官報資料版 平成14年4月3日




                  ▽国土交通白書のあらまし………国土交通省

                  ▽月例経済報告(三月)…………内 閣 府

                  ▽家計収支(十二月)……………総 務 省











平成13年度


国土交通白書のあらまし


国土交通省


 去る二月十五日、「平成十三年度国土交通白書」が閣議配布、公表された。本白書は、第T部「二十一世紀初頭における国土交通行政の課題と方向性」と、第U部「国土交通分野をめぐる政策課題への取組み」から構成されているが、紙幅の都合上、第T部のあらましのみを掲載する。

はじめに―改革への挑戦:二十一世紀型国土交通行政をめざして―

 国土交通省が誕生して約一年が経過し、今般、この間の国土交通行政の歩みを、国土交通白書として初めてとりまとめるに至った。
 内容は広範にわたるが、まずはじめに、本白書を執筆するにあたって最も基本となるべき国土交通省の責務と、国土交通行政に求められる方向性について述べる。

一 国土交通省の責務
 我が国は、世紀の節目と同時に社会経済の大きな変革期を迎えている。
 社会のあり方の基礎となる人口構造については、本格的な少子・高齢社会が到来しつつある。
 生産年齢人口の割合が減少する中で、いかに生き生きとした社会を実現するか、我が国の知恵が問われている。
 経済の面では、二十世紀後半のような右肩上がりの成長が期待できる時代から、より安定的な成熟型の時代への移行期を迎えた。例えば、地価も例外ではなく、本来その土地が有する収益力を拠り所とする、言わば、地に足がついた事業活動の展開が求められている。
 また、世界に目を転じると、地球温暖化への対応など、地球環境を大切にするという観点から、我々の行動様式を再構築することが強く要請されている。将来の人類のためにも、貴重な環境や資源の消費が厳しく監視される時代となった。
 このような転換期である新世紀の幕開けと時を同じくして、北海道開発庁、国土庁、運輸省、建設省の旧四省庁統合により、国土交通省が誕生した。この新しい組織に課せられた任務は、国土政策、社会資本整備、交通政策等を総合的に推進することである。すなわち、二十一世紀にふさわしい経済社会システムを確立していくために、かけがえのない国土をどのようにデザインすればよいのか、具体的なビジョンを描き、各種の基盤整備や交通政策などを総合的に融合・展開して、そのビジョンを具体化していくことである。
 言い換えると、これら国土交通行政の推進により、新しい時代においても国民や企業が持つ潜在力を自由に発揮できるよう、活動の「場」、「空間」を整えていくこと、それが国土交通省が果たすべき役割である。
 それでは、この役割を果たすため、具体的にはどのような目標に向かって進んでいくべきであろうか。国土交通省では、統合にあたり、広く国民の意見を伺いながら、変革の時代に新組織が一体となって任務を遂行するための標となるべき国土交通行政の目標として、次の五つの項目を設定した。
 @自立した個人の生き生きとした暮らしの実現
 A競争力のある経済社会の維持・発展
 B安全の確保
 C美しく良好な環境の保全と創造
 D多様性ある地域の形成
 こうした組織全体の目標の設定など誕生の経緯や統合の主な成果については、第T部第一章で紹介する。
 続く第二章では、二十世紀を振り返り、戦後の社会資本整備や交通政策の展開が、我が国の経済発展や国民生活の質の向上に大きく貢献してきたことを見る。一方で、新世紀に移行した現在、@高度経済成長期のひずみなど二十世紀から残された課題や、A経済の活性化、地球規模で深刻化する環境問題、少子・高齢社会の到来など近年顕在化してきた課題等、国土交通省が取り組むべき課題が山積していることを確認する。
 第U部ではこれらの課題を十二項目に整理し、克服に向けての具体的な取組みを課題別に紹介する。省を挙げてこうした取組みに力を注ぎ、「五つの目標」を達成して国民の期待に応えることこそが、二十一世紀の国土交通省に課せられた責務に他ならない。

二 二十一世紀型国土交通行政に求められる方向性
 国土交通行政を取り巻く社会経済環境が大きく変化しつつある中、これら多数の課題に的確に対応していくためには、これまでの行政の進め方にとらわれることなく、以下のような視点に立って、新たな取組みを進めていかなければならない。
(1) 効果、効率を重視した政策展開
 成熟社会を迎え、財政状況も厳しさを増す中で、多くの課題に対応するためには、できるだけ低いコストでより大きな効果をもたらす取組みを、よりスピーディーに進めていくことが強く求められる。
 そのためには、
 @旧四省庁統合のメリットを活かし、総合力を発揮することにより、効果的・効率的に施策を展開する
 A施策の効果を的確に評価し、施策の重点化を図る
 B施策の実施に伴う手続きの合理化、簡素化を進める
 C民間で可能な分野については、民間活力を積極的に活用する
 D特に社会資本整備の分野では、既存ストックの有効活用やライフサイクルコストも含めた総合的なコスト縮減に取り組む。また、交通分野では、安全や環境等を重視した事後チェック型行政を着実に実施していく
ことが必要である。
(2) 国民の視点に立った政策展開
 二十世紀の我が国の経済は、世界にも類を見ない高度経済成長を達成した。しかし、その反面、経済力に見合った豊かさを国民が十分に実感できないということが大きな政策課題として残った。
 九〇年代以降、経済の低迷が長引く現在、我が国は二十一世紀にふさわしい経済社会の構築を目指している。この努力が実り、新たな発展軌道を歩み始めたときには、発展の成果を国民が十分に実感し、享受できるような仕組みを構築しなければならない。そのためにも、国民の視点に立った政策展開が不可欠である。
 具体的には、
 @政策評価に関する事項など、情報の公開を積極的に進める
 API(パブリックインボルブメント)、社会実験など政策実施の早い段階からの住民参加を進める
 B地域住民やNPOが、積極的に参加できる仕組み作りを進める
 などにより国民に開かれた行政を展開することが必要である。
(3) 幅広い視野に立った政策展開
 近年、国内では、国と地方の役割分担を見直し、地方分権を進めることが大きな課題となっている。一方、国外に目を転じると、あらゆる分野での国際交流が活発化し、「グローバル化」が急速に進展している。今後の国土交通行政にとっても、こうした国の内外での環境変化への対応が欠かせない。
 このため、
 @地方の自主性と創意工夫を尊重した政策展開を進める
 A国際社会に対して、日本発の提案を積極的に行うなど主体性の発揮に努める
 など、幅広い視野に立脚して、課題に取り組んでいくことが必要である。

