官報資料版 平成14年4月24日




                  ▽国民生活白書のあらまし………内 閣 府

                  ▽労働力調査(一月)……………総 務 省











国民生活白書のあらまし


―家族の暮らしと構造改革―


内 閣 府


<国民生活白書について>

 国民生活白書は、国民生活の現状や過去の動向を国際比較、地域比較、所得階層比較などの方法を用いて総合的に調査分析することにより、その実態と問題点を明らかにし、もって国民生活の安定向上を図るための政策の企画立案に資することを目的として、昭和三十一年度から国民生活白書を作成し、三十八年度からは閣議に配布した後、公表している。また、今回の平成十三年度で四十五回目となる。
 平成十三年度国民生活白書は、「家族の暮らしと構造改革」という副題の下に、「家族」を切り口として、国民のライフスタイルに関する検討を行っており、去る三月二十六日(火)の閣議に配布し、同日、公表した。

◇分析の視点

 以下の三つの視点から「家族」を切り口として国民のライフスタイルを考察する。

一 近年、少子高齢化の進展や人々の価値観の多様化等にともない、「家族」に関する考え方も多様になってきている。この結果、家族形成や国民のライフスタイルのあり方について、多様な選択があり得るようになってきた。しかしながら、そうした多様な選択のための条件が整備されていない分野も残されている。特に、家族の「働き方」にかかわることは、選択肢はいまだ限定的である。
 このような条件の不備は、人々の自由な家族形成の妨げになっていると考えられ、未婚率の上昇や少子化という問題にもつながっている。
 現在、政府が推進している構造改革は、家族の働き方を柔軟なものに変え、人々が自由で多様なライフスタイルの実現をもたらす上で、極めて重要なものと考えられる。

二 従来から、家族が担ってきた子どもを産み育てる機能や高齢者を介護・扶養する機能にも変化がみられる。
 子育てや高齢者の介護・扶養といった分野は、家族や地域社会の果たしていた機能が低下する中、これらの機能を補うための方策が求められる分野である。高齢者については、すでに介護や扶養を社会全体で支えるしくみが整えられているが、子どもを育てるという面では十分とはいえない。これまで家族や地域によって支えられていた子育てを、社会全体で支援していくことが必要である。
 このような取組みは、深刻化する少子化の問題への対応としても重要である。現在、政府が進めている構造改革の柱の一つとなっている子育て支援は、このような観点から重要である。

三 少子高齢化とともに、ITの普及も家族や国民のライフスタイルに大きな影響を与えている。
 ITの活用は、時間や場所に制約されることなく家族の事情等に応じて柔軟に働くことを可能としたり、安心して子育てや高齢者の介護等を行うことを可能にする。また、ITを有効に活用することにより、家族の精神的な結びつきを強めることも可能である。
 IT化の推進は、家族が抱える生活上のさまざまな構造的問題を解決するための有力な手段の一つと考えられる。

第一章 家族を巡る潮流変化

【近年の家族を取り巻く経済社会状況の変化の中で、家族の変化の状況をその機能に着目して考察】

一 高度成長期に定着した夫がサラリーマンとして外で働き、妻はもっぱら育児等の家庭内労働を行う、という夫婦の役割分担に変化がみられる。すなわち、サラリーマン家庭の専業主婦が減少し、パートタイムなど雇用者として働く妻が増加している。
 また、サービス経済化の進展等による産業構造変化の中で、女性や高齢者等の就業インセンティブが上昇している。こうしたことから、女性や高齢者にとっても働きやすい環境が求められている。
 これは同時に、家庭内において主として妻によって担われてきた家事や育児についても、夫の積極的な参加が必要と考えられる。そのためにも、フルタイム就業者の就労時間の短縮や柔軟化が求められる(第1図参照)。

二 若年層を中心に、自由で多様な家族観を持つ傾向が目立ち、特に結婚することや子どもを持つことを必ずしも必要と考えない傾向がみられる。この要因としては、結婚することにより自由が制約されることや育児に対する負担等が影響していると考えられる。
 このため、特に、近年その負担の重さが指摘されている子育てについては、社会全体で支援することが重要である(第2図第3図第4図参照)。

