▽税金365日 高齢者や障害者と税………………国 税 庁
外交青書のあらまし
第1章 総 括
1 概 観
―二十一世紀の世界とアジア太平洋地域―
二十一世紀の幕が開いた。過ぎ去った二十世紀は、人類が未曾有の繁栄と同時に、歴史上比類のない戦争の惨禍を被った時代であった。アジア太平洋地域も、その主たる舞台の一つとなった。二十一世紀には、この地球の一人一人が、平和と繁栄を享受し、幸福を実現できる世界を築かねばならない。日本は、先進民主主義国の主要なメンバーとして、また、アジア太平洋地域の一員として、このような国際社会を建設するための国際協調において、リーダーシップを発揮し、その責任を果たすことが求められる。
二十一世紀の国際社会は、どのように形を整えるのであろうか。また、日本の位置するアジア太平洋の特徴はどのようなものとなるのであろうか。その中で、日本外交が直面する課題はどのようなものであろうか。新しい時代の潮流は、二十世紀の最後の瞬間に、既にその姿を見せ始めている。本年の外交青書においては、二十世紀最後の年を振り返りつつ、新たな時代を迎えた国際社会とアジア太平洋地域にみられる特徴的な事象と、日本外交が二十一世紀に直面するであろう課題について鳥瞰することとしたい。
【二十一世紀を迎えた国際社会】
二十一世紀を迎えた国際社会の新たな変貌を観察するには、次の三つの視角が必要である。
第一に、普遍的価値観及びそれに基づく諸制度の一層の広がりである。日本を含む先進民主主義諸国が、二十世紀後半を通じて拠って立ってきた、自由、民主主義、基本的人権の尊重、市場経済、多角的自由貿易体制といった価値観や制度が、今日の国際社会において、更に高い普遍性を獲得してきている。一部には、民族紛争の頻発、宗教上の過激主義の活発化や民主化の過程の中での揺れ戻しといった事象も見られるが、総体としては、これらの価値観や制度は、冷戦という価値観の相剋の時代を越えて、八〇年代から九〇年代を通じ、旧東欧諸国、旧ソ連邦圏、中南米、アジア、中東、アフリカにおいても広く共有されるようになってきた。
民主主義との関係では、アジアにおいて、九〇年代には、韓国が先進民主主義国に加わった。台湾では、民主選挙を通じて、初めて国民党以外の党から指導者が選出された。インドネシアでは、アブドゥルラフマン・ワヒッド大統領が民主的な手続きを経て選出された。また、欧州では、東欧革命、旧ソ連邦の崩壊に続いて、旧ユーゴースラヴィアの分裂から生まれたユーゴの独裁的なミロシェヴィッチ政権が二〇〇〇年に崩壊し、民主化を志向するコシュトゥーニツァ政権が誕生している。
また、経済的にも、計画経済を掲げた共産圏の消失により、市場経済と自由貿易が、地球上を広く覆うシステムとして機能するようになった。旧東欧圏・旧ソ連圏の国々を含むかつての共産主義国の多くが、現在、市場経済化を進めつつある。また、改革開放路線を走る中国の世界貿易機関(WTO)への加盟作業は最終段階にあり、加盟後に予想される経済的な変動に対処することが、現実の課題となっている。
このような普遍的な価値観や制度の伝播が、次に述べる情報通信技術の発達によって大きく促進されていることが特筆される。国際的なメディアによる世界各地の紛争の映像は、世界の様々な紛争により引き起こされる人道上の惨劇を、直ちに高い国際的関心の対象としてしまうが、今日では、国境を越えて爆発的に普及しているインターネットをはじめとする情報通信技術の発達が、一国内の人権問題や人道問題に対する国際世論の感度を、更に著しく高める結果を生んでいる。
第二に、科学技術の進歩と、それに伴う人類の活動の進展がもたらすグローバルな諸問題への対応が、ますます求められてきているということである。科学技術は、二十世紀の人類の生活を大きく変化させた。それは人類の幸福の増進に大きく役立ったが、その一方で、地球温暖化問題や、オゾン層破壊の問題など、国家の枠組みを越えて、地球的規模で取り組まねばならない環境問題を引き起こしている。また、軍事技術の進展に伴い高度化を重ねてきた大量破壊兵器や、その運搬手段である弾道ミサイルの拡散が加速化しており、新しい脅威をもたらしている。
科学技術との関連で、特筆されるべきは、二十世紀の最後に実現した情報通信技術(IT)の進歩である。その発展は、いまだとどまるところを知らない。また、人、モノ、サービス、資本、情報などの国境を越えた移動が驚異的なスピードで加速化している。それは、人類の繁栄を一層の高みに押し上げる力となる大きな可能性を秘めていると同時に、伝統的な価値観との相剋、貧富の格差の拡大、組織的な犯罪の拡大等の問題を生ぜしめている。
第三に、国際的な協調行動の重要性が、ますます高まってきている。国際社会全体への普遍的価値観の浸透と、グローバルな対応を必要とする国際問題の出現によって、二十一世紀には、これまでに増して一層緊密な国際協調が必要となってきている。今後も、米国は、国際社会において総合的に突出した力を有する国であり続けるであろう。しかし、二十一世紀の国際社会が直面する多種多様な問題に対処するためには、国際的な協調が不可欠である。自由、民主主義、基本的人権、市場経済、多角的自由貿易体制といった価値と制度を共有する国々が、協力して、責任を分かち合っていかなければならない。日本としても、このような取組に積極的に参画していく必要がある。
また、百八十九の加盟国を抱える唯一の普遍的国際機関である国際連合及び専門諸機関は、二十一世紀の国際的な協調を進めていく上で、中心的役割を果たすことが期待される。今後、国際連合及び専門諸機関は、多様化し、複雑化する国際社会の諸課題に的確に対応していかねばならない。そのためには、安全保障理事会を含む国連システムの強化が必要である。特に、安保理改革に関しては、二〇〇〇年に開催された国連ミレニアム・サミット及びミレニアム総会において、百五十五に及ぶ国々の首脳及び外相等が安保理改革を実現する必要性に言及し、安保理改革の動きに政治的な弾みを与えた。今後も、日本として、更に国連改革に積極的に取り組んでいかねばならない。
【グローバルな諸問題と日本の役割】
自由、民主主義、基本的人権、市場経済、多角的自由貿易体制といった普遍的価値や制度が、その本来の理念を国際社会において実現できるか否かは、国際社会が、これらの価値観や制度に対する新たな挑戦を克服できるか否かにかかっている。それらが、単に標榜されるにとどまらず、実際に個々の人間に幸福をもたらすことが重要である。そのためには、先進民主主義諸国をはじめとして、志を同じくする多くの国々が、協力し合い、協調し合って、現在、人類が直面している諸課題に適切に取り組んでいかなければならない。
日本は、第二次世界大戦に敗れた後に軍事大国となる道を放棄したが、武力行使を一般的に禁止した国連憲章や、多角的自由貿易体制を確立・強化した関税と貿易に関する一般協定(GATT)・世界貿易機関(WTO)のような普遍的な国際システムの下で、二十世紀後半に大きく国力を回復・伸張させ、先進民主主義国家としての地位を揺るぎないものとするとともに、日本の歴史上最も高い水準の繁栄を達成することに成功した。
この日本の成功は、日本国民の刻苦精励の結果であると同時に、これらの国際システムの存在に負うものである。また逆に、日本が依拠する国際的なシステムは、日本を含む多くの国々の協力によって支えられている。
二十一世紀に、日本は、成熟した先進民主主義国家として、このような国際的なシステムやルールの創設及び強化に一層積極的に参画していかなければならない。日本は、現在、経済再生のための努力を行っているが、こうした状況においてもなお世界第二の経済大国であり、国際社会が直面するであろう様々なグローバルな諸問題の解決に当たって、国際社会のリーダーの一員としてふさわしい役割を果たしていかなければならない。そして、その役割を遂行するに当たっては、言うまでもなく、国民の理解を得ながら国民とともに外交を展開しなければならない。