三 改革への取組みの決意
 こうした方向での取組みを進めるためには、従来型の行政手法を抜本的に改革し、新たな発想に立った二十一世紀型の国土交通行政の体系へと再構築していく必要がある。
 そのためには、国土交通行政に携わる職員一人ひとりが、国土交通行政の究極の目的は国民の幸せの実現であることを常に意識し、自らの変革に積極的に取り組むこと、そして、ストックの有効活用などハード面での対応と新たな仕組みの構築などソフト面での対応を積み重ねていくなど、新たな発想に立って創意工夫を凝らすことが大切である。
 国土交通行政の「聖域なき改革」に、国土交通省が一丸となって取り組み始めている。具体的な内容については、第T部第三章で紹介する。
 改革は未だ途上であり、新たな潮流を的確に分析・把握するとともに、広く国民の意見を取り入れながら二十一世紀にふさわしい新たな仕組みの一層の整備・充実を図り、国土交通省に課せられた使命をしっかりと果たすことができるよう、英知を結集していかなければならない。

第一章 国土交通省の誕生

[国土交通省の誕生]
 平成十三年一月六日、北海道開発庁、国土庁、運輸省、建設省の旧四省庁は統合し、国土交通省に生まれ変わった。

 <国土交通省の任務>
 「国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、気象業務の健全な発達並びに海上の安全及び治安の確保を図ること」(国土交通省設置法第三条)

 国土交通省の任務をまっとうするためには、省全体が共通の認識の下に、総合的で整合性のとれた政策展開を図る必要がある。
 このため、統合に先駆けて、広く国民の意見も聴きながら、「国土交通省の使命、目標、仕事の進め方」の策定作業を進め、一月三十日に公表した。

[統合の成果]
 国土交通省は、旧四省庁がそれぞれ蓄積してきた経験や実績を持ち寄り、融合させることによって、これまで以上に効果的な政策展開に取り組んでいる。
○「二十一世紀国土交通のグランドデザイン(案)」の策定
 全国十ブロックで開催した地方懇談会での議論を原点として、国土交通の将来像とビジュアルマップから構成される「二十一世紀国土交通のグランドデザイン(案)」を作成し、平成十三年六月に公表した。
 これは、@旧四省庁統合のメリットを活かし、創造的で活力のある二十一世紀の国土の具体的な姿を国民に示す、Aより透明で重点的・効率的な所管事業の計画・実施に向けた、公共事業の不断の改革に取り組むための国民的な議論をする、との観点からとりまとめたものである。
○融合・連携施策の推進
 旧四省庁の縦割りを廃し、他省庁との連携・調整を含めた総合性を発揮することにより、質の高い施策を無駄なくスピーディーに展開するため、融合・連携施策を推進している。

第二章 国土交通行政の課題

第一節 戦後の我が国経済社会の発展と国土交通行政の貢献

[戦後の国土基盤の形成と成果]
 戦後、我が国の国土基盤整備の動向を概観すると、時代ごとの政策課題に応じて、その重点を、国土保全基盤から産業基盤、そして生活関連基盤へと移しつつ、経済の成長とともに着実に進展してきた(第1図参照)。
 その結果、我が国の国土基盤は着実に整備され、安全、交通、生活関連といった各分野で成果を挙げてきた(第2図第3図参照)。
 また、日本経済全体に対しても、社会資本ストックの充実が経済成長に大きな貢献を果たす「社会資本の生産力効果」が機能してきた。
 国際的に見ると、歴史的背景や社会経済情勢、地勢的、自然的差異のある諸外国と単純に比較することはできないものの、未だ整備水準が低い分野もあるため、今後ともさらなる整備を推進していく必要がある(第1表参照)。
 その際、厳しい財政制約と投資余力の減少や既存ストックの維持・更新コストの増大などの環境の変化に対応する必要がある。

[交通体系の形成と成果]
 戦後の国土交通行政では、経済・社会発展のボトルネックを生じさせないための輸送力拡大が最優先の課題であり、様々な施策により交通体系の形成、輸送力の増強が図られてきた。
 この結果、まず鉄道や海運による輸送力が拡大し、その後、自動車交通、航空輸送が従来の交通機関と競争を繰り広げながら急速に拡大した(第4図参照)。
 このような国内交通ネットワークの整備の結果、日帰りで交流可能な範囲が大幅に拡大するなど、国内の交流機会が拡大してきたが、大都市圏を中心に多数残存している交通のボトルネックの解消が課題となっている。
 また、国内観光も発達してきたが、近年国内観光は低迷しており、観光まちづくりの推進や旅行の促進等に取り組んでいく必要がある。
 国際輸送の分野では、旅客輸送を航空が、貨物輸送を海運がそれぞれ中心的に担いながら、ネットワークが発達しつつあるが、ハード面・ソフト面とも国際輸送の基盤が大きく立ち遅れており、この解決が国際交流機能を確保する上で大きな課題となっている(第5図第6図参照)。
 また、我が国からの海外旅行者数に比べ海外からの訪日外国人旅行者数は極めて少なく、国際交流の拡大を通じ、その増加を図ることが特に必要である。
 交通機関相互の関係に着目すると、各輸送機関がそれぞれの輸送特性を発揮し、互いに競争、補完しつつ、ネットワークを形成してきている。また、こうした分担関係は、新規交通サービスの提供等によりダイナミックに変動している(第7図参照)。
 これまでは、輸送機関毎の量的な拡大に重きが置かれ、異なる交通機関の連携が十分に推進されてきたとは言い難い。国際社会の中で日本が競争力を確保していくためにも、今後は、異なる交通機関の連携を推進し、国内・国際ネットワークがスムーズに接続された、総合的な交通体系を構築していく必要がある(第8図参照)。

