官報資料版 平成13年9月12日




                  ▽労働経済白書のあらまし………厚生労働省

                  ▽家計収支(六月分)……………総 務 省

                  ▽税金365日 災害と税………国 税 庁











労働経済白書のあらまし


厚生労働省


第1章 労働経済の現況

依然として厳しいが、求人や雇用者数の増加などもみられた雇用失業情勢
 二〇〇〇年の雇用・失業情勢は、完全失業率が過去最高となった前年と同水準の四・七%となるなど、依然として厳しい状況が続いた。しかし、景気の緩やかな改善を背景に、求人数、雇用者数などで改善の動きがみられた。概観すると、次のとおりである。
(1) 新規求人は一九九九年夏頃より前年比で増加を続け、新規求人倍率、有効求人倍率とも改善した(第1図)。雇用過剰感や雇用調整実施事業所割合も改善に向かった。
(2) 雇用者数が五月以降前年差で増加を続け、就業者数も十月から増加に転じた(第1表)。ただ雇用増の大部分がパートタイマー等の臨時雇であり、改善の程度は弱いものであった。
(3) このような中、完全失業率は高水準で推移し、十二月、二〇〇〇年一月と連続して過去最高水準の四・九%を記録した(第2図)。この背景としては、自営業主、家族従業者が大きく減少したこと、ミスマッチがみられたこと、年後半からは、雇用情勢の改善により新たに仕事を探し始めた者が失業者としてカウントされたことなどがあげられる。
(4) 二〇〇〇年末から二〇〇一年初にかけて景気の動きに足踏みがみられる中で、雇用の改善の動きに足踏みがみられた。
 今後、緊急経済対策に基づき、不良債権の直接償却を行うことで、雇用面への影響も考えられることから、同対策には、その影響を最小限にするための雇用対策も盛り込まれた。
 賃金面をみると、現金給与総額は三年ぶりに増加したが、企業収益が改善したのに対して、賃金の改善には遅れがみられた。内訳をみると、所定内給与は増加に転じ、所定外給与は所定外労働時間の増加を背景に上昇幅が拡大、特別給与は減少した。
 総実労働時間は、主として景気の緩やかな回復を背景に、所定内労働時間、所定外労働時間とも増加したため、四年ぶりに増加となった。
 勤労者家計の消費支出は、実収入の伸び悩みなどから、前年比で名目、実質ともに三年連続の減少となった。消費者マインドは回復しているものの、その上昇テンポはかなり緩やかであることから、平均消費性向が依然として低い水準にとどまった。

第2章 情報通信技術(IT)の革新と雇用

 情報通信技術の急速な進展は、IT革命と言われ、我が国経済を新たな発展段階へと推し進める起爆剤として期待されており、私たちの生活を大きく変えようとしている。政府としても、IT戦略本部を内閣に設置し積極的に推進を図っているが、一方で、雇用への影響についても種々取りざたされている。そこで、情報通信技術により、私たちが働く環境がどのような影響を受け、どのように変わるのかといった問題に対し、情報通信技術の進展で先行しているアメリカの事例を参考としつつ分析を行った。

事務部門への影響が大きい情報通信技術革新
 情報通信技術革新は、しばしば産業革命など、過去の技術革新と比較される。しかし、産業革命を含め、過去の技術革新が主に生産部門の労働や雇用に影響を及ぼしたのに対し、今回は、特に事務部門への影響が大きいのが特徴である。ネットワーク化や業務支援アプリケーションなどの発展が、事務部門の生産性を向上させ、新たな経営手法を生み出している。

情報通信技術革新の進展とともに経済成長、雇用増を実現したアメリカ
 ここで、情報通信技術の先進国であるアメリカの状況をみてみよう。アメリカの実質GDPは、一九九二年に増加に転じて以降増加を続け、二〇〇〇年は同五%と大きな伸びを示した。その間、雇用者数も大きく増加し、二〇〇〇年第三四半期より景気の減速が懸念されているものの、情報通信技術革新の進展とともに、経済の成長と雇用の増加を実現している。

