官報資料版 平成14年7月10日




                  ▽食料・農業・農村白書のあらまし………………………農林水産省

                  ▽消費者物価指数の動向(五月)…………………………総 務 省

                  ▽景気予測調査(五月)……………………………………財 務 省

                  ▽税金365日 所得税の予定納税(第一期分)………国 税 庁











平成13年度


食料・農業・農村白書のあらまし


―食料・農業・農村の動向に関する年次報告―


農林水産省


 「平成十三年度食料・農業・農村の動向に関する年次報告」(食料・農業・農村白書)は、平成十四年五月十七日閣議決定のうえ、国会に提出、公表された。
 平成十三年度は、構造改革の断行を掲げる小泉内閣のもとで、食料・農業・農村施策においても構造改革の推進や循環型社会の構築が重要な課題となった。また、九月には、我が国で初めてBSE(牛海綿状脳症)の発生が認められ、これを契機として国民への「食」の安全と信頼の確保が大きくクローズアップされた。平成十三年度食料・農業・農村白書は、これら課題を中心に分析・検討を行い、今後の課題と施策の展開方向等について国民的な理解を深めることをねらいとして作成した。
 本報告のあらましは、次のとおりである。

第T章 食料の安定供給システムの構築

第一節 BSE等我が国の「食」が直面する課題

(1) 「食」の安全性及び品質の確保
 平成十三年九月、我が国で初めてBSEに感染した乳用牛が確認された。これに対応して、政府は諸般の対策を講じ、同年十月にはBSEの疑いのない安全な牛肉等の供給体制を構築した(第1図参照)。また、肉骨粉等を含む家畜用飼料の製造・販売等を法的に禁止するなどの防疫体制を強化した。
 このBSE発生に際しての一連の行政対応上の問題を検証し、今後の畜産・食品衛生行政のあり方について調査検討を行うため、「BSE問題に関する調査検討委員会」が設置され、十四年四月に報告が取りまとめられた。この報告では、危機管理体制の欠落、消費者保護の軽視、政策決定過程の不透明さ、情報公開の不徹底を厳しく指摘している。
 同報告書を踏まえ、内閣総理大臣は、厚生労働大臣及び農林水産大臣に対し、消費者保護重視の観点から、食品の安全性の確保に関連する法制度の抜本的見直しを含めた万全の対応を期すこと及び関係閣僚会議を設け、新たな行政組織のあり方を中心に具体案の作成、次年度予算への反映をさせるよう指示した。
 今後、政策の軸足を消費者サイドに大きく移し、「食」の安全と安心を確保するため、農林水産政策の大胆な見直し・改革を断行することとなった。
 近年、我が国においては、BSEの発生以外にも大規模な食中毒事故等の食品の安全性にかかわる出来事が相次いだことにより、消費者の「食」の安全性に対する関心が高まっている。行政機関を含め「食」の供給に携わる関係者は、食品の安全性確保のための取組みを重ねていくことが必要である。
 こうしたなかで我が国の食料供給の実態をみると、原材料の海外依存度が強まり、加工・調理食品の普及等により多様化かつ複雑化している。このため、生産から消費までの各段階での関係者の広範な連携・協力が不可欠である。
 また、食品の安全性については、国際的に注目されている手法である「リスク分析」の実施を検討し、積極的な情報開示等により消費者サイドと供給サイドとの相互理解を通じた信頼の確保に努めていくことが必要である。
 こうした考え方を具体化し、食品事故発生時の追跡調査や回収、生産情報の提供を通じて消費者と生産者の「顔の見える関係」を確立し、消費者の信頼を確保するといった観点から、IT技術の活用等による食品のトレーサビリティ・システムの導入に向けた取組みが重要となっている。
 他方、消費者の食品の安全性に対する関心が高まっているなか、消費者が自己の判断で適切に商品を選択できるような食品の表示・規格制度の充実・改善が重要となっている。
 食品の表示をめぐっては、十四年一月以降牛肉の原産地等に関する虚偽表示が相次いで発覚している。食品の表示制度は、事業者に適正な表示を行わせることによって消費者が食品を選択できるようにすることが目的であることから、今回の事態を踏まえ食品の表示制度を見直し、その改善及び強化を急ぎ実施するなど、消費者の安心と信頼の回復への最大限の努力が求められている。

(2) 食料消費の動向
 我が国経済が緩やかなデフレの状態にあるなかで平成十二年度における食料品価格は、全般的に低下した(前年度比一・三%低下)。また、非農家世帯の一人当たりの実質食料費支出は、四年連続で減少した(前年度比〇・六%減少)。費目別にみると、家庭内での調理にかかわる主食費、副食費への支出割合が低下する一方で、外食及び調理された食品への支出割合は増加傾向にある(昭和六十年:二一・三%→平成十二年:二八・二%)。
 こうしたなか、消費者の食料や農業に関する知識・関心が低下するなど、「食」と「農」の距離拡大を認識している人は六割以上に達している。このため、消費者と生産者の情報の疎通や子ども達への食生活や農業に関する教育、農業体験等の推進により、「食」と「農」の一体化を図ることが必要である。

(3) 我が国の食生活の現状と「食生活指針」の推進
 我が国の食生活は、穀類を多く摂るアジア諸国と、肉類、牛乳・乳製品及び油脂類の消費が多い欧米諸国の中間の性格をもっているが、近年、炭水化物の比率が低下し、脂質が上昇しており、欧米型に近づいている。
 こうしたなか脂肪の過剰摂取、鉄及びカルシウムの不足といった栄養バランスの崩れが問題になっており、生活習慣病予防のためにも注意を払うべき課題となっている。この問題に対処するうえで、「和食」が、栄養バランスのとれた健康食として見直されている。米を中心とした食生活により、必要な栄養素をバランスよく摂取していくことが必要である。
 また、生活スタイルの多様化等による「欠食」、「孤食」等の食生活の乱れが問題となっている。特に子ども達の食生活の乱れは、健康を損ねるだけでなく、精神や社会性の発達にも大きな影響を及ぼすことが懸念されており、家庭における規則正しい食生活を心がけることがきわめて重要である。
 こうした食生活上の課題の解決のため農林水産省、文部省及び厚生省が共同で策定した、「食生活指針」の一層の浸透及び実践が重要であり、国や関係機関が支援を行いながら、学校教育の場をはじめ、家庭、職場、地域における国民運動的な取組みの推進が必要である。

