官報資料版 平成14年3月27日




                  <特集>平成十二年度 決算検査報告の概要………会計検査院











平成十二年度


決算検査報告の概要


会計検査院


<はじめに>

 会計検査院は、日本国憲法第九十条の規定により、国の収入支出の決算を検査し、会計検査院法第二十九条の規定に基づいて平成十二年度決算検査報告を作成し、平成十三年十一月三十日、これを内閣に送付した。
 この検査報告には、歳入歳出の決算に関する事項、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項、意見を表示し又は処置を要求した事項、会計事務職員に対する検定等について記載した。
 また、国有財産、物品等国の財産等に関する検査事項及び会計検査院法その他の法律の規定により検査をしている政府関係機関等の会計に関する事項についても記載した。
 なお、会計検査院は、平成十三年九月二十八日、内閣から平成十二年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて平成十三年十一月三十日内閣に回付した。
 会計検査院が検査を終えた国の平成十二年度の歳入歳出決算額は、次のとおりである。
 〔一般会計決算額〕
 歳 入  九十三兆三千六百十億二千七百十五万余円
 歳 出  八十九兆三千二百十億四千九百九十一万余円
 〔各特別会計決算額の合計額〕
 歳 入  三百四十一兆一千四百六十三億七千八百九十八万余円
 歳 出  三百五兆七千七百五十九億四千三百九十一万余円

◇検査の概要

<第1節> 検査活動の概況

第1 検査の方針

 会計検査院は、平成十三年次の検査に当たって、会計検査の基本方針を次のとおり定めた。

平成十三年次会計検査の基本方針
     (平成十二年十月二十三日策定)

1 会計検査院の使命
 会計検査院には、内閣から独立した憲法上の機関として、国の収入支出の決算の検査を行うほか、法律に定める会計の検査を行い、これを常時実施することにより、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ、是正を図るとともに、検査の結果により、国の収入支出の決算を確認し、検査報告を作成して内閣を通じて国会に報告するという使命が課せられている。

2 社会経済の動向等と会計検査院をめぐる状況
(1) 我が国の社会経済の動向と財政の現状
 近年、我が国の社会経済は、少子・高齢化の進展、グローバル化、情報通信技術の革新とその普及、環境問題などにより大きく変容してきている。そして、今まで我が国の社会経済を支えてきたシステムがこうした変化に適切に対応できず、その見直しや再構築が求められている。
 我が国の財政をみると、連年の公債発行により公債残高は年々増加の一途をたどり、平成十二年度末には約三百六十四兆円に達すると見込まれており、公債償還等に要する国債費は一般会計歳出の二割を超えていて、財政の健全化が課題となっている。
 また、政府は、行政改革、社会保障構造改革、金融システム改革等の諸改革を推進している。
(2) 会計検査院をめぐる状況
 行政改革の一環として中央省庁等改革関連の諸法律が成立し、国の行政機関は、十三年一月以降、新たな組織体制へ移行するとともにその政策について自ら評価することとなった。また、同年四月には「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が施行されるなど、行政のアカウンタビリティが一層求められている。
 また、行政改革会議の最終報告(平成九年十二月)においては、評価は政府部内のそれとともに政府の部外からもなされることが重要であるとして、会計検査院による評価に対して期待が表明されている。
 さらに、会計検査院法が改正(平成九年十二月)され、@国会から検査の要請があった事項について検査を行いその結果を国会に報告できること、A正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性その他会計検査上必要な観点から検査を行うことが規定されている。
 このように会計検査院の役割及び機能はますます重要となり、国民の期待も増大している。

3 会計検査の基本方針
 会計検査院は、従来から、事務・事業の業績の評価を指向した検査を行うなど、社会経済の動向などを踏まえて国民の期待にこたえる検査に努めてきたところであるが、以上のような状況の下で今後ともその使命を的確に果たすため、国民の関心の所在や国会における審議の状況に常に注意を払い、厳正かつ公正な職務の執行に努めるとともに、次のような姿勢で検査に取り組む。
 ア 我が国の社会経済の動向や財政の現状を十分踏まえ、主として次に掲げる施策の分野に重点を置いて検査を行う。
  @ 社会保障
  A 公共事業
  B 防衛力の整備
  C 教育及び科学技術の振興
  D 環境保全
  E 経済協力
  F 農林水産業の振興
  G 中小企業対策
 イ 不正不当な事態に対する検査を行うことはもとより、さらに事務・事業の業績の評価を指向した検査を行っていく。そして、必要な場合には、制度そのものの存否も視野に入れて検査を行っていく。
 すなわち、これまで会計検査院は、主として次のような観点から検査を行ってきた。
  (ア) 検査対象機関の決算の表示が予算執行の状況を正確に表現しているかという正確性の観点
  (イ) 検査対象機関の会計経理が予算や法律、政令等に従って適正に処理されているかという合規性の観点
  (ウ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行が、より少ない費用で実施できないか、あるいは同じ費用でより大きな成果が得られないかという経済性・効率性の観点
  (エ) 検査対象機関における事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかという有効性の観点
 今後も、前記の正確性や合規性の観点からの検査を十分行うことはもとよりであるが、さらに経済性・効率性及び有効性の観点からの検査を重視し、特に有効性の観点から、事務・事業の遂行及び予算の執行に問題がある場合には、原因の究明を徹底して行うことなどにより、事務・事業及び予算執行の効果について積極的に取り上げるよう努める。
 また、検査対象機関に係る決算の分析やその評価を指向した検査を行っていくとともに、検査対象機関が自ら行う事業評価等や内部監査の状況についても注視していく。
 ウ 社会経済の複雑化とそれに対応した行政活動の拡大に伴い、新しい検査手法の開拓を行うなどして検査を行っていく。
 すなわち、検査手法や検査領域を多様化するための調査研究、専門分野の検査に対応できる人材の育成や拡充、コンピュータ等の情報機器や検査用機器の活用などを行い、会計経理はもとより、それに関連するあらゆる事務・事業について検査を行う。

4 的確な検査計画の策定
 前記の基本方針に従い、限られた人員、予算、時間等を効率的に活用して、会計検査院として課せられた使命を達成するため、検査実施部局において、国その他の検査対象機関の事務・事業の動向などを的確に把握した上で、多種多様な検査の領域の中から本年次の検査に当たって重点的に取り組むべき事項を検査上の重要項目として設定することにより、的確な検査計画を策定し、検査を効率的・効果的に行う。

第2 検査の実施

1 検査の対象
 会計検査院は、国の一般会計及び特別会計の収入支出をはじめ、国の所有する現金、物品、国有財産、国の債権、債務等すべての分野の国の会計を検査の対象としている。
 また、会計検査院は、次の会計を検査の対象としている。
@ 国が資本金の二分の一以上を出資している法人の会計
A 法律により特に会計検査院の検査に付するものと定められた会計
 平成十三年次の検査(検査実施期間平成十二年十一月〜十三年十月)において検査の対象となったものは、国の会計のほか、@として政府関係機関、公団、事業団等八十二法人の会計、Aとして日本放送協会の会計である。
 このほか、会計検査院は、次の会計についても必要に応じて検査することができることになっている。
@ 国が資本金の一部を出資しているものの会計
A 国が資本金を出資したものがさらに出資しているものの会計
B 国が補助金その他の財政援助を与えた都道府県、市町村、各種組合、学校法人等の会計
 平成十三年次の検査において検査の対象としたものは、@として四法人の会計、Aとして二十四法人の会計、Bとして五千四百五十一の団体等の会計である(以上の検査の対象については第1図参照)。

2 書面検査及び実地検査
 検査対象機関に対する検査の主な方法は、書面検査及び実地検査である。
 書面検査は、検査対象となる会計を取り扱う機関から、会計検査院の定める計算証明規則により、当該機関で行った会計経理の実績を計数的に表示した計算書、及びその裏付けとなる各種の契約書、請求書、領収書等の証拠書類等を提出させ、これらの書類について在庁して行う検査である。
 また、実地検査は、検査対象機関である省庁等の官署、事務所等に職員を派遣して、実地に、関係帳簿や事務・事業の実態を調査したり、関係者から説明を聴取したりなどして行う検査である。
 これらの方法により、会計検査院が平成十三年次に実施した検査の実績は、次のとおりである。
@ 書面検査については、平成十二年度分の計算書二十二万余冊及びその証拠書類七千七百四十七万余枚を対象に実施した。
A 実地検査については、検査対象機関である省庁等の官署、事務所等三万六千四百余箇所のうち、三千余箇所について実施したほか、国が補助金その他の財政援助を与えた前記五千四百五十一の団体等について実施した。これらの実地検査に要した人日数は、四万三千五百余人日となっている(第1表参照)。
 検査の進行に伴い、検査上疑義のある事態について、疑問点を質したり、見解を求めたりなどするために、関係者に対して書面をもって質問を発しているが、平成十三年次の検査において発した質問は八百余事項となっている。

<第2節> 検査結果の大要

第1 事項等別の検査結果

T 事項等別の概要

 検査の結果、決算検査報告に掲記した事項等(第2図参照)には、次のものがある。
 ア 「個別の検査結果」に掲記した事項
  (ア) 「不当事項」(検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項)
  (イ) 「意見を表示し又は処置を要求した事項」(注)(会計検査院法第三十四条又は第三十六条の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項)
  (ウ) 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」(本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項)
  (エ) 「特に掲記を要すると認めた事項」(検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項)
 イ 「特定検査対象に関する検査状況」(本院の検査業務のうち、検査報告に掲記する必要があると認めた特定の検査対象に関する検査の状況の記述)
(注) 会計検査院法
 第三十四条 会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。
 第三十六条 会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。
 これらの事項等の件数、金額は、第2表のとおりである。

