官報資料版 平成13年11月7日




                  ▽厚生労働白書のあらまし…………………………………………厚生労働省

                  ▽法人企業統計調査(平成十三年四〜六月期)…………………財 務 省

                  ▽消費者物価指数の動向(東京都区部九月中旬速報値)………総 務 省











厚生労働白書のあらまし


―生涯にわたり個人の自立を支援する厚生労働行政―


厚生労働省


T 平成十三年版厚生労働白書の主題

 平成十三年版厚生労働白書が、去る九月七日に閣議報告され、公表された。新省発足後初めての白書となる今回の白書では、「生涯にわたり個人の自立を支援する厚生労働行政」と題して、厚生労働省の基本的役割について取り上げている。
 今日の我が国における個人をとりまく状況をみると、社会経済の面においても、また、個人の意識の面においても、大きな変化の時期を迎えていると思われる。すなわち、少子高齢社会、安定経済成長時代の到来等を背景として、世帯構造や家族の機能、雇用慣行がいずれも大きく変化し、個人が家族や職場など一つの「場」に全面的に帰属していくことが困難となりつつあり、一人一人の努力が求められてきている。
 一方、個人の意識の中でも、自ら人生設計を行い、それに適合した自己実現の場を望む志向が高まってきている。
 このような状況の下、すべての人が社会との良好な関係を保ちつつ、自己の能力を最大限に発揮し、個性を活かして生きていくことが個人の人生の充実と社会の活性化につながると考えられる。そのためには、家族・職場・地域社会等の複数の「場」とバランスよく関わりを持っていくことが重要であると考えられる。
 また、これらの「場」を通じ、個性を活かして生きるためには、これを支える基盤としての、個人の心身と経済の自立を確保しなければならない。しかし、心身の状況や置かれた環境は人によってさまざまであり、これらの自立の達成を支援するセーフティネット(安全網)としての社会保障制度の役割も重要となっている。
 今回の白書は、あらゆる場所において国民生活の安定と向上を図ることを任務とする厚生労働省が発足して初めてのものであり、こうした多岐にわたる厚生労働行政を、個人の自立支援という観点から紹介することに力点が置かれている。
 第一に、個人をとりまく社会経済情勢について、心身面、経済面及び家庭、職場、地域社会等との関係という観点からそれぞれ分析を行っている。
 まず、心身面における状況としては、近年、生活の質の向上という観点から、うつ病などの心の問題が深刻化しており、積極的な対応が求められていること、経済面の状況としては、今後、高齢期にさしかかるいわゆる団塊の世代が社会に与える影響は大きく、高齢期においても就業意欲を活かして年齢にかかわりなく働ける社会に向けた検討が急務であること、また、家庭、職場、地域社会等との関係においては、家族形態の多様化、「日本型雇用慣行」等の変化を背景として、個人の生き方においても、家庭や職場など、特定の「場」にのみ深く関わるのではなく、希望や関心に応じてさまざまな「場」と主体的に関わろうとする個人が増加していることについて記述している。
 第二に、個人が家族や職場、地域社会等といった「場」と、どのように関わることを望んでいるのかについて検証している。
 個人はこうした「場」との緩やかなつながりを複数選択する志向を強めているものと考えられ、個人が的確に複数のつながりを選択できるよう、条件整備が求められていることについて記述している。
 こうした分析や検証を踏まえ、最後に、個人の生涯を通じた人生の充実と社会の活性化のために厚生労働省に求められる支援のあり方について考察している。

U 平成十三年版厚生労働白書の概要

【第一部の概要】

 平成十三年版厚生労働白書は二部構成となっており、第一部では、「生涯にわたり個人の自立を支援する厚生労働行政」というテーマ部分を記述している。

第一部 生涯にわたり個人の自立を支援する厚生労働行政

第一章 個人をとりまく社会経済情勢の変化

 第一章では、少子高齢社会の到来や安定経済成長時代への移行という大きな時代の変化の中で、個人をめぐる社会経済情勢の変化について、心身面での状況、経済面での状況及び家族や職場・地域社会等との関係という三つの側面から分析している。

第一節 心身面での状況の変化

一 心身ともに健康で生活するために

 我が国の平均寿命は、世界で最も高い水準を維持している。また、「いかに自立して健康に暮らせるか」という生活の質も考慮した健康寿命をみても、我が国は上位に位置し、世界最高水準の健康を享受しているといえる(第1表参照)。
 しかしながら、国民の健康に対する不安感は大きい。「死亡につながる」という観点からみると、およそ半世紀にわたって悪性新生物、心疾患、脳血管疾患といった生活習慣病が国民にとっての脅威となっている。また、「生活の質を下げる」という観点からみると、うつ病や糖尿病といった疾患が国民にとっての脅威となっており、特にうつ病については、自殺の問題との関係でも、近年、大きな社会問題となっている。