(4) 食品産業
 農業・食料関連産業は全産業の国内総生産の一〇・三%(平成十一年度)を占める「一割産業」である。この内訳をみると、農水産業の占める割合が相対的に低下する一方、関連製造業、飲食店及び関連流通業等の食品産業の占める割合が上昇している。
 一方、近年のデフレ傾向のもとでの外食企業間の競争の激化により、外食産業の市場規模は九年以降縮小傾向にある。業界各社の人件費や仕入コスト等の削減努力は、食材の流通・生産段階にも影響を及ぼしており、国内の農業生産者においては実需者ニーズに対応した農業生産の推進と食品産業との連携が必要である。
 また、食品小売業は、コンビニエンス・ストア等の店舗数・年間販売額が増加し、従来型の食料品専門店等が減少するなど業態に変化がみられる。また、近年、生協や農協等による産直、産地と大型ユーザーとの直接取引、インターネットを使った取引等の動きがみられ、食品の流通経路は多様化している。

(5) 食料品の内外価格差
 各年の内外価格差は為替レートの影響を受けて変動しており、食料品の内外価格差は、生産段階の価格に加え、流通・加工の各段階のコストを反映して形成されることから、内外価格差縮小のためには、生産から消費までの各段階におけるコスト削減に向けた関連産業全体の努力が必要である。

第二節 諸外国の農政動向

(1) 食品安全行政をめぐる動き
 BSE等の問題を契機として消費者の食品の安全性に関する意識が世界的規模で高まっており、国際的な議論も活発化している。EU、ドイツ、フランス、英国及びオーストラリア等の諸外国においては食品の安全性を確保するための行政の再編の動きがある。
 近年では、「リスク評価」、「リスク管理」、「リスク・コミュニケーション」からなる「リスク分析」の手法を食品の安全性確保に応用することが国際的な潮流となっており、効果的な食品安全行政実施のためには、「リスク評価とリスク管理の機能的分離」が重要であると考えられている。
 また、リスク管理の手法としては、「食卓から農場まで」を対象とした政策の展開が必要である。具体例としては、トレーサビリティ・システムの導入がある。

(2) 農業経営政策等をめぐる動き
 WTO体制の下で、EU、米国等の諸外国は価格支持を削減し、作物保険等による所得安定や直接支払いによる生産維持・環境保護へシフトする傾向にある。

(3) 中国のWTO加盟をめぐる動き
 平成十三年十二月、中国がWTOに加盟した。中国のWTO加盟に際しては、「対中セーフガード」創設等の条件が付されているが、中国が加盟条件を確実に履行した場合、同国の穀物、大豆油の輸入が増加する見込みである。一方、野菜等の労働集約的作物については、輸出攻勢が引き続き強まる可能性が高い。また、人民元の為替レートの適正化についても議論になっていくと考えられる。

第三節 食料自給率と食料安全保障

(1) 食料自給率
 我が国は、食料の多くを輸入に依存しており、食料自給率は主要先進国のなかで最低の水準である。食料自給率は長期的に低下傾向にあり、昭和四十年度の七三%から平成十二年度には四〇%と大きく低下している。世界の食料需給が長期的にはひっ迫する懸念もあるなかで、国民の多くがこうした状況について不安を抱いている。
 今後、自給率の維持・向上を図っていくためには、消費面では脂質の摂取過多の改善等の「望ましい食料消費の姿」の実現や食料ロスの削減、生産面では麦・大豆の品質や生産性の向上による需給のミスマッチの解消等による、「農業生産の努力目標」の達成が重要である。これに向けて、国のみならず消費者、食品産業事業者及び農業生産者、さらには地方公共団体を含めた関係者全体での取組みが必要である。

(2) 食料安全保障
 平成十四年三月、「不測時の食料安全保障マニュアル」が策定された。食料の安定供給確保のためには、平素からの取組みに加え、凶作や輸入の途絶等の不測の要因により国内の食料需給がひっ迫するような事態においても、事態の深刻度に応じた機動的な対策の実施が必要である。

第四節 世界の農産物需給と我が国の農産物貿易の動向等

(1) 世界の穀物需給
 世界の穀物の需給動向は、長期的にみて過剰期とひっ迫期を繰り返してきており、最近は緩和基調で推移している。
 しかしながら、将来の世界の食料需給については、多くの不安定要因が存在している。需要面では、開発途上国を中心とした大幅な人口増加や所得水準の上昇、都市化によるライフスタイルの変化等に伴って食用及び飼料用穀物の需要は大幅に増加が見込まれる。一方、供給面では、これまで世界の人口増加を支えてきた単収の伸びに鈍化傾向がみられるとともに、地球温暖化や異常気象の影響等の環境制約が指摘されており、不確実性要因が増大している。
 さらに、WTO体制のもとで主要な農産物の生産や輸出が特定の少数の国々に集中する傾向が強まっており、短期的な供給の弾力性が失われ、異常気象等の外的ショックにより市場が不安定化する可能性がある。

(2) 我が国の農産物貿易
 我が国の食料輸入は、数量ベースで増加、金額ベースで減少している。品目別の輸入量については、穀物や油脂類等がほぼ横ばい、野菜、肉類等が増加している。生鮮野菜の輸入量は、過去五年間に一・五倍に増加しており、なかでも中国からの輸入が三・四倍、韓国からの輸入が六倍と急増している。
 また、近年、我が国の貿易黒字は減少傾向で推移しており、平成十二年七月から平成十三年十二月まで十八か月間連続で前年同月比マイナスとなっている。今後、国内生産と輸入のあり方を検討していくうえで、このような国際収支の動向についても十分に留意していくことが重要である。

(3) 国際協力
 平成八年の「世界食料サミット」では、世界の栄養不足人口を二〇一五年までに半減することを目標とする「ローマ宣言」が採択された。しかし、現在も栄養不足人口の減少ペースは緩慢である。我が国は後述の「WTO農業交渉日本提案」において、国際備蓄の枠組みの検討を提案している。