三 高齢化の進展により、高齢世帯を中心として小世帯化が進行している。こうした中、家族が担ってきた高齢者の介護や扶養の機能については、社会全体で支えるしくみが出来上がっている。今後ともこのようなしくみを持続可能なものとしていくとともに、高齢者が過ごしやすい環境を整備していくことは重要な課題となっている。
 また、一口に高齢者といっても、健康面、経済面、そして社会参加への意欲の面等で多様となっているため、高齢者を一律に弱者として扱うのではなく、多様なライフスタイルを可能にする高齢期の自立支援が重要である。
 あわせて、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組みを進めるなど、年齢だけで高齢者を別扱いする制度、慣行等の見直しが重要である(第5図第6図第7図参照)。

第二章 家族の働き方の現状と課題

【家族の姿全体に大きな影響を及ぼす家族の働き方の現状と課題について考察】

一 高度成長期には、核家族化が進み、夫が家計を支えるために必要な労働(稼得労働)を中心的に担う一方で、妻が家庭内労働の大部分を行う形が定着した。
 こうした夫婦の働き方の現状についてみてみると、近年、パートタイム就業を中心として、雇用者として働く妻の割合が増加している。
 しかし、夫が稼得労働を主に担う一方で、妻が家庭内労働の大部分を行っているという状況に変化はみられない(第8図第9図第10図参照)。

二 こうした状況は、夫婦間の就業環境差や稼得能力差等、働き方を巡るさまざまな要因を踏まえた上での夫婦の選択の結果であると考えられるが、同時に、このような働き方以外を選択することが難しいことを反映していると考えられる。
 夫婦が働き方を自由に選択しにくい状況は、近年の経済社会環境の下で、夫一人の収入に大きく依存する家計の不安定化、稼得労働と家庭内労働を家族の中で分担できない世帯の経済的な困難、結婚や出産等家族形成を選択しない者の増加を通じた少子化の進展等のさまざまな問題を生じさせている(第11図参照)。

三 このため、家族の働き方が自由に選択できる環境が求められている。
 妻の就業選択について分析したところ、夫の働き方の柔軟化や社会的な保育の拡充によって妻の就業可能性が高まることが示された。これは、小世帯化や高齢化の進展の中で、誰もが状況に応じて働き方を自由に選択できるようにしていくためには、就業スタイルの柔軟化や家庭内労働の外部化・省力化の選択肢を拡大していくことが重要であることを示唆している(第12図参照)。

第三章 次代を担う子どもと家族

【社会的な保育の充実のための方策や育児中の就業者への支援状況について検討するとともに、子育てや子どもの学習を巡る状況について考察】

一 従来、子育ては親や祖父母等家族が行う活動として位置づけられ、近所の人等、地域に暗黙のうちに支援され成り立っていた。しかし、経済社会の変化や家族の多様化にともない、家族や地域の子育て機能は低下しており、社会全体で子育てを支えていくことが重要である。
 こうした中、保育所や幼稚園などはすべての子育て家庭を支援するために重要な役割を担うことが期待されている。また、地域の自主的な取組みを活性化し、地域で子育てを支える機能を回復していくことも重要である。
 さらに、我が国の社会経済状況の変化に対応して、子育て中の就業者に対する支援が求められており、保育所等の保育サービスの拡充を早急に実現するとともに、育児休業制度等必要な就業者支援策を充実していく必要がある(第13図参照)。

二 子どもの教育については、教育を受ける意欲と能力のある人に、確実に教育の機会が開かれる必要があるとともに、豊かで多様な人材を育てることが重要である。そのためには、奨学金の充実等個人の自助努力を支援する施策を充実する必要がある。
 また、多彩な教育理念に基づく私立の小・中学校の設置の促進や、公立学校の運営に地域が参画すること等、現在進められている教育分野での構造改革の推進が重要である(第14図第15図参照)。

第四章 ITの普及と家族

【急速に進展したIT化が、いかに家族の抱える問題を解決したり、生活の質の向上をもたらすかについて考察】

一 テレワークは、時間と場所に制約されることなく、個人の能力や家族の事情にあわせて働き方を選択することを可能にする。
 これは、女性や高齢者、障害者等、これまでさまざまな理由から就業することが困難であった人たちが、それぞれの事情や能力に応じて働くことを可能とするものである。

二 保育所にいる子どもの様子を画像で確認することができるサービスの提供や、育児関連の相談のためのインターネットのサイトの増加といった動きは、親子の孤立や、就業と子育ての両立が困難であることなどが指摘される中で、子育てを巡る問題の解決にも役立つ。
 また、高齢者の使いやすいIT関連商品・サービスの開発や、離れて暮らす高齢者の家族が、安否を確認しやすくするサービスの開発等は、急速に高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増える状況の中で、家族の介護機能の低下を補う手段となり得る。
 さらに、オンラインショッピングや遠隔医療、遠隔学習等の実現により、家族の生活の利便性や質は大きく高まるものと考えられる。