二 生涯を通じた健康づくり

 四十〜五十歳代における生活習慣病を予防するためには、より若年期から生活習慣を改善していくこと(一次予防)が重要であるとともに、早期に発見し、早期に治療することも疾病の予防に有効である。このような二次予防の効果を上げるためにも、できるだけ多くの人が健康診断を受診し、必要に応じて精密検査、治療を行うことが重要である。
 また、近年はさまざまな心の問題が深刻な社会問題となっている。この背景には精神分裂病やうつ病といった精神疾患の存在や、問題行動を起こす本人と家庭・学校・地域社会との間で、何らかの不適応により孤立化している個人の存在が推測され、これらが複合的に絡み合って心の問題として生じていることが考えられる。したがって、これらの問題には医学的な対応も含めた総合的な対応を行っていくことが重要であると考えられる。

三 要介護状態の未然防止に向けて

 六十五歳以上人口の増加に伴い、介護を必要とする者も増加することが予想されている。
 高齢期においても、健康で自らの意思を持ち、自分らしい生活を送るために、高齢期における要介護状態をいかに予防していくか、また、介護を必要とする者の日常生活動作能力(ADL)をいかに向上させていくかが重要な課題となっている。
 要介護状態を予防するためには、その原因となる傷病を予防することが重要である。また、近年、要介護状態を予防し、障害を持った場合にもさらなる悪化を防ぎ、残存機能を維持・向上させるための医学的な手段として、リハビリテーションの効用が報告されている。
 このような医学的なリハビリテーションを含め、介護を必要とする者が住み慣れた地域で、活き活きとした生活が送れるような体制づくりが必要である。

四 障害者の生活の質の向上のために

 近年、総じて障害のある人の高齢化が進行している。また、抱える障害は重度化・重複化する傾向にある(第1図参照)。
 障害のある人の生活の質の向上は、機能障害の有無や程度によって決まるものではなく、むしろ活動の制限を除去または軽減し、個々人が自由な選択に基づいて活動することができるようにすることが重要である。このため、福祉用具等の活用、特殊教育・職業訓練等の実施、ユニバーサルデザインなどを推進していくことが必要である。

第二節 経済面での状況の変化

一 経済情勢の変化

 景気の低迷に加え、賃金における年功的要素が減少するなど個人の自立には厳しい局面が到来しており、個人は自覚と責任を持って自己の職業生活の設計を行うことが求められている。
 厳しい経済情勢の変化を背景として、国民は自己の将来の経済的安定に、少なからぬ不安を抱くようになってきており、家計収入の減少等を背景として、生活への満足感は低下している。

二 労働者の働く環境

 我が国の完全失業率は、最近では四%台後半まで上昇しており、特に若年層、高年層で高くなっている(第2図参照)。
 二〇〇〇年における有効求人倍率は、〇・五九倍と厳しい状況が続いており、特に高年層が低い値を示している。また、失業期間は長期化し、世帯主の完全失業率は上昇傾向にあり、非自発的な離職による失業者の割合も上昇している。
 このため、失業なき労働移動や年齢間のミスマッチ解消により、円滑な再就職が実現できるようにすることが求められている。また、個人が経済的な自立を図り、職業生活の全期間を通じた職業の安定を確保するために、労働者個人が職業生活の設計を考え、自発的なキャリア形成を行っていくことが重要である。
 職業生活設計が今後必要であると考える労働者は多く、それに応じて、キャリア形成を促し、主体的な取組みをはぐくむ体制を整備していく必要がある。

三 高齢者の経済的な状況

 平均値でみる限り、高齢者の経済力は現役世代と遜色のない水準にある。しかし一方で、個々の高齢者世帯の所得のばらつきは大きくなっており、稼得所得が所得格差を生み出す一つの要因となっている。
 我が国における高齢者の就業意欲は高い。多くの高齢者は経済的に困ることのないよう働いており、年齢階級が高まると健康や生きがいのために働く傾向が強まるという特徴がある(第3図参照)。
 就業によって自らの高齢期の生活を設計していく意欲は今後も高い水準で維持されると推測されるが、高齢者雇用は厳しい状況にある。

四 障害者をめぐる状況

 障害者の雇用は進展しているものの、実雇用率は法定雇用率より低い。障害者が所得を確保し、自立した生活を送ることが可能となるよう、社会が支援していく必要がある。
 また、福祉的就労から雇用への移行を推進することも重要である。

五 その他社会的支援を必要としている人々をめぐる状況

 母子家庭については、今後、ニーズに応じた福祉サービスを提供しながら、就労による自立の支援を適切に行っていくことにより、安心して子育てと就労を両立できるようにしていくことが重要である。
 また、近年、生活保護受給者が増加傾向にある一方で、被保護世帯の総数に対する稼働世帯の割合が減少している。被保護世帯の自立を促し、就労を推進していくために、公共職業安定所と福祉事務所の連携がより一層求められる。
 ホームレスについては、社会的自立を果たすためのニーズを的確に捉え、ホームレスのタイプごとに雇用、福祉、住宅等の各分野をとおして総合的に経済的自立を支援することが重要である。

