官報資料版 平成14年6月12日




                  ▽外交青書のあらまし……………………外 務 省

                  ▽消費者物価指数の動向(四月)………総 務 省

                  ▽消費動向調査(三月)…………………内 閣 府











外交青書のあらまし


外 務 省


第一章 総括 ―二〇〇一年の国際社会と日本外交―

一 概観

 国際社会は、これまで、二度の世界大戦の経験を踏まえ、基本的人権の尊重、民主主義、市場経済、自由貿易という基本的価値観に基づく開かれた政治経済体制を築き上げ、その下で安定を確保し、繁栄を遂げてきた。
 二〇〇一年は、国際社会の安定と繁栄に向けたグローバルな取組が強く求められた年であった。国際社会が今後とも安定を維持し、一層の繁栄を実現するためには、以前にも増して、グローバルな諸課題への対応が重要であり、こうした課題に適切に取り組むことによって、開かれた政治経済体制に基づく国際秩序をますます発展させる必要がある。
 こうした認識の下、国際社会は、テロ、世界経済、地球環境、感染症、軍備管理・軍縮・不拡散といったグローバルな諸課題の解決を目指し、積極的に取り組んできた。
 日本が戦後、未曾有の繁栄を達成することができたのは、日本国民の不断の努力によることはもちろんだが、これに加え、基本的人権の尊重、民主主義、市場経済、自由貿易という開かれた政治経済体制に基づく国際秩序の存在に依拠するところが大きい。日本が自らの平和と安全を確保し、一層の繁栄を享受していくためには、こうした国際秩序を一層発展させることが不可欠である。
 そのためには、日本は、先進民主主義国の主要な一員として、テロ対策をはじめとするグローバルな諸課題の解決や国際社会に大きな影響を与え得る地域情勢の安定化に向け積極的に取り組むことによって、国際社会の安定と繁栄の実現に努める必要がある。
 同時に、こうした取組を行う上で、日本外交の基軸である米国との関係を一層強化し、主要国等との協力関係を促進することが必要である。
 このような外交を実施していく上で重要なことは、外交が国民から理解され、支持されなくてはならないということである。外務省は、松尾元大臣官房総務課要人外国訪問支援室長による事件をはじめとする不祥事により失われた信頼を回復すべく、二〇〇一年五月、民間有識者からなる外務省機能改革会議の提言を踏まえ、外務省改革要綱を作成した。
 外務省は、これに基づき、会計・予算決裁手続の見直し・改善や本省監察制度の創設、従来の査察制度の強化などによる再発防止策を講じるとともに、人事制度、領事業務、情報サービスの拡充などの改革作業も進め、十二月二十一日、一連の検討結果を発表した。さらに、二〇〇二年二月に就任した川口外務大臣の下、従来の改革作業を一層加速するため、今後の改革の方針として「開かれた外務省のための10の改革」を発表した。これを受け、三月、第三者からなる「変える会」が発足した。
 「変える会」は、具体的な改革措置を検討し、五月中旬までに中間報告を、さらに七月中には最終報告を作成し、川口外務大臣に提言として提出することになっている。
 外務省としては、「変える会」を含め各方面の幅広い意見を聞きながら、国民の信頼を一刻も早く回復するため、外務省改革に積極的に取り組んでいく考えである。

二 米国同時多発テロの発生と国際テロリズムとの闘い

 九月十一日、四機の米国国内線民間航空機がほぼ同時にハイジャックされ、米国の経済、軍事を象徴する建物に相次いで突入する自爆テロが行われた。二〇〇一年の国際社会に最も衝撃を与えた米国同時多発テロである。
 国際社会は、今回のテロに対して一致団結して迅速な対応をとった。日本は、今回のテロ発生以降、まず邦人保護に全力を尽くすとともに、国際的なテロとの闘いを自らの問題と認識し、積極的かつ主体的に取り組むとの方針の下、米国を強く支持し、世界の国々と一致結束して対応してきた。
 特に、米国のほか、アフガニスタンの周辺国やイスラム諸国、アジア諸国への外交努力を通じ、テロの防止・根絶に向けた取組への国際的な連帯の強化に努めたほか、テロ対策特別措置法を成立させ、同法に基づき米軍等に対する協力支援活動及び被災民救援活動を実施してきた。
 また、テロの防止・根絶に向けた取組は、軍事行動のみをもって終了するものではなく、息の長い取組が必要であるとの認識の下、国際的な法的枠組みの強化に向け、爆弾テロ防止条約を締結し、テロ資金供与防止条約に署名するとともに、同条約及び国連安全保障理事会決議一三七三を誠実に履行するための法整備に向けた準備を着実に進めてきた。
 さらに、核・生物・化学兵器などの大量破壊兵器がテロ組織の手に渡ることを防止するという観点から、軍備管理・軍縮・不拡散分野での取組はテロ対策の文脈でも極めて重要であり、日本は、引き続き輸出管理体制の強化等の取組を実施してきた。
 また、日本は、アフガニスタンの恒久的な平和と安定を実現するためには周辺国の協力が不可欠であると認識しており、テロとの闘いに取り組む中で困難に直面しているパキスタンをはじめとするアフガニスタン周辺国への経済支援を行ってきたほか、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等を通じ、アフガニスタン難民・避難民に対する人道支援を行ってきた。
 さらに、日本は、アフガニスタンの安定と復興を支援し、平和な新政権への移行を促すため、二〇〇二年一月に米国、EU、サウジアラビアとの共同議長の下、アフガニスタン復興支援国際会議を東京にて開催した。同会議において各国・機関は、アフガニスタン復興を支援するとの力強いメッセージを発出し、累積合計額四十五億ドル以上にのぼる支援額を表明した。
 今回のアフガニスタン復興支援国際会議においては、当初、外務省が日本のNGO二団体に対して会議への出席を拒否する旨を伝達したことから、NGOの会議への参加問題をめぐって混乱が生じ、今回の会議の大きな成果に水を差す結果となった。このことを、外務省として率直に反省しており、アフガニスタン復興支援におけるNGOの果たす大きな役割に鑑み、外務省は、今後、NGOとの対話、連携、協力に一層努めていく考えである。

三 国際社会の注目すべき動き

(1)中東和平
 中東和平プロセスは、パレスチナ、シリア、レバノンのどの交渉においても和平交渉が中断しており、国際社会による努力にもかかわらず、二〇〇一年も交渉再開に向けた具体的な成果はなかった。
 二〇〇〇年九月末に発生したイスラエル・パレスチナ間の衝突は、二〇〇一年三月のイスラエルにおけるシャロン政権発足後も沈静化の気配をみせず、暴力の悪循環が続いた。五月にいわゆるミッチェル報告書が提出されたのを受け、六月、パウエル国務長官、テネット米中央情報局(CIA)長官が仲介を行い、イスラエル及びパレスチナは、暴力停止のための治安協力とミッチェル報告書の履行につき同意したが、その後も衝突は継続した。いったんは前向きな動きがみられたが、十月、ゼエビ・イスラエル観光相がパレスチナ過激派に暗殺される事件が発生したのを契機に、再び事態は緊迫した。
 日本は、両当事者に対して暴力の悪循環を断ち切り、一刻も早い交渉再開に向けて粘り強く努力をするよう働きかけるとともに、地域周辺国とも和平進展の方途について協議を行った。また、衝突発生以来、パレスチナ人の窮状を緩和するための支援を実施している。

(2)インド・パキスタン情勢
 インド・パキスタン関係については、九九年以降緊張関係が継続していたが、七月、約二年半振りの首脳会談が実現した。しかし、十月、インド側カシミールの州議会議事堂、十二月にインド国会襲撃事件が発生し、両国関係は著しく緊張した。
 日本は、本襲撃事件をいち早く非難するとともに、両国間の緊張が武力衝突に至ることは地域の安定を大きく損ないかねないとの観点から、米国、英国等と協調しつつ、両国間の緊張緩和のため継続的な外交努力を行っている。