U 事項別の検査結果の概要

 「個別の検査結果」に掲記した各事項のうち、特に掲記を要すると認めた事項を除く不当事項等について、省庁等別にその件数、金額を示すと第3表のとおりである。

【不当事項】
 検査の結果、「不当事項」として計二百二十六件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。
@ 収入に関するもの 計十九件
    七十二億二千二十三万余円
 この内訳を態様別にみると第4表のとおりである。
ア 租税 一件
    十一億二千百七十三万余円
<租税の徴収が適正でなかったもの>
◇財務省
・租税の徴収に当たり、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりなどしていたため、納税者四百三十人からの徴収額に過不足があったもの
イ 保険料 二件
    五十九億百七十七万余円
<保険料の徴収が適正でなかったもの>
◇厚生労働省
・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、小売業、飲食業、宿泊業及び娯楽業の事業主等が、常用的に使用している短時間就労者等について被保険者資格取得届の提出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、千七百六十七事業主からの徴収額が不足していたもの
    (一件 五十四億九千五百八十三万余円)
・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告書における賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、五百六十九事業主からの徴収額に過不足があったもの
    (一件 四億五百九十四万余円)
ウ 医療費 十二件
    七千八十一万余円
<診療報酬の請求が適切でなかったもの>
◇文部科学省
・大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術で使用した特定保険医療材料の費用を合算していなかったり、麻酔料に係る加算を行っていなかったり、難病患者等入院診療加算を算定していなかったりなどしたため、請求額が不足しているもの
エ 物件 二件
    一億千百五十五万円
<代金の回収が困難となっているもの>
◇総務省
・収入印紙等の売渡しに当たり、省令等に違反して金融機関による支払保証のない小切手を受け入れたため、売渡代金の回収が困難となっているもの
オ 不正行為 二件
    千四百三十六万余円
<現金が領得されたもの>
◇法務省
・検察庁の職員が、罰金等の納付告知等の事務に従事中、現金を収納する権限がないのにこれを受領して領得したもの
    (一件 三百十九万余円)
◇文部科学省
・国立大学の職員が、授業料等の収納事務に従事中、授業料等を保管していた金庫から現金を領得したもの
    (一件 千百十六万余円)
A 支出に関するもの 計百六十一件
    七十四億五千二百八十八万余円
 この内訳を態様別にみると第5表のとおりである。
ア 予算経理 三件
    九百八十一万余円
<会計経理が適正を欠いているもの>
◇外務省
・在外公館において、保管中の渡切費を流用したり、住居手当等を過大に支給したり、公邸の借料を過大に支払ったりなどしていて、会計経理が適正を欠いているもの
イ 工事 一件
    七百八十万円
<積算が過大となっていたもの>
◇国土交通省
・共同溝付帯設備工事の施行に当たり、ケーブルラックの材料費を積算する際、誤って、ケーブルラック一本(長さ三メートル)当たりの単価を一メートル当たりの単価として材料費を過大に算出したなどのため、契約額が割高になっているもの
ウ 役務 一件
    千三百八十六万余円
<委託費の精算が過大となっているもの>
◇通信・放送機構
・研究開発に係る委託費の精算に当たり、委託研究に従事していた時間と他の研究に従事していた時間とを区分しないまま、一日の研究時間数を委託研究に係る直接従事時間数とするなどして労務費の計上が適切を欠いたため、支払額が過大となっているもの
エ 保険給付 三件
    十一億七千百六十九万余円
<保険の給付が適正でなかったもの>
◇厚生労働省
・厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、受給権者が事業所に常用的に使用されていて、年金の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得届が提出されず、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、千二百六十四人に対して支給停止の手続が執られず支給が適正でなかったもの
    (一件 九億三千四百七万余円)
・雇用保険の失業等給付金の支給決定に当たり、受給者が、再就職していながらその事実を申告書に記載していなかったり、事実と相違する再就職年月日を記載したりなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、三百十二人に対する支給が適正でなかったもの
    (一件 一億二千五百七十四万余円)
・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において既に雇い入れている者を新たに雇い入れたこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったなどのため、七十六事業主に対する支給が適正でなかったもの
    (一件 一億千百八十六万余円)
オ 医療費 二件
    十八億六千百九十九万余円
<医療費の支払が適切でなかったもの>
◇厚生労働省
・老人保健等における医療費の支払に当たり、医療機関から入院基本料、入院基本料加算、特定入院料等の不適正な請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったなどのため、三百五十一医療機関に対する支払が適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるもの
    (一件 十八億二千八百四十六万余円)
・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関が手術料、リハビリテーション料、入院料等を誤って過大に算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でなかったため、二百二十医療機関に対する支払が適正でなかったもの
    (一件 三千三百五十三万余円)
カ 補助金 百四十一件
    四十億八千四百六十八万余円
<補助事業の実施及び経理が不当なもの>
◇文部科学省
・義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の標準定数や諸手当の額の算定を誤るなどしていたため、負担金が過大に交付されているもの
    (三件 五千四百四十六万余円)
◇厚生労働省
・保健衛生施設等設備整備費補助金の経理において、設備の購入設置費の値引き額を事業費から控除していなかったため、補助対象事業費が過大に精算されているもの
    (一件 二百十七万余円)
・精神保健対策費補助金の経理において、経費の一部を二重に計上していたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの
    (一件 百三十四万余円)
・高齢者介護体制整備支援事業費等補助金の経理において、補助の対象とならない職員の給料等を補助対象経費に含めていたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの
    (一件 五百三十六万余円)
・社会福祉施設等施設整備費補助金の算定において、スプリンクラー設備工事費の算出方法を誤ったり、契約金額ではなくより高額な見積金額に基づいて実支出額を算出したりなどしていたため、補助金が過大に交付されているもの
    (三件 二千六百六十八万余円)
・生活保護費補助金の経理において、予定したほど旅費等の支出を要しなかったのに、予定額をそのまま実支出額とするなどして実績報告を行っていたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの
    (一件 三百一万余円)
・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されているもの
    (十一件 七千七百二十九万余円)
・児童保護費等負担金の算定において、児童の扶養義務者の所得税額を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定したり、保育単価の適用を誤るなどして費用の額を過大に算定したりしていたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されているもの
    (二十一件 千九百九万余円)
・少子化対策臨時特例交付金による保育所設備整備事業において、交付金の対象となっていた大型遊具を設置していないもの
    (一件 三百万円)
・国民健康保険の療養給付費補助金の交付に当たり、国民健康保険組合において、組合の規約に定める業務に従事しておらず組合員の範囲に該当しない者を被保険者として、これらの者に係る医療給付費を補助の対象に含めて申請していたため、補助金が過大に交付されているもの
    (一件 四百六万余円)
・国民健康保険の療養給付費負担金の交付に当たり、市において、一般被保険者に係る医療給付費の計算を誤って過大にしたり、負担軽減措置の対象となる医療給付費の減額調整を行わなかったりして交付申請等を行っていたため、負担金が過大に交付されているもの
    (十二件 八千九百九万余円)
・国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、市町村において、交付額算定の基礎となる調整対象収入額を過小に算定したり、調整対象需要額を過大に算定したりなどして交付申請等を行っていたため、交付金が過大に交付されているもの
    (四十二件 十八億七千五百三十四万余円)
・水道施設整備費補助金の経理において、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定したときは、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの
    (六件 八億千九百六十万余円)
◇農林水産省
・かんがい排水事業の実施に当たり、橋台と桁との接点である支承部の設計図面を作成する際、誤って、固定支承部と可動支承部を逆に設置することとしていたため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 九百十一万余円)
・保安林管理道整備事業の実施に当たり、コンクリートブロック積擁壁の施工において、基礎地盤の埋戻しに軟弱な地山表層土等を使用したり、擁壁前面の水抜きパイプの高さを超えて埋め戻したりするなど、施工が著しく粗雑であったため、工事の目的を達していないもの