第三節 家族・職場・地域社会等との関係の変化

一 家族の中における個人

○家族形態の変化
 我が国の世帯規模は縮小しており、三世代世帯や核家族世帯の一般世帯数に占める割合は減少している。また一方で、単独世帯は急増している(第4図参照)。
 社会保障制度をはじめさまざまな社会の制度や仕組みについて、家族の変化への対応という視点から不断の見直しをしていくことが求められている。
○女性の職場進出と家事等の分担
 女性の年齢階級別労働力率のいわゆるM字型曲線は、十年前と比較して、M字の谷が徐々に浅くなってきている。これは未婚者の労働力率の増加と晩婚化によるものであり、小さな子どもの子育てに当たる時期に就業を中断するという傾向がある。
 「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業の考え方に対しては、特に若い世代ほど反対する人が多くなっており、従来の固定的な役割分業を支持する意識は薄れつつある。また、女性が仕事を持つことに対する理解が進み、男性にも家庭を重視する意識がみられるようになった。しかし、実際には、男性は仕事を優先せざるを得ない状況にあり、女性に対して仕事より育児の優先を求める意見は強く残っている。
○住まい方にみる親子間の意識
 我が国では、未婚の子どもは就業して一定の収入を得るようになった後も、その多くが親と同居している。親との快適な同居生活が近年の晩婚化、非婚化の一因との指摘もある。
 現在の若い世代は、夫婦単位の生活を大切にするため、結婚を契機に親と別居して独立し、新たな世帯を構えるが、その場合であっても、支援を受けやすく、日常的な交流が可能な近距離別居が増加する傾向にある(第5図参照)。
○家族に求められる役割
 女性の意識をみると、結婚し家族を持った時にも、自分らしい生活や個人的な目標を大切にしようという傾向が強まっている。しかし、生活水準が向上し、豊かになった現代においても、家族への期待が弱まっているわけではなく、国民の意識をみても、精神的なつながりや、子どもを生み育てることによる生きがいを得る場としての家族の役割への期待は大きい。

二 職場における個人

○いわゆる「日本型雇用慣行」と個人の自立
 我が国の典型的な雇用慣行は、「日本型雇用慣行」と呼ばれ、長期雇用、年功賃金等が特徴であると言われている。高度経済成長期において大企業の男性労働者を中心に適用を受ける労働者が増えたことで、普及・定着していった。
 近年、長期雇用については、高齢層になるほど勤続年数が長期化しており、また、過半数の企業が終身雇用について「現状維持」としている実態にある。一方で、年功賃金については、大卒男性の賃金カーブをみると、年齢の上昇に応じて賃金が上がる度合いは少なくなってきているなど変化がみられる。
 この背景には、会社における人員構成が高齢化し、貢献の度合いより賃金が低い若年者の割合が減少したこと等があるものと考えられ、昨今の経済成長の低迷が、こうした年功賃金の見直しを加速させていると考えられる。
○働き方の多様化
 職場における働き方は多様化しており、特に高年層、女性中年層及び若年層において進んでいるほか、時間や場所に制約されない働き方の進展がみられる。若年層の中には、自立についてあまり考えない者もいれば、不本意ながら「正社員」以外の就業形態を選ぶ者や、必ずしも希望しない就業先に就職する者等、現状に満足できない者もいる(第6図参照)。
 社会として、若年者の自立が円滑に進むような環境を整えていく努力が必要である。

三 地域社会の中における個人
○地域社会の変化
 伝統的な地域社会の関係に対する閉塞感が高まるとともに、都市への人口移動や都市型の生活スタイルの広がりによって、個人と地域の関わりは希薄化している。
○新たな社会参加志向の高まり
 個人と地域との関わりの希薄化が進んだ一方で、自由時間の増加と余暇志向の高まりを背景に、個人がそれぞれの関心に応じた新たな社会参加を志向している傾向がみてとれる。
 今日の個人は、自分の好み、関心に応じて主体的に参加できるような活動・団体に参加したいという志向を高めている。
○ボランティア活動の広がり
 「社会の一員として何か社会のために役立ちたい」という個人の社会貢献に対する意識は、依然として高い水準にあり、個人の自発的参加によって生まれ、地域の枠を超えた新しいタイプの社会貢献活動も広がりを見せ始めている。
 ボランティア活動は、社会に有用なさまざまなサービスを生み出すものであることに加え、参加する人にとっては、関心を同じくする人どうしの新しい人間関係を生み出し、そうした人との交流や自己実現によって生きがいを与えるものとなっている。
 ボランティア活動に潜在的な意欲を持っている者は多数存在しており、今後、情報面や労働時間面を含め参加しやすい環境が整備されれば、さらにボランティア活動が活発になるものと考えられる。
 NPOについては、二〇〇〇年度末までに約三千八百団体が法人格を取得しており、その活動分野は多岐にわたっている。NPO法人については、民間ボランティア活動の主要な担い手のみならず、公的な福祉サービスの提供主体の一つとして、その役割を果たしていくことが期待される。
○高齢者の地域活動への参加
 高齢化の進展によって生じた自由時間を有意義に活用することは、高齢者が生きがいを持って暮らしていく上で重要である。また、若い世代との交流は、高齢者の持つ知識、技能及び伝統文化の伝承のみならず、高齢者の生きがいを高める上でも有益であり、今後とも交流を一層促進していくことが望まれる。
○ITによる社会参加の推進
 近年、情報通信技術(IT)の急速な進展により、インターネットやモバイル通信(携帯電話等)といった新しい人と人との交流手段が広がりを見せている。また、情報通信技術の進歩は健常者のみならず、これまで社会参加の機会が比較的少なかった障害者・高齢者等の自立や社会参加の幅を広げる手段として期待される。