(3)バルカン情勢
 マケドニアでは、二月頃から始まったアルバニア系武装勢力(NLA)の武力行使が首都近郊まで拡大し、緊張状態が続いていたが、七月になってマケドニア政府とアルバニア系住民の地位改善を求めるNLAとの間で停戦が合意され、十一月には懸案となっていた憲法改正が実施された。一方で、アルバニア系武装勢力による攻撃は依然継続しており、治安状況はなお予断を許さない。
 また、国連の暫定統治の下、民主的な多民族社会に基づく実質的自治を構築するための取組が進められているコソボでは、十一月に議会選挙が行われ、二〇〇二年三月にアルバニア系を中心とする暫定自治政府が成立した。
 日本は、コソボでの議会選挙に対し国際平和協力法に基づき選挙監視要員等を派遣したほか、マケドニアをはじめとするバルカン地域の平和と安定のため、難民・避難民への人道支援を含む種々の貢献を実施している。

(4)朝鮮半島情勢
 朝鮮半島情勢については、二〇〇一年は、北朝鮮と中国、ロシアとの首脳外交、北朝鮮と欧州諸国等との外交関係の開設などの活発な動きがみられたものの、北朝鮮と日本や韓国、米国との関係においては特段の進展はみられなかった。日本は、引き続き韓国及び米国との緊密な連携を維持しつつ、日朝国交正常化交渉に粘り強く取り組む方針である。
 また、こうした対話の中で北朝鮮との安全保障上及び人道上の諸問題の解決に向け努力していく必要がある。

(5)インドネシア・東チモール
 インドネシアでは、ワヒド大統領の汚職関与疑惑等をめぐって政治対立が深刻化し、同大統領が解任され、メガワティ副大統領が新大統領に就任した。また、地方情勢も引き続き不安定であった。
 日本は、インドネシアの安定は地域の安定と繁栄にとって極めて重要であるとの認識に立ち、その改革努力を支援してきている。
 二〇〇一年は二回の首脳会談と一回の外相会談が行われ、このような機会に日本の基本的立場を繰り返し表明するとともに、インドネシアの諸課題への取組に対し、両国間の信頼関係を基礎とした友人としての助言を行ってきた。
 国連東チモール暫定行政機構(UNTAET)の統治の下、自立に向けた国造りの取組が行われてきた東チモールでは、八月に憲法制定議会選挙が実施された。
 日本は、国際平和協力法に基づき憲法制定議会選挙に対して選挙監視要員を派遣したほか、復興開発支援等を積極的に行ってきた。また、二〇〇二年三月以降、東チモールの国連平和維持活動(PKO)へ自衛隊施設部隊等が派遣されている。

(6)アフリカ
 二〇〇一年には、アフリカ諸国が、国際社会においてより大きな発言力を持つために、政治的な統合に向けた動きをみせ、また、アフリカとして統一された開発計画を策定するなど、政治・経済面における統合に向けたダイナミックな動きがみられた。
 政治面では、一九六三年に設立されたアフリカ統一機構(OAU)が、二〇〇二年の首脳会議までの一年間を移行期間として、より強力な意思統一のメカニズムを有し、アフリカのより強力な結束を目指すアフリカ連合(AU)に移行することが決定された。
 経済開発面では、アフリカ諸国自身による主導の下、包括的なアフリカ開発戦略として「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」が策定された。
 アフリカ問題は国際社会が取り組むべき課題の一つであり、国際社会の主要な一員としてしかるべき役割を果たしたいと考える日本としては、アフリカ問題にも積極的に取り組む必要がある。日本は、二〇〇一年十二月、国連、アフリカのためのグローバル連合(GCA)、世界銀行とともに、アフリカ開発会議(TICAD)閣僚レベル会合を開催した。

四 アジア太平洋地域における重層的な地域協力の推進

 近年、経済分野での協力を中心として、アジアにおける地域協力はますます深まっている。
 アジア太平洋という広がりの中では、主に経済分野を扱うアジア太平洋経済協力(APEC)や安全保障分野を扱うASEAN地域フォーラム(ARF)のほか、ASEAN+3(日中韓)という東アジアの地域協力の枠組みも進展してきており、様々な分野における多国間での対話や協力が幾重にも重なり合う形となって機能している。
 また、地域間協力のための枠組みとしては、アジアと欧州との対話と協力のためのフォーラムであるアジア欧州会合(ASEM)に加え、最近では、東アジアと中南米諸国との間での協力関係を強化することを目的とする東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC)も新たな枠組みとして誕生した。
 日本は、ASEAN諸国との二国間関係の強化に加え、二国間関係を補完する地域協力の枠組みを重層的に発展させることに貢献してきた。十一月の日・ASEAN首脳会議、ASEAN+3首脳会議、日中韓首脳会合では、テロ、海賊、麻薬といった国境を越える問題等の課題に対する協力を強化していくことで一致したほか、APEC首脳・閣僚会議では、貿易・投資の自由化及び円滑化、経済・技術協力をさらに促進するため活発な議論が行われた。また、七月のARF閣僚会合において、朝鮮半島やインドネシア等の地域情勢や軍縮・不拡散といったグローバルな諸課題について議論が行われた。
 このように地域協力の枠組みを重層的に発展させていくことは、域内の相互依存関係を深化させ、信頼醸成を促進させるものであり、こうした取組に、日本が積極的に協力し、参画していくことは、日本の安全と繁栄を確保する上で基礎となるアジア太平洋地域の平和と繁栄の確保に貢献するものと言えよう。
 また、こうした重層的な地域協力の推進に向けた取組に加え、二国間での貿易・投資の自由化・円滑化の進展や経済連携の強化に向けて、二〇〇一年一月から、シンガポールとの間で新時代経済連携協定の締結交渉が開始され、二〇〇二年一月の小泉総理大臣のシンガポール訪問の際に、日・シンガポール経済連携協定が署名された。

五 主な二国間関係

(1)日米関係
 日米関係は日本外交の基軸であり、サンフランシスコ平和条約署名五十周年を迎えた二〇〇一年、日本は、政治、安全保障及び経済を含む幅広い分野での両国関係の一層の強化に努めてきた。
 二月にはハワイ沖で愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船えひめ丸が米海軍の原子力潜水艦に衝突されて沈没し、九名の死者・行方不明者を出すという痛ましい事故が起こったが、日米両国は、三月の日米首脳会談に続き、小泉政権成立後初めて行われた六月の日米首脳会談においても共同声明を発表し、戦略対話の強化、新たな経済協議の立ち上げ、地球的規模の課題についての一層の協力で一致した。
 アジア太平洋地域は依然として不安定かつ不確実な要素をはらんでおり、日米安全保障体制を基礎とした日米同盟は引き続きアジア太平洋の平和と安定の礎であるとの共通認識の下、日米両国は、様々なレベルでの安全保障協議を強化していくとともに、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施をはじめとする在日米軍に関連する諸課題への取組を含め、日米同盟の一層の強化に努力してきた。
 経済面では、六月の首脳会談で、日米経済関係の新たな基礎となる「成長のための日米経済パートナーシップ」の立ち上げが決定され、その下で、両国とともに世界の持続可能な経済成長を促進するために、次官級経済対話をはじめ、各種フォーラムにおいて建設的な対話を行ってきた。

(2)日中関係
 アジア太平洋地域の安定と繁栄の確保にとって極めて大きな影響を持つ日中関係では、歴史教科書問題、李登輝台湾前「総統」の訪日、小泉総理大臣の靖国神社参拝等をめぐり、中国から厳しい反応が示されたが、十月の小泉総理大臣の訪中を機に改善の方向に向かった。
 経済関係は、貿易、投資とも昨年に引き続き好調に推移したが、一方で農産物をめぐるセーフガード問題のような貿易摩擦が発生し、十二月の閣僚級協議で解決が図られた。中国への政府開発援助については、日本の厳しい経済・財政状況や中国の経済発展等を背景に日本国内において厳しい見方が存在している。
 こうした事情を勘案し、日本国民の理解と支持の下で政府開発援助が行われるよう、十月に今後の指針となる対中国経済協力計画を策定し、今後、同計画に基づき援助を実施していくことにしている。

(3)日韓関係
 基本的価値を共有し、政治、経済上極めて重要な隣国である韓国との間では、歴史教科書問題、小泉総理大臣の靖国神社参拝及び北方四島周辺水域における韓国漁船の操業問題等の問題が生じたが、十月の二度の首脳会談において両首脳は率直な意見交換を行い、未来志向の関係を発展させるため、具体的かつ積極的な協力を行っていくことで一致した。
 その後、両国間の緊密な調整の結果、査証の大幅緩和や投資協定について基本合意が得られるなど、諸課題の解決に向け大きな進展がみられた。