    (一件 百六十六万余円)
・かんがい排水事業の実施に当たり、水路トンネルの出入口部について、配筋図を作成する際に底版の鉄筋の径を誤ったり、施工の際に鉄筋を所定の位置より下方に配置したりしていたため、所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 四百十九万余円)
・ため池等整備事業の実施に当たり、水路トンネルの底版上面側の主鉄筋について、両端が両側壁の外側の鉄筋に達するように配置されておらず、鉄筋の定着に必要な長さが著しく不足していて、施工が設計と著しく相違していたため、水路トンネルの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 七百六十九万余円)
・漁業集落環境整備事業の実施に当たり、汚水処理水槽の外壁の主鉄筋を施工する際、誤って、設計図書に示されている間隔の二倍の間隔で配置していて、施工が設計と著しく相違していたため、汚水処理水槽等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 千百二十六万余円)
・条件不利地域農業生産体制整備事業等の実施に当たり、農業機械の購入費を水増ししたり、急傾斜地の水田のために導入したコンバインを平坦地の水田で使用していて補助の目的を達していなかったりしているもの
    (一件 四百五十五万余円)
・中山間地域総合整備事業の実施に当たり、ボックスカルバートの頂版に作用する荷重を誤って過小に計算していて、設計が適切でなかったため、ボックスカルバート等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件  九百六十三万余円)
・経営基盤強化林業構造改善事業の実施に当たり、重力式コンクリート擁壁の基礎地盤が設計と異なる著しく軟弱な地盤であったのに、適切な設計変更を行わなかったため、擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 百九十六万余円)
・農業経営育成生産システム確立条件整備事業の実施に当たり、過年度に補助事業で設置した精米施設を無断で解体撤去し、その解体撤去費用を補助対象事業費に含めているもの
    (一件  五百九十九万余円)
・護岸の災害復旧事業の実施に当たり、タイロッドの定着プレートが控え版の通し穴の径に対して十分な大きさとなっていないなど、設計が適切でなかったため、タイロッド工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 千六百五十四万余円)
・水産業地域改善対策事業で設置した荷さばき施設において、施設の運営方法等の検討や利用状況の把握が十分でなかったため、漁業者による利用が全くない状況となっていて、補助の目的を達していないもの
    (一件 七千八百三十七万余円)
・農地情報管理システム整備事業の実施に当たり、入力すべき農地基本台帳のデータの一部が含まれていた電算システムを本件事業により電算化されたものと誤認し、データ入力等の事業を実施していないもの
    (一件 百六十一万余円)
・漁港改修事業の実施に当たり、地震力を考慮しないで安定計算を行っていて、設計が適切でなかったため、護岸等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 一億七百九十二万余円)
◇経済産業省
・次世代情報技術開発費補助金等の交付に当たり、補助事業に使用していない機械装置の購入費や補助事業に従事していない時間に係る人件費を補助対象事業費に含めるなどしていたため、補助金が過大に交付されているもの
    (二件 二千五百五十一万余円)
・地域活性化創造技術研究開発費補助金の交付に当たり、補助事業に従事していない者や臨時に雇用されている者に係る人件費を補助対象事業費に含めるなどしていたため、補助金が過大に交付されているもの
    (二件 五百五十万余円)
・国庫補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、借主が、設備の購入代金の支払を所定の支払期限までに完了していなかったり、設備の購入に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸付けを受けたりなどしていて、補助の目的に沿わない結果となっているもの
    (四件 千九百五十六万余円)
・電源立地促進対策交付金による生涯学習センター建設事業の実施に当たり、事業主体の事業実施体制がぜい弱であったことに加え、施工監理業務に対する認識及び監督が十分でなかったことなどのため、施工監理業者が事業主体に無断で設計を変更し、しゅん功図等と出来形との間に多数の相違が生じるなどしていて、交付金の交付目的に沿った施設となっていないなどしているもの
    (一件 二億六千五十四万余円)
◇国土交通省
・新産業都市等事業補助率差額の交付額の算定に当たり、交付額の減額要素となる市町村負担金の計上を誤って交付申請を行っていたため、補助率差額が過大に交付されているもの
    (二件 二千三百十二万余円)
・歩道橋整備事業の実施に当たり、橋台の胸壁を設計する際、誤って、落橋防止装置を通じて胸壁に作用する押抜きせん断力及びせん断力を考慮しておらず、設計が適切でなかったため、胸壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 八千七百五十万余円)
・通常砂防事業の実施に当たり、橋脚柱部の鉄筋加工図等を作成する際、誤って、内側の主鉄筋及びそれを取り囲む帯鉄筋の本数を設計計算書で必要としている本数の半分としていて、設計が適切でなかったため、橋脚等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 二千七百二十四万余円)
・河川等関連公共施設整備促進事業の実施に当たり、橋脚の柱部に配置する鉄筋を施工する際、中間帯鉄筋の両端部は帯鉄筋にかけることとされているのに、誤って主鉄筋にかけていて帯鉄筋と中間帯鉄筋とが一体となっておらず、施工が設計と相違していたため、橋脚等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
    (一件 二千五百二十三万余円)
・交通安全施設交差点改良事業の実施に当たり、土地の一部を取得することに伴い残地の価格が低下するなどの損失に対する補償費を算定する際に、所有者において早急に残地を売却する必要が認められないのに売却損率を考慮して算定していたため、補償費が過大となっているもの
    (一件 四百九十七万余円)
・地すべり対策事業の実施に当たり、地すべりを抑止するアンカー工を施工する際にグラウト材を予備注入しないで外管の引抜きを行うなど、その施工が著しく粗雑であったため、アンカーが地山に十分定着しておらず、アンカー工等が工事の目的を達していないもの
    (一件 七千四百八十八万余円)
・公営住宅整備事業費補助金の交付額の算定に当たり、特殊屋外附帯工事に係る特例加算額を、その限度額を超える実際に要した工事費に基づいて算定していたため、補助金が過大となっているもの
    (一件 千五百六万余円)
・公営住宅家賃収入補助金の経理において、収入の申告を行っていない者の入居戸数を補助対象率の減少要素となる収入超過者入居戸数に含めていなかったため、補助金が過大に交付されているもの
    (一件 七百五十八万余円)
◇環境省
・廃棄物処理施設整備事業の実施に当たり、焼却処理施設等建設工事の入札において高率な最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除していたため、割高な契約を締結しているもの
    (一件 一億七千四百五十九万余円)
◇日本私立学校振興・共済事業団
・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、学校法人から提出された資料に、補助金の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額に計上しないこととされている建物附属設備の設置工事費等の支出額が計上されるなどしているのに、この資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大となっているもの
    (五件 九千二百二十四万余円)
キ 貸付金 七件
    八千七百二十五万余円
<貸付金の経理が不当なもの>
◇農林水産省
・国の貸付金等を原資とする農業改良資金の貸付けにおいて、借受者が、貸付け申請前に購入した農業機械について貸付けを受けたり、事業実施後に営農を放棄したりしていて、これに係る国の貸付金等相当額が貸付け等の目的に沿わない結果となっているもの
    (三件 二千二十九万余円)
◇農林漁業金融公庫
・林業基盤整備資金の貸付けにおいて、借入者から担保として提供されることとなっていた山林等に対する抵当権の設定を怠っていたため、貸付金債権の回収が不能となっているもの
    (一件 六百三十六万余円)
◇社会福祉・医療事業団
・社会福祉法人等への経営資金の貸付けにおいて、借入者が貸付金を他の関連法人の運営経費等に流用するなどしていて、貸付金が貸付けの目的外に使用されているもの
    (三件 六千六十万円)
ク 不正行為 二件
    千四百二十四万余円
<現金が領得されたもの>
◇内閣府(防衛庁)
・防衛大学校の職員が、教官の出張旅費に関する事務に従事中、虚偽の旅費請求書を作成するなどして支払われた旅費を領得したもの
    (一件 百四十四万余円)
◇外務省
・外務省の職員が、役務の調達事務に従事中、ハイヤー会社役員等と共謀し、ハイヤーの使用料金を水増しして請求させ、これに対して支出された額と実際の使用料金との差額を領得したもの
    (一件 千二百七十九万余円)
ケ その他 一件
    二億百五十二万余円
<助成金の経理が不当なもの>
◇雇用・能力開発機構
・中小企業雇用創出人材確保助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において実際には支払っていない施設又は設備等の費用を支払ったこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、四十四事業主に対する支給が適正でなかったもの
B 収入支出以外のもの 計四十六件
    七億三千八百九十五万余円
 不正行為 四十六件
    七億三千八百九十五万余円
<現金等が領得されたもの>
◇総務省
・郵便局の出納員等が、預金者から預かった貯金証書を使用し払出しを受けた定額郵便貯金払戻金、契約者から受領した保険料、出納官吏の保管に係る資金等を領得したもの
    (四十五件 七億千八百五十二万余円)
◇文部科学省
・国立大学の職員が、委任経理金の出納保管事務等に従事中、物品購入を装って虚偽の支払計算書を作成し、出納官吏名義の金融機関口座から代金相当額の払出しを受けるなどして委任経理金等を領得したもの
    (一件 二千四十二万余円)

