官報資料版 平成13年10月3日




                  ▽青少年白書のあらまし………………………………内 閣 府

                  ▽統計からみた我が国の高齢者………………………総 務 省

                  ▽税金365日 租税史料の収集にご協力を………国 税 庁











青少年白書のあらまし


―青少年の現状と施策―


内 閣 府


 平成十三年版青少年白書は、平成十三年七月二十三日に閣議で配布され、閣議終了後に公表された。
 青少年白書は、青少年の現状と青少年に関する施策を広く国民に紹介し、その理解を得るという趣旨から、昭和三十一年以来刊行されており、今回の刊行は四十三回目である。
 二十一世紀を迎え、青少年健全育成行政に関する総合調整も、中央省庁等改革により新たに設けられた内閣府の下で進められている。
 平成十三年版では、第一部を特集として位置付け、「二十一世紀を迎えての青少年健全育成の新たな取組」を取り上げている。
 第一章「青少年の現在(いま)」では、各種の調査等に基づいて、現在の青少年の状況を概観するとともに、最近の「普通の子」による「いきなり型」の非行の増加や学校における暴力行為の増加、少年が被害者となる犯罪の増加等の問題状況などについて解説し、家庭や社会の変容に伴う多様な体験や交流機会の不足、情報化の進展に伴う有害情報との接触等の青少年をめぐる状況に留意する必要性を指摘している。
 第二章「青少年施策の取組と展開」では、教育改革の積極的な推進や地域での体験学習の取組、少年による特異・重大事件に関する動機や原因の解明、マスコミ等の青少年に配慮した自主規制などの取組を記述している。
 第三章「二十一世紀の幕開けに当たって」では、青少年の健全育成に向けた新たな試みとして、大人に対する提言及び青少年に対するメッセージを盛り込んでいる。
 第二部「青少年の現状」では、青少年関連の最新の各種統計資料に基づく青少年の現状、第三部「青少年に関する国の施策」では、平成十一年度から十二年度を中心とした青少年に関する国の施策について記述している。
 なお、巻頭「トピックス」では、教育改革国民会議、児童虐待の防止等に関する法律の成立、少年法等の一部を改正する法律の成立など、青少年行政のこの一年余の主な動きを紹介するとともに、巻末「参考資料」には、青少年関連の各種統計等を掲載している。

第一部 二十一世紀を迎えての青少年健全育成の新たな取組

第一章 青少年の現在(いま)

<各種調査にみる今日の青少年>
@ 低年齢少年の価値観等に関する調査
 この調査は、総務庁(現内閣府)が、全国二百五十地点で低年齢少年(九〜十四歳)三千人を対象に、実施したものである。
 同調査によると、大方の小・中学生は良好な親子関係にあり、それなりの規範意識を持っている。しかし、価値観・規範意識と逸脱行動との関係は必ずしも明らかではないが、逸脱行動に走る者も一部にはいるという結果となっている。
A 子どもの体験活動等に関する国際比較調査
 この調査は、文部省(現文部科学省)の委嘱を受けた子どもの体験活動研究会が、日本、韓国、アメリカ、イギリス及びドイツの都市部に暮らす子どもたち(小学五年生及び中学二年生)を対象に、実施したものである。
 同調査によると、我が国の都市部に暮らす小・中学生は、韓国、アメリカ、イギリス及びドイツの都市部に暮らす小・中学生と比較すると、総じて、家庭での手伝いをしておらず、家庭においてあまりしつけられていない。一方、地域のお祭りや行事に参加した体験は比較的多いという結果となっている。
B 青少年の暴力観と非行に関する研究調査
 この調査は、総務庁(現内閣府)が、全国五都県の中学生及び高校生等を対象に、実施したものである。
 同調査によると、中・高校生の家庭の様子は全般的には明るい雰囲気がみられるが、中学生に比べ、高校生になると、「いじめ」に対する傍観者的意識が多くみられ、「事なかれ」的生活態度がみられるという結果となっている。

<最近の少年非行及び青少年をめぐる問題状況>
@ 最近の非行少年の特徴
 最近の少年非行等をみると、凶悪犯で検挙された少年のうち過去に非行歴のないものが全体の約半数(平成十一年の場合四五・五%)を占めるなど、従来のものとは異なったパターンを示すものが現れてきていることが特徴として挙げられる。とりわけ、万引きなどの初発型非行や非行グループへの加入などの日常的に目立つ前兆を示さない、いわゆる、一見おとなしく目立たない「普通の子」が内面に不満やストレス等を抱え、なんらかの要因によってそれが爆発して起こる「いきなり型」の非行といったものが新たに生じてきている。
 これらの犯罪や非行を犯す最近の少年に共通してみられる特徴として、文部科学省の「少年の問題行動等に関する調査研究協力者会議」は、@自己中心的な価値観を持ち、被害者に対する贖罪感や規範意識が低い、Aコミュニケーション能力や自己表現力が低く、対人関係がうまく結べない、と分析している。
A 学校における暴力行為といじめの状況
 平成十一年度に発生した学校における暴力行為は、小学校で一千五百九件、中学校で二万四千二百四十六件、高等学校で五千三百件となっており、小学校では前年度より十九件減少しているものの、中学校及び高等学校ではそれぞれ前年度より一千二百五十五件及び百四十八件増加している。
 また、いじめの発生件数は、同じく文部省(現文部科学省)の調査によれば、小学校で九千四百六十二件、中学校で一万九千三百八十三件、高等学校で二千三百九十一件となっており、前年度と比較すると、それぞれ三千三百九十六件、一千四百十八件、百八十五件減少するなど、ここのところ四年連続して減少しているものの、依然として多数のいじめが発生している。
B 児童虐待等青少年が被害者となる犯罪の発生
 少年が犯罪の被害者となるケースもここ数年深刻化している。平成十二年に少年が被害を受けた刑法犯罪は三十五万二千七百五十三件となっている。このうち、凶悪犯被害一千九百十六件、粗暴犯被害二万三千四百八十七件と、いずれも大幅に増加した。また、性犯罪(強姦、強制わいせつ)の被害も五千六百八件に上っている。
 児童虐待の実態を正確に把握するのは困難であるが、児童相談所において養護相談の内訳として虐待相談についての統計をとり始めた平成二年度以降、その件数は一貫して増加を続け、平成二年度には、一千百一件であった件数は、平成十一年度には一万一千六百三十一件と十倍を上回った。