第二節 二十世紀の負の遺産

 前節で見たとおり、戦後の国土交通行政は大きな成果を挙げてきたが、現在なお多くの課題に直面している。
 第一に、高度成長に伴って、都市問題、公害・環境問題、新たな安全問題等の社会的問題が生じた。これらは二十世紀に一定の改善を見たものの、多くが二十一世紀まで引き継がれ、国土交通省が解決すべき行政課題として残っている。
 第二に、これらに加え、近年新たな課題が顕在化してきた。これについては次節で述べる。

[都市における生活環境の悪化と都市交通問題]
 高度経済成長期に、人口、産業等の都市への集中が急速に進展した結果、都市住民の生活環境の悪化や交通混雑等の都市交通問題が深刻化した。
 こうした問題点は一定の改善が見られる部分もあるが、依然として解決に至っておらず、引き続き対応が求められている。

[地方の活力の低下]
 地方圏では、労働力人口の都市への流出による生産力の低下や高齢化の進展、中心市街地の衰退などによる活力の低下が問題となった。所得格差などは縮小しつつあるものの、依然として個性ある地域づくりなどによる地方の活性化は重要な課題となっている。

[公害・環境問題の顕在化]
 高度成長期には、自動車による大気汚染、航空機や新幹線による騒音、河川や湖沼の水質汚濁等の公害が発生し、油タンカー事故や不法投棄による海洋汚染が深刻化するなど、環境問題が顕在化してきた。積極的な取組みがなされた結果、一定の改善が見られるものの、大都市地域における自動車による大気汚染や閉鎖性水域の水質汚濁等、依然として様々な課題が残されている。

[安全問題]
 道路交通の分野では様々な対策により一定の成果を収めたものの、最近においても死傷者の絶対数は増加している。鉄道・海上・航空交通の分野でも成果が見られるが、大量輸送機関の事故は、一度発生すると多大な被害をもたらすので、引き続き事故の防止に万全を期する必要がある。
 また、高度成長期に新たに市街化された地域を中心に、木造密集市街地の形成や河川周辺低地への人口・資産の集積など、都市防災面から脆弱な都市が形成された。
 これらの安全問題への対応は、依然として重要な課題である。

第三節 近年新たに顕在化した課題

 前節で述べた諸課題に加え、世紀の節目である近年、新たに様々な課題が顕在化している。

[構造変化に伴う日本経済の長期低迷と財政赤字の大幅な拡大]
 バブル経済崩壊後の景気低迷は、日本経済の本質の変化を伴うものであり、雇用に対する不安、財政収支の悪化などによる国民の将来不安の高まりが景気の抑制要因となっている。デフレスパイラルへの懸念を払拭し、二十一世紀における新たな成長の展望を切り開くためにも、日本型社会システムの変革が不可欠となっている。
 こうした中、社会資本整備重点化、効率化、民間投資の誘発や規制改革による経済の活性化等が求められている。
 交通分野は他分野に先んじて規制改革等が進められ、価格低下等により利用者にメリットをもたらしている。今後、さらなる規制改革とともに、市場原理のみでは対応できない問題への対応が必要である。
 物流についてみると、規制緩和をはじめとする取組みにより、物流コストは着実に低下しているが、我が国の国際競争力を維持するためコストも含めて国際的に競争力のある物流市場の構築が必要である。
 観光産業は二十一世紀のリーディング産業の一つになることが期待されるが、我が国においては、その規模は国際的に比較して低い水準にある。今後は訪日外客誘致や国内観光の振興により、観光産業をリーディング産業に育成していくことが必要である(第9図参照)。
 バブルの崩壊以降、地価は下落が続いているが、その過程で、利便性・収益性に対応した地価が形成されてきている。この間、都市部においても依然多数の低・未利用地が存在している。
 土地の流動化を進め、土地の利用価値を増進し、有効・高度利用を図ることが、国土交通行政の大きな課題の一つである。

[グローバル化の進展]
 近年、人やモノの国境を越えた交流が飛躍的に高まり、特に経済の分野では、熾烈な大競争時代の様相を呈している。国土交通行政の分野では、まず、国際交流や国境を越えた企業活動を支えるため、地球規模の交通ネットワークを構築することが必須不可欠である。
 また、国家の競争力を高めるための高度な国際交流・物流基盤整備、経済の中心である大都市の国際競争力を高めるための総合的な都市再生策、産業の国際競争力を高めるための産業活性化策等が必要である。
 さらに、グローバル化に伴い顕在化してきた地球規模の課題へ、多国間・二国間それぞれの分野での積極的な取組みが必要である。

[地球規模で深刻化する環境問題]
 二十世紀の終盤以来、地球環境問題の顕在化等により、環境問題は拡大・深化してきた。
 国土交通省においては、運輸部門におけるCO排出量削減や、民生部門のうち大きな割合を占める住宅・建築物分野の省エネルギー化への取組み等を推進する必要がある(第10図参照)。

[自然共生型国土の構築と市民参加の高まり]
 次世代により良い環境を引き継ぐためにも、持続可能性、自然との共存、ゆとり、生物の生息・生育空間の保全などの理念を主軸に、環境への負荷が小さく、持続可能な社会の基盤となる国土を形成することが重要である。
 国民の環境への関心は高まってきており、今後、自然再生事業を行う市民団体等と連携を図りながら、社会資本整備を進める必要が生じている。

[少子・高齢社会の到来]
 今後は特に、行動に不自由を感じることの多い七十五歳以上の後期高齢者が増加することから、バリアフリー化の推進をはじめ、高齢者が生き生きと暮らせる生活空間の創出に、より一層の貢献をする必要がある(第11図参照)。

[IT革命の進展]
 ITは行政・企業から日常生活まで、地球規模で大きな変革をもたらしつつある。
 我が国はITの活用が他の国々より遅れている分野も多く、国土交通行政も、公共交通の情報化やITS、GISなど、関連分野で積極的に対応することが必要である。

[安全・危機管理への意識の高まり]
 我が国の「安全神話」は二十世紀終盤より揺らぎを見せ始め、自然災害についても、近年の人知を上回る規模の災害により、甚大な被害を被っている。特に、阪神・淡路大震災は様々な面で「安全の確保」の重みを再認識させた。また、交通機関の事故災害や地下鉄サリン事件等、従来にない凶悪犯罪への対策・体制強化が課題となっている。
 さらに、米国同時多発テロ事件を踏まえ、交通機関、重要施設に対するテロ対策の強化・安全確保とともに、航空、鉄道等の重要システムに対する電子的な攻撃(サイバーテロ)等への備えも必要である。
 国際的には、不審船事件等が発生し、我が国に直接的な脅威をもたらしている。
 国土交通行政としては、これまでの経験から得られた教訓を二十一世紀の安全対策に活かすとともに、新たな脅威への備えも万全なものとするため、危機管理体制を強化する必要がある。