二十一世紀に人類社会が直面する課題として、特に、次の五つの分野を取り上げたい。
第一に、国際社会の平和と安定を脅かす大量破壊兵器とミサイルの問題である。
核兵器の拡散の危険に対処し、核軍縮に向けた取組を進めることは、国際社会の大きな課題である。日本は、二〇〇〇年に、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議において、将来に向けた核軍縮措置の合意形成に当たり、積極的に具体的提案を行ったほか、国連総会に「核兵器の全面的廃絶への道程」決議を提出し、圧倒的多数をもって採択された。核のない世界を実現するための具体的道筋を示したこの決議に従って、日本は、核軍縮・不拡散に向けての着実な進展が生まれるよう、国際的な協調行動のために更にリーダーシップを発揮していかなければならない。また、化学兵器禁止条約や生物兵器禁止条約の普遍性を高め実効的に運用していくため、日本としても積極的に取り組んでいかなければならない。
大量破壊兵器の運搬手段であるミサイルの拡散問題は、ますますその深刻さを増している。核兵器等の大量破壊兵器は、その運搬手段であるミサイルに搭載されるとき、地域の、さらには世界の安全保障環境に対して、特に深刻な脅威となる。グローバリゼーションとIT革命の進展により、このような兵器に関する機微な技術の入手及び原材料の移転が容易になる場合があるものと思われ、この問題への取組に対する一層真剣な努力が不可欠となっている。
また、ミサイル拡散の脅威への対処をめぐる諸問題は、主要国の外交・国防政策上の重要課題となってきている。このような流れの中で、二〇〇〇年には、米国の国家ミサイル防衛(NMD)構想や、ミサイル拡散に対するグローバルな取組の在り方が、国際的に大きな議論を呼び、十月のミサイル輸出管理レジーム(MTCR)ヘルシンキ総会において、今後「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうための国際行動規範」を作っていくこと及びそのための草案について合意された。
第二に、紛争の予防・解決と平和維持活動の分野である。今なお、世界各地で民族紛争や地域紛争が頻発している。今日の紛争は、従来型の国家間紛争というよりも、国内の民族・宗教紛争としての色彩が濃い。紛争の予防は、良い統治(グッドガバナンス)や持続的成長の問題とともに、国際社会の平和と安定を確保する上で、重要な政治的課題として国際的に認識されてきている。
二十世紀最後の一年間、中東和平問題、東チモール問題、コソヴォ問題、イラク問題、さらにはアフリカのシエラ・レオーネ、エティオピアとエリトリア間の紛争等、世界の地域紛争・問題について様々な形で取組が行われた。中東和平問題については、米国の積極的な仲介の下、永続的和平実現を目指した集中的な交渉が行われたが、その後、イスラエル・パレスチナ間の衝突が発生し、和平合意には至らなかった。
東チモール問題及びコソヴォ問題に関しては、G8の枠組みにおける政策協調が引き続き行われた。また、国連東チモール暫定行政機構(UNTAET)や国連コソヴォ暫定行政ミッション(UNMIK)のように暫定的に行政機能を担うといった幅広い任務を付与された平和維持活動(PKO)の派遣を通じて、国連が重要な役割を果たした。日本は、七月のG8宮崎外相会合において、他のG8諸国とともに、紛争予防に関する「宮崎イニシアチブ」を取りまとめ、紛争予防に向けた取組の具体的な一歩を踏み出した。
紛争の未然防止のために、あるいは、紛争発生後に回復された平和を維持するために、国連の平和維持活動の果たすべき役割は、今後とも引き続き大きい。二〇〇〇年には「国連平和活動検討パネル」による報告書が国連事務総長に提出され、国連の平和維持活動の機能強化の必要性が改めて強調されている。
第三に、情報通信技術(IT)革命とグローバリゼーションへの対応である。人、モノ、サービス、資本及び情報などの流れの大幅な加速化は、二十世紀後半の世界に一層の繁栄をもたらした。しかし、世界規模での競争の激化は、途上国のみならず先進国においても、競争における敗者や競争から取り残される者を生み出し、新たな貧困や、社会秩序の不安定化を招く危険性を孕んでいる。また、加速化するグローバリゼーションは、国や地域の伝統的な価値観との相剋を生み、他方で、グローバリゼーションに抵抗する動きが見られるようになってきている。
二〇〇〇年には、ITの積極的な活用と情報格差(デジタル・ディバイド)の解消の重要性が広く国際的に認識されるようになった。九州・沖縄サミットにおいて、森総理大臣は、議長として、IT問題に関する「沖縄憲章」を取りまとめ、国際的な情報格差の解消などに向けた国際協力・協調のための第一歩を踏み出した。このような取組は、IT問題に関する国際的取組の先駆けとなるものであり、同時に、日本自身の高度情報通信ネットワーク社会の形成の動きを促進することとなった。
グローバリゼーションの利益が一層の繁栄をもたらすためには、国際的に多角的で自由なモノと資本の流通が制度的に確保されていることが前提であり、そのための制度の強化が引き続き重要である。欧州における経済統合をはじめ、世界においては、二国間や地域で自由貿易協定の締結に向けた動きが広く見られるようになってきているが、国際社会においてグローバリゼーションの利益を最大限に享受するためには、世界貿易機関(WTO)の下での多角的自由貿易体制の強化が不可欠である。
二〇〇〇年には、日本を含む関係国の様々な努力にもかかわらず、WTOの新しい交渉ラウンドの開始について合意することができなかった。今後、先進国のみならず途上国の意見にも耳を傾け、各国の幅広い関心に対応することにより、新ラウンドを二〇〇一年中に立ち上げ、WTOの一層の発展を図り、多角的自由貿易体制の維持と強化に努めていくことが重要である。日本はシンガポールとの間で、新時代の連携のための経済協定を締結するための正式な交渉を開始し、二〇〇一年に交渉を終結することに合意したが、このような二国間の協定もWTOを補完し、自由貿易の推進と制度調和を積極的に図っていく上で重要である。
第四に、グローバリゼーションによって国境という垣根がますます低くなる中、世界規模で競争から取り残される国々が生じないよう、開発問題に正面から取り組んでいくことが重要である。それは人道的問題というにとどまらない。繁栄から取り残された国々が更に「周縁化」することは、現在のグローバル化した国際社会のシステム全体に対する信頼を揺るがせる危険がある。そのような危険(システミック・リスク)に対応することは、市場経済を基調とする現在のグローバルな経済システムから最も大きな恩恵を得ている国々の責務でもある。
持続的成長の達成は、中長期的には、一方で貧困と社会的矛盾を除去することにより紛争を予防するという政治的効果を持ち、また、他方で市場の拡大という経済的効果をもたらすことになる。特に、持続的成長の波に乗れないままに苦闘しているアフリカ諸国の開発問題は、二十一世紀の人類全体の共通関心事項となるべきものであろう。
開発問題に取り組むためには、世界最大の政府開発援助(ODA)供与国である日本をはじめ、先進民主主義諸国間の協調と、これらの国々と途上国との対話が不可欠であり、さらに、非政府組織(NGO)をはじめとする市民社会との建設的連携を進めていくことが有益である。このような観点も踏まえ、日本は、九州・沖縄サミットで、他のG8諸国とともに、非G8諸国、国際機関、民間セクター及びNGOを含む市民社会との新しいパートナーシップの構築に向けた大きな一歩を踏み出した。