<青少年をめぐる問題の要因・背景>
 青少年をめぐる問題の要因・背景には、様々な要因があり、しかもそれらが複雑に絡み合っていることから、それらの因果関係などを十分に明らかにすることは極めて困難となっているが、今日の青少年の状況を考えた場合、特に、次のような状況に留意する必要がある。
@ 家庭や社会の変容に伴う多様な体験や交流機会の不足
 今日の青少年においては、その発達過程において、かつて得られたような豊かな生活体験などの機会が不足しており、こうしたことが青少年の成長にとって、今日様々な影響を与えている。
A 大人社会の風潮や社会全体の価値観の揺らぎ
 青少年の問題は、その時々の社会全体が抱える様々な問題を反映したものである。とりわけ、今日の大人社会の有り様や社会全体の価値観の揺らぎなどが、青少年の意識や行動に少なからず影響を及ぼしているといわれている。
B 情報化の進展や有害情報との接触
 情報化の進展に伴い、青少年の多くが、パソコンや携帯電話等を所有し、利用している。こうしたメディアは、時間的・地理的制約などを超えた情報の収集等が行えるという大きな利点がある反面、青少年にとって悪影響を与えるおそれがある。したがって、今後とも親や青少年を取り巻く人々による青少年の心身への影響等を十分踏まえた適切な配慮が必要である。

第二章 青少年施策の取組と展開

<青少年対策から「青少年育成施策」へ>
 少年の非行をはじめ青少年をめぐる様々な問題状況は、今日、極めて広範な広がりを持ち、普遍化する傾向にあるといえる。このため、従来の非行防止や罪を犯した少年等の保護、矯正、問題行動が見られる青少年への対応等といった取組に引き続き力をそそぐだけでなく、青少年全体の健全な育成環境を整備するという観点をより重視して、総合的な施策を展開していくことが必要である。平成十一年七月の青少年問題審議会答申「『戦後』を超えて―青少年の自立と大人社会の責任―」においても、「青少年を育成保護施策の対象として客体的にとらえるきらいのある「青少年対策」から、青少年を自己実現を図る主体ととらえ、自律的自己の確立・自己実現支援等を主眼とした総合的な「青少年政策」へと更なる発展を目指すべき」と指摘されている。
 総務庁(現内閣府)では、「青少年対策推進会議」(議長:総務事務次官)を開催し、「青少年対策推進要綱」を申し合わせてきたが、平成十一年十月には要綱の名称を「青少年育成推進要綱」に改めるとともに、基本方針を、すべての青少年が、社会とのかかわりを自覚しながら、自律的個人として自己を確立し、自己を向上させていけるよう支援し、また、健やかな成長を阻害する要因を除去していくことに据えるなど、大幅な見直しを行い、「青少年育成施策」を展開することとした。

<教育改革の積極的な推進>
 平成十二年十二月の教育改革国民会議の最終報告「教育改革国民会議報告―教育を変える十七の提案―」を受け、文部科学省では平成十三年一月二十五日、「二十一世紀教育新生プラン」を決定した。
 この「二十一世紀教育新生プラン」は、@分かる授業で基礎学力の向上を図る、A多様な奉仕・体験活動で心豊かな日本人を育む、B楽しく安心できる学習環境を整備する、C父母や地域に信頼される学校づくりを行う、D教える「プロ」としての教師を育成する、E世界水準の大学づくりを推進する、F新世紀にふさわしい教育理念を確立し、教育基盤を整備する、という七つの重点戦略から構成されている。
 文部科学省では、プランの中で明らかにされた具体的な主要施策や課題のうち、緊急に対応すべき事項として教育改革関連六法案を第百五十一通常国会に提出したほか、平成十三年度予算にも教育改革関連予算を盛り込んでいる。さらに、教育改革国民会議の報告にある満十八歳後の青年の奉仕・体験活動の促進のための仕組みづくりについては、平成十三年度中に検討を進める等のタイムスケジュールを踏まえて、迅速かつ果断に教育改革を進めることとしている。

<全国に広がる地域での体験学習の取組>
 子どもたちが社会との関わりを自覚しながら自律性を発揮し、自己実現を図っていけるよう、様々な関係機関が連携して青少年に多様な体験的な活動を提供する試みが全国各地で行われつつある。例えば、兵庫県では、県下の中学二年生全員が一週間、学校を離れて、職場体験やボランティア、農作業などに携わる体験活動「地域に学ぶ『トライやる・ウィーク』」を平成十年度から実施するなど、様々な実践が行われつつある。
 「トライやる・ウィーク」の取組では、子どもたちに体験活動を提供する試みが、家庭・学校・地域にも様々な影響や効果を及ぼし、各々の活性化にもつながっていることや、子どもの育成活動を通じて地域のネットワークづくりに役立ったとか、関係した地域の大人たちにとっても子どもたちを改めて見直したとか、といった評価が得られている。
 こうした活動の推進に当たっては、子どもたちの興味や関心を踏まえながら、事業がパターン化され、陳腐化したものとならないよう、十分な留意が必要である。このためには、より活動プログラムが充実したものとなるよう、地域の団体や企業など様々な機関等との連携の下に、絶えず、新しい活動の場などを開発していくことなどが重要であり、今後とも関係者の一層の努力が期待される。