第五節 WTOをめぐる動き

(1) WTO農業交渉の位置付け
 平成十二年初めから開始されているWTO農業交渉においては、食料・農業・農村基本法の理念やこれに基づく施策が国際規律のなかで正当に位置付けられるとともに、二十一世紀の我が国の農業者が将来展望をもって農業に取り組むことができるような交渉結果を獲得することが重要である。
 このような認識のもと、我が国は、平成十二年十二月に「多様な農業の共存」を基本的哲学とする「WTO農業交渉における日本提案」を取りまとめ、WTO事務局へ提出した。

(2) 我が国の交渉提案とWTO農業交渉の今後の課題
 平成十三年十一月、カタルのドーハにおける第四回WTO閣僚会議において新ラウンドを立ち上げる閣僚宣言が採択された。既に先行して開始されている農業交渉は、新ラウンドの一部として他の分野とともに一括して合意されるべきものとして位置付けられた。同宣言では、農業関係について非貿易的関心事項に配慮すべきことが記述されるなど、我が国の提案を主張していくことが可能となる枠組みも確保された。
 今後の農業交渉においても、我が国の考え方を力強く主張するとともに、EU等の多面的機能フレンズ諸国と連携し、できるだけ多くの開発途上国等の賛同を得つつ、農産物輸出国に対して粘り強い交渉を行っていくことが必要である。

第U章 構造改革を通じた農業の持続的な発展

第一節 我が国農業の生産構造の現状と改革

(1) 我が国農業の構造改革の推進
 平成十二年の農業産出額に占める主業農家の割合は、米では三六%であり、他作目を大きく下回っている。また、稲作農家一戸当たりの作付面積は昭和三十五年当時の一・五倍(八十四アール)にとどまるなど、米を中心に構造改革が遅れている。
 また、近年の農産物価格の下落や農産物の輸入量の増加が「効率的かつ安定的な農業経営」やこのような経営を目指す意欲と能力のある経営体(育成すべき農業経営)に悪影響を及ぼしつつあることが懸念されている。このため、「育成すべき農業経営」が経営規模の拡大や作物転換等の経営の革新に取り組むことができる環境を整備し、農業の構造改革を推進することが重要かつ緊急の課題である。
 こうした観点から農林水産省は、十三年八月に今後の経営政策の方向を示した「農業構造改革推進のための経営政策」を取りまとめた。今後、この方向に沿った施策の検討及び着実な実施が重要である。

(2) 多様な農業経営
ア 農業経営の動向
 平成十二年の販売農家一戸当たりの農業所得は百八万四千円(前年比五・〇%減)であった。農外所得も減少したため農家総所得は八百二十八万円(同二・一%減)となり、八年以降減少傾向で推移した。十三年に入ってからも同様の傾向である。
イ 農家・農業労働力
 平成十三年の総農家戸数は三百七万戸であった。このうち販売農家は二百二十九万戸で、この内訳をみると、主業農家や準主業農家がここ十年間減少傾向にあるのに対し、副業的農家はほぼ横ばいで推移している(第2図参照)。
 農業就業人口は三百八十二万人(販売農家)で、前年に比べ七万人減少した。定年帰農や高齢農業者の営農継続等が農業労働力の量的減少に歯止めをかけているものの、高齢化は著しく進行している。
ウ 新規就農者
 非農家出身の就農者が増加傾向にある。多様化する就農経路に応じた支援等の対応が重要である。
エ 効率的かつ安定的な農業経営の育成・確保
・認定農業者
 認定農業者数は、平成十三年十二月末現在で十七万八千に到達したが経営改善に取り組むなかで様々な課題に直面しており、認定農業者への一層の施策の集中化・重点化が必要である。
・法人経営
 法人化は規模拡大や多角化等の経営の改善・発展に有効であり、有限会社形態を中心に増加傾向にある。株式会社形態の法人も増加しつつある。
・大規模経営−効率的かつ安定的な経営体の一例として−
 稲作の大規模経営は、労働生産性及び土地生産性のいずれも小規模経営を大きく上回っており、スケールメリットを活かした効率的で生産性の高い経営を実現しているが、農産物価格の変動により、農家総所得に直接的な影響を受けやすい。
 農産物価格が、需給の情勢や品質の評価を反映して形成されるという状況下において、価格の著しい変動による農業収入または所得の変動を軽減するためのセーフティネットの整備が必要である。これについて、国民の理解の得られるような具体的な仕組みを検討していくことが必要である。
オ 地域農業を支える多様な担い手
・農業サービス事業体
 個別農家の労働力不足を補完し、高水準の技術サービスを提供する役割を担うなど重要性は増大している。地域農業を維持する担い手として機能を発揮していくためには、他の担い手との円滑な補完関係の構築が重要である。
・第三セクター
 オペレーターを担い手として育成する機能や地域活性化に資する事業展開も期待されている。しかし、経営の赤字構造に悩む例も多く、その設立・運営に当たっては地域の理解を十分に得ていくことが重要である。
・集落営農
 効率的土地利用の実現に資する手法であるが、一体的な経営を行うものは少ない。経営を確立していくためには、組織としての継続性の確保が重要であり、特定農業法人の設立等も期待される。
・女性農業者
 農村社会の方針決定過程への起用や経営への参画が進みつつあるが、家事や育児の負担は重く、一層の参画促進には就業環境の改善が必要である。また、農村の活性化にもつながる女性の起業活動を支援していくことも重要である。

(3) 農地等の確保と有効利用
 耕地面積は、昭和三十六年から平成十三年までに約二割減少しており、最近は耕作放棄を主因に、なお減少の傾向にある。
 農地の権利移動面積は貸借を中心に増加傾向にあり、大規模層への利用集積が進展しているが、まだ不十分である。農地利用集積の促進や、その効果の十分な発現のためには、良好な営農条件を備えた農地を確保することが必要である。また、水田における土地利用型農業の活性化や野菜等の主産地形成を推進するうえで、水田の汎用化の推進も重要である。
 また、農業用水・農業水利施設は、農業生産だけでなく、防火や農村の景観形成等の地域用水機能としても重要な役割をもっている。その機能を十分発揮するためには計画的な整備・更新が必要である。