最後に、科学技術の進歩とグローバリゼーションの急速な進展の中で、国際組織犯罪、感染症、環境問題などの地球規模の諸問題に国際社会が共同して取り組むことがますます重要になってきている。この地球を生きる人々に平和と繁栄のみならず、幸福をもたらすという人類の大きな目標を達成するためには、国境を越えて人々の生存、安寧、尊厳を脅かすこうした問題に、人間一人一人を重視する視点から、国際社会が協調し、協力して取り組んでいくことが不可欠である。こうした地球規模の諸問題への取組は、現在の国際的なシステムへの信頼を維持・強化することにもつながるのである。
二〇〇〇年には、日本を含むG8諸国が議論をリードしてきた、国連国際組織犯罪条約及び関連二議定書の交渉が妥結し、国際組織犯罪と戦うための法的枠組を包括的に定める初めての多数国間条約が採択された。また、九州・沖縄サミットで大きく取り上げられた感染症については、日本は、十二月、感染症対策沖縄国際会議を開催し、国際的な具体的行動計画を策定した。地球温暖化問題については、オランダで開催された気候変動枠組条約第六回締約国会議(COP6)では合意に至らず、国際社会の更なる取組が必要とされている。二十一世紀の国際的な協調行動を導く理念として「人間の安全保障」を掲げる日本は、様々な分野での地球規模の諸問題に積極的に取り組み、国際社会の協調をリードしていくことが求められている。
【二十一世紀を迎えたアジア太平洋地域】
日本が、二十一世紀においても平和と繁栄を享受し続けるためには、それを可能としているグローバルな国際的システムを維持・強化することとともに、日本の位置するアジア太平洋地域が平和と繁栄を享受することのできる、安定した躍動する地域であり続けることが必要である。
欧州では、三億七千万人の人口を抱え、世界の国民総生産の約二九%を占める欧州連合が、自由、民主主義、基本的人権、市場経済を共通の価値として拡大と統合深化の道を着実に歩んでいる。
しかしながら、アジア太平洋地域は、いまだそのような状況にはない。北東アジア地域においては、日本、米国、韓国などの先進民主主義国家とともに、中国、ロシアという二つの改革を進めているユーラシア大陸の大国が主要な主体として存在する。朝鮮半島においては、南北首脳会談をはじめとする前向きな動きが見られるが、引き続き厳しい軍事的対立が残っている。また、中台両岸においては、貿易、投資など経済の実体面では大きな進展が見られるが、依然として政治的な対立が続いており、両岸対話は再開の目処が立っていない。民主化及び経済改革の努力が進められているインドネシアにおいては、政治的な安定はいまだ達成されず、国内に多くの分離・独立運動を抱えている。このような地域の環境の中で、日本の平和と繁栄を確保することが、日本の外交の重要な課題である。
民主主義と市場経済を掲げる米国との同盟関係を基軸として、韓国との密接な友好関係を構築しつつ、中国及びロシアと信頼に基づく協力関係を構築し、両国の改革の更なる進展を促進していくことが、この地域の安定のための基本的戦略である。このような安定の構図を維持しつつ、かつ、その安定を害さないように、前世紀から引き継がれた北朝鮮との国交正常化の課題に取り組んでいく必要がある。
また、新しい世紀に、日本がその国際的地位にふさわしい責任を果たし、リーダーシップを発揮するためにも、二十世紀の歴史を直視して、アジア太平洋の諸国と共通の未来を築いていかなければならない。
それではまず、二十一世紀の日米同盟の姿をどのようなものにしていくべきであろうか。アジア太平洋地域には、好ましい方向に向かう兆候が見られる一方、依然として不確実性、不安定性が存在している。日本はその限られた自衛力のみで自国の安全を脅かし得るすべての事態に対処することはできない。したがって、自国の安全を確保し、それと密接不可分の地域の安定を確保するためには、引き続き米国との同盟関係が外交の基軸となる。米新政権は、引き続きアジア太平洋地域における平和と繁栄を重要視しており、日米同盟関係を、対アジア政策の基礎に据えている。
日本と米国の国民総生産の合計は、世界の国民総生産の約四二%を占め、日本を除く全アジア地域(中国を含む)の国民総生産の約四・九倍の規模である。アジア太平洋地域における主要な先進民主主義国である日米両国の同盟は、二十一世紀にも引き続きアジア太平洋地域の安定の要であり続けるのであり、日米両国はその責任を果たすよう努力しなければならない。また、米国経済の減速及び日本経済の景気回復・構造改革の見通しなどの懸念材料はあるが、日米両国が経済、社会、環境等、多くの面で、アジア太平洋地域の発展に果たしていく役割は依然として大きい。
二十一世紀の日米同盟関係が、この地域の平和と繁栄の要として機能するためには、米国との間で戦略的な見地から十分な対話を行い、政策協調を進めていくことが重要である。日米の絆は、基本的な価値観の共有や、双方の国益の根本的な合致の上に成立するものであり、日本は、共通の利益と相互の責任について厳しい自覚の上に立って、成熟した同盟関係の運営を行うことがますます必要となる。そして、日米安保体制の信頼性の向上のために具体的努力を積み重ねていかなければならない。
二〇〇〇年、日本は、米国との間で、頻繁に首脳会談、外相会談を開催して、両国間で幅広く緊密な政策協調を行った。また、在日米軍施設・区域が集中している沖縄の県民が、日本全体の平和と安全のために背負っている多大な負担を軽減するための努力が継続され、「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)最終報告の着実な実施が進められてきた。さらに、在日米軍駐留経費の負担に関する新たな特別協定が、国会での承認を得て締結され、また、「日米防衛協力のための指針」の実効性を確保するための国内法整備の一環として、「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律(船舶検査活動法)」も国会において成立した。今後とも、二十一世紀冒頭に成立したブッシュ政権との間で、このような努力を弛みなく継続することが肝要である。
また、二十一世紀のアジア太平洋地域を構想するには、隣国韓国との協力関係の構築、発展が不可欠である。日本と韓国との協力関係は、東アジアの平和と繁栄にとって重要である。九八年、金大中(キム・デジュン)大統領が日本を訪問し、小渕総理大臣との会談において、過去に区切りをつけて以来、日韓関係は、一層強化され未来志向のものとなった。二〇〇〇年の金大中大統領の日本訪問においても、二十一世紀に向け日韓の絆を更に強化していくことで一致した。また、対北朝鮮政策に関する日米韓の緊密な連携関係が構築されている。二十一世紀における日韓協力関係を確固たるものとするためにも、幅広い交流を推進し、両国の間の信頼関係を更に発展させていくことが不可欠である。
二十一世紀にアジア太平洋地域において戦略的構図の変化をもたらし得る最も大きな要因は、中国の変貌であろう。広大な国土と十二億を越える巨大な人口を抱える中国は、改革開放政策の下、年平均一〇%に迫ろうとする高成長を継続してきた。同時に、核戦力を有する人民解放軍の近代化も着実に進んでいる。
中国は、この地域における存在感をますます大きくしており、二十一世紀に、中国が、更に改革開放政策を進め、この地域で建設的な役割を果たす信頼できる国となることが、アジア太平洋地域の平和と繁栄にとって極めて重要である。
日本は、中・長期的な視野から、中国との間に信頼に基づく協調関係の構築を行うべく努めてきている。また、あらゆるレベルの交流と協力の拡大を図ってきている。
二〇〇〇年には、朱鎔基総理が日本を訪問し、「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」の定着に向けて、更なる日中協力を増進することで一致した。また、日本近海で活動を行い、日本の対中世論を厳しいものとしていた中国海洋調査船の問題については、八月の河野外務大臣の中国訪問の際に、相互事前通報の枠組みを早期に成立させることで一致した(その後、両国で話し合った結果、二〇〇一年二月に枠組みが成立)。