雇用が増加する一方、解雇率も高まったホワイトカラー
 他方、アメリカでは、解雇率が、管理職や事務職などホワイトカラーで特に高まり、景気が回復して雇用が増えても高い解雇率が続いた。これは、企業の組織改革の中で、雇用の創出と削減を同時に行う、つまり一方で採用を行いながら、他方で解雇を行う企業が多かったためである。

デジタル・ディバイドの発生と雇用対策
 アメリカの学歴間の年間平均賃金の格差(男性)をみると、拡大しており、これは学歴別のコンピュータ保有率の傾向と一致する。この格差の背景には、情報通信技術への適応力の差があると考えられ、コンピュータ保有率の差が人種間、所得階層間でもみられることから、いわゆるデジタル・ディバイドが大きな問題となっていると考えられる。
 このため、アメリカでは、情報通信技術革新に対応した雇用対策として、生涯にわたる学習機会の提供を重視し、初等・中等教育ではコンピュータの設置やインターネット接続等を進めている。また、情報通信技術を活用して、職業紹介と職業訓練に関するネットワーク作りを行っている。

増加する我が国の情報通信技術関連雇用
 それでは、現在の我が国の情報通信技術関連の雇用量はどのくらいなのだろうか。アメリカ商務省「デジタル・エコノミー二〇〇〇」の定義に従うと、情報通信技術関連産業の従業者数は、一九九九年で三百六十四万人、構成比は六・八%で、構成比ではアメリカを上回っている(第3図)。一九九四年と比べると、全産業で一・〇%減少している中で、〇・五%増加している。
 同様に情報通信技術関連職業の雇用は一九九九年で三百二十八万人、構成比は五・一%である。
 我が国の情報通信技術関連雇用は、現在は製造部門が中心であるが、増加率ではサービス業、専門・技術職が著しく、ソフト化、高度化が進んでいる。

一九九〇年代の情報通信技術革新の雇用創出効果は二百万人
 ここで、情報通信技術革新の雇用への影響を推計すると、波及効果を含めれば、一九九〇年代を通して二百万人以上の雇用創出効果があった(第4図)。産業別では、特にサービス業が雇用増をもたらしたが、情報通信技術に関連が深い産業だけでなく、全産業で雇用創出効果がみられた(第5図)。

定型的業務が減少し、創造的・専門的業務の比重が高まるホワイトカラーの仕事
 では、情報通信技術革新は、個々の職場や仕事にどのような変化をもたらすのだろうか。
 ホワイトカラーの仕事は、情報通信技術の導入で、定型的な業務が減少し、創造的・専門的業務の比重が高まっている(第6図)。それに伴い、情報収集・分析能力に加え、新たな企画を生み出す能力や既存業務を改善する能力などが重要となっている。また、成果主義も進展している。
 現時点では、情報通信技術に関する技能によって賃金や昇進に大きな格差は生じていないが、情報化の進展度の高い企業ほど賃金や昇進に影響しているとする割合が高く、今後の情報化の進展で、影響が拡大していく可能性はある。

中高年でも時間をかければ習得可能
 企業は、コンピュータの操作に関して、従業員にどのくらいのレベルの能力を求めているのだろうか。実際、多くの企業が中高年を中心にパソコン操作能力が不足していると考えている。しかし、企業が求めているのは、ワープロや電子メールの使用など基礎的能力である。そのため、中高年でも時間をかければ習得可能と考える企業が多く、実際に情報化を進めてきた企業ほどその認識が強くなっている(第7図)。中高年を中心にこうした技術を習得させることで、デジタル・ディバイドの発生を抑制できると考えられる。