第二節 農産物需給の動向

(1) 農業生産
 平成十二年の農業生産量は、米や麦類、豆類等が増加し、前年に比べ〇・三%増加した。農産物生産者価格は、米や野菜等の収穫量の増加の影響等により五・九%低下した。農業生産資材価格は、飼料、肥料等が低下し、〇・二%低下した。
 農業の交易条件指数は悪化が続いており、前年に比べ五・二ポイント低下した。資材供給面からの交易条件の改善には、農業の生産資材の流通等の合理化とコスト低減が必要である。特に、流通の大宗を担う農協系統の取組みが重要である。

(2) 水田を中心とした土地利用型農業等の活性化
ア 米の需給
 近年の米の需給は、大幅な緩和基調で推移しており、平成十三年度の生産調整面積は過去最大の百一万ヘクタールに拡大した。また、十二、十三年の自主流通米価格は「平成十二年緊急総合米対策」により十三年六月に前年同月を上回る水準まで回復した。
 十二年度の米の一人一か月当たりの消費量は全世帯で前年度比〇・一%増加したものの、十三年度は減少傾向で推移している。米の消費拡大は、健全な食生活の実現、食料自給率の向上にもつながる重要な取組みであり、国民運動的な展開を図ることが必要である。特に子ども達への伝統的な食文化の継承等の役割も担う米飯学校給食の機会増加(十二年五月現在、二・八回/週)、食教育の充実等の取組みが必要である。
 また、自主流通米価格の大幅な下落、生産調整の公平性の確保、稲作経営安定対策の制度運営等の課題に対応するため、十三年十一月に「米政策の見直しと当面の需給安定のための取組について」が決定された。これを踏まえ、生産者団体・行政が一体となって、生産現場における理解と納得を基礎に着実かつ実効のある改革を実施していくことが必要である。
イ 需要に対応した麦・大豆の生産
 麦・大豆の生産は拡大基調で推移しているが、品質向上等の伴わない生産量急増により需給のミスマッチが拡大していることから、実需者ニーズに対応した生産を行い、単収・品質の向上・安定を図ることが必要である。

(3) 園芸及び畜産
ア 野菜及び果実の国内生産の拡大に向けて
 近年の中国等からの野菜の輸入量は増加傾向にあり、特にねぎについては、国内価格が低下し、生産農家の所得が減少したことから、平成十三年四月に政府は、ねぎを含む三品目について、一般セーフガードの暫定措置を発動した。
 輸入野菜に対抗し得る産地の体質強化を図るため、徹底的な低コスト化、契約取引、高付加価値化生産等の戦略モデルを参考とした野菜生産の構造改革の展開が必要である。
 また、果実については消費量は近年横ばいで推移しているものの、若年世代において果実離れが進行している。消費拡大に向けて、十三年八月から「毎日くだもの二百グラム運動」が開始された。
イ 耕畜連携等を通じた畜産の発展
 平成十三年度の畜産物需給は、BSE感染牛の発生を契機とする牛肉の消費減退に伴い牛肉の生産量が減少した。畜産農家の経営安定等を図るため、各般のBSE関連対策が実施された。
 また、自給飼料の増産については、飼料自給率の向上、生産コストの低減等においてきわめて重要である。こうしたなか、水田を有効に活用できる稲発酵粗飼料の作付けが近年増加しており、耕種農家と畜産農家の連携強化が期待されている。

第三節 農業技術の開発・普及の推進

(1) バイオテクノロジーの研究開発と国民理解の促進
 バイオテクノロジーにより、作物の生産性の飛躍的向上等が期待されている。イネゲノム研究については、国際競争が激化しており、我が国は既に全体の約四割に相当する一億六千万塩基対を高精度で解読した。
 また、遺伝子組換え農作物の開発・実用化に当たっては、文部科学省、農林水産省及び厚生労働省が連携して安全性の評価を実施している。今後とも国民の関心にこたえ、様々な要請や提案に積極的に対応していくことが重要である。

(2) 農業生産の現場を支える技術の開発・普及
 品種や栽培技術等農業技術の開発・普及は、生産性や品質の向上等に寄与しており、それには国等に加え、都道府県や民間企業が果たした役割も大きい。例えば、春まき小麦の重要性が高い北海道において、平成十二年に民間企業が育成した春まき小麦の新品種は、製パン適性に優れており、また、多収等の特性も有していることから普及に向けた生産者の期待も大きい。
 このように生産現場での課題に対し、地域に立脚した技術の開発・普及が進展しているところであり、今後は関係機関が連携・協力して農業技術を開発等していくことが重要かつ有益である。

第V章 農村と都市との共生・対流による循環型社会の実現

第一節 農業の物質循環機能の維持増進

(1) 地球環境と農業
 農業と環境は相互に影響しあっている。例えば、不適切な焼畑農法等により森林破壊が拡大し、地球温暖化の要因となっている。
 地球環境問題の解決のためにも、物質循環のなかで環境と調和した持続的な農業を通じた循環型社会の構築が重要であり、こうしたなか、地球環境問題に関する国際的な枠組みとして、「気候変動枠組条約」、「生物多様性条約」が署名され、「京都議定書」、「バイオセイフティに関するカルタヘナ議定書」が採択された。各条約の実効性を確保するため、我が国の農業分野でも様々な取組みが展開されている。

(2) 食品や農業生産に由来する廃棄物の循環利用システムの構築
 循環型社会の構築に向けて、食料や農業の分野でも家畜排せつ物、農業用使用済プラスチック等の農業生産に由来する廃棄物や食品廃棄物、容器包装廃棄物等のリサイクルの取組みが進展している。
 特に食品廃棄物については、平成十三年五月に食品リサイクル法が施行され、外食や食品製造業等から排出される事業系でのリサイクルの推進が図られている。また、家庭系については、その再生利用等の推進方策の検討が重要となっている。

(3) 農業の自然循環機能を活用した生産方式の普及・定着
 農業の自然循環機能の維持増進を図り、良好な環境を形成するため、環境保全型農業の普及・定着が必要である。
 環境保全型農業に取り組んでいる農家は、販売農家の約二割(平成十二年)を占めるなど、その取組みは着実に広がっているとみられ、今後とも安定的経営を実現していくため、消費者との交流等を通じて契約生産や直販等の安定した販路を確保することが重要である。