日本は、中国が改革開放政策の下で安定と繁栄を確保し、日中間の相互依存関係が深まることは日本自身及びアジア太平洋地域の平和と繁栄に資するとの認識に基づいて、政府開発援助(ODA)を行ってきている。今後の対中経済協力は、両国をめぐる経済・社会状況等の変化を踏まえ、中国が国際社会の一層責任ある一員となるよう重要課題、分野を一層明確にした支援を行っていくことが必要である。
アジア太平洋地域の将来を考えるに当たり、民主化と市場経済化に向けた移行期の中での改革を続けているロシアの役割は重要な要因である。ロシアは現在、経済運営にいろいろな困難を抱えているが、国民の高い人気に支えられたプーチン大統領は改革努力を継続しており、今後とも政治面、経済面の改革を徹底しつつ、国際社会の建設的な一員となっていくことは、アジア太平洋地域、さらには、世界の平和と繁栄にとって重要である。そのため日本は、こうした方向に向けたロシアの改革努力を支持しつつ、ロシアとの間で平和条約の締結を含む幅広い分野の関係の強化に努めてきている。
二〇〇〇年はクラスノヤルスク合意の目標期限の年であったが、残念ながら平和条約の締結という課題は、二十一世紀に持ち越されることとなった。日本としては、北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結するとの一貫した方針の下、引き続き最善の努力を払っていく。
北朝鮮をめぐっては、二〇〇〇年に大きな動きが見られた。政権発足当時より金大中大統領は、対北朝鮮「包容政策」を打ち出して、二〇〇〇年には初の南北首脳会談が実現した。その後も、趙明録(チョ・ミョンロク)国防委員会第一副委員長の米国訪問とオルブライト米国務長官の北朝鮮訪問等が行われた。北朝鮮は、イタリア、オーストラリア、フィリピン、英国と外交関係を開設・再開するなど、国際社会との接触を急速に深めている。
このように前向きな流れが見られる一方で、北朝鮮の閉鎖的で軍偏重の体制に特段の変化は見られず、安全保障上の問題や、人権・人道上の問題をめぐり国際社会の懸念が依然として存在しており、今後とも北朝鮮に対しては、これらの国際社会の懸念に、前向きに対応するよう働きかけていくことが重要である。
日朝関係については、韓米両国との緊密な連携の下、北東アジアの平和と安定に資するような形で、第二次大戦後の正常でない日朝関係を正す努力を続けている。また、拉致問題を含む人道問題やミサイル問題等の安全保障上の問題などの諸懸案についても、日朝間の対話を通じて、解決に向け全力を尽くすことが引き続き必要である。
二〇〇〇年には、七月のASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合の際、史上初めての日朝外相会談が開催され、また、四月に約七年半ぶりに再開された日朝国交正常化交渉本会談をこれまで三回にわたり行うなど、国交正常化に向け粘り強く取り組んでいる。また、二〇〇〇年には、食糧不足に苦しむ北朝鮮に対して、国連の世界食糧計画(WFP)を通じて、三月にコメ十万トン、十月にコメ五十万トンの支援を決定した。
二十一世紀の冒頭におけるアジア太平洋地域の特徴的な動きとして取り上げなくてはならないのは、アジア太平洋地域を覆い始めた地域協力の大きな流れである。地域協力は、二国間関係強化の努力を補完するものであり、既に様々な枠組みが設けられ、重層的にアジア太平洋地域における対話と協力を増進している。
この地域においてはASEAN拡大外相会議(PMC)に加え、八〇年代後半以降、アジア太平洋経済協力(APEC)、ARF、アジア欧州会合(ASEM)、ASEAN+3(日中韓)、日中韓などを通じた地域の対話と協力が少しずつ広がりを見せ、冷戦時代に分断されていたアジア太平洋地域における対話と協力の機運が徐々に盛り上がってきている。日本としては、日米同盟などの二国間関係の努力を補完する意味で、このような地域の対話と協力を大切に育てていくことが重要である。二〇〇〇年には、これらの枠組みでの議論に積極的に参画し、この地域の重層的な対話と協力の枠組み構築を推進した。
最後に、アジア太平洋地域の平和と繁栄を確保する上で、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国やオーストラリア、ニュー・ジーランド、太平洋島嶼国と友好協力関係を強化するとともに、より大きな視野をもって、欧州諸国や南西アジア諸国と協力していくことの重要性を指摘したい。
主要な先進民主主義国である欧州諸国は、米国及び日本とともに、国際社会の平和と繁栄を確保する上で、重要な役割と責任を有している。日本と欧州諸国は、国際社会の主要な一員として、グローバルな目線からお互いに相手の地域の問題に関心を持ち、相互に協力していかなければならない(クロスサポート)のである。二〇〇〇年初め、河野外務大臣は欧州諸国を訪問し、二〇〇一年からの十年を「日欧協力の十年」とすることを提案し、日欧間の政治対話・協力の強化を訴えた。そして七月の日・欧州連合(EU)首脳会議において、この「日欧協力の十年」により、日欧関係の更なる強化を図ることが正式に決定された。
アジア太平洋地域の平和と繁栄を考える時、その南西に位置する諸国は、例えば中東から日本までのシーレーンの安定という観点から、戦略的に重要である。二〇〇〇年には、森総理大臣が、日本の総理大臣として十年ぶりに南西アジア諸国を訪問し、訪問先の各国との友好関係を強化した。特に、インドとの間では「二十一世紀における日印グローバル・パートナーシップ」を構築することで一致した。
2 九州・沖縄サミット
二〇〇〇年前半、日本は七月の九州・沖縄サミットを最重要の外交課題として取り組んだ。サミットでは、故小渕総理が万感の思いを込めてその開催を決定し、森総理が議長を務め、「一層の繁栄」、「心の安寧」、「世界の安定」の三つのテーマの下で、活発な議論がなされ、沖縄の地から明るく力強い平和のメッセージを発出した。
3 二〇〇〇年の注目すべき動き
〈朝鮮半島情勢〉 二〇〇〇年は、朝鮮半島において大きな動きが見られた。南北間においては、六月の歴史的な南北首脳会談を契機として、対話と協力が急速な展開を見せた。米朝間ではオルブライト米国務長官の北朝鮮訪問等が実現した。また、日朝間においても、七月のASEAN地域フォーラム(ARF)会合に際しての史上初の日朝外相会談や約七年半ぶりに国交正常化交渉が再開されるなどの進展が見られた。
〈中東和平〉 パレスチナ、レバノン、シリアの各トラックの動き等について記述している。特に、パレスチナ・トラックの箇所では、キャンプ・デイヴィッド首脳会談やその後のイスラエルとパレスチナとの武力衝突等の注目すべき動きがあった。
〈ユーゴ・コソヴォ〉 二〇〇〇年、ユーゴでは、ミロシェヴィッチ政権が崩壊し、コシュトゥーニツァ政権が誕生した。これは、南東欧地域全体を安定と繁栄に向けて前進させる画期的な出来事であり、日本はユーゴの民主化に向けた動きを後押しするための経済協力を実施するとともに、ユーゴに対する経済制裁解除の措置をとった。
〈その他の動き〉そのほかインドネシア、東チモール及びアフリカにおける紛争への取組を取り上げている。
4 主要な二国間関係
主要な二国間関係として、日米、日韓、日中、日露、日欧のそれぞれの関係について記述している。日米関係については、首脳、外相レベルの会談をはじめとする緊密な対話を行い、二国間の安全保障、経済問題に加え、グローバルな課題への取組等、幅広い分野において協力関係を深めた。
韓国との協力関係は、東アジアの平和と繁栄にとって重要であり、名実ともに「近くて近い国」としての関係を築くための努力がなされている。