(4)日露関係
 日本は、真に安定的な日露関係を構築することは、日露両国のみならず、北東アジア地域の平和と安定に寄与するものであると認識しており、ロシアとの平和条約の締結、経済分野における協力、国際舞台における協力という三つの課題を同時に前進させるべく、幅広い分野において両国関係の進展に努めている。
 このうち平和条約締結問題については、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針の下、七月及び十月に行われた日露首脳会談において、イルクーツク首脳会談を含め、これまでに達成された成果を踏まえ精力的に交渉を行っていくことが確認された。
 経済関係では、六月に今井敬経団連会長を団長とする経済使節団がロシアを訪問し、経済交流の拡大について話し合うなど、一層の促進に向け積極的な努力が展開された。

(5)日欧関係
 欧州連合(EU)の拡大・深化が進展し、国際社会においてますます存在感を増している欧州との関係強化も重要である。
 二〇〇一年は、一九九一年に日・EU関係の基本文書である日・EC共同宣言が発出されてちょうど十年目、また、「日欧協力の十年」の最初の年に当たる節目の年であった。十二月には小泉総理大臣がEU議長国であるベルギーを訪問し、日・EU定期首脳協議が開催され、今後の日・EU協力をさらに具体化する方策を記した「日・EU協力のための行動計画」が発表されるなど、日欧関係の強化に向けた進展がみられた。

六 国際社会の主な取組

(1)国連の役割
 二十一世紀の平和と繁栄のために国際社会が取り組むべき課題はますます多様化し、複雑化しており、唯一の普遍的かつ包括的な機関である国連が積極的な役割を果たしていくことへの期待はますます高まっている。このような状況の中で国連が一層有効に対応するためには、その機能を強化することが不可欠である。
 特に、国際の平和及び安全の維持に主要な責任を担う安全保障理事会(以下「安保理」)が、より有効に対処できるようにするためにも、国際社会の現状を反映すべく安保理改革を実現することが急務となっている。
 日本としては、米国同時多発テロを契機に生まれた国際協調の機運を安保理改革に向けた原動力に転換していくことができるよう、今後とも積極的に改革に取り組んでいきたいと考えている。また、国連の財政改革も引き続き重要な課題である。
 日本の国連に対する大きな財政貢献に比べ、国連に勤務する日本人職員数は望ましい水準に達しておらず、国連事務局が示している望ましい日本人職員数の三分の一程度に留まっている。このような状況を改善するため、日本は、国連事務局及び関係国際機関への働きかけを行うとともに日本人職員の増強に努めている。
 冷戦終了後、紛争解決における国連の役割が見直されるとともに、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国内紛争または国内紛争と国際紛争の混合型へ変わったことから、軍事部門に加え、選挙、警察、人道、行政など多様な文民部門を含む国連平和維持活動(PKO)が増加しつつある。
 日本は、平和活動の改善・強化は国際の平和と安全にとり重要な意義を持つことから、議論に積極的に参加するとともに、可能な協力は実施していく考えである。

(2)大量破壊兵器の拡散防止
 一月に成立した米国のブッシュ政権は、冷戦期の敵対的な米露関係に代わり、一部の無責任な国家が大量破壊兵器や弾道ミサイルを獲得することが現在の国際社会における最大の脅威であると位置づけた。ブッシュ政権は、また、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准や生物兵器禁止条約(BWC)の検証議定書交渉への反対等、軍縮・不拡散に関する一部の多国間の枠組みは、米国の安全保障に役立たないとして、消極的、否定的な態度を表明した。
 このような中で、九月以降の一連のテロ事件が発生し、無責任国家と並んで、テロリストの手中に大量破壊兵器がわたる危険性についても、強く認識されるに至り、ブッシュ政権は、大量破壊兵器の拡散防止には断固として対処するとの方針を打ち出している。
 こうした一連の動きは、国際的な不拡散の取組に大きな影響を与えており、テロ防止の観点も含む大量破壊兵器の拡散防止は、今や国際社会の緊急の課題となっている。

(3)多角的貿易体制の強化
 公正な自由貿易の基盤である多角的貿易体制を維持し、強化していくことは、日本にとって重要な課題である。
 日本は、従来、関税引き下げ等のさらなる貿易自由化及び時代に応じたルールの策定・改善を行うために、世界貿易機関(WTO)の新しい多角的貿易交渉(以下「新ラウンド」)を早期に立ち上げることが重要であると考えており、一九九九年、シアトルで開催されたWTO第三回閣僚会議で他の加盟国とともに新ラウンド立ち上げを試みた。しかし、各国の利害の対立等の理由から新ラウンドの立ち上げは失敗した。
 その後、様々な協議、調整が行われ、二〇〇一年十一月に、カタールのドーハで開催された第四回閣僚会議において、新ラウンドの立ち上げが成功したことは、今後の多角的貿易体制の維持・強化にとって大きな意義を持つと考えている。

(4)地球温暖化問題への取組
 化石燃料の燃焼等により発生する二酸化炭素等の温室効果ガスは、地球の温暖化をもたらし、洪水や干ばつの頻度の増大や海面上昇による土地の消失など、地球の気候や生態系に様々な影響を及ぼすと予測されている。このような気候変動に関する問題は、人類の生存に対する脅威になり得る重要な問題であり、国際社会は、気候変動問題に関する多数国間条約を策定し、その実施のための取組を行ってきている。
 日本は、国際社会が今後とも安定を維持し、一層の繁栄を享受していくためには、地球規模での実効的な温暖化対策が不可欠であると認識しており、京都議定書の二〇〇二年発効に向け、国際社会と協調しつつ、積極的に取り組んできている。

(5)感染症対策
 特に、開発途上国において深刻な問題となっているエイズ、結核、マラリア等の感染症対策は、感染症の蔓延に苦しんでいる国々だけの問題ではなく、国際社会の安定と繁栄を実現するために、国際社会が一丸となって早急に取り組まねばならない課題である。
 こうした認識に立って、日本は、官民を含めた国際社会全体による取組を推進させるよう、国連エイズ特別総会での活発な議論や、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の立ち上げに積極的に貢献してきた。この基金は二〇〇二年一月に活動を開始した。日本はこの基金に対して、二〇〇一年六月、二億ドルを拠出する意図表明を行っている。

(6)人間の安全保障
 人間の安全保障とは、人間の生存、生活、尊厳に対する脅威から各個人を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために、一人ひとりの視点を重視する取組を強化しようとする考え方である。現在の国際社会はテロ、貧困、環境破壊、紛争、地雷、難民問題、麻薬、エイズ等の感染症など様々な脅威に直面している。
 このような冷戦後の国際社会において、多様化し、複雑化した脅威に対処していくためには、各国政府のみならず、国際機関、NGOを含む市民社会等の様々な主体が協力し、人間個人の潜在力が現実化するような社会を造り、持続させていくことが重要である。このことが、まさに日本外交の重要な視点の一つである人間の安全保障の考え方が目指すものである。
 人間の安全保障に関し、日本は具体的な施策を積み上げつつ、知的・財政的貢献を積極的に行い、人間の安全保障の推進に国際的なリーダーシップを発揮しており、今後とも日本外交を展開していく上での中心的な視点の一つとして、取組を強化していくことにしている。