第二節 農業の有する多面的機能の発揮

(1) 農業の有する多面的機能
 農村での適切な農業生産活動により生じる多面的機能としては、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な環境の形成、文化の伝承等様々なものがあり、これらの機能は、国民生活及び国民経済の安定にとって重要な役割を果たしている。
 平成十三年十一月、日本学術会議は農業及び森林の多面的な機能の評価に関しての諮問(十二年十二月)に対して答申した。答申では、農業の有する多面的機能の具体的内容やそのメカニズム等が盛り込まれるとともに、一部の機能について、日本学術会議の特別委員会等の議論を踏まえ試算した定量的評価結果についても言及している。

(2) 農業の有する多面的機能に対する理解の浸透
 農業の有する多面的機能に対する理解の増進に向け、各地でシンポジウムの開催や情報提供等の取組みがみられる。今後、日本学術会議の答申を踏まえつつ、国民の理解を一層深めるため、さらなる努力を行っていくことが必要である。

(3) 農業の情操かん養機能等を活用した子ども達の農業体験・農業体験学習
 農業の有する情操かん養機能を活用した子ども達の農業体験は、豊かな心を育み、人格形成に大きな効果を及ぼす取組みとして期待されており、農業に対する理解の醸成等の観点からも重要な取組みである。
 このため、関係機関との連携のもと、積極的な農業体験の機会の設定や体験内容の工夫等取組みの一層の充実を図っていくことが重要である。

第三節 農村の現状

(1) 日本の経済発展と農村と都市の関係の変化
 我が国の農村は、人、土地等の供給を通じて経済成長を支えてきたが、この結果、人口集中等による都市の生活環境の悪化と農村の過疎化・高齢化といった問題が生じている。
 このような地域間格差や東京一極集中等の国土発展の不均衡の是正が重要課題である。

(2) 農村社会の変容
 三大都市圏、特に東京圏では、人口は増加傾向にあり、一方地方圏では、引き続き減少傾向にある。こうしたなか、農村での少子化・高齢化が早いペースで進行しており、農家人口の高齢化率(六十五歳以上)は二八・六%(平成十二年)となっている(第3図参照)。
 また、三大都市圏に顕著な都市化・混住化により、総戸数規模は拡大し、農家率の低い集落が増加しており、都市的地域で水路管理等が農家のみで実施されるなど集落機能の低下が懸念されている。
 他方、地方圏でも農業集落数の減少がみられ、特に、過疎地域では集落の維持が困難となり、集落機能の再編を必要とする地域も増加している。

(3) 中山間地域の現状と課題
 中山間地域は、我が国の農業生産の約四割を担うとともに、一般に河川等の上流域に位置していることから、農業生産活動による多面的機能の発揮を通じて下流域の住民の生活基盤を守る防波堤としての役割を発揮している。
 中山間地域は傾斜地率が高く、小区画・不整形なほ場が多いなど平地に比べ農業生産条件が不利であることから、規模縮小や離農農家も多く、耕作放棄地率は平地農業地域の約二倍となっている。気温の日較差を活かした良食味米の生産等特色ある農業の展開が期待される。
 また、中山間地域等における耕作放棄の発生を防止し、多面的機能を確保することを目的とする「中山間地域等直接支払制度」により、十三年度には、約六十三万ヘクタールの農用地について約三万件の集落協定等が締結されている。

第四節 循環型社会の実現に向けた農村の総合的な振興

 国民の意識が「心の豊かさ」重視に転換しているなかで、都市においては農村のもつ魅力に対する期待が高まっている。また、農村においては過疎化や高齢化が進むなかで、地域を活性化するため都市側の支援が必要となっている。
 こうしたことから、農村と都市がそれぞれの特性を活かし、共生・対流を通じてお互いの魅力を享受できる互恵的な関係を構築し、環境と調和した循環型社会の実現を図ることが重要である。

(1) 農村の活性化の必要性
 農村での就業機会の不足、生活基盤整備の遅れ及び都市的サービスの不足等により農村社会の活力が低下している。市町村等を単位とする行政や住民等の内発的な活動では、人口の減少や高齢化等で停滞する集落活動等を再び活性化させることは困難であり、都市側からの支援を求めて農村の活性化に取り組むことが必要である。

(2) 都市住民の農村への関心の高まり
 世論調査によれば、人々の意識が「ものの豊かさ」から「心の豊かさ」重視に転換しており、自然体験希望者が増加している。都市では、農村と比べ「ゆとり」の乏しい居住条件等の生活の豊かさや安全性に対する住民の不満が増大している。
 こうしたことから、豊かな自然に恵まれた農村の生活に満足し、農村を理想の居住地に選ぶ者が増加している。また、農村での健康的な暮らしや新しい生活スタイル等を求め、大都市圏の居住者の中で地方への移住を希望する者が増加している。

(3) 新たなむらづくりに向けた課題と解決方向
ア 開かれた農村社会づくり
 農村への定住を進めるため、就業機会等の確保とあわせて人間関係に対する不満をあげる都市住民もあり、旧来の習慣等を見直し参入しやすい条件を整備することが必要である。
イ 農村の社会基盤
 農村での居住のため必要な条件整備として、都市とそん色ない生活基盤や都市へのアクセス等の改善といった共通社会基盤の整備を推進実施することが必要である。
ウ 高齢化への対応
 高齢者が農村社会の担い手として生涯現役で活動できるよう、バリアフリー化等の条件整備が必要である。また、農村への民間介護サービス企業の参入の遅れ等の福祉サービスの低下や、高齢者介護の負担による農業経営規模の縮小が懸念されている。今後、高齢化により要介護者の増加も見込まれることから、農協等の介護サービス等への積極的参入が必要である。
エ 農村における産業の振興
 都市との交流で直売所の役割が注目されており、農村の雇用や所得機会の創出、都市住民との交流の場として評価されている。一部の市町村は、地元の雇用促進のため複合的なアグリビジネスの展開を行っており、今後はリピーター客の確保に向け積極的なブランド化や地域資源を活かした集客等の事業展開を図ることが必要である。
オ 農村における情報基盤の整備
 農業者のインターネットの利用率は低位にとどまっており、その向上のためには農業者等のニーズに応じたシステムの開発等が必要である。
 一方、高度情報通信基盤の整備水準についても状況は都市との間で格差があり、生活面や経済面の新たな格差を派生することがないよう整備を推進することが急務である。
カ 自然との共生
 効率優先の事業による生態系等の悪化を防止するため、環境に配慮した事業を地域住民等との合意形成を図っていくことが必要である。
 こうした観点から環境に配慮するよう土地改良法が改正され平成十四年度より施行された。

