官報資料版 平成13年8月29日




                  ▽防衛白書のあらまし……………………………防 衛 庁

                  ▽毎月勤労統計調査(六月分結果速報)………厚生労働省

                  ▽月例経済報告(八月)…………………………内 閣 府











防衛白書のあらまし


―二十一世紀の精強な自衛隊を目指して―


防 衛 庁


 平成十三年版「日本の防衛」(防衛白書)は、去る七月六日の閣議で了承され、公表された。
 白書のあらましは、次のとおりである。

第1章 国際軍事情勢
    ―軍事的観点から見た世界―

第1節 国際軍事情勢概観

1 国際軍事情勢全般
 冷戦終結後、世界的規模の武力紛争が生起する可能性は低下したが、複雑で多様な地域紛争が発生し、また、大量破壊兵器やミサイルなどの移転・拡散が強く懸念されている。これに対し、国際関係の一層の安定化を図るための様々な取組が進展している。
 また、地域紛争や民族紛争に伴って発生した大規模な人権侵害や大量の難民発生などの事態が、一国内の問題にとどまらず、これが国際社会の問題として認識される場合には、関係国が協調して軍事力を行使することによって問題解決を図る事例が見られるようになっている。

2 複雑で多様な地域紛争
 冷戦終結後も国家間の武力紛争が依然として発生し、民族の対立などに起因する内戦が引き続き生起している。

3 兵器の移転・拡散など
 近年、一部の国においては、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの運搬手段を含む兵器の取得や開発が顕著な形で進められており、不拡散体制の強化や対処能力の向上など、これに対する対応は国際社会が抱える大きな課題となっている。

4 軍事科学技術の動向
 情報通信技術(IT)の大幅な進歩に伴い、戦闘状況の変化はより迅速となり、戦域は広域化しており、兵器の破壊力の向上に加え、精密誘導技術やCISR技術を含む情報関連技術の研究開発が重視されてきている。
 なお、コンピュータ・ネットワークに対する情報戦、生物・化学兵器を用いたゲリラ・コマンドウ攻撃などの非対称的な脅威を克服する必要性も認識されるようになっている。

第2節 主要国の国防政策と国際社会の安定化への対応

1 主要国の国防政策
○本年一月に就任したブッシュ・米大統領は、大統領と軍の信頼関係の強化、ミサイルやテロなどの新たな脅威に対する防衛、二十一世紀の安全保障環境に対応できる軍への変革を目標として掲げ、ラムズフェルド国防長官に国防の包括的見直しを指示している。
○ロシアは、昨年、「安全保障コンセプト」を改定するとともに、「軍事ドクトリン」を策定し、一極支配と多極化推進という趨勢が発生しているとする国際情勢やロシアに対する国内外の脅威についての認識と、通常兵器を使用した攻撃に対しても核を使用できるとの認識を示した。ロシア軍においては、通常戦力の量的削減が続き、即応態勢の低下が見られ、このため核戦力を相対的に重視する傾向になっている。
○欧州主要国においては、冷戦終結後の戦略環境に適合するように戦力の再編・合理化を進めている。また、紛争予防・危機管理・平和維持などの分野で、欧州諸国の主体性を強化する動きが見られる。

2 国際連合などによる国際社会の安定化のための努力
 兵器の移転・拡散問題への対応は、国際社会の抱える緊急の課題となっており、大量破壊兵器の移転・拡散を防止する努力、通常兵器や関連汎用品・技術に関する輸出管理が行われている。

3 米露及び欧州における国際社会の安定化のための対応
 九三年に米露間で署名された第二次戦略兵器削減条約(STARTU)は、米露両国のより低い水準での戦略的安定の実現を目指しているが、まだ発効していない。

第3節 アジア太平洋地域の軍事情勢

1 全般情勢
 経済分野を中心とするグローバリゼーションの進展の結果、国家間の相互依存関係が拡大することによって、ある国家又は国家間の安全保障問題が国際社会共通の問題と認識された場合、関係各国が当該問題に関与する傾向が見られる。
 一方、冷戦時代のイデオロギーの対立に基づく軍事的対峙の構造が消滅し、むしろ地域の関係各国の国益対立の観点から不安定要因が生起し、又はそれへの対応がなされるという安全保障問題の地域化が進んできた。
 したがって、ある国家間の対立要因が、ただちに他の国々も巻き込んだ形で、対立する二つの国家群を形成して対峙に到る可能性は低いと考えられる。また、このような対立要因については、多国間の対話の場で協議される傾向が出てきたことから、それがただちに両国間の全面的対峙や武力紛争に発展する可能性はかなり抑制されると考えられる。
 他方、ASEAN地域フォーラム(ARF)などの多国間の対話の場は、あくまで関係国の対話や協議の場であり、アジア太平洋地域全体の平和と安定に責任を有する強制措置を伴う安全保障機構が確立していないこともあり、ある対立要因が紛争にエスカレートする危険性も存在しているのが現状である。冷戦後の軍事情勢について端的にいえば、東西間の軍事的対峙の構造が消滅するとともに、国家間の対立要因が、関係国の国益確保のせめぎ合いの中で、どのように発展するか予測可能性が低下したといえよう。
 このような軍事情勢の変化に対して、日米安保体制をはじめとする米国と地域各国との同盟関係の役割については、二国間の安全保障問題への対処という機能と同時に、地域の安定化機能の重要性が強調されるようになった。この地域の安定化機能を有効に機能させるためには、これら同盟関係が地域内諸国の理解と信頼感を得ることが重要である。

2 朝鮮半島
○北朝鮮では、金正日国防委員会委員長を中心とする政治体制が名実共に整備され、その国家の統治については一定の軌道に乗ってきていると考えられる。国家運営における軍事重視、軍事への依存は継続すると考えられる。
○米国との関係は、九九年から昨年にかけて一定の進展を見せた。ブッシュ政権は北朝鮮政策を見直し、「枠組み合意」の改善された履行、ミサイル・プログラムの検証可能な制限とミサイル輸出の禁止、より脅威の少ない通常兵力の態勢などについて北朝鮮と真剣な話し合いを行うことなどが発表された。
○昨年六月には南北分断後初めての南北首脳会談が行われ、南北共同宣言が署名された。その後、各種の対話が行われているものの、本格的な信頼醸成措置はいまだ実現しておらず、軍備管理・軍縮の分野は将来の課題となっている。
○ロシア、中国との関係は、冷戦期と比べ疎遠化していたが、関係改善の動きが活発化している。
○北朝鮮は、深刻な経済困難に直面しているにもかかわらず、依然として、軍事面に資源を重点的に配分し、戦力・即応態勢の維持・強化に努力していると考えられる。さらに、北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発や配備を行うとともに、大規模な特殊部隊を保持するなどし、いわゆる非対称的な軍事能力を依然として維持・強化していると考えられる。
○北朝鮮の核開発疑惑は、日本の安全に影響を及ぼす問題であるのみならず、大量破壊兵器の拡散の観点から国際社会全体にとっても重要な問題である。
○弾道ミサイルについては、ノドンの配備を行っていると考えられ、テポドン1、2も開発中であると考えられる。