第二章 主な分野における国際社会の取組と日本外交

第一節 政治・安全保障

一 日本の安全の確保

 日本が位置するアジア太平洋地域においては、民族や宗教など、複雑で多様な要因を背景とした地域紛争の発生、大量破壊兵器やミサイルの拡散の進行等、依然として不透明、不確実な要素が多く残されている。また、九月の米国同時多発テロにみられるような、これまで想定し得なかった形態の脅威が生起するなど、今日の国際情勢は様々な流動的要素をはらんでいる。
 このような安全保障環境の下、日本は引き続き三つの柱からなる安全保障政策(日米安全保障体制の堅持、適切な防衛力の整備、日本を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力)を推進している。
 日米安全保障体制については、六月の日米首脳会談において小泉総理大臣とブッシュ大統領は、日米安全保障関係五十周年を歓迎し、日米同盟がアジア太平洋地域の平和と安定の礎であることを改めて確認した。
 さらに九月、旧日米安全保障条約の署名が行われたサンフランシスコにおいて、田中外務大臣、中谷防衛庁長官、パウエル国務長官及びウォルフォビッツ国防副長官の出席の下、旧日米安全保障条約署名五十周年記念式典が開催された。
 また、九月十一日の米国同時多発テロ後、日本はテロとの闘いを自らの問題として主体的かつ積極的に取り組んでいるが、特に、テロの脅威の除去のために活動する米軍に対し日本がテロ対策特別措置法に基づく協力支援活動を行っていることは、日米同盟関係の強化という観点からも大きな意義を有している。
 アジア太平洋地域の情勢は好ましい方向に向かう兆候もみられる一方で、依然として不確実性、不安定性が存在している。このような状況の下、日米安全保障体制は、依然としてアジア太平洋地域の平和と安定を維持する上で極めて重要である。
 日本が自らの自衛力のみでは日本の安全が脅かされるようなあらゆる事態に対処できない以上、米国との安全保障条約を引き続き堅持することで、米軍の前方展開を確保し、その抑止力の下で日本の安全を確保することが必要であり、そのような観点から、日米安全保障体制の信頼性を一層高めるために、たゆまない努力を続けていく必要がある。
 防衛力整備については、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本理念に従い、節度ある防衛力整備に努めている。この基本方針にのっとり、一九九五年十一月に決定された防衛大綱及び二〇〇〇年十二月に決定された中期防衛力整備計画(二〇〇一年度から二〇〇五年度)の下、継続的かつ計画的な防衛力整備が行われている。
 日本の平和と繁栄は、アジア太平洋地域、ひいては世界全体の平和と繁栄と密接不可分の関係にあり、様々なレベルでの外交努力を積み重ねることが重要である。このような考えの下、日本は、地域の安定を図っていくための二国間ないし多国間の協力、各国との信頼醸成に向けた政治・安全保障対話及び協力、軍備管理・軍縮・不拡散体制の強化、紛争予防への取組やPKOへの参画等を通じた地域紛争への取組、域内各国の経済発展への支援・協力を通じた地域の安定性の増大、国際テロの防止・根絶のための取組等の分野で、引き続き積極的な役割を果たしていく必要がある。
 二〇〇一年に、日本が取り組んできたテロ対策特別措置法の下での米軍等への支援、東チモールに展開するPKOへの参加や、国際平和協力法を改正し、国連平和維持隊(PKF)本体業務の凍結解除等を行ったこともこのような考え方に基づくものである。
 また、十二月に発生した九州南西海域不審船事案は、日本の法秩序の維持と安全保障にとって重大な事態であり、政府としては、引き続きこのような事案に適切に対応するよう努めていく考えである。

二 世界の平和と安定への取組

(1)紛争への包括的な取組
 九月の米国同時多発テロによっても強く認識されたように、国際社会には紛争の原因となる種々の不安定要因が存在しており、国際社会の安定と繁栄を実現するためには、こうした不安定要因に対する包括的な取組が必要である。
 特に、近年、紛争の発生を未然に防止し、紛争が起きた場合にはその拡大を防止し解決を図り、さらに再発の防止に取り組むという包括的な意味での紛争予防や、紛争解決における平和維持活動の役割についての重要性が高まっている。さらに、紛争の結果生じる難民問題についても、人道上の問題であるとともに、難民の発生が世界の安定と繁栄に与える影響について懸念されている。
 二〇〇一年は、日本が国際社会の主要な一員として、紛争予防分野において様々な具体的な取組を行ってきたほか、国際平和協力分野において、国際平和協力法の改正など多くの実績を積み重ねてきた一年となった。また、難民に対しても、特に米国同時多発テロ以降、様々な支援を行ってきた。
 国際社会の安定と繁栄に自国の安全と繁栄を大きく依存している日本にとって、国際社会の紛争への包括的な取組に積極的に貢献していくことは極めて重要であり、日本は今後ともこうした取組に積極的に参画していく考えである。

(2)軍備管理・軍縮・不拡散
 米国のブッシュ政権は、ミサイル防衛計画(MD)の推進や不拡散政策の重視をはじめとする新たな戦略的枠組みの構築を提唱し、年末には、これまで米露間の核戦略の基盤となっていた対弾道ミサイル・システム制限(ABM)条約からの脱退をロシアに対して正式に通告した。また、米露両国とも戦略核兵器の大幅な削減を表明しているが、米国は、核兵器の削減方法等につき、従来の米露戦略兵器削減交渉(START)等の条約によるのではなく、一方的な削減措置を重視している。
 大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散の問題に加え、冷戦後に地域紛争や局地戦争が頻発する中で、過剰に蓄積・設置された小型武器、対人地雷等の通常兵器が実際に紛争の中で使用され、毎年五十万人以上もの犠牲者を出している。大量の犠牲者を出す「事実上の大量破壊兵器」ともいえるこれらの通常兵器は、犠牲者・被害者が一般市民の女性や子供であることが多く、また、紛争終結後の復興、人道支援を阻害する大きな要因ともなっている。
 こうした通常兵器の問題を、人間の安全保障や復興・開発支援の問題等と関連づけて捉える必要性が高まってきていると言える。
 日本にとって、軍縮・不拡散政策は、日本の安全保障政策を補完する重要な手段である。また、唯一の被爆国として、核兵器のない平和な世界を一日も早く実現するという国民の強い悲願に応えることができるよう取り組まなければならない課題である。
 このような認識に基づき、核軍縮・不拡散をはじめとして、生物・化学兵器も含む大量破壊兵器の廃棄・削減・管理に関して国際的体制を強化することに引き続き重点を置きつつ、通常兵器の軍縮の強化にも積極的に取り組んでいく考えである。また、一層の不拡散体制の強化に努めていく考えである。

第二節 国際経済

 二〇〇一年においても国際経済においてグローバル化の進展がみられた。そのような中で、九月十一日に発生した米国における同時多発テロは、航空業界、保険業界をはじめ、様々な分野に深刻な打撃を与え、グローバル化の度合いを深める世界経済に大きな影響を与えた。
 グローバル化の進展は、情報通信技術(IT)などの飛躍的発展とあいまって、多くの企業や個人が国境を越えて活躍する機会を増大させている。グローバル化は、本来、すべての国や人々に大きな恩恵をもたらし得る動きである。しかし、実際には、グローバル化によってもたらされる恩恵が必ずしもすべての国や人々によって等しく享受されているわけではなく、貧富の差の拡大などグローバル化の「陰」の部分にも注目が集まるようになっている。
 このような中、技術進歩が十分な効果を発揮し、すべての国や人々がこのグローバル化の恩恵にあずかれるようにするための体制作りが、国際経済にとっての大きな課題となっている。
 五月の第三回国連後発開発途上国(LDC)会議、七月のG8ジェノバ・サミット、十一月のドーハにおけるWTO第四回閣僚会議などは国際社会のそうした取組の一環である。日本はこのような国際社会の取組の中で積極的な役割を果たすとともに、開発途上国への二国間の支援等を通じ、グローバル化の「陰」の問題にも積極的に取り組んできている。
 なお、グローバル化の進展とともに、地域的及び二国間の経済連携の動きも進展しつつある。二〇〇二年の年頭に欧州十二か国でユーロ通貨の流通が開始されたことに示されるように、世界各地において、新たな経済秩序を模索する動きが続いている。日本は、WTOを中心とするグローバルな枠組みの強化を図ると同時に、二〇〇二年一月に日・シンガポール新時代経済連携協定が両国首脳間で署名されたことに象徴されるように、二国間の枠組みも推進していく。

第三節 開発途上国の開発問題と政府開発援助(ODA)