(4) 農村と都市との交流の具体的な取組み
 都市住民の豊かな自然や美しい景観に触れたいという欲求に対応するとともに、農村における地域活性化を図る観点から、グリーン・ツーリズム等の都市農村交流の活発化に大きな期待が寄せられている。
 こうしたなかで、都市住民の多くが、今後農村を訪れる機会をふやす意向をもっており、そのニーズは幅広い内容となっている。農村においては、地域資源を活かした企画の充実や都市住民のニーズの把握等を地域住民が主体となって進め、関係機関がそれを支援するといった推進体制の確立が重要である。
 また、農業体験に関心がある都市住民と地域の保全を図りたい農村住民が協力する「協働」が各地で展開されている。今後こうした都市と農村の共生・対流の取組みを広く促進するため、活動の中心であるNPO等に対する支援体制の整備等が必要である。





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消費者物価指数の動向


―東京都区部(五月中旬速報値)・全国(四月)―


総 務 省


◇五月の東京都区部消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・一となり、前月比は〇・二%の上昇。前年同月比は一・二%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二年九か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・〇となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は一・一%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年八か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九九・五となり、前月に比べ〇・九%の上昇。
  生鮮魚介は〇・〇%。
   <値上がり> かつお、さけなど
   <値下がり> いか、まぐろなど
  生鮮野菜は三・〇%の上昇。
   <値上がり> ねぎ、だいこんなど
   <値下がり> トマト、ブロッコリーなど
  生鮮果物は一二・〇%の上昇。
   <値上がり> キウイフルーツ、レモンなど
   <値下がり> いちご
(2) 住居は九七・五となり、前月に比べ〇・二%の下落。
  家賃が〇・二%の下落。
   <値下がり> 民営家賃(木造中住宅)など
(3) 被服及び履物は九八・五となり、前月に比べ一・〇%の上昇。
  衣料が一・五%の上昇。
   <値上がり> 婦人スーツ(夏物)など
(4) 交通・通信は九八・六となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  自動車等関係費が〇・二%の上昇。
   <値上がり> ガソリン(レギュラー)など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 家賃(一・一%下落)、電気代(五・九%下落)、教養娯楽用耐久財(一五・九%下落)、教養娯楽サービス(一・四%下落)、衣料(三・六%下落)、家庭用耐久財(八・九%下落)、教養娯楽用品(三・九%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。

◇四月の全国消費者物価指数の動向

一 概 況

(1) 総合指数は平成十二年を一〇〇として九八・四となり、前月比は〇・三%の上昇。前年同月比は一・一%の下落となった。
 なお、総合指数は、平成十一年九月以降二年八か月連続で前年同月の水準を下回っている。
(2) 生鮮食品を除く総合指数は九八・五となり、前月比は〇・一%の上昇。前年同月比は〇・九%の下落となった。
 なお、生鮮食品を除く総合指数は、平成十一年十月以降二年七か月連続で前年同月の水準を下回っている。

二 前月からの動き

(1) 食料は九八・二となり、前月に比べ〇・四%の上昇。
  生鮮魚介は二・〇%の上昇。
   <値上がり> いか、あじなど
   <値下がり> かれい、いわしなど
  生鮮野菜は八・九%の上昇。
   <値上がり> ほうれんそう、にんじんなど
   <値下がり> ピーマン、なすなど
  生鮮果物は〇・七%の上昇。
   <値上がり> りんご、バナナなど
   <値下がり> いちご、レモンなど
(2) 住居は一〇〇・二となり、前月に比べ〇・一%の下落。
  家賃が〇・一%の下落。
   <値下がり> 民営家賃(非木造中住宅)など
(3) 光熱・水道は九九・五となり、前月に比べ一・〇%の下落。
  電気・ガス代が一・七%の下落。
   <値下がり> 電気代など
(4) 被服及び履物は九七・二となり、前月に比べ四・一%の上昇。
 シャツ・セーター・下着類が八・六%の上昇。
   <値上がり> 婦人Tシャツ(半袖)など
(5) 保健医療は九九・〇となり、前月に比べ一・二%の下落。
  保健医療サービスが一・八%の下落。
   <値下がり> 診療代など
(6) 教育は一〇二・四となり、前月に比べ一・一%の上昇。
  授業料等が一・〇%の上昇。
   <値上がり> 公立高校授業料など
(7) 教養娯楽は九四・八となり、前月に比べ〇・二%の上昇。
  教養娯楽サービスが〇・六%の上昇。
   <値上がり> 外国パック旅行など

三 前年同月との比較

○下落に寄与している主な項目
 教養娯楽用耐久財(一七・二%下落)、生鮮野菜(八・五%下落)、家庭用耐久財(七・四%下落)、通信(二・五%下落)、衣料(二・七%下落)、電気代(二・二%下落)
 (注) 下落又は上昇している主な項目は、総合指数の前年同月比に対する影響度(寄与度)の大きいものから順に配列した。























農林水産省「消費者の部屋」こどもぷらざのご案内

  農林水産省
●農林水産業や食べ物についての質問をまっています。
 みんなが「食べ物」や「農業」「林業」「水産業」などのことで、わからないことや調べたいことを気軽に質問できる「子ども相談(そうだん)電話」があります。みんなからの電話をまっています。
・電話番号
 03―5512―1115
 ファクスも同じ番号です。
・受付時間
 午前十時から午後五時まで。土・日曜日、祝日はお休みです。休日や時間外は、るすばん電話やファクスに連絡先と質問したいことを入れてください。
・手紙の送り先
 〒100―8950
 東京都千代田区霞が関1―2―1
 農林水産省「消費者の部屋」



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景気予測調査


―平成十四年五月調査―


財 務 省


<はじめに>

 財務省では、企業経営の現状と見通しを調査し、景気の動向を的確に把握することを目的として、金融・保険業を除く資本金一千万円以上(電気業、ガス・水道業は資本金十億円以上)の営利法人約百二十万社のうち約一万二千社を対象として、四半期ごとに財務省景気予測調査を実施している。
 以下は、平成十四年五月に実施した第七十七回調査結果の概要である。今回の調査では一万七百四十六社を対象とし、八千六百六十一社(回収率八〇・五%)から回答を得ている。
 なお、本調査における大企業とは資本金十億円以上の企業を、中堅企業とは資本金一億円以上十億円未満の企業を、中小企業とは資本金一千万円以上一億円未満の企業をいう。