三 ITは家族のコミュニケーションを大きく変化させる。ITの普及には、家族の結びつきを強める側面と弱める側面の両面があるものの、有効に活用することによって、家族の精神的な結びつきを強めることが可能である(第16図参照)。

<むすび>

 本白書では、「家族」を切り口として、冒頭で述べた三つの視点から国民のライススタイルについて検討を行ってきた。
 第一の視点からの検討により、家族の「働き方」に関して選択肢が、いまだ限定的であることが最大の問題であることを明らかにし、その解決策として、構造改革によって、夫の働き方の柔軟化や社会的な保育の重要性を示した。
 第二の視点からの検討により、子育てや介護の分野を中心に、家族を社会全体で支援していくことの必要性を示すとともに、そのための具体的な施策や取組みとして、公的な支援のみならず、個人や地域の自発的な取組みの重要性を示した。
 第三の視点からは、テレワークの普及やITを活用した保育サービスの開発・普及などにより、働き方や子育てといった暮らしのさまざまな場面で、ITが、家族の抱える諸問題を解決するための有用な手段になり得ることを示した。
 本白書が、国民一人ひとりが自ら家族や生活のあり方について考え、また、今後のさまざまな課題に取り組む際の参考になることを期待する。

<補論 構造改革による「暮らしの改革」へ向けて>

 本年度の白書は、家族の視点から、国民の生活や意識についての考察を行った。この結果、働き方や子育てといった分野を中心に、暮らしの上で人々が抱える問題を解決するに際し、構造改革が重要であることが明らかになった。
 構造改革の重要な目的の一つは、国民一人ひとりに対し、暮らしのさまざまな場面でより多くの選択肢を提供するとともに、人々が生活していく上で抱えている課題を解決していくことである。
 政府は、構造改革を推進するため、いわゆる「骨太の方針」を決定するとともに、その内容を具体化して改革を進めるための道筋を示すものとして、平成十三年九月に「改革工程表」をとりまとめ、さらに、「構造改革と経済財政の中期展望」を策定し、日本が目指す経済社会の姿についての明確な将来展望を示した。
 平成十四年二月の経済演説においても、今後、改革を進めるにあたっては、「暮らしの改革」という視点に立って、未来に夢と希望が持て、安全で安心な暮らしが実現できることを示していくこととしている。
 「生活維新プログラム」を重要な柱の一つとして進められている構造改革は、働き方、子育て、環境といった分野を中心に、人々が生活する上でのさまざまな場面において、生活の質を高めるものである。
 そこで、現在進められている構造改革が、国民生活に対し、どのような変化をもたらし、「暮らしの改革」に結びつくかについて、近年特に問題とされている雇用、少子化、高齢化の三つの側面を中心にみていくこととする。

T 働き方に関する改革

 人々が暮らしていく上で、収入を得、生計を立てていくことは最も基本的なことである。そして、失業率の上昇が目立ったり、ライフスタイルの多様性が尊重されつつある近年において、人々が自分のスタイルで安心して働けることの重要性が再認識されている。
 そこでまず、この点について、今回の構造改革により、どのような変化がもたらされるのかをみていくこととする。

◇第一に、(1)年齢・性別にかかわりなく働けるようになり、また、(2)その働き方についても個人の就労意識・価値観に基づいて多様な選択ができるようになる。
 (1)については、改正雇用対策法の中で、募集・採用における年齢制限緩和の努力義務規定が制定されたことにより中高年齢者の働く機会が増えるということがある。
 また、男女雇用機会均等法の履行を確保することにより、男女とも同じ条件の下で仕事をすることができるようになるとともに、特に女性にとって働く意欲を阻害しないような社会保障制度や税制等の制度設計の見直しが進められる。さらに、育児休業等について定めた育児・介護休業法の履行を確保することにより、男女とも子育てをしながら働きつづけること等が容易になり、仕事と家庭の両立を図れるようになる。
 (2)の働き方の選択肢が広がるということについては、@有期労働契約については、契約期間の上限が三年とされている特例に関し、対象労働者の範囲の拡大や契約期間の上限を三年から五年に延長することについて、A派遣労働については、対象業務の拡大や派遣期間の延長(なお、同制度における派遣期間は一部の専門的、技術的な業務(三年)等を除いて原則一年であるが、中高年齢者については、その厳しい雇用情勢に鑑み、三年とする特例措置が平成十四年一月一日より施行されている。)も含めた制度全体の見直しについて、それぞれ検討することとされている。一方、B裁量労働制については、本社における企画・立案の業務等においても、労働者自身の裁量により労働時間の配分等を行うことができる柔軟な働き方ができるようになった。
 従来の制度の下では、個人や家族の事情に応じて働くことが困難であり、子育てや介護の負担を感じたり、家族との団らん時間を持てないなどの問題が生じていた。しかし、労働分野の制度改革や保育サービス等の充実の結果、人々は柔軟な働き方ができるようになり、また、仕事以外の生活時間をより上手に活用できるようになると考えられる。