第二章 個人と社会のあり方

 第二章においては、個人が家族や職場、地域社会等といった「場」と、どのように関わることを望んでいるのかについて検証している。

一 求められる自立のための条件整備

 これまでは、「家族」、「職場」、「地域社会等」といった「場」に取り込まれるように個人は帰属していた。しかし、こうした個人と「場」との関わり方は変化してきており、個人は、孤立するのではなく何らかのつながりを求め、そうしたつながりの中で自己を見出そうとしている。個人は「家族」・「職場」との間においては、より緩やかなつながりを持つ志向を強めるとともに、「家族」・「職場」以外の「場」と価値観に応じてつながる意識が高まりつつあると言うことができる。
 個人が多様な価値観に応じて複数の「場」とのつながりを持つことで、一つのつながりにおいて充実感を得ることが困難な状況に陥っても、他のつながりを充実させることにより自己を活性化させる等の効果を見込むことができる。
 このように、複数のつながりを持とうとする個人が増え、複数のつながりを持つことによる利点を踏まえることで、個人がそれぞれの「場」とのつながりを適切に持てるようにするとともに、多様な価値観に応じて幾つかのつながりをバランスよく選択できるように促す必要がある。

二 個人の自立と社会

 自立のあり方を決めるのは個人に他ならないが、個人は社会の一員でもある以上、個人の自立に向けての行動が、社会を支えるものとしても機能していることが重要である。
 就労は経済社会にとって大きな意義を持つが、若年者の一部には職業意識に乏しい者がおり、これは本人のみならず、社会にとっても損失となる面があるといえる。また、高齢者や育児期の女性の中には、就業意欲を持ちながら就業できないでいる者がおり、就業に結びつけていく努力が社会に求められる。
 地域社会における従来型の共同体にしばられなくなった個人は、多様な価値観に応じ、自発的に地域における各種団体・組織を選択し、参画するようになってきており、こうした団体・組織の中には、社会に有意義な活動を行うものも多い。

三 自立と連帯

 個人が自立への志向を強める中、個人の活き活きとした自立に関する取組みを可能にする仕組みは、ますます重要となる。個人の自立志向の高まりとともに、連帯もまた重要となってくる。
 社会的な連帯があってはじめて個人は活発に自己実現を追求できるようになるものと考えられ、個人の人生の充実、ひいては社会の活性化にもつながる。

第三章 個人の自立を支援する厚生労働行政

 第三章においては、第一章及び第二章を踏まえ、心身面、経済面及び家族や職場、地域社会等との関係という三つの側面から、厚生労働省に求められている、個人が自立していくための支援施策の方向性を示している。

第一節 生涯にわたり国民の生活を守る厚生労働行政

 平成十三年一月、中央省庁の再編により「厚生労働省」が発足した。
 厚生労働省の担う行政は、すべての国民の誕生から就労・退職後までの一生涯において、家庭・職場等あらゆる場所での国民生活の安定と向上を図ることを任務とする等、時間的にも空間的にも広範囲なものとなっている。

第二節 自立を支援する社会保障制度の整備

 我が国の社会構造が大きく変化する中で、個人がさまざまなリスクを乗り越えて人生にチャレンジすることができるようにするためには、社会保障がセーフティネットの機能を十分に発揮することが必要である。
 社会保障制度全体を通じた視点から、そのあるべき姿を検討し、経済・財政との均衡が取れた制度の構築に向けて、不断の見直しが求められている。

第三節 心身の自立の支援

一 生涯を通じた健康の確保に向けて

 健康寿命を伸ばしていくためには、国民の健康を脅やかす要素を取り除いていくことが必要であり、生活習慣病対策やうつ病などの心の問題への対策が重要である。
 厚生労働省では、国民の生涯を通じて、疾病等の発病を予防する一次予防、疾病等を早期に発見し、早期に対応する二次予防を中心とした対策を継続的に行っていくこととしている。