重要性が高まる中間管理職の役割
 一方、情報通信技術革新が進展することにより、企業組織のフラット化が進み、中間管理職の中抜きが起こることが懸念されている。実際、情報化が進んだ企業ほど、フラット化の実施率が高くなっている。これは、組織改革をする上で、情報通信技術が有効な手段を提供するためと考えられる。
 しかし、中間管理職の減少は確認されず、情報化と中間管理職の減少に関連はみられない。むしろ、中間管理職には創造的な能力の発揮が求められ、その役割はより高度になってきている(第8図)。
 ただ、情報通信技術革新は、人事・労務等の間接部門を中心とした人員減少をもたらしている。しかし、情報化に伴う雇用調整方法は、退職者不補充等が多く、企業は可能な限り雇用責任を果たそうとしている。

情報リテラシーの習得が重要
 さて、情報通信技術革新の成果を十分に得るためには、人材の確保・育成が重要である。情報通信技術革新に対応した人材育成とは、どのようなものなのだろうか。
 情報化の進展の中では、在職者、失業者ともに情報リテラシーが求められる(第9図)。ここでの情報リテラシーとは、コンピュータ等を利用して幅広く情報を収集・活用し、それを分析、判断する基礎的能力のことをいう。企業は、情報化対応のための教育訓練の重要性を十分感じているが、時間や費用の問題が障害となっている。政府は「e―Japan重点計画」等により、情報通信技術革新に対応した人材育成対策を進めている。
 情報リテラシーが重要になる一方、情報通信技術を業務に活用する発想力、応用力、課題設定・解決力等の実践的能力や、本来業務についての深い知識や経験も求められている。

不足する情報関連人材
 情報通信技術関連人材の需要は拡大しているが、実際にそうした需要は満たされているのだろうか。そこで、情報処理技術者の求人の充足状況をみると、充足率は低く、人材が不足していることが分かる(第10図)。また、一九九八〜二〇〇〇年に採用予定人数全部を採用できた企業は四五%だけであった。
 情報関連企業では、即戦力の必要性から、多くが中途採用に頼っており、今後も増加すると考えられる。一方、技術者側も五七%は転職経験があるとしており、八割以上の者が転職に満足している。「売り手市場」となっている技術者は、自分のキャリア形成に資するように転職していると考えられる。

技術者の能力は中高年になっても維持・向上する
 しかし、一定の能力を有する経験者の数には限りがあり、このままでは人材の逼迫は避けられない。そのため、OJTを含めた体系的な教育訓練が重要である。企業の多くは技術者の能力は中高年になっても維持、向上しうると考えている(第11図)。現在、企業の教育訓練はOJTが中心であるが、先進的な企業では、中高年になっても能力を発揮できるようなキャリア形成支援や計画的な教育訓練を行っている。大学では情報関連学科の整備等を行い、政府においても情報通信技術に係る訓練の実施等に取り組んでいる。
 また、情報通信技術の発展は、WBT(web based training インターネット上で課題や教材を提供することにより、学習から能力評価まで一貫して行う教育訓練)など、新しい効率的な教育訓練方法を生み出しており、その発展が期待されている。

在宅勤務等新しい働き方を可能にする情報通信技術
 ここで、情報通信技術の進展に伴う雇用・就業形態の変化をみてみる。情報通信技術革新は、在宅勤務などの新しい働き方を可能にすると言われる。そのうち、テレワークとは、情報通信ネットワークを活用し、時間と場所に制約されることなく仕事ができる働き方で、第2表のように類別できる。
 二〇〇〇年における、雇用形態で行われるテレワーク雇用(在宅勤務等)は二百四十六万人、在宅就業者(非雇用のテレワークであるSOHOのうち、他人を雇っていない就業形態)は十七万四千人程度と推計されている。
 テレワーク雇用者の九割が男性で、満足度は高く、一方、在宅就業者は育児中の女性など家庭責任を持つ者が多いのが特徴である。ただ、問題点も幾つか存在し、仕事の確保や公正な取引環境の整備等が課題となっている。