第三章 二十一世紀型国土交通行政への改革

 前章で概観した二十世紀の負の遺産の解消や、近年新たに顕在化した課題にも的確に対応するため、以下のように国土交通行政を改革していく。

第一節 公共事業改革

 国土交通省としては、最近の公共事業批判に冷静かつ謙虚に耳を傾け、客観的に検証し、改めるべきは躊躇せず改めるとの決意の下、「基本方針」(十三年六月二十二日閣議決定)及び「改革と展望」(十四年一月二十五日閣議決定)に示された方針を踏まえつつ、これまでの事業のあり方、進め方等全般をゼロベースで見直し、聖域なき改革に自ら進んで取り組んでいくこととしている。

[公共事業をめぐる様々な論点]
○公共投資の規模
 最近の我が国の公的総固定資本形成の対GDP比率は欧米より高いのは事実である。
 このことは、社会資本整備の歴史が浅い我が国で社会資本整備を短期間に進めてきたことや、国土利用上の厳しい条件に耐え得るため、社会資本整備の必要性や整備費用が相対的に高くならざるを得ないことを反映したものである。
 また、近年の財政収支の悪化は、公共投資のみならず、社会保障関係費の増大や税収の減少等複合的な要因があいまって招いたものであるが、厳しい財政事情の中、公共投資についても聖域なき見直しが必要となっている(第12図参照)。
 公共投資の景気拡大効果は低下しているとの指摘があるが、九〇年代を通じて公共投資は景気の下支えの役を果たしており、雇用面でも建設業は、その受け皿として機能してきた(第13図参照)。
 公共投資が減る場合、建設業就業者の円滑な労働異動を促進する一方で、建設企業の新分野等への進出の支援による雇用確保・創出等を図ることが、地方圏において特に重要である。
○公共投資の配分、硬直性
 公共投資の分野別、地域別配分が硬直的でニーズに対応できていない、長期計画のために硬直化している、等の指摘がある。
 先に見たように、長期的には公共投資の目的別シェアは大きく変動しており、また、同じ事業分野の公共事業であっても、情報化への対応等、時々の新たな課題への対応に重点を置き、事業の内容は変動している。地域別配分についても、地域のニーズに応じてメリハリをつけてきているが、今後はさらに的確に地域のニーズに応えていく必要がある。
○長期計画のあり方
 社会資本整備プロジェクトは長期間を要するものが多く、計画的かつ着実に進めることが必要である。また、長期計画は、現在も一定の意義を有するものである。一方、長期計画により、経済社会の変化等を迅速に事業に反映することが困難になっているという面もあり、抜本的見直しを図る必要がある。
○公共事業の効率、効果、進め方
 個々の公共事業プロジェクトについて、その需要予測や効果、コスト、手続きの透明性などについて様々な指摘がある。
 これまで、事業の必要性や効果を説明する努力が不十分な面もあったことは否定できない。今後は、事業の必要性・効果のわかりやすい説明に努めるとともに、事業の重点化を図るなど、新たな発想で効率性を追求していかなければならない。
 借入金により整備を行い、利用者の負担(料金)により返済を行う方式については、財政制約の下で緊急に整備を進める上で有効な手段である。しかし、需要予測が実績と乖離した場合には、国民の負担になるとの懸念が指摘されているため、需要予測の精度向上の努力が必要であるとともに、採算性の検証や情報開示を一層進めることが必要である。
 コストについては、我が国の国土構造等から、公共事業のコストを押し上げる要因は少なくないが、条件を同じにした上で米国と比較すると、コストにほとんど差がない状況となってきている。
 引き続き、公共事業のコストを総合的に縮減していく努力が重要である。

[公共事業改革への取組み 〜二十一世紀型社会資本整備への転換〜]
○改革に取り組む決意と基本理念
 前述のとおり、二十一世紀に国土交通省が対応すべき課題は山積しており、その解決のためには社会資本の整備が不可欠である。その一方で、投資余力の減少、財政状況の悪化、維持更新需要の増大等が見込まれている。こうした中、社会資本整備に大きな責任を負う国土交通省が、その使命をまっとうするためには、広く国民と意見交換を行いながら、限られた資源で最大限の効果をもたらすよう、社会資本整備のあり方を抜本的に改革することが不可欠である。また、政府全体で聖域なき構造改革に取り組んでおり、公共事業についてさらに徹底的な見直しを行い、改革への取組みを一層促進・展開していく決意である。
 このため、平成十三年六月には「国土交通省における公共事業改革への取組」をとりまとめた。この方針に沿って、二十一世紀にふさわしい、真に国民のための公共事業を、
 ・無駄なくスピーディーに、また、コストの縮減に努め、
 ・地域のニーズに応じ、地方の自主性と創意工夫を尊重し、
 ・透明性の一層の向上により国民の信頼を得ながら、
展開している。
○二十一世紀型分野への社会資本整備の重点化
 二十一世紀の課題に対応し、社会資本の整備を効果的に推進するため、@都市の再生と個性ある地域・美しい国土の形成、A環境にやさしい社会の実現、B少子・高齢社会への対応、Cグローバル化の進展に対応した人流・物流の実現、D安全で災害に強い国づくり、の各分野で、重点的に事業実施を図る。特に、以下のような事業分野について、重点的に見直し検討を行った(第2表参照)。
(見直し検討項目)
 ・新規の都市開発事業について既成市街地の事業に重点をシフト
 ・小規模下水道事業について、経済性、効率性等の観点から、合併浄化槽等との分担の見直し
 ・大規模ダム事業について実施計画調査の新規着手を凍結。事業中のダムについて、既存のダムの有効活用を含め、水需要の必要性等を厳正に吟味して事業を峻別
 ・高速自動車国道の未事業化区間について採算性等を精査し、整備手法を見直し
 ・公営住宅等の整備について民間借上げやリフォーム等、既存のストックを最大限活用
 ・新たな地方港湾の整備について抑制
 ・今後の地方空港の新設について、離島を除き抑制
○国民に開かれた透明な公共事業
 早い段階からの住民参加を充実させるため、PIや事前説明会などに関するガイドラインの作成に向けた検討、「社会実験」の実施など、様々な形での住民参加の工夫に努めている。
 また、国土交通省所管公共事業に共通の事業評価実施要領を策定し、公共事業の客観性、透明性の向上を図っている。併せて、入札・契約の適正化の促進により、公共工事に対する国民の信頼性の確保等に努めている。
 さらに、平成十三年四月より「入札契約適正化法」が施行され、地方公共団体も含めた発注者全体を通じて、入札・契約の適正化を促進している。
○公共工事におけるコスト改革
 平成十三年三月、コスト縮減のための具体的施策を盛り込んだ「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」を策定し、総合的なコスト縮減に取り組んでいる。
 さらに、コスト縮減対策を一層推進するため、平成十三年九月四日の「改革先取り施策パッケージ」に、(a)工事の平準化の推進、(b)新技術活用の推進、(c)電子入札の前倒し実施、(d)その他(入札時における競争性の向上等)の四項目が、「公共事業コスト改革の推進」として盛り込まれた。
 以上のほか、@PFIの推進、住宅整備における市場機能の活用など民間投資の誘発・活用、A既存ストックの有効活用や長寿命化など質の高い社会資本の整備、B地方整備局長への委任や統合補助金の創設・拡充など地方の発案・創意の尊重等に取り組んでいる。
 また、土地収用制度について、事前説明会・公聴会の義務付け等、手続きの透明性・公正性を向上させるとともに、収用委員会審理の合理化等により、手続きに要する時間の短縮等が図られるよう見直しを行った。
 さらに、分野別長期計画など基本的制度のあり方について見直しを進めている。