二 高齢期における要介護状態の予防

 高齢期においては、要介護状態を予防することが重要であり、また、いったん要介護状態になった場合にも、要介護者の生活の質を向上させるための対策を取る必要がある。
 要介護状態の原因となる疾患自体を克服するための研究を推進し、寝たきり予防のための超早期リハビリテーションといった効果的な対策の開発に向け、その医学的知見を集積するための研究を推進するとともに、これらの研究から得られた結果を評価し、医療現場に反映していく。

三 障害者の自立支援

 障害のある人の自立と社会経済活動への参加の促進を図ること、すなわち、障害のある人が障害のない人と同等に生活し、ともに生き生きと活動できる社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念の実現が大きな課題である。
 このため、障害のある人をとりまく社会環境において存在するさまざまな障壁を除去するための取組みを推進していくとともに、障害のある人の生活の質を向上させるため、障害のある人がコミュニケーションを積極的に図り、文化、スポーツ活動等を通じて自己実現を図ることができるような施策を推進していく。

四 心身の自立を支える基盤となる制度

 国民が心身ともに健康で自立した生活を送るための基盤として、良質な医療・介護サービスを提供していくことが必要であり、これを支えるための医療制度及び介護保険制度を今後とも充実させていく必要がある。

五 ハンセン病対策の反省

 我が国において、かつて採られたハンセン病患者の方々に対する施設入所政策が、ハンセン病患者の方々の人権に対する大きな制限・制約となり、極めて厳しい偏見、差別を生じさせる原因となったことを深く反省し、率直にお詫びするとともに、多くの苦しみと無念の中で亡くなった方々に哀悼の念を捧げたい。
 今後は、先に法律に定められた新たな補償措置をはじめ、患者、元患者の方々の名誉回復や福祉の増進に向け、全力を尽くす決意である。

第四節 経済的自立の支援

一 労働者の職業の安定

 就労は、個人の生活にとって経済上の基盤となるものである。
 最近の厳しい雇用失業情勢の下では新規雇用創出が重要であり、今後、社会経済の変化に的確に対応していくためには、同様に労働力供給面・労働力需給調整面に関する施策も時代に適合したものとし、需要面・供給面・需給調整面という三方向からの政策のベストミックスが必要となる。
 また、厳しい雇用情勢の中、職業生活の全期間を通じた職業の安定を確保するためには、個々の労働者が自分の職業生活について責任を持って設計し、自分の職業生涯に合わせて自己の能力を高めていくことが必要である。
 労働者が企業の中でキャリアを形成しながら活躍する、あるいは新規成長分野への労働移動にも対応しうる職業能力を得るためには、企業内の職業能力開発に加え、労働者の自発性に基づく職業能力開発の推進が重要となっている。

二 高齢者の経済的自立

 公的年金は、高齢者の所得の大きな源泉の一つとなっており、高齢者の自立を支えるため重要な意義を持っている。
 公的年金制度を、経済社会との調和を図りながら、少子高齢社会にふさわしい、持続的に安定したものとしていくため、給付と負担のバランスをとることが重要であり、支え手を増やす観点から、年齢や性別等にかかわらず、働く意欲のある者が働くことができるように、年金制度としても改革を進めていく必要がある。
 また、高齢者が経済的に自立するため、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働ける社会を実現していく必要がある。

三 障害者の自立支援

 働く意欲と能力を有するすべての障害者が、その適性と能力に応じ、障害のない人々とともに自然に働けるような社会の実現を図ることが、障害者の経済的安定や自己実現のために重要となっている。

四 その他社会的な支援を必要としている人々の自立支援

 福祉施策と雇用施策が連携し、母子家庭の子育て及び就労等のニーズに対応できる総合的なサービスの提供体制を構築するとともに、できる限りの自立を促進する仕組みを取り込むことによって、母子家庭等が安心して仕事と子育てを両立できる社会とすることが必要である。
 生活保護受給者については、被保護者の状況に応じて就労による自立を促していくことが必要である。
 ホームレスに対しては、生活保護制度の適切な運用といった福祉等の援護により、日常生活や社会生活を可能とすることが不可欠であるが、働く意欲と能力のある者については、就労による経済的自立を支援していくことが重要となる。

第五節 家族・職場・地域社会等を通じた自立の支援

一 活動の「場」の選択を適切に行う機会の確保

○複数の「場」との緩やかなつながりのために
 個人がその希望と意欲に応じてさまざまな「場」と緩やかなつながりを適切に確保できるようにするため、まずそれぞれの「場」に費やす時間の配分を個人が自由に選択できるようにする必要がある。
 フレックスタイム制や裁量労働制の適正な運用や、認可保育所やファミリー・サポート・センター等の保育サービスをはじめとした地域における子育て支援の一層の充実が必要である。
○それぞれの「場」との適切なつながりのために
 就業形態は多様化してきているが、こうした動きは、個人の多様な価値観に応じて、職場との「つながり」を自由に選択することを可能とする。このため、パートタイム労働、派遣労働といった非正社員の就業環境を整備するとともに、情報化の進展により、近年増加しているテレワークの環境整備を行う必要がある。
 また、若年者が職場を通じて自立を図るためには、個人の適性にあった職場を選択し、将来にわたる職業生活を適切に設計していけるよう、在学中の早い段階から職業意識の形成を促す等の支援を行っていくことが重要となる。
 さらに今後、大卒者に対しても適切な職業相談や職業紹介などを行い、就職支援を積極的に行っていくことが重要である。