3 極東ロシア
 極東地域のロシア軍の戦力は、九〇年以降、縮小傾向が見られ始め、現在もピーク時に比べ、たとえば、地上兵力が約十一万人になるなど大幅に削減された状態にあるが、依然として核戦力を含む相当規模の戦力が存在している。

4 中 国
○中国は、台湾問題は中国の内政問題であるとの原則を堅持しているが、最近では中台間の対等性に配慮する姿勢を示している。しかし、中台間には基本的立場になお隔たりがあるため、今後の台湾をめぐる問題の平和的解決に向けた動向の行方が注目される。
○米中関係について、ブッシュ新政権は、中国を「敵でもなく、味方でもない、戦略的競争相手である」と位置づけている。
○中国は軍事力の量から質への転換を企図している。九〇年代前半に新時期の軍事戦略を「一般的な条件下の局地戦」から「ハイテク条件下の局地戦」の勝利へと転換し、戦術・訓練面においても新「三打三防」が示され、科学技術を取り入れた訓練、すなわち「科技練兵」を重視している。
○国防費は、二〇〇一年度は対前年度当初予算比一七・〇%という伸びであり、八九年以来、十三年連続で一〇%以上の伸びを示し、伸び率ではここ数年で最高の水準となっている。国防に対する資源配分を急激に高める可能性は大きくないと考えられるが、近年の国防予算の伸びは、GDPの伸びを大幅に上回っており、国防費の総額も大幅に伸びていることを見れば、中国は今後も軍事力の近代化を推進していくものと考えられる(第1図参照)。
○中距離弾道ミサイルについては、日本を含むアジア地域を射程に収めるミサイルを約百基保有しており、従来の東風3(CSS―2)から新型の東風21(CSS―5)への転換が進みつつある。
○日本近海における中国の海軍艦艇の航行については、昨年八月の日中外相会談後の中国の情報収集艦の日本近海での活動は見られず、中国側の措置を評価できるが、わが国周辺における活動の活発化については、将来的には、いわゆる「外洋海軍」を目指しているとの指摘もあることから、どのような海軍戦略に基づいて活動を活発化させているのかという観点から、その動向について注目していく必要がある。
○台湾は、陳「政権」の下で台湾人民や財産への被害を局限化するために、台湾領域での戦争、紛争を防止することを原則とした「有効抑止、防衛固守」戦略へ転換した。

5 東南アジア・大洋州など
○依然として、この地域には南沙群島などの領有権をめぐる対立や少数民族問題などが不安定要素として存在しており、船舶の安全な航行を妨害する海賊行為も発生している。
○近年ASEANを中心として、地域の安定・発展を目指した積極的な動きが見られる。

6 アジア太平洋地域の米軍
 ブッシュ大統領は、本年三月に行われた就任後初の日米首脳会談において、米国は国際平和のため世界の必要な場所にプレゼンスを維持し続け、韓国及び日本におけるプレゼンスを維持していきたい旨を述べている。

7 各国の安定化努力
 近年、二国間の軍事交流などの機会の増加や、地域的な安全保障に関する努力(ARFなど)が定着しつつあるものの、安全保障上の諸問題に対する具体的な寄与については、これからの課題となっている。

第2章 わが国の防衛政策
    ―わが国を守るための基本的な考え方―

第1節 防衛の基本的考え方

1 わが国の安全保障
 わが国の安全保障のためには、外交や内政の分野のみならず、自らの防衛努力と日米安保体制の堅持が必要である。

2 憲法と自衛権
 日本国憲法は、主権国家としてのわが国固有の自衛権を否定するものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは認められている。自衛権の発動は、いわゆる自衛権発動の三要件に該当する場合に限られ、また、集団的自衛権の行使は憲法上許されないなどの政府見解が示されている。

3 防衛政策の基本
 国防の基本方針において、平和への努力の促進などによる安全保障基盤の確立や、効率的な防衛力の整備と日米安保体制を基調とすることを掲げている。その他の基本政策として、専守防衛、非核三原則の堅持、文民統制の確保などがある。

第2節 日米安全保障体制

1 日米安全保障体制の意義
 わが国は米国との二国間の同盟関係を継続し、その抑止力を機能させることで、適切な防衛力の保持と合わせて、わが国の安全を確保する。

2 日米安全保障共同宣言
 日米安保条約を基調とする日米同盟関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域で安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した上で、わが国防衛のための効果的な枠組みは、日米両国間の緊密な防衛協力であることや、米国が約十万人の前方展開兵力を維持することなどを改めて確認した。

第3節 防衛計画の大綱

1 大綱が前提としている国際情勢
 わが国周辺地域では、依然として大規模な軍事力が存在するとともに、その拡充・近代化など不透明・不確実な要素が残っている。

2 わが国の安全保障と防衛力の役割
 基盤的防衛力構想を基本的に踏襲するとともに、防衛力の規模及び機能の見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層進める。日米安保体制の重要性を再確認している。また、防衛力の役割として、わが国の防衛、大規模災害など各種の事態への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献を掲げている。

3 わが国が保有すべき防衛力の内容
 陸・海・空各自衛隊の体制を明示し、基幹となる部隊や主要装備の具体的な規模などを示している。

第3章 これからの防衛力整備
    ―新たな時代に対応した防衛力の整備―

第1節 新中期防衛力整備計画

1 新中期防の策定経緯と意義
 昨年十二月、「中期防衛力整備計画(平成十三年度〜平成十七年度)」(新中期防)が安全保障会議及び閣議で決定された。
 新中期防は、具体的な中期的見通しに立って、継続的かつ計画的に防衛力の整備を行うためのものである。また、新中期防は、防衛大綱に示された防衛力の水準への円滑な移行を行い、その水準をおおむね達成することを大きな柱の一つとしている。