◇景況第1図第1表参照

 平成十四年四〜六月期の景況判断BSI(前期比「上昇」−「下降」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも引き続き「下降」超となっている。
 先行き平成十四年七〜九月期を全産業でみると、いずれの規模においても引き続き「下降」超の見通しとなっている。
 先行き平成十四年十〜十二月期を全産業でみると、大企業は「上昇」超に転じる見通し、中堅企業、中小企業は引き続き「下降」超の見通しとなっている。

◇売上高第2表参照

 平成十四年度上期の売上高は、全産業合計で前年比二・二%の減収見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業では減収見込み、中堅企業は増収見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、食料品、船舶製造・修理が増収となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが減収となり、全体では三・九%の減収見込みとなっている。
 非製造業では、映画・娯楽、不動産などが増収となるものの、建設、卸売・小売などが減収となり、全体では一・六%の減収見込みとなっている。
 平成十四年度下期の売上高は、全産業合計で前年比二・〇%の増収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増収の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、船舶製造・修理、輸送用機械器具などが減収となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増収となり、全体では三・三%の増収の見通しとなっている。
 非製造業では、建設、その他の非製造業などが減収となるものの、卸売・小売、映画・娯楽などが増収となり、全体では一・五%の増収の見通しとなっている。
 平成十四年度通期の売上高は、全産業合計で前年比〇・一%の減収の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中小企業は減収の見通し、中堅企業は増収の見通しとなっている。

◇経常損益第3表参照

 平成十四年度上期の経常損益は、全産業合計で前年比二・七%の増益見込みとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業では減益見込み、中堅企業、中小企業では増益見込みとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、一般機械器具、化学工業などが減益となるものの、電気機械器具などが増益となり、全体では一四・二%の増益見込みとなっている。
 非製造業では、卸売・小売、運輸・通信などが増益となるものの、事業所サービス、映画・娯楽などが減益となり、全体では一・八%の減益見込みとなっている。
 平成十四年度下期の経常損益は、全産業合計で前年比二六・六%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。
 業種別に前年比でみると、製造業では、輸送用機械器具、船舶製造・修理などが減益となるものの、電気機械器具、一般機械器具などが増益となり、全体では五一・九%の増益の見通しとなっている。
 非製造業では、建設、不動産などが減益となるものの、卸売・小売、映画・娯楽などが増益となり、全体では一五・七%の増益の見通しとなっている。
 平成十四年度通期の経常損益は、全産業合計で前年比一五・二%の増益の見通しとなっている。
 これを規模別に前年比でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも増益の見通しとなっている。

◇中小企業の設備投資第4表参照

 設備投資については中小企業のみを調査対象としている。今回の調査における平成十四年度の全産業の設備投資計画額を前年比でみると、土地購入費を含む場合(以下「含む」という)で一一・八%減、除く場合(以下「除く」という)で一〇・二%減の見通しとなっている。なお、前回調査時に比べ、「含む」で七・二%ポイントの上方修正、「除く」で五・一%ポイントの上方修正となっている。
 平成十四年六月末時点の設備判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、全産業は「過大」超となっている。
 先行きについては、全産業でみると「過大」超で推移する見通しとなっている。

◇中小企業の販売製(商)品在庫

 平成十四年六月末時点の在庫判断BSI(期末判断「不足」−「過大」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業いずれも「過大」超となっているものの、いずれも「過大」超幅が縮小する見通しとなっている。

◇中小企業の仕入れ価格

 平成十四年四〜六月期の仕入れ価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業は「上昇」超、卸売業、小売業は「低下」超で推移する見通しとなっている。

◇中小企業の販売価格

 平成十四年四〜六月期の販売価格判断BSI(前期比「上昇」−「低下」社数構成比・季節調整済)をみると、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超となっている。
 先行きについては、製造業、卸売業、小売業、サービス業いずれも「低下」超で推移する見通しとなっている。

◇雇用第5表参照

 平成十四年六月末時点の従業員数判断BSI(期末判断「不足気味」−「過剰気味」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「過剰気味」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「過剰気味」超で推移する見通しとなっている。
 平成十四年四〜六月期の臨時・パート数判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業は「増加」超、中小企業は「減少」超となっている。
 先行きについては、大企業は「減少」超に転じる見通し、中堅企業は「増加」超で推移する見通し、中小企業は「減少」超で推移する見通しとなっている。
 平成十四年四〜六月期の所定外労働時間判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

◇企業金融第6表参照

 平成十四年四〜六月期の金融機関の融資態度判断BSI(前期比「ゆるやか」−「きびしい」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「きびしい」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「きびしい」超で推移する見通しとなっている。
 平成十四年四〜六月期の資金繰り判断BSI(前期比「改善」−「悪化」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「悪化」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「悪化」超で推移する見通しとなっている。
 平成十四年六月末時点の金融機関からの設備資金借入判断BSI(前期比「増加」−「減少」社数構成比・季節調整済)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「減少」超となっている。
 先行きについては、いずれの規模においても「減少」超で推移する見通しとなっている。

◇中期的な経営課題第2図参照

 中期的な経営課題(一社二項目以内回答)を全産業でみると、大企業、中堅企業、中小企業いずれも「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が最も多く、次いで、大企業、中堅企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業は「後継者、人材の確保、育成」の順となっている。
 業種別にみると、製造業では、大企業、中小企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中堅企業は「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」が最も多く、次いで大企業は「国内工場・営業所の再編、生産・流通工程の見直し等によるコストの低減」、中堅企業は「新技術、新製品の開発、製品(サービス)の高付加価値化」、中小企業は「国内販売体制、営業力の強化」の順となっている。非製造業では、いずれの規模においても「国内販売体制、営業力の強化」をあげる企業が多い。