◇第二に、離職者や転職者への支援強化等、総合的にセーフティネットの充実が図られることにより、離職時の生活の不安が軽減され、再就職もスムーズにできるようになる。
 離職時の生活については、新たに離職者支援資金が創設され、雇用保険制度の枠外にいる自営業者やパート労働者、雇用保険の求職者給付期間が切れたことにより生計の維持が困難になった世帯でも、失業に対するセーフティネットとして、生活資金の借入れが可能となる道が開かれた。
 また、会社が倒産した場合における未払賃金の一部の立替払制度において、その上限額の引上げが行われたり、平成十四年度予算において、最大十年の返済期間延長等を内容とする住宅金融公庫の住宅ローン返済の特例の適用も引き続き行われることになる。これらの施策は、現に失業している人々の生活の維持を可能とすることや、人々の失業に対する不安を軽減することにつながると考えられる。
 一方、企業のリストラ等により離職を余儀なくされた人々にとっては、円滑に再就職ができることが重要であるが、そのための施策の一つとして労働移動支援助成金が創設された。この制度は、「失業なき労働移動」の実現を目指す観点から、離職予定者に求職活動のための休暇を付与するなどの条件の下で、企業に助成金を支給するものである。このような施策によって、離職を余儀なくされた人が、失業を経ずして再就職ができる可能性が高まる。
 さらに、失業した場合についても、規制改革による民間職業紹介機関のいっそうの普及や公共の大規模な就職サポートセンターの設置等により、求職者が職業紹介を受ける機会が増えたり、求人情報を容易に入手できること等を通じて、再就職しやすくなる。

◇第三に、自己啓発等の努力によって自らが望む仕事に就きやすくなる。
 具体的には、教育訓練給付制度(厚生労働大臣が指定した講座を受けた場合にその費用を補助する制度)の整備等により、個人が自己啓発によるスキルアップを行いやすくなる。
 職業訓練の比重が企業内訓練から個人の自己啓発へと移って、個人が自分のキャリアを自分で決めるようになっていく方向にある中で、このような個人に対する自己啓発への支援策は、人々の職業選択の幅を広げる上で有効である。
 一方、再就職を目的とした能力開発の機会も拡充される。これについては、大学・大学院、事業主、NPO等あらゆる民間機関を活用した委託訓練が充実するとともに、求人者の人材ニーズに応じたオーダーメイド型訓練コースを開設することにより、求人者、求職者双方のニーズを的確に反映した職業訓練が実施されるため、中高年ホワイトカラー離職者等の早期再就職が容易になるというものである。
 また、失業給付の訓練延長給付制度(失業給付の受給資格者が、公共職業安定所長の受講指示により、公共職業訓練等を受講する場合、失業給付の所定給付日数を超えたとしても、訓練を受ける期間は基本手当を支給されるという制度)についても、その対象となる職業訓練の枠を拡大するなどの拡充が図られ、これにより、再就職が容易になると考えられる。
 なお、一定以上の収入を得られる管理職層等の求職者が、民間職業紹介所に自ら手数料を払って、自らのニーズに合致した紹介サービスを受けることが可能になる。また、個人のキャリア形成に関する相談(キャリアカウンセリング)のサービスも充実する。
 以上のような働くことを巡る改革は、いうまでもなく、雇用機会を拡大することにつながるが、さらに、現在進められている保育や介護等のサービス分野における規制改革も、これらの分野における事業の拡大や新規事業の創出を通じて、働く場の拡大に結びつくと考えられる。

U 子育てや教育における改革―少子化問題への対応―

 次に、我が国の社会に存在する大きな問題として、少子化があげられよう。この問題は、親や子どもといった個人の暮らしからみれば、子育てや教育に関わる問題と捉えることができる。そこで、これらについて、構造改革により、どのような変化がもたらされるかをみることとする。