<少年による凶悪・粗暴な事件を受けた動き・取組>
 平成十二年に入り、動機が必ずしも判然としない特異・凶悪な事件が相次ぎ、世間に衝撃を与えた。特にゴールデンウィークの前後に事件が相次いだことを踏まえ、総務庁(現内閣府)では、平成十二年五月十二日に青少年関係省庁の局長クラスからなる青少年対策推進会議を急遽開催し、そうした状況に政府一体となって取り組んでいくことについて関係省庁との協議を行った。
 そして、同年八月三十日、@非行の前兆となり得る問題行動等の段階での的確な対応、A悪質な少年犯罪に対する厳正な措置、B最近の特異・重大事件に関する動機・原因の解明、C非行等問題行動の防止にもつながる積極的な青少年健全育成施策の実施、などを柱とした「少年の凶悪・粗暴な非行等問題行動について当面取るべき措置」を申し合わせ、これに沿った各種取組を推進していくこととした。
 これらの動きに合わせて、関係省庁において様々な取組が行われた。
@ 緊急に取り組んだ事項
 総務庁(現内閣府)では、平成十二年七月の「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」の中で特に、非行の前兆段階において、少年、保護者等へ適切な対応を行うよう啓発活動や街頭補導活動を推進するなど、青少年の非行防止に対する国民の意識の高揚を図っていくこととした。
 また、警察庁では、十二年六月、全国少年課長・少年対策室長会議を開催し、関係機関等との連携や少年事件捜査力の強化を図るよう指示をした。
 さらに、文部省(現文部科学省)では、十二年五月、文部大臣から「各学校へのお願い」を発表し、各学校に対し協力を呼びかけるとともに、「最近の少年による事件に関する文部省プロジェクトチーム」における検討のまとめを発表し、対策を講じることとした。
A 最近の特異・重大事件に関する動機・原因の解明等
 少年による特異・重大事件について、事案の詳細を解明することにより、事件前の行動、いじめ・暴力行為等と事件との因果関係を明らかにし、今後の効果的な非行対策や適切な事後の対応に資するよう、@青少年の社会的適応能力と非行に関する研究調査、A少年の前兆行動についての調査、B少年の問題行動等に関する総合的調査研究、といった分析・調査等を実施した。
 また、第百五十通常国会において成立した「少年法等の一部を改正する法律」の平成十三年四月の施行に合わせ、少年受刑者に対する処遇内容・方法の充実を図るとともに、少年院における矯正教育について、被害者の視点を重視した教育内容・方法の充実を図っている。
B 非行等問題行動の防止にもつながる積極的な青少年健全育成施策の実施
 内閣府においては、青少年からの悩みに対する相談窓口の紹介並びに青少年自身や保護者をはじめとする青少年育成関係者への情報提供、啓発及び意見交換・聴取を行うための「青少年のためのホームページ」の開設、文部科学省においては、引き続き、地域社会における多様な人々との交流や自然体験・社会体験などを積み重ねられる機会と場の提供等の一環として「全国子どもプラン」、家庭や地域社会全体で子どもとふれあい話し合う機会を充実するとともに、心豊かな子どもたちを育むため、[子どもと話そう]全国キャンペーン等の事業を推進した。
 また、平成十二年五月に教育改革国民会議議長が緊急アピールを、同月十二日に文部大臣が「各学校へのお願い」をそれぞれ出したところであるが、引き続き、学校において、青少年に対し命の大切さについて訴えていくこととしている。

<マスコミ等の青少年に配慮した自主規制等の取組>
@ 郵政省(現総務省)における取組
 平成十一年十一月〜十二年六月に「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会」を開催し、メディア・リテラシーの向上に向け、人材育成や教材の開発を提言するとともに、研究会の提言を受け、教材の開発を実施した。また、テレビやテレビゲームとの接触状況、暴力行使経験及び暴力許容度等について調査するため、「青少年と放送に関する調査」を実施し、十二年七月に公表するとともに、十二年一月に放送法関係審査基準を改正し、CS放送において成人向け番組の放送を行う場合には、契約時の年齢確認などの一定の青少年保護措置を講ずることを認定の基準とした。
A 放送事業者の取組
 NHK及び民放連は、郵政省(現総務省)の「青少年と放送に関する調査研究会」の提言を踏まえ、「青少年と放送に関する専門家会合」を開催するなどして、@青少年向け放送番組の充実、Aメディア・リテラシーの向上、B第三者機関の活用、C青少年と放送に関する調査の推進、D放送時間帯の配慮、E番組に対する情報提供の充実、についての取組を進めている。
 また、有害な社会環境から青少年を守るための法制度について、各方面において検討が行われている。

<中央省庁等改革後の新たな青少年施策の展開>
 平成十三年一月六日から、国の行政は一府十二省庁として、新たなスタートをきった。
 二十一世紀を迎え、青少年はもとより国民一人一人が社会の重要な担い手として活躍できる環境を整備し、心豊かな日本を築いていくことが重要な課題となっていることから、青少年の健全育成に関する事務については、内閣総理大臣のリーダーシップの下、強力な推進を図ることが必要である。
 なお、内閣府が中心となって、関係機関間の調整を図り、青少年行政を総合的に推進していくため、新たに「青少年育成推進会議」(議長:内閣府事務次官)を開催することとした。この青少年育成推進会議は、従来の青少年対策推進会議が果たしてきた機能を引き継ぐとともに、二十一世紀の新たな青少年施策の展開を図っていく場となるものである。
 今後、内閣府では、平成十一年七月の青少年問題審議会の答申及び同答申で指摘された事項の具体化に向けた検討を行うため十二年四月〜十二月に開催した「青少年政策の総合的推進に関する研究会」の報告書の内容を踏まえ、より一層の青少年施策の総合的推進を進めていくこととしている。
@ 地域で青少年を育成する環境づくりの推進
 現下の青少年の置かれている状況を踏まえれば、地域社会において青少年が多様な人々との交流や多様な活動を体験できる場を豊富に提供していくことが今後とも必要である。
 今後、行政等は、先進的な事例についての情報を収集し、積極的に提供するなどして、各地域において、実情に応じた地域コミュニティの形成等が進められるよう努めることが必要である。
A 非行等問題行動に対応する相談機関等の連携強化等の総合的な推進
 非行等問題行動の兆候を早期に発見し、適切な対処を行うには、関係諸機関等が相互に機動的な情報提供や協力が行える連携体制を構築することが必要であり、各分野における設置主体の異なる多様な相談機関が、互いに役割、専門性等を理解し、カバーし合ったり、役割分担をすることができるようにすることが重要である。
 このため、日常的な業務連絡等の場を充実させるとともに、担当者の意識を醸成していくことや、個別の事案の解決のためのチームを臨機応変に組織できる仕組みの整備を推進することが必要である。また、相談機関を広く周知するための横断的な組織による積極的な広報活動も重要である。
B 青少年行政の総合的な推進
 青少年行政は関係省庁の施策が多種多様にわたっていることを踏まえ、行政が、青少年を健全に育成していくための環境の整備を着実に行えるよう、青少年育成の基本理念及び青少年行政の基本方針の下に、各施策を体系的に整理し、青少年行政の総合的推進を図り、国民への分かりやすい施策の提示を行っていく必要がある。
 このため、内閣府では、関係省庁により推進される施策の体系的な整理を行い、青少年育成の基本理念や国の政策推進の基本方針等を定めた「青少年プラン(仮称)」の策定を進めることとしている。

第三章 二十一世紀の幕開けに当たって

<大人たちへの提言>
@ 自己を省みる
 今日の青少年の問題は、社会全体の規範意識やモラルの低下などが強く反映しているものといえる。
 子どものしつけや教育以前に、大人一人一人が、子どもたちに見られて恥じることのないような行動や態度をとっているのか、もう一度自己を省みる必要性がある。
A 子どもに愛情を持つ
 子育てには、困難が伴い、エネルギーが必要なことを覚悟する必要があり、その上で、親やそれに代わる人々は、子どもに対して十分な愛情と慈しみの心を持つ必要がある。
B 子どもと向き合う
 子どもにとって家庭は人格形成の行われる最初の場であり、その影響は極めて大きい。最初から完璧な親などはおらず、誰もが最初は「未熟な親」なのである。子どもと真剣に向き合い、語り合い、時にはきちんと叱ることなどをとおして、親もまた「一人前の親」に成長していくのである。
 親や大人一人一人が、子どもに対しての十分な愛情と慈しみの心を持ちつつ、真正面から子どもと向き合い、真摯に子どもと関わっていくことが求められる。