【意見を表示し又は処置を要求した事項】

 「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計九件掲記した。
@ 会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求した事項 二件
◇外務省
・物品・役務調達契約について
 物品・役務の調達に際して、契約方式、予定価格、契約の相手方等の決定や発注など、本来会計課が行うべき事務を各担当課が行う執行体制が長年続いていた。このような執行体制であったため、契約の締結に際して、競争に付することが可能であるにもかかわらず、随意契約により特定の業者から調達したり、見積書の徴取が形骸化したりしていた。また、検査職員が納入場所に立ち会っていないなど、給付の確認が十分行われていなかった。この中で、ハイヤーの借上げ及びホテルの利用においては、請求内訳が明らかでなく給付の確認ができない状況となっていて、これを背景に職員がハイヤー借上げ代金を水増し請求させる事態が発生していた。したがって、外務省において、物品・役務調達契約に際し、会計法令等を遵守して、会計課でその事務を行うこととして執行体制を抜本的に改めること、契約の締結に当たり原則として競争に付すること、また、給付の確認を確実に実施する体制を整備することとして、予算の適正な執行を図るよう処置を講ずる要がある。
    〔背景金額 三百五十五億七十五万円〕
    (検査した物品・役務調達契約の額)
◇厚生労働省
・休業補償給付等の受給者に係る求職者給付等の支給について
 療養のため休業補償給付等を受給していて就労できる状態にない者に対して、その期間中に求職者給付等を支給していたり、公共職業安定所に再就職の事実を申告せず求職者給付等を受給していた者が、その後負傷するなどして休業補償給付等を受給する際に労働基準監督署に再就職の事実を届け出ているのに、求職者給付等の返還の措置が執られていなかったりしていて適切とは認められない事態が見受けられた。したがって、厚生労働省において、公共職業安定所に対し受給資格の決定及び失業の認定時における労働能力の有無の確認等を徹底させること、労働基準監督署が保有する休業補償給付等の給付履歴や再就職年月日等の情報を公共職業安定所が活用できるよう体制を整備することなどの処置を講ずる要がある。
    (指摘金額 千五百九十一万円)
A 会計検査院法第三十四条の規定により是正又は是正改善の処置を要求し及び同法第三十六条の規定により改善の処置を要求した事項 二件
ア 是正及び改善の処置を要求したもの
◇内閣及び外務省
・内閣官房報償費の執行等について
 平成十三年一月、内閣総理大臣の外国訪問に際して、外務省の元要人外国訪問支援室長が内閣官房の報償費から交付された宿泊費差額を詐取したとされる、いわゆる松尾事件が発覚した。そこで、本院が検査したところ、宿泊費差額の精算に当たって、内閣官房と外務省の間の事務の分担が明確でないことなどから、双方において、元室長から提出された精算書と領収証書の突合等の実質的な確認が行われていない状況となっていた。また、そのほかにも内閣官房と外務省との間における総理外国訪問に係る事務及び経費の分担が明確になっていなかったり、内閣官房における報償費の執行体制等が整備されていなかったりしており、松尾事件はこのような体制を背景に発生したものである。そして、一定の条件の下に元室長が領得したと思料される額を計算したところ、三億七千七百万円となる。したがって、内閣官房において、松尾事件に係る損害額を早期に確定し、債権を保全するための措置を引き続き講ずるとともに、内閣官房及び外務省において、総理外国訪問における各々の事務及び経費の分担を明確にし、内閣官房において、報償費の執行体制を整備し、内部確認、監査体制を構築する処置を講ずることにより、内閣官房報償費の適切な執行等を期する要がある。
    (指摘金額 三億七千七百万円)
    〔背景金額 六十五億九百四十四万円〕
(内閣官房報償費(一般行政に必要な経費)の八年度から十二年度までの執行額)
イ 是正改善及び改善の処置を要求したもの
◇外務省
・報償費の執行について
 外務省の報償費の執行について検査したところ、情報収集のための会合等の経費について、支払が翌年度の予算から行われていたり、事前の決裁がなされていなかったりなどしていた。また、請求書払が行えるにもかかわらず立替払によっていて、中に書類の不備により会合の内容や人数について確認できないものなどが見受けられた。さらに、レセプション経費、酒類の購入経費、日本画等の購入経費など、他の費目で支弁できる経費が報償費から支出されていた。したがって、外務省において、会計手続等を職員に周知徹底すること、使用後に報告を求めたり書類を整備させたりするなどして内部確認が十分に行えるようにし、また、実効ある内部監査を実現するための方策を検討・確立すること、今後は報償費として真に支出する必要があるものに使用していくことなどの処置を講ずる要がある。
    〔背景金額 四十九億五千七百五十四万円〕
    (外務省報償費の十二年度の執行額)
B 会計検査院法第三十六条の規定により改善の意見を表示し又は改善の処置を要求した事項 五件
ア 改善の意見を表示したもの
◇文部科学省
・国立大学附属病院における診療報酬請求に係る事務処理体制について
 国立大学附属病院における診療報酬の請求不足の事態については平成六年度決算検査報告に掲記して以降、継続的に検査を実施しているが、請求不足額はなお多額となっており、また、大学病院間でその額に相当の差がある。そこで、各大学病院間を比較するなどの方法により検査したところ、伝票の記載内容、コンピュータへの入力内容及び医事データファイルの登録内容の審査体制並びに部門間の連絡体制が十分でないと認められる事態が見受けられた。したがって、文部科学省において、診療報酬請求に係る事務処理体制の整備が十分図られるよう、参考となる多様な事例を各大学病院に示すなどして、各大学病院に適切かつ有効な事務処理体制を検討させるため、より一層の指導を行い、診療報酬請求の適正を期する要がある。
    〔背景金額 七千八十一万円〕
    (診療報酬請求不足額)
・公立小・中学校におけるコンピュータ教室等の効果的な活用について
 公立小・中学校において、国庫補助金等で整備されたコンピュータ教室の利用計画等の作成状況や内容に差異が生じていたり、コンピュータ教室の利用時間数やコンピュータを利用した授業内容に大きな開きが生じていたりなどしている事態が多数見受けられた。したがって、文部科学省において、コンピュータ教室等の効果的な活用を図るよう都道府県及び市町村に対し必要な指導・助言を行う要がある。
    〔背景金額 百七十四億七百九十一万円〕
(検査した新増改築事業及び大規模改造事業におけるコンピュータ教室の整備に係る国庫補助金等交付額)
◇農林水産省
・農用地の流動化を推進するための事業の実施について
 ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の一環として、農用地の流動化を推進することにより担い手への農用地の利用集積を図ることを目的とする事業において、農用地に関する利用権や農作業の受委託等に関する農業者の意向調査等が適切に行われていなかったり、農用地の利用調整活動を実施する態勢が十分でなかったりなどしている事態が見受けられた。したがって、農林水産省において、農用地の流動化に関する情報の把握、管理、活用等の活動を着実に行い、事業の目的に資するものとなるよう、事業実施の在り方を含め、今後実施される事業について、その効果的な実施を期する要がある。
    〔背景金額 四億六千三百二万円〕
(事業が効果的に実施されていない市町村に対して交付された国庫補助金交付額)
◇西日本旅客鉄道株式会社
・鉄道事業用地等の第三者占有について
 会社の鉄道事業用地等の一部に、第三者が正規の手続を経ずに住居用敷地、材料置場、耕作地等として占有しているものがある。この第三者占有地について、会社における土地の必要性の見直しを行わず売却、使用貸借等の方途を十分に検討していない事態や売却の処理の進展が図られていない事態、占有を解消するための交渉を計画的・継続的に行っていない事態が見受けられた。したがって、第三者占有地の必要性の判断及び処理計画の作成のための具体的な基準を策定するとともに、売却を進展させるための方策や使用貸借等の方途の検討を行うなどして、土地の適切な処分、管理及び利用を図る要がある。
    〔背景金額 十億六千七百八万円〕
    (十二年度末の第三者占有地に係る帳簿価額)
イ 改善の処置を要求したもの
◇厚生労働省
・政府管掌健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の全喪処理について
 健康保険及び厚生年金保険の適用事業所が休業するなどした場合、社会保険事務所等では、事業主から提出された被保険者全員の資格喪失届のほか全喪届により、その事業所を適用事業所から除外する全喪処理を行っている。しかし、全喪処理後も事業を継続していたり、短期間で事業を再開したりしている事業所が多数見受けられた。したがって、社会保険庁において、全喪処理の適正化を図るため、全喪届について法令等で規定してその記載内容を明確に示すことなどにより、全喪届を提出した事業所の事業実態を的確に把握することができるようにするとともに、全喪届の記載内容の具体的な調査確認方法等を定める要がある。
    〔背景金額 一億七百七十八万円〕
(全喪処理後も事業を実施していた事業所の全喪処理時の被保険者に係る月額の保険料相当額)