◇第一に、仕事と子育ての両立が図りやすくなる。
 具体的には、新エンゼルプランの着実な実施、保育所待機児童ゼロ作戦の推進、放課後児童受入れ体制の整備および育児休業制度の定着があげられる。新エンゼルプランでは、延長保育・一時保育等を推進することにより、必要な時に利用できる多様な保育サービスの整備が促進される。
 保育所待機児童ゼロ作戦では、PFIやすでに実施した規制緩和措置の活用、公設民営の推進、幼稚園における預かり保育の推進等により、保育所等への児童受入数が平成十六年度までに十五万人分拡大され、また同時に、保育サービスの多様化も図られる。これにより、たとえば、送迎保育ステーションを利用したり、駅前の保育所に子どもを預けることによって通勤時間が短縮できる。
 また、以前であれば、仕事か子育てかの二者択一を迫られていた人たちにも、子どもを育てながら働くという選択が可能になる。一方、放課後児童受入れ体制については、平成十六年度までに全国で一万五千か所の放課後児童クラブができるように、整備が早急に進められる。これにより、保護者に代わり児童を事故や事件等の危険から守ることができるなど、働く親の負担感を緩和・除去し、安心して子育てができる環境がつくられる。

◇第二に、地域による子育て支援が積極的に行われるようになり、親が安心して子育てができるようになる。
 具体的には、新エンゼルプランにおける地域子育て支援センターや一時保育等の在宅児を含めた子育て支援策の推進があげられる。
 たとえば、子育て不安の解消のための相談や、一時的に親を育児から解放するための一時保育を実施する保育所の整備により、親は身近に子育てに関する相談相手を見出せるとともに、リフレッシュのための時間をつくることが容易にできるようになる。また、幼稚園における預かり保育や子育て相談等の子育て支援活動も行われる。
 さらに、小中学生を対象に、放課後や週末に学校の校庭や空き教室等の利用を可能にしたり、地域のスポーツ指導者や子育てを終えた中高年者の協力を募り、子どもの放課後や週末のさまざまな活動を支援するという取組みが強化される。
 この結果、親の子育て負担が軽減されるとともに、子どもたちが地域の大人との触れ合いの中で、心豊かな人間性を身につけたり、地域コミュニティの重要性を学ぶことができるようになる。特に一九六〇年代前後の高度成長期以来、小世帯化の進行に加えて、地域の子育て機能も低下してきた結果、親の子育てに対する不安感は増してきた。これを解消するためにも、地域で子育てをサポートすることは重要であると考えられる。

◇第三に、本人の意欲や能力に応じて、多様で質の高い教育を受けられる機会が提供される。
 まず、初等中等教育については、学校の評価システムを確立することにより、評価結果を踏まえた学校運営、教育活動の改善、評価結果の公開を通じて開かれた学校づくりが促進される。また、小・中学校の設置基準を明確化して私立学校を設置しやすくすること等により、多彩な教育理念に基づく小・中学校の設置が促進される。
 このような学校教育の透明化や多様化が進むにつれて、保護者や子どもが、学校の評価結果を踏まえたさまざまな意見を学校に伝え、学校がそれを踏まえて教育活動等の改善を図ることにより、子どもたちは、その適性や親の教育理念に合ったより良い教育を受けることができるようになる。
 一方、高等教育についても、大学に第三者評価による競争原理を導入し、重点的支援を行うこと等によって、国際競争力のある大学づくりが推進され、世界に通用する人材として活躍することも期待できる。また、二つ以上の専攻(メジャー)を取得できるようになったり、社会人が長期履修学生(修業年限を超えて柔軟に学びながら学位を取得する学生)として学び、キャリアアップを図ることもできるようになる。
 さらに、教育を受ける意欲と能力のある人が確実にこれを受けられるように、奨学金の充実や教育を受ける個人の自助努力を支援する施策の検討が行われている。

V 介護など高齢者を巡る改革―高齢化問題への対応―

 少子化の一方で、高齢化も急速に進行しており、高齢者の暮らしをどのように保障するかは重要な問題である。これらの構造改革により、高齢者の暮らしについてどのような変化がもたらされるかについてみることとする。

◇第一に、効率的で、わかりやすく、公平な社会保障制度が構築されること等により、人々の社会保障制度への信頼感が高まる。
 社会保障は、年金、医療、介護が主要な三本柱であるが、これらの効率的な組合せにより、重複給付の是正や機能分担の見直しが進められる。これにより、公平で、総合的にみて老後の生活の基本的な保障が確保される制度が構築される。また、高齢者は一律に社会的弱者とみなされるのではなく、経済的な負担能力に応じた応分の負担が求められることになる。さらに、働く意欲と能力のある人の就業を抑制しないような制度設計の見直し等が行われることにより、高齢者にとって働くことがよりメリットのあるものとなる。