<次代を担う青少年へ〜若者たちへの期待を込めて〜>
@ 夢や目標を持つ
 青少年期は、ある意味では「自分探しの旅」でもある。人間は、社会的な存在であり、社会との関わりを持たずに生きていくことはできない。様々な体験や他人との出会いは、失敗や困難、悩み、苦しみといったものを伴う。しかし、そうした失敗や困難等をとおして、本当の自分というものを発見することができ、失敗や困難等を乗り越えることによってはじめて自己を確立することができるのである。
 青少年には、まず、夢や目標を持ってほしい。そして、失敗を恐れず、それに向かってチャレンジしてほしい。
A 自分で決める
 志望校の選定、就職先の決定、結婚相手の決定等々、人生には、たくさんの選択をしなければならない岐路がある(それが夢や目標の選択である場合も、もちろんあろう)。
 そうした選択に当たっては、両親やふだん親身になってくれている大人の意見にも謙虚に耳を傾けてほしい。そして、その上で、選択の最終決定は、是非、青少年自らが行ってほしい。
B 努力を惜しまない
 目標や方向が決まれば、それに向けて努力を惜しまないでほしい。簡単に手に入れることができたものは、喜びは一時のもので、また、手に入れたものへの愛着も長続きしないことが多い。努力をしただけ、それが実現したときの喜びは大きいし、手に入れたものへの愛着も長続きする。
C 思いやりの気持ちを持つ
 他人を思いやる気持ちを持ってほしい。
 自分が行動する前には、少しだけ、これから自分が言おうとしていることや、やろうとしていることを、もし、自分が言われたり、されたりしたらどういう気持ちがするのかということを考えてほしい。そして、また、自分たちの言動を時々振り返ってみてほしい。
 現在、身近にいて親身に接し、また、考えてくれている両親等も、永遠の命を持つものではない。青少年の将来は、青少年一人一人が自ら切り拓いていくしかないのである。青少年の一層の自覚と研鑚を期待したい。

第二部 青少年の現状

第一章 青少年の人口

 平成十一年十月一日現在の青少年人口(〇〜二十四歳)は三千五百二十八万七千人で、総人口の二七・九%を占めている(第1図参照)。

第二章 青少年の健康と安全

 幼児の食生活にも少なからず変化がみられ、最近は小児期からの生活習慣病の予防の重要性が指摘されてきている。青少年の栄養素等の摂取状況は、平均的にはおおむね良好であるが、個々人においては栄養素などの過剰摂取や偏り等の新たな問題が生じてきている。
 また、最近の青少年期における食生活の問題点として、朝食欠食の習慣化が挙げられる。
 平成十一年に不慮の事故により死亡した青少年(〇〜二十四歳)の数は、三千六百四十九人となっており、〇〜二十四歳の全死亡者数の二五・七%を占めている。不慮の事故の内訳では、交通事故が最も多くなっている。

第三章 青少年の教育

 平成十二年五月一日現在の幼稚園から大学までの在学者数は、二千百五十九万九千人(男子一千百十九万七千人、女子一千四十万二千人)と、総人口の一七・〇%を占めている。
 このうち、小学生は七百三十六万六千人、中学生は四百十万四千人、高校生は四百十六万五千人、大学生は二百七十四万人であり、小学生、中学生、高校生ともに在学者数は前年度に比べ減少している一方、大学生は増加し、過去最高となった(第2図参照)。
 また、平成十二年度における高等学校、高等専門学校等への進学率は九七・〇%(通信制課程(本科)への進学者を含む)、大学・短期大学への進学率は四九・一%となっている。

第四章 青少年の労働

 平成十二年(年平均)の青少年就業者(十五〜二十九歳)は、一千四百六十七万人と、前年と比べ十四万人減少しており、就業者総数に占める割合は二二・八%である。これを産業別にみると、「サービス業」二九・三%、「卸売・小売業、飲食店」二七・三%、「製造業」一九・〇%と、これら三産業で全体の四分の三を占めている。
 平成十二年三月の新規学校卒業者の就職状況は、中学校卒業者が一万四千九百三人、高校卒業者が二十四万七千七十四人、大学卒業者は三十万七百十八人となっており、中学、高校、大学ともに前年度に比べ減少している。
 三十歳未満の青少年労働者の平成十一年中における離職率は二一・八%で、全労働者の離職率一五・〇%を上回っている。

第五章 青少年の非行等問題行動

 平成十二年の刑法犯少年(十四歳以上二十歳未満のもの)は、十三万二千三百三十六人(前年比九千三百八十五人(六・六%)減)、刑法犯少年の人口比(同年齢層の人口千人当たりの検挙人員)は、一四・九%(〇・七ポイント減)である。これを罪種別にみると、万引き、オートバイ盗、自転車盗などの窃盗犯が全体の五八・九%を占めて最も多く、年齢別にみると、十四〜十六歳の低年齢層が六六・七%を占めている。
 不登校児童生徒数は年々増加しており、平成十一年度において三十日以上学校を欠席した不登校児童生徒数は、小学生二万六千四十七人(全児童数の〇・三五%)、中学生十万四千百八十人(全生徒数の二・四五%)となっている(第1表参照)。

第三部 青少年に関する国の施策

第一章 青少年行政の総合的かつ計画的な推進

 政府の推進する青少年行政の範囲は多岐にわたり、また、関係する行政機関は多数に及んでいる。内閣府では青少年の健全育成に関する事項の企画・立案及び総合調整、関係省庁の施策や事務の連絡調整を行っており、青少年行政の総合的な推進に努めている。
 平成十一年七月の青少年問題審議会答申「『戦後』を超えて―青少年の自立と大人社会の責任」の提案事項の具体化に向け、「青少年政策の総合的推進に関する研究会」を開催し、十二年十二月報告書を取りまとめた。
 平成十二年八月の青少年対策推進会議においては、特異・重大な少年犯罪が続発したことを受け、「少年の凶悪・粗暴な非行等問題行動について当面取るべき措置」を申し合わせた。また、十三年二月の青少年育成推進会議では、「青少年育成推進要綱」及び「少年の凶悪・粗暴な非行等問題行動について当面取るべき措置」の進捗状況を確認するとともに、新府省体制においても、これらを推進することを申し合わせた。
 このほか、青少年に関する研究調査、青少年の健全育成及び非行防止対策の総合的推進、青少年育成国民運動(「大人が変われば、子どもも変わる運動」等)に対する支援等を行っている。