活用が促進されている非正規雇用と外部委託
 次に、パート・アルバイトといった非正規雇用や業務の外部委託であるが、情報通信技術の進展により業務の標準化が進むことなどを通じて、その活用が促進されている。これは、情報化進展度の高い企業ほどみられる現象である。

日本型雇用システムの強みをいかすために必要となる、柔軟な内部労働市場の確保
 さて、情報通信技術革新が進む中で、日本型雇用システムを見直すべきであるとの意見がしばしば言われる。しかし、はたして本当にそうすべきなのであろうか。本来、雇用システムは歴史的、社会的背景などから生まれるもので、各国それぞれ異なるものである。
 我が国では、過去の高度成長期の構造変化や技術革新に円滑に対応する上で、日本型雇用システムの特徴は強みとなってきた。その特徴とは、@雇用の安定を保障するため、労働者は新技術や配置転換への抵抗が少ない、A長期にわたる職場内の人間関係を通して情報の共有・蓄積が可能である、Bコスト回収が可能なため企業が教育訓練に積極的になれる、ことなどである。この特徴は、今回の技術革新にもいかすことができると考えられる。
 企業も情報通信技術革新の中、従業員の雇用を重視する方針であり、日本の雇用システムの強みを生かすなかで、柔軟な内部労働市場(配置転換や昇進及びそれに伴う賃金管理など、企業における管理や慣行が労働市場の機能を担うような、企業内の労働配分メカニズム)を確保していく必要がある。

ミスマッチの解消による円滑な労働移動の促進も不可欠
 同時に、外部労働市場における円滑な労働移動も不可欠である。そのためには、年齢、労働条件、能力・経験から生じるミスマッチの解消を図っていくことが重要である。年齢については、雇用対策法の改正により、事業主は一定の場合に年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう努めることとされた。また、労働市場における正確な情報の提供、適切な職業能力開発、民間の需給調整システムの強化や情報通信技術を活用した需給調整機能の強化なども必要である。さらに、情報通信技術革新を地域の発展に結びつけるためにも、人材の確保・育成が必要である。


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消費支出(全世帯)は実質三・八%の減少


―平成十三年六月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十三年一月に実質減少となった後、二月、三月は二か月連続の実質増加となったが、四月以降三か月連続の実質減少となった。
 一人当たりの消費支出は八万八千六百二十円で、前年同月に比べ実質三・五%の減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十二年十月、十一月に実質増加となった後、十二月以降六か月連続の実質減少となったが、十三年六月は実質増加となった。
 また、消費支出は、平成十二年十月、十一月に実質減少となった後、十二月は実質増加、十三年一月は同水準、二月、三月は実質増加となったが、四月以降三か月連続の実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり二十五万六千八百一円となり、前年同月に比べ、名目四・六%の減少、実質三・九%の減少となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は、前月に比べ実質二・八%の減少となった。
 勤労者世帯の消費支出は、前月に比べ実質三・〇%の減少となった。














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税金365日 災害と税


国 税 庁


 我が国は、その地理的・気候的条件により、昔から台風や大雨に見舞われているとともに、世界有数の火山国でもあることから地震や津波も多く、大きな被害が発生し、多くの尊い人命や貴重な財産が失われることがあります。
 災害により住宅や家財などに損害を受けた場合には、所得税の軽減あるいは免除を受けたり、申告や納税の期限の延長が認められるなどの制度があります。
 そこで、これらの制度のあらましについてご説明しましょう。

【所得税の軽減・免除】

 火災、風水害、落雷、震災などの災害により住宅や家財などに損害を受けたときは、所得税の軽減や免除を受けることができます。
 その方法としては、次のように、@所得税法に定める「雑損控除」による方法と、A「災害減免法(※)」による方法があり、これらのうちいずれか有利な方法を選ぶことができます。
 これらの適用を受ける場合は、確定申告を要しない給与所得者の方でも、最終的に確定申告が必要となります。
 ※ 正式には、「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」といいます。