◇第二に、より充実した介護サービスを受けられるようになる。
 介護サービスについては、二〇〇〇年度より開始された「ゴールドプラン21」に基づき進められている。具体的には、訪問介護員(ホームヘルパー)等の在宅サービスを担う人材の養成確保や、特別養護老人ホームや介護老人保健施設等の介護関連施設の整備が進められている。これにより、地域の実情や個人の事情に応じた介護サービスを受けることが可能になる。また、ケアハウスについては、設置主体を民間企業等に拡大し、PFI等を活用した公設民営型による整備の促進が図られる。さらに、中所得者を対象に、高齢者用施設で質の高いケアサービスが受けられるという「安心ハウス」が民間主体の多様なビジネスモデルで構築されることとなっている。

W さまざまな場面での「暮らしの改革」

 構造改革は、以上みてきた分野以外でも、さまざまな場面での「暮らしの改革」をもたらす。
 たとえば、不動産市場改革・都市再生分野の改革は、ライフステージ等に応じた住宅の住み替えを容易にしたり、人々に職住近接の生活を可能にしたりする。一方、循環型経済社会の構築を目指す改革の推進は、ごみゼロと脱温暖化の社会づくりを進め、自然との共生を図りながら快適な生活を送ることを可能にする選択肢を人々に与える。
 また、IT分野における構造改革は、情報の入手や発信のコストを大きく引き下げるなどのメリットをもたらす。これにより、たとえば、働き方の多様化や子育て・介護の負担が軽減されたり、消費生活や余暇といったさまざまな生活場面において、利便性が向上したりし、新しい楽しみが生まれ、選択肢が拡大する。行政サービスについてみれば、電子政府の実現により、申請・届出等の手続のオンライン化がなされ、たとえば、登記簿謄抄本や住民票の写しを請求する場合において、人々の手間や時間を大幅に削減することができることになる。社会保障分野においても、社会保障番号制の導入と、個人に社会保障に関する情報提供等を行うしくみの構築に向けて検討が進められている。また、医療や教育についても、遠隔医療や遠隔教育が普及し、人々にとって質の高いサービス等を享受する機会が拡大する。さらに、ITは人と人をつなぐものとして、人々の間での新たな交流を生み、家族の交流の深まりにもつながり得る。
 構造改革の重要な柱である規制改革の推進により、生活の幅広い分野で、生活者・消費者が、安価で質の高い多様な財やサービスを入手できるようになる。たとえば、医療分野の規制改革については、患者情報や医師、医療機関に関する情報の開示・公開等により、患者による医療機関等の選択が容易になり、これまでよりも患者本位の医療が実現する。また、医療のIT化の推進や複数の医療機関による患者情報の共有・有効活用、医療機関経営の規制見直しは、医療サービスの質の向上と効率化をもたらし、人々の医療に対する安心感が増すことにつながる。
 構造改革がもたらす国民生活への影響は、以上みてきた例にとどまらず、今後、国民一人ひとりの暮らしをさまざまな場面で大きく改革していくことが期待されている。こうした構造改革による「暮らしの改革」の具体的な姿についても、引き続き検討を加え、明らかにしていくことが必要である。




国立国会図書館資料の一部利用休止のお知らせ


 今年五月に国際子ども図書館が全面開館し、十月には国立国会図書館関西館(以下「関西館」)が開館します。これに伴い資料を新しく分散配置するため、移送中は一部の資料がご利用になれません。利用者の皆さまには大変ご迷惑をおかけしますが、ご理解とご協力をお願いいたします。

◇関西館配置のため移転する対象資料の利用休止

 今年四月から九月末まで、現施設である東京本館から関西館に資料を順次移送します。関西館における利用サービスの開始は十月七日を予定しており、それまで、次の資料の利用を休止いたします。

(1) 四月一日〜十月六日に利用休止する資料
 @ 洋雑誌(年刊誌、モノグラフ・シリーズの一部を除く)
 A アジア資料(中国語、朝鮮語、その他アジア言語の図書・雑誌・新聞)。ただし、一九八五年までに受け入れた図書、法令議会資料、基本的な参考図書、一部の雑誌・新聞は東京本館で引き続き利用できる
 B 国内博士論文