第二章 青少年健全育成事業

 地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの活動を振興する体制を整備するため、「全国子どもプラン(緊急三ヶ年戦略)」を策定し、衛星通信利用による「子ども放送局」推進事業、「子どもセンター」の全国展開、「子ども長期自然体験村」の設置等を推進するとともに、「[子どもと話そう]全国キャンペーン」を展開している。
 平成十二年を「子ども読書年」とする国会決議を受け、子どもの読書活動を推進するための普及・啓発等の事業を展開している。
 ボランティア活動への参加促進、団体・グループ活動の促進、文化活動の奨励、スポーツ活動の普及・振興等を図るための支援を行っている。
 青年の家・少年自然の家・公民館・図書館・博物館等の社会教育施設、勤労青少年福祉施設、児童館等の児童厚生施設、公園、ユースホステル、スポーツ施設等の整備を行っている。
 社会教育主事や各種施設の指導員等の青少年関係指導者の養成、研修を行っている。

第三章 家庭に関する施策

 平成十二年度から、子育て中に親の身近な相談相手として「子育てサポーター」を配置し、小学校の余裕教室等において子育て交流事業を実施するなど、地域で子育て支援ネットワークを形成する事業を推進している。また、父親の家庭教育への参加を促進するための事業を支援している。
 家庭教育に関する情報提供、相談体制の整備を進めており、「家庭教育手帳」等を母子保健の機会等を活用して幅広く配布するとともに、「フォーラム家庭教育」の開催、リーフレット「discover the LIFE」を配布するなどして家庭教育に関する普及啓発を図っている。また、平成十一年度から三か年で全都道府県に家庭教育に関する二十四時間の電話相談体制の整備を進めている。
 児童相談所、家庭児童相談室、児童家庭支援センター、保育所等において、家庭や児童に対する相談・支援活動を行っている。
 社会的援助を必要とする児童・家庭に対する福祉向上のため、乳児院、児童養護施設、保育所等を整備し、母子家庭の福祉対策を講じており、また、母子保健の推進、障害児の福祉施策等を講じている。
 次代を担う子どもが健やかに育つための環境づくりを進めるため、「教育・児童福祉施策連携協議会」を設置し、家庭教育・子育て支援の充実、幼稚園と保育所の連携の促進等について協議を行っている。

第四章 学校教育に関する施策

 平成十四年度から、完全学校週五日制をすべての学校段階で一斉に実施することとしている。そのため、学習指導要領を改訂するなど、所要の制度改革を行った。
 完全学校週五日制の下、子どもたちに豊かな人間性や自ら学び考える力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとして、教育内容の厳選、道徳教育の充実、総合的な学習の時間の創設、選択学習の幅の拡大等の改善を図っている。
 いじめや不登校といった児童生徒の問題行動等に対応するため、スクールカウンセラーの拡充、「心の教室相談員」の配置、教員に対する専門的な研修等を実施している。
 各高等学校が生徒それぞれの個性を最大限に伸長させるため、総合学科や単位制高校など多様な特色ある学校づくりを推進している。
 中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育を実現するため、平成十一年四月から、中高一貫教育の導入を可能とし、その積極的な推進を図っている。
 高校生が学習内容や将来の進路指導等に関連した就業体験を行うことは、高い教育効果が期待されることから、高校生のインターンシップを総合的に推進している。
 三年以上四年未満の在学で学部を卒業できる例外措置の導入、大学院修士課程の一年制コースの導入、高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院の修士課程(専門大学院)の制度化等、高等教育の多様化や制度の弾力化など高等教育改革を推進している。

第五章 職場に関する施策

 新規学校卒業者がその適性と能力に応じた職業選択を行えるよう、職業安定機関や学校等との緊密な連携の下に、職業指導、職業紹介、就職指導等の充実を図っている。また、学生の職業意識の啓発のため、インターンシップの導入を促進している。
 求人者が求人活動を無秩序に行うことは、学校教育上支障を及ぼすとともに、適正な職業紹介を阻害する要因ともなるため、求人秩序の確立のための取組が行われている。
 勤労青少年福祉法、勤労青少年福祉対策基本方針等に基づいて、勤労青少年の福祉対策を総合的かつ計画的に推進するとともに、「勤労青少年の日」を中心とした啓発活動、勤労青少年のクラブ活動の促進等を図っている。
 青少年の多様な適性等に応じた職業能力開発を進めるため、民間企業における計画的な職業能力開発機会の確保と公共職業訓練の効果的な実施を促進している。
 農山漁村における人材の育成・確保を図るため、都道府県等の行う研修教育をはじめとする各種育成事業への支援等を行っている。

第六章 社会環境の整備に関する施策

 青少年を取り巻く社会環境のうち、青少年の健全な育成に有害であると認められるものについては、関係業界による自主規制、住民による環境浄化の地域活動、法令及び青少年保護育成条例による規制・取締り等の対応策が講じられている。関係業界に対しては、関係省庁等が自主規制の要請等を行っている。
 放送事業者は、第三者機関「放送と青少年に関する委員会」を設置するなどして、自主的な青少年対策を進めている。インターネット上の違法・有害情報、ダイヤルQの番組についても、自主規制等の措置が行われてきている。
 児童買春や児童ポルノの販売等については、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(平成十一年十一月施行)により積極的な取締りに努めている。
 青少年の基本的人権が尊重されるような環境をつくるとともに、青少年自らが正しい人権尊重思想を身につけられるよう、様々な広報啓発活動を行っている。
 児童生徒に対する交通安全教育、運転者に対する講習の充実等、青少年の事故防止対策や環境保全対策に努めている。

第七章 少年の非行防止と非行少年の処遇

 少年の非行防止のため、各種月間(「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」等)を通じて広報啓発活動を推進している。
 少年補導センター、防犯協会、母の会等の地域における非行防止組織の活動を促進している。
 少年補導職員や少年相談専門職員を中核とする「少年サポートセンター」等を中心として、それぞれの地域の実情に応じて、非行少年等の補導活動、被害少年の保護活動、ヤング・テレホン・コーナー等の少年相談活動を推進している。
 非行少年は、警察、検察庁、家庭裁判所、矯正施設、更生保護機関等の多くの機関が、それぞれの段階に応じた処理、処遇を行っている。
 近年の薬物乱用問題の深刻な状況を踏まえ、平成十年五月に決定された「薬物乱用防止五か年戦略」を踏まえ、関係省庁の連携の下、薬物乱用防止教室開催の促進、薬物乱用防止教育の充実、広報啓発活動の徹底、乱用少年に対する取締り等関係施策の充実を図っている。