2 計画の方針
 引き続き防衛大綱に従い、次の四つを計画の基本として掲げており、適切な防衛力の整備に努めることとしている。
【防衛力の合理化・効率化・コンパクト化の推進など】
 基幹部隊、主要装備などについては、引き続き防衛力の合理化・効率化・コンパクト化を推進し、防衛大綱に定める体制への移行をおおむね達成するとともに、必要な機能の充実と防衛力の質的な向上を図る。この際、次の点に留意する。
・情報通信技術を積極的に取り込みつつ、防衛庁・自衛隊を通じた高度なネットワーク環境の整備、各種指揮通信システムの整備、情報セキュリティの確保などの諸施策を重点的に推進する。
・ゲリラや特殊部隊による攻撃、核・生物・化学兵器による攻撃(NBC攻撃)など各種の攻撃形態への対処能力の向上を図る。
・災害派遣能力の充実・強化を図る。
・精強で質の高い人材の確保・育成、秘密保全を含む服務規律の徹底、処遇改善などの人事教育施策や国民各層との様々な交流などの諸施策を推進する。
【日米安全保障体制の信頼性の向上】
 日米安保体制の信頼性の向上を図るため一層の努力を傾注し、平素から日米間の安全保障面での緊密な協力関係を増進する。
【より安定した安全保障環境の構築への貢献】
 同盟国である米国とも密接に連携しつつ、安全保障対話、防衛交流などの各種施策を推進する。
【節度ある防衛力の整備】
 国の他の諸施策との調和を図りつつ、節度ある防衛力の整備に一層努力する。

3 基幹部隊の見直しなど
○陸上自衛隊は、新中期防期間末には十個師団・四個旅団・一個混成団などを基幹部隊とする十六万六千人程度(常備自衛官十五万六千人程度、即応予備自衛官一万人程度)の体制とする。
○海上自衛隊は、新中期防では、護衛艦部隊のうち地方隊の一個護衛隊を廃止して基幹部隊の体制移行を完了する。
○航空自衛隊は、新中期防では、八個警戒群を警戒隊に改編して基幹部隊の体制移行を完了する。

4 自衛隊の能力などに関する主要事業
○防空能力、周辺海域の防衛能力及び海上交通の安全確保能力、着上陸侵攻対処能力については、正面装備の更新・近代化を中心として、その充実に努めることとしており、主要装備の具体的整備規模も示している(第1表参照)。
○ゲリラによる攻撃など各種の攻撃形態への対処能力、災害救援、警戒監視能力、情報通信能力、教育訓練体制、事故防止・安全対策、防衛力を支える人的基盤の維持拡充、技術研究開発にかかわる事業を行う。
 また、空中における航空機に対する給油機能及び国際協力活動にも利用できる輸送機能を有する航空機の整備、弾道ミサイル防衛、調達改革・取得改革、防衛生産・技術基盤にかかわる事業を行う。
 以上の事業のほか、在外邦人などの輸送、情報能力、機動力及び輸送力、夜間行動能力、救難体制、継戦能力及び抗たん性、施設、基地周辺対策などの施策も行う。

5 日米安全保障体制の信頼性の向上を図るための施策
 日米安保体制の信頼性の向上を図るため一層の努力を傾注し、平素から日米間の安全保障面での緊密な協力関係を増進する。

6 より安定した安全保障環境の構築への貢献
 より安定した安全保障環境の構築に貢献するため、同盟国である米国とも密接に連携しつつ、安全保障対話、防衛交流などの各種施策を推進する。

7 所要経費
 計画期間中における防衛関係費の総額の限度は、将来における予見しがたい事象への対応、より安定した安全保障環境構築への貢献など、特に必要があると認める場合に、安全保障会議の承認を得て措置することができる一千五百億円程度を含め、平成十二年度価格でおおむね二十五兆一千六百億円程度をめどとしている。
 さらに、この計画については、三年後には、二十五兆一千六百億円の範囲内において必要に応じ見直しを行うこととしている。

8 その他
○将来の防衛力のあり方や防衛力整備の進め方について検討を行うこととしている。
○SACO(沖縄に関する特別行動委員会)関連事業については着実に行い、その所要経費については別途明らかにすることとしている。

第2節 平成十三年度の防衛力整備

1 基本方針
 平成十三年度は、新中期防の初年度であり、防衛大綱に示された防衛力の水準へ移行するため、防衛力の合理化・効率化・コンパクト化を推進するとともに、必要な機能の充実と防衛力の質的向上を図る。その際、次の点に配意する。
○防衛庁・自衛隊全体を通じた高度なネットワーク環境の整備、情報・指揮通信機能の強化、情報セキュリティの確保を図る。
○災害派遣能力の向上と即応態勢の充実強化を図る。
○ゲリラや特殊部隊による攻撃、NBCなどに有効に対応できるよう装備などの充実強化を図る。
○二国間・多国間の安全保障対話・防衛交流を継続的に行い、その拡充を図る。
○より質の高い人材を確保・育成するとともに、精強な部隊の練成に努める。
○民間技術・民生品の活用や装備の一部共用化開発によるコスト削減にも配意しつつ、科学技術の著しい進展に対応した技術研究開発を推進する。
○基地周辺対策について、引き続き周辺環境整備事業の充実に努めるとともに、在日米軍駐留経費負担について、在日米軍の円滑かつ効果的な運用に資する観点から、その所要額を確保する。

2 新たな時代における防衛力の整備
 情報通信技術革命への対応、各種災害への対応、重要事態への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献、防衛基盤の拡大、着実な体制変換、国際化・ハイテク化に対応した人材の育成、精強な部隊の練成、隊員施策と規律の維持、装備の充実と将来への対応、装備の更新・近代化などを行う。

3 防衛関係費
 平成十三年度の防衛関係費の総額は、四兆九千三百八十八億円であり、前年度より百七十一億円増加(SACO関係経費を除く。)しているが、平成十三年度予算について、物価上昇などを考慮し前年度価格に換算した場合、実質伸び率は〇%となり、引き続き抑制されたものとなっている。
 なお、平成十三年度予算においては、SACO関係経費について百六十五億円が予算措置されている。

第4章 わが国の防衛と日米安全保障体制に関連する諸施策
    ―万一の侵略事態への対応と日米の協力関係の向上―

第1節 わが国の防衛

1 警戒監視活動など
 自衛隊は、平素から周辺海域での警戒監視や対領空侵犯措置、軍事情報の収集などを行っている。

2 各種の作戦
 万一、外部からの武力攻撃が生じた場合、自衛隊は、防空のための作戦、周辺海域の防衛と海上交通の安全確保のための作戦、着上陸侵攻対処のための作戦、ゲリラや特殊部隊による攻撃など各種侵略形態に対処するための作戦を行う。