日中関係の発展は、アジア太平洋地域はもちろん、世界の平和と繁栄にとって重要であり、あらゆるレベルでの交流と協力の拡大を通じ、中国が国際社会において、より一層建設的なパートナーとしての役割を果たすよう、引き続き積極的な外交努力を行っている。同時に、中国に対する経済協力や、海洋調査船・海軍艦艇の日本周辺での活動に対する対応についても記述している。
ロシアとの関係では、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、日露関係の完全な正常化を達成するために最善の努力を払うとともに、ロシアの改革努力を支持しつつ、様々な分野における協力と関係強化を図るとの基本政策の下での二〇〇〇年の取組について記述している。
日欧関係については、価値観と制度を共有する主要な先進民主主義諸国として、国際社会に安定をもたらし、繁栄を実現するためお互いに協力するとの観点から、二〇〇〇年、日本は、欧州連合(EU)及び西欧諸国との間で関係強化の努力を行ったことを紹介している。
また、アジア太平洋地域で徐々に機運の高まっている地域協力に加え、国際連合、人間の安全保障の分野での日本の取組を紹介している。
第2章 分野ごとの日本外交
第2章では、各分野ごとの日本外交として、政治・安全保障分野、経済分野、途上国の開発問題と政府開発援助(ODA)、社会分野及び国際交流と広報活動について紹介している。在日米軍駐留関連経費負担(HNS)に関する新たな特別協定の国会での承認、及び周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律の成立についても記述している。
また、紛争予防や軍備管理・軍縮・不拡散等の取組についても紹介している。さらに、世界貿易機関(WTO)、重層化してきている地域経済協力会、情報通信技術(IT)革命、バイオ・テクノロジーをはじめとする新たな課題等について紹介している。ODAについては、ODAが日本の外交にとって重要な外交手段であり、国民の理解と支持を得てODAを実施するための改革努力について記述している。さらに、人権・民主主義、地球環境問題、国際組織犯罪等についての取組を紹介している。
第3章 主要な地域情勢
第3章では、主要な地域情勢について、アジア及び大洋州、北米、中南米、欧州、ロシア及び旧ソ連新独立国家(NIS)諸国、中東、アフリカの順に紹介している。
第4章 外交体制
第4章では、外務省の機能強化・改革問題を含む日本政府の外交活動を支える体制について、それぞれ記述している。
|
|
◇調査要領
本調査は、資本金一億円以上の法人企業について、設備投資の実績及び計画並びに企業経営者の景気と経営に対する判断及び見通しを調査したものである。
調査対象:国内に本社又は主たる事務所をもって企業活動を営む資本金一億円以上の法人企業(約三万六千社)から、内閣府が定める方法により選定した四千五百一社を対象とした。
調査時点:平成十三年六月二十五日。
調査方法:調査客体法人の自計申告により行った。
なお、資本金が百億円以上の法人企業については原則として全数調査、百億円未満の法人企業は、層化任意抽出法により選定した法人について調査した。
有効回答率:調査対象法人四千五百一社のうち、有効回答法人四千九十二社、有効回答率九〇・九%。
〔利用上の注意〕
(1) 今期三か月の判断とは平成十三年一〜三月期と比較した場合の十三年四〜六月期の判断、来期三か月の見通しとは十三年四〜六月期と比較した場合の十三年七〜九月期の見通し、再来期三か月の見通しとは十三年七〜九月期と比較した場合の十三年十〜十二月期の見通しである。ただし、在庫水準と生産設備については、それぞれの調査期間における判断と見通しである。
(2) 第1図、第1〜8表の十三年四〜六月以前は今期の判断、十三年七〜九月は来期の見通し、十三年十〜十二月は再来期の見通しである。
(3) 判断指標(BSI)とは「上昇(強くなる・増加・過大)の割合−下降(弱くなる・減少・不足)の割合」である。
(4) 設備投資の公表数値は、母集団推計値である。また、算出基準は工事進捗ベース(建設仮勘定を含む有形固定資産の減価償却前増加額)である。
(5) 季節調整法は、センサス局法U、]―11を用いた。
(6) 集計上の産業分類は、日本標準産業分類を基準とする会社ベースでの主業分類に基づいて行った。
(7) 昭和六十三年三月調査より、日本電信電話(株)、第二電電(株)等七社、JR関係七社及び電源開発(株)を調査対象に加えるとともに、日本電信電話(株)、第二電電(株)等七社については六十年四〜六月期、JR関係七社については六十二年四〜六月期に遡及して集計に加えた。
(8) 平成元年六月調査より消費税を除くベースで調査した。
(9) 平成十年六月調査より以下のとおり産業分類の見直しを行い、昭和五十九年六月調査に遡及して集計を行った。
@ 「造船」を「その他の輸送用機械」に合併。
A 「印刷・出版」を「その他の製造業」に合併。
B 「卸売・小売業,飲食店」の内訳を廃止し、「卸売業」と「小売業,飲食店」に分割。
C 「運輸・通信業」の内訳を廃止し、「運輸業」と「通信業」に分割。
D 「電力業」と「ガス業」を合併し、「電力・ガス業」とする。
E 「サービス業」を「サービス業(除くリース業)」と「リース業」に分割。
F 製造業を素材型、加工型に分類。
(10) 昨年度まで年一回(六月調査時)調査していた「海外直接投資の動向」は、報告者記入負担の軽減にかんがみ、平成十三年度から廃止することとした。
一 景気見通し(全産業:季節調整値)
(一) 国内景気(第1表参照)
企業経営者による国内景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十三年一〜三月期「マイナス三一」の後、四〜六月期は「マイナス三八」と「下降」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「マイナス二七」、十〜十二月期「マイナス一二」と「下降」超幅は縮小する見通しとなっている。
産業別にみると、製造業は、十三年一〜三月期「マイナス三二」の後、四〜六月期は「マイナス三九」と「下降」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス二八」、十〜十二月期「マイナス一一」と「下降」超幅は縮小する見通しとなっている。
他方、非製造業は、十三年一〜三月期「マイナス三〇」の後、四〜六月期は「マイナス三六」と「下降」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス二七」、十〜十二月期「マイナス一四」と「下降」超幅は縮小する見通しとなっている。
(二) 業界景気(第2表参照)
所属業界の景気に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十三年一〜三月期「マイナス二六」の後、四〜六月期は「マイナス三三」と「下降」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「マイナス二一」、十〜十二月期「マイナス一三」と「下降」超幅は縮小する見通しとなっている。
産業別にみると、製造業は、十三年一〜三月期「マイナス二七」の後、四〜六月期は「マイナス三八」と「下降」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス二三」、十〜十二月期「マイナス一一」と「下降」超幅は縮小する見通しとなっている。
他方、非製造業は、十三年一〜三月期「マイナス二四」の後、四〜六月期は「マイナス二九」と「下降」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス二一」、十〜十二月期「マイナス一五」と「下降」超幅は縮小する見通しとなっている。