 今日、開発援助をめぐる内外の情勢は大きく変化しており、これに応じた日本の政府開発援助(ODA)のあり方が問われている。
 国際的な状況をみると、グローバルな課題が山積している。例えば、環境、感染症等の問題は、開発途上国の人々の生命に直接的な影響を与えるばかりか、一国の経済・社会基盤をも脅かす深刻な問題であり、国際社会が一致して取り組むべき課題である。紛争予防、平和構築といった分野についてもODAが果たす役割に注目が集まっている。
 さらに、二〇〇一年九月の米国同時多発テロに端を発したアフガニスタンをめぐる諸問題への取組は、ODAが日本外交の手段として極めて有効であることを再認識させた。
 また、近年、開発途上国に流れるODAの総量が増えない中、国際社会においては、援助のあり方をめぐり、援助手続の共通・画一化、また、プロジェクト型援助からプログラム型援助へ、タイド型援助からアンタイド型援助へといった議論もなされてきている。
 こうした新しい潮流の中で、開発途上国の援助ニーズの多様化に応えつつ、日本としてのODAの競争力をいかに確保するかが課題となっている。
 一方、国内の状況をみると、ODAに対する厳しい見方が国民の中に依然としてあり、現下の厳しい経済・財政状況を背景に、ODA予算は減少傾向にある。二〇〇二年度政府ODA予算についても、一般会計で前年度比約一〇%削減され、より重点的かつ効果的・効率的なODAを実施することがますます重要になっている。
 ODAに対しては、個々のプロジェクトの選定や実施、実施後のフォローアップが不透明であるとの観点からの批判が上がっている。また、個々の特定プロジェクトの決定に対し、特定政治家の関与があったのではないかという点につき、国会等の場で議論がなされている。
 このうち、ケニアの円借款案件であるソンドゥ・ミリウ水力発電計画については、関係者からの聴取等による事実関係の調査を行い、特定議員の関与はないとの調査結果が得られた。
 ODA改革については、川口外務大臣が二月に発表した「開かれた外務省のための10の改革」の中にも、国民の税金を無駄にしないようODAを透明性をもった形で実施することを明記しており、そのための具体的な方策が検討されることになっている。国民に対する説明責任を果たす観点から、政府としては改革への取組に一層努力を行う必要がある。

第四節 地球規模の諸課題

 グローバル化が進展し、変化する国際社会において、日本の安全と繁栄を確保するための基礎となる国際社会の安定と繁栄を実現するため、日本は、国際社会の主要な一員として、地球規模の諸課題の解決に向け積極的に取り組んでいく必要がある。
 二〇〇一年、日本は、自らが理念としている基本的人権の尊重や民主主義といった価値に基づく国際秩序を維持し、発展させていくため、国際社会による人権や民主主義の強化に向けた取組に一層積極的に取り組んできたほか、近年ますます重要となっている児童の権利の保護、促進といった分野においても、大規模の国際会議を日本で開催するなど積極的にイニシアチブを発揮してきた。
 また、人類の生存に対する脅威となり得る地球環境問題や、深刻化している国際組織犯罪等の問題に対処するため、国際社会と協力しつつ着実に取り組んできた。さらに、原子力の平和利用や科学技術分野における国際協力についても、国際機関や関係国と協力しつつ、様々な分野において活動を行ってきた。
 日本は、国際社会の一層の安定と繁栄を実現するため、こうした地球規模の諸課題の解決に向け、引き続き積極的に取り組んでいく考えである。

第三章 主な地域情勢

一 アジア及び大洋州

(1)中国とその近隣諸国・地域
 二〇〇一年、中国では、積極的な財政政策による持続的な経済成長が図られるとともに、引き続き社会的安定を重視した内政運営が行われた。また、七月に二〇〇八年の夏季五輪の開催地が北京に決定したほか、十月の上海でのAPEC首脳会議の成功、十二月のWTO加盟の実現など、国際舞台において大きな成果を収めた。
 二〇〇二年秋には、指導者の大幅な人事異動が予定される第十六回中国共産党全国代表大会を控えており、これまで以上に安定志向の慎重な舵取りが続けられていくと考えられる。
 台湾では、二〇〇〇年五月に民進党・陳水扁政権が成立したが、陳政権は立法院(国会に相当)で約三〇%の議席しか有さない少数与党であり、二〇〇一年に入っても、約五〇%の議席を有する国民党等の圧力のため、二月にはいったん決定した第四原子力発電所の建設中止を撤回するなど、困難な政局運営が続いた。十二月に行われた立法委員の全面改選は、国民党が大敗し、民進党、親民党、台湾団結連盟が大きく票を伸ばした。
 過去二十年以上好調であった台湾経済は、二〇〇一年に入って米国の景気減速などの影響から急速に悪化した。十二月、台湾は中国とともにWTO加盟が認められ、二〇〇二年一月一日、正式に加盟した。
 両岸関係については、「一つの中国」をめぐる中台双方の立場の隔たりが大きく、二〇〇一年も大きな政治的進展はなかった。その一方で、両岸間の経済往来は貿易、投資とも大きく進展している。

(2)朝鮮半島
 二〇〇一年、韓国は、米国経済の停滞や九月の米国同時多発テロの影響等を受け、厳しい経済運営を迫られた。
 内政では、就任当時、非常に高い支持率を維持していた金大中(キム・デジュン)政権は、国内経済の悪化や対北朝鮮政策に対する批判等から支持率が急落し、二〇〇一年は厳しい国政運営を強いられた一年であった。
 対外関係では、北朝鮮との関係では大きな進展はみられなかったものの、中国やロシアといった近隣諸国との関係の強化に取り組んできた。

(3)東南アジア
 ASEANは、一九九九年にカンボジアが加盟したことによりASEAN10として、東南アジア全域を一つの傘の下に包摂する地域協力体に発展を遂げたが、それに伴って、域内の政治体制の相違によって生ずる問題や経済格差の問題が顕在化することになった。
 特に、グローバル化の急速な進展に伴い、域内の経済格差はますます深刻となっており、ASEANにとって、その結束をいかに維持、さらには強化し一体性を確保していくかが重要な課題となっている。
 二〇〇一年は、インドネシア、タイ及びフィリピンにおいて新たな政権が誕生した。日本と地理的な近接性、密接な経済関係を有するASEAN諸国との良好な関係を今後も維持し、発展させていくことは、自らの安全と繁栄を大きく国際社会の安定と繁栄に依拠している日本にとって重要であり、こうした認識に基づいて、日本はASEANとの協力関係を進展させるとともに、ASEAN各国との二国間の関係の推進にも積極的に取り組んできた。

(4)南アジア
 南アジア地域では、アジアの主要な民主主義国であるインドが、最近の堅調な経済成長もあって、国際社会での存在感を高めてきた。一方で、同地域では、最大の懸念であるインド・パキスタン間のカシミールの帰属に関する問題や、核の不拡散問題といった国際社会の不安定要素もいまだ存在している。
 二〇〇一年には米国同時多発テロの発生を受け、インド及びパキスタンは、国際社会によるテロとの闘いを支持し、特に、パキスタンはこれまでの対アフガニスタン政策を変更し、従来孤立しがちであった自国の立場を好転させることに成功した。
 日本は、自らの安全と平和を確保するために基礎となる国際社会の安定と繁栄を実現するため、南アジア地域の安定の実現に向け積極的に取り組んできている。二〇〇一年には、インドとパキスタンとの間で要人の往来が実現し、インドとの間で日印共同宣言を発出した。またテロと闘うパキスタンへの経済支援を実施した。

(5)大洋州
 二〇〇一年、大洋州では、オーストラリアにおいて連邦議会選挙が行われ、与党保守連合が勝利し、ニュージーランドでは、クラーク首相による安定した政権運営が行われた。また、太平洋諸島地域では、引き続き注視する必要はあるものの、安定化に向けた動きがみられた。
 日本は、太平洋諸島各国の国連等の国際的枠組みにおける存在感の高まりやグローバル化の進展に伴う諸課題に共に取り組んでいくことの必要性を認識しており、二〇〇一年もこれらの国々との関係の強化に積極的に取り組んできた。

二 北米

(1)米国
 二〇〇一年一月、ジョージ・W・ブッシュ前テキサス州知事が、米国の第四十三代大統領に就任した。
 九月十一日の同時多発テロを受け、ブッシュ大統領は、テロ対策を主管する国土安全保障局を設置し、国境警備や空港警備の強化等のテロ対策を陣頭指揮するとともに、議会に対してテロ対策関連の立法提案を積極的に行うなど、大統領としての指導力を発揮した。議会も超党派の協力により大統領の要請に応え、包括テロ対策法、航空運輸保安強化法などを矢継ぎ早に成立させた。国民も、こうしたブッシュ大統領のテロ対策面での指導力を高く評価し、大統領への支持率は、一挙に九〇%近くにまで跳ね上がり、二〇〇二年初頭時点においても四か月連続で八〇%台の高い水準を維持している。
 二〇〇二年十一月には中間選挙が予定され、また、米国経済については、二〇〇一年三月以降、景気が後退局面入りしており、これらを背景に、テロとの闘いには直接関係のない経済対策等の国内政策について、民主党がブッシュ政権への攻勢を強めつつある。
 ブッシュ大統領は、外交の基本方針として、日本を含む同盟国や米州諸国との関係重視及び米国の国益重視を打ち出した。