二 活動の「場」を創出するための基盤整備

 ボランティア活動については、特に参加が難しくなっている勤労世代を中心に、@ボランティア活動と勤務時間との調整が図られるような職場環境の整備、A勤労者に対するボランティアに関する情報提供の充実等に取り組む必要がある。
 また、NPOについては、今後NPO活動が広がっていくことが推測されるために、人材や資金面など活動基盤の整備が求められる。
 高齢者と若い世代との間に、交流の場を設けていくことの重要性が高まっており、福祉行政と教育行政等の連携確保等、世代間交流を促進するための基盤整備に努めていくことが大切である。
 また、高齢者の有する高度な技能が若年者に伝承されていくよう、高度熟練技能者による実技指導等の場を確保する体制づくり等を進めていくことが重要である。
 ITの急速な進展を背景に、情報通信の利用が広がる一方で、情報格差も拡大しており、情報活用能力に乏しい高齢者・障害者に対し情報通信の利用機会を拡大するとともに、情報活用能力を高めるための人的支援等、必要な援助を行うことが課題となっている。

【第二部の概要】

 第二部においては、医療制度・雇用制度・少子化への対応等の厚生労働行政の各分野について、二〇〇〇年度の動きを中心に紹介している。


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法人企業統計調査


平成十三年四〜六月期


財 務 省


 この調査は、統計法(昭和二十二年法律第十八号)に基づく指定統計法一一〇号として、我が国における金融・保険業を除く資本金一千万円以上の営利法人を対象に、企業活動の短期動向を把握することを目的として、四半期ごとの仮決算計数を調査しているものである。
 その調査結果については、国民所得統計の推計をはじめ、景気判断等の基礎資料等として広く利用されている。
 なお、本調査は標本調査であり(計数等は、標本法人の調査結果に基づいて調査対象法人全体の推計値を算出したもの)、標本法人は層別無作為抽出法により抽出している。
 今回の調査対象法人数等は次のとおりである。
  調査対象法人数   一、二〇八、八六〇社
  標本法人数        二四、七二九社
  回答率            七七・四%
 当調査結果から平成十三年四〜六月期の企業の経営動向をみると、売上高については、製造業が減収に転じ、非製造業は引き続き増収となり、全産業ベースの対前年同期増加率(以下「増加率」という)は一・三%となった。営業利益については、非製造業が増益に転じたものの、製造業が減益となったことから、全産業ベースの増加率は△四・二%となった。また、経常利益については、製造業が減益となったが、非製造業が増益に転じたことから、全産業ベースの増加率は一・〇%となった。
 また、設備投資については、非製造業が減少となったが、製造業で引き続き増加となったことから、全産業ベースの増加率は二・三%となった。

一 売上高と利益の動向第1図第2図参照

(1) 売上高第1表参照

 売上高は、三百十八兆一千八百八十四億円で、前年同期(三百十四兆二千四百四十二億円)を三兆九千四百四十二億円上回り、増加率は一・三%(前期二・八%)と、七期連続の増収となった。
 業種別にみると、製造業の売上高は九十二兆六千七百九十二億円で、増加率は△一・六%(同〇・七%)となった。また、非製造業の売上高は二百二十五兆五千九十二億円で、増加率は二・五%(同三・七%)となった。
 製造業では、「石油・石炭製品」「化学」等が増収となったものの、「電気機械」「輸送用機械」等で減収となった。一方、非製造業では、「不動産業」「運輸・通信業」等が減収となったものの、「卸・小売業」「建設業」等、多くの業種で増収となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は百二十兆一千五百六十三億円で、増加率は〇・四%(同二・一%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は四十八兆八千六百四十九億円で、増加率は△六・五%(同六・三%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は百四十九兆一千六百七十三億円で、増加率は四・八%(同二・二%)となった。

(2) 営業利益第2表参照

 営業利益は、八兆九千九百九十五億円であり、増加率は△四・二%(前期△三・五%)と、引き続き減収となった。
 業種別にみると、製造業は二兆八千九百二十二億円で、増加率は△二二・〇%(同七・二%)となった。また、非製造業は、六兆一千七十四億円で、増加率は七・五%(同△九・四%)となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は四兆三千七百十八億円で、増加率は△九・二%(同〇・八%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は八千六百三十八億円で、増加率は△一四・五%(同△九・一%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は三兆七千六百四十億円で、増加率は五・五%(同△六・一%)となった。