3 有事法制への取組など
【有事法制への取組】
 政府としては、有事法制は、わが国への武力攻撃などに際し、自衛隊が文民統制の下で適切に対処し、国民の生命・財産を確保するという自衛隊の任務遂行を全うするとの観点から、また、そのような防衛態勢を整備することが、わが国に対する武力攻撃の抑止に資するとの観点から必須であり、平時においてこそ備えておくべきものであると考えている。
 本年五月の第百五十一回通常国会における小泉総理の所信表明演説において、改めて明らかにされた方針の下、現在、政府としては、関係省庁の協力を得て事務体制を整えつつ、有事法制検討の基本的考え方や枠組みなどについて、内閣官房を中心に関係省庁で検討作業を行っている。防衛庁としても、要員面での協力を含め、内閣官房における検討に協力するとともに、これまで行ってきた有事法制研究を踏まえ、政府全体の検討内容、スケジュールなどと整合を図りつつ、防衛庁における事務体制を強化して検討作業を行っている。
【部隊行動基準の策定に向けた取組】
 不審船や武装工作員などへの対応が求められる中、法令などの範囲内で部隊などがとり得る対処行動の限度を明確に示し、もって部隊行動を適切に律することが一層重要となってきており、防衛庁では、「部隊行動基準」の作成作業を開始した。

第2節 情報通信技術(IT)革命への対応

1 防衛庁・自衛隊における情報通信技術革命への対応に係る総合的施策の推進要綱
【基本的考え方】
〈基本認識〉
 情報通信技術の発展と普及は、社会のあらゆる分野において大きな変革を及ぼしている。このような変革期においては、防衛庁を含めたあらゆる組織は、情報通信技術による環境の変化を見通して、組織や業務のあり方を改革していかなければならない。
 今後とも、わが国の防衛という防衛庁・自衛隊の主たる任務の遂行に万全を期すためには、情報通信技術革命の成果を積極的に取り入れることにより、情報優越を追求し、防衛力を統合的かつ有機的に運用することが可能となる基盤を体系的に構築することが必要不可欠である。
〈基本方針〉
 将来のあるべき姿を見据えつつ、セキュリティが確保され、統合化された高度なネットワークを構築し、情報・指揮通信機能の強化を図ることを含め、あらゆる分野を高度に情報化することにより、情報優越を追求し、防衛力を統合的かつ有機的に運用し得る基盤を体系的に構築する。
 さらに、これらの施策による能力向上をいかして電子政府の実現など高度情報通信ネットワーク社会の形成に対応することを目指す。
【中核となる三つの施策】
 高度なネットワーク環境の整備、情報・指揮通信機能の強化、情報セキュリティの確保にかかわる施策を行う。
【人的・技術的基盤の整備】
 情報関連機器の基本的な操作要領を修得させるための施策などの人的基盤の整備、情報通信技術の動向に対応できる研究開発などの技術的基盤の整備を行う。
【諸外国との交流】
 米国防当局との間で開催する「日米ITフォーラム」などを通じて、米国における情報通信技術導入の組織的経験や導入手法を参考にするとともに、相互運用性の向上に向けた検討を行う。アジア諸国や欧州諸国との交流についても積極的に検討する。
【軍事における革命(RMA)への対応の研究】
 情報通信技術を中核とした先進技術を軍事分野に幅広く応用することによって、将来、装備体系、組織編成、戦術、訓練などを含めた今後の防衛力のあり方を大きく変える可能性も考えられる。
 このため、防衛庁・自衛隊としても、現在進行中の情報通信技術革命の成果を取り入れていくとともに、将来の防衛庁・自衛隊のあるべき姿について組織的・計画的に研究を行う必要がある。
【今後の取組のための留意事項】
 意識改革の重要性、コマーシャル・ベースの製品・技術の導入、不断の発展プロセスに即した事業・計画の柔軟な見直し、部隊実験・シミュレーションの重要性がある。

2 ネットワーク社会の安全確保への取組
 防衛庁では、従来、指揮通信システムをはじめとする各種コンピュータ・システムの機能を保全し、情報の保護を図るため、データ通信回線の(暗号の使用による)秘匿化、システムの分離(外部からの遮断)、情報セキュリティに関する統一的技術基準の策定などの措置を講じている。
 今後は、情報の漏えい、改ざん、破壊への対応などの情報保証に関する要素技術の研究、情報保証に関する基盤の整備、サイバー攻撃に対する対処手法の研究、システム運用基盤の構築といった施策を講じることとしている。

第3節 防衛力を形成する基盤

1 自衛隊の組織と人
 自衛隊は、各自衛隊を中心に、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所、技術研究本部、契約本部、防衛施設庁など、様々な組織で構成されている。隊員は、自衛官、即応予備自衛官、予備自衛官と事務官、技官、教官などからなっている。
 将来にわたり、予備自衛官の勢力を安定的に確保し、民間の優れた専門技術を有効に活用するため、予備自衛官補制度を導入した(第2図参照)。

2 日々の教育訓練
 自衛隊は、種々の制約の中で、事故防止など安全確保に細心の注意を払いつつ、隊員の教育や部隊の訓練などを行い、精強な隊員及び部隊の練成に努めている。

3 防衛生産・技術基盤の維持
 装備の面においても、防衛力を支える基盤を維持していくことが不可欠である。

4 調達改革・取得改革への取組
 今後とも引き続き、競争原理の強化やライフサイクルコストの抑制などの調達改革・取得改革を一層推進する。

第4節 日米安全保障体制に関連する諸施策

1 日米防衛協力のための指針(指針)
 指針は、より効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための堅固な基礎を構築することなどを目的としている。
 昨年九月には、わが国に対する武力攻撃や周辺事態に際して各々が行う活動に関して調整するため、指針において平素から構築することが明記されていた「調整メカニズム」が構築された。

2 指針の実効性を確保するための諸施策
【指針の実効性確保のための措置】
 九九年に周辺事態安全確保法、自衛隊法の一部を改正する法律が成立し、日米物品役務相互提供協定を改正する協定が承認された。
 また、船舶検査活動については、周辺事態安全確保法案の国会審議の過程で別途立法措置をとるという前提でこの法案から削除されていたが、昨年十月、船舶検査活動法案が国会に提出され、十一月に成立した。
【船舶検査活動法の概要】
 周辺事態に対応してわが国が実施する船舶検査活動に関し、その実施の態様、手続その他の必要な事項を定め、周辺事態安全確保法とあいまって、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、わが国の平和及び安全の確保に資することを目的とする。
 船舶検査活動に係る基本的事項、船舶検査活動を行う自衛隊の部隊などの規模及び構成などを周辺事態安全確保法に規定する基本計画に定める。防衛庁長官は、基本計画に従い、船舶検査活動の実施要項(実施区域の指定など)を定め、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊などにその実施を命ずる。