1 「雑損控除」による方法
 この方法は、災害、盗難又は横領によって、生活に通常必要な資産に損害を受けた場合に、下の「雑損控除の計算方法」の計算方法により計算した金額を雑損控除として所得金額から差し引くというものです。
 この場合、その損失額が大きく、その年の所得金額から引ききれない金額があるときは、翌年以降三年間、繰り越して各年の所得金額から差し引くことができます。
 なお、雑損控除を受ける場合には、確定申告書に所定の事項を記載するほか、災害などに関連してやむを得ない支出がある場合には、その領収書を添付するか申告書提出の際に提示しなければなりません。
 (注) 別荘や競走馬、一個又は一組の価額が三十万円を超える宝石など、生活に通常必要でない資産の損失は、雑損控除の対象にはなりません。このような資産の災害による損失額は、その年か翌年に譲渡所得があればその所得から控除することができます。

2 「災害減免法」による方法
 この方法は、災害によって住宅又は家財についてその価額の二分の一以上の損害を受け、しかもその年の合計所得金額が一千万円以下の場合に、所得金額に応じて下の「軽減、免除の金額の計算」の表のように、所得税を全額免除したり、一部軽減するというものです。
 なお、災害減免法による所得税の減免を受ける場合には、確定申告書に所定の事項を記載するほか、「損失額の明細書」を確定申告書に添付することが必要です。