第八章 国際交流に関する施策

 内閣府では、国際青年育成交流、日本・中国青年親善交流、日本・韓国青年親善交流、世界青年の船、東南アジア青年の船、アジア太平洋青年招へい、国際青年の村等の青年国際交流事業を行っている。
 青年海外協力隊については、平成十三年三月末現在、六十か国の開発途上国に、二千四百九十八名の隊員が派遣されている。
 留学生交流を推進するため、外国人留学生の受入体制の一層の整備を行うとともに、日本人学生の海外留学等に係る施策を進めている。なお、「留学生百万人計画」に基づいて我が国の大学等で学ぶ留学生は、平成十二年五月一日現在、六万四千十一人と過去最高となっている。
 外国語教育の充実や地域レベルでの国際交流の推進を図るため、「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」において、平成十二年度には、世界三十九か国から約六千百人の外国青年を招致している。


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統計からみた我が国の高齢者


―敬老の日にちなんで―


総 務 省


 総務省統計局では、敬老の日にちなみ、統計からみた我が国の高齢者の姿について取りまとめた。

T 高齢者人口の現状と将来

一 六十五歳以上人口は二千二百七十二万人、人口、割合とも過去最高
(1) 平成十三年九月十五日現在における我が国の六十五歳以上人口(推定)は二千二百七十二万人で、総人口の一七・九%を占めている。一年前の平成十二年九月十五日と比べ、人口は八十二万人増加、割合は〇・六ポイント上昇し、人口、割合ともに過去最高となった。また、七十五歳以上人口は九百四十五万人で、総人口に占める割合は七・四%となっている。
(2) 六十五歳以上人口を男女別にみると、男性は九百五十一万人(男性の総人口の一五・三%)、女性は一千三百二十一万人(女性の総人口の二〇・三%)で、女性が男性より三百七十万人多くなっている。なお、女性の六十五歳以上人口の割合は初めて二〇・〇%を上回った(第1表参照)。

二 増加が続く六十五歳以上人口
(1) 総人口に占める六十五歳以上人口の割合の推移をみると、第一回国勢調査が行われた大正九年以降、昭和二十五年頃までは五・〇%程度で推移していたが、その後は年を追って上昇し、六十年には総人口の一〇・三%と一〇・〇%を超えて、総人口の十人に一人を占めるようになった。この割合は近年では毎年〇・五ポイント程度上昇しており、平成十三年には一七・九%となり、総人口の五・六人に一人の割合となっている(第2表第1図参照)。
(2) 国立社会保障・人口問題研究所の推計(平成九年一月推計)によると、六十五歳以上人口は今後も増加傾向が続き、平成二十七年(二〇一五年)には三千百八十八万人(総人口に占める割合二五・二%)となり、四人に一人が六十五歳以上になると見込まれている(第2表第1図参照)。
(3) 十五〜六十四歳人口に対する六十五歳以上人口の比率(老年人口指数 第2表の注2参照)をみると、昭和二十五年の八・三から、四十五年は一〇・三、平成二年は一七・三、七年は二〇・九と次第に上昇し、平成十三年には、前年を一・一ポイント上回って二六・四となっている(第2表参照)。

三 欧米諸国に比較して急速な我が国の人口の高齢化
(1) 諸外国の総人口に占める六十五歳以上人口の割合をみると、調査年次に相違はあるものの、イタリアが一七・七%、スウェーデンが一七・三%、ドイツが一六・二%、フランスが一五・八%、イギリスが一五・六%などとなっており、我が国の六十五歳以上人口の割合(一七・九%)は、主要国の中でも高い水準となっている(第3表参照)。
(2) 六十五歳以上人口の割合が七・〇%から倍の一四・〇%に達した所要年数(倍化年数)をみると、スウェーデンでは八十五年、イギリスでは四十七年、フランスでは百十五年を要しているのに対し、我が国の場合、昭和四十五年(一九七〇年)の七・一%から平成六年(一九九四年)には一四・一%となり、所要年数はわずか二十四年となっている。
  国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、我が国の六十五歳以上人口の割合は、今後も上昇を続け、国際的に見ても極めて急速な一層の高齢化が予測されている(第2図参照)。

U 高齢者の就業状況

一 欧米諸国よりも高い高齢者の労働力人口比率
 平成十二年の六十五歳以上の高齢者の労働力人口(就業者と完全失業者の合計)は四百九十三万人、労働力人口比率(第4表の注参照)は二二・六%となっている。これを男女別にみると、男性が三四・一%、女性が一四・四%となっており、前年に比べ男性は一・四ポイント低下、女性は〇・五ポイント低下し、男女計で〇・八ポイント低下した。
 また、高齢者の労働力人口比率は欧米諸国に比べて高い水準にある(第4表参照)。

二 男性高齢者の労働力人口は七十歳未満で二人に一人、七十歳以上で四人に一人
 男性の六十五歳以上の労働力人口比率は、平成五年以降緩やかな低下傾向にあるものの、十二年をみると、六十五〜六十九歳は五一・一%、七十歳以上は二四・三%と、六十五〜六十九歳のほぼ二人に一人、七十歳以上のほぼ四人に一人が労働力人口となっている。
 女性の六十五歳以上の労働力人口比率は、平成五年以降緩やかに低下し、十二年には一四・四%と、二年連続で一五・〇%を下回った。六十五歳以上のうち六十五〜六十九歳は二五・四%、七十歳以上は九・八%となっている(第3図参照)。