(3) 経常利益第3表参照

 経常利益は、九兆一千九百十三億円であり、前年同期(九兆一千二十九億円)を八百八十四億円上回り、増加率は一・〇%(前期〇・〇%)と、十期連続の増益となった。
 業種別にみると、製造業では、「輸送用機械」「一般機械」等が増益となったものの、「電気機械」「食料品」等の業種で減益となったことから、製造業の経常利益は三兆百六十億円、増加率は△二一・二%(同一八・〇%)となった。
 一方、非製造業では、「運輸・通信業」「建設業」等が減益となったものの、「卸・小売業」「サービス業」等で増益となったことから、非製造業全体では六兆一千七百五十三億円で、増加率は一七・一%(同△一〇・五%)となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は四兆一千五百六十二億円で、増加率は△八・四%(同四・七%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は八千八百八十四億円で、増加率は△一三・八%(同△一一・〇%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は四兆一千四百六十八億円で、増加率は一七・二%(同△〇・七%)となった。

(4) 利益率第4表参照

 売上高経常利益は二・九%(前年同期二・九%、前期三・一%)となった。
 業種別にみると、製造業は三・三%(前年同期四・一%、前期四・六%)、非製造業では二・七%(前年同期二・四%、前期二・四%)となった。
 資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三・五%(前年同期三・八%、前期三・二%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一・八%(前年同期二・〇%、前期二・三%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二・八%(前年同期二・五%、前期三・二%)となった。

二 投資の動向第3図参照

(1) 設備投資第5表参照

 設備投資額は、九兆二千四百四十五億円であり、増加率は二・三%(前期二・五%)と、六期連続の増加となった。
 業種別にみると、製造業では、「石油・石炭製品」等が減少したものの、「電気機械」「化学」等で増加したことから、製造業全体では三兆三千二百九十一億円で、増加率は一〇・五%(同二二・六%)の増加となった。
 一方、非製造業では「サービス業」「卸・小売業」等が増加したものの、「不動産業」「運輸・通信業」等で減少したことから、非製造業全体では五兆九千百五十三億円で、増加率は△一・八%(同△五・八%)となった。
 設備投資額を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は五兆三千七百五十八億円、増加率は一・五%(同三・三%)、資本金一億円以上十億円未満の階層は一兆五千八百一億円、増加率は一二・三%(同〇・三%)、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二兆二千八百八十六億円で、増加率は△一・九%(同一・五%)となった。

(2) 在庫投資第6表参照

 在庫投資額(期末棚卸資産から期首棚卸資産を控除した額)は、五兆二百五十七億円(前年同期五兆三千三十三億円)、前年同期差△二千七百七十六億円となり、七期ぶりに前年差が減少となった。
 在庫投資額を業種別にみると、製造業の投資額は二兆三千二百五十五億円(前年同期二兆三千三百十三億円)、前年同期差△五十八億円となり、七期ぶりに前年差が減少となった。
 一方、非製造業の投資額は二兆七千二億円(前年同期二兆九千七百二十一億円)、前年同期差△二千七百十九億円となり、二期ぶりに前年差が減少となった。
 在庫投資額を種類別にみると、製品・商品が一兆六千八百四十一億円(前年同期一兆三千三百十一億円)、仕掛品が三兆二百五十五億円(同三兆八千七百八億円)、原材料・貯蔵品が三千百六十一億円(同一千十四億円)となった。
 また、在庫率は九・二%であり、前期(七・七%)を一・五ポイント上回り、前年同期(九・四%)を〇・二ポイント下回った。

三 資金事情第7表参照

 受取手形・売掛金は二百十三兆四千十億円で、増加率は一・七%(前期四・二%)、支払手形・買掛金は百八十一兆二千百四十八億円で、増加率は三・五%(同五・六%)となった。借入金をみると、短期借入金は百八十五兆四千九百四十二億円で、増加率は△八・八%(同△八・八%)、長期借入金は二百七十三兆三千二百三億円で、増加率は△二・五%(同△二・〇%)となった。
 現金・預金は百二十五兆二千五百十億円で、増加率は△二・二%(同四・〇%)、有価証券は二十兆九千八百四十九億円で、増加率は△三二・〇%(同△四一・五%)となった。
 また、手元流動性は一一・八%であり、前期(一〇・八%)を一・〇ポイント上回り、前年同期(一三・〇%)を一・二ポイント下回った。

四 自己資本比率第8表参照

 自己資本比率は二六・五%で、前年同期(二五・一%)を一・四ポイント上回った。
 自己資本比率を資本金階層別にみると、資本金十億円以上の階層は三二・九%で、前年同期(三一・九%)を一・〇ポイント上回り、資本金一億円以上十億円未満の階層は二〇・三%で、前年同期(一九・六%)を〇・七ポイント上回り、また、資本金一千万円以上一億円未満の階層は二〇・七%で、前年同期(一八・九%)を一・八ポイント上回った。

*     *     *
 なお、次回の調査は平成十三年七〜九月期について実施し、法人からの調査票の提出期限は平成十三年十一月十日、結果の公表は平成十三年十二月五日前後の予定である。