3 平素から行っている協力
 政策協議・情報交換、日米共同訓練、装備・技術面での相互交流などを行っている。

4 弾道ミサイル防衛に関する日米共同技術研究
 弾道ミサイル防衛は、専守防衛を旨とするわが国の防衛政策上の重要な課題である。また、純粋に防御的なシステムであり、専守防衛という政策に適することから、わが国の主体的取組が必要であるとの認識の下、これまで検討を行ってきた。九九年に閣議決定がなされ、防衛庁と米国防省との間で了解覚書を締結し、共同技術研究を開始した。
 今回の共同技術研究は、あくまで調査・研究段階のものである。開発段階、量産・配備段階への移行は、別途判断するものであり、これらの判断は、十分検討した上で行う(第3図参照)。

5 在日米軍の駐留を円滑にするための施策など
 わが国は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するため、財政事情などにも十分配慮しつつ、できる限りの努力を払ってきた。昨年九月、新たな特別協定(平成十三年度から十七年度までを対象)に署名し、十一月に国会で承認された。政府は、在日米軍施設・区域に関する諸施策について、日米安保条約の目的達成と周辺地域社会の要望との調和を図るため努力を重ねている。

第5章 多様化する自衛隊の役割と対応
    ―国内外に広がる活躍の場―

第1節 各種の事態への対応

1 緊急事態への対応
○九九年に自衛隊法が改正され、自衛隊の航空機に加え、船舶及び船舶に搭載したヘリコプターを使用して邦人などの輸送ができることとなり、輸送のための態勢が強化された。各自衛隊は、在外邦人などの輸送にかかわる訓練を行っている。
○不審船事案や武装工作員などによる不法行為への対処は、第一義的には警察機関の任務である。自衛隊は警察機関に対して必要な支援を行い、警察機関では対処が不可能又は著しく困難と認められる場合には、海上における警備行動や治安出動により自衛隊が対処し、さらに、事態が外部からの武力攻撃に該当する場合には、防衛出動により対処することとなる。
 九九年の能登半島沖の不審船事案の教訓・反省事項を踏まえて、海上自衛隊では、ミサイル艇の速力の向上や「特別警備隊」の新編、護衛艦などへの機関銃の装備などの事業を進めており、また、海上保安庁との間で連携の強化を図っている。
 また、武装工作員などによる不法行為に対処するため、治安出動の際における自衛隊と警察との連携要領を定めた協定について、暴動鎮圧を前提とした従来の規定を武装工作員などによる不法行為の事案にも対処できるよう改正した。
○防衛庁・自衛隊においては、生物兵器対処能力が欠落又は未検証の状況にあるため、本年四月の部外有識者の懇談会による医学分野における専門的観点からの報告を踏まえ、生物兵器への対処に取り組んでいく。

2 災害への対応
○災害派遣などの形態には、災害派遣のほか、地震防災派遣、原子力災害派遣がある。
○自衛隊が、災害派遣活動を迅速かつ的確に行うためには地方公共団体などの協力が必要不可欠である。このため、日頃から防災訓練などを通して連携強化を図り、自衛隊の活動をより有効なものとする必要がある。
○平成十二年度は、有珠山の噴火、三宅島の火山活動、中部地方の集中豪雨、鳥取県西部地震、芸予地震などに際して災害派遣活動などを行った(第4図参照)。
○防衛庁は、災害により迅速・的確に対処するため、災害の各種類型ごとの対処方針などを取りまとめたマニュアルを策定した。
 また、平成十二年度は、自衛隊統合防災演習として東京都総合防災訓練に参加したり、地方公共団体の実施する防災訓練や原子力防災訓練に積極的に参加するなどして、災害への対処に努めている。

第2節 より安定した安全保障環境の構築への貢献

1 国際平和協力業務
 自衛隊は、九六年以来、ゴラン高原において国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)に部隊などを派遣し、輸送などの業務に従事している。

2 国際緊急援助活動
 本年一月のインド地震に際して、自衛隊は、国際緊急援助隊を派遣し、テントなど救援物資の輸送及びテント設営の際の技術指導などの救援活動を行った。

3 安全保障対話・防衛交流及び多国間共同訓練
○防衛庁は、防衛首脳クラスなどのハイレベル交流、防衛当局者間の定期協議、部隊間の交流などを通して、韓国、ロシア、中国、東南アジア及びその他の諸国との防衛交流に積極的に取り組んでいる。
○防衛庁は、地域の安定化のため、アジア・太平洋地域防衛当局者フォーラムなど、自ら主体性をもって様々な対話の機会を設けている。
○防衛庁は、多国間共同訓練への参加は、自衛隊の各種技量の向上はもとより、関係国間の各種調整や意見交換を通じ、相互理解の促進や信頼関係の増進に寄与するものとの考えから、西太平洋潜水艦救難訓練や西太平洋掃海訓練に艦艇を参加させた。

4 軍備管理・軍縮分野への協力
○防衛庁は、化学兵器や生物兵器などに関する軍縮分野の努力に対して、条約案の作成などのために専門家を派遣するなど、様々な協力を行っている。
○防衛庁は、対人地雷禁止条約の規定に則り、二〇〇三年の二月末までに自衛隊が保有している対人地雷を廃棄することとしている。
○防衛庁は、昨年実施された中国黒龍江省北安市における遺棄化学兵器の発掘・回収作業に自衛官を派遣するなどの協力を行っている。
○防衛庁は、本年二月から国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)の本部職員として自衛官を派遣している。

第6章 国民と自衛隊及び諸問題への取組
    ―より一層の信頼と協力を目指して―

第1節 自衛隊と国民及び地方公共団体などとのかかわり

1 国民生活への貢献など
 自衛隊は、災害派遣のほかに、危険物の処理、医療面での貢献、運動競技会に対する協力、国家的行事での礼式、輸送への協力、密航船対策への協力、教育訓練の受託、南極地域観測への協力などを通じ、国民生活とかかわっている。