3 予定納税の減額、源泉徴収の徴収猶予など
 雑損控除や災害減免法による所得税の軽減や免除は、最終的には翌年の確定申告で精算されますが、確定申告の前でも、災害等が発生した後に納期限の到来する予定納税額や給与所得者の給与から天引きされる源泉所得税などについて、その減額や徴収猶予などを受けることができます。
(1) 予定納税額の減額申請
  平成十三年分所得税の予定納税は、原則として、平成十三年五月十五日現在で確定している平成十二年分の所得金額などを基として、税法改正による減税額を織り込んで算出した第一期分及び第二期分の予定納税額(それぞれ予定納税基準額の三分の一に相当する金額)を、第一期(平成十三年七月一日〜七月三十一日までの間)と、第二期(平成十三年十一月一日〜十一月三十日までの間)に納めることになっています。
  しかし、災害によって受けた損害について、雑損控除などを適用することにより、その年の所得金額に対する税金として見積もった税額が予定納税基準額よりも少なくなると見込まれる場合は、次のように予定納税額の減額の承認を申請することができます。
 イ 所得税法による方法
   平成十三年一月一日から六月三十日までに災害を受けた場合は、六月三十日の現況によって、平成十三年分の所得金額と税額(雑損控除等を織り込んで計算した税額)を見積もり、原則として七月十六日までに第一期分及び第二期分の予定納税額の減額を申請することができます。
   また、平成十三年七月一日から十月三十一日までの間に災害を受けた場合は、十月三十一日の現況によって、その年の所得金額と税額(雑損控除等を織り込んで計算した税額)を見積もり、原則として十一月十五日までに第二期分の予定納税額の減額を申請することができます。
 ロ 災害減免法による方法
   平成十三年七月一日から十二月三十一日までの間に災害を受けた場合で、次の(イ)、(ロ)のいずれにも該当するときは、平成十三年分の所得金額などの見積額から、前記2の「軽減、免除の金額の計算」による所得税の軽減額を織り込んで計算した税額を見積もり、災害のあった日から二か月以内に予定納税額の減額を申請することができます。
  (イ) 住宅又は家財に受けた損害額がその価額の二分の一以上であること
  (ロ) 平成十三年分の所得金額の見積額が一千万円以下であること
(2) 給与所得者や公的年金等の受給者の源泉所得税の徴収猶予と還付
  給与所得者や公的年金等の受給者が災害によって住宅や家財に損害を受けた場合で、次のいずれにも当てはまるときには、災害減免法により、所得金額の見積額に応じて源泉所得税額の徴収猶予や、その年に既に徴収された源泉所得税額の還付を受けることができます。
 イ 住宅又は家財に受けた損害額がその価額の二分の一以上であること
 ロ その年の所得金額の見積額が一千万円以下であること
  源泉所得税額の徴収猶予を受けようとする人は、災害を受けた日以後、最初に給与や公的年金等の支払を受ける前日までに、勤務先又は公的年金等の支払者を経由して徴収猶予の申請書を税務署に提出してください。
  また、還付を受けようとする場合には、還付申請書に還付を受けようとする税額が徴収済である旨の勤務先などの証明書を添え、還付を受けようとする人の住所地を所轄する税務署長に提出してください。
  このほか、その年の所得金額の見積額が一千万円を超える場合や、住宅や家財について受けた損害額がその価額の二分の一に達しない場合であっても、災害を受けた年において雑損控除の適用があると見込まれるときやその翌年以後三年以内の各年において雑損失の繰越控除の適用を受けることができるときは、その雑損失の見積額又は繰越雑損失の金額に基づいて各年の給与や公的年金等に対する源泉所得税について徴収猶予を受けることができます。
 *徴収猶予とは、源泉徴収を延期することではなく、所得税の源泉徴収をしないことをいいます。
(3) 報酬・料金の源泉所得税額の徴収猶予
  税理士、弁護士、外交員など報酬や料金の支払を受ける人が災害を受けた場合は、災害減免法の規定により、支払を受ける報酬や料金などに対する源泉所得税額が徴収猶予されます。
  手続きなどは、給与所得者の場合とほぼ同様です。ただし、既に納めた源泉所得税額について、還付を受けることはできません。
(4) 最終的な精算は確定申告で
  災害を受けた方は、最終的には確定申告書を提出して、所得税法の雑損控除による控除と、災害減免法による軽減・免除とのどちらか有利な方法を選択することができます。
  なお、災害減免法により給与所得に対する源泉所得税額の徴収猶予や還付を受けた人については年末調整をしないことになっていますので、翌年の二月十六日から三月十五日までの間に必ず確定申告をして税額の精算をしなければなりません。
  この場合、雑損控除による控除と災害減免法による軽減・免除とのどちらが有利であるかは一口にはいえませんが、税額に大きく差が出ることもありますので、詳しくは、税務相談室又は税務署にお尋ねください。

【納税の猶予】

 災害などにより相当の損失を受けた場合には、税務署長に申請をすることによって、次のとおり納税の猶予を受けることができます。
(1) 損失を受けた日に納期限が到来していない国税
 @ 損失を受けた日以後一年以内に納付すべき国税………………………納期限から一年以内
 A 所得税の予定納税や法人税・消費税の中間申告分……………確定申告書の提出期限まで
  *@及びAとも災害のやんだ日から二か月以内に申請することが必要です。
(2) 既に納期限の到来している国税で一時に納付することができないと認められる国税……一年以内
 *この場合には、原則として担保の提供が必要です。

【申告などの期限の延長】

 災害などの理由により申告、納付などをその期限までにできないときは、その理由のやんだ日から二か月以内の範囲でその期限が延長されます。
 これには、地域指定と個別指定による場合とがあります。
(1) 地域指定
  災害による被害が広い地域に及ぶ場合、国税庁長官が延長する期日と地域を定めて告示します。その告示の期日までに申告、納付などをすればよいことになっています。
(2) 個別指定
  地域指定されていない場合、所轄の税務署長に期限の延長を申請し、その承認を受けることになります。











    <9月19日号の主な予定>

 ▽情報通信白書のあらまし………総 務 省 

 ▽労働力調査(七月)……………総 務 省 




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