(2)カナダ
 カナダではクレティエン首相の率いる自由党が、二〇〇〇年十一月に行われた連邦下院選挙後も安定した政権運営を続け、世論調査でも高い支持率を維持した。
 経済面では、米国経済の鈍化の影響を受けて、二〇〇〇年第4四半期以降景気の減速が明確となり、さらに米国同時多発テロの影響もあり、二〇〇一年の実質GDP成長率は一・五%となった。
 財政面では、九七年度に均衡財政を達成して以来黒字基調にある。
 外交面では、引き続き、多国間外交を重視する取組をみせた。

三 中南米

 中南米諸国では、近年、実体面における様々な課題を抱えているものの、制度としての民主主義は定着し、また、全体としては地域経済統合に向けた様々な取組が展開されてきた。一方で、二〇〇一年は、米国経済の低迷やアルゼンチンの経済情勢の影響を受け、中南米経済は減速した。
 日本は、二〇〇一年も、このような地域情勢を踏まえて、中南米地域の中長期的な安定の実現やエネルギー等資源の安定供給の確保、また、アジア諸国と中南米諸国との関係の強化に向け、数々の取組を行ってきた。

四 欧州

 二〇〇一年には、欧州連合(EU)は、その統合のプロセスをさらに進展させた。また、九月十一日の米国同時多発テロ以降、テロとの闘いを契機とする域内及び域外における協力の進展がみられた。
 欧州諸国では、英国で総選挙が実施され、ブレア首相率いる労働党が再び勝利し、また、イタリアでは上下両院選挙の結果、第二次ベルルスコーニ内閣が成立した。また、ポルトガルでは、統一地方選挙の結果を受け、グテーレス首相が辞表を提出した。
 中・東欧では、引き続き多くの国がEU加盟等を最優先の課題として様々な改革が実施されてきた。

五 ロシア及び旧ソ連新独立国家(NIS)諸国

 ロシアでは、プーチン大統領が、二〇〇一年も七〇%を超える国民の高い支持率と好調な経済に支えられ安定した政権運営を行うとともに、対外的にも首脳外交をはじめとして積極的な外交を展開し、強い国家としてのロシアを印象づけようと様々な取組を行ってきた。
 旧ソ連新独立国家(NIS)諸国では、中央アジアにおける宗教過激派の浸透が問題となっており、様々な取組が行われたほか、九月の米国同時多発テロ後は、米軍機等の領空通過を認めるなど、テロ対策における国際的連帯の強化に向け協力的な姿勢が示された。

六 中東

 イラクは、九〇年八月のクウェート侵攻以来、国連の経済制裁の下に置かれている。日本は、イラクがUNMOVICへの協力をはじめとする国連安保理決議を履行することが極めて重要であると考えており、他の国連加盟国とともにイラクに対し、関連安保理決議の履行を働きかけてきた。
 一方、国連による経済制裁が長期化する中、イラク国内では医薬品や食料等の不足など人道状況が悪化している。日本としても、イラクの一般国民が経済制裁の影響に苦しむのは適当でないと考えており、安保理で行われている経済制裁の見直し作業を支持している。
 イランでは、二〇〇一年六月に実施された第八期大統領選挙において、ハタミ大統領は改革路線に対する保守派の激しい抵抗(改革支持の活動家等の逮捕)が続く中で出馬することになった。国民からは前回選挙を上回る支持(得票率七七%)を得て再選を果たしたものの、保革の対立は継続している。
 日本は、中東地域において強い影響力を有するイランが改革及び国際社会との対話や、緊張緩和路線を一層推進し、中東地域及び国際社会の平和と安定のために一層積極的役割を果たすことが重要であると考えており、様々な対話の機会を通じてイランに対し働きかけを行ってきている。

七 アフリカ

 アフリカにおいては、多くの国が構造調整改革努力を続けているものの、依然として貧困からの脱却は難しく、サハラ以南アフリカ諸国の約三分の二は重債務貧困国(HIPCs)と認定されている。また、感染症の蔓延は開発への重荷となっているほか、一部諸国では、関係国等の努力にもかかわらず紛争が長期化するなど、政治的混乱が継続している。
 一方で、憲法上の手続きに従って民主的かつ平和裡に選挙が行われる傾向が強まり、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)においても、民主主義や良い統治(グッド・ガバナンス)を開発の前提条件として重視するなど、着実に民主化の流れは定着しつつある。

第四章 国際交流と広報活動

一 国際文化交流の推進

 今日の国際社会においては、情報通信技術(IT)の発展等に伴い、国際世論がごく短期間のうちに形成されることがあるなど、情報が以前にも増して各国の政策決定に大きな影響を持ち始めている。日本が効果的な外交を展開していくためには、諸外国の日本に対する正しい理解を増進していくことは極めて重要であり、文化交流はこのための重要な手段である。
 日本は、一方的に日本文化を海外に紹介するだけではなく、日本における外国文化の紹介を支援することにより、日本国民の対外理解の増進についても積極的に取り組んでいる。
 さらには、開発途上国が自国の有形あるいは無形の文化遺産を保存することを援助することにより、文化的多様性の維持、発展に貢献している。
 二〇〇一年には、文明間の対話国連年に積極的に貢献するとともに、英国等における大型事業の実施、韓国や中国との大型事業実施のための準備、青少年交流、開発途上国への文化面での協力などを行ってきた。

二 国内世論と広報及び諸外国の対日理解

 国民から理解され、支持された外交を行っていくためには、外交政策について国民に情報をわかりやすく発信、提供し、また、日本外交のあり方について、国民と幅広く意見交換を行い、国民とともに外交を展開していくことが不可欠である。
 最近の国際関係の緊密化に伴い、外交問題として扱われる事柄が、国民の生活に直接影響を及ぼすことが多くなり、国民の外交問題に関する関心は一層高まっている。外務省としては、このような高まりゆく国民の関心に的確に応え、説明責任を十分に果たすことが必要である。
 さらに、外交政策は、刻々と変化する内外情勢、多様な関係者の利害等を総合的に勘案しながら進められる。
 このため、国民が外交政策の内容や背景を正確に把握するためには、外交当局が必要な情報を、適時に、わかりやすい形で提供することが極めて重要である。また、めまぐるしく変化する国際社会の中で、日本の国益を最大化し、より良い国際秩序を構築していくためには、政府が、先見性をもって新たな考え方を国民に提示することも重要であり、そのための情報発信についても積極的に取り組んでいく必要がある。
 外務省は、以上のような観点から、わかりやすい情報の発信、提供を積極的に行い、国民の理解と支持を得ながら、国民とともに外交を展開していくための取組を行ってきている。

