水準を下回っている。
二 前月からの動き
(1) 食料は九九・四となり、前月に比べ一・〇%の下落。
  生鮮魚介は四・六%の下落。
   <値上がり> ぶり
   <値下がり> いか、かつおなど
  生鮮野菜は五・〇%の下落。
   <値上がり> ほうれんそう、かぼちゃなど
   <値下がり> トマト、キャベツなど
  生鮮果物は七・二%の下落。
   <値上がり> りんご(ふじ)、キウイフルーツなど
   <値下がり> メロン(アンデスメロン)、すいかなど
(2) 家具・家事用品は八九・二となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家庭用耐久財が〇・六%の下落。
   <値下がり> 電気冷蔵庫など
(3) 被服及び履物は一〇三・四となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  衣料が〇・四%の下落。
   <値下がり> スーツ(夏物)など
(4) 教養娯楽は九七・七となり、前月に比べ〇・六%の下落。
  教養娯楽用品が一・四%の下落。
   <値下がり> 切り花(カーネーション)など
三 前年同月との比較
○上昇している主な項目
 家賃(〇・三%上昇)
○下落している主な項目
 通信(五・八%下落)、衣料(三・二%下落)、家庭用耐久財(六・一%下落)、穀類(二・四%下落)
(注) 上昇又は下落している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。
四 季節調整済指数
 季節調整済指数をみると、総合指数は一〇〇・九となり、前月に比べ〇・一%の下落となった。
 また、生鮮食品を除く総合指数は一〇一・二となり、前月と変わらなかった。





















    <8月29日号の主な予定>

 ▽防衛白書のあらまし………………防 衛 庁 

 ▽月例経済報告(八月報告)………内 閣 府 




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