【本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項】

 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計二十三件掲記した。
◇内閣府(防衛庁)
・護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査の実施について
 護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査を実施するに当たり、実施要領に基づいて検査を実施するよう周知徹底を図っていなかったなどのため、乗員が行うこととされている事前点検や実施要領に定められていない作業を含めて請け負わせていて、検査費に開差を生ずることとなっていた。
    (指摘金額 二千七百万円)
◇法務省
・地図管理システムの賃借料等の予定価格の積算について
 地図管理システムの賃借料及び保守料の予定価格の積算に当たり、各法務局において、実態を反映した本省の一括購入分のシステムの購入価格等が本省から示されていなかったため、開発会社等から個別に入手した価格証明書の価格を基に算定していて、賃借料等の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 千十万円)
◇財務省
・所得税の青色申告における青色事業専従者給与を必要経費に算入する制度の運用について
 青色事業専従者給与を必要経費に算入する制度の運用に当たり、青色事業専従者給与の届出書等の管理が十分でなくその活用が図られていなかったこと、他に職業を有している青色事業専従者、資格事業者に係る青色事業専従者等に関する申告審理等において、専従の実態、業務に対する関与の度合いなどが的確に把握されないままになっていたことなど、制度の運用が適切に行われていなかった。
    〔背景金額 五十九億二千万円〕
(税務調査の実施を検討する要がある五百二十一事業者が、平成十、十一両年分の所得金額の計算上必要経費に算入していた青色事業専従者給与の額)
◇厚生労働省
・ケアハウスの施設整備事業の事業効果の発現について
 ケアハウスの施設整備事業において、整備計画の策定時における建設地の検討や入居者のニーズの把握が十分でなかったり、施設の管理運営に問題が生じたりなどしていたため、施設の入居率が低く事業の効果が十分発現していなかった。
    (指摘金額 二十三億二千五百十五万円)
・国民健康保険料収納率低下給付金の交付について
 国民健康保険料収納率低下給付金の交付額の算定に当たり、決算時の収納率ではなく年度途中である十二月末の収納率に基づいて交付額を算定することとしていたため、給付金が過大に交付されていた。
    (指摘金額 十八億九千八百四十四万円)
・国立病院等における医師会費の国費負担について
 国立病院等における医師会費の国費負担に当たり、国立病院等に明確な指示をすることなくその裁量に任せていたため、国立病院等の代表者以外の者について支払ったり、医師会費以外の経費を支払ったりしていて、支払が適切に行われていなかった。
    (指摘金額 千六百九十一万円)
◇農林水産省
・米麦に係る共同乾燥調製施設等の規模について
 米麦の共同乾燥調製施設等の設置に当たり、利用対象面積の把握について具体的に定めていなかったため、農業者の施設利用の意向が適切に反映されていなかったり、利用時期の意向の把握等が適切でなかったりしていて、施設の規模及びその決定過程が適切なものとなっていなかった。
    〔背景金額 四十二億五千八百六十万円〕
(施設の規模及びその決定過程が適切でない施設に係る国庫補助金交付額)
・エゾシカ対策として設置する防護柵の設計について
 エゾシカ対策として設置する防護柵の設計に当たり、屈曲角度が一定以上あり外力に対して十分な抵抗力を有しているコーナー柱にも控柱を設置する設計としていたため、防護柵の設計が過大となっており、補助事業が経済的に実施されていなかった。
    (指摘金額 二千九百七十万円)
・特定高性能農業機械の導入に対する農業近代化資金の利子補給について
 特定高性能農業機械の導入に対する農業近代化資金の利子補給に当たり、同機械の利用面積に関する基本方針の周知徹底が図られていなかったため、利子補給を受けて導入された機械の利用面積が各県の定めた導入計画の利用面積の下限を下回っており、農業経営の改善に資するものとなっていなかった。
    (指摘金額 二億百七十万円)
・林業従事者等への貸付事業のために造成された林業改善資金の資金規模について
 林業従事者等への貸付事業のために都道府県が国庫補助金と自己資金等により造成した林業改善資金において、貸付額が減少する一方で、多額の繰越金を発生させており、都道府県費分も合わせた財政資金が効果を発現することなく滞留していた。
    〔背景金額 百六十四億九千八百万円〕
    (資金造成額のうち国庫補助金交付額)
・現場吹付法枠工における法枠吹付工費の積算について
 現場吹付法枠工における法枠吹付工費の積算に当たり、法枠の表面を平滑に仕上げる作業を行うこととはしていないのに、積算の歩掛かりがこの作業を行うものとして定められていたため、法枠吹付工費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 七千四百七十万円)
◇国土交通省
・衛星船舶電話の料金種別の選択について
 小型巡視艇等に設置されている衛星船舶電話の利用に当たり、使用実態に応じた経済的な料金種別を選択して利用料金の節減を図ることができたのに、料金種別の見直しについて十分検討していなかったため、利用料金が不経済となっていた。
    (指摘金額 五千八百四十万円)
・国道下に埋設された光ファイバケーブルの収容空間について
 光ファイバケーブルの収容空間となる国道下の管路等の整備に当たり、その連続性が確保されていないなど民間通信事業者等の光ファイバケーブル網の構築に対する支援が十分でなく、整備済みの収容空間が、民間通信事業者等に十分利用されていなかった。
    〔背景金額 二千三百九十七億九百三十万円〕
(平成十二年度末までに収容空間の整備に要した事業費)
・防波堤等の築造工事における鉄筋加工組立費の積算について
 防波堤等の築造工事における鉄筋加工組立費の積算に当たり、径三十二ミリメートル以上の鉄筋の加工組立費の積算方法を明確に示していなかったため、径三十二ミリメートルの鉄筋について、工場加工を前提としていて作業の難易度の高い吊鉄筋の加工組立歩掛かり等を準用しており、鉄筋加工組立費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 三千万円)
・岸壁等築造工事における基礎部の設計について
 岸壁等築造工事における基礎部の設計に当たり、岸壁等は防波堤等により静穏度が確保された港内にあって基礎捨石が散乱するおそれがないことなどから被覆石を設置する要はないのに、このような設計とすることについて明確にしていなかったため、被覆石に係る工事費が不経済となっていた。
    (指摘金額 八千八百六十万円)
◇日本道路公団
・トンネル工事における給排水設備費及びずり処理費の積算について
 トンネル工事における給排水設備費及びずり処理費の積算に当たり、現場の環境などが相違していて給排水管の損傷の程度やずりの粒径が異なっている工法の積算を基にした積算要領によることとしていて、施工の実態を積算に反映していなかったため、給排水設備費及びずり処理費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 七千八百万円)
◇首都高速道路公団
・先行削孔工事におけるクローラクレーンの運転経費の積算について
 山留壁の先行削孔工事におけるクローラクレーンの運転経費の積算に当たり、クローラクレーンの運転時間は削孔一本当たりの施工時間より短いのに、これを施工時間と同一としていて、施工の実態を積算に反映していなかったため、クローラクレーンの運転経費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 四千八十万円)
◇阪神高速道路公団
・建物等移転補償における解体材の処理費の積算について
 建物等移転補償における解体材の処理費の積算に当たり、積算の基準が適切でなかったなどのため、モルタル等の廃材の処理重量について解体後の空隙を含んだ状態の体積に解体前の状態の換算値重量を乗じて算出したり、コンクリート塊の処理単価について再資源化施設での処理単価でなく近年上昇した最終処分施設での処理単価を用いたりしていて、解体材の処理費の積算額が過大となっていた。
    (指摘金額 二千八百九十万円)
◇日本下水道事業団
・終末処理場等に設置する自家発電設備の消音器等の選定について
 終末処理場等に設置する自家発電設備の消音器等の選定に当たり、騒音が壁等を透過する際の減衰量の算出方法を設計指針に定めていなかったため、消音器等の規格が過大となっていた。
    (指摘金額 三千四百二十万円)
◇国際協力事業団
・専門家派遣事業における人件費の補てん額の算定について
 専門家派遣事業の実施に当たり、所属する法人等から専門家に支払われる賞与の支給実態を把握していなかったため、法人等に対する人件費の補てん額が過大に算定されていた。
    (指摘金額 一億六千九百三十万円)
◇奄美群島振興開発基金
・貸付け又は保証における審査について
 貸付け又は保証の審査に当たり、審査要領等に不備があったため、申込みを受けた事業者との取引状況の把握が十分に行われないまま、既往に保証した貸付金を延滞している事業者に新たに貸し付けたり、既往の事業資金貸付金を延滞している事業者に新たに保証したりしていた。
    〔背景金額 九千九百九十五万円〕
(取引状況の把握が十分でないまま行われた貸付け又は保証の額)
◇東日本電信電話株式会社
・低速専用線回線終端装置に搭載する一般専用サービス用パッケージの購入について
 一般専用サービスの回線を収容するため低速専用線回線終端装置に搭載するパッケージの購入に当たり、社内の連絡調整が十分行われていなかったことなどのため、支店内や他支店にある回線を収容していないパッケージが活用されず、パッケージの購入費が不経済となっていた。
    (指摘金額 八千八百二十万円)
◇西日本電信電話株式会社
・一般専用サービス等の回線を収容する低速専用線回線終端装置の購入について
 一般専用サービス等の提供に当たり、既設のメタリックケーブルを活用することとすれば、低速専用線回線終端装置を設置する要はなかったのに、その検討が十分でなかったため、同装置の購入費が不経済となっていた。
    (指摘金額 七千百四十万円)

【特に掲記を要すると認めた事項】

 「特に掲記を要すると認めた事項」として二件掲記した。
・都市部で実施されている総合治水対策について
 総合治水対策は、河川の治水機能の増強のみで治水上の安全を確保するには限界があることから、治水対策の対象を河川からその流域まで拡大し、河道改修など治水施設の整備に防災調節池等の整備などの流域対策を併せて実施されている。三大都市圏に位置している四河川流域の総合治水対策について検査したところ、治水施設の整備については都市部における用地取得等の困難性などから計画どおり進ちょくしておらず、また、流域対策については当初の計画上の想定と実態が異なっていることなどから計画上の整備量を確保することが困難な状況となっている。したがって、国土交通省及び各流域協議会において、治水施設の整備や流域対策をさらに促進し早期の計画の達成を図るとともに、流域整備計画の目標を達成できるように計画の見直しを検討するなどして、一層効率的・効果的な総合治水対策を実施することが望まれる。
    〔背景金額 三千八百九億円〕
(総合治水対策の計画の見直しを検討する必要がある四河川流域の総合治水対策の実施のために国が平成十二年度までに支出した額)
・公衆電話事業の運営について
 東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社の公衆電話については、近年の携帯電話等の著しい普及などに伴い、その利用環境に大きな変化が生じていることなどから、公衆電話事業の運営について検査したところ、両会社では多額の営業損失を生じていた。そして、設置台数の適正化のための撤去については、関係者への折衝等に時間がかかることなどから十分進ちょくしていない状況となっており、また、より多くの収益を上げることを目的として設置している公衆電話の中にも利用の低いものが多数見受けられたり、新たに導入したICカード公衆電話の利用も低調となっていたりしていた。ついては、両会社における公衆電話のうち、国民生活に不可欠であるなどとされるものについては、設置台数の確保等に努め、国民生活の利便に資するとともに、収益を上げることを目的として設置しているものについては、関係者との調整等を図るなどして一層の適正配置を進めるなどして、公衆電話事業のさらなる収支の改善を図る要があると認められる。また、現在、国において行われている基礎的電気通信役務に含める公衆電話サービスの範囲等の検討結果も踏まえて、公衆電話事業の今後の在り方を多角的な観点から検討し、総合的な対策が講じられることが望まれる。
    〔背景金額 三百八十九億円〕
(平成十二年度における東日本、西日本両電信電話株式会社の公衆電話事業の営業損失)