第二節 二十一世紀型交通政策への転換

[交通政策の基本的考え方]
 近年、交通分野では、民間活動を可能な限り市場原理に任せ、行政の関与を必要最小限とするとの原則に立ち、人流・物流のほぼ全事業分野で、需給調整規制が廃止された。しかし、市場は万能ではない。市場原理の活用を促進し諸課題の解決を図っていくためには、以下の領域で、行政が積極的役割を果たしていく必要がある。
○市場原理を活用するための環境整備
 事業者が活発に競争できるよう、市場環境を整備するため、行政は、@公正な競争の促進、A新たなサービス創出の支援、B交通事業の基盤整備、等に取り組む必要がある。
○市場原理の活用のみでは十分対応できない課題への対応
 市場原理の活用によるだけでは対応できない分野では行政が一定の役割を果たすことが必要である。
 具体的には、@安全の確保、A環境にやさしい交通の実現、B都市交通対策や過疎地域等における円滑な交通の確保、Cバリアフリー化等少子・高齢社会への対応、D異なる交通機関間の連携・調整の強化と観光の促進、E消費者利益の保護、などの課題について行政が責任を果たす必要がある(第14図参照)。

[転換の方向性]
@二十一世紀型交通政策の総合的展開
  陸・海・空のそれぞれの交通を総合的に捉え、観光行政とも連携させながら展開する。
A地域と一体となった公共交通政策の展開
  まちづくり等と一体となるなど、一層地域に密着した交通政策を展開する。
B二十一世紀の課題への総合的対応
  環境問題等二十一世紀の課題に対し、交通機関の違いを超えた交通政策全体として、他分野とも連携して総合的に対応する。
C事後チェック型行政の確立
  規制緩和の動向を踏まえつつ安全や消費者利益を確保できるよう、「事前チェック型」の行政を「事後チェック型」行政に転換する。
D二十一世紀型交通政策にふさわしい地方運輸局の実現
  前記@〜Cの政策の転換を、地域においても的確に実施していくための地方運輸局の業務及び組織の見直しを進めている。

第三節 新たな流れに対応した行政手法の改革

 新たな流れを踏まえ、国土交通行政全体として、国と地方公共団体の関係の再構築やNPO等市民団体との連携の推進、情報公開の推進等に取り組むほか、以下のような手法の見直しや改革を進めている。

[マネジメント改革を指向した本格的な政策評価の導入]
 「政策の企画立案→実施→評価→政策の改善」という政策のマネジメントサイクルの確立に向け、「事前評価」、「業績測定」、「プログラム評価」の三つの方式からなる政策評価システムを導入した。
 これまでに、平成十三年一月三十日に「国土交通省政策評価実施要領」が策定され、五月には「平成十三年度政策評価運営方針」を定めている。
 また、平成十三年八月には、概算要求等に関わる三十八の新規施策について事前評価を実施するとともに、政策の達成度を測定するため二十七の政策目標、百十二の業績指標(五年以内の目標値を含む)を決定、公表した。

[地球規模の課題に対するイニシアティブの発揮]
 グローバル化の進展に伴い、地球規模の課題が様々な領域で顕在化している。これらに対して、従来からの枠組みだけでは、必ずしも十分な対応ができない状況となりつつある。例えば、国土交通分野では、IMO(国際海事機関)、ICAO(国際民間航空機関)等で調整が行われてきたが、国土交通の視点を軸に据えた関係各国の議論がますます求められている。
 このため、国土交通行政を軸とした政策形成のための新しい国際フォーラムの構築に対し、日本が積極的にイニシアティブを発揮して対応していく必要がある。

[国土計画のあり方の見直し]
 平成十三年十一月、国土審議会基本政策部会により、国土計画の新たな役割を「良好な国土の継承への総合的国土管理指針」と位置づけた中間報告がとりまとめられた。
 今後は、同審議会での検討を踏まえ、二十一世紀に向けた新たな要請に応え得る国土計画体系の確立を目指す。

[特殊法人等改革]
 平成十三年十二月十八日、特殊法人改革推進本部で決定され、翌十九日に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」では、百六十三の特殊法人及び認可法人を対象とし、事業及び組織形態の見直し内容が個別に定められた。
 今後は、その具体化に向けて積極的な取組みを講じ、改革が前進するよう努めていく。




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月例経済報告(三月)