(2) 五月一日〜十月六日に利用休止する資料
 @ 科学技術資料の一部(テクニカルリポート、学協会ペーパー、規格、海外特許資料、海外学位論文、欧文会議録の一部)
 A 文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書
 B 学術文献録音テープ(視覚障害者用)

◇国際子ども図書館の休館と移転対象資料の利用休止

 今年五月五日の全面開館の準備のため、二月一日から五月四日まで、国際子ども図書館を休館いたします。この間、東京本館から資料を移送するため、次の資料の利用を休止いたします。

(1) 国際子ども図書館所管資料

(2) 東京本館から移送する資料
 @ 児童図書・小中学生向け学習参考書等(請求記号「児」または「Y1〜Y31」から始まるもの)
 A 児童雑誌(請求記号Z32から始まる国内刊行雑誌等、中国語・朝鮮語・欧文雑誌の一部)
 B 児童向け非図書資料(紙芝居、CD−ROM、カルタ等、請求記号「YKG」「YHZ」「YNZ」から始まるものなど)

◇問い合わせ先

 国立国会図書館
 電話03―3581―2331(代表)








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一月の雇用・失業の動向


―労働力調査平成十四年一月結果の概要―


総 務 省


◇就業状態別の人口

 平成十四年一月末の就業状態別人口をみると、就業者は六千二百六十七万人、完全失業者は三百四十四万人、非労働力人口は四千二百九十九万人と、前年同月に比べそれぞれ九十三万人(一・五%)減、二十七万人(八・五%)増、百二十万人(二・九%)増となっている。

◇就業者

(1) 就業者
 就業者数は六千二百六十七万人と、前年同月に比べ九十三万人(一・五%)の減少となり、十か月連続の減少となっている。男女別にみると、男性は三千七百二十一万人、女性は二千五百四十五万人で、前年同月と比べると、男性は四十九万人(一・三%)減、女性は四十五万人(一・七%)減となっている。
(2) 従業上の地位
 就業者数を従業上の地位別にみると、雇用者は五千三百三万人、自営業主・家族従業者は九百三十八万人となっている。前年同月と比べると、雇用者は五十二万人(一・〇%)減、自営業主・家族従業者は五十万人減となり、雇用者は五か月連続の減少となっている。
 雇用者のうち、非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○非農林業雇用者…五千二百六十六万人と、五十六万人(一・一%)減、五か月連続の減少
 ・常 雇…四千五百七十六万人と、六十一万人(一・三%)減、六か月連続の減少
 ・臨時雇…五百八十五万人と、四万人(〇・七%)増、五か月ぶりの増加
 ・日 雇…百五万人と、一万人(一・〇%)増、六か月連続の増加
(3) 産 業
 主な産業別就業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○農林業…二百二十四万人と、十万人(四・七%)増
○建設業…五百八十九万人と、十九万人(三・一%)減、十四か月連続の減少
○製造業…一千二百三十万人と、八十六万人(六・五%)減、九か月連続の減少
○運輸・通信業…四百二万人と、一万人(〇・二%)増、二か月連続の増加
○卸売・小売業,飲食店…一千四百五十八万人と、四十三万人(二・九%)減、二か月連続の減少
○サービス業…一千八百一万人と、五十三万人(三・〇%)増、二十三か月連続の増加
 また、主な産業別雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○建設業…四百八十七万人と、十八万人(三・六%)減
○製造業…一千百三十七万人と、六十八万人(五・六%)減
○運輸・通信業…三百八十二万人と、三万人(〇・八%)増
○卸売・小売業,飲食店…一千百八十九万人と、二十七万人(二・二%)減
○サービス業…一千五百六十五万人と、六十万人(四・〇%)増
(4) 従業者規模
 企業の従業者規模別非農林業雇用者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜二十九人規模…一千七百四十九万人と、十五万人(〇・九%)増、四か月ぶりの増加
○三十〜四百九十九人規模…一千七百七十万人と、十万人(〇・六%)増、三か月連続の増加
○五百人以上規模…一千百六十五万人と、七十八万人(六・三%)減、九か月連続の減少
(5) 就業時間
 一月末一週間の就業時間階級別の従業者数(就業者から休業者を除いた者)及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○一〜三十五時間未満…一千四百八十八万人と、九十六万人(六・九%)増加
 ・うち一〜三十時間未満…一千四十六万人と、四十二万人(四・二%)増加
○三十五時間以上…四千六百二十八万人と、百九十五万人(四・〇%)減少
 ・うち四十九時間以上…一千七百五十一万人と、四十九万人(二・七%)減少
 また、非農林業の従業者一人当たりの平均週間就業時間は四二・四時間で、前年同月と比べ〇・六時間の減少となっている。