V 特定検査対象に関する検査状況の概要

 特定検査対象に関する検査状況として十五件掲記した。
@ 航空自衛隊の新初等練習機の調達について
 防衛庁が、平成十二年度の新初等練習機二機の調達に当たって採用した総合評価落札方式による一般競争契約では、機体の性能等と二機分の入札価格のほか、十三年度以降に調達予定の四十七機の機体価格及び四十九機に係る維持経費等の後年度費用を評価要素として、落札者を決定していた。
 この契約について検査したところ、次のような状況であった。すなわち、評価要素のうち後年度費用等に係る総合評価のための書類について、入札価格のように会計法令上封印することが前提とされているものではないとし、また、審査及び検討の対象となるものであるとして、入札者に封印させてはいなかった。また、後年度費用等に関する提案内容について、入札説明書において将来落札者を拘束すると記載するとともに、これを担保するため提案内容が記載された入札回答書を契約書に添付させていたが、拘束される項目や履行確保のための措置については具体的に示していなかった。
 今後、防衛庁において、同様の総合評価落札方式を採用する場合には、入札及び契約事務の公平性及び透明性が一層高まり、提案内容がより確実に履行されるよう、前記の点について検討する要がある。
A 金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について
 金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況等について検査した状況は次のとおりであり、この対策の実施状況については引き続き注視していくこととする。
(ア) 営業譲受け前から財務状況が悪化しており自己査定の正確性も十分でなかったことなどから、営業譲受け後短期間で破綻した救済金融機関が見受けられた。金融庁等が資金援助に伴う営業譲渡の認可等を行うに当たっては、救済金融機関に対する検査等で得られた情報を活用するなどして、その財務内容の健全性、営業譲受け後の経営計画の妥当性等について十分検討することが肝要である。
(イ) 被管理金融機関では、管理期間中に、債務者区分の見直し、地価の下落による資産の劣化等により財務状況が漸次悪化するとともに、預金・貸出金の減少等に伴い収益状況も落ち込んで、これらが期間損失として累積した。その結果、救済金融機関への営業譲渡の際に行われる金銭の贈与額が増加する状況となっていた。したがって、破綻処理の迅速化に資するとともに、救済金融機関が現れやすい環境を整備するため、平成十二年五月の預金保険法改正により新たに導入されたロス・シェアリング等の施策の採用も検討して、できるだけ早期に管理を終了することが肝要である。
(ウ) 十一年三月に資本増強を受けた大手十三行では、業務の再構築等により、支出の削減等の措置が執られているが、不良債権処理を進めて損失が増大したことなどにより、十三年三月期における当期利益は経営健全化計画を下回る状況となっている。金融庁等においては、金融機関が不良債権を処理しつつ財務内容の健全性を確保して適切な経営を行っているか引き続き監視していく要がある。
B 郵政官署における渡切費制度について
 郵政事業庁では、全国二万四千七百七十八局の郵便局のうち一万九千四百二十三局に対して、平成十二年度に九百十一億余円の渡切費を支給している。渡切費は、郵便局のような小官署において常時必要とする少額の事務費を渡切りで支給し過不足の調整を行わないことにより事務の簡素化及び経費の効率的使用を図るという観点から、予算執行上の特例として認められているものである。
 このような渡切費の性格にかんがみ、制度の運用面に着眼して検査したところ、同規模の郵便局でありながら、会計事務職員を配置し支出の原則に従った会計処理をしている普通局と渡切費による特例的支出をしている普通局があったり、少額な事務費支払という趣旨に対して切手類販売手数料等が多額に上っている郵便局があったり、帳簿及び証憑類の保存期間が三年から一年に変更されたりなどしていた。これらの検査の状況を踏まえ、本院では、渡切費制度の運用について改善の必要性及び実施可能性等を検討していたところ、総務省では、十四年度予算から渡切費を廃止する方針を発表した。
 本院としては、前記の状況等を踏まえ、渡切費が支給目的に沿って効率的かつ有効に使用されたかについて引き続き検査を行うとともに、渡切費廃止後の経費の経理方法等について適切かつ効率的なものとなっているかなどの観点からも注視していくこととする。
C 政府開発援助について
 我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、無償資金協力や円借款、プロジェクト方式技術協力などの政府開発援助を実施している。
 この政府開発援助については、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、十箇国の八十一事業について現地調査を実施した。その結果、四事業において、予算の不足により関連事業が計画どおり進ちょくしていなかったり、供給されている電力の電圧等が不安定であったりなどしたため、援助の対象となった施設が十分稼働しておらず、援助の効果が十分発現していないと認められた。
 今後の援助に当たっては、相手国の自助努力の実現可能性等を見極め、必要に応じて適時適切な助言を行ったり、援助対象事業の内容等を十分検討したりするなどの要がある。
D 農業農村整備事業に係る公共工事の入札・契約制度の運用について
 農業農村整備事業に係る補助事業の執行に関して、北海道等一部の地方公共団体で不適切な事態が判明した。そこで、農業農村整備事業に係る公共工事の入札及び契約状況について検査したところ、特に地方公共団体において少額の発注が多いこともあり、新入札制度(一般競争、公募型指名競争、工事希望型指名競争)の導入・実施が低調で、依然としてその大宗が従来型の指名競争によっていた。そして、指名業者が特定の業者に偏っているなどの傾向がみられるとともに、落札比率も新入札制度に比べ高率になっていた。一方、北海道における入札・契約制度の改善措置は、競争性の確保等に一定の効果が認められており、他の地方公共団体でも、これを北海道固有の問題とするのではなく、自らの入札・契約制度の見直しにつなげていくことが望まれる。また、平成十三年四月に施行された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の適用等により、今後、入札・契約の適正化が促進されることが期待される。
E 公共事業の再評価について
 公共事業については、農林水産省、国土交通省等の各省庁、公団・事業団等及び地方公共団体において、事業採択後一定期間経過後で未着工の事業や長期にわたる事業等を対象に、改めて事業の必要性等について評価を行う再評価システムを平成十年度から導入していて、十二年度までの間に一万千九百九十三件の事業について再評価が行われた。
 この公共事業の再評価がどのように実施・運用されているか検査したところ、各省及び各公団等は、各省の定めた再評価の実施要領等に基づき、また、各都道府県等は各省の要請により独自に定めるなどした再評価の実施要領等に基づき、学識経験者等で組織された第三者委員会の意見を聴取するなどして再評価を実施していた。
 公共事業の再評価については、新たに制度化された政策評価制度の枠組みの中で引き続き実施するものとされている。その実施に当たってはさらに、@農林水産省では、再評価の時点で費用対効果分析の算定基礎となった要因が変化した場合には、その数値により改めて費用対効果分析を行うこと、A国土交通省では、十三年七月に新たに定められた実施要領の着実な実行とともに、この改正によりさらに重要となった事業の進ちょくの見込みの判断を的確に行うこと、B都道府県等では、再評価を実施する事業の要件、費用対効果分析等の取扱いが区々となっているが、国庫補助事業の事業主体として今後一層その質の向上に努めること、が望まれる。
F 新潟県刈羽郡刈羽村における電源立地促進対策交付金事業の施行について
 新潟県刈羽郡刈羽村が電源立地促進対策交付金六十四億余円を受けて実施した生涯学習センター(ラピカ)の建設事業及び運動広場の整備事業について、様々な問題点が提起されていることを踏まえて検査したところ、生涯学習センター建設事業は、茶道館がしゅん功図等と出来形との間に多数の相違があるなどしていて交付金の交付目的に沿った施設となっていなかったり、本館等の一部の施工がしゅん功図等と相違していて不適切であったり、委託した施工監理業務がその目的を達していなかったりなどしていた。また、運動広場の整備事業は、多目的広場の盛土内に産業廃棄物が混入しており、混入が広範囲に及んでいるとすれば、その利用に支障が生じるなどのおそれもある。なお、このうち生涯学習センター建設事業の一部については「個別の検査結果」に不当事項として掲記した。
 このような事態が生じていたのは、同村において大規模な事業を実施するには事業実施体制がぜい弱であったこと、東北通商産業局において審査確認や指導監督が十分行われていなかったことなどによる。資源エネルギー庁においては、前記事態の是正を図るとともに、今後、この種事態の再発を防止するため、適正な事業執行を確保するための体制の整備を図ることなどが必要である。
G 中小企業金融安定化特別保証制度の実施状況について
 中小企業金融安定化特別保証制度における保証審査に当たっては、簡易、迅速を優先して審査を緩和し、申込者がネガティブリストに掲げられた一定の事由に該当しない限り保証を承諾することとされた。
 そこで、信用保証協会においてネガティブリストに基づいて適切な審査が行われていたかなどに着眼して制度の運用実態を検査するとともに、中小企業総合事業団における保険収支の動向について検討した。
 その結果、検査した十二の協会において、粉飾決算の疑いを見過ごしたり、高利借入や税金の未納を見過ごしたりなどしていて、ネガティブリストに掲げられた項目の審査が十分でない事態が見受けられた。現在までの事故率は想定されたペースを下回っているが、経済状況は一層厳しさを増しており、加えて、今後の主要金融機関による不良債権処理が代位弁済の動向に影響を及ぼす懸念もある。また、回収については、無担保で第三者保証人のないものが多いことから、現時点の経済状況では想定の回収率に達する見込みは厳しいと言わざるを得ない。