V 高齢者の暮らし

一 高齢者のいる世帯では核家族世帯と一人暮らしの世帯の割合が拡大
 平成十二年における一般世帯数(四千六百三十八万世帯)のうち、六十五歳以上の親族(高齢親族)のいる一般世帯数は一千五百二十六万世帯で、平成七年に比べ、二百四十八万世帯(一九・四%)増となっている。
 高齢親族のいる一般世帯の増加率は、高齢化の進行を反映して、一般世帯の増加率を大きく上回っており、一般世帯に占める割合も、平成二年の二六・四%から七年には二九・一%、十二年には三二・九%と拡大し、一般世帯のほぼ三分の一に達している。
 高齢親族のいる一般世帯数を家族類型別にみると,核家族世帯が六百九十一万世帯(高齢親族のいる一般世帯数の四五・三%)と最も多く、次いで六十五歳以上の者が子供夫婦や孫などと同居している「その他の親族世帯」が五百三十万世帯(同三四・七%)、単独世帯(一人暮らし)が三百三万世帯(同一九・八%)となっている。なお、核家族世帯のうちでは、夫婦のみの世帯が四百三万世帯(同二六・四%)と最も多くなっている(第5表第6表参照)。
 平成二年以降について高齢親族のいる一般世帯の家族類型別割合の推移をみると、核家族世帯の割合は平成二年の三五・四%から七年に四〇・四%、十二年には四五・三%と急速に拡大しており、高齢親族のいる世帯では、核家族化が進行する一方、「その他の親族世帯」の割合は二年の四九・四%から七年には四二・三%、十二年には三四・七%と急速に縮小している。また、単独世帯の割合も、平成二年の一五・一%から七年には一七・二%、十二年には一九・八%と拡大している。
 高齢親族のいる核家族世帯のうち夫婦のみの世帯は四百三万世帯で、高齢親族のいる核家族世帯のほぼ六割は夫婦のみの世帯となっている。また、夫婦のみの世帯は、高齢親族のいる一般世帯数の二六・四%となっており、平成七年と比べ、二・六ポイント拡大している。
 この結果、高齢者のみで住んでいるとみられる夫婦のみの世帯と単独世帯との合計は、高齢親族のいる一般世帯の四六・三%と、その半数近くになった(第5表参照)。

二 六十五歳以上の女性の五・六人に一人は一人暮らし
 平成十二年における六十五歳以上の単独世帯(高齢単身世帯)は三百三万世帯で、七年に比べて三七・五%増となっている。また、高齢単身者が六十五歳以上人口に占める割合は一三・六%と、平成七年(一二・一%)に比べて拡大している。
 高齢単身者数を男女別にみると、男性が七十一万人、女性が二百三十二万人で、女性が男性の約三倍となっている。また、六十五歳以上人口に占める割合は、男性が七・六%、女性が一七・八%となっており、六十五歳以上の女性の五・六人に一人は単独世帯となっている。これを年齢階級別に平成七年と比べると、男女ともすべての年齢階級で割合が高くなっている(第6表第7表参照)。

三 高齢無職世帯の収入の八九・〇%は社会保障給付
 二人以上の世帯について,世帯主が六十五歳以上で無職の世帯(世帯主が六十五歳以上の世帯全体の六四・三%、平均世帯人員二・三五人、世帯主の平均年齢七二・三歳)の平成十二年の実収入をみると、一世帯当たり一か月平均二十四万五千四百七十円となっている。内訳をみると、公的年金などの社会保障給付(二十一万七千三百五十八円)が実収入の八八・五%を占めている。
 消費支出は二十四万三千百六十八円で、可処分所得(二十二万二千九百四十三円)を二万二百二十五円上回っており、不足分は貯蓄の取り崩しなどで賄っている(第4図参照)。

四 高齢単身無職世帯の収入の不足分は一二・〇%
 単身世帯について、六十五歳以上で無職の世帯(六十五歳以上の単身世帯全体の八五・二%、平均年齢七四・一歳)の平成十二年の実収入をみると、一世帯当たり一か月平均十三万一千二百二円となっている。内訳をみると、公的年金などの社会保障給付(十一万七千三円)が実収入の八九・二%を占めている。
 消費支出は十四万八百二十五円で、可処分所得(十二万二千三百八十八円)を一万八千四百三十七円上回っており、不足分は、実支出の一二・三%を占めている(第5図参照)。

五 世帯主が六十歳以上の二人以上の世帯では家計資産額は六千五百六十二万円
 二人以上の世帯について、世帯主が六十歳以上の世帯の一世帯当たり家計資産額(純資産額)をみると、平成十一年十一月末日現在で六千五百六十二万円となっている。これを資産の種類別にみると、宅地資産が三千八百二万円(資産総額に占める割合五七・九%)で最も多く、次いで貯蓄現在高から負債現在高を引いた金融資産が一千九百六十六万円(同三〇・〇%)、住宅資産が六百十五万円(同九・四%)、耐久消費財資産(ゴルフ会員権等を含む)が百七十九万円(同二・七%)の順となっている。なお、住宅・宅地資産のうち、賃貸用やセカンドハウスなどの現住居以外の資産は九百五十七万円となっている。
 また、世帯主が六十歳未満の世帯の家計資産額と比較すると、資産総額では六十歳未満の世帯(三千四百八十二万円)の一・九倍となっている。これを資産の種類別にみると、金融資産が六十歳未満の世帯の四・四倍、宅地資産が一・七倍と多くなっているのに対し、住宅資産や耐久消費財資産は六十歳未満の世帯よりも少なくなっている(第6図第8表参照)。

六 世帯主が六十歳以上の世帯の家計資産額は、地価の下落などにより五年間で二二・〇%減少
 二人以上の世帯について、世帯主が六十歳以上の世帯の平成十一年十一月末日現在における家計資産額を平成六年と比較すると、二二・三%減少となった。これを資産の種類別にみると、金融資産は七・二%増加したものの、宅地資産が三三・一%減少、耐久消費財資産が二〇・九%減少、住宅資産は一二・九%減少となっている(第8表参照)。

七 世帯主が六十歳以上の世帯のうち六三・〇%が平均資産額以下
 二人以上の世帯について、世帯主が六十歳以上の世帯の平成十一年十一月末日現在における家計資産額階級別世帯分布をみると、六三・〇%の世帯が平均資産額を下回っている。また、世帯が最も多い家計資産額階級は「二千万円以上、三千万円未満」で、全体の一二・三%を占めている(第7図参照)。






歳時記

火祭り

 祭りに火をたくのは、神を招くというのが本来の目的だったようですが、そのたき火が次第に大がかりになって、御火焚(おひたき)が中心行事となったのが、今日多く見られる火祭りです。
 阿蘇火焚神事(熊本県・霜神社)や鳥羽火祭(愛知県・神明社)など、有名な火祭りは各地にありますが、吉田の火祭(山梨県・北口本宮富士浅間神社)と並んで火祭りの代名詞ともなっているのが鞍馬の火祭。毎年十月二十二日に行われる京都市左京区、鞍馬山の中腹にある由岐神社の祭りで、今宮のやすらい祭、広隆寺の牛祭とともに、京都の三大奇祭とされています。
 この日、鞍馬の里に夕闇が迫るころ、「神事に参らっしゃれ」の触れ声で街道沿いの家々の軒先にかがり火がたかれ、祭りが始まります。最初は小さなたいまつを持った子どもたちが、夜がふけるにしたがって大たいまつを肩に担いだ若者たちが加わります。若者たちは向こう鉢巻き、裸の上半身に肩から腕を覆った独特のいでたちで「サイレイ、サイリョウ」と唱えながら町中を練り歩き、路上のたいまつに点火、町中が炎の明かりに包まれます。
 たいまつが燃え尽きるころ、山門石段に張ったしめ縄が切られ、二基の神輿が里に向かって降りてくると、祭りはクライマックスを迎えます。この後、神輿は御旅所に渡御(とぎよ)。御旅所での儀式を済ませると、翌朝神輿が帰還して祭りは終わり、鞍馬の山は再び静寂に包まれます。