二 需要・価格関連見通し(季節調整値)
(一) 内外需要(製造業)(第3表参照)
企業経営者による国内需要に関する判断指標(BST:「強くなる」−「弱くなる」)をみると、平成十三年一〜三月期「マイナス二七」の後、四〜六月期は「マイナス三六」と「弱くなる」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「マイナス二六」、十〜十二月期「マイナス一三」と「弱くなる」超幅は縮小する見通しとなっている。
他方、海外需要に関する判断指標(BSI:「強くなる」−「弱くなる」)をみると、十三年一〜三月期「マイナス二二」の後、四〜六月期は「マイナス三四」と「弱くなる」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「マイナス二〇」、十〜十二月期「マイナス五」と「弱くなる」超幅は縮小する見通しとなっている。
(二) 在庫水準(製造業)(第4表参照)
原材料在庫水準に関する判断指標(BSI:「過大」−「不足」)をみると、平成十三年三月末「一三」の後、六月末は「一六」と「過大」超幅が拡大した。
先行きについては、九月末「一〇」、十二月末「八」と「過大」超幅は縮小する見通しとなっている。
他方、完成品在庫水準に関する判断指標をみると、十三年三月末「二二」の後、六月末は「二七」と「過大」超幅が拡大した。
先行きについては、九月末「一七」、十二月末「一二」と「過大」超幅は縮小する見通しとなっている。
(三) 価 格(製造業、農林漁業、鉱業)(第5表参照)
原材料価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、平成十三年一〜三月期「四」の後、四〜六月期は「マイナス四」と「下降」超に転じた。
先行きについては、七〜九月期「マイナス六」、十〜十二月期「マイナス八」と「下降」超幅が拡大する見通しとなっている。
他方、製品価格に関する判断指標(BSI:「上昇」−「下降」)をみると、十三年一〜三月期「マイナス二三」の後、四〜六月期は「マイナス二七」と「下降」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「マイナス二〇」、十〜十二月期「マイナス一七」と「下降」超幅は縮小する見通しとなっている。
三 経営見通し(季節調整値)
(一) 売上高(全産業:金融・保険業、不動産業を除く)(第6表参照)
売上高に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)をみると、平成十三年一〜三月期「マイナス一〇」の後、四〜六月期は「マイナス一八」と「減少」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「マイナス一三」、十〜十二月期「マイナス八」と「減少」超幅は縮小する見通しとなっている。
産業別にみると、製造業は、十三年一〜三月期「マイナス一七」の後、四〜六月期は「マイナス二四」と「減少」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス一六」、十〜十二月期「マイナス六」と「減少」超幅は縮小する見通しとなっている。
他方、非製造業は、十三年一〜三月期「マイナス六」の後、四〜六月期は「マイナス一四」と「減少」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス一〇」、十〜十二月期「マイナス九」と「減少」超幅は縮小する見通しとなっている。
(二) 経常利益(全産業:金融・保険業、不動産業を除く)(第7表参照)
経常利益に関する判断指標(BSI:「増加」−「減少」)をみると、平成十三年一〜三月期「マイナス一三」の後、四〜六月期は「マイナス二一」と「減少」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「マイナス一二」、十〜十二月期「マイナス九」と「減少」超幅は縮小する見通しとなっている。
産業別にみると、製造業は、十三年一〜三月期「マイナス一六」の後、四〜六月期は「マイナス二八」と「減少」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス一四」、十〜十二月期「マイナス七」と「減少」超幅は縮小する見通しとなっている。
他方、非製造業は、十三年一〜三月期「マイナス一一」の後、四〜六月期は「マイナス一四」と「減少」超幅が拡大した。先行きについては、七〜九月期「マイナス一一」、十〜十二月期「マイナス八」と「減少」超幅は縮小する見通しとなっている。
四 生産設備見通し(製造業:季節調整値)(第8表参照)
生産設備に関する判断指標(BSI:「過大」−「不足」)をみると、平成十三年一〜三月期「二二」の後、四〜六月期は「二七」と「過大」超幅が拡大した。
先行きについては、七〜九月期「二六」、十〜十二月期「二四」と「過大」超幅は縮小する見通しとなっている。
五 設備投資の動向(全産業:原数値)
(一) 半期の動向(第9表参照)
設備投資の動向を半期別に前年同期比でみると、平成十二年七〜十二月期(実績)五・五%増の後、十三年一〜六月期(実績見込み)は四・六%増と引き続き増加した。
先行き七〜十二月期(計画)は、三・〇%減と減少に転じる見通しとなっている。
産業別にみると、製造業は、十二年七〜十二月期一〇・八%増の後、十三年一〜六月期は一一・七%増と引き続き増加した。先行き七〜十二月期は、四・三%減と減少に転じる見通しとなっている。
他方、非製造業は、十二年七〜十二月期三・〇%増の後、十三年一〜六月期は一・二%増と引き続き増加した。先行き七〜十二月期は、二・三%減と減少に転じる見通しとなっている。
(二) 資本金規模別動向(第10表参照)
資本金規模別に前年同期比でみると、資本金十億円以上の大企業は、十二年七〜十二月期(実績)四・五%減の後、十三年一〜六月期(実績見込み)は一二・七%増と増加に転じた。先行き七〜十二月期(計画)は、二・五%増と引き続き増加する見通しとなっている。
他方、資本金一〜十億円の中堅企業は、十二年七〜十二月期二八・一%増の後、十三年一〜六月期は八・六%減と減少に転じた。先行き七〜十二月期は、一二・二%減と引き続き減少する見通しとなっている。
(三) 暦年の動向
暦年の動向を前年比でみると、平成十二年(実績)三・五%増の後、十三年(計画)は〇・八%増と引き続き増加する見通しとなっている。
産業別にみると、製造業は、十二年二・六%増の後、十三年は三・四%増と引き続き増加する見通しとなっている。
他方、非製造業は、十二年四・〇%増の後、十三年は〇・五%減と減少に転じる見通しとなっている。
(四) 四半期の動向(季節調整値)
四半期の動向を前期比でみると、一〜三月期(実績)一・七%減の後、四〜六月期(実績見込み)は八・六%減と引き続き減少した。
産業別にみると、製造業は、一〜三月期〇・八%増の後、四〜六月期は九・六%減と減少に転じた。
他方、非製造業は、一〜三月期〇・〇%増の後、四〜六月期は一〇・四%減と減少に転じた。
(五) 四半期の動向(原数値)
四半期の動向を前年同期比でみると、一〜三月期(実績)三・四%増の後、四〜六月期(実績見込み)は六・一%増と引き続き増加した。
産業別にみると、製造業は、一〜三月期一三・三%増の後、四〜六月期は九・八%増と引き続き増加した。
他方、非製造業は、一〜三月期一・〇%減の後、四〜六月期は四・二%増と増加に転じた。
|
|
◇就業状態別の人口
平成十三年六月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千四百六十六万人、完全失業者は三百三十八万人、非労働力人口は四千六十九万人と、前年同月に比べそれぞれ三十七万人(〇・六%)減、十七万人(五・三%)増、七十三万人(一・八%)増となっている。