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消費者物価指数の動向


―東京都区部(九月中旬速報値)・全国(八月)―


総 務 省


◇九月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・八となり、前月比は〇・二%の下落。前年同月比は一・二%の下落となった。
  なお、総合指数は、平成十一年九月以降二十五か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・八となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は一・二%の下落となった。
  なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二十四か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九九・三となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  生鮮魚介は五・〇%の下落。
   <値上がり> かつお、さけなど
   <値下がり> さんま、まぐろなど
  生鮮野菜は〇・七%の上昇。
   <値上がり> レタス、なすなど
   <値下がり> にんじん、れんこんなど
  生鮮果物は四・八%の下落。
   <値上がり> キウイフルーツ、オレンジなど
   <値下がり> なし、ぶどうなど
(2) 住居は九八・一となり、前月に比べ〇・一%の下落。
  家賃が〇・一%の下落。
   <値下がり> 民営家賃(木造中住宅)など
(3) 被服及び履物は一〇〇・六となり、前月に比べ六・七%の上昇。
  衣料が八・五%の上昇。
   <値上がり> ワンピース(合物)など
(4) 交通・通信は九八・六となり、前月に比べ一・〇%の下落。
  交通が二・六%の下落。
   <値下がり> 航空運賃など
(5) 教養娯楽は九七・一となり、前月に比べ二・九%の下落。
  教養娯楽サービスが四・四%の下落。
   <値下がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 家賃(一・四%下落)、教養娯楽用耐久財(二一・八%下落)、通信(六・八%下落)、設備修繕・維持(二・一%下落)、家庭用耐久財(六・五%下落)、電気代(二・四%下落)、外食(〇・九%下落)、衣料(二・二%下落)
○上昇に寄与している主な項目
 授業料等(一・六%上昇)、生鮮野菜(二・七%上昇)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

◇八月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九九・四となり、前月比は〇・四%の上昇。前年同月比は〇・七%の下落となった。
  なお、総合指数は、平成十一年九月以降二十四か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九九・二となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は〇・九%の下落となった。
  なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二十三か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九九・五となり、前月に比べ一・一%の上昇。
  生鮮魚介は四・六%の上昇。
   <値上がり> さんま、あじなど
   <値下がり> さけ、ぶりなど
  生鮮野菜は一〇・九%の上昇。
   <値上がり> トマト、きゅうりなど
   <値下がり> さといも、れんこんなど
  生鮮果物は四・四%の上昇。
   <値上がり> レモン、バナナなど
   <値下がり> もも、ぶどうなど
(2) 家具・家事用品は九五・八となり、前月に比べ〇・五%の下落。
  家庭用耐久財が一・〇%の下落。
   <値下がり> 電気冷蔵庫など
(3) 被服及び履物は九四・〇となり、前月に比べ二・七%の下落。
  衣料が三・五%の下落。
   <値下がり> 婦人スーツ(夏物)など
(4) 交通・通信は九九・四となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  交通が一・九%の上昇。
   <値上がり> 航空運賃など
(5) 教養娯楽は九九・三となり、前月に比べ二・一%の上昇。
  教養娯楽サービスが三・三%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 教養娯楽用耐久財(二二・二%下落)、通信(六・八%下落)、電気代(三・一%下落)、家庭用耐久財(七・七%下落)、衣料(三・四%下落)、シャツ・セーター・下着類(三・三%下落)
○上昇に寄与している主な項目
 生鮮野菜(八・四%上昇)、家賃(〇・四%上昇)、自動車等関係費(〇・九%上昇)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の上昇率に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。




















言葉の履歴書


◇ねんねこ

 「ねんねこ」は寝ること、眠ることを意味する幼児語、「ねんね」に接尾語「こ」がついたもので、子守歌は「ねんねこ歌」と呼ばれました。
 古くは、狂言の歌謡にも「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこや、目だに覚むれば、ちょちちょち、あわわ」とあります。「目だに」は「目さえ」の意味です。
 また、「ねんねこしゃっしゃりませ、寝た子のかわいさ、起きて泣く子の面にくさ……」は、中国地方を中心に歌われてきた子守歌に基づくものでした。
 その「眠らせ歌」の流れは、大正十年(一九二一年)に、北原白秋が作詞した「揺籃のうた」にも及んでいます。

  「揺籃のうたを カナリアが歌うよ ねんねこ ねんねこ ねんねこよ……」

 また、「ねんねこ」は、「ねんねこ半纏」の略語でもあります。
 幼児を背負うとき、防寒用に上からかぶせて着る、羽織に似た綿入れの上っ張りのこと。高浜虚子の俳句「ねんねこに埋めたる頬に櫛落つる」という情景も、今では見ることが難しくなりました。



    <11月14日号の主な予定>

 ▽独占禁止白書のあらまし……………………公正取引委員会 

 ▽法人企業統計年報(平成十二年度)………財 務 省 




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