―景気は、依然厳しい状況にあるが、一部に下げ止まりの兆しがみられる―


内 閣 府


総 論

(我が国経済の基調判断)

 景気は、依然厳しい状況にあるが、一部に下げ止まりの兆しがみられる。
 ・設備投資は、大幅に減少している。失業率が高水準で推移するなど、雇用情勢は厳しさを増している。
 ・個人消費は、横ばいとなっている。
 ・輸出は下げ止まりつつあり、生産にも下げ止まりの兆しがみられる。
 先行きについては、厳しい雇用・所得環境や企業収益の動向などが、今後の民間需要を下押しする懸念がある一方、対外経済環境の改善や在庫調整の進展が、今後の景気を下支えすることが期待される。

(政策の基本的態度)

 政府は、構造改革を断行する一方で、デフレスパイラルに陥ることを回避するために細心の注意を払い、日本銀行と一致協力して、デフレ阻止に向けて強い決意で臨む。
 政府としては、二月二十七日に、不良債権処理の一層の促進、金融システムの安定、資本市場対策、実効ある中小企業への貸し渋り対策など、早急に取り組むべきデフレ対応策について整理を行ったところであり、今後とも経済金融情勢の変化に即応していく。また、平成十三年度補正予算等の着実な実施を図るとともに、平成十四年度予算の早期成立に努める。
 なお、日本銀行においては、二月二十八日に、年度末に向けて金融市場の安定確保に万全を期すため流動性需要の増大に応じ一層潤沢な資金供給を行うこと、長期国債の買い入れを月一兆円ペースに増額すること等を決定した。

各 論

一 消費・投資などの需要動向

 平成十三年十〜十二月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、民間最終消費支出がプラスに寄与したものの、民間企業設備がマイナスに寄与したことなどから、前期比で一・二%減(年率四・五%減)となった。また、名目GDPの成長率は前期比で一・二%減となった。

◇個人消費は、横ばいとなっている。
 個人消費は、需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいとなっている。
 このところ一部の業種や支出項目において増加の動きがみられるものの、全体を下支えするような力強さを伴うものではない。この背景としては、所得面で弱い動きが続いていることに加えて、消
費者マインドも低水準にあることが考えられる。
 需要側の動向をみると、昨秋以降、底固さがみられる。消費総合指数は三か月前と比べ増加している。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、食料などが増加しており、全体では、平成十三年十二月の大幅な減少を打ち消す増加となった。
 販売側の動向をみると、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額とチェーンストア販売額は、弱い動きが続いている。家電販売金額は、パソコンが引き続き前年を大きく下回っていることなどから、前年を下回っている。旅行は、国内旅行は前年を上回っており、海外旅行は減少幅を縮小してきているものの引き続き前年を大幅に下回っている。
 一方で、百貨店販売額は、昨夏以降一進一退の動きを続けており、均してみれば下げ止まりの感がある。新車販売台数は、軽乗用車に引き続き新型車投入効果がみられることなどにより、前年を上回っている。
 個人消費の動向を左右する家計収入の動きをみると、定期給与(所定内及び所定外給与の合計)は引き続き前年を下回っており、弱い動きが続いている。
 現金給与総額は引き続き前年を下回っている。また、この冬のボーナスの支給動向について特別給与の動きでみると、前年を大きく下回っている。
 消費者マインドは、大きく悪化した後も改善がみられず厳しい状態にある。

◇設備投資は、大幅に減少している。
 設備投資は、生産の減少、企業収益の鈍化等を背景に、平成十三年に入って以降、減少が続いている。
 需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成十三年に入って以降、減少が続き、十〜十二月期には減少幅を拡大している。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、平成十三年に入って以降、減少が続いている。なお、ソフトウェア投資は、増加基調を続けている。
 設備投資の今後の動向については、日銀短観の平成十三年度設備投資計画において製造業、非製造業ともに減少が見込まれていること、機械設備投資の先行指標である機械受注が、平成十三年一〜三月期以降、減少基調で推移し平成十四年一〜三月期も減少の見通しとなっていることなどからみて、減少が続くものとみられる。

◇住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。
 住宅建設は、平成十三年に入り、貸家は増加したものの、これまで堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移したことなどから、年間を通じておおむね年率百十五〜百二十万戸で推移した。この結果、平成十三年の住宅建設は、前年比四・六%減の百十七万四千戸と、平成十年以来三年ぶりに百二十万戸を下回る低い水準となった。
 この背景としては、雇用・所得環境が厳しさを増していること、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下していることがあると考えられる。
 一月は、持家、貸家、分譲住宅のすべてが増加したため、年率百二十四万五千戸となったが、先行きについてみると、住宅金融公庫融資の申し込み戸数が減少傾向にあることなど、住宅着工を減少させる要因が引き続きみられる。

◇公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共投資は、総じて低調に推移している。国の平成十三年度第二次補正後予算をみると、公共事業関係費では前年度を大きく下回った。ただし、「国債発行額三十兆円以下」の方針の下、安易な国債増発によることなく、政府の保有資金を最大限活用した「改革推進公共投資」特別措置の実施により、国費で公共事業一兆五千億円、施設費一兆円の計二兆五千億円の社会資本整備のための無利子貸付けを行うこととしており、この特別措置のほか、施設費を加えた公共投資関連予算ベースでみると、ほぼ前年度並みを確保している。
 地方の投資的経費は、厳しい財政状況を反映して引き続き前年度を下回っている。
 このような状況を反映して、十〜十二月期の公共工事請負金額は11四半期連続で、大手五十社受注額も4四半期連続で前年を下回った。七〜九月期までは順次マイナス幅が縮小する傾向にあったが、十〜十二月期はいずれも再び拡大している。
 一〜三月期の公共投資については、一月の公共工事請負金額などの指標も前年を下回っており、地方の投資的経費の減少傾向が続いていることなどを踏まえると、引き続き前年を下回ると考えられる。