◇就業者
(1) 就業者
就業者数は六千四百六十六万人と、前年同月に比べ三十七万人(〇・六%)の減少となり、三か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百九十五万人、女性は二千六百七十一万人で、前年同月と比べると、男性は三十四万人(〇・九%)減、女性は三万人(〇・一%)減となっている。
(2) 従業上の地位
就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千四百十三万人、自営業主・家族従業者は一千三十二万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は三十四万人(〇・六%)増、自営業主・家族従業者は七十三万人減となり、雇用者は十四か月連続の増加となっている。
雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千三百七十四万人と、三十一万人(〇・六%)増、十四か月連続の増加
・常 雇…四千七百二万人と、一万人(〇・〇%)減、八か月ぶりの減少
・臨時雇…五百五十二万人と、三十三万人(六・四%)増、平成八年九月以降増加が継続
・日 雇…百十九万人と、二万人(一・七%)減、二か月連続の減少
(3) 産 業
主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…三百二十六万人と、六万人(一・八%)減
○建設業…六百二十一万人と、二十一万人(三・三%)減、七か月連続の減少
○製造業…一千二百九十二万人と、四十三万人(三・二%)減、二か月連続の減少
○運輸・通信業…四百十六万人と、一万人(〇・二%)増、七か月ぶりの増加
○卸売・小売業,飲食店…一千四百九十四万人と、十万人(〇・七%)増、二か月ぶりの増加
○サービス業…一千七百六十九万人と、三十三万人(一・九%)増、十六か月連続の増加
また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…五百十八万人と、十三万人(二・四%)減
○製造業…一千百九十六万人と、二十一万人(一・七%)減
○運輸・通信業…三百九十七万人と、二万人(〇・五%)増
○卸売・小売業,飲食店…一千二百二十四万人と、十七万人(一・四%)増
○サービス業…一千五百四十四万人と、五十七万人(三・八%)増
(4) 従業者規模
企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百三十五万人と、一万人(〇・一%)増、二か月ぶりの増加
○三十〜四百九十九人規模…一千八百九万人と、五十二万人(三・〇%)増、十か月連続の増加
○五百人以上規模…一千二百六十五万人と、十一万人(〇・九%)減、二か月連続の減少
(5) 就業時間
六月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千三百八十九万人と、十七万人(一・二%)減少
・うち一〜三十時間未満…一千二十二万人と、十三万人(一・三%)減少
○三十五時間以上…四千九百五十二万人と、三十五万人(〇・七%)減少
・うち四十九時間以上…一千八百六十七万人と、十三万人(〇・七%)増加
また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四三・二時間で、前年同月と比べ〇・一時間の増加となっている。
◇完全失業者
(1) 完全失業者数
完全失業者数は三百三十八万人と、前年同月に比べ十七万人(五・三%)増となり、三か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は二百八万人、女性は百三十一万人で、前年同月に比べ、男性は十四万人(七・二%)の増加、女性は四万人(三・一%)の増加となっている。
また、求職理由別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおり。
○非自発的な離職による者…九十二万人と、十三万人減少
○自発的な離職による者…百三十一万人と、二十一万人増加
○学卒未就職者…十五万人と、二万人減少
○その他の者…八十万人と、六万人増加
(2) 完全失業率(季節調整値)
季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は四・九%で前月と同率となっている。男女別にみると、男性は五・一%、女性は四・六%と、前月に比べ男性、女性とも同率となっている。
(3) 完全失業率(原数値)
完全失業率は五・〇%と、前年同月に比べ〇・三ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・二%と〇・四ポイントの上昇、女性は四・七%と〇・二ポイントの上昇となっている。
(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
[男]
○十五〜二十四歳…四十一万人(二万人減)、一〇・五%(同率)
○二十五〜三十四歳…五十二万人(九万人増)、五・六%(〇・九ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十六万人(二万人増)、三・四%(〇・三ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…三十六万人(四万人増)、三・八%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十二万人(四万人減)、六・五%(〇・四ポイント低下)
・五十五〜五十九歳…十五万人(三万人減)、三・九%(〇・六ポイント低下)
・六十〜六十四歳…二十七万人(一万人減)、一〇・一%(〇・三ポイント低下)
○六十五歳以上…十一万人(四万人増)、三・五%(一・二ポイント上昇)
[女]
○十五〜二十四歳…三十二万人(二万人増)、八・八%(〇・八ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十四万人(六万人増)、七・一%(〇・七ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…十九万人(二万人減)、三・七%(〇・三ポイント低下)
○四十五〜五十四歳…二十二万人(三万人増)、三・二%(〇・四ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十二万人(五万人減)、二・九%(一・一ポイント低下)
・五十五〜五十九歳…七万人(三万人減)、二・八%(一・〇ポイント低下)
・六十〜六十四歳…五万人(二万人減)、三・二%(一・二ポイント低下)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・〇%(同率)
(5) 世帯主との続き柄別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
世帯主との続き柄別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十万人(一万人減)、三・四%(同率)
○世帯主の配偶者…三十九万人(同数)、二・七%(同率)
○その他の家族…百五十三万人(十万人増)、八・三%(〇・六ポイント上昇)
○単身世帯…五十六万人(八万人増)、六・七%(〇・八ポイント上昇)
(6) 地域別完全失業率
平成十三年四〜六月平均の地域別完全失業率及び対前年同期増減は、次のとおりとなっている。