第五章 外交体制

一 外務省改革

 外交を実施していく上で重要なことは、外交が国民から理解され、支持されるものでなくてはならないということである。
 一連の不祥事により失墜した外務省への国民の信頼を一刻も早く回復するため、外務省は、二〇〇一年を通じて、外務省改革に全力で取り組んできた。このような外務省改革に向けての努力は、二〇〇二年に入ってますます強化されており、外務省にとって最も重要な課題として、省員をあげての取組が続いている。
 二〇〇一年に明らかになった松尾元大臣官房総務課要人外国訪問支援室長による公金詐欺事件など一連の外務省職員による不祥事は、外務省に対する国民の信頼を失墜させた。国民全体の奉仕者である外務省職員が、国民の貴重な税金を不正に詐取したことは、いかなる理由があろうとも、決して許されるべきではない。
 また、十一月にはいわゆるプール金問題についての調査結果が発表され、省員の公金の使用、管理に対する認識の甘さが指摘された。二〇〇一年を通じて、外務省は、これら不祥事について厳しい反省に立ち、外交及び外務省自身に対する国民の信頼回復に努めてきた。
 具体的には、斎藤明毎日新聞社社長以下七名の民間有識者からなる外務省機能改革会議から四月二十四日に発表された提言を踏まえ、六月六日、外務省改革要綱を策定し、改革作業に着手した。
 まず、田中外務大臣の包括的な指揮・監督の下、杉浦外務副大臣を長とする外務省改革要綱推進委員会や綱紀引き締めのためのプロジェクトチームを発足させ、「効率的かつ効果的な外交体制の実現」(外務省改革要綱第二章)や「不正の疑惑と根絶」(同要綱第四章)のため、報償費制度の見直し、調達業務の一元化などをはじめとする予算・会計手続の改善を実施した。
 また、新たに本省業務について監察制度を創設し、同時に、公認会計士などの外部専門家の参加を得ながら従来の査察の強化なども実施した。
 さらに、外務省改革要綱推進委員会の下に、丸谷、山口、小島外務大臣政務官を長に、情報サービスの拡充、人事制度改革、領事業務改革のそれぞれに関するプロジェクトチームを立ち上げ、「国民のための外交・国民とともに歩む外交」(同要綱第一章)や「強力な外交のための人事体制改革」(同要綱第三章)にも取り組んだ。特に、人事制度改革については、中央官庁としては初めて本省審議官等の幹部ポストを含む省内公募制の導入などを決定した。
 二〇〇二年二月一日、川口外務大臣が就任した。同日行われた就任記者会見において、川口外務大臣は、外務省改革を最大の優先課題と位置づけ、「透明性」、「スピード」、「実効性」を標語に、従来の改革作業を加速し、外務省に対する国民の信頼を一刻も早く回復することを表明した。
 また、就任直後の二月四日に行われた第百五十四回国会における川口外務大臣による外交演説においては、外務省改革を力強く実施していくとの考えを改めて述べるとともに、改革を推進していくにあたって、外交に関する意見は、幅広く謙虚に拝聴するとともに、不当なものは受け入れず、外交への特定の圧力を排除していくとの考えを述べた。
 こうした方針に基づき、二月十二日、川口外務大臣は、今後の改革方針として、「開かれた外務省のための10の改革」を発表し、改革を具体化する方途として、二月二十六日、宮内義彦オリックス株式会社代表取締役会長を座長に、各界で活躍する有識者からなる「変える会」の発足を発表した。
 三月六日、「変える会」は、川口外務大臣の出席の下、第一回会合を開催し、活動を開始した。「変える会」は、今後議論を重ね、五月中旬までに中間報告を、さらに、遅くとも今夏までに最終報告を作成し、「開かれた外務省のための10の改革」の中で例示された措置を含め、外務省改革のためにとるべき諸施策を川口外務大臣に提言として提出する予定である。これらの報告には、各措置の実施期限と、できる限り具体的な目標が盛り込まれる方針である。
 同時に、外務省としては、「変える会」の提言を待つことなく実施することができる措置については、直ちに実施に移すことで、外務省改革の推進力を維持しながら、改めるべき点は改め、反省すべき点は反省し、国民全体の奉仕者との意識改革を外務省職員に改めて徹底しながら、国民の理解と支持に支えられ、国益を守る強靱な外交ができる体制を整備していく決意である。
 「開かれた外務省のための10の改革」には、外務省が全力を上げて取り組まなければならない具体的な課題が示されている。
 特に、北方四島住民支援や在京コンゴ民主共和国臨時代理大使等に関する外務省の一連の調査で明らかとなった、鈴木宗男衆議院議員と外務省との関係は、社会通念に照らしてあってはならない異常な状態であり、行政の公平性、透明性に対する疑念を国民に抱かせたことにつき、外務省として深く反省するとともに、国民に深くお詫びしている。

二 外交実施体制の整備

 現在の国際社会では、グローバル化が一層進展し、国際社会における相互依存関係が深化してきており、それに伴って、外務省が取り扱う業務量も増大の一途をたどっている。
 このように質、量の両面で増大、複雑化を続けている外交課題に、外務省がこれまで以上に能動的かつ迅速に対応していくためには、外交実施体制の整備を図ることが急務である。二〇〇一年、外務省はこうした課題にも取り組んできた。

三 海外安全対策と領事移住にかかわる諸問題

 外務省の業務の中でも、国民に直接接することが多く国民生活との関係も深い領事業務は、一般の外交業務と並んで外務省の役割の両輪の一つである。
 こうした領事業務の重要性を踏まえ、外務省機能改革会議の提言を受けて二〇〇一年六月に発表された外務省改革要綱の中では、領事業務についても抜本的改革の方向性が示された。
 この政策を推進するために、小島外務大臣政務官を長とする領事業務改革プロジェクトチームが設置され、@省員の意識改革及び研修の強化、A領事窓口サービスの改善、B邦人保護体制の拡充、という三本の柱の下で検討が重ねられ、現在までにいくつかの成果が得られた。
 外務省は、今後ともさらに検討を続け、海外における国民の安全確保に努めるとともに、より利便性の高い領事サービスを提供することを目指して努力を進めていく考えである。


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消費者物価指数の動向


―東京都区部(四月中旬速報値)・全国(三月)―


総 務 省


◇四月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九七・九となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は一・三%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二年八か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九七・九となり、前月比は〇・一%の下落。前年同月比は一・一%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年七か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九八・六となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
  生鮮魚介は四・四%の上昇。
   <値上がり> いか、あじなど
   <値下がり> さけ、かれいなど
  生鮮野菜は一三・〇%の上昇。
   <値上がり> トマト、ほうれんそうなど
   <値下がり> えのきだけ、なすなど
  生鮮果物は〇・一%の上昇。
   <値上がり> バナナ、りんご
   <値下がり> いちご、キウイフルーツなど
(2) 住居は九七・七となり、前月に比べ〇・三%の下落。
  家賃が〇・四%の下落。
   <値下がり> 民営家賃(木造中住宅)など
(3) 光熱・水道は九七・一となり、前月に比べ二・九%の下落。
  電気・ガス代が四・〇%の下落。
   <値下がり> 電気代など
(4) 被服及び履物は九七・五となり、前月に比べ三・九%の上昇。
  シャツ・セーター・下着類が八・一%の上昇。
   <値上がり> 婦人Tシャツ(半袖)など
(5) 保健医療は九八・八となり、前月に比べ一・三%の下落。
  保健医療サービスが一・九%の下落。
   <値下がり> 診療代など
(6) 教育は一〇二・二となり、前月に比べ一・二%の上昇。
  授業料等が一・二%の上昇。
   <値上がり> 私立大学授業料など
(7) 教養娯楽は九五・二となり、前月に比べ〇・八%の上昇。
  教養娯楽サービスが一・六%の上昇。
   <値上がり> ゴルフプレー料金など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 家賃(〇・九%下落)、教養娯楽用耐久財(一八・二%下落)、電気代(五・九%下落)、生鮮野菜(六・〇%下落)、家庭用耐久財(七・七%下落)、教養娯楽用品(三・五%下落)、生鮮魚介(四・四%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

◇三月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・一となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は一・二%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二年七か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・四となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は〇・七%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年六か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九七・八となり、前月と同水準。
  生鮮魚介は三・九%の上昇。
   <値上がり> いか、いわしなど
   <値下がり> かき、あじなど
  生鮮野菜は四・五%の下落。
   <値上がり> トマト、ばれいしょなど
   <値下がり> きゅうり、レタスなど
  生鮮果物は二・五%の下落。
   <値上がり> みかん、バナナなど
   <値下がり> いちご、いよかんなど
(2) 家具・家事用品は九三・五となり、前月に比べ〇・四%の下落。
  家庭用耐久財が〇・八%の下落。
   <値下がり> 電気冷蔵庫など
(3) 被服及び履物は九三・四となり、前月に比べ二・八%の上昇。
  衣料が六・五%の上昇。
   <値上がり> 婦人上着など
(4) 教養娯楽は九四・六となり、前月に比べ〇・六%の上昇。
  教養娯楽サービスが一・一%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 生鮮野菜(一九・二%下落)、教養娯楽用耐久財(一八・四%下落)、生鮮果物(八・一%下落)、家庭用耐久財(七・八%下落)、生鮮魚介(三・七%下落)、衣料(三・一%下落)、通信(二・五%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。




