◇輸出は、下げ止まりつつある。輸入は、横ばいとなっている。貿易・サービス収支の黒字は、やや増加している。
 輸出は、世界的なIT関連の在庫調整の進展などによって電気機器がおおむね横ばいとなり、また、一般機械の減少幅も縮小するなど、全体に下げ止まりつつある。
 アジア向け輸出は、一部、旧正月の影響によって上押しされている可能性があるものの、電気機器、一般機械を中心に緩やかに増加している。アメリカ向け輸出は、電気機器、一般機械の減少幅が縮小していることに加え、自動車が引き続き堅調に推移していることから、おおむね横ばいとなっている。EU向け輸出は、ヨーロッパの内需低迷を背景に減少が続いている。
 先行きについては、ヨーロッパの景気が一段と減速しているものの、為替レートの円安傾向やアメリカにおける景気底固めの動きなど対外経済環境の改善が、我が国輸出を下支えする要因になるとみられる。
 輸入は、IT関連を中心とした国内の在庫調整の進展によって機械機器の輸入が横ばいとなったことなどから、全体として横ばいとなっている。
 地域別にみると、アジアからの輸入は機械機器を中心に増加している。ただし、このところの中国からの食料品と繊維製品の増加については、一時的な要因も含まれている可能性がある。EUからの輸入は増加している。アメリカからの輸入は、機械機器を中心に減少している。
 国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、やや増加している。輸出数量が下げ止まりつつあることや、原油輸入価格の低下が輸入金額を下押ししていることなどが、黒字幅の拡大に寄与している。

二 企業活動と雇用情勢

◇生産は、下げ止まりの兆しがみられ、在庫率も低下している。
 鉱工業生産は、昨年初めから大幅に減少していたが、このところ減少幅が小さくなっている。輸出が下げ止まりつつあることや、在庫調整が進展していることなどを考慮すると、生産に下げ止まりの兆しがみられる。
 ただし、設備投資の減少が続くとみられることなど、懸念すべき点もあることには留意する必要がある。なお、製造工業生産予測調査によると二月は増加、三月は減少が見込まれている。
 一方、第三次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。

◇企業収益は、製造業を中心に大幅に減少している。また、企業の業況判断は、一層厳しさが増している。倒産件数は、高い水準となっている。
 企業収益は、「法人企業統計季報」によると、平成十三年に入って以降、人件費の削減ペースが鈍化してきたこと、売上高の増収幅が縮小してきたことなどにより、全体としては頭打ちとなっていたが、平成十三年七〜九月期以降は売上高も減収に転じ、電機機械などの製造業を中心に大幅な減益となった。また、「法人企業動向調査」によると、十〜十二月期における大中堅企業の経常利益の判断(前期比「増加」−「減少」)は、製造業を中心に大幅な「減少」超となっている。
 企業の業況判断について、「法人企業動向調査」の業界景気の判断(前期比「上昇」−「下降」)をみると、一層厳しさが増している。電気機械など一部の業種で改善がみられたものの、全体としては「下降」超幅が拡大している。
 また、一月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで一千五百四十三件になるなど、高い水準となっている。

◇雇用情勢は、厳しさを増している。完全失業率が高水準で推移し、求人や賃金も弱い動きが続いている。
 一月の完全失業率は、前月比〇・二%ポイント低下し、五・三%となった。男性については、失業者数が減少し、完全失業率は低下したものの、男女ともに労働力人口が減少し、非労働力化がみられた。完全失業者については、非自発的な離職による者の増加幅が引き続き拡大している。
 新規求人数は、前月比、前年同月比ともに減少しており、弱い動きが続いている。製造業の残業時間については、生産に下げ止まりの兆しがみられていることを反映し、前月比で増加となった。「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、十〜十二月期は上昇している。
 賃金の動きをみると、現金給与総額、定期給与は前年を下回っており、弱い動きが続いている。賞与の動向についても、十一〜一月の特別給与合計額は、前年を下回っている。

三 物価と金融情勢

◇国内卸売物価は、下落幅が縮小している。消費者物価は、弱含んでいる。
 輸入物価は、このところ、契約通貨ベースでは下落しているものの、円ベースでは円安を背景に上昇している。国内卸売物価は、下落幅が縮小している。
 最近の動きをみると、既往の原油価格低下の影響を受けて化学製品が下落しているものの、非鉄金属が上昇していることに加え、石油・石炭製品の下落が一服したこと、在庫調整の進展などにより電気機器の値下がり幅が縮まっていることから、全体としては下落幅が縮小している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
 消費者物価は、平成十二年秋以降、弱含んでいる。
 最近の動きをみると、一般サービスはやや上昇しているものの、耐久消費財の下落などにより一般商品は下落していることから、全体としては下落している。
 こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

◇金融情勢については、株式相場は上昇した。
 短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、二月は、日本銀行による金融緩和措置を反映して、〇・〇〇一%で推移した。
 二、三か月物は、昨年四月以降、低位での推移が続いているが、三月決算期末を控え、このところやや上昇している。長期金利は、八月中旬以降ほぼ横ばいで推移したが、一月にやや上昇した後、二月は、ほぼ横ばいで推移した。株式相場は、十月以降ほぼ横ばいで推移した後、一月から二月上旬にかけて下落したが、中下旬に上昇した。
 対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、十一月上旬の百二十円台から、一月下旬に百三十四円台まで下落した後ほぼ横ばいで推移し、二月は、百三十二円台から百三十四円台で推移した。対ユーロ円相場(インターバンク十七時時点)は、十一月中旬の百七円台から、一月上旬に百十八円台まで下落した後ほぼ横ばいで推移し、二月は、百十四円台から百十七円台で推移した。
 マネタリーベース(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に、伸びを高めている(二月:前年同月比二七・五%増)。M+CD(月中平均残高)は、このところ、流動性預金の伸び率が上昇したことなどから、若干伸びを高めている(二月速報:前年同月比三・七%増)。
 民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、九六年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移してきたが、このところ横ばい圏で推移している。なお、企業の格付等に応じた資金調達条件の格差が、このところ拡大している。