2 自衛隊への理解を深めてもらうための活動など
 防衛庁は、自衛隊や防衛に関する知識の普及、自衛隊の部隊や施設の公開、体験入隊などの実施といった様々な広報活動を行っている。

3 情報公開・政策評価への取組
 本年四月からの情報公開法の施行に伴い、防衛庁と防衛施設庁は、それぞれ情報公開の窓口を開設し、情報公開に取り組んでいる。
 また、防衛庁としては、本年二月、政策評価に関する実施要領を定めたところであり、政策評価に取り組むこととしている。

4 自衛隊の活動や自衛官の募集・就職援護などに対する協力
 自衛隊の活動や自衛官の募集・就職援護などに対する地方公共団体や各種の団体による様々な支援・協力は不可欠である。

5 即応予備自衛官及び予備自衛官制度などの運用に対する協力
 即応予備自衛官や予備自衛官の制度を運用するためには、退職自衛官の再就職先企業などの理解と協力が不可欠である。
 防衛庁は、企業に対して即応予備自衛官雇用企業給付金を支給している。

6 NPOとのかかわり
 各種シンポジウムでの交流や、災害救援や国際交流の場などにおいて交流することなどについて、今後検討することとしている。

第2節 地域社会と防衛施設

1 防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策
 政府は、防衛施設と周辺地域との調和を図るため、騒音対策や生活関連施設の整備への助成などの施策を行っている。

2 環境保全への取組など
 自衛隊は、全国の演習場などの施設や多数の装備の維持管理において、粉塵やばい煙などが発生する場合には、環境保全の観点から、その防止、軽減に努めるとともに、防衛庁の自主的な取組としてPCB廃棄物の保管状況の一斉調査も行っている。
 在日米軍施設・区域をめぐる環境問題について、政府は、米側と十分協議の上、わが国の公共の安全や市民生活に妥当な考慮がなされるよう対処している。厚木飛行場内の米軍家族住宅地区に隣接する廃棄物処理業者の焼却炉に起因する大気環境保全問題について、政府は、本年四月、適切な補償の下、焼却炉を撤去することとした。
 また、昨年九月、日米両国政府は、在日米軍施設・区域の周辺住民並びに米軍人、軍属及びその家族などの健康と安全の確保を共通の目的とすることに合意し、「環境原則に関する共同発表」を行った。

3 在日米軍施設・区域に関する諸施策
 空母艦載機の着陸訓練場の確保に関する施策などを行ってきている。

第3節 沖縄に所在する在日米軍施設・区域

1 SACO設置以前における整理・統合・縮小への取組
 日米両国は、地元の要望の強い事案を中心に、整理・統合・縮小の努力を継続的に行ってきた。

2 SACO設置以降の在日米軍施設・区域にかかわる問題解決への取組
○政府は、沖縄県に所在する米軍施設・区域にかかわる諸課題を協議する目的で、九五年、日米間にSACOを設置した。
○SACOは、九六年、普天間飛行場の全面返還をはじめとする土地の返還、県道104号線越え実弾射撃訓練の本土演習場での分散実施など、諸問題の改善に向けた計画及び措置を取りまとめ(SACO最終報告)、日米安全保障協議委員会(SCC)に報告し了承を得た。
○SACO最終報告の実施に取り組んできた結果、土地の返還については、十一事案のうち八事案が着実に進捗している。また、土地の返還以外の案件についても、そのほとんどが実現している。
 普天間飛行場の返還については、九九年、「普天間飛行場の移設に係る政府方針」を閣議決定し、今後の取組方針を明らかにした。この閣議決定に基づき、政府、沖縄県及び地元地方公共団体の間で協議を行う、「代替施設協議会」が昨年八月設置され、安全・環境面に十分留意しつつ、基本計画の策定に向けて、鋭意協議を進めている。また、日米間においても、基本計画の策定に向け、普天間実施委員会(FIG)などにおいて緊密な協議を進めている。

第4節 様々な人事施策と秘密保全に対する取組

1 職場の一層の活性化を目指して
○防衛庁では、官民人事交流制度、任期付隊員制度(自衛官以外の隊員の任期付採用制度)及び新たな再任用制度の導入や、自衛隊員の再就職手続の改正など種々の人事施策を実施している。
○防衛庁では、隊員が強い使命感を持ってわが国の防衛という崇高な任務を全うするためには、隊員のメンタルへルス(精神的健康)を保持することが極めて重要であるとの認識の下、メンタルへルスに関する様々な検討を行っている。

2 秘密保全に対する取組
 昨年九月の秘密漏えい事件の発生を受け、防衛庁では、同種事案の再発防止に万全を期し、国民の信頼を高め、その期待に応えるよう、全力を挙げて取り組んでいる。


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賃金、労働時間、雇用の動き


毎月勤労統計調査 平成十三年六月分結果速報


厚生労働省


 「毎月勤労統計調査」平成十三年六月分結果の主な特徴点は、次のとおりである。

◇賃金の動き

 六月の調査産業計の常用労働者一人平均月間現金給与総額は四十八万二千三円、前年同月比は一・七%減であった。現金給与総額のうち、きまって支給する給与は二十八万三千九百十九円、前年同月比〇・一%増であった。これを所定内給与と所定外給与とに分けてみると、所定内給与は二十六万六千二百三円、前年同月比〇・二%増、所定外給与は一万七千七百十六円、前年同月比は二・八%減であった。
 また、特別に支払われた給与は十九万八千八十四円、前年同月比は四・〇%減であった。
 実質賃金は、〇・九%減であった。
 きまって支給する給与の動きを産業別に前年同月比によってみると、伸びの高い順に鉱業二・九%増、金融・保険業二・二%増、建設業一・一%増、製造業〇・四%増、卸売・小売業,飲食店〇・二%増、電気・ガス・熱供給・水道業〇・一%増、サービス業〇・二%減、不動産業〇・八%減、運輸・通信業二・一%減であった。

◇労働時間の動き

 六月の調査産業計の常用労働者一人平均月間総実労働時間は一五九・六時間、前年同月比は〇・四%減であった。
 総実労働時間のうち、所定内労働時間は一五〇・四時間、前年同月比〇・二%減、所定外労働時間は九・二時間、前年同月比三・二%減、所定外労働時間の季節調整値は前月比〇・五%減であった。
 製造業の所定外労働時間は一二・四時間、前年同月比八・二%減、季節調整値の前月比は二・八%減であった。