「子どもと話そう」全国キャンペーン

  文部科学省
 近ごろ、子どもとふれあう時間を持っていますか。すべての大人にとって、子どもたちは大切な未来です。思い出してみてください。あなたの子ども時代を。つらいとき、悲しいとき、悩んだときを。わかってもらいたかったことは何なのか。どんなふうに励ましてもらいたかったか。あの日のあなたが、そこにいるはずです。子どもたちの心のシグナルに気付き、受け止めてあげられる大人であるために、大切にしてください。子どもたちとの時間。
●「子どもと話そう」全国キャンペーンとは?
 家庭や地域での教育力の低下がいわれて久しい現在、家庭教育の重要性を改めて訴えるとともに、社会の大人たちすべてが手を携えて子どもたちを大切にし、心豊かにはぐくんでいく機運を醸成することが強く求められています。
 そこで、文部科学省では、家庭や地域社会全体で子どもとふれあい話し合う機会を充実するため、「[子どもと話そう]全国キャンペーン」を提唱し、関係省庁や地方公共団体、民間企業などに広く参加を呼びかけています。
●キャンペーンの趣旨
・子どもを持つ親はもとより、社会の大人たち全員に家庭や地域での子どもとのふれあい、話し合いの大切さを改めて認識してもらう。
・行政機関、企業、各種団体、個人等幅広く各界各層がそれぞれの役割・立場で未来を担う子どもたちのために何ができるのかを考え、実行してもらう。
●キャンペーンに関するお問い合わせ先
 文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課
 〒100―8959
 東京都千代田区霞が関3―2―2
 電話 03―5253―4111
 (内線2642、2092)




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税金365日 所得税の予定納税(第一期分)


国 税 庁


 所得税の予定納税第一期分の納税をお忘れなく。納期は、平成十四年七月一日(月)から七月三十一日(水)までです。
 六月中旬ごろに税務署から「予定納税額の通知書」が郵送された方は、これに記載された第一期分の金額が納税する額になります。
 振替納税を利用している方は、納期限(平成十四年七月三十一日)に指定の金融機関の口座から自動的に納付されます。確実に納付できるよう、納期限の前日までに納税額に見合う預貯金額をご用意することをお勧めします。その他の方は、納期限までに最寄りの銀行や郵便局または所轄の税務署で納めてください。
 納期限までに納税されない場合には、納期限の翌日から完納の日までの間の延滞税を本税と併せて納付する必要がありますので、ご注意ください(未納となっている本税の額に対して年一四・六%<平成十四年九月三十日までは年四・一%>の割合で延滞税がかかります)。
 振替納税についても、残高不足で振り替えできなかった場合には、同様に納期限の翌日から延滞税がかかります。この場合、最寄りの銀行や郵便局または所轄の税務署で本税と併せて納付していただくことになります。
 この予定納税のあらましについてご説明しましょう。

【予定納税のしくみ】

 所得税は、最終的には一年間の所得と税額を計算し、翌年の確定申告期間中に申告をして、その税額を納めることになっていますが、前年に一定の所得があった方については、税務署で前年の所得などをもとにして予定納税額を通知し、それを七月(第一期分)と十一月(第二期分)に納めていただくことになっています。
 この制度を予定納税の制度といいます。

【予定納税額の減額の申請】

一 予定納税額の減額を申請することができる場合
 次のような理由により、平成十四年六月三十日現在の状況で、平成十三年分の年間所得や所得控除などを見積もって計算した税額(これを「申告納税見積額」といいます)が、税務署から通知されている予定納税基準額より少なくなると見込まれる場合は、予定納税額の減額を申請することができます。
 @ 廃業や、休業、転業、失業のため、平成十三年分より所得が減少すると見込まれるとき。
 A 業況不振などのため、平成十四年分の所得が平成十三年分の所得より明らかに少なくなると見込まれるとき。
 B 地震、風水害、火災などの災害や盗難、横領によって財産に損害を受けたため、平成十三年分より所得が減少したり、雑損控除が受けられると見込まれるとき。
 C 納税者やその家族のけがや病気などで多額の医療費を支払ったため、新たに医療費控除が受けられると見込まれるとき。
 D 結婚や出産などのため、新たに、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除が受けられることになったとき。
  (注) 平成十四年七月一日以後に風水害や火災などの災害に遭い、住宅や家財に損害を受けた場合において、その損害額が住宅や家財の価額の二分の一以上で、しかも、平成十四年分の年間所得の見積額が、一千万円以下であると見込まれるときは、災害減免法による減額申請をすることができます。
 この減額申請は、災害を受けた日から二か月以内にすることになっています。
二 申告納税見積額の計算方法
 この減額申請をする場合は、平成十四年六月三十日の現況で、次により申告納税見積額を計算します。


 平成十四年分の申告納税見積額=(所得税額の見積額−低率減税額相当額)−源泉徴収税額の見積額 

 (注)一 「所得税額の見積額」とは、平成十四年分の所得の見積額や所得控除の見積額などをもととして、定率減税を適用しないで計算した所得税額をいいます。
    二 「低率減税額相当額」とは、「所得税額の見積額」の二〇%相当額(最高二十五万円)をいいます。
    三 特別農業所得者については、平成十四年十月三十一日の現況により、申告納税見積額を計算します。
    四 「源泉徴収税額の見積額」は、平成十四年中に支払を受ける給与や公的年金等についてその支払者のもとで低率減税額の控除が行われる場合のその控除額の見積額を差し引いて計算します。
三 減額申請の手続き
 平成十四年七月十五日(月)までに「予定納税額の減額申請書」を税務署に提出してください。
 ただし、税務署からの予定納税額の通知が遅れて六月十六日以降になったときは、その通知をした日から起算して、一月を経過した日までに提出することができます。
四 減額申請に対する承認などの通知
 税務署では、予定納税額の減額申請書が提出されますと、その内容を調べて申請を認めるかどうかを検討し、その結果を書面でお知らせします。

【振替納税のご利用を】

 所得税の納税の方法に、振替納税の制度があります。これは金融機関の預貯金口座から振替によって納税を済ませるもので、この制度を利用すれば納税のための手数が少なく、また、うっかり納期限を忘れ滞納してしまうこともなくなり、大変便利です。
 簡単な手続で利用できますので、新たに振替納税を希望される場合は、税務署(管理担当)か金融機関にご相談ください。





    <7月17日号の主な予定>

 ▽環境白書のあらまし………………環 境 省 

 ▽毎月勤労統計調査(四月)………厚生労働省 

 ▽労働力調査(四月等結果)………総 務 省 




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