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税金365日 租税史料の収集にご協力を


―租税史料館のご案内―


国 税 庁


 税務大学校和光校舎内にある租税史料館では、税に関する貴重な史料を収集、保存するとともに、展示等を通じて広く一般の方々に公開しています。また、専門のスタッフが、集められた史料の歴史的考察や租税制度の研究も行っています。
 租税史料館は、昭和四十三年に税務大学校若松町校舎に租税資料室として設置され、平成十年七月、埼玉県和光市への校舎移転を機に、税に関する歴史的史料の唯一の専門館としてオープンしました。租税史料館では、これまで以上に史料内容の充実を図るとともに、貴重な史料を広く一般の方々へ公開しています。そのほか、小・中・高校生等の社会科見学や租税教室の開催にも便利です。ぜひご利用ください。

【租税史料館の目的】

 租税制度や税務執行はそれぞれの国及び国民固有のものであり、その国の財政・経済・政治の歴史そのものと言っても過言ではありません。その意味において租税に関する歴史的史料を現在に生かし、後世に引き継いでいくことは大変重要なことです。
 租税史料館の目的は、全国各地で個別に保管されている貴重な租税史料の散逸を防ぐため、史料を収集し、その集中管理を行い、租税制度の研究などに活用していくことにあります。
 また、租税史料が租税史等の研究に広く利用されることにより、その成果が共通の財産として蓄積されていくことにもなります。

【租税史料館の活動状況】

(1) 平成十三年三月末現在の収蔵点数は約十二万五千点。その収蔵点数と充実した内容において、税に関する史料館としては他に類を見ないものとなっています。
(2) 専門の研究スタッフが鋭意、調査・分類・保管作業を行っています。
(3) 提供いただいた史料を順次分類・整理のうえ、「租税史料目録」として刊行し、全国の主要大学や公立図書館・資料館等に配付し、研究者や、文筆家の考証資料等に有効に活用されています。
(4) 学術研究上、特に意義があると認められる史料は、解読・解説を加えて「租税史料叢書」として刊行しています。
(5) 展示室を設けて収集した貴重な史料の一部を展示し、一般に公開しています。また、中学生・高校生等の租税教室等に大いに利用されています。

【租税史料の収集にご協力を】

 租税史料館では、展示室等の移転に伴い、史料内容の一層の充実を進めています。
 租税史料とは、税務行政の公文書だけに限りません。図書、写真、器具など、人々の暮らしと税との関係があるあらゆるものが大切な史料です。
 あなたの近くに眠っていませんか。租税に関する歴史的な史料の提供をお待ちしています。
 また、史料の現物に限らず、「私の町の資料館にまとまった租税の史料がある」、「税金の史料らしいものを保管している」といった情報も貴重な蓄積史料となりますので、ご連絡をお願いします。
 <租税史料の収集例>
(1) 行政機関からの提供
 @ 税務官署の建て直し時期に発見された行政文書
 A 定期簿書整理の際の廃棄予定等文書
(2) 民間からの提供
 @ 江戸時代に名主だった入間家から寄贈を受けたもの(入間家名主文書)
 A 私立博物館「地券の館」を経営していた小山氏から、「大事に保管してくれるところへ」ということで寄贈を受けたもの
 B 元東大阪税務署長の長田氏のコレクションを、同氏の遺族等の意向により寄贈を受けたもの
 C 山形市の造酒屋から、酒樽の目張り用に買い集めた古文書の寄贈を受けたもの
 ※ 資料提供の問い合わせは、最寄りの税務署(総務課)までどうぞ。

【租税史料館見学のご案内】

(1) lFフロアーの説明室では、ビデオプロジェクターを使い史料等の解説を行っており、小・中・高校生の租税教室等にも利用できます。また、一般の方でもタッチパネルで簡単に史料を検索し、閲覧することができます。
(2) 2Fフロアーの展示室「みみできく税のコーナー」では、街頭録音や納税数え歌などSP盤レコード等の音声史料を聴くことができます。そのほか、「税金体験コーナー」では、CD―ROMによりパソコンを利用して税の意義や仕組みを学んだり、タッチパネルによる申告書自動システムなどが体験できます。
<特別展示>
 本年度の「特別展示」は、「江戸時代の村と税」と題して、九月から開設されます。
 今回の「特別展示」は、税に関する史料が数多く残っている入間村(山形県)を取り上げ、江戸時代の村の様子や、領主や近隣の村との関わり等を、税の話を交えてわかりやすく紹介しています。
 パネル等を配置するなど工夫をこらして、江戸時代(歴史及び当時の生活等)に興味のある方や税に関心のある方はもちろんのこと、中学生・高校生にも理解しやすい内容となっています。特に、中学生・高校生の皆さんには、日本史等の教科書に出てくる言葉の「生」の史料と触れ合うことができるよい機会ですので、ぜひ一度見学をおすすめします。
■ 開館時間:九時三十分〜十六時三十分(入館料無料)
■ 休 館 日:土曜日、日曜日、国民の休日、年末年始、館内整理日、特別整理期間
(館内整理日及び特別整理期間については、租税史料館までお問い合わせください。)
■ 主な交通機関
 ○東武東上線―和光市駅から(約十分)
  ・東武バス:司法研修所循環:税務大学校下車
  ・西武バス:大泉学園駅行き:税務大学校下車
 ○西武池袋線―大泉学園駅から(約十五分)
  ・西武バス:和光市駅南口行き:税務大学校下車
<お問い合わせ・お申し込み先>
租税史料館の見学のお問い合わせ・お申し込みは
・税務大学校租税史料館
 〒番号351―0195
  埼玉県和光市南2―3―7
 рO48―460―5300(ダイヤルイン)



    <10月10日号の主な予定>

 ▽公害紛争処理白書のあらまし………公害等調整委員会事務局 

 ▽景気予測調査(八月調査)…………財 務 省 




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