北海道…五・九%(〇・一ポイント上昇)
東 北…四・八%(〇・六ポイント上昇)
南関東…五・一%(〇・一ポイント低下)
北関東・甲信…三・七%(同率)
北 陸…三・九%(〇・三ポイント上昇)
東 海…四・一%(同率)
近 畿…六・四%(〇・五ポイント上昇)
中 国…四・一%(〇・二ポイント低下)
四 国…五・〇%(〇・九ポイント上昇)
九 州…五・九%(〇・五ポイント上昇)
|
|
|
|
|
高齢者本人が受けられる特例
1 老年者控除
所得税は、一年間の所得金額から基礎控除や扶養控除などの所得控除を差し引いた金額に税率を掛けて計算しますが、この所得控除の一つとして老年者控除があります。所得者本人の年齢が六十五歳以上で、合計所得金額が一千万円以下の場合に所得金額から五十万円が控除できます。
2 公的年金等控除
国民年金、厚生年金、恩給などのいわゆる公的年金等は、雑所得として所得税の課税対象となります。公的年金等に係る雑所得の金額は、公的年金等の収入金額の合計額から公的年金等控除額を差し引いて計算しますが、年齢が六十五歳以上の人の場合は、六十五歳未満の人よりその控除額が多くなっています。
3 マル優などの利子の非課税
年齢が六十五歳以上の人は、マル優、特別マル優、郵便貯金の利子の非課税制度を利用できます。
この制度を利用すれば、それぞれ三百五十万円、合計一千五十万円までの預貯金などに対する利子については、所得税はかかりません。
高齢者を扶養している方が受けられる特例
配偶者控除や扶養控除の対象となる親族が七十歳以上の場合の配偶者控除額や扶養控除額については、通常の一人当たり三十八万円に代えて四十八万円を所得金額から差し引くことができます。
なお、扶養控除の対象となる高齢者が、納税者やその配偶者の父母や祖父母などの直系尊属で、納税者やその配偶者のいずれかとの同居を常況としているときは、さらに十万円を加算した五十八万円を差し引くことができます。
ところで、配偶者控除や扶養控除の対象となるのは、納税者と生計を一にし、その年の所得金額が三十八万円以下の親族です。
例えば、その年の収入が公的年金や恩給だけである六十五歳以上の人は、その収入金額が百七十八万円以下であれば、公的年金等控除額の百四十万円を差し引いた雑所得の金額は三十八万円以下となりますので、そのお年寄りと生計を一にしている納税者は配偶者控除や扶養控除の適用を受けることができます。
障害者本人が受けられる特例
1 所得税の障害者控除
所得者本人が障害者であるときは、障害者控除として二十七万円(特別障害者のときは四十万円)を所得金額から差し引くことができます。
2 マル優などの利子の非課税
障害者は、六十五歳以上の人と同じようにマル優、特別マル優、郵便貯金の利子の非課税制度を利用できます。
3 心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税
地方公共団体が条例によって実施する心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金(脱退一時金を除きます)については、所得税はかかりません。
また、この給付金を受ける権利を相続や贈与によって取得したときも、相続税や贈与税はかかりません。
4 相続税の障害者控除
相続や遺贈によって財産を取得した人が、日本国内に住所を有する人で、かつ法定相続人である場合に、その相続人が障害者のときは、七十歳になるまでの年数一年につき六万円(特別障害者のときは十二万円)が障害者控除として、相続税額から控除されます。
5 特別障害者に対する贈与税の非課税
心身に重度の障害がある特別障害者の生活費などに充てるために、一定の信託契約に基づいて特別障害者を受益者とする財産の信託があったときは、その信託受益権の価額のうち六千万円までは贈与税がかかりません。
この非課税の適用を受けるためには、財産を信託する際に「障害者非課税信託申告書」を、信託会社を通じて税務署長に提出しなければなりません。
障害者を扶養している人が受けられる特例
1 所得税の障害者控除
配偶者控除、扶養控除の対象となる親族が障害者であるときは、障害者控除として一人当たり二十七万円(特別障害者のときは一人当たり四十万円)を納税者の所得金額から差し引くことができます。
2 特別障害者と同居している場合の配偶者控除及び扶養控除
1の特別障害者が、納税者やその配偶者、納税者と生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としているときは、配偶者控除及び扶養控除は、通常の控除額に三十五万円を加算した金額を所得金額から差し引くことができます。
障害者を雇用している事業者が受けられる特例
障害者を多数雇用する事業者の資金の負担を軽くし、障害者の方の雇用の安定と拡大を図ることを目的に、青色申告をしている個人事業者や法人で、従業員総数に対する雇用障害者数の割合が一定以上である場合には、一定の機械装置等や工場用建物等の減価償却費について割増償却等が認められています。
〈九月はオゾン層保護対策推進月間〉
●オゾン層破壊の危機
大気中のオゾンは、その九〇%が地上から十〜五十km上空の成層圏と呼ばれる領域に集中しています。この成層圏オゾンが、通常「オゾン層」と呼ばれているものです。
地球を取り巻くオゾン層は、生物に有害な太陽からの紫外線を吸収して地上の生態系を保護しています。
近年、特に南極の上空ではオゾン層の破壊が著しく、一九八〇年代初めから、南極で春にオゾン量が極端に少なくなる現象が観測されています(この現象をオゾンホールといいます)。
オゾン層が薄くなると、今までオゾン層が大部分を遮っていた太陽からの有害な紫外線を通しやすくなります。その結果、紫外線が直接地球上の生物に降り注ぐことになるのです。皮膚ガンや白内障の増加といった人体への影響や、動植物の生育の阻害など、その影響は深刻です。
●オゾン層保護への対策
オゾン層を破壊する最大の原因は、フロンです。フッ素と炭素からなる化合物であるフロンは、洗浄性や冷却性の高さから、半導体の洗浄剤、クーラー、冷蔵庫やスプレーなどに使用されてきました。
しかし、フロンに含まれる塩素がオゾン層を破壊する原因であることが一九八〇年代に発見されてからは、その生産が規制されてきました。
フロンが成層圏にあるオゾン層へ到達するまでには、長い時間がかかります。今、オゾン層を破壊しているフロンは、少なくとも十年から二十年前に、私たちが使用していたフロンなのです。このため、オゾン層破壊の影響には時差が生じます。明日からオゾン層を破壊するフロンの放出をすべて止めることができたとしても、オゾン層破壊は、長期にわたって続くことになってしまうのです。
ですから、オゾン層を破壊するフロンの新たな規制と回収を急がなければ、後の時代に、大きな犠牲を残しかねません。
オゾン層保護は他の地球環境問題に先駆けた国際的な取り組みがなされています。わが国も毎年九月を「オゾン層保護対策推進月間」として、フロンガスなどの放出禁止へ向けたさまざまな活動を行っています。
●フロン回収破壊法の実施
平成十四年四月一日から、「フロン回収破壊法」が施行されます。これは、業務用冷凍空調機器やカーエアコン(特定製品)冷媒として使われているフロンの放出を防止し、オゾン層の保護及び地球温暖化の防止を図るものです。
業務用冷凍空調機器の廃棄に当たっては回収業者に、自動車の廃棄に当たっては引取業者に処理を依頼していただくことになります。
適切な依頼をせず、フロンを放出した場合、罰則もかかることになります。フロンを適切に回収・処理するためには、フロンを使用しているすべての人の協力と理解が必要です。
地球の未来のために、皆さんのご協力をお願いします。
●問い合わせ先
環境省地球環境局環境保全対策課
рO3―3581―3351
(内線6753、6755)
|
|