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消費動向調査


―平成十四年三月実施調査結果―


内 閣 府


 消費動向調査は、家計消費の動向を迅速に把握し、景気動向判断の基礎資料とするために、全国の普通世帯(単身世帯及び外国人世帯を除いた約三千万世帯)を対象に、約五千世帯を抽出して、消費者の意識、主要耐久消費財等の購入状況、旅行の実績・予定、サービス等の支出予定について、四半期ごとに調査している。また、年度末にあたる三月調査時には、主要耐久消費財等の保有状況、住宅の総床面積についても併せて調査している。
 今回の報告は、平成十四年三月に実施した調査結果の概要である。

一 調査世帯の特性

 平成十四年三月の調査世帯の世帯主の平均年齢は五三・一歳(全世帯、以下同じ)、平均世帯人員は三・四人、うち就業者数は一・七人、平均持家率は七六・三%となっている。
 また、有効回答率は九九・九%(有効回答世帯数は五千三十六世帯)となっている。

二 消費者の意識

(1) 消費者態度指数(季節調整値)の調査結果
 消費者意識指標七項目中五項目を総合した消費者態度指数は、「物価の上がり方」に関する意識が悪化したものの、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」、「暮し向き」及び「収入の増え方」に関する意識が改善したため、三八・四(前期差一・五ポイント上昇)となり、三期ぶりに上昇した(第1図参照)。
(2) 各調査項目ごとの消費者意識指標(季節調整値)の調査結果
 各消費者意識指標について平成十四年三月の動向を前期差でみると、「物価の上がり方」に関する意識(二・九ポイント低下)が悪化したものの、「雇用環境」に関する意識(五・〇ポイント上昇)、「耐久消費財の買い時判断」に関する意識(二・二ポイント上昇)、「暮らし向き」に関する意識(〇・九ポイント上昇)及び「収入の増え方」に関する意識(〇・六ポイント上昇)が改善を示した(第1表参照)。

三 サービス等の支出予定(季節調整値)

 平成十四年四〜六月期のサービス等の支出予定八項目の動きを「今より増やす予定と回答した世帯割合」から「今より減らす予定と回答した世帯割合」を控除した数値(サービス支出D.I.)でみると、以下のとおりである(第2図参照)。
(1) 高額ファッション関連支出D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス一〇・八%のところ、今期はマイナス一一・四%となっている。
(2) 学習塾等補習教育費D.I.は、他の支出D.I.と比較して高い水準にあり、前期が五・二%のところ、今期は六・二%となっている。
(3) けいこ事等の月謝類D.I.は、他の支出D.I.と比較して高い水準にあり、前期が一・四%のところ、今期は一・三%となっている。
(4) スポーツ活動費D.I.は、このところマイナスとなっており、前期がマイナス一・三%のところ、今期はマイナス〇・九%となっている。
(5) コンサート等の入場料D.I.は、このところマイナスとなっており、前期がマイナス一・九%のところ、今期はマイナス一・八%となっている。
(6) 遊園地等娯楽費D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス一四・六%のところ、今期はマイナス一四・一%となっている。
(7) レストラン等外食費D.I.は、マイナスが続いており、前期がマイナス二五・七%のところ、今期はマイナス二三・二%となっている。
(8) 家事代行サービスD.I.は、おおむね安定した動きが続いており、前期がマイナス二・七%のところ、今期はマイナス二・〇%となっている。

四 旅行の実績・予定(季節調整値)

(1) 国内旅行
 平成十四年一〜三月期に国内旅行(日帰り旅行を含む)をした世帯割合は、前期差で〇・六ポイント上昇し三六・四%となった。旅行をした世帯あたりの平均人数は、前期差で〇・一人減少し二・九人となった。
 十四年四〜六月期に国内旅行をする予定の世帯割合は、十四年一〜三月期計画(以下「前期計画」)差で〇・七ポイント低下し三〇・八%、その平均人数は、前期計画差で〇・一人減少し二・九人となっている。
(2) 海外旅行
 平成十四年一〜三月期に海外旅行をした世帯割合は、前期差で一・一ポイント上昇し三・九%となった。その平均人数は、前期差で〇・二人減少し一・六人となった。
 十四年四〜六月期に海外旅行をする予定の世帯割合は、前期計画差で〇・六ポイント上昇し三・七%、その平均人数は、前期計画差で〇・二人減少し一・七人となった。

五 主要耐久消費財等の普及・保有状況

(1) 普及状況(所有している世帯数の割合)
 平成十四年三月末における主要耐久消費財等の普及率をみると、第2表のとおりである。
 プッシュホン(十三年三月末七七・二%→十四年三月末九三・五%、以下同じ)、パソコン(五〇・一%→五七・二%)、温水洗浄便座(四三・二%→四七・一%)、ファクシミリ(三五・五%→三九・三%)及び温水器(三三・〇%→三六・〇%)などの普及率が前年度に比べて上昇した。
 また、電気冷蔵庫、電気洗たく機及びカラーテレビについては、大型化、高性能化を反映して下位品目の普及率が低下し、上位品目の普及率が伸びている(電気冷蔵庫・三百リットル以上七二・五%→七四・四%、三百リットル未満三八・八%→三七・八%、電気洗たく機・全自動八二・〇%→八三・八%、その他二二・六%→二一・一%、カラーテレビ・二十九インチ以上五〇・九%→五一・三%、二十九インチ未満八三・五%→八三・四%)(第2表参照)。
(2) 保有状況(百世帯あたりの保有数量)
 平成十四年三月末における主要耐久消費財等の百世帯あたりの保有数量をみると、第3表のとおりである。
 プッシュホン(十四年三月末二三九・八台、前年度差一一三・二台増、以下同じ)、パソコン(七八・四台、一二・六台増)、ルームエアコン(二二九・九台、一二・五台増)、じゅうたん(一三六・七枚、七・六枚増)及び温水洗浄便座(五九・一台、六・一台増)などの保有数量が前年度に比べて増加した。
 また、ルームエアコン及び電気洗たく機については、下位品目の保有数量が減少し、上位品目の保有数量が増加している(ルームエアコン・冷暖房用一五・〇台増、冷房用二・六台減、電気洗たく機・全自動二・〇台増、その他一・五台減)(第3表参照)。

(参 考)

一 消費者意識指標(季節調整値)(レジャー時間、資産価値)

 平成十四年三月の「レジャー時間」に関する意識は、前期差で〇・九ポイント上昇し四一・三となった。
 「資産価値」に関する意識は、前期差で二・一ポイント上昇し三七・四となった。

二 主要耐久消費財等の購入状況・品目別購入世帯割合の動き(原数値)

 平成十四年一〜三月期実績は、二十七品目中十七品目の購入世帯割合が前年同期に比べて減少し、八品目が増加した。なお、二品目が横ばいとなった。
 十四年四〜六月期実績見込みは、二十七品目中十二品目の購入世帯割合が前年同期に比べて減少し、七品目が増加している。なお、八品目が横ばいとなっている(第4表参照)。

三 主要耐久消費財の買替え状況

 平成十四年一〜三月期に買替えをした世帯について買替え前に使用していたものの平均使用年数をみると、普及率の高い電気冷蔵庫、電気洗たく機などは九〜十一年となっており、その理由については故障が多い。また、「上位品目への移行」による買替えが多いものとしてパソコン、携帯電話、「住所の変更」による買替えが多いものとしては、ルームエアコンがあげられる。




言葉の履歴書

◇ブロードバンド−Broadband−

 直訳すると「広い帯」。最近話題のADSLや光ファイバー利用のCATV回線などで大容量の情報を高速で送受信できる通信環境のことです。これに対して従来の電話回線やISDN回線の通信環境は「ナローバンド(狭い帯)」と呼ばれます。
 いまのところ明確な規定はありませんが、五〇〇kbps(一秒間に五〇〇キロビットを通信)程度以上の通信回線が「ブロードバンド」とされています。従来の電話回線やISDN回線は数十kbpsなので、これまでの数倍から数十倍もの速度で通信することができることになります。
 本格的なブロードバンド時代の到来によって、今後はインターネットで音声や映像の大容量情報を配信するサービスが増えていくと予想され、テレビ放送のようなこともインターネットでできるようになりそうです。
 通信事業者や各種のサービス事業者、ポータルサイトなどの事業者は、こぞってブロードバンド時代に向けた設備投資を進めているところです。






    <6月19日号の主な予定>

 ▽中小企業白書のあらまし…………中小企業庁 

 ▽毎月勤労統計調査(三月)………厚生労働省 




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