◇雇用の動き

 六月の調査産業計の雇用の動きを前年同月比によってみると、常用労働者全体で〇・二%減、常用労働者のうち一般労働者では〇・九%減、パートタイム労働者では二・九%増であった。
 常用労働者全体の雇用の動きを産業別に前年同月比によってみると、前年同月を上回ったものはサービス業二・〇%増、不動産業一・四%増、建設業〇・七%増であった。前年同月を下回ったものは鉱業〇・二%減、卸売・小売業,飲食店〇・五%減、運輸・通信業〇・八%減、製造業一・七%減、金融・保険業四・六%減、電気・ガス・熱供給・水道業六・六%減であった。
 主な産業の雇用の動きを一般労働者・パートタイム労働者別に前年同月比によってみると、製造業では一般労働者二・〇%減、パートタイム労働者〇・二%増、卸売・小売業,飲食店では一般労働者二・三%減、パートタイム労働者二・一%増、サービス業では一般労働者一・四%増、パートタイム労働者四・三%増であった。










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月例経済報告(八月)


―景気は、さらに悪化している―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)
 景気は、さらに悪化している。
・個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。住宅建設は、減少している。
・失業率は高水準で推移し、求人や残業時間も弱含んでいる。
・輸出、生産が大幅に減少し、設備投資も減少している。
 先行きについては、世界経済の減速や在庫の増加など、懸念すべき点がみられる。

(政策の基本的態度)
 政府は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」に従い、不良債権問題を抜本的に解決するとともに、構造改革のための七つの改革プログラムをパッケージとして実施するなど、日本経済の再生のための構造改革を断行する。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

◇個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。
 消費総合指数をみると、このところ減少している。
 また、需要側統計である家計調査でみると、実質消費支出は、平成十三年五月は前月比増加したものの、六月は減少した。
 販売側統計をみると、百貨店販売額は、夏物クリアランスセールや中元ギフトセールの開催時期を早めたことの影響などにより、前年を上回った。一方、小売業販売額やチェーンストア販売額は、依然として弱い動きが続いている。
 耐久消費財についてみると、新車販売台数は、新車投入効果などにより、前年を大きく上回った。一方、家電販売金額は、エアコンが大幅に増加したものの、パソコンの大幅な減少が続いていることなどから、弱い動きとなっている。
 旅行は、海外旅行は前年を上回ったものの、国内旅行は前年比減少に転じており、総じてみると引き続き減速感がみられる。
 こうした需要側と販売側の動向を総合してみると、個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。
 個人消費の動向を左右する家計収入の動きをみると、定期給与は六か月ぶりに前年をやや上回ったものの、現金給与総額は特別給与の大幅な減少により引き続き前年を下回っており、弱い動きが続いている。また消費者マインドは、このところ弱含んでいる。

◇設備投資は、減少している。
 設備投資は、平成十一年末に持ち直しに転じて以降増加基調が続き、これまで景気を支える要素であったが、「法人企業統計季報」でみると、一〜三月期の設備投資は、全体として頭打ちとなった。大中堅企業について「法人企業動向調査」でみると、四〜六月期(実績見込み)は、製造業、非製造業ともに前期比で減少している。また、機械設備投資の参考指標である資本財出荷は、年明け以降減少を続けている。
 設備投資の今後の動向については、日銀短観の平成十三年度設備投資計画において非製造業を中心に減少が見込まれていること、機械設備投資の先行指標である機械受注が一〜三月期は前期比マイナスとなっており四〜六月期もほぼ横ばいの見通しとなっていることなどからみて、減少が続くものとみられる。

◇住宅建設は、減少している。
 住宅建設は、平成十一年以降おおむね年率百二十万戸前後で推移してきたが、平成十三年四〜六月期は百十五万戸程度となり、前期と比べ二四半期連続で減少している。これは、昨年堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、年明け以降公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移していることが主因である。この背景としては、資産価格が長期的に下落傾向にある中、雇用・所得環境が厳しさを増していることなど、消費者の住宅取得マインドが低下していることが考えられる。六月については、持家は増加したものの、貸家、分譲住宅が大幅に減少したことから年率一一〇・六万戸となった。
 先行きについてみると、住宅金融公庫融資の申し込み戸数が減少していることなど、住宅着工を減少させる要因が引き続きみられる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、総じて低調に推移している。工事の前払金保証契約実績に基づく公共工事請負金額は、昨年六月以降三月まで継続して前年を下回り、年度末にかけて発注が集中する一〜三月期の受注においても、前年を大きく下回る指標がみられた。
 平成十三年度当初における公共事業関連予算をみると、国の公共事業関係費は前年度に近い予算現額を確保しているものの、地方の投資的経費は、厳しい財政状況を反映して引き続き前年度を下回っている。
 新年度に入り、四月には大手五十社受注額、請負金額が前年を上回ったが、いずれも五月には再び大きく前年を下回り、六月も前年比マイナスが続いている。これらには前年度当初の発注が五月以降にずれ込んだために、前年四月の水準が大きく落ち込んでいたことなどの影響が考えられる。また、年度当初は発注額が比較的小さく、前年比が振れやすいことにも留意する必要がある。
 七〜九月期の公共投資については、予算状況や執行方針などを踏まえると、引き続き前年を下回る可能性がある。

◇輸出は、大幅に減少している。輸入は、減少している。貿易・サービス収支の黒字は、減少している。
 輸出は、世界経済の減速を背景として、半導体等電子部品などの電気機器に加え一般機械などが減少していることから、大幅に減少している。地域別にみると、アジア、アメリカ、EUのいずれの地域向けも減少している。今後は、世界経済の減速が続いた場合、これが我が国輸出の下押し要因として作用するものと見込まれる。
 輸入は、内需の弱さを反映して、半導体等電子部品などの機械機器を中心に減少している。地域別にみると、アジアからの輸入はアジアNIEsからの輸入が機械機器を中心に大幅に減少するなど減少傾向で推移しており、アメリカ・EUからの輸入は減少している。
 国際収支をみると、輸出数量が輸入数量の減少を上回って減少していることを要因として、貿易・サービス収支の黒字は、減少している。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は大幅に減少する中で、在庫が増加している。
 鉱工業生産は、一〜三月期は前期比三・七%減の後、四〜六月期は同四・〇%減と今年に入ってから二期連続で大幅に減少している。輸出の減少等により、IT関連品目の生産が減少していることが主因である。
 生産の先行きについては、七月は減少、八月は増加が見込まれている。また、四〜六月期は、IT関連品目において、在庫が減少しているものの、化学、鉄鋼等の生産財を中心に在庫の増加が続いていることは、生産の先行きに関して懸念すべき点である。
 一方、第三次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。