 各協会では保証承諾後の期中管理、代位弁済後の求償権に基づく回収業務が増加していることから、その体制強化が望まれる。
 一方、事業団の保険収支は、平成四年度から既に保険金支払額の増大と回収納付金額の低い伸びにより赤字が続いており、十一、十二両年度は最終損失の処理のため、本制度に係る財政措置額を含む中小企業信用保険準備基金(資本金)を連続して減額している。今後、特段の措置が講じられなければ、損失を処理するための基金に不足を生じる事態も懸念される。
H 地域振興整備公団の産炭地域振興事業について
 地域振興整備公団が実施している産炭地域振興事業(土地等造成事業、融資事業、出資事業及び工業用水道事業)については、新規着手は平成十三年度をもって終了し、十四年度以降は、当分の間、それまでに造成した土地・施設等の管理及び譲渡を行うこととされた。
 この事業について、土地等造成事業を中心に検査したところ、次のような状況となっていた。
(ア) 土地等造成事業については、近年、土地需要の減退等により分譲実績が低迷していることから、なお多くの未分譲地が残されている。今後この未分譲地の売却処分が長期化した場合には、管理費用の累増や地価の一層の下落リスクを通じて事業の採算性が大きく損なわれるおそれがあり、未分譲地の分譲をなるべく早期に完了することが望まれる。
(イ) 融資事業については、延滞債権の回収に最大限努めつつ適切な債権管理を行うこと、出資事業については、多くの出資会社の経営が安定していない状況となっているため、経営状況を的確に把握し、必要に応じて助言等を行うこと、また、工業用水道事業については、給水能力に対する契約給水量の割合の向上に努めるとともに、地元地方公共団体への移管を円滑に行うことが望まれる。
I 核燃料サイクル開発機構の予算執行について
 核燃料サイクル開発機構の予算執行に関して不適切な事態がある旨の報道等を受けて、同機構及び文部科学省では、事実関係の調査を行い、適切を欠く実態が明らかになった。これらの調査結果を踏まえて検査した状況は次のとおりである。
(ア) 文部科学省の調査内容に関連した事項
  同機構では、毎年度、予算定員と実員にかい離が生じていたり、給与の実支給単価が予算給与単価を上回っていたりしていた。また、主務大臣の認可を得ずに、補助金部門の役職員給与のうち不要となった分を出資金部門の事業費に流用したり、出資金部門の事業費を補助金部門の退職金に流用したりしていた。
(イ) 本院が独自に検査した事項
  同機構では、認可予算で計上されていない地元協力金を実施計画のみに基づき支出していて、この中には、対象事業費の多寡にかかわらず毎年定額を支出したり、対象事業やその使途の内容が明確でないまま支出したりしているものがあった。また、固定資産税等について納付額が過大となっているものがあったほか、消費税についても過大な負担をする結果となっていた。
 したがって、今後は、予算執行に係る職員の意識を高め、内部統制を充実強化するなどして、再発を防止し、適切な予算執行を行うための体制整備が求められる。
J 関西国際空港の設置運営及び関西国際空港株式会社の経営状況について
 関西国際空港の利用状況と需要予測、関西国際空港株式会社の経営状況と経営予測及び運営状況について検査したところ、次のような状況となっていた。
(ア) 需要予測は会社設立時、事業費見直し時、二期事業決定時などに数回行われているが、開港初年度の航空輸送需要の程度やその後の需要の伸びを大きく見込むなどした結果、実績は予測を下回っている。
(イ) 経営予測についてもこれまで数回行われているが、需要予測に基づき収益を大きく見込んだり、当初の想定より一期事業費の投資が増えたりしたことなどの結果、経営成績の実績は予測を下回っていて、単年度黒字化の経営上の目標は達成できていない。そして、繰越欠損金が多額に上っている。
 また、会社では需要予測及び経営予測の根拠資料の多くを保存しておらず、予測の妥当性を分析し検証することは困難となっている。
(ウ) 会社は多様な関連事業を行っているが、網羅的、継続的な事業部門別損益の把握は行っていない。本院の試算によればホテル事業等は赤字となっていて、事業運営が会社の損益に寄与していない。
 したがって、今後は、前記の状況を踏まえ、特に需要の将来動向を一層的確に予測した上で、需要の規模と発現時期に対応する施設整備を行うとともに、的確な経営予測と償還計画に基づいて、適切な事業運営を行うことが望まれる。
K 基盤技術研究促進センターにおける出資事業について
 基盤技術研究促進センターの主な出資事業は、複数の企業等が出資し設立する研究開発プロジェクト会社に対して出資し、その研究開発の成果による特許収入等から出資金の回収を図るというスキームの下に実施されてきたが、出資金の回収が困難となったことなどから、センターは解散し、基盤技術研究に関する支援事業は通信・放送機構及び新エネルギー・産業技術総合開発機構によって、新たなスキームで実施されることとなった。
 このような状況を踏まえ、出資先会社の経営・財務の状況などについて検査したところ、基盤技術研究の事業化には多大なリスクがあることに加え、競合する企業間で実用化段階まで共同研究を続けることが困難であるなどの事情から、事業化が進んでいないことにより、特許収入等が少ないため各社とも膨大な繰越欠損金を抱えていた。この繰越欠損金がそのまま欠損金として処理されると、センターは出資金のほとんどを損失処理することとなる。
 新たな支援事業では、共同出資・共同研究方式を単独企業も対象とする委託方式に改めるなどスキームは変更されたが、研究成果の活用を促進するためには、事業化の可能性を適切に評価し、的確に採択や継続の適否を判断することが肝要である。また、研究成果による収益の発生を的確に把握する方策を検討していくことが望まれる。
 一方、センターにあっては、出資先会社の経費が収入を上回っている現状の下で、残余財産の減少を防ぐために速やかに解散手続を進める要があるが、その際には、特許権等の成果及び株式の処分価額について適正を期すことも肝要である。
L 旅客鉄道株式会社の駅及びその周辺におけるバリアフリー化の状況について
 平成十二年にいわゆる交通バリアフリー法が制定され、鉄道事業者等に対し、駅のバリアフリー化を推進するための措置等を講ずることなどが要請されている。
 駅及びその周辺のバリアフリー化を推進するJR各社及び地方公共団体が実施したエレベーター等の整備状況について検査したところ、JRと地方公共団体との協議が整わなかったり、地方公共団体の財政上の事情等から総合的・一体的な整備が実施されていなかったり、駅舎の構造上の問題等から多大な費用と時間が必要となり整備が遅れていたりなどしている事態が見受けられた。
 したがって、今後、国において、鉄道事業者側の施設と地方公共団体側の施設とを一体としてバリアフリー化を図ることができるよう指導・助言等を行うとともに、より一層の財政支援が可能となる制度などを充実させること、また、JR各社を含む鉄道事業者及び地方公共団体において、相互に緊密に連携し調整を図ることなどに留意していくことが望まれる。
M 国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金について
 国は、公益法人等の団体に補助金等を交付して資金を造成させ、国民生活又は産業の特定分野等を対象として、社会経済情勢や貿易構造等の変化によって生じた急激な変化を緩和する事業、経営の安定あるいは合理化等を促進するための事業などを実施させている。
 平成十二年度末現在、設置後一年以上を経過している資金は八府省の五十六法人九十四資金あり、これらの資金について検査した状況は次のとおりである。
(ア) 資金設置後の経過年数については、二法人二資金において、事業終了後も資金を保有していたり、期間の経過に伴って資金の事業目的が変化したりしていて、事業終了後は直ちに資金を返納させるなどの措置を執る必要がある。
(イ) 事業の実績については、十七法人十八資金において、実績が全くない又は継続的に少ない状況となったり、ピーク時と比べて低調となったり、財源の減少に伴い実績が減少したりなどしていて、事業の在り方を総合的に見直す必要がある。
(ウ) 資金の保有量については、六法人七資金において、使用見込みのない資金を保有していたり、追加造成によって資金が滞留していたりしていて、資金の保有規模、追加造成方法等を見直す必要がある。
 これらの事態は、低金利情勢下で資金の利点がそがれていることなど社会経済的な要因にもよるが、事業の終期が明確でなく、目的達成度を判定する仕組みも組み込まれていないなど、資金の制度及び運営面に起因する点もある。
 したがって、事業の運営に関し検討すべき点が見受けられた資金については、早急に見直すとともに、今後の事業の実施に当たっては、適時適切に見直しを行い、需要に留意して造成を行ったり、サンセット方式を導入したりするなどの必要がある。
N 財投機関の決算分析について
 本院の必要的検査対象のうち国の財政投融資の対象となっている四十五法人の債務は、平成十二年度末現在で三百六兆円に及んでいる。これら財投機関に対する資金供給については、従来、財投機関の調達資金の大半が政府資金であったが、十三年四月の財政投融資改革により、今後は財投機関債の発行により民間資金の割合を高めていくことになったことなどから、財投機関は事業運営の効率化と財務内容の充実に努め、市場の信認を得ることが必要となっている。
 これらの状況を踏まえ、財投機関の元年度から十二年度までの決算に基づき、特に資金調達と財政負担の状況を中心に検査したところ、多くの財投機関では、バブル崩壊後の経済環境の変化を背景として、資金の調達と運用の期間のミスマッチ、繰上償還や延滞債権等の増加、資産効率の低下、市場価格の変動等による資金回収の長期化等のリスクを抱えるに至っている。そして、さらなる財政負担を回避するために、これら金利リスク、信用リスク、価格変動リスク等に適切に対応し、安定的な財務基盤を構築することが、喫緊の課題となっている。
 したがって、財投機関が市場の信認を得て円滑に民間資金を調達し、財政負担にできるだけ依存しないで安定的に事業を運営していくためには、損失を生じさせるおそれのあるリスクを的確に評価するとともに、契約における競争性の進展を図るなど業務改善に努めていくことが必要である。