◇完全失業者

(1) 完全失業者数
 完全失業者数は三百四十四万人と、前年同月に比べ二十七万人(八・五%)増となり、十か月連続の増加となっている。男女別にみると、男性は二百十万人、女性は百三十四万人で、前年同月に比べ、男性は十七万人(八・八%)の増加、女性は十万人(八・一%)の増加となっている。
 また、世帯主の続き柄別完全失業者数及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
○世帯主…九十八万人と、八万人増加
○世帯主の配偶者…四十八万人と、八万人増加
○その他の家族…百四十三万人と、二万人増加
○単身世帯…五十四万人と、八万人増加
(2) 完全失業率(季節調整値)
 季節調整値でみた完全失業率(労働力人口に占める完全失業者の割合)は五・三%と前月に比べ〇・二ポイントの低下となっている。男女別にみると、男性は五・四%、女性は五・一%と、前月に比べ男性は〇・四ポイントの低下、女性は同率となっている。
(3) 完全失業率(原数値)
 完全失業率は五・二%と、前年同月に比べ〇・五ポイントの上昇となっている。男女別にみると、男性は五・三%、女性は五・〇%と、男女ともに〇・四ポイントの上昇となっている。
(4) 年齢階級別完全失業者数及び完全失業率(原数値)
 年齢階級別完全失業者数、完全失業率及び対前年同月増減は、次のとおりとなっている。
 [男]
○十五〜二十四歳…三十八万人(一万人増)、一一・〇%(〇・八ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…五十万人(五万人増)、五・四%(〇・五ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十七万人(四万人増)、三・五%(〇・六ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…四十万人(七万人増)、四・三%(〇・八ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…四十六万人(二万人増)、六・九%(〇・二ポイント上昇)
 ・五十五〜五十九歳…十八万人(同数)、四・七%(〇・一ポイント上昇)
 ・六十〜六十四歳…二十八万人(二万人増)、一〇・〇%(〇・三ポイント上昇)
○六十五歳以上…九万人(一万人減)、三・〇%(〇・四ポイント低下)
 [女]
○十五〜二十四歳…二十六万人(一万人減)、八・〇%(〇・二ポイント上昇)
○二十五〜三十四歳…四十三万人(三万人増)、七・〇%(〇・五ポイント上昇)
○三十五〜四十四歳…二十三万人(三万人増)、四・五%(〇・六ポイント上昇)
○四十五〜五十四歳…二十五万人(五万人増)、三・七%(〇・八ポイント上昇)
○五十五〜六十四歳…十四万人(一万人減)、三・五%(〇・三ポイント低下)
 ・五十五〜五十九歳…七万人(二万人減)、二・九%(〇・七ポイント低下)
 ・六十〜六十四歳…七万人(一万人増)、四・三%(〇・二ポイント上昇)
○六十五歳以上…二万人(同数)、一・二%(同率)
(5) 求職理由別完全失業者数
 求職理由別完全失業者数は、次のとおりとなっている。
○定年等…三十六万人
○勤め先都合…百十万人
○自己都合…百七万人
○学卒未就職…十三万人
○新たに収入が必要…三十八万人
○その他…三十三万人
















言葉の履歴書


◇ワークシェアリング

 ワークシェアリングとは、「仕事を分かち合うこと」、つまり、労働者一人当たりの労働時間を短縮し、より多くの人で仕事を分かち合うことを意味します。その導入の目的によって、次の四タイプに分類できます。

@緊急避難型
 厳しい雇用情勢下において社内の雇用維持を目的とする。
A中高年対策型
 中高年労働者の労働時間短縮により、社内の中高年層の雇用維持を目的とする。
B雇用創出型
 法定労働時間の短縮により、失業者へのより多くの雇用機会の提供を目的とする。
C多様就業対応型
 正社員の勤務の仕方を多様化することにより、女性や高齢者をはじめ、より多くの人に雇用機会を与えることを目的とする。

 雇用の維持・創出という観点からワークシェアリングへの関心が高まっていますが、導入に際しては、労働時間短縮に伴う賃金減少、労働生産性の維持・向上、パートタイムとフルタイムの処遇格差などをどうするか、さまざまな検討が必要です。




    <5月1日号の主な予定>

 ▽法人企業統計季報(平成十三年十〜十二月)………財 務 省 

 ▽消費者物価指数の動向(二月)………………………総 務 省 




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