◇企業収益は、頭打ちとなっている。また、企業の業況判断は、製造業を中心に引き続き悪化している。倒産件数は、やや高い水準となっている。
 企業収益は、平成十一年以降改善しており、特に平成十二年半ば以降は大幅な改善が続いていた。今回の改善の背景としては、企業のリストラ努力が挙げられるが、製造業において売上高が伸びていることや、非製造業において平成十二年初までは変動費を削減してきたことも大きく寄与していた。しかし、「法人企業統計季報」によると平成十三年一〜三月期における経常利益は前年同月比横ばいとなっており、日銀短観によると平成十三年度上期は減益に転じる見込みとなっている。また、「法人企業動向調査」によると四〜六月期における大中堅企業の経常利益の判断(前期比「増加」−「減少」)は、「減少」超幅が拡大した。
 企業の業況判断について日銀短観をみると、大企業・非製造業では横ばいとなったが、電気機械を中心に製造業で引き続き大幅に悪化するなど、厳しさがみられる。また、「法人企業動向調査」で大中堅企業の業界景気の判断をみると、製造業、非製造業ともに悪化している。
 また、六月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで一千五百十件となるなど、やや高い水準となっている。

◇雇用情勢は、依然として厳しい。完全失業率がこれまでの最高水準で推移し、求人や残業時間も弱含んでいる。
 完全失業率は、六月は前月比同水準の四・九%と過去最高水準で推移した。
 また、他にも雇用情勢の厳しさを示す動きがみられる。新規求人数は、前年同月比でみると、製造業の減少幅が拡大したことを背景に、全体で減少に転じ(六月前年同月比一・一%減)、前月比でも減少となった(六月前月比六・八%減)。製造業の残業時間についても、八か月連続で前月比減となっている。雇用者数は横ばいで推移しているものの、自営業主・家族従業者数の減少を受け、就業者数は減少している。

三 物価と金融情勢

◇国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。
 輸入物価は、このところ、契約通貨ベースでは下落しているが、円ベースでは円安の影響を受けて上昇している。国内卸売物価は、平成十三年入り後弱含んでいる。最近の動きをみると、石油・石炭製品などは値上がりしているものの、電気機器や輸送用機器などが値下がりしていることから、下落している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、外食の下落の効果が一巡したことなどにより一般サービスは前年と比べやや上昇しているものの、繊維製品の下落幅拡大や石油製品の上昇幅縮小などにより一般商品は下落幅を拡大していることから、全体としては下落している。
 こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

◇金融情勢については、株式相場は、昨年春より下落基調で推移し、七月は、一段と下落した。
 短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、七月は、日本銀行による金融緩和措置を反映して、〇・〇一%から〇・〇二%で推移した。二、三か月物は、年明け以降、低下傾向で推移しているが、七月は、横ばいで推移した。長期金利は、昨年秋より低下基調で推移してきたが、七月は、国債の需給悪化を懸念する市場の見方などもあって、上昇した。
 株式相場は、昨年春より下落基調で推移している。四月末から五月上旬にかけて一旦上昇したものの、七月は、企業業績の悪化を懸念する市場の見方などもあって、一段と下落した。
 対米ドル円相場は、六月以降、円安基調で推移し、七月上旬には百二十六円台まで下落した後、横ばい圏で推移している。対ユーロ円相場は、五月下旬から六月初めにかけて百円台まで大きく上昇した後下落に転じ、七月末には百九円台に下落した。
 M+CD(月中平均残高)は、昨年後半以降、おおむね前年同月比二・〇%増程度で推移してきたが、年明け以降、郵便貯金からの資金シフト等を受けて、やや伸び率を高めている(七月速報:前年同月比三・三%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷などを背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和などを背景に、年明け以降低下している。

四 海外経済

◇アメリカの景気は、弱い状態となっている。アジアでは景気は減速している。
 世界経済をみると、全体として成長に減速がみられる。
 アメリカでは、企業収益の悪化から設備投資が大幅に減少する一方で、個人消費に底堅い動きがみられ、住宅投資が増加していることなどから、内需は緩やかながら増加している。在庫調整が進むなかで、生産活動が停滞し、稼働率が低下している。雇用は製造業等を中心に減少しており、失業率は上昇傾向にある。景気は、弱い状態となっている。先行きについては、所得税減税の効果が注目される一方、企業収益の悪化、稼働率の低下などが懸念材料となっている。
 ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気の拡大テンポは鈍化している。フランスでは、景気は安定した拡大を続けているものの、企業の先行き見通しは悪化している。イギリスでは、景気の拡大テンポは鈍化している。
 アジアをみると、中国では、個人消費や固定資産投資が堅調に推移しているが、輸出の伸びが鈍化したことから、景気の拡大テンポはやや鈍化している。韓国では、生産や輸出が減少するなど、景気は減速している。
 金融情勢をみると、アルゼンチンでは財政悪化懸念から金融不安が生じ、歳出削減策がとられることとなった。イギリスでは、八月二日に政策金利が〇・二五%ポイント引き下げられ、五・〇〇%とされた。
 国際商品市況をみると、原油価格は下落基調で推移していたが、七月二十五日のOPECの減産決定を受け持ち直した。


ユニバーサルデザイン


 高齢者や障害者の障壁を取り除く「バリアフリー」から一歩進んで、最近は「ユニバーサルデザイン」という言葉がよく聞かれます。「ユニバーサル」とは「普遍的な、すべての」という意味。ユニバーサルデザインは、障害の有無や年齢、性別、体格などにかかわらず、施設や製品、環境などが、すべての人にとって使いやすく考えられた、人にやさしいデザインのことです。
 ユニバーサルデザインには、@だれでも公平に利用できること、A使う上で自由度が高いこと、B使い方が簡単ですぐ分かること、C必要な情報がすぐに理解できること、Dうっかりミスや危険につながらないデザインであること、E無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること、Fアクセスしやすいスペースと大きさを確保すること、という「七原則」があります。
 ノンステップバスや建物内の広く段差のない通路から日用品まで、私たちの身近なところにユニバーサルデザインを取り入れたものが増えています。


 本紙八月十五日号に誤りがありました。「個人企業経済調査」〔第1表〕産業別営業上の資産・負債の製造業の長期借入金の対前年度比「三・六」は「三・〇」の誤りでした。お詫びして訂正します。



    <9月5日号の主な予定>

 ▽外交青書のあらまし………外 務 省 

 ▽労働力調査(六月)………総 務 省 




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