第2 観点別の検査結果

 会計検査院は、第1節の<第1 検査の方針>で述べたとおり、正確性の観点、合規性の観点、経済性・効率性の観点、有効性の観点といった多角的な観点から検査を実施した。その結果は<第1 事項等別の検査結果>で述べたとおりであるが、これらの事項等について、検査の観点に即して事例を挙げると次のとおりである。

1 主に業務が予算、法令等に従って適正に実施されているかに着眼したもの
 検査対象機関は、予算、法令等に従って適正に業務を実施しなければならない。この業務の執行に際し、予算、法令等が守られているか、さらには予算、法令等の趣旨に適合した制度の運用が行われているかに着眼した検査の結果として次のようなものがある。
@ 会計に関する事務を処理する職員は、予算や会計法令等の定めるところに従って、収入の受入、経費等の支払、契約の締結、給付の確認等の事務を適正に行うとともに、その経理処理を正確に行い、必要な記録は確実に整理保管すべきものであるので、これらが予算や会計法令等に従って適正確実に行われているか、また、適正確実に行うような事務処理体制が執られているかを検査した。その結果、「収入印紙等の売渡に当たり、省令等に違反して支払保証のない小切手を受け入れたため、売渡代金の回収が困難となっているもの」及び「在外公館における会計経理が適正を欠くと認められるもの」を掲記し、「内閣官房報償費の執行等について」、「報償費の執行について」及び「物品・役務調達契約について」として是正改善等の処置を要求した。
A 租税及び保険料は法令等に従って適正に徴収すべきものであるので、個々の徴収額に過不足がないかを検査した。その結果、「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」、「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」及び「労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」を掲記した。また、適正な徴収が行われていない事態について、それが制度の運用に起因していないかを検査した。その結果、「政府管掌健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の全喪処理について」として改善の処置を要求し、「所得税の青色申告において青色事業専従者給与を必要経費に算入する制度の運用を適切に行うよう改善させたもの」を掲記した。
B 老齢厚生年金等の支給は適正かを検査した。その結果、「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」を掲記した。
C 雇用対策のための給付金や助成金の支給が適正に行われているかを検査した。その結果、「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」や「中小企業雇用創出人材確保助成金の支給が適正でなかったもの」を掲記し、「休業補償給付等の受給者に係る求職者給付等の支給について」として是正改善の処置を要求した。
D 医療機関からの診療報酬や労災診療費の請求に対する支払が適正かを検査した。その結果、「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」及び「労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの」を掲記した。
E 補助金の交付申請や実績報告に係る経理が適正に行われているか、また、補助事業が適正に実施されているかを検査した。その結果、「国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの」や「次世代情報技術開発費補助金等の経理が不当と認められるもの」、「電源立地促進対策交付金の交付を受けた事業の実施に当たり、交付金の交付目的に沿った施設となっていないなどしていて、その施行が不適切となっているもの」を掲記した。
F 貸付金が貸付目的に従って適正に使用されているかを検査した。その結果、「介護保険制度への移行に伴い必要となる経営資金の貸付けが不当と認められるもの」を掲記した。

2 主に業務が経済的・効率的に実施されているかに着眼したもの
 検査対象機関の業務は、その事業目的を達成する上で、経済的・効率的に実施されなければならない。すなわち、経費は節減できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという観点であるが、この点に着眼した検査の結果として次のようなものがある。
@ 国が運営する医療機関において、診療報酬の請求が適切に行われ、収入の確保が図られているかに着眼して検査した。その結果、「大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術料等の請求額が不足していたもの」を掲記し、「大学病院における診療報酬請求に係る事務処理体制について」として改善の意見を表示した。
A 工事の設計や工事費の積算は経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「岸壁等の築造工事における基礎部の設計を経済的なものとするよう改善させたもの」や「トンネル工事における給排水設備費及びずり処理費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの」を掲記した。
B 物件の調達は経済的・効率的なものとなっているか、また、物件の賃借料や保守料の積算は経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「低速専用線回線終端装置に搭載する一般専用サービス用のパッケージについて、回線を収容していないものを活用することにより、購入費の節減を図るよう改善させたもの」や「地図管理システムの賃借料等の予定価格の積算が適切なものとなるよう改善させたもの」を掲記した。
C 役務の仕様は経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査が適切に行われるよう改善させたもの」を掲記した。また、公共サービスにおける料金割引制度を適切に利用して経費の節減を図っているかに着眼して検査した。その結果「衛星船舶電話の料金種別を使用実態に応じた経済的なものにして電話料金の節減を図るよう改善させたもの」を掲記した。
D 貸付金の貸付けや債務の保証において既往の取引状況等に対する審査が適切に行われているかなどに着眼して検査した。その結果、「貸付け又は保証に当たり、申込者との取引状況を把握して、審査を適切に行うよう改善させたもの」を掲記した。
E 株式会社における事業経営の効率性やその要因となる設備等の利用状況等に着眼して検査した。その結果、「公衆電話事業の運営について」を掲記し、「鉄道事業用地等の第三者占有について」として改善の意見を表示した。

3 主に事業が所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼したもの
 検査対象機関の事業の中には、一定の目的の下に、財政援助・助成措置を講じたり、社会資本を整備したり、財産を保有・活用したりなどしているものがあるが、これらが所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼した検査の結果として次のようなものがある。
@ 補助金により整備された公立小・中学校のコンピュータ教室が授業にどのように活用されているか、学校の利用態勢はコンピュータ教室の効果的な活用に資するものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、「公立小・中学校におけるコンピュータ教室等の効果的な活用について」として改善の意見を表示した。
A 軽費老人ホームのうちケアハウスの整備計画の策定や管理運営は適切に行われているか、事業は効果的に実施されているかなどに着眼して検査した。その結果、「ケアハウスの施設整備事業を実施するに当たり、国庫補助協議対象施設の選定基準を見直すなどして、事業を効果的に実施するよう改善させたもの」を掲記した。
B 農用地の流動化を推進しその利用集積を図るための補助事業が適切に実施されているか、また、実施するための態勢は整備されているか、そして、目的の達成に資するものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「農用地の流動化を推進するための事業の実施について」として改善の意見を表示した。
C 補助金により設置する米麦の共同乾燥調製施設等の効率的かつ効果的な利用のために、施設の計画時点における規模及びその決定過程が適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、「米麦に係る共同乾燥調製施設等について、利用に関する意向を適切に反映した施設の規模となるよう改善させたもの」を掲記した。
D 特定の高性能農業機械に係る農業近代化資金の貸付けが導入計画に即したものとなっているか、導入に係る利子補給が農業経営の改善に資するものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、「特定高性能農業機械の導入に対する農業近代化資金の利子補給に当たって、農業経営の改善に資するものとするよう改善させたもの」を掲記した。
E 林業経営の健全な発展等を図るために補助金を交付して造成させ林業従事者等に貸付け等を行う資金は、活用のための対策が講じられているところであるが、その造成額が適切かなどに着眼して検査した。その結果、「林業従事者等への貸付事業のため造成された林業改善資金について、貸付需要に見合った資金規模とするよう改善させたもの」を掲記した。
F 国道下に整備する光ファイバケーブルの収容空間は、道路管理用として使用するだけでなく、民間の電気通信事業者等に開放して光ケーブル網構築の支援を行うことも目的としていることから、同事業者等に対する開放状況及び利用状況に着眼して検査した。その結果、「国道下に整備されている光ファイバケーブルの収容空間の連続性を確保するなどして民間通信事業者等に対する支援の充実を図るよう改善させたもの」を掲記した。
G 治水施設の整備に流域対策を併せて治水上の安全を確保することとして実施されている総合治水対策について、特に流域対策に重点を置いてその実施状況を検査した。その結果、「都市部で実施されている総合治水対策について」を掲記した。


 言葉の履歴書

 ◇ペイオフ解禁

 金融機関に預けている預金は、預金保険制度により、その金融機関が破綻した場合でも、本年三月までは全額が保護されています。これは、平成八年からの特例措置として実施されているものですが、この三月には特例措置は終了します。
 四月以降でも、一つの金融機関ごとに預金者一人当たり元本一千万円までとその利息は保障されます。
 また、一千万円を超える部分は、破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われますので、受け取ることができるのは一千万円だけではありません。一千万円はあくまでも最低保障です。
 このように、四月からは原則に戻って、金融機関が破綻した場合に、元本一千万円までとその利息を超える部分がカットされる場合があるということ、これをペイオフ解禁と呼んでいます。なお、当座預金、普通預金などについては、来年三月末まで、引き続き全額が保護されます。



    <4月3日号の主な予定>

 ▽国土交通白書のあらまし………国土交通省 

 ▽月例経済報告(三月)…………内 閣 府 




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