四 海外経済

◇ヨーロッパでは一段と減速しているが、アメリカでは底固めの動き、アジアでは製造業を中心に回復への動きがみられる。
 世界経済をみると、ヨーロッパでは景気は一段と減速しているが、アメリカでは底固めの動き、アジアでは製造業を中心に回復への動きがみられる。
 アメリカは、景気に底固めの動きがみられる。
 個人消費は持ち直している。住宅建設は増加傾向にある。設備投資は引き続き大幅に減少しているが、製造業受注に改善の動きがみられる。企業の景況感は改善している。IT関連部門では、在庫調整の進展から生産が増加するなど、生産は下げ止まりつつある。雇用は持ち直している。物価は、このところエネルギー価格の下落を受けて弱含んでいる。
 ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は後退している。フランスでは、景気は一段と減速している。イギリスでは、景気は減速している。
 アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落傾向にある。韓国では、景気は回復の動きがみられる。
 金融情勢をみると、ドルは、二月上旬にやや弱含んだが、おおむね増価基調で推移した。三月に入ってやや減価した。アメリカの株価は、アメリカ経済の回復期待などから上昇基調で推移したが、企業会計への不信感などから一部に軟調な動きがみられた。
 国際商品市況をみると、原油価格は、中東情勢の不透明感やアメリカ経済の回復期待などから、やや強含んだ。





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消費支出(全世帯)は実質六・六%の減少


―平成十三年十二月分家計収支―


総 務 省


◇全世帯の家計

 前年同月比でみると、全世帯の一世帯当たりの消費支出は、平成十三年四月以降六か月連続の実質減少となった後、十月、十一月は二か月連続の実質増加となったが、十二月は実質減少となった。
 また、一人当たりの消費支出は十一万一千九百六十七円で、前年同月に比べ実質六・一%の減少となった。

◇勤労者世帯の家計

 前年同月比でみると、勤労者世帯の実収入は、平成十三年七月、八月に二か月連続の実質減少となった後、九月以降三か月連続の実質増加となったが、十二月は実質減少となった。
 また、消費支出は、平成十三年四月以降六か月連続の実質減少となった後、十月、十一月は二か月連続の実質増加となったが、十二月は実質減少となった。

◇勤労者以外の世帯の家計

 勤労者以外の世帯の消費支出は、一世帯当たり三十一万二千八百二十八円となり、前年同月に比べ、名目一〇・八%の減少、実質九・三%の減少となった。

◇季節調整値の推移(全世帯・勤労者世帯)

 季節調整値でみると、全世帯の消費支出は前月に比べ実質六・〇%の減少となった。
 勤労者世帯の消費支出は前月に比べ実質六・九%の減少となった。










国税専門官採用試験受験者募集

  国税庁

 人事院・国税庁では「国税専門官採用試験」の受験者を募集しています。

【国税専門官とは】
 国税庁は、歳入予算の約六割を占める内国税の賦課・徴収を行う官庁で、国の財政基盤を支える重要な仕事をしています。その中で国税専門官は、国税局や税務署において、税のスペシャリストとして法律・経済・会計等の専門知識を駆使し、次のような事務を行います。
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 国税専門官採用試験に合格し、採用されると、まず、税務大学校和光校舎(埼玉県和光市)において約四か月の専門官基礎研修を受けます。この研修で、税法をはじめ法律学・会計学等仕事に不可欠な基礎知識を学んだ後、それぞれ採用された国税局管内の税務署に配属され、国税に関する調査や指導などの事務に従事します。
 税務署で実務経験を積んだ後、再び税務大学校において約七か月の専科研修を受けます。この研修では、国税専門官として必要な高度の専門知識、技能を修得します。採用後、研修や実務経験を経た後、国税専門官(国税調査官、国税徴収官など)に任用され、その後、税務署や国税局等での勤務を経て、努力次第で税務署長あるいは国税局の部・課長等へ昇進することができます。

【国税専門官を志す方へ】
 国税専門官採用試験は、毎年一回実施されており、今回で三十三回目を数えます。学歴は問いませんが、大学卒業程度の学力が必要です。
 税務のスペシャリストとして活躍したいという希望に燃えた若い皆さんの応募をお待ちしています。
 なお、今年の国税専門官採用試験の受験資格及び試験要項等は、次のとおりです。

【国税専門官採用試験要項】
○受験申込受付期間
 @郵送申込の場合 四月二日(火)〜五月九日(木)
 A窓口申込の場合 四月三十日(火)〜五月九日(木)
 ・受付時間 九時〜十七時(土・日及び祝日等の休日は除く)(申込書の提出は、できるだけ郵送にしてください。五月九日消印有効)
○申込書請求先…最寄りの国税局(沖縄国税事務所)又は人事院地方事務局(人事院沖縄事務所)
○申込書提出先…第一次試験地を所轄する国税局(沖縄国税事務所)
○試験日
 ・第一次試験 六月十六日(日)
 ・第二次試験 八月十九日(月)又は八月二十日(火)のうち指定する日
○第一次試験地…札幌市、仙台市、秋田市、高崎市、さいたま市、東京都、新潟市、松本市、名古屋市、金沢市、京都市、大阪市、松江市、岡山市、広島市、高松市、松山市、福岡市、熊本市、鹿児島市、那覇市
○第二次試験地…札幌市、仙台市、さいたま市、東京都、名古屋市、金沢市、大阪市、広島市、高松市、福岡市、熊本市、那覇市
 (注)試験地については受験に便利な一都市を選んでください。
○第一次試験合格者発表日…七月二十六日(金)
○最終合格者発表日…九月十一日(水)
○受験資格
 @昭和五十年四月二日〜昭和五十六年四月一日生まれの者
 A昭和五十六年四月二日以降生まれの者で次に掲げる者
  (1)大学を卒業した者及び平成十五年三月までに大学を卒業する見込みの者
  (2)人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者
○試験の程度…大学卒業程度
○過去の採用者数…四百十五名(平成十三年)、四百十八名(平成十二年)、五百三十一名(平成十一年)
 (注)各年四月一日付の採用者数を示しています。
○問い合わせ先
 詳細については、最寄りの国税局人事第二課(沖縄国税事務所人事課)試験担当係へご照会ください。
 ※国税専門官募集の情報については、国税庁ホームページ内の採用案内でご覧になれます。
 ・国税庁ホームページ
  http://www.nta.go.jp/
 また、タックスアンサー(コンピュータが答える税金電話相談)でも採用案内の情報を提供しています。
 ・タックスアンサー
  コード番号9300、9302



    <4月10日号の主な予定>

 ▽景気予測調査(二月)………………財 務 省 

 ▽毎月勤労統計調査(十二月)